インタビュー
和食文化国民会議 理事副会長/普及・啓発部会長
Kazuko Goto
武者小路千家の家元に生まれ、懐石料理と京料理への深い造詣とともに、「和の食と心」を伝える料理研究家。
ユネスコ登録後の和食、保護継承の団体。
食文化国民会議の副会長。
「茶懐石学ぶ日日の料理」が、フランスグルマン賞、辻静雄賞の同時受賞。また、「京都和食文化賞」も受賞
(和食が)ユネスコ無形文化遺産に登録されてから本当に長かったような短かったような10周年なんですけれども国民の方々が和食を意識してくださるとてもいい機会の10年だったなと実感しております。
昭和50年頃からですねファストフードをはじめ、海外の料理がどんどん入ってきたんです。ファストフードや洋食、中華(料理)の方がインパクトがあるので 日本料理の存在がだんだん消えていったと思うんですけれども日本料理というのは非常に繊細な味でおいしいことはもちろんですけれど健康面からもやっぱり考えていくと和食って素晴らしいなと思っております。
一番私が大切だと思うご飯があってお汁があって、おかずがある。これが和食の原点というか、形だと思っております。
古くは京都では、おかずのことを「おまわり」と言ったんです。なんで「おまわり」と言うかというとご飯の周りにおかずがあったから。ご飯と一緒に、お汁やおかずをいただいたんです。
専門用語で言うと、「口中調味」。ご飯とおかずが混ざり合って、おいしいという専門用語もあるぐらいですのでご飯と一体になって、おいしいのが和食。食べる番組を見ていても芸能人の方がよく「ご飯が欲しい」とおっしゃってるじゃないですか。日本人なら誰でもある感覚なので田植えなどいろいろ、人々の暮らしもお米の生育に合わせてずっとやってきたと思うんです。
本当に日本人の心であり、大切なものなのでいろいろ取り入れて、召し上がっていただきたいと思います。
日本は(食材が)やっぱりおいしいんですよ。ミネラル分が少ないでしょう。水の鉱物が少ないので。山からすぐ海なので、魚もおいしいんです。
食材に恵まれている国で、濃い味付けをする必要はないんです。日本は小さい国ですけれど、非常に気候風土も変化に富んで各地に美味しい特徴的な料理があります。その土地でできる食材のお料理をいただくのが一番おいしいと思うんです。
その地方で、そのお料理に自信を持ってずっと続けていっていただきたいと思っています。
和食文化国民会議で、和食を継承していく運動をしているんですけれどもそこの継承活動の1つで、私もいろいろな小学校へ行って和食給食を提案させていただいているんですけれど今年は、和食器を使った給食を試みてみたんです。
給食というのが和食を(次世代の子供達に)教えていけるいいチャンスかなと思っております。(和食文化の継承には)もちろん、先生方お母さまご父兄の方のお力も借りていかないと(実現しない)ということなんです。
日本料理の継承、難しいことではないと思うんですけれども子供の時にあんまり濃い味を先に食べてしまうと薄味が分からなくなるので10歳ぐらいまでに味覚って決まってくると思いますのでそこでまず淡い味をお作りいただけたらいいかなと思っております。
うま味の研究をしてらっしゃる学者の方が2か月ぐらいの赤ちゃんにいろんな味を味わわせてお砂糖はにこにこするんですね。苦いものはペッと吐き出す。
その後お出汁を飲ませたら、母乳と同じような顔でにこにこっと飲むんですって。だからそのうま味は赤ちゃんでもわかるので。
離乳食だって、煮焚き物が作れたら潰すだけでもいいんです。なので本当に離乳食のときから、お出汁を味わわせてあげたいと思います。
日本料理にとってお出汁は不可欠なものですけれど私は、家庭用の(出汁の)取り方ですけれど割とたっぷりめにとって、実は冷凍にしているんです。昆布と鰹のお出汁がないと駄目、と言うよりは何でも工夫次第だと思うんです。
手羽を1、2本入れたりなど、そういうものでも十分お出汁って出ますので本当に気軽に煮物を始めていただけたら嬉しいと思います。
和食というのは大きく分けて、お料理屋さんの料理と家庭の和食、大きく2つに分かれると思います。お料理屋さんに行くときれいなしつらいがあって、お花が添えてあったりそれは夢があって、とっても良いお料理なんですけれど家庭(料理)は地味ですけれども食べ終わった時に「あぁ、おいしい」と思うし「また食べたい」と思う味なんです。
家庭の料理っていうのは、その国の料理の本当に中心部だと思うんです。その根本の家庭料理が崩れてしまったら日本の食文化というのはなくなったと同然ですので全ての人々が家庭の料理を大切に思って作り続けていっていただきたいと思います。