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INTERVIEW

インタビュー

柳原 尚之

近茶(きんさ)流宗家/柳原料理教室主宰

柳原 尚之

Naoyuki Yanagihara

東京農業大学大学院後期博士課程修了。小豆島の醤油会社勤務やオランダの帆船でのキッチンクルーを経て、現在は東京・赤坂の柳原料理教室にて日本料理、茶懐石の研究指導にあたる。その他、料理番組への出演や大河ドラマなどの料理監修を務める。 江戸時代の食文化の研究や子供への食育もライフワークとして行っている。2015年文化庁文化交流使、2018年農水省日本食普及の親善大使。博士(醸造学)

和食への認識の変化

(和食が)ユネスコの無形文化遺産に登録されたときに、どういうふうに変わっていくのかなと感じたんですね。今、(登録されてから)10年経って思うことは、やはり、日本人自体が「和食というのは大事なんだな」と気づいたんだと思うんです。
国として正式に(和食を)海外に発信することによって海外の人たちも日本食のことをよく知るようになるし、(和食を)食べに、わざわざ日本に来てくれる、そういうふうに変化していったのは大きいなと思います。
海外の人たちは、勉強してくるんですよね。おいしいから食べに来てくれるだけじゃなくて、大きい(日本)文化として体験に来てくれるのはとても僕は嬉しいことだと思います。
また、そういう対外的だけではなくて、日本人自体が、もう1回(和食文化を)見直す大きなきっかけになっていると思います。

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和食の味を形づくるもの

和食の中でとても大切なことは、水と出汁。(日本は)基本的に軟水であるということです。
硬水で(出汁を)取ると、昆布出汁は濁るんです。真っ白くなります。鰹節を入れても味が出てこない。でも、軟水ですと昆布のうま味、鰹節のうま味が出てくる。そういった違いがあります。
もう1つは醸造調味料、醤油、味噌、みりん、酒、酢、全部これは微生物による発酵によって作られる調味料なんです。そのことによって、うま味のすごく多い調味料ができて、日本の「味」というのが、できてきているんです。

国土が育む郷土料理

和食の特徴の1つに、郷土料理というのがあります。日本というのは南北に長く、いろいろな温度帯があります。そのことによって、いろいろな野菜や魚(の種類)が変わってきます。
日本の国土自体が、各地域の味をつくっている。そういったものをもう一度見つめ直して、日本料理の奥深さを保つ、独自性のある食文化を残していく、それがまた新しい料理にも発展していく、きっかけになっていくと思います。

郷土料理は江戸で交わり進化する

もう1つ、その地域だけではなくて、日本の食文化を発展させた1つの大きな理由に、江戸時代の例えば参勤交代とか、その各地の食材が一度、江戸に集まって、そこからまた地方に移って、戻っていく。
地域の味だけではなくて、他の味もどんどん入って、新陳代謝をしてきたっていうのが、日本の食文化の1つの特徴でもあります。

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豊富な食材を味わう

私の考える和食の魅力(の1つ)は、食材の豊富さ。例えば、豊洲市場でも毎日150種類に近い魚や魚介類、また、200種類近い野菜が毎日入れ替わり、立ち代わりいろいろな種類が(市場に)入ってきます。その良い食材が手に入ることによって、その食材を生かした調理法というのが、生まれてきたわけです。
食材の味自体が感じられる料理が多いのが、日本料理の魅力だと思います。

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目で見てもおいしい、日本料理の器

日本の食文化の1つの特徴として、器の種類が豊富にあるのですが、日本料理は、まず料理の種類が多い。それぞれに合った器というのが、ずっと昔から続いてきている。
いろいろな種類があることによって、1つ器の大きな特徴として、「季節感を出す」、本当に、目で見てもおいしく食べることができる、それが日本料理の特徴です。

食べることに願いをこめる

日本の食文化の中で、行事の時に食べる行事食、例えばお正月に食べるおせち料理や、五節句(節供)と言われるお祭りごとを、日本はとても大切にしてきたんです。
節句(節供)は、元々はお祭ごとの時に、神様や天皇に出す料理のことを表していたんです。つまり、節句(節供)自体が料理のこと、食べることの意味だったんです。食べることに意味を持たせる、願いを込めていくのは、行事食の大きな特徴になっています。

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和食文化を未来へ繋ぐ

文化は、続けていかないと、1回途切れてしまうと、そこで終わってしまうものなんです。そこから、もう1回復活させるのは、すごく力がいります。なので、小さい時に(和食を)食べてないと、そういった文化は引き継がれていかない。子供達には少しずつでもいいから(和食文化を)経験してもらいたい。
行事食や節々の節句(節供)の料理を体験していけば、自然と日本の食文化に触れていきますから。心のどこかに残っていてくれれば、それを自分達が作っていこう、また、これは引き継がなきゃいけないな、やっぱり知ることが大切だと思うし、和食文化というのが守られていくと思います。

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