平成30年度文化庁映画賞(文化記録映画部門・映画功労部門)の決定について

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平成30年10月5日

文化庁では,この度,文化庁映画賞(文化記録映画部門・映画功労部門)の受賞作品及び受賞者を決定しましたのでお知らせします。

1.表彰の概要

我が国の映画芸術の向上とその発展に資するため,文化庁映画賞として,優れた文化記録映画作品(文化記録映画部門)及び永年にわたり日本映画を支えてこられた方々(映画功労部門)に対する顕彰を実施しています。

文化記録映画部門では,選考委員会における審査結果に基づき,次の3作品(文化記録映画大賞1作品,文化記録映画優秀賞2作品)を受賞作品として決定しました。各作品の製作団体に対して,賞状及び賞金(文化記録映画大賞200万円,文化記録映画優秀賞100万円)が贈られます。

また,映画功労部門については次の6名の方を受賞者として決定し,文化庁長官から賞状が贈られます。

2.受賞作品及び受賞者

【文化記録映画部門】

文化記録映画
大賞
作品名 まぶいぐみ
~ニューカレドニア引き裂かれた移民史~
製作者名 シネマ沖縄
文化記録映画
優秀賞
作品名 米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー
製作者名 TBSテレビ
作品名 Ryuichi Sakamoto: CODA
製作者名 SKMTDOC, LLC

(作品名50音順)

【映画功労部門】

氏名 分野
佐藤政義(さとうまさよし) 映像美術・装置
瀬川徹夫(せがわてつお) 映画録音技師
瀬山武司(せやまたけし) アニメーション編集
牧野(まきのまもる) 日本映画史研究
丸池(まるいけおさめ) 映画撮影
山本逸美(やまもといつみ) 整音・選曲

(敬称略・氏名50音順)

3.贈呈式及び受賞記念上映会(都合により,日時・場所の変更の可能性があります。)

(1)贈呈式
日程:10月25日(木)19:00~
会場:六本木ヒルズグランドハイアット東京
(2)受賞記念上映会
日程:10月28日(日)11:00~
会場:神楽座(飯田橋)
11:00~米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー』
14:00~『Ryuichi Sakamoto: CODA』
17:00~『まぶいぐみ~ニューカレドニア引き裂かれた移民史~』

文化庁参事官(芸術文化担当)

参事官
坪田知広(内2822)
芸術文化調査官
戸田桂(内2829)
映画振興係長
考平(内2083)

【代表】03-5253-4111

平成30年度文化庁映画賞贈賞理由及び功績

文化記録映画部門

文化記録映画大賞

『まぶいぐみ~ニューカレドニア引き裂かれた移民史~』シネマ沖縄

二十世紀初頭ニューカレドニアに移住した沖縄出身の人々の過酷な労働や,二世三世たちの苦労と努力,戦後,離散した家族のそれからなど,今まであまり知られていない移民史を丁寧に掘り起こしている。「まぶいぐみ」は沖縄の言葉で失った魂を取り戻すこと。広範な取材で集めた資料と証言映像により,二国に引き裂かれた家族との再会や自分のルーツを求め続け,過去の悲劇を乗り越えようとする人々の今が見事に映し出されている。

(山田顕喜)

文化記録映画優秀賞

『米軍が最も恐れた男その名は、カメジロー』TBSテレビ

太平洋戦争終結後,アメリカ占領下の沖縄で,県民の心強い道標となった不屈の政治家,瀬長亀次郎の半生を追ったドキュメンタリー。映画は,当時の記録映像や関係者の証言,米政府の文書類など,広範囲に収集された資料を駆使しながら,米軍の厳しい統治政策に真正面から闘いを挑んだ,亀次郎という人物の情熱や信念を鮮やかに浮かび上がらせている。本作は沖縄史そして現代日本史の貴重な記録ともなっている。

(奥村賢)

文化記録映画優秀賞

『Ryuichi Sakamoto: CODA』SKMTDOC, LLC

ポップ・ミュージックの若き旗手として世に現れ,映画音楽での世界的な活躍を経て,発言する芸術家の顔も持ちながら遂には「音」自体の探求に至った坂本龍一の思考の道のりを,緻密な音響設計のもとで豊穣に示した作品である。インタビューと過去のフッテージを基本とした端正な作りの中に,音楽家と撮影者との相互信頼もはっきり感じられ,天才神話に彩られがちな坂本龍一のリラックスした素顔も引き出している。

(岡田秀則)

※()内は執筆した選考委員名

映画功労部門

佐藤 政義(さとう まさよし)

宮大工見習いとして修業の後,昭和49 年国松建設株式会社に入社し,映画大道具係として東映京都撮影所で撮影される数多くの作品に参加してきた。特に時代劇において卓越した技術力と指導力を発揮し,ダイナミックかつ精緻で絢爛たる映像美術の製作に貢献した。その後,同社の映画装置責任者として現在に至る。主な作品に,『鬼龍院花子の生涯』(昭57,五社英雄監督)『千年の恋ひかる源氏物語』(平13,堀川とんこう監督)『るろうに剣心』(平24,大友啓史監督)『利休にたずねよ』(平25,田中光敏監督)『花戦さ』(平29,篠原哲雄監督)など。宮大工の修業で得た貴重な知識と技術から生み出される仕事は高く評価されており,後進の指導や技術の継承に努めている功績も大きい。

瀬川 徹夫(せがわ てつお)

昭和39年アオイスタジオ株式会社に入社し,スタジオ録音に従事。『東京オリンピック』『札幌オリンピック』などに録音スタッフとして参加し,吉田喜重監督『煉獄エロイカ』(昭45)で映画録音技師デビューした。昭和54年同社を退社,自ら設立した録音スタジオDigital Sound Design EURIKAを経て,フリー映画録音技師として活躍し,現在に至る。実相寺昭雄監督『帝都物語』(昭63),勅使河原宏監督『豪姫』(平4),篠田正浩監督『写楽』(平7)『梟の城』(平11)『スパイゾルゲ』(平15),三谷幸喜監督『ラヂオの時間』(平9)『清須会議』(平25)など100本以上の作品を担当し,毎日映画コンクール,日本アカデミー賞,日本映画技術賞などで受賞している。早くからデジタルベースの映画録音に取り組み,音作りや音響技術の研究も行い,著作も多数。城西国大学の客員教授も務め,後進の育成にも尽力しており,分野への貢献は多大である。

瀬山 武司(せやま たけし)

昭和39年よりフリーの編集者に師事し,日本アニメーション株式会社を経て,平成4年に有限会社瀬山編集室を設立し,現在に至る。昭和49年にテレビアニメーション「アルプスの少女ハイジ」でアニメーション編集に携わって以来,永年にわたり数多くのテレビアニメ,アニメーション映画を手がけてきた。特にスタジオジブリ作品においては欠かせないスタッフの一人として,『天空の城ラピュタ』(昭61)『となりのトトロ』(昭63)『火垂るの墓』(昭63)『魔女の宅急便』(平1)『紅の豚』(平4)『もののけ姫』(平9)『借りぐらしのアリエッティ』(平22)『風立ちぬ』(平25)など,多くの作品で編集を担当している。他の主な作品に,『東京ゴッドファーザーズ』(平15)『スチームボーイ』(平16)『パプリカ』(平18)など。質の高い作品にまとめ上げる技術力,構築力が高く評価されており,編集技術の向上に貢献した。後進の育成に尽力している功績も大きい。

牧野 守(まきの まもる)

永年にわたり,映画に関する様々な文献資料を収集して膨大なコレクションを築き,日本映画史を主に書誌学,文献史の立場から研究した。昭和50年代から映画資料の収集・調査に取り組み,書籍から映画プログラム,チラシ,プレスシートなどまで,映画に関連した刊行物・印刷物を発掘,収集して多くの資料を散逸から救った功績は大きい。それらの所蔵する文献は「マキノ・コレクション」として知られており,国内外の他の研究者にも開放したことで,資料の体系的な整理が進み,日本映画の研究を促し,後進を育てたことでも,分野に多大な貢献をした。主な著作に,「日本映画検閲史」(パンドラ,平15),「映画学の道しるべ An Approach to Film Studies in Japan」(文生書院,平23)など。

丸池 納(まるいけ おさめ)

昭和47年日活撮影所の契約撮影助手となり,姫田真佐久カメラマンに師事,昭和49年に日活撮影所撮影部に入社した。その後フリーとなり,『ウホッホ探検隊』(昭61,根岸吉太郎監督)で撮影監督としてデビューし,現在に至る。『怪盗ルビイ』(昭63,和田誠監督),『ノーライフキング』(平1,市川準監督),『眠る男』(平8,小栗康平監督),『絆-きずな-』(平10,根岸吉太郎監督),『ミッドナイト・バス』(平29,竹下昌男監督)など多くの映画を担当して,作品の完成度を高めることに寄与してきた。平成20年には日中合作映画『さくらんぼ-母ときた道』(張加貝監督)も手がけている。平成5年より多摩美術大学非常勤講師,平成19年より桜美林大学准教授も務め,新しい才能を育てることにも力を注いできた功績も大きい。

山本 逸美(やまもと いつみ)

昭和47年株式会社映広に入社し,永年にわたり映画,テレビの録音,整音,選曲等に従事してきた。同社を退職後もフリーとして活動している。テレビシリーズの選曲や整音のほか,『理由』(平16),『転校生-さよならあなた-』(平19),『この空の花-長岡花火物語』(平24),『野のなななのか』(平26)など,多くの大林宣彦監督作品で音響設計を手がけている。平成29年の大林監督作品『花筐/HANAGATAMI』では整音を担当して手腕を発揮,作品に大きく寄与した。協同組合日本映画・テレビ録音協会の理事として協会誌の出版に尽力しており,若手録音技術者の指導にあたっている功績も大きい。

<参考>平成30年度文化庁映画賞選考委員

【文化記録映画部門】

岡田秀則
国立映画アーカイブ主任研究員
奥村
明星大学デザイン学部教授
谷川建司
早稲田大学政治経済学術院客員教授/映画ジャーナリスト
村山英世
一般社団法人記録映画保存センター事務局長
山内隆治
東京大学学術支援専門員
山田顕喜
日本大学大学院芸術学研究科非常勤講師(元日本大学芸術学部教授/元日本映画テレビ技術協会理事)
山名
フリー(すかがわ国際短編映画祭実行委員)

【映画功労部門】

芦澤明子
映画キャメラマン
小出正志
東京造形大学教授/日本アニメーション学会学長
新藤次郎
株式会社近代映画協会代表取締役社長
中嶋清美
公益社団法人映像文化製作者連盟理事・事務局長
野村正昭
映画評論家

(敬称略・氏名50音順)

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