資料4 第1回企画調査会

文化審議会文化財分科会企画調査会における調査事項について

1.設置の趣旨

 現在の我が国の文化財保護制度は、昭和25年に施行された文化財保護法を基本として、これまで、社会構造や国民の意識の変化を反映して、保護対象の拡大と保護手法の多様化を図ってきた。
 最近では、平成13年の文化審議会文化財分科会企画調査会「文化財の保存・活用の新たな展開」(審議の報告)を受けて、平成16年に新たに文化的景観等を保護の対象とするなど、文化財保護制度の充実が図られたところである。
 しかしながら、平成18年6月の「高松塚古墳取合部天井の崩落止工事及び石室西壁の損傷事故に関する調査報告書」において文化財の総合的な保護体系の確立の必要性が指摘されているように、文化財を単体ではなく総体的にとらえる視点が必ずしも十分ではない。
 また、文化財を将来へ保存・継承していくためには、文化財保護に対する国民の幅広い理解と参加を得ることが重要であるが、様々な分野における行政と民間との連携の必要性、地域における文化財を生かしたまちづくり等の重要性が高まっている現在、その視点はますます不可欠なものとなっている。
 企画調査会においては、現在の文化財保護行政における上記のような課題に対応し、今後の文化財の保存・活用をより充実させるために必要な方策を検討するものである。

2.検討課題

 上記の趣旨を踏まえ、本企画調査会において検討すべき課題として、以下のようなものが挙げられる。

(1) 文化財の総合的な保護を行うための方策の検討

 平成6年の文化財保護企画特別委員会、平成13年の企画調査会の報告書のいずれにおいても、従来のような文化財の分野別の保護手法に加え、分野の枠を超えた文化財の総合的な保存・活用の必要性や、周辺環境を含めた保護の必要性が指摘されているが、施策として具体化されていない。
 また、最近の世界文化遺産登録の傾向として歴史的・文化的・自然的主題を背景として相互に緊密な関連性を持つ複数の文化財を総合的に捉えた上で、その周辺環境も含めて保護を図る手法が国際的に広がりを見せる中、我が国の文化財保護制度においても、上記の視点に立った保護措置を講ずる必要があると考えられる。

(2) 国民の文化財保護への理解と参加を促進するための方策の検討

 貴重な文化財を未来へ守り伝えていくためには、国や地方公共団体の施策に加えて、様々な分野において文化財保護に関わりを持つ人や団体を増やす必要がある。そのためには、国民一人ひとりが、文化財を共有の財産として認識し共に保護を図っていこうとする意識の醸成が不可欠となっている。
 その際、国、地方公共団体や関係者が行う文化財保護活動に対する国民の理解と協力を求めるということにとどまらず、個人、企業、NPO等が文化財保護の主体となり、行政がそれを支援するという仕組みや、官民が連携して文化財保護を共に担っていくという視点からの検討が必要である。

(3) その他(様々な分野との連携方策の検討等)

 地域振興、都市計画及び観光振興等の施策において文化財の重要性が高まる中、それらの施策との関わりの中で文化財保護を捉え、これと連携した保護措置を講ずることにより、継続的かつ効果的な保護が可能となってきている。その場合、文化財保護と、他の公益や関係者のニーズとのバランスにも配慮する必要がある。
 また、文化財の価値や魅力を高め、広める活用方策を様々な分野の関係者と連携しつつ検討するとともに、保存と活用のバランスについても慎重に検討し、不適切な活用による保存への弊害についてそれらの関係者の十分な理解を得るための方策も必要である。  なお、これらの検討課題に限らず、重要と思われる課題があれば、幅広く取り上げることとする。

3.考えられる論点

(1) 文化財の総合的な保護を行うための施策の検討

  • ○ 個々の文化財類型を越えた文化財の総合的な保護の在り方
  • ○ 文化財の周辺環境も含めた総合的な保護の在り方

(2) 国民の文化財保護への理解と参加を促進するための施策の検討

  • ○ 個人・企業・NPO等の支援・参画を促進するための方策
  • ○ 文化財保護における官民の連携方策
  • ○ 文化財についての情報発信のための方策

(3) その他

  • ○ 様々な分野との連携方策の検討
    (地域振興、都市計画、観光振興等の各種施策との連携による文化財保護の在り方)

その他、議論を踏まえて論点を追加

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