資料3 第2回企画調査会

文化財の保存・活用の新たな展開-文化遺産を未来に生かすために
(H13.11.16企画調査会報告)のフォローアップについて

○ 国、地方公共団体及び民間の役割分担の考え方

国は、地方公共団体が地域にとって重要な文化財を保存・活用する取組を促すための支援を行うことが重要
文化財の保存・活用の推進に当たっては、専門的機関における専門性を生かすことや、国民一人一人の参加を促すことが必要

⇒(取組状況)

地方公共団体に対し、文化財保護法の意見具申制度(法第189条)を活用して、国で指定・登録することが適当と思われる重要な文化財の候補について、国に情報提供することが出来る旨、地方公共団体に対して通知。(平成17年4月)
NPO等による文化財の管理・活用に関するモデル事業を行うとともに、今後、文化財保護の基礎知識をまとめたマニュアルを作成。(平成18年度~:「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」)

○ 国に今後期待される役割

(1) 国としての文化財の保存・活用の充実
   重要な文化財について必要な規制と助成措置を的確に講じ、その保存・活用が適切に行われるよう努める責任がある
(2) 専門的立場からの支援
   地方公共団体等による文化財の保存・活用や、人材養成等の取組に対して、専門的・技術的立場からの支援を行うことが必要
(3) 先進的な取組の推進
   地方公共団体等における先進事例を収集・公開するなど保存・活用のモデルの提供に努めることが必要
(4) 普及・啓発の推進
   文化財の意義や文化財保護制度の役割についての幅広い普及・啓発活動を行うことが必要

⇒(取組状況)

文化財の適切な保存管理とその活用を図るため、各種国庫補助事業を実施。
文化財行政の向上のため、地方公共団体等で文化財行政に携わる者に研修を実施。
文化財建造物の「活用事例集」(第2集:平成16年3月)、「史跡等整備のてびき」(平成16年3月)等の作成。
有形、無形の文化遺産をインターネット上で鑑賞できる「文化遺産オンライン」を公開。(平成15年度~)

○ 地方公共団体に今後期待される役割

(1) 地域ごとの文化財保護の取組の充実
   地域に根ざした文化遺産について価値を見出していくとともに、地域の財産として継承する取組の充実が必要
(2) 体制の充実
   各文化財分野の専門職員の充実、文化財保護指導委員による巡視制度の充実、住民の積極的参加の促進が重要

⇒(取組状況)

引き続き、地方公共団体において、地域に根ざした文化財を継承するともに、そのための体制の充実が必要。

○ 民間等の活動の活性化

NPO等と積極的な連携を図るとともに、NPO等が活動しやすい環境づくりに努めることが必要
民間資金を集めやすくするための環境づくりに努めることが必要

⇒(取組状況)

NPO等による文化財の管理・活用に関するモデル事業を行うとともに、今後、文化財保護の基礎知識をまとめたマニュアルを作成。(平成18年度~:「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」)<再掲>
文化財保護を目的とする特定公益増進法人を対象とした個人からの寄付につき、当該寄付金額が個人の所得から控除される特例について拡充。
 
控除される金額の上限を所得の25%→30%(平成17年4月1日~)
控除される金額の下限を1万円→5千円(平成18年4月1日~)

○ 文化財に関する専門的機関との連携

人材養成面で大学との積極的な連携協力を図ることが必要

⇒(取組状況)

文化財研究所において東京藝術大学、京都大学、奈良女子大学との間で連携大学院教育を実施。

○ 文化財に関する国際交流・国際協力

文化財を通じた国際交流・国際協力は、文化財に関する専門的機関や民間、地方公共団体との連携を図りながら推進することが必要

⇒(取組状況)

文化遺産保護の動機を共有する機関や個人等の幅広い結集を図り、協調的・連携的な国際協力のための共通基盤を確立するための「文化遺産国際協力コンソーシアム」を設立(平成18年6月)

○ 保存と公開・活用のバランスの在り方

公開・活用を促進するに当たっては、文化財の類型毎の特徴に応じて、保存にもたらす影響について認識した上で、どこまで公開・活用が可能かについて慎重に検討することが必要
適切な公開・活用が行われている文化財について、評価する制度を検討することが必要

⇒(取組状況)

個別具体的に適切な公開・活用を行うよう指導がなされているところであり、優れた公開・活用が行われている文化財については、文化財建造物の「活用事例集」(第2集:平成16年3月)、「史跡等整備のてびき」(平成16年3月)等において事例紹介を行っている。<再掲>

○ 文化財の性質や人々の興味関心に応じた多様な公開・活用の在り方

文化財の多様な公開・活用を促進するため、先進的な取組の紹介・顕彰、望ましい公開・活用のためのパイロット事業の実施が必要
適切な公開・活用が行われている文化財について、評価する制度を検討することが必要

⇒(取組状況)

文化財建造物の「活用事例集」(第2集:平成16年3月)、「史跡等整備のてびき」(平成16年3月)等の作成。<再掲>
文化的景観の保存・活用の在り方を検討する「文化的景観保存活用事業」(モデル事業)を実施(平成16年度、平成17年度)
「全国の博物館・美術館等における収蔵品デジタル・アーカイブ化に関する調査・研究事業」を実施(平成16年度~)<再掲>

○ ITを活用する等の多様な手法による公開・活用の工夫

(1) ITの活用
  最先端の科学技術を活用した公開・活用の工夫が必要
(2) 記録映像等の活用
  無形の文化財の映像記録等の体系的な公開・活用が必要

⇒(取組状況)

有形、無形の文化遺産をインターネット上で鑑賞できる「文化遺産オンライン」を公開。(平成15年度~)<再掲>
「重要無形文化財記録映画」等の作成(昭和46年度~)・「工芸技術記録映画上映会」による公開(平成15年度~)

○ 文化財を生かした地域づくり

魅力ある地域づくりを推進する上での文化財の果たす役割を認識するとともに、文化財を活用した地域づくりを推進することが必要

⇒(取組状況)

地域の歴史や文化、自然に触れ、理解を深めることを目的として、史跡等の総合的な整備を行う地方公共団体の事業に対し国庫補助を実施(平成15年度~:「史跡等総合整備活用推進事業」)
地域主導による歴史的遺産・伝統文化を活用した地域の活性化を図る「地域文化財・歴史遺産活用事業(地域活性化事業債)」を実施(平成14年度~)
「ふるさと文化再興事業」(平成13年度~)の実施

○ 美術館・博物館等の文化施設における公開・展示の工夫

美術館・博物館等の文化施設については、学校教育と積極的に連携することが必要
文化財と人々をつなぐ重要な拠点としての役割を果たすためには、その体制の充実を図ることが必要

⇒(取組状況)

学校の教員との教材の共同開発等、学校教育との連携も図る「芸術拠点形成事業」を実施。(平成14年度~)
独立行政法人国立美術館において、「美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修」を実施。(平成18年度~)

○ 文化財の保存の在り方

(1) 有形の文化財の保存の在り方
有形の文化財の保存については、その性質に応じたきめ細かな対応が必要
埋蔵文化財の発掘調査等の体制の充実が必要
(2) 無形の文化財及び文化財の保存技術の保存の在り方
重要無形文化財保持者制度の見直しが必要
無形の民俗文化財についての記録作成の促進が必要
伝統工芸技術、文化財の保存技術について、国民に対して周知し、理解を深めることが必要

⇒(取組状況)

「行政目的で行う埋蔵文化財の調査についての標準」(平成16年10月)を策定
地方公共団体等が行う無形民俗文化財の記録作成、映像製作等に対し、国庫補助を実施。(平成11年度~)
「工芸技術記録映画上映会」(平成15年度~)の開催

○ 文化財に携わる人材の確保と養成

(1) 地方公共団体等における人材の確保と養成
  地方公共団体における人材の配置の促進と資質の向上が必要
(2) 幅広い人材の育成
  地域において文化財の保存・活用に携わっていく幅広い人材の育成が必要

⇒(取組状況)

文化財行政の向上のため、地方公共団体等で文化財行政に携わる者に研修を実施。
NPO等による文化財の管理・活用に関するモデル事業を行うとともに、今後、文化財保護の基礎知識をまとめたマニュアルを作成。(平成18年度~:「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」)<再掲>

○ 新たな課題

(1) 文化財の周辺環境
   文化財のよりよい保存のためには、文化財の周辺環境を含めて面的に把握した上で保護することが必要
(2) 文化的景観
   人と自然との関わりの中で作り出された文化的景観について保護を図ることが必要
(3) 近代の文化遺産
   近代の科学・産業遺産についても文化遺産としてとらえ保護を図ることが必要であるとともに、近代の生活用具等の民俗文化財についても保護を図ることについて検討が必要
(4) 総合的な把握
   相互の関連性を有する文化財についてはその総体を一括して把握し保護の対象とすることについて検討が必要
(5) 緩やかな保護手法の導入
   建造物以外の文化財への登録制度の導入について検討が必要

⇒(取組状況)

下記のとおり文化財保護法の一部改正を行った(平成17年度より施行)

「文化的景観」への対応として、人と自然の関わりの中で作り出されてきた文化的景観を新たに保護の対象とした
「近代の文化遺産」「緩やかな保護手法の導入」への対応として、近代の文化財等を保護するため建造物以外の有形の文化財にも登録制度を拡充
「総合的な把握」については、既存制度の中で、美術工芸品について、絵巻物や陶磁器等の一連の作品をまとめて重要文化財として指定・登録を行うこと、建造物について、建造物と一体として価値をなしている土地を合わせて指定すること等を推進している。
「文化財の周辺環境」については、他省庁の施策との連携も含め検討が必要。

○ 文化遺産の保存・活用への新たな取組

NPO等の民間団体の活動や、国民一人一人の取組を促しながら、参加型の保存活用を推進することが必要

⇒(取組状況)

NPO等による文化財の管理・活用に関するモデル事業を行うとともに、今後、文化財保護の基礎知識をまとめたマニュアルを作成。(平成18年度~:「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」)<再掲>

○ 人々の文化遺産への理解と愛情を深める取組

地域の人々、老若男女すべてが生涯を通じて文化遺産に親しむ機会を提供するとともに、人々の文化遺産への理解と愛情を深めるための取組を推進することが必要

⇒(取組状況)

「文化財保護強調週間」(昭和29年度~)、「文化財防火デー」(昭和29年度~)、「登録の日」(平成17年度~)の制定
古道を歩き、周辺の文化財にふれることによって地域の歴史文化を理解すること等を目的とした「歩き・み・ふれる歴史の道」事業を実施。(平成5年度~)

○ 子どもたちに文化遺産を大切にする意識を育む取組

子どもたちに、文化遺産への理解と愛情をもって成長するよう働きかけていくことが重要

⇒(取組状況)

子どもたちに対し、伝統文化を計画的、継続的に体験・修得できる機会を提供する「伝統文化こども教室」事業を実施(平成15年度~)
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