資料5 第4回企画調査会

文化審議会文化財分科会企画調査会(第1〜3回)における主な意見(案)

1.文化財の総合的な把握を行うための施策

(1)全体的な視点

  • これまでの審議会で出された方向性を踏まえ具体策につなげていくことが必要
  • 総合的な把握の必要性がこれまで提言されてきたが実現していないことについて,何がネックとなったのか,どのような方策があり得るかについて検証を行うことが必要(第2回で検証)
  • 各分野の文化財の連携・知識の共有の不十分さは,組織体制とともに文化財保護の体系そのものについても問題
  • 様々な文化財を幅広く見るための専門家が必要
    (特に地方自治体では埋蔵文化財以外の専門家が少なく,それ以外の専門家を増やすことが望ましい)
  • 専門調査会の横の連携が必要
  • 予算・税制面での措置などのメリットを付与することが必要
  • 地方自治体や所有者からの申出により行うことも考えるべき
  • 高松塚と同様の問題が起こり得るものについて調査・フォローが必要
  • 世界文化遺産を増やしていくことも総合的な把握の一つの手段ではないか
  • 文化遺産全体を地域文化として捉える考え方の定着が必要。個々のものとして捉えられているから市民の間に定着していかない
  • 総合的な把握を考える際に,場の設定,対象物を固定しようとすると難しい。人というものを介するということが必要ではないか
  • 平成13年の企画調査会の際に,「既指定物件の中に,総合的把握になじむものが相当あるので,まずこうしたものを整理しながら取り組んでいくことが重要」という提言があるが,事務局の方から,今すぐできるものはこのようなものであるという例を出してほしい
  • 世界遺産暫定一覧表に追加記載すべき文化資産として提出された提案書のうち,記載されない提案書を何か新しいコンセプトをつくりあげて,フォローできる仕組みができないか
  • 現行の文化財保護法の体系を変更するのではなく,世界文化遺産暫定リストを上手に使いこなせないか
  • 街道のような線的な遺産も保護できるのではないか
  • 負の遺産(戦争遺産)についても議論する必要があるのではないか
  • 都市計画に組み込みやすいように重要伝統的建造物群保存地区の登録版があってもいいのではないか

(2)既存の制度の枠組みの改善

  • 重複指定の場合の考え方
  • 重複指定における,各文化財における保存の理念や手法の考え方の違いの整理が必要

(3)新たな仕組みの構築

[1]複数の文化財を総体として保護しようとする施策

  • 伝統的建造物群保存地区と民俗文化財を合わせた指定(地域の産業も残っており,地域振興にもつながる)
  • 無形民俗文化財と有形民俗文化財を一括した指定
    ex.祭りとその用具等を一括して指定
  • シリーズとしての文化財を一括した指定
    ex.全国にある祇園祭を一括して指定
  • あるストーリーのもとに関連する文化財を総体として認め,新たな登録制度のようなものができないか
    ex.四国八十八箇所の遍路の文化と,それを接待する文化
  • 最終的な成果品まで含めた指定
    ex.工場,工作機械,製品を一括して指定
  • 都市計画マスタープランと対をなす歴史文化マスタープランを制定できないか
  • 歴史と文化をいかして都市を組み立てていこうという意欲のあるところを歴史文化都市として指定し,応援してはどうか

[2]文化財の周辺環境を含めた保護

  • 政府内の都市行政の分野でも文化財保護の観点からの施策を行うことが必要ではないか
  • 史跡の整備についても都市計画の中に位置づけることが必要
  • 地域一帯を景観として保護すべきという考え方を推進していくべき
  • 地方と都市では,景観保護の難しさについてかなり違いがある
  • 文化財保護法に規定されている環境保全制度で対応できると考えられる
  • 文化財集中地区のような新たに面的な地区を構築することが考えられる
  • 緩衝地帯として守るための標準を示し,地方公共団体が条例を制定することや,文化財保護法で指定文化財の周辺の一定範囲を機械的に緩衝地帯として規制することが考えられる
  • 周辺環境も含めて文化財として指定することが考えられる
  • 指定された文化財について,周辺環境も含めた保存管理計画を策定することが考えられる
  • 都市計画の中で,文化財の周りを特定用途制限地域に定め特定用途をかけていくことが考えられる
  • 景観法による景観計画で指定文化財の周辺を保護することが考えられる

2.国民の文化財保護への理解と参加を促進するための施策

  • 時間をかけて,国民が文化財保護を重要と感じる思想を育てていくことの必要性
  • 文化財の裾野に対する支援(ボトムアップ型の文化財保護の仕組み)
  • 国指定,地方指定という序列のみではなく,地域において,重要な文化財としてリストアップされたものについて評価することが必要
  • 地域主導で,活用のための資産のインベントリー化を行う事が必要
  • 文化財を観光資源としてのみとらえるのではなく,住民がどのように活用できるかが大切
  • 大規模な整備を行いながら,活用がなされなくなっている史跡公園等について,分析が必要
  • 国が指定するものと,地域が大切と思うものの住み分けが必要。今まで国は,予算が少ない中で優品主義を取ってきて,それが地方に広がっていったが,今では地方の取組も変わってきている。このような中で,国がどのように関わっていくのかが課題
  • 地域,文化財所有者からの声を取り入れる保護手法の多様化が必要
  • 地方は国と違った観点からの指定ができるという意味での,国と地方との役割分担が必要
  • 国と地方の審議会委員との交流が必要
  • 文化財保護に携わる人材の拡大
  • 身近な文化財を保護するための人材の育成が必要
  • 文化財を核とした地域づくり・まちづくりの重要性が増している中,保存のための措置に加えて,活用のためのマネジメントについても人材育成も含めて検討していくことが重要
  • 住民の中より専門的な能力を持った人を養成し,受入先団体へ派遣する仕組みが有効(EX.兵庫県の「ヘリテージマネージャー」の取組)
  • 退職後の団塊の世代(アクティブシニア)にインセンティブを与え,ボランティア等で文化財保護に参加してもらうことが必要
  • 今の文化財保護行政の中では,文化財保護のための人材育成まで取り組むのは難しいため,自治体で主体的に進め,国が関与すべきものがあれば検討することが必要
  • 伝統的な技術に対する支援
  • 失われていく技術をビジネスに取り入れて生かしていく取組
  • 文化財保護における普及啓発活動や広報の改善
  • ホームページや文化遺産オンラインの国民への周知
  • 広報のための予算の増額が必要
    (企業では電車のモニターでの広告や,イベントへの有名人の起用などで大きな効果が得られている)
  • 文化財を地域づくりに役立てられるよう,文化財保護に関する情報を一元的に提供する仕組みが必要
  • 官官連携の必要性
  • 自治体と国が連携し国民の文化財保護への理解を促進することが必要
  • 国が自治体同士の連携を促進することが必要

3.様々な分野との連携方策

  • 他省庁の施策との連携が必要
  • 屋外広告物の規制強化を行い景観を保全すべきではないか
    ex.道路標識,案内標識等の小型化
  • 文化財の保護と地域振興・観光振興をバランス良く行うことが必要(世界遺産登録はポジティブな面だけでなく,治安の悪化や昔からの生活文化の変化というネガティブな面も持っている)
  • 文化財に関する他分野との連携については,文化庁が中心となって指針等を示すべきでないか

4.その他

[1]既存制度の改善

  • 無形文化財の課題
  • 重要無形文化財保持者が栄誉,名誉職のように受け止められつつある中,伝統の継承の担い手であるという本来の役割をもう一度見直すべき
  • 無形文化財,無形の民俗文化財における登録制度の創設の検討
  • 指定物件の再調査の必要性
  • 指定数を増やすのみではなく,指定分野の再編成を行うことも必要
  • 民俗文化財については,現場では既に失われているものもあり,再調査・再指定も必要

[2]その他

  • 現場と行政(県,市)との意識のギャップの改善
  • 保存と活用の在り方における意識の差の問題
  • 自治体における文化財補助金が一部経済振興として捉えられつつあることの問題
  • 文化財(美術工芸品)の取扱いにおける責任意識の低下の問題
  • 文化財保存修理の質の低下の問題
  • 文化財保存修理への一般入札制度の導入による質の低下
  • 修理において必要な材料や技術等についての指針の作成の必要性
  • 「文化資本」の概念の構築
  • 現在の文化財保護法は保護のための手段が中心となっているが,文化資本としての理念を法文化した文化財基本法の制定が必要
  • 文化財やそれを支える組織が公共投資に値すべき重要な文化資本であることを文化庁が積極的に打ち出していくべき
  • 文化財保護についての高等教育機関での人材育成も必要
  • 文化的なものの標識の色を統一すれば,文化遺産の案内システムを構築することにつながる

5.全体的な視点

  • 文化財保護において,国が直轄で保護するもの,自治体が保護するもの,国が情報センターの役割を担うものの整理が必要
  • 現行制度は長い歴史のもとに培われてきたものであり,性急に結論を求めて変革を行うのは問題。現行制度のプラス面は評価しつつ,慎重に議論を積み重ねることが必要
  • 海外の文化遺産の保護制度との比較を行いながら,現制度を検証することが必要
  • 文化財保護行政の組織の再編ともリンクする問題であり,組織の再編についても企画調査会でフォローすることが必要
  • 伝統的な技術など,長い歴史をかけて「紡がれてきた」文化が失われつつあることの問題
  • 「文化資本」の概念の創設や文化財保護についての思想の育成のような中長期的な課題も念頭に置きつつ,短期的な課題について考えていくべき
  • 「都市計画」との関連においては他省庁の担当者を,「まちづくり」については,地域の担当者を呼ぶなどして検討すべき
  • 地域再生が重要な課題となっていること等の理由により,平成13年の報告と比べて,文化財の活用の比重が増してきている。文化財の活用の在り方について,今後も議論を重ねていくことが必要
  • 文化財保護法は目的を特化している法律なので,分野を超えた,大きな大綱として示すような法律が必要でないか
  • 文化財の保護手法のみではなく,文化財の普遍概念の構築を行うべきではないか。ほかの分野と比較して文化財は大切であるという点を説明できるよう,地域振興,学術研究との関係などから理論武装を行う必要がある
  • 文化財にストーリー性を持たせることで,戦争遺産等の負の遺産も日本的な遺産としてプラスの評価をしていくことも考えられる
  • 韓国の文化財保護においては,古いものをそのまま守ろうとするのではなく,古いものを組み合わせて再生・創造していこうとする柔軟性がある。我が国もそのような考え方を取り入れてはどうか
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