参考資料2 第8回企画調査会

第5,6回企画調査会における骨子案への主な意見について

1.「Ⅰ.はじめに」について

  • 高みに立って文化財の意義について述べるのではなく,住民の視点から入っていく表現にすべき。
  • 歴史文化的な遺産というものの中に代表されるものとして文化財があるのではないか。市民の視点から言えば,地域の歴史や知恵をどう継承していくのかというストーリーが基本になるのであって,はじめから対象を文化財に絞って考えるのは適当ではない。
  • 日本固有の文化財を強調するのみではなく,日本の文化は海外との交流の中で育て上げられてきた点をうたうべき。
  • 日本には,地方による多様な文化が大変豊かにあるということを誇りにしないといけない。

2.「Ⅱ.文化財の総合的な把握について」について

[1]「文化財保護マスタープラン(仮称)の策定」について

  • マスタープランの対象は指定された文化財のみではなく,歴史・文化の視点からのトータルな地域環境を対象とし,コアになる文化財のほかに様々な文化的資産を入れた構想とすべき。(「文化財保護マスタープラン」という名称も指定文化財だけを対象とするもののように受け取られがちであるので改めるべき。)
  • マスタープランと都市計画等のほかの法定計画との連携をとるようにすべき。(都市計画の運用のための指導的文書の中で文化財保護のマスタープランとの整合性を求める等)
  • 指定文化財の保護に影響を与える周辺環境についてマスタープランの中に位置づける形で保全を図っていくことも考えられる。
  • マスタープランの作成を最初から義務化することは難しいが,マスタープランに基づく歴史文化地区やバッファゾーンの設定等の仕組みの使い勝手がよければ,作成する自治体も増えるだろう。また,歴史文化地区として地方公共団体が提案したものに対して国が認定する仕組みが自治体にとって魅力的なものになれば更に増えるのではないか。
  • 様々なストーリーを書き込んでいき,魅力的なものを引き出せる仕組みにしていけばいいのではないか
  • 法律上,制度上どのような位置づけにするのか。文化財保護法の枠組みの中での話にするのか,それとも政府全体の政策として義務づけるような仕組みにするのかがポイント。
  • 景観行政団体となり,計画を策定したところには様々な支援措置を講ずるといったような景観法のボトムアップ型を支援する枠組みをまねればいいのではないか。また,景観法や都市計画法の枠組みを活用してそれらの計画の中に文化財的な観点を埋め込んでいくことも考えられる。
  • 自治体をまたがってマスタープランの作成,歴史文化地区の設定を行う場合にも対応できる仕組みとすべき。
  • 実現のためには,異なる分野の文化財,文化財保護と関連する分野の施策についてコーディネートできる人材が文化庁及び自治体の中に必要。

[2]「歴史文化地区(仮称)の選定」について

  • 地区という空間的な範囲にとらわれず,動産も含めてネットワークとして捉える概念にできないか。
  • エリアとして捉えるものと,動産や無形の文化財も含めてグループとして捉えるものを両方含んだ制度とすべき。
  • 歴史文化地区を文化財の第7の類型として捉えるのか,一定エリアにいろいろな文化財が集まっている状態そのものを指して保全措置を講じようとするのかが明確でない。
  • 無形の文化財(主に無形の民俗文化財)についても対象となることを強調すべき。
  • 「歴史文化」の名称は検討が必要。「伝統文化」の用語を活用するべき。

[3]その他

  • データベースについてはイメージの明確化が必要。国や地方の指定・登録文化財のデータベースなのか,史跡地図のようなマッピングのようなものなのか,オーストリアやドイツで行っているようなインベントリーのようなものなのか。
  • 総合的な把握のための調査研究の重要性についても強調すべき。
  • 世界遺産暫定リストに追加記載すべき文化資産として地方公共団体から提案されたもので暫定リストに記載されないものについては,どのようにフォローしていくのか。

3.「Ⅲ.国民の文化財保護への理解と参加のための方策について」について

○全体的なことについて

  • 国民が主役とわかるように,タイトルを「文化財又は文化遺産の国民による継承を促進する施策とはいかにあるべきか」に変更してはどうか。
  • 文化財は貴重なものであるという前提では説得力のある報告書にならない。文化財に触れることでアイデンティティの確立,歴史との対話ができ,その中で歴史の知恵を学ぶことができる。また,芸術性に触れることができ,感性を呼び覚ますことができるということを易しい言葉で伝える必要がある。
  • 文化財保護を考えるときは敷居を低くして,地域おこしにつながらない文化財保護は全く意味がないというくらい踏み込むべきである。
  • 国は枠組みを示して,実施は自治体,市民,地域に委ねるという視点を文化財保護政策の中でも考えていくべき。

○人材の育成・活用について

  • 人材の確保と参加のためのシステム作りが必要。専門家の知識と能力をどうやって担保するか,その人たちの職場をどのように確保するかが課題。文化財を活用する場での専門性をどう確保するかを提案の中に盛り込むべき。
  • 人材育成はマスタープランの注意書きではなく,一つの施策として格上げして欲しい。
  • 全国の教育委員会には埋蔵文化財の専門家は必ずいるが,建築等の専門家や無形の専門家も必要。
  • 次の世代に向けた専門家の養成が重要である。そのためにも子供たちが伝統的な文化や文化財に親しむ機会を増やすことは大事である。
  • 文化をつないでいくためには,総合的に次世代へ伝えていかないといけないので,手渡していくように少しずつ,しかし確実に伝えていく姿勢が大切。
  • 専門家の人材育成と同時に,文化財の価値をわかりやすく説明するインタープリターの養成も必要。また,文化財に関しては素人であるが,文化遺産や歴史ある町が好きだという市民の気持ちを文化財保護にどのようにいかしていくのかがポイント。

○観光等における活用

  • 観光客を遺産の価値に触れさせて啓発することで,経済的な負担もある程度担ってもらうことが必要。
  • 観光客の要望と文化財としての価値の持続との両立が重要。
  • 観光振興があらゆる分野を横断的に扱われているが,文化をいかした観光に対しては,文化庁が指針を示すことが必要。そのような意味でも,文化財保護のマスタープランの構想を打ち出すのは今が重要なタイミングである。
  • ほかの地方を訪れた場合,人々は文化財だけではなく,そこでの暮らしや地元の食べ物などの地域の伝統や文化も求めており,そういったものと併せて発信することが重要。
  • 文化財の活用においてモデルとなる成功事例を生み出さないといけない。

○文化財保護に対する支援の充実

  • 地域のために貢献したいと考えている市民に対し,経済的な負担を担ってもらう枠組み作りを検討することが必要。
  • 無形文化財が成り立つためには,工芸品を購入したり,劇場へ足を運ぶ消費者の存在が重要。
  • 文化財の価値に対して適正な対価を払うことにより,文化財の保存と活用を適切に循環させていくという視点を入れていくことも必要。(スペインのパラドールのように,世界遺産を国が買い取って高級なホテルにし,その利益で遺産の保存を図る取組が成功している例もある)
  • 企業がメセナ活動を行うときには,支援した公演にどれだけ人が入ったのかを重視する。このため,企業を文化財の保護活動に取り込むには,行政も市民に関心を示してもらう施策を行っていくことが大事。
  • 文化財の保存について,国ができる範囲は限られているので,そのような活動を行っている団体をいかに励ませるかが重要。

○国,地方,民間団体の役割分担,連携

  • 地方はそれぞれの地域の文化的独自性を発揮することで地域の活性化を行い,一方,国はそれらの普遍性を見いだし世界に発信する必要がある。
  • 国,地方公共団体,企業,NPO等が,それぞれの活動を行いながら,地域や文化財のためといった一つの目標のもと協力するような「グラウンドワーク」という手法を探していく必要があるのではないか。

○その他

  • 地域の博物館や美術館等の重要性について触れておくことが必要。既にあるそれらのものがもっと活性化されて,地域の人々との絡みの中でもっといかされる形をとらないといけない。
  • 広報について具体的な事例を入れていくべき。例えば,いろいろなビジネスモデルの時に登場する文化財保護大使や文化お姉さんみたいな人をつくることや,子供を主役にして広報を行うことなどが考えられるのではないか。
  • 無形文化のような場合だと,文化財保護とは何かというところもある程度必要なガイドラインを示しておかないと,関係者の中で混乱が生じる分野ではあるだろうと思う。
  • 無形の民俗文化財を考える際には,形を守っていくことは重要なことで,そのことにより心が寄り添うと考える人々を増やしていくことが必要。
ページの先頭に移動