資料2 第8回企画調査会

文化審議会 文化財分科会 企画調査会(第7回)

1 日時
平成19年6月27日(火)14:00〜17:00
2 場所
パレスホテル 3階 3-D会議室
3 出席者
(委員)
石森会長 永井会長代理 西田委員 西山委員 根木委員 平川委員 星委員 松場委員 村上委員 田中委員
(事務局)
高塩文化庁次長 亀井文化財鑑査官 有松伝統文化課長 山﨑美術学芸課長 岩本記念物課長 苅谷参事官,長屋文化財保護企画室長 その他関係官
4 議事等
[1]資料3に基づき,松場委員より事例発表が行われた。

事例発表:松場委員より「民間と文化財の関わりについて」

私は民間の立場で現場からの声として事例発表をさせていただきたい。
 阿部家という県指定文化財の家に7年間住んでいるが,その改修工事を例として挙げていく。資料表紙にキーワードを羅列しているので紹介の中で触れていきたい。
 私が住んでいる石見銀山大森町は小さな集落だが,ここが今世界遺産の暫定リストに挙がっている。昭和62年に重伝建に指定された。私が住んでいる阿部家は寛政元年に創建された家で,キーワード中に「適時の保護」との言葉を書いたが,タイムリーに保護していかないと改修はなかなか大変である。保護の時期をタイムリーにしていく必要があると思う。
 改修工事に当たっては,文化庁からすればいろいろ問題もあるかもしれないが,極力古材を利用し,あるものをいかし,ないものは作るという形で改修工事を行ってきた。改修前の阿部家の状況は,ここまでのものを直すのはどうかなと言われるほどの痛みようだった。改修中は現場での希望と御指導いただくことの食い違いもあった。ただ残せばいいのではなく,そこに暮らしがあって初めて建物はいかされる。生活の中で古いまま継続していくことは不可能だと思う。そして,私のものづくりのテーマである「復古創新」。古いものを復活させて新しく創造するというテーマを持っているが,そういうことが新しい伝統を作っていくのではないかと思っている。
 阿部家の改修工事で,1期工事・2期工事までの母屋と渡り廊下の部分は大がかりなこともあり補助金を頂いたが,3期工事・4期工事は自己負担で行った。自己負担でやるにしても指導が入り,大きな負担になる。例えば土蔵でも文化財の家であるため防火施設を設置するなど大きな費用がかかり苦労している。この土蔵修復までに約7年という年月がかかった。もう一つ土蔵が残っているので,約10年かけてこの家1軒を直すということになる。
 暮らしを伝えるという観点では,台所は近所の人が集まってきたり,海外から来た人や若い人たちが集まってきて料理をするなど,この場所を通して生活文化を伝えていければと思っている。崩壊がひどく残しても意味がないというところは,柱など構造上のものを残しながら,用途や内装を全く変えていった。また,できるだけその地にあるものを活用して,改修工事を行った。土蔵の床材や本棚は,廃校になり壊された小学校の床材や廃棄処分されたものを拾い集めて活用している。廃校になった小学校を1校買い,そこに材料をためておき,家を直すというときには材料を提供して,できるだけそういうものを活用して改修工事をすることを心がけている。
 交流としての活用ということで,ただ建物を復元するだけではなく,社員との交流,まちづくりで全国から訪ねてきてくださる方たちとの交流,また,海外から来られる方も多いためそういう方の滞在の場に使ってもらっている。今は全くのボランティアなので,いずれは良い形で費用も頂きながら活用できる方法を考えたいと思っている。だが,簡単に民宿やレストランにすることはできるが,この家の本当の活用というのはどういうことかと考えるとそういうことではないなと感じている。法律上,宿泊業の規制や,飲食業での規制がある。この家には先ほどの立派な台所があるが,倉庫を改装して保健所の許可が取れる厨房を作っており,そのために数百万という費用をかけた。そのあたりの規制がもっと緩やかになれば良いと思っている。
 最後に,ビジネスでDMを作るのだが,今回夏物のダイレクトメールに以下のようなことを書いた。「この道巾ならではの人の交わり 大切にしたい人間尺度 私のデザインは此処から生まれる」と。こういうものを一般の消費者に配付している。
 これまで計8軒の家を作ってきたが,以前西村幸夫委員から1冊の本を頂いた。それはイギリスのある片田舎で,町を愛する方が古い家を直し,住まい,たくさんの人が集まってきて,またその人に譲り,とうとう7軒の家を直したという事例が載った本だった。その当時,私の住む町は廃墟(はいきょ)と化した家が並ぶ町だったが,伝建地区に選定され今のような状況になっていく中で,何か私ができることはないかと考え,ビジネスを通して数件の民家の改修をしてきた。
 兵庫県豊岡市竹野町須野谷というところに限界集落と言われる16軒の民家が残る町があり,その地区の空き家の持ち主が3年前から須野谷に人が集まってきて楽しめるような運動を始め,私たちも応援している。大森町に住む彫刻家が作った鉄の彫刻の中に十六羅漢があるので,16軒の家の軒先に十六羅漢を配置して,住人と記念写真を撮ったり,町のあちこちに羅漢様を配置して展示を行い,町の交流をした。
 こういう廃墟(はいきょ)となっていく町や集落が全国にはたくさんあると思うが,交流しながら,何かしらいい形で蘇(よみがえ)るようなお手伝いができれば良いと考えている。

  1. [2]資料4に基づき,「企画調査会における骨子(案)への主な意見」について,前回出された意見を中心に事務局より説明がなされた。
  •  議論に先立って,今後のスケジュールをおおまかに把握しておく。本日の議論を事務局で取りまとめ,次回会議においておおまかな企画調査会としての中間まとめの成案を作成する。その後1か月間程度パブリックコメントに諮り,その意見を踏まえ,最終的なまとめ案を成案化していくというスケジュールを考えている。
  1. [3]資料5-1,5-2に基づき,「中間まとめ案」の審議が行われた。
  1. 第Ⅰ章「はじめに」と第Ⅱ章「企画調査会設置の趣旨と検討課題」について事務局より説明がなされ,以下のような議論が行われた。
  •  1ページの第4段落目で,地方分権の流れうんぬんという形で書いているが,「国民の社会規範に関する意識調査」を見ると,日本の誇りというのは長い歴史と伝統という形で述べられて,2番目が芸術と文化という形になっていたと思う。その2項目もグラフが右肩上がりでずっと伸びてきている。つまり,国民はこの数十年の間,きれいに右肩上がりで文化的な方向を指していることで,単純に地方分権の流れということではないと思う。それから,内閣府経済社会研究所(ESRI)の「幸福感」を調査したデータで,戦後,高度経済成長をして経済的に豊かになったのに,何で幸福を感じないかなどの分析を始めていて,そういう感覚が背景にないと,根本的に「文化財と伝統的な文化の価値が見直されつつある」というところとつながってこないのではないかと思うので,そこを少し足していただきたい。
  •  安倍政権で「美しい国づくり日本」と言われている。官邸にも美しい国づくり推進事務局ができているが,文化財保護ということも「美しい国づくり日本」に大いに資することだと思うので,「美しい国」というキャッチフレーズに関連するようなことを入れた方がいいのではないか。
  •  本報告では「文化財」ということを柱にしているが,一般的な理解がどうしても指定文化財という非常に狭義の意味にしかとらえられていないので,本報告では本来の文化財が持っている意義という意味では,歴史と文化を理解する上で必要な文化的所産すべてを指すという意味で,広くとらえるべきだろうと思う。
  •  文化庁としては,文化財保護法に基づいて文化財に責任を持ち,その文化財は指定文化財ではなく広義の文化財である,という姿勢を通すのは良いと思う。しかし,地域が「文化遺産」という言葉を自分たちなりに解釈して,あるいは広義の文化財と同じ意味でそういうものを使いたいということを妨げないような雰囲気づくりは是非お願いしたい。
  •  「はじめに」についてはもう少し整理して,用語についてもきちんと整理する必要がある。例えば,第3段落まで文化財をいかすのであれば,文化財というのは「我が国の歴史と文化の理解のための『貴重な資源であり』」という言い方の方が良い。それから,「将来の『文化』の発展向上のために文化財はなくてはならない」のか,「将来の『社会』の発展のためになくてはならない」のか。私は社会面だと考えているが,ここの全文はもう少し検討が必要である。
  •  「将来の文化の発展向上のために文化財はなくてはならない」のか,「将来の社会の発展のためになくてはならない」のかについては,これは文化財保護法を引用し,そのままいかしたのではないか。
     それから,「文化資源」という言葉がいいのか,「資産」という言葉がいいのかという点についても,個人的には「資産」が適当ではないかと思うが,議論が必要だと思う。
  1. ⅱ.第Ⅲ章「文化財を総合的に把握するための方策」について事務局より説明がなされ,以下のような議論が行われた。
  •  ほかの分野との連携を意識して書き始めるという形がある。例えば都市計画であれば市町村の大合併が起きて3年目ぐらいになると,都市計画マスタープランの策定が大体進んでくるため,それらの動きと連携しようとすれば,タイミングとして切迫しているという状況を中間まとめの中で説明することが必要ではないか。
  •  今回は,今まで単体として文化財を保護していたところを,広域的にゾーンとして捉えていこうという提言であるため,市町村合併に伴い練り直しが行われている。都市計画マスタープランと連携する際にも,早い段階で行う必要がある。よって,緊急性を提言の中に加える必要があると思う。
     また,近世の城跡などの整備や歴史的町並みの保存などに関わって残念なのは,その周辺の眺望は大きな広告塔が軒並みに突き出ているなど,景観保全がなされていないことが多い。歴史的,文化的な景観を確保したにも関わらず,周囲の景観によりその魅力が半減してしまうのはとても残念である。そこにどうすれば規制をかけられるか,積極的にこの提言の中に加えていくべきである。
  •  大変重要なタイミングにこの中間まとめが出てくると言う点については,Ⅰの部分でもある程度言及が必要になると思われるし,Ⅱの部分でも,景観法に基づいた景観形成条例作成といった取組が各地で行われているところであり,特に文化的景観との絡みで大変重要な意見であると思う。
  •  国が一定の枠組みを示し,それに沿った地域の取組について国が支援を行うという方法を,文化財保護全体として取り組んでいこうとする点は,提案した者としては非常にうれしく思う。
     周辺環境の保護の問題,都市計画マスタープラン等との整合性の問題については,歴史文化基本構想を策定できる根拠となる規定を今後法律に設けることも検討するという記述があることは心強い。都市計画法や景観法による制度と整合性をとるためには,やはり法律に位置づけられることが最良かつ最善の策であると思う。そうすれば,基本構想に基づいて地域が自信を持って自治体レベルで関係局とやりとりできるようになり,また,国のレベルでも同じことができるのではないか。
     それまでのプロセスとして,ここで書かれているような考え方を地域レベルではあるが実態としてかなり進めている地域もあり,そういうところを一つのテストケースとして,制度として実際に実現可能か,法律に位置づけるだけの実現性を持っているのかというシミュレーションを早急に行い,法律への位置づけに早くつなげていくのが必要ではないか。
  •  歴史文化基本構想という用語が出てきたときに,受けとめる人が,歴史文化をどうしようと思っている基本構想なのかが,用語からは伝わってこない。歴史文化を保存なり,継承なり,発展なり,振興なり,そういうアクティブな用語が入ったものとしてうたわないと,用語として熟していないのではないか。
  •  「歴史文化基本構想」,「関連文化財群」,「歴史文化保存・活用区域」という名称について,このネーミングでいいのか,もっとわかりやすい,あるいはインパクトのあるようなものがあり得るのかということも,議論の対象にしてはどうか。
     また,法律における位置づけについては,9ページの「地方公共団体が基本構想を策定できる根拠となる規定を,今後,法律に設けることも検討する。」という記述のように,「も」という言葉を使うと何かついでのような印象を受けるので,「を」という言葉を使った方が良いのではないか。あるいは,そこに「早急に」という言葉を入れることができるのかという検討も加えてみてはどうか。
  •  4ページのⅠの中で,「人々の暮らしの中に埋もれた文化財がその価値を見いだされることなく失われつつある。」の記述において,具体的な数字が何か入らないか。
  •  それについては,萩市の事例で6年間で10%の割合で歴史的建造物等が失われていることが分かっており,同じような調査が東京藝大で東京において行われている。全国規模では無理にしても,東京でも地方都市でも同じような数字が出ていることは実際に示すことができるため,もし使えるのであれば是非使ってほしい。
     名称については,例えば,都市計画マスタープランというのも通称であり,法律上の正式名称は別にある。中間まとめで提言されている関連文化財群のような概念は,大宰府では「市民遺産」,萩では「都市遺産」という言葉を使っており,非常に分かりやすいと思う。やはり概念を正しく表している言葉になっているかということがむしろ大事で,キャッチフレーズとしてそれほどでなくても仕方がない,むしろこういう文章ではそうせざるを得ないのかなと理解している。よって,この言葉で本当に言おうとしている内容を表しているのだろうかということの吟味が大事ではないか。
     そこで思うのは,「歴史文化保存・活用区域」について,一般的には,「保存」というのは文化財に釘が打てなくなるとか,石ひとつ動かせないとか,そのような印象を持ってしまい,保存という言葉が硬く理解されている。そういう意味では,「歴史文化保存・活用区域」という言葉が,ここで言おうとしている概念が説明しきれているかという点は,懸念がある。
     また,「文化遺産」という言葉についても,場合によってはもう少し何か書いていただいた方がいいのかなとも思う。例えば,あえて「文化遺産」という言葉を使って,文化遺産と広義の文化財は同じであると説明することなどが必要なのではないか。
  •  今の御意見はもっともだと思うが,文化遺産という文言を使う場合には,文化遺産の定義は何かというところから始めなければいけないことになるのではないか。文化財は,法的に根拠を持ち,ある程度概念として決まっている言葉であるため,それにのっとってこの中間まとめは作成せざるを得ないのではないか。いたずらに新しい概念を入れるということはかえって混乱のもとになるということも言えるのではないか。
     また,「保存・活用」という言葉ではなく,「保護」という言葉を用いてしまうと,守る一辺倒という印象を持たれるかもしれないが,「保存・活用」と両方併記すれば,両面が表れるのではないか。「保護」という言葉は外からのいろいろな影響から守るというのが一般的に認識された意味であるのに対して,「保存」という言葉はそのもの自体の価値を維持するということを意味すると思う。文化財保護法は,やはり文化財そのもの自体の価値を維持するのが原理原則であり,「保存」という言葉はやはりどこかできちんと使っておくべきであり,それを踏まえた上での活用があるべきではないか。となると,「保存・活用」がいいのか,「保存活用」のように中ポツをとった方がいいのか,いずれにしても両者の言葉をどこかに入れておいた方がベターではないか。
  •  「保存」という言葉は,有形のものに対しては非常に適当な言葉であるが,無形文化財や無形の民俗文化財は「保存」という言葉ではなじまず,後ろ向きな言葉となってしまう。文化財一般でいえば,「保存」という言葉で良いが,無形の分野ではなじまないことをお含みいただきたい。
  1. 第Ⅳ章「社会全体で文化財を継承していくための施策」,第Ⅴ章「終わりに」について事務局より説明がなされ,以下のような議論が行われた。
  •  「地域住民の文化財保護への参加」の中に団塊の世代の人たちの活用のことが出ているが,アクティブシニアの活用などが小さい項目ででも入ればいいのではないかと思う。
     「寄附の受皿となる窓口の創設」ということがあるが,これも,もう一歩踏み込んで,創設ならば「文化財保護〜基金」とか,何か仮称が入れば更に進むのではないかと思う。
     「活用可能な制度についての情報発信」ということで,寄附についても幅広く周知を図ることが必要であるということは当然であるが,制度についての意義や手続についての効果的な広報のほかに,もう少し突っ込んで,いろいろな企業が関連する,例えば経済団体の関連の委員会に積極的に参画をして広報に努めるとか,実際の行動をここにはっきり出した方がよいのではないか。
  •  「保存と活用の両立」は,活用のことを意識して書いてあると思うが,活用の中で一番大事なことは教育だと思う。その部分がないために「子供たちが文化財に触れる機会の充実」につながっていると思うが,一番最後のところは,事例の紹介を行っていくことが有効であるというような形で終わっている。今まさに伝統文化,それから日本の歴史,そしてそれを象徴している文化財というのが日本の子供たちに本当に教えていかないといけないということが言われ始めているので,それは強調すべきであり,文化財の活用の一番は教育だと思う。
     そういうことから考えると,今まで伝統文化子供教室を行ってきたことは本当にいいと思っているが,文化財分野全体で見ると,一部の分野にしか導入されていない。全部の文化財を対象に伝統文化子供教室を行えば,総合的な理解というのも非常に進むだろうし,文化財の社会還元の方策というのもできてくるのではないかと思うので,その辺の強調の仕方をもう少し検討していただきたい。
  •  「社会全体で文化財を継承していくための方策」ということで,博物館,美術館,歴史民俗資料館等を活用するということが書かれているが,今一番必要なのは,博物館がこれまでのように博物館という建物の中だけで活動するのではなく,むしろ各地の文化財と連携し,博物館が起点になって文化財活用を積極的に進めるということである。
     現に歴博では,佐倉城址公園を活用することによって史跡と100年を超す自然植生を観察しながら,なおかつ博物館の中で歴史文化も学ぶという計画を実行しつつある。
     歴史文化基本構想のイメージ図の関連文化群の中に,文章の中にも書かれているように,活用していく1つの起点として博物館,歴民資料館,美術館等をきちんと明記していただきたい。
  •  最近は博物館がフィールドを持って野外に展開しているという状況が大分出てきたと思う。
     それから,不動産文化財のトーンで中間まとめができ上がっているが,動産文化財に関しては,博物館,美術館が非常に大きな機能を持つと思う。したがって,そういったものが館の中だけでとどまっているというのではなくて,外へ展開していくといったようなことも必要ではないか。
     それから,「文化財保護に関わる人材を拡大する方策」のところでは,民俗芸能の担い手がだんだんいなくなっていっているという側面があると思う。これを何とか支えるような方向性での人材の確保を考えておかないと,あちこちでつぶれてしまうということになってしまうのではないか。
     そういった意味で,確かに文化財の修理と保存に当たり,高度な専門性を持つ人材の確保も必要だが,民俗芸能の伝承者,それを支持する人たちといったような広い意味での後継者育成あるいは確保ということをやっぱり念頭に置いておく必要があるのではないか。
  •  「専門性を有する人材の確保」のところで,行政の人材が足りないから民間にしわ寄せを行うというような発想ではなく,文化財を活用するには民間セクターの人が絶対に要るという表現が必要である。
  •  有形文化財の美術館,博物館あるいは歴史資料館はとても大事なことだが,そういう施設の名前が出てくるときには,やはり劇場とか,音楽ホールも書いていただくということも必要である。
  •  「寄附の受皿となる窓口の創設」は非常に大切だと思う。
     私立美術館会議があるが,年会費が納められなくて退会してしまうところがすごく多い。そうすると,横のつながりも縦のつながりも切れてしまって,何もできなくなって,それが進めば解散してしまうという,負の方へ,負の方へと後ろ向きに進んでしまう。ここであなたたちも救えるということを1つ盛り込んでおくと,結構救えるものが増えていくのではないかと思う。
  •  エコツーリズム推進法が通ったということで,エコツーリズムという言葉自体が日本の法律の中にきちんと位置づけられたから,これはちゃんと書ける言葉であるが,博物館がフィールドを持ち始めたというのは,エコミュージアムという概念である。この言葉を使っていいのかわからないが,そういう内容を非常に体系的に積極的に,しかも理念もしっかり持ってやろうとしているのがエコミュージアムというものである。萩の博物館は,多分日本で初めてしっかりとした総合博物館をエコミュージアムのコア博物館として建てた事例である。
     場合によってはエコミュージアムか,あるいはその理念をあらわすような言葉を追加してもいいのではないか。
     2点目として,「歴史文化保存・活用区域」の中で,「保護のための規制をかけるのみではなく,例えば,電線の地中化」うんぬんと,一般市民や住民に規制をかけるという行為,あるいは公共事業の話を書いている。民間の建設活動などに当たり規制をかけるのみではなく,民間の人が積極的に環境をよくしようとする行為に対する支援があって,更に公共事業があるという,民間に対する両輪と公共事業という組立てが正しいと思う。民間を規制するだけではなく,民間にやる気を起こさせて,なおかつ公共部門においてもやるんだというふうな書き方にした方がよい。
     3点目は,去年の世界遺産特別委員会に出されて暫定リストに漏れたところをどうフォローするかということ。今回の仮称がついている3つの制度により,世界遺産に将来なるかならないかは別として,新たに価値づけることでフォローするということになったのか。
  •  世界遺産委員会の方は非常に絞り込みがきつくなってきているが,日本の各自治体の世界遺産登録に対する意欲はより高まっているという矛盾があるので,この歴史文化基本構想というようなものが当然そういうことも含めて重要な役割を果たすものになるだろうと思うが,企画調査会としては余りそれをリンクさせて書き込むというのはちょっと難しいと思う。
     また,エコツーリズムのところは,文言的な流れから言うと,エコツーリズムというよりはエコミュージアムという方が適当と思う。エコツーリズムだけが進むのではなくて,地域のエコミュージアムといったような形できちんと資源の保護も考えて行うようなところで,その1つの発展形態としてエコツーリズムがある。ここはエコツーリズムに一挙に飛ばずに,エコミュージアムぐらいの方が流れとしてはいいのではないか。
  •  この基本構想のイメージ図の中に美術館,博物館を入れるというのは非常に大事なことである。
     どこの美術館,博物館も地域のためにみんな頑張っている。この頑張りをどう評価するかということがこれから一番大事になってくると思う。今までやってきていることを理解してあげるには,やはり基本構想のイメージ図に入れなければいけない。
  •  個々の文章上において,まだ十分にこなれていない部分がある。そこら辺については,できるだけ具体的に専門の立場でこう書く方がより多くの人にとって理解が進むだろうという点について,具体的に赤字加筆修正をしていただいたものを事務局にお送りを頂きたい。
     それと,仮称の歴史文化基本構想(仮称)といったものについては,こういった内容の提言が必要であるということは共通の認識となったが,文言においてはまだ検討の余地ありということで,正式の名称は何となく固いものであるとして,だれもが親しめるような名称をあわせてということも可能であるので,よりよい文言があれば御提言を頂きたい。

[4]資料6に基づき,「今後のスケジュール」について説明が行われた。

―― 了 ――

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