資料4 第9回企画調査会

「文化審議会文化財分科会企画調査会 審議の中間まとめ」
に対する意見募集の結果概要

1.意見募集の概要

(1) 期間 平成19年8月23日(木)〜9月21日(金)
(2) 告知方法 文部科学省ホームページ
(3) 受付方法 受付方法 郵送・ファックス・電子メール

2.意見総数

21件(個人:9名,団体:12団体)
※ 意見募集期間終了後に届いた意見を含む。

<内訳>      
【個人】      
(性別) 男性 4名
  女性 5名
(職業) 公務員 4名
  団体職員 1名
  研究者 1名
  その他 3名
(年齢) 30代 2名
  40代 1名
  50代 2名
  60代 3名
  不明 1名

【団体】

全て地方公共団体(7県,5市町村)

意見の概要

本概要は提出された意見に基づいて,事務局の責任において作成したものです。

Ⅰ.はじめに

  •  「伝統的な知と技が失われつつある」原因を明確にし,その上で,このことを許してきた日本の社会をどう変えたいのかを明示すべきである。

Ⅱ.企画調査会設置の趣旨と検討課題

  •  地域が受け継ぎ,引き継ごうとしている有形・無形のおたからは,地域にとって貴重な文化遺産であり,文化財を総合的に把握する方策及び社会全体で文化財を継承していくための方策は必要不可欠なものである。
  •  趣旨に書いてあることは,地方公共団体では既に検討している事柄であり,現段階で文化庁がこれらを取り上げる場合にはより具体的な方策の提示が必要である。
  •  地方公共団体は,財政状況が最悪の状況であり,予算が確保できない中でどのようにして問題を解決するかが大きな課題となっている。国の方針,施策の策定に当たっては,この部分も支援するような計画の策定を望む。
  •  少子高齢化・過疎化が進んでいる地域の維持のためには,地域の住民が主体的に関わることは前提であるが,他地域の人々との協力関係の樹立や他地域からの支援が不可欠である。あくまでも地域にこだわりつつも,地域を包む大きな視野が必要だと感じている。
  •  何百年も伝統を誇る文化遺産ではないものに対しても,大切なものとして配慮して欲しい。
  •  新しい建物も長く使えば文化財になる可能性があるので,大切に使うことが文化を育成していくことになることを記載すべきである。

(2)社会全体で文化財を継承していくための方策

  •  地域住民の中には文化的素養があり,文化財に対してその保存・活用を積極的に望むものが多くいる。そのような地域住民の小さな声を取りあげやすい工夫が必要と思われる。

Ⅲ.文化財を総合的に把握するための方策

1.関連する文化財とその周辺の環境を一体としてとらえるための方策

  •  文化財はそれぞれが独自に存在したものではなく,有機的な関係の中で役割・目的を果たしてきたものであり,資源としての文化財の活用が広く求められていることから,今回の総合的な保護活用という方向性は重要と考える。
  •  この報告書が一般国民にも理解され,支持されるように概念図を使うなど工夫したらどうか。
  •  地域の文化財を総合的に価値付けるためには,地域における自然環境も視野に入れた文化財に関する調査研究が不可欠であり,その研究成果に基づき,地域の中で複数の文化財を相互に結びつけることで,総合的なストーリーを描くことが可能となる。
  •  各地方公共団体の主体性を尊重することは重要だが,文化財を破壊しようとする行為に対しては,単に推移を見守るだけでなく,警告を発するなど文化庁の主体性を発揮して欲しいと思う。

(1)必要性と対応の方向性
(ア)関連する複数の文化財を総合的にとらえることにより新たな価値を見いだす観点

[1]地域の特性に応じた文化財の総合的な把握

  •  対象となる文化財の範囲が広すぎ,漠然としすぎている。未指定のものも含めた形で「事業」の範囲が広がると,「指定」されたものと「未指定」のものの区別が曖昧になるのではないか。
  •  「国が一定の枠組みを示し」とあるが,地域の特性をいかしやすい柔軟性をもった枠組みとしていただきたい。少なくとも地域住民の声や専門家の意見を今まで以上に取り上げやすいものにすべきと考える。
  •  「国が一定の枠組みを示し~」は,国と地域のどちらが主体なのか。また「より」という表現は,何と比較してより良いということなのか。

(イ)文化財の周辺環境の保護の観点

[1]文化の薫り高い空間の形成

  •  表題が抽象的で実態がわからない言葉なので,具体的にイメージできるような表現にしてほしい。

[2]関係施策との連携強化

  •  積極的に整備する主体は,国なのか地方なのか両方なのかが曖昧である。「文化的な空間創出」は文化財サイドが主体になってできるのか。

[3]関係施策との調整

  •  文化財の価値は,住民,あるいは国民,人類のものであり,経済優先にすべきでないことを記述すべきである。

(2)具体的な方策:文化財の総合的な把握と保存・活用により地域の歴史・文化を保護する枠組みづくり

  •  広域的かつ総合的な保存活用に向けた取組を行うためには,関係機関・関係者がこれまでの文化財行政と比較して膨大なものになると思われることから,大幅な財政支援や継続的な人的支援が必要である。
  •  個別の内容については既に地方公共団体で取り組んでいるものもあり,一定の評価や実績,課題等が明らかとなっているので,それらを十分にいかしたものとしてほしい。
  •  地域において守り伝えられてきた祭り,伝統芸能,祭礼行事,民俗芸能といった個性豊かな伝統文化の継承・保存に対し緊急に具体的な方策を取らないと後継者不足や財源難などにより次々と失われる。

(ア)地方公共団体による「歴史文化基本構想(仮称)」の策定

  •  関連する文化財とその周辺の環境を一体ととらえる手法は文化財の新しいとらえ方としてすばらしい構想である。特に無形文化財も含めるところはこれまでになかった手法である。
  •  基本構想の策定に当たっては,[1]調査研究事業 [2]基本構想策定 [3]保存活用区域の設定 [4]保存管理計画策定 という一連の事業としてとらえ,支援をしていく仕組みをつくることができればよいのではないか。
  •  「地域」の定義が不明確である。
  •  未指定物件について,具体的にどのような形で指定又は選定していくのかを明確にしていただきたい。
  •  既に地方において国交省は,独自に町づくりや景観づくりを進めている。地域づくりに文化財を活用するためには,国交省等のほかの機関と共同した取組をする必要がある。
  •  市町村間では,文化財保護行政に量的質的なバラツキが生じている。同レベルの文化財保護行政を実施するためには,文化財の保護や活用を専門的に行う文化財保護主事(仮称)制度の確立と設置の義務化が必要である。
  •  市町村によって専門分野等に違いがあるので,文化財類型間をこえた応援体制や交流の促進(国・県・大学等)を図ることが必要である。
  •  文化財に関心がある者の意見は少数意見とならざるを得ないので,そのような意見を取り上げるシステム作りを行っていただきたい。
  •  「歴史文化基本構想(仮称)」について,下記の意見を提出する。
  1. [1]文化財群や保存活用区域の設定は,学術的な根拠が必要と考える。
  2. [2]民俗文化財を取り扱う場合は,伝承・伝播に留意することとなるが,その範囲,連関は行政組織単位では取り扱い難い面が多い。
  3. [3]地域住民の文化財保護への参加,特に退職後の参加については重要な施策だと考える。

[1]関連する文化財の一体としての保存・活用

  •  関連する有形・無形の文化財を「関連文化財群(仮称)」と位置付け,総合的に保存・活用していくことについて推進を希望する。
  •  「関連文化財群(仮称)」を単体文化財の集合体として個々の関連性に基づく新たな文化財保護概念として法的に位置付け,その保存・活用を図るため,群を構成する文化財に国の財政支援制度を設けるべきと考える。

[2]「歴史文化保存活用区域(仮称)」の設定

  •  当該区域の設定に関しては,関連性や位置付けが難しいので,明確で理解しやすい制度大系を考える必要がある。また,国は優先的に関連事業や財政支援を行う区域として位置付けることも重要と考える。
  •  制度創設に当たっては,住民に対し現行の規制に新たな規制を加えたり負荷を求めることのないよう十分考慮するとともに,規制と支援のバランスについて住民の理解を得ることが重要である。
  •  「文化財を核とした文化的な環境を保護するという観点」での「環境」が空間や景観を意味しているのなら,「既存制度を活用する」という表現ではなく,都市計画の中に”文化財保護とその活用という考え方を位置づける”ことを明記する必要がある。

(イ)歴史文化基本構想(仮称)に対する支援の方策など

  •  市町村にしてみれば,広い範囲で文化財を活用することはいいが,財政的な支援がどのようになるのかが気になる。また,文化庁の新たな支援策や国土交通省等との連携が必須であると思う。
  •  地域が「歴史文化基本構想(仮称)」を策定していくためにも,モデルケースを踏まえながら,国が方向性や課題といった構想策定の仕組みをつくるとともに,地方公共団体が基本構想を策定できる根拠となる規定を法律に設ける等,国の支援を早急に検討していただきたい。

(3)期待される効果

[1]多様な文化財の価値の顕在化による適切な保存・活用

  •  広域的な公共事業等を実施する場合,環境アセスメントのように,「歴史文化アセスメント(仮称)」のようなものを行う仕組みが必要である。

[4]ほかの行政分野との連携の促進

  •  文化庁以外の省庁でも,近年文化財を核とした地域づくりの事業メニューがあるので,そうしたほかの事業との連携も図れるような支援も必要である。

2.文化財の保存・活用を適正化するための方策

(2)具体的な方策:国指定文化財を総合的に保存・活用するための方策

  •  文化財の各類型の対象・目的は切り口が異なるとはいえ,重複する部分もあることから,各類型の役割・機能の分担を明確化する必要がある。また,文化庁においても総合的保存活用の担当セクションと個別類型の担当セクションの明確化と連携が必要と考える。

[3]文化財に関する情報の的確な把握

  •  文化財に関する情報の的確な把握と管理は重要であり,過不足のない全国共通のフォーマットが示されれば全国的な統計等も容易になる。

Ⅳ.社会全体で文化財を継承していくための方策

  •  地方分権,規制緩和の時流の中にあって,地方の実態や地方が抱える課題に対して柔軟に対応できる総合的支援体制が構築されることを希望する。
  •  真に保存継承していかなければならないものを見失わないようにするとともに,そうした価値観を社会全体で共有する必要がある。
  •  文化庁の情報発信能力を高めるため,普及啓発活動や情報関係の業務にかかる予算・人員の拡充が図られることを期待する。
  •  文化財の専門職員,ボランティアをリードする人材は専門知識に長けているだけではなく,行政のシステムや地域社会についても習熟している必要がある。

1.文化財に対する親しみを深めるための方策

(1)必要性と対応の方向性
[3]保存と活用の両立

  •  伝統技術保持者が積極的にその技術を公開できる場を作ることができればよいと考える。

(2)具体的な方策
[2]子供たちが文化財に親しむ機会の充実

  •  工芸などでは,例えば高校生の職場体験の導入など具体的で実質的な方策を考え実践すべきである。
  •  学校の社会科の授業に地域の伝統文化・文化財学習の時間を設け,その実施に地域の積極的支援を得ることを考える必要がある。

2.文化財保護にかかわる人材を確保するための方策

(2)具体的な方策
[1]人々の文化財保護活動に対する支援の枠組みづくり

  •  人材の確保,殊に文化財保護にかかわる専門人材の育成に対し,専門研修の場の提供や専門研修に職員を派遣する企業への助成等,きめ細やかな対応ができることを希望する。
  •  地域全体で指定,未指定文化財を保存・保護するため,民間組織活動への助成等ソフト面での支援制度の創設が図られることを希望する。

3.文化財保護に対する支援を充実させるための方策

  •  文化は歴史の精華である。自分個人の存在を超えた長久な時間の流れを身近に感じれば,豊かな心を涵養することができる。

(2)具体的な方策
[1]文化財保護に対する寄附の受皿となる窓口の創設

  •  寄附の拡大を図るには,歴史的建造物が財政の貧困さから取り壊されたりしていることを国民に広報することが欠かせない。個人の寄附に対する意識を喚起する努力も必要である。受皿を作ることを審議されていることは大切なことである。

[2]寄附を促進するための周知・広報

  •  寄附などの支援の充実や寄附しやすい環境づくりの推進とともに,現行の補助制度がなければ所有者が文化財を維持できない実情を踏まえ,より一層の支援制度の強化・拡充が図られる必要がある。
  •  我が国においては文化財保護のための寄附は素地としてなかなか国民には受け入れられない制度だと思うので,国民に見える形での国の積極的な活動(テレビや新聞)の方策を打ち出すことが必要と考える。
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