文化審議会著作権分科会(第53回)(第18期第3回)

日時:平成31年2月13日(水)
10:00~12:00

場所:海運クラブ303-4号室

議事

1開会

2議事

  1. (1)教科用図書への掲載等に係る補償金について【非公開】
  2. (2)文化審議会著作権分科会報告書(案)について
  3. (3)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について
  4. (4)国際小委員会の審議の経過等について
  5. (5)その他

3閉会

配布資料

資料1
「教科用図書への掲載等に係る補償金について」関係資料(1.4MB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料2-1
文化審議会著作権分科会報告書(案)(概要)(668KB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料2-2
文化審議会著作権分科会報告書(案)(5.3MB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料3
河島伸子委員提出資料(125.1KB)
資料4
平成30年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(11.1MB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料5
平成30年度国際小委員会の審議の経過等について(242.8KB)
参考資料1
文化審議会著作権分科会委員名簿(122.3KB)
参考資料2
文化審議会関係法令等(151.3KB)
参考資料3
「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(2018年12月)」に関する意見募集の結果について(568.8KB)
参考資料4
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書取りまとめに向けた委員からの共同意見(156.8KB)
参考資料5
「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」による著作権法改正について(366.2KB)
参考資料6
著作権法の一部を改正する法律等の公布・施行について(973.2KB)
参考資料7
「著作権の教育利用に関する関係者フォーラム」の状況について(著作権の教育利用に関する関係者フォーラム事務局提出資料)(1.1MB)

議事内容

○平成30年度使用教科書等掲載補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。

○平成30年度使用教科用拡大図書複製補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。

○平成31年度以降の教科用図書への掲載等に係る補償金の算出方法について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。

以上の議事については,文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会分科会決定)1(2)に基づいて非公開とし,同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し,公開することとする。

(傍聴者入場)

【道垣内分科会長】傍聴の方におかれましては,申し訳ございませんでした。非公開の審議対象となっております教科用図書への掲載等に係る補償金についての議事が終わりましたので,以降,傍聴していただきたいと存じます。議事の2番目からでございます。

この2番目の議題は,法制・基本問題小委員会の審議事項をまとめたものになっておりますので,これにつきましては,当該小委員会の主査をお務めいただいております茶園委員から御報告をお願いいたします。

なお,本日のカメラ撮りにつきましては,冒頭5分程度ということでよろしくお願いいたします。

では,この点,茶園主査の方にお願いいたします。

【茶園委員】今期の法制・基本問題小委員会におきましては,リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応等の継続検討課題に加えまして,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入や,海賊版対策として早急な対応が求められておりますダウンロード違法化の対象範囲の見直し等の新規課題につきましても検討を進めてまいりました。

そのうち,法改正の方向性が定まった事項に関しましては,パブリックコメントを行った上で,その結果も踏まえて報告書(案)を作成し,1月25日の小委員会で議論を行いました。その際には,ダウンロード違法化に関しまして委員から様々な御意見を頂きました。そこで,その後報告書(案)を修正いたしまして,再度全ての委員に御確認をいただいた上で,最終的には主査である私の責任におきまして今月4日に小委員会としての報告書を取りまとめました。このような過程を経まして,ダウンロード違法化を含めて,小委員会における各委員の意見をしっかりと反映した形での報告書とすることができたと考えております。

これを基に事務局に著作権分科会の報告書(案)を作成していただきましたので,本日はその御審議をいただければと考えております。報告書(案)の具体的な内容につきましては,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課課長補佐】ありがとうございます。それでは,お手元に資料2-1と資料2-2を御準備いただければと思います。

報告書(案)の本体は資料2-2になっておりますが,非常に大部でございますので,そこからポイント部分を集約しまして,資料2-1,概要版を作成しておりますので,2-1の方に基づきまして概略を御紹介したいと思います。

まず1枚目の上の段にございますとおり,今回の分科会報告書(案)におきましては,1番から6番まで6項目につきまして方向性を整理してございます。順に御説明をしたいと思います。

まず下の段,1番がリーチサイトへの対応でございます。検討の経緯に記載をしておりますとおり,インターネット上の著作権侵害は昨今より深刻化をしておりまして,その背景の1つとして,いわゆるリーチサイト・リーチアプリの問題が指摘をされております。リーチサイトは,御案内のとおり,自身のウエブサイトにはコンテンツを掲載せず,他のウエブサイトへのリンクなどを集約しているサイトでございますが,自ら侵害を行っているわけではないということで,権利者からの削除要請に応じないなどの問題が指摘されておりました。今回これに対する対応を検討してきたわけでございますが,2つ目の丸にございますとおり,リンク情報の提供行為はインターネットによる情報伝達において不可欠な役割を担うものでございますので,これを踏まえて過度な規制にならないように留意をしながら検討が進んできたところでございます。

まず検討結果の1つ目にございますとおり,リーチサイト・リーチアプリは,侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い場・手段だという評価ができますし,こういった場・手段を通じて侵害コンテンツへのリンクの提供を行う行為,これは著作権侵害と同視すべき不利益を著作権者に与えるものと評価できるとされております。

これを受けまして,著作権者の権利保護の実効性を確保するという観点から,マル1,マル2,2つの行為につきまして,一定の要件の下で規制することが適当とされております。マル1は,リーチサイト運営行為,リーチアプリの提供行為。こちらにつきましては,括弧書きにございますとおり,社会的法益の侵害ということで,刑事罰をもって対応していくことにされております。また,マル2,侵害コンテンツに係るリンク情報等の提供行為につきましては,個々の著作権者の利益を害するということで,著作権侵害とみなしまして民事措置,刑事罰両方の対象にするということになっております。

3つ目の丸につきましては,具体的な要件に関わる部分でございます。まず規制対象とするリーチサイト・リーチアプリにつきましては,類型的に侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い悪質なものに限定すべきということになっております。例えばということで書いておりますが,主として,違法な自動公衆送信を助長する機能を担っているウエブサイト,こういった形で悪質なものを切り出して規定をしていくことが求められております。また,リンク情報等の提供行為につきましては,リンクを張っている方がリンク先が適法か違法か必ずしも判断が難しいという場面もございますので,リンク先の著作物が違法にアップロードされたものであるということについて故意・過失が認められる場合に限定して規制をしていくということになってございます。

その下,少し小さい※印でございますが,小委員会におきましては,いわゆるインターネット情報検索サービスへの対応についても御検討をいただきました。法整備も視野に議論を行ったわけですけれども,結論としては,まずは権利者団体,事業者の間で協議の場を設けまして,当事者間の取組により運用上の解決を図る。その動向も踏まえまして,必要に応じて法整備を検討するという結論になってございます。

次の2ページは,リーチサイトの概念図でございます。御案内のとおりかと思いますが,著作権を侵害してアップロードされたコンテンツは,左上のストレージサイトに格納されており,このストレージサイトとユーザーをつなぐような形でリーチサイトが存在しております。リーチサイトについては,マル2として,サイトを立ち上げる方がおられて,さらには,マル3として,そこにリンク情報を掲載していく方がおられると。これが相まって,ユーザーの方の海賊版へのアクセスが容易になっているということでございます。マル2とマル3の行為は同じ人物が行っている場合も多いわけですけれども,それぞれ別の方が行っているということも想定されますので,先ほど御紹介したとおり,マル2,マル3双方について規定をしていくということになってございます。

次に,下の段,2番のダウンロード違法化の関係でございます。検討の経緯,問題の所在はリーチサイトとほぼ共通しておりまして,インターネット上の著作権侵害の深刻化への対応ということでございます。御案内のとおり,現在では,音楽・映像の録音・録画に限定をされておりますけれども,その対象範囲の見直しを検討してきたところでございます。

次の丸にありますが,ヒアリングにおきましては,漫画のみならず,雑誌,写真集,文芸書,専門書,それから,プログラムにつきましても被害実態が報告されました。また,小委員会での審議の中では,委員から,学術論文に特化した海賊版サイトの存在についても言及がございまして,これらを踏まえて,幅広い分野の著作物について,海賊版,著作権侵害による被害が生じていることをまず確認したところでございます。その上で,ユーザー団体へのヒアリングとか,特に対象を広げていくことに伴って,静止画,テキストなどについてどういう特性があるか,こういう点も踏まえながら検討を進めてきていただいたところでございます。

その結果が下に記載している部分でございます。まず民事の対象範囲をどのように設定するかという点につきましては,大きく4つの観点から,録音・録画と同様の要件の下で,対象範囲を著作物全般に拡大していくことが有力な選択肢ということになっております。

上に戻りますが,1つ目としては,違法にアップロードされた著作物,つまり,違法なアップロードというのは著作権法上そもそも認められておりませんので,そういった行為によって拡散した著作物から便益を享受しようとするユーザーの行為,これは一般的に許容されるべき正当性がないということ。2つ目としては,諸外国におきましても,著作物の分野・種類などを問わず違法にしている例が多いということ。また3つ目としては,未然防止の必要性と書いておりますが,括弧書きで補足しておりますとおり,現時点で特に被害が顕在化・深刻化している部分のみを措置するという対応では,著作権者の利益を適切に保護できないということ。これは漫画について,ダウンロードが違法化されていない中で被害が拡大していったということも背景にはございます。4つ目としては,著作物間での措置の整合性ということで,既に音楽・映像につきまして違法化されているということで,この要件も踏まえる必要がある。こういった4点から,先ほど申し上げたような観点が有力な選択肢となるということでございます。

一方で,小委員会での議論におきましては,複数の委員からこれとは異なる御意見がございました。こちら,記載をしておりますとおり,被害実態が明らかな海賊版対策に必要な範囲に限って違法の範囲を定める。こういう観点から,刑事罰と同様に限定を設けるべきという意見が示されておりまして,こちらにも十分留意する必要があるという旨を記載しております。

それから,刑事罰につきましては,下に記載をしております。既に音楽・映像につきましても,有償で提供される著作物等に限定ということになっておりますので,これは当然の前提として,特に必要性の高い事例・行為に対象範囲を厳格に絞り込む必要があるということ。具体的には,国民生活への影響を最小限にとどめる観点から,適切な限定の選択肢が採用されることが適当ということになってございます。その際,複数の委員から,こちらに記載をしていますとおり,具体的な限定の仕方につきましても御提案がございまして,そちらにも十分留意する必要がある旨を記載しております。

この限定の選択肢につきましては,資料2-2,報告書の本体の71ページ以降で記載をしてございます。71ページの(4)の部分で,具体的には(ア)から(カ)まで6つの選択肢を書き並べております。それぞれの趣旨,課題についてはこちらに記載したとおりでございまして,先ほど御紹介したような小委員会での委員の方々の御意見も踏まえながら,法整備に当たりましては,最適な対象範囲の設定を行うことが適当と書いておりますので,これを受けて,政府としての対応を検討していく必要があると承知をしております。

続きまして,次の4ページに移っていただきまして,制度整備の際の留意点などでございます。まず主観要件の取り扱いということで,このダウンロード違法化は,主観要件が非常に重要だという御指摘を小委員会でもたくさん頂きました。これを受けまして,まず1つ目のポツにございますとおり,違法だと当然に知っているべきだった,違法か適法か判断が付かなかった,こういった場合にダウンロードが違法とされることがないように,主観要件についてより厳格に規定をするという方向が示されております。具体的には,重過失により知らなかった場合を含むものと解釈してはならないと,こういった解釈規定を置くこととか,その次のポツにございますとおり,いわゆる法律の錯誤があった場合ということで,例に書いておりますとおり,適法な引用だと思ってダウンロードしたけれども,実際には引用の要件を満たしていなかった,こういう場合もあろうかと思いますので,こういう場合も含めてしっかりと救済がされるように,条文上の規定の在り方を検討していく必要があると,こういうことが記載をされております。

次に,刑事罰に関する法定刑の水準・親告罪の取り扱いについてでございます。まず法定刑につきましては,録音・録画と同様,2年以下の懲役などとすることが適当とされております。親告罪につきましては,先般のTPP整備法で一部の著作権侵害罪については非親告罪化がされたわけですけれども,ダウンロードの録音・録画につきましては非親告罪化の対象にはなっておりませんで,全て親告罪のままでございます。今回の対象範囲の拡大に当たりましても,当然この部分については全て親告罪のまま維持することが適当ということになっております。

次に,普及啓発などにつきましても,今回の改正では非常に重要だという問題意識が示されております。文化庁,関係団体などが一丸となって国民に対する制度内容の周知徹底等に努めるということと,関係団体におきましては,適法サイトに関する情報の提供方法等の工夫を行うということが盛り込まれております。また,2つ目のポツとしましては,法施行後一定期間を経過した段階で,法制化の効果,また悪影響が生じていないか,こういった点も含めて必要な調査・検証を行うことが適当であるということが書かれております。

それから,その他と致しまして,こちらは主にパブリックコメントにおきまして,ダウンロード違法化以外の海賊版対策を講じるべきという御意見がございましたので,様々な手段を組み合わせた総合的な海賊版対策の必要性についても記載をしております。さらには,今回の議論の過程で必ずしも私的使用目的とは関連しない部分もございますが,研究目的での権利制限につきまして根拠規定がないという問題も指摘されましたので,今後,権利者の利益保護にも留意しながら検討をしていくということも盛り込まれてございます。

次に,下の段,3ポツ,アクセスコントロールの関係でございます。1つ目の丸にございますとおり,平成30年に不正競争防止法が改正されておりまして,いわゆるアクセスコントロールなどにつきまして,定義規定の改正と不正なシリアルコード等に対する規制が実施されております。当然ビジネスソフトなどは著作物としても保護されるものでございますので,著作権法でも同様の対応が必要かを検討いただいたところでございます。

検討結果と致しましては,近時のビジネスソフト等の不正利用の態様に適切に対応し,著作権者の利益保護に万全を期すと。こういう観点からは,不正競争防止法と同様の対応を行うことが適当とされております。定義規定の改正,規制対象行為の追加の概略の表につきましては,下に記載のとおりでございます。

続いて,次のページ,4番,著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化についてでございます。こちらも既に平成30年に特許法などが改正されておりまして,いわゆるインカメラ手続について,マル1として,利用できる場面を拡大する,マル2として,専門委員の関与を可能とする,こういった規定の見直しがなされたところでございます。同じ対応が必要かを検討した結果,検討結果にございますとおり,特許法と同様,マル1,マル2の見直しを行うことが適当とされております。

手続のイメージは,下に記載のとおりでございまして,赤枠で囲った部分が今回の改正の部分でございます。まずマル1としまして,原告から申し立てがあれば,マル2として,侵害立証等に必要か否かを判断するために,裁判所がその書類を見ることができるようになるということがございます。また,右側にございますとおり,専門家の方々のサポートも受けられるということで,必要に応じて書類を裁判所が専門委員に開示できるという手続が設けられるということになってございます。

次に,下の段,5番が,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入についてでございます。右上の図をごらんいただければと思います。現状では,著作権者からライセンス契約を受けて著作物を利用している利用者の方につきましては,その後,著作権などが譲渡されてしまいますと,第三者に対抗できないということで,利用を継続できなくなる恐れがあるという指摘がございました。こういった状況を改善するために,検討結果にございますとおり,ライセンシーが安心してビジネスを行うことができる環境を整備する観点から,利用権,利用する地位に対抗力を付与すべきという結論になってございます。

2つ目の丸は,対抗力の付与の方法でございます。特許法の通常実施権につきましては,登録などをしなくても対抗できる当然対抗制度が導入されております。著作物につきましても,利用権の当然対抗を認めても譲受人に与える不利益は小さいだろうということも踏まえまして,特許法などと同様に当然対抗制度を導入することが適当とされております。これが実現しますと,右下の図にございますとおり,ライセンス契約をして著作物を利用している利用者は,その後の著作権譲渡などの事情にかかわらず当初の契約どおりの利用を継続できるということで,安心したビジネスに資するものと思っております。

次に8ページ,6番の行政手続に係る権利制限規定の見直しについてでございます。冒頭ございますとおり,著作権法42条2項におきましては,特許審査などを迅速・的確に行うための文献の複製等に係る権利制限が設けられております。一方で,地理的表示法,種苗法の手続は現状法定されておりませんので,権利制限の適用が受けられないということで手続に支障をきたす恐れがあるという農水省からの御要望があったわけでございます。

これを受けて検討しましたところ,るる書いておりますが,権利制限の必要については,特許審査などと同様に認められること,また,権利者に与える不利益も限定的だということで,権利制限が適当ということが記載されております。なお,小さい※印でございますけれども,今後新たに同種の行政手続が現れた場合に柔軟に対応できるような規定の在り方についても御意見が示されたところでございまして,それらについても適当な検討が行われることが望ましい旨も記載をされております。

9ページ目と10ページ目につきましては,地理的表示,種苗法それぞれの手続の概略を示したものでございますので,説明は割愛をいたします。

事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】どうもありがとうございました。

では,この報告書の章立てに沿って,1章ずつ御審議いただきたいと存じます。まずは第1章のリーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応についてでございます。先ほどの御説明に対して何か御意見その他ございますでしょうか。御意見の対象は報告書の文言についてでございますが,いかがでございましょうか。

渡辺委員。

【渡辺委員】私,昨年から漫画を中心とする巨大海賊版サイトの侵害コンテンツに関して,海外に拠点があるということで取り締まることもできないということが報道されたときに,私は音楽家ですけれども,同じ著作物に関わる者として信じ難いことだなという憤りに近いものを感じました。結果的に,政府がブロッキング対策などをするという報道があって漫画村は閉鎖されるということになりましたが,結果的に,その後リーチサイト的なテクニックを使って同じようなことが持続していくようになっているということをまた知り,もうイタチごっこだなと思って,これは本当に許し難いことだと思っている中で,今回このリーチサイトあるいはリーチアプリの存在に関して法的に整備する必要があるということが検討されたということは,非常にうれしく思っています。今のままでは,著作権者に莫大な損失が生まれるのは自明の理でありますから。

こういう行為というのは,もちろん悪意がなくて何かリーチサイト的なものに関わっているということは考えられますが,悪意がある場合というのは,侵害コンテンツというのはそもそも著作者にとってみれば泥棒行為でありまして,その泥棒行為を助長するということが許されるという世の中というのは,私にしてみるとあり得ないという,犯罪行為を助長するのを許すというのはどう考えてもおかしいというふうに単純に思いますので,今回このように小委員会の中間まとめで,当該行為を差し止め請求の対象とした上で,侵害抑止の観点から罰則を設定するということは,被害対策に有効な検討結果が示されているというふうに思います。この結果を踏まえて,速やかに法改正をお願いしたいと思います。

【道垣内分科会長】前向きな御意見ありがとうございました。

そのほか何かございますでしょうか。どうぞ,永江委員。

【永江委員】文藝家協会の永江でございます。著作者の1人として申し上げると,やはり悪質性をどう見極めるかということはかなり慎重にやっていただかないと,リンクするということも著作物の表現としてあり得るわけですから,それを根こそぎだめだとするわけではなくて,じゃ,誰がどういうふうに悪質性を見極めるのかというところを注視していかなければいけないと思います。私としては,もろ手を挙げて万々歳というわけではなくて,警戒を持ってこれを見守っていきたいと考えています。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。これは報告書の中でも,過度な規制により正当な表現行為に萎縮が生じないようにということはうたわれているところでございまして,そこはポイントだと思います。

よろしゅうございますでしょうか。では,この点はとりあえずよしということで,第2章のダウンロード違法化の対象範囲の見直しについてでございます。なお,本日河島委員は御欠席でございますけれども,資料3として同委員の意見書が提出されております。この点について,事務局から御説明いただけますか。

【大野著作権課課長補佐】時間が限られておりますので,ごく簡単に御紹介をしたいと思います。資料3が本日御欠席の河島委員から意見書でございます。

内容に関わる部分は,4段落目だと理解しております。漫画の海賊版対策に速やかに取り組んでいきたいという政府の方針自体に反対するものではないけれども,新たに違法となる行為について要件を厳しく付けていき対象を絞り込む必要があるということ,刑事罰のみならず,民事についても限定をすべきという趣旨の御意見かと理解をしました。

また,最後の段落にはプロセス的な御意見がございます。最後の2行辺りですけれども,今後一層な丁寧な議論を重ねていただき,慎重な姿勢でこの問題に取り組んでいただくことを切に願っているという御意見でございます。

簡単でございますが,以上です。

【道垣内分科会長】河島委員からそういう御発言があったとみなしてくださればそれで結構ということです。

そのほかいかがでしょうか。

どうぞ,田村委員。

【田村委員】どうもありがとうございます。今回このダウンロード違法化に関しましては,私をはじめとして小委員会から8名の連名で共同意見を1月30日付けで出しておりまして,それが今回参考資料4として皆さんのお手元にも配付されております。この参考資料4の意見は,1月25日に暫定的におまとめいただいて,主査が後は責任でまとめるということになり,個別のメールを中心に折衝が開始された中で提出しました。実はこの共同意見が対象にしていた報告書の案と今回の報告書は違っておりまして,主査あるいは事務局に非常に短期間でこの共同意見も反映していただいたことをまず感謝申し上げたいと思います。

私がこう時間を取っておりますのは,むしろ今後のことで,先ほど事務局からも,今回の報告書を踏まえて法整備に向けて最適な案,選択肢を考えていくというようなことがございました。その点に関係ありますので,この共同意見書の趣旨,あるいは私が今後の法整備に当たって肝要だと思っていることについて述べさせていただければと思います。

この共同意見書の趣旨は,今回広くダウンロード違法化を促進することに対する懸念です。今現在のところ違法になっていることが明らかな録音・録画と違って,一般の文書等の著作物というのは相対的に創作が容易ですので,権利者も多種多様となっております。その中には保護が必要な著作物ももちろんありますが,そうでないものも多数含まれ,特に権利者が何か保護を欲しているわけではないというものも多数含まれているように思います。その半面,録音・録画に比べて容量が小さいことが多いので,簡単にダウンロードできるということがありますので,過度に規制された場合に,人々の自由が録音・録画と違って相対的に大きく制約されるという特質性があると思います。

そのような中で,立法事実として,確かに海賊版対策ということで,漫画等やソフトウエアなどの有償著作物については喫緊の課題であるということが再三示されておりまして,それは私も十分理解できます。しかし,その必要性は認めるとしても,それを超えて幅広く全ての著作物について今回の規制の拡大が必要である,そういうことを示す立法事実はいまだに示されていないように思います。

先ほど研究目的の話もありましたけれども,例えば学術雑誌等に関しては,孤児著作物あるいはそうでないものも含め,過去に本誌掲載の全ての著作物を著作権者全員の許諾が得られていないにもかかわらず,DVD化し,ウェブ配信するということは通例行われておりまして,学生がそれをダウンロードしているというのも普通であります。こうしたものに対して,仮に主観的要件だけで規制を絞ろうとしましても,状況に詳しければ詳しいほどダウンロードができなくなりますが,そこまでしてダウンロード規制を拡大する必要性があるか,立法事実があるのかはやや疑問に思います。その結果,結論としては,有償著作物等の限定が必要であろうというのがこの共同意見の骨子です。

この意見,連名8名です。26名いらっしゃる小委員会の委員の中での確かに少数ではありますが,全員が研究者でございまして,この8名のうち,生貝委員を除いては著作権法の専門家として通っている者です。ほかにも著作権法学者と目される者が小委員会にいらっしゃいますが,その中では,この連名ではありませんが,上野達弘委員もやはり限定案です。著作権法学者でこういった考え方に共同歩調を取っていないのは,あえて申し上げますと,主査の茶園委員と大渕委員だけということで,それなりの著作権法に詳しいと自称している者の間では,むしろこちらの見解の方が強いということはお踏まえいただければと思います。

そして,今回このように我々が共同意見などを出したことを踏まえていただきまして,先ほどから御紹介があった報告書(案)も,例えば報告書本体,今回資料2-2ですと,77ページの3段落目の「しかしながら」辺りから78ページの2行目まで,これは民事規制です。それから,刑事罰に関しましても,80ページの3段落目,「この点」辺りから4段落目までということで,両論が,我々の意見も十分踏まえて複数人からというものが記されています。

このように報告書のところで両論併記となっていることは,委員会の意見を十分反映していただいたもので,そうだといたしますと,拙速な立法化を避けて,より慎重な議論を期すべきではないかと思います。

また,この報告書の後も,最近では,参議院の院内集会などで,漫画家自身からも,若者の間で広がっているスクリーンショットをむやみに抑止しかねないとか,漫画家やイラストレーターなどで,ウェブで気になったイラスト等をとりあえず,中には違法アップロードも含まれ得る可能性があることは認識しながら多数保存しておくという,一般的な創作活動をかえって阻害しかねないなどの反対の声が上がっておりまして,これに留意する必要もあるように思います。

もちろん海賊版対策ということで喫緊な課題であることは認めますので,もし今回更なる次回の小委員会での検討が難しいということであれば,報告書内では,少なくとも両論併記の報告書の中でコンセンサスが取れているのは,限定の掛かった規制等に関してのみですので,その方向で最適な法案を御準備いただければと思った次第です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。田村委員は小委員会の委員でもございます。せっかくより広い場で議論していただくので、小委員会の委員でない方……,どうぞ,永江委員。

【永江委員】文藝家協会の永江でございます。著作者として御意見申し上げます。ダウンロードの違法化がなぜ必要なのかいまひとつ分かりません。アップロードが違法なんですから,ダウンロードは違法化しなくていいんじゃないか。やはりポイントは主観要件の取り扱いですけれども,まさに主観と言われるように,恣意的に運用される懸念があります。時の権力に忖度して、権力が変わるたびに主観のガイドラインもどんどん変わるおそれがある。

私はしがないライターで評論等を書くわけですけれども,毎日の行為としてはグーグルのアラートでキーワードを幾つか登録しておいて,自動的に情報をネットで集めて,それを毎日チェックして,ときにはそれを利用して参考にしながら評論を書いていく。私だけでなく同業者の多くは同じような行為をしていると思います。

グーグルがアラートで探してくる情報は,それが違法なものか,合法なものかというのは,私の方では全く分からないわけですね。それを一々気にするぐらいだったら,こんな安い原稿料で原稿を書くのはうんざりするぜ、という気分にもなるでしょう。それが萎縮ということなんです。萎縮というのは,真綿で首を絞めるようなもので,じわりじわりと無自覚なところで効いてくる。著作者にとってそういう懸念される要素は少ない方がいいと思います。だから,著作者としては,対象範囲を限定してということでもあるけれども,ダウンロード違法化そのものに決して賛成できないと御意見申し上げておきます。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。今,権利者としてとおっしゃいましたけれども……。

【永江委員】著作者としてです。

【道垣内分科会長】しかし,挙げられた例は,利用者としての面をおっしゃったわけですね。

【永江委員】そこで著作者と利用者を二分することは意味がないと思います。利用しながら著作するのが著作者ですから,利用しない著作活動はあり得ませんので。

【道垣内分科会長】はい。どうぞ、瀬尾委員。

【瀬尾委員】写真の瀬尾でございます。きょうは,文化庁さんの御配慮か,難しいテーマなので,肩を寄せ合って狭いところにぎゅっと入って親密な議論をしろという御配慮かと思いますが,本件に関しましては実は,この中で皆さんいろいろな情報を共有されていると思います。ただ,いわゆる知的財産戦略本部での議論がもとになっている部分,その経緯について,一番最初から関わっていた者として,その情報についてまず皆様にお話をした上で,どうしてこうなったのか,そして,何なのかということについて,申し訳ありませんが,多少お時間を頂いて説明をさせていただきたいと思います。

そもそも去年の1月,その二,三年前からですけれども,漫画村という非常に違法なサイトがございました。固有名詞を出してまずいのであれば,議事録からは削除してください。ただ,そういった被害が急激に広がってきて,マーケットに対するダメージが極めて大きい。明らかに売り上げが落ちるという,多分出版社さんも初めての経験するような事態がありました。

これを受けまして,知的財産戦略本部の検証・評価・企画委員会の中にワーキングチームを作って,何とかしなくちゃいけないね,どうしようということを考えました。そして,その中で,とりあえず出血を止めなければいけないという緊急措置として,昨年の4月にサイトブロッキングに対しての要請をISPさんに行いました。これにNTTさんが応えていただけたんですが,実際にサイトブロッキングをする前に,その違法サイトはなくなりました。一定の成果が上がったとしたんですが,その緊急措置について,やはりこれは通信の秘密を害するのではないかという懸念から,これについてはきちんとした制度作りが必要であるということで,さらに新たなワーキングチームが設置されました。そのもともとの対応策の中にもおりましたし,新しいワーキングチームにも参加しておりました。

その中で,やはりサイトブロッキングについては非常に懸念があるということが強く言われておりましたし,通信の秘密という根本的な問題に絡んでくる。これも非常に国民生活に大変重いものでございますので,拙速を避けるべきということで,いろいろ慎重に議論しました。全部で10回でしたかね,9回でしたかね,非常に多く,これ,私の記憶で正確じゃないかもしれませんけれども,月に2回は出ていました。もう毎週毎週の感じで出ていました。

そこで議論をしたんですが,結論を申し上げますと,サイトブロッキングをやるときには,まず最初に全ての対応策を出しましょうという議論がありました。つまり,最初に,サイトブロッキングに反対する方たちから,このワーキングチームはサイトブロッキング狙い撃ちだろう,サイトブロッキングをやるということがもう決まっているんだろう,それで決め撃ちでやっているんじゃないのという疑義が非常に強くありました。いや,そんなことはありませんと言って,そのほかの対策として、アド対策や,例えば著作権法でいえば,ダウンロードの対象範囲を拡大などが挙げられてきたのです。このように、意図としては,全てのものをテーブルに出すという意図が発端だったということがあります。

そして,その後さんざんこれについて議論したんですけれども,基本的に,結論といっても,報告書も出したくないという非常に強行な意見を持つ委員がいらっしゃって……,国の会議で報告書を出さないというのは私,初めてです。税金使ってみんな使ってやって,報告書出ないというのはどういうことかと思いましたけれども,出さないということが決まって,その中でただ唯一決まってきたのが,いわゆるダウンロードの範囲拡大と,それと,これが余り共有されていないと思うんですが,同時に,総務省さんの担当になるのかな,違法サイトにはアラートを出しましょうという案があるんです。

つまり,先ほどからどれが悪いかどうかって非常に御懸念があって,これはそのとおりだと思うんですけれども,それをISPさんとか権利者とかそういうところがまとまった委員会なり何なりを作って,ここは本当にだめだよねといったら,そこについて措置を行うという,まず場所を作らなければいけない。そして,作った後,そのサイトについては,このサイトには違法サイトが含まれていますよ,それでも行きますか,戻りますかみたいなアラートを出すことが重要だというのも皆さんの合意にありました。そこで初めて情報を知ることがあるようなそういうアラートは必要だよねということも実はあのときの話では決まっていて,ちょっと分かりませんけれども,総務省さんの方で検討されているのではないかと私は推察します。

そして,もう一つ重要なことは,アドネットワークと呼ばれるブラックボックスなるネットワーク広告の方法,これは極めて悪質だと私は思っています。つまり,クライアントが広告出してと言ったら,単純にいわゆる見ている人の数だけで,どこに行くか分からないから,違法サイトにもお金が行ってしまうわけです。このアド対策と,違法ダウンロードの刑事罰化と,それから,アラートを全て組み合わせることで,正直言ってサイトブロッキングに相当するようなこともできるんじゃないか,その後サイトブロッキングを考えたらいいんじゃないかというような結論になりました。ただし,その話がここに出ていないのは,先ほど言ったように,報告書が公的に出ていないからだと私は推察します。公式に出ていない報告書は,文化庁としては取り上げられないはずです。

ただ,こんなような議論の中で決まったんですけれども,私も最初にこの違法化をあげはしましたが,最後に決を取るときというか,これについてよろしいですねといったときに,実は私は慎重な意見を申し上げました。というのは,サイトブロッキングよりも国民に対する影響はこの方が多分よっぽど大きいと思ったからです。普通の人が関わるわけだから。なので,これについては慎重にした方がいいんじゃないですかと言ったんですけれども,私が積極的慎重派であって,もう一意見,消極的な慎重派があった以外は,ほぼ満場一致でこれについてはやるべしというふうに決まりました。私としては,そういう意見を申し上げましたけれども,自分の所属する委員会がそういう結論を出したことについては,その結論は重んじるべきだということから,これについては肯定しています。

ただ,そのような経緯でこれが進んだんですけれども,海賊版対策というのは,日本の経済,それから,マーケットに対して極めて重い影響があります。重大な影響と言っていいと思います。これは例えば出版社のごく一部であれば,存続がかかるぐらいの影響があるということを数字と一緒に私は聞いています。ですので,私はやるべきだと思います。ただし,先ほど申し上げたように,一般国民の生活に影響が大きいというのもまた事実でありますので,そこは立法と検討で,何が文化審議会の中でしなければいけないかというと,一般国民に影響のない形にどうするかということが多分テーマになるんじゃないかと思われます。

ただし,その内容については,私は法律の専門家ではないので,刑事,民事についてどうしたらいいかは分かりませんけれども,ただ,先ほどの永江さんのおっしゃったような,グーグルの検索結果をダウンロードしたら、即違法になってしまうんじゃないかとか,例えばツイートでいったら,リツイートをそのまま落としたら,これって罰が来てしまうんじゃないかとか,そういう懸念は払拭されるべきだと思います。これは事実の周知と制度によって。なので,そういうことをきちんと周知してやった上で,どういうふうなものが必要かについては,私は正直言って,申し訳ないですけれども,文化庁さんにそのことは任せるしかないし,法制・基本問題小委員会で茶園先生がおまとめいただいたその内容を基にしていかに立法するかについては,一工夫,二工夫していただくことが必要かなと思います。

ちょっと長々お話ししてしまいまして申し訳ございませんが,こんなような経緯でこの話が来ておりますので,私はとにかくたくさんある連関の海賊版対策の一環として,政府が決めた政策としてこのダウンロードについては来ているという認識で私はこの審議会におりますので,これにつきましては速やかな立法をお願いしたい。ただし,今言ったような経緯と,それから,配慮,工夫を是非,これは学者の先生方のお知恵,反対されている先生方もいらっしゃるということですけれども,その先生方のお知恵も当然伺ったりしながら,総合的に法的なバランスを配慮して文化庁さんで立法していただきたいと思います。最後の方は意見ですが,経緯を含めて御説明をさせていただきました。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

そのほかいかがでしょうか。

【河野委員】おまとめいただきました御報告を丁寧に読ませていただきました。私の今回のこの報告書の受け止めなんですけれども,私自身は消費者として広く国民の立場におりますので,私たち消費者が,こういった問題が生じていることをどこかの場面でしっかりと認識しなければいけないと思っております。

この間サイトブロッキングの検討について様々報道されておりまして,先ほどの御紹介のとおり,報告書がまとまらなかったということも伺っております。非常に難しい問題であろうと私自身も思っておりますが,やはり今回の問題の一番重要なところというのは,先ほどの報告の中に,ダウンロード違法化の対象範囲の見直しのところの次のページに書いてくださいましたけれども,制度整備の際の留意点の中の普及啓発のところです。私たち国民は,果たして著作権についてどれだけの知識を持っているのか。例えば教育がそこをしっかりと担保できているでしょうか。

本屋さんの店先からお金を払わずに雑誌を持ってきてしまうと,それは泥棒です。刑法違反です。ところが,スマホなりパソコンで違法コンテンツをダウンロードすると,それは今現在,それがいいのか,悪いのかという判断は示されていないわけです。それで本当にいいんだろうかと思います。個人が家で楽しむからという理由で,そういうところからコンテンツを取ってきて使っていいんだろうか。そのことに対しては,やはりしっかりと考え方を整理して,社会に対してコンセンサスを得ないといけないのであろうと思っております。

専門家の,特に法学者の先生方からは御懸念が示されておりますし,最終的にどういうふうな内容にするのかということは,非常に丁寧な対応が必要だと私自身も思います。ただ,一番大事なのは,やはりリテラシーの向上で、教育に組み入れるのか,それとも,どこでどういうふうな形で著作権に対する意識を高められるのか難しい問題だと思いますけれども,そこのところを第一義に考えていただければと思っております。

恐らく私たちが考えるよりも,情報通信の技術と,それを搭載している機器,それから,それを使いこなすという状況というのは,物すごいスピードで進んでいます。そのことをしっかりと認識することが重要だと思いますし,まずは社会に対して,これは問題なんだよということをしっかりと知らしめる,それが重要だと思います。コンテンツの活用と,それから,保護というのはバランスが必要だと思いますけれども,まずは権利意識というその辺りをしっかりと社会に根付かせることが大事だと思います。若い世代が何の気なしにパソコンを操作して違法な情報を取ってしまった。そのことが持続可能性というか,再生産につながらない。その辺りにもやはり配慮する必要があるというふうに思っております。

今回御説明いただいた後半の方で,農林水産省さんからの要請によって,ビジネスの部分で保護の必要があるという御報告がありました。和牛は既に日本固有の商品ではなく,オーストラリア産が主流になっています。それから,この間の冬季オリンピックで話題になった大きなイチゴは本来日本で開発されたイチゴですし,シャインマスカットも既に他国で堂々と栽培されています。日本は権利意識が希薄な国だと思います。改めて、これを機にしっかりと社会に根付くように,過度な規制は当然のことながら不要だと思いますけれども,このことに対してしっかりと理解できるようなアプローチをこの分科会から発信すべきだと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

久保田委員。

【久保田委員】河野さんに本質的な部分を言っていただきましたが、全く同感です。きのうも教育利用に関するフォーラムがありまして,学校の先生方の代表とかそういう団体の人たちとお話をしているんですけれども,今河野さんが言われたとおり,全くもって著作権の本質的な理解のところは欠けているんですね。というか,多分そういうことを学んだことがない世代なんでしょうか。そういう意味では,今回こういう一つ一つ審議会で議論していることをトリガーにしていかに国民にメッセージを出していくかというのは,喫緊の課題なんですね。また,そういう喫緊の課題であることが伝わっていないために,懸念が出てくるといいますか。

そういう意味では,修正の方向についての共同意見は,全くもって刑法の謙抑性からいうと模範答案だと思います。それも正しいんですけれども,実際私どもの団体としましては,ソフトウエアのコピーの問題をずっと30年やってきまして,企業内における違法コピーの稼働率も本当に八十何%か90%から今十数%で,世界のトップレベルにあると。こういうものは,啓発とか普及とか企業の中におけるコンプライアンスの関係でこういう数字が出てきているという意味では,日本人は非常に遵法精神が高いのではないかと思っております。

そういう遵法精神の高さということについて,それを引き出すためにはやはり広報・啓発ということになってくるわけですが,是非今回は,こういう緻密な議論がされたことについても国民に伝えていく必要がありますし,そういう議論があったことすら知らないと,非常に乱暴な意見が形成されてくると思います。著作権法が全て悪のようなメッセージを作られやすい。そして,そういうメッセージを出している人は,確かに正義のポジションにいて,気持ちいいんですね。

でも,情報化社会で言う情報の価値とか意味とかということを先ほど永江先生からも言われましたけれども,そういう意味で,今度逆にその情報の価値とか意味が分かれば,なぜ著作権の制度があるのかとか,その実施については国民としての規範としてどこまで知らなければならないかと議論することで今回こういった結論が出たと思います。こういう苦労の賜物については,審議会で何をしているかということや,それから,MIAUのようなユーザー団体の人たちとも制度の正しい理解の上で正しい議論をすると。

もともと正しい知識がないところで,有用な情報については共有されるべきだよねとある意味非常にアナーキーな状態の話も出てきますので,制度のいわゆるベースになる基本の知識を一緒にした上で議論をされないと,論点がずれ,サイトブロッキングから流れてきてこういうふうなことになったというのは,操作された情報が発信されているというふうに私自身は思っております。そういう意味では,フラットな位置で,教育機関もはじめとして,著作権のまず正しい知識をベースにした上で議論をしていくということが最も大事かと思います。

当協会は,録音・録画物が民事上違法になったときも,こういった審議会でほかの著作物の団体の人たちに,録音・録画物だけでいいんですかということを言いました。また,早急にそこを立法化させるという団体さんからは,余計なことを言うなというふうにも言われましたけれども,そのときも著作権を学んでいる立場としましては,なぜ録音・録画物だけが私的使用目的の複製の対象になるのかというのは何も解けていないんですね。

とりわけ私たちのソフトウエア業界としては当時も,プログラムの著作物は非常にある意味で価値が高く,高価なものですから,特にゲームソフトなんかは,エンターテインメントですので,私的な領域で遊ばれるゲームを私的な領域でダウンロードしても自由に使えるということになってしまいますと,そもそもここで考えたときに,エンターテインメント性のあるものについては非常に引っ掛かるところではあるんですね。

こういった観点から,我々の協会としましては,当初の民事上の違法ということで法律が作られたときも,プログラムの著作物は是非侵害の対象にしてほしいということを言ったんですけれども,そのときもほかの団体さんに,是非皆さんもお考えになったらいかがですかと。そういう意味で,ようやく遅ればせながらこういう議論の場に来たのかなと思います。是非河野さんが言われたように,正しい著作権の知識の最低限のベースのところは国民で共有できるような普及啓発は,メディアの人たちとともに,また学校現場とともに手を取り合って,地味ですけれどもやっていきたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

井村委員。

【井村委員】書籍出版協会の井村です。出版界として一言御意見申し上げます。先ほど瀬尾委員の方からも御指摘ありましたとおり,私ども出版界は,既に海賊版によって甚大な被害を受けています。ここでこうしている間にも,本当にたくさんの違法アップロードと違法なダウンロードによって売り上げが損失していくというようなことが起きています。そういう意味においても,1日も早くこういった法改正,立法化を進めていただきたいなと思っております。

今もお話ありましたとおり,確かに著作権法の普及啓発というのは非常に大事だと思いますし,どんどんやっていただきたいと思うものの,違法性を知りながらダウンロードをしている利用者が本当にたくさんネット上にいます。こういう方たちは,自分が違法性を知っているんだよということを本当に大手を振って,隠そうともせずに利用しているという人たちが本当に多いもので,そういう意味では,ダウンロードの違法化というのは,ある一定の,もちろん慎重に進める必要もありますし,留意する点はたくさんあると思いますけれども,何とか難しい問題を解決していただいて,ダウンロードの違法化に関しても立法化を進めていただきたいなと思っております。

簡単ですが,以上です。

【道垣内分科会長】井上委員,どうぞ。

【井上(由)委員】ありがとうございます。私も小委員会の委員でございました。また,今回参考資料4で出させていただいており、共同意見にも署名しています。私自身は,被害の甚大な海賊版対策,これは喫緊の課題だと認識しております。今年度中に私的領域であっても適正な限定を付したダウンロード違法化を実現するということは,これは必須だと思います。これは私も賛成です。これをまずは大前提として一言申し上げます。

今回の報告書を見ますと,海賊版対策を超える規制が有力な選択肢という形で77ページに指摘がされております。委員の意見を受けて,文化庁には――小委員会主査,主査代理,分科会長などのお考えがあってのことだと思いますけれども――,当初案に修正をしていただ,有力な選択肢以外に,もう少し限定を付すべきだという意見もあったということを付記いただきました。この点,感謝申し上げます。

ただ,「有力な選択肢」が限定を付さない規制であると記された場合には,その後の流れとしては,やはりこの「有力な選択肢」をベースに条文を起こすというのが,行政府としての在り方だという話も聞いております。

この点を私懸念しております。報告書には限定説も「留意点」として書いてあり、また,報告書取りまとめの後も,参院の院内集会とか,それから,JILISの提言なども出て様々な意見が出ているところでございます。そのような意見も受け,関係の先生方の意見なども聞いた上で,「有力な選択肢」と今されていること以外の,「留意」するとされている限定案も考慮に入れて考えていただけるんだろうかと,そこが私は一番心配しているところでございます。

それが難しいのであれば,僭越ではございますけれども,この77ページの有力な選択肢に加えまして,今留意すべきであるとなっている被害の甚大な海賊版に限定すべきであるという案も有力な選択肢であると修正をお願いできないものかと考えております。

もう一つ申し上げたいことがございます。参考資料4の「共同意見」で私的利用の目的の複製に関する趣旨について若干書かせていただいております。30条1項は国民の行動の自由を安易に規制することは許されないという趣旨で作られているという点については,知財高裁判決あるいは多くの知的財産法学者の学説の説くところですが、それのみならず,政府の国会答弁などでも既に明らかにされているところです。これは昭和59年の当時の加戸文化庁次長の答弁の中で,著作権法30条の趣旨について,「法律は家庭に入らずというような基本的な考え方がある」という発言が国会でなされています。

そういうことも踏まえますと,30条というのは,単に私的範囲の利用については捕捉できないから,あるいは零細な利用にとどまるから規制してもかまわないということだけではなくて,より重大な趣旨,国民の行動の自由を守るというような重大な意味合いを含んでいるものだと思いますので,その点も考えて慎重に判断をしていただくことが重要なのではないかと思います。

この段階になってこのような意見を申し上げることは大変恐縮でございますが,報告書の内容について修正をいただくか,あるいは事務局の方で,今,留意すべきとなっている点も十分考え併せて,限定を付すことができるというふうな見込みをお示しいただけるのであれば私もその修正についてこだわるつもりはありませんが,今,最後の段階でございますので,一言申し述べさせていただきました。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】30条1項の話が出ましたので,ちょっと申し上げたいと思います。30条1項というのは比較法的にかなり幅広いという説明を受けておりまして,できる範囲が非常に広いということで法文に書かれている。それが技術の進歩その他で利用の仕方も変わってきたということで,様々な除外規定が増えてきて,あるいは補償金が措置されてということなんだと思うんですが,現在の実態を踏まえますと,実効性があるかどうかは別にして,ダウンロードの違法化をしていくという部分は,流れとしてはやっていくべき,基本的にこの考え方に賛成です。

また,井上先生のおっしゃった,この共同意見の中で示されている,閉鎖的な私的領域内での零細な利用にとどまるのであれば経済的打撃が少ないと知財高裁は言っている点についてはわけですけれども,私的録音・録画補償金の議論をしているときに,家庭内で行われる一つ一つの零細な複製であっても,総体として権利者にダメージを与えるということがもう明らかになっているわけですね。零細な利用にとどまれば経済的打撃は少ないと高らかに断言されてしまっても,僕らとしてはちょっと違和感がある。

また2ポツに関しても、私的複製の自由というのは,はたして私的複製の権利なんでしょうか,国民の基本的権利なんでしょうかというふうに,こういう話を聞くと思ってしまうんですね。権利者の権利を制限することによって私的複製が自由になっているということを踏まえるべきじゃないかなと思います。だから,ここの共同意見の中の1番の1ポツと2ポツに関してはちょっと疑問符が付くなと思いましたので,そのことだけ。

【道垣内分科会長】大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】この問題につきましては,報告書(案),資料2-2の49ページ以下のところに,「主要国の法制度【参考】」というものがございますので,ここから始めたいと思います。これは小委員会の中でも議論されたところですが,49ページの真ん中辺りに,「(1)私的使用目的の複製について一般的な例外規定を設けている国」ということで,大陸法系のヨーロッパ諸国においては,そもそも日本と同様の私的使用目的の複製に関する規定がないところもありますが,日本と同じような私的使用目的の権利制限がある国でも,ドイツ,フランスをはじめ多くの国が,違法にアップロードされた著作物等を複製する行為を例外規定の対象から除外しております。またカナダも同様だということです。国によって法制は違いますが,この辺りが主要国の国際標準であると考えられます。

30条1項は大変重要なもので,私的行動の自由を保障しておりますが,それもおのずから限度があると思っております。本来であれば,適法なソースからでも1つ複製ファイルを作れば,複製権侵害で著作権侵害になるのですが,それについては30条1項で権利制限になるので,私的使用の範囲であれば適法ソースから複製ファイルを作ることはできるのですが,明らかに違法なソースから複製ファイルを作る自由まで保障するのは行き過ぎであり,それは国際標準とはいえないのではないかと思っております。

それから,有体物と無体物とでは違うのですが,昔習った刑法を思い出していただきますと,贓物罪というのがあって,今は盗品等に関する罪というのがあります。現行刑法の256条,盗品譲受け等という表題の下に,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は,3年以下の懲役に処する。第2項,前項に規定するものを運搬し、保管し,若しくは有償で譲り受け,又は有償の処分のあっせんをした者は,10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。」とあり,窃盗というのが著作権法でいえば違法アップロードに対応するといえるかと思います。もちろん窃盗は犯罪なのですが,窃盗に係る盗品を譲り受ける行為というのがここでいう違法ダウンロードの方に対応します。このように,違法アップロードと違法ダウンロードの両方に対応するものがはっきりと犯罪となっており,これが出発点であると思っております。

それで,今回の資料2-1でまとめていただいているものでありますが,これには,民事の対象範囲というのが2ポツのダウンロード違法化のところの真ん中辺にあって,これはおっしゃるとおりだと思います。我々のものをまとめていただいたものですが,違法にアップロードされた著作物から,適法でなく違法ですが,違法にアップロードされた著作物から便益を享受しようとするユーザーの行為は,一般的に許容されるべき正当性がないこと,これを踏まえているのが次の諸外国の取り扱い,ドイツ,フランス等ということになるかと思います。

ということでありまして,もちろん私的行動の自由は重要なのですが,これは私も何度も審議会では申し上げていますけれども,我々には散歩をする自由があって,街の中,公園、道路などは散歩できるのですが,他人の私有地に入り込んで散歩をする自由というのはないわけであります。まさしくこれが同じであって,30条1項はあるのだが,無制限ではないということです。

今までは録音・録画が一部解除されましたが,その前は今の3号自体がなかったのですが,元々,権利侵害の明らかな違法情報源からの私的複製まで権利制限とするというのが先ほどの諸外国の例からあるように,行き過ぎだったわけです。その観点から言うと,本来あるべき姿に今回戻すというだけの話であります。殊更に制限するという話ではなくて,もともと主要国の国際標準からいうと行き過ぎだったものを,国際標準のレベルにそろえたというだけであります。今まで,行き過ぎがやや長い状態が続いていたため,中にはその状態を当然視して既得権化して考えておられる方もいるようですが,原点としては、何でも買う自由はあるのでしょうが,盗品を買ってはいけないというのと全くであります。その全くの常識論について、行き過ぎが今まで長く続いてきたから,そうでないという感覚になっているだけでないかと思っております。

それから,研究の必要のために,漫画研究等のいろいろな研究があると思いますが,その必要のために違法ダウンロードをする必要があるということを言われましたけれども,これもまた今回の紙の一番最後に書いていただいた極めて重要な点ですが,資料2-1の3ポツ,アクセスコントロールの真上のところに書いてあるとおり,研究目的での権利制限等について,権利者の保護・利益の観点にも留意しつつ検討というのがあります。これは全く違う方向性でありますが,むしろ日本国の著作権法の中に研究目的の権利制限の規定,普通の国ではあるかと思いますけれども,ないのがむしろ文化国家としては恥なので,これを機にきちんと規定を設けるべきだと思います。

私的複製という話と研究というのは別の話なので,混同せずにきちんと,私的複製は私的複製として考えるし,研究はこれを機にきちんと作って,そこの中で,漫画研究だろうが文学研究だろうが心安らかに研究ができるようにするべきであります。今回は私的複製の話で進めているのですが,別の話を混ぜると話が混乱してきますので,それ以外にきちんと研究目的の指摘複製について規定するべきです。うなずいている方ものすごくたくさんいらっしゃいますが,それこそが今後やるべき話ではないかと思います。研究は研究で外した上で,私的目的というのは研究ではなくて,趣味だったり,娯楽だったりだと思いますが,そういうものとしての話に純化しないと話が混乱してしまいます。

それから,先ほど出ておりましたけれども,著作権は,明示・黙示の許諾があればもともと違法にならないのであり,ここはもともと違法アップロードを前提としています。適法アップロードから別にダウンロードしてもこの対象になりませんから。皆さんがいろいろ出しておられる例の中でかなりのものは,黙示の許諾があって適法アップロードのものはもともと対象にしていませんので,その辺を混同すると非常におかしい話になってくるのではないかと思っています。

もう一点は,先ほども出ておりましたけれども,既に日本国としては,録音・録画については民事も刑事も違法になっているのであって,録音・録画とそれ以外のものに有意な差があるとも思えませんので,そこのところは法律の原則として,等しきものは等しく扱うべきであると思います。

何でその2つだけかというのは恐らく単純な話でありまして,当時,私的録画小委員会のマンデートとして録音・録画をやっただけであって,あの時に録音・録画だけが被害が大きいとすべきという話ではなくて,とりあえずそれを先行的にやったというだけの話であります。そこのところをあまり強調して,録音・録画だけ特別というと,国民に対するメッセージとしても,録音・録画は違法ダウンロードしてはいけないが,それ以外はやってよいという,むしろ逆のメッセージともなり得ますので,そこのところは大いに注意すべきかと思います。

あと,先ほど有力な選択肢と書き換えるべしというお話がありましたが,先ほど茶園主査からありましたとおり,いろいろな意見があったところを最後は主査に一任して,そのときの状況は客観的にはここに書いてあるとおりであります。有力な選択肢があった反面,それに対していろいろ反対も委員会で出ていたし,その後も個別に意見を出していただいて,それらを主査に全部客観的に見ていただいて紙に落としていただいたのがこの案であります。

これを今から崩し出したら,ある方向に変えろと言えば,反対方向に変えろという人が出てきて,もうむちゃくちゃになってしまいます。ガラス細工のように微妙なところをバランスを取って主査にまとめていただいたものを崩し出したら,収拾がつかなくなってしまいますので,それは決してやってはいけないことだと思っています。

【道垣内分科会長】小委員会としては主査に一任をして,それがここに出てきているので,小委員会の委員がここで文句を言うのはおかしいというのはある面おっしゃるとおりなのですが,この分科会として直すべきだということであれば,それは分科会の議決の問題ですので,それは構わないと思います。

どうぞ,多葉田委員。

【多葉田委員】新聞協会です。我々はやはり権利者として,海賊版対策というのは非常に重要だと考えておりまして,そういう意味では実効性のある形で進めていただきたいと思っております。ただ一方で,やはり表現の自由とか知る権利というのは,国民の大変重要な権利でありますので,やはり一般のインターネットユーザーが萎縮ということがないように,法制化に当たっては十分な配慮をしていただければなというのが我々の考え方です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

松田委員。

【松田委員】私も小委員会の一員でありまして,主査に一任する段階において,賛成の意見を表明した者であります。主査は,事務局の意見も踏まえて,(ア)から(カ)の修正の選択肢を十分考慮することを前提にして報告書を書き直すという趣旨の御発言がありました。その後、今回の報告書は,2回ぐらい修正されておりますが,その点については主査の任を十分に果たしていただいた報告書になっているものではないかと思います。分科会において新たな留意点を入れたり,事務局に限定を加えたりということも,できないわけではないと思いますが,ここまで研究者の方々が表明されたことについて今後立法の段階でどういうふうに反映するかは,それぞれの立法者が見守るべきかと思います。

といいますのは,小委員会において、研究者の方々が御意見を提出されたのは,(ア)から(カ)ですね。(ア)から(カ)が必ずしも統一されて出ているわけではなくてそれぞれの研究者において提出しているという状況です。そこでそれを取りまとめるということは不可能で,多分この分科会でも不可能だろうと思います。ですから,それを踏まえて立法段階で十分な留意を払わなければいけないということの記載をした上で主査一任にすることはどうかということが諮られて,賛成意見を表明したわけであります。したがいまして,私はこの報告書を分科会でも承認していただきたいと考えている次第であります。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

森田委員。

【森田委員】私は小委員会の委員でありますが,25日は学内の用務で出席できなかったので,報告書(案)について一言申し上げておきたいと思います。

まず、報告書の取りまとめにつきましては,文言を修正するということでなくても,答申そのものは,法案作成において法的な拘束力はありませんので,それをどう尊重するかというのは,結局,事務局の良識にゆだねるといいますか,こういう場を設けて、いろいろな議論がなされたということを踏まえて法案を作成いただくわけでありますから,相当数の委員から出された意見に十分に留意はしたけれども、結局は考慮しなかったというのでは、この審議会の意義が減殺されることになりますので,そこは事務局の良識に期待したいと思います。

次に、先ほどから議論を伺っておりまして,録音・録画以外に対象を拡大するということについてはコンセンサスがあり、それから,早急な立法が必要であるということについてもコンセンサスがあるわけでありますが,いずれの考え方を採るかによって方向性が大きく異なってくるのは、きょうの2-1のペーパーの3頁もそうなのですが,事務局が報告書(案)で示した問題の立て方として,「問題の所在」としては,「幅広い分野の著作物について、海賊版による被害が生じている」というのが問題であるという立法事実を挙げながら,「検討結果」で対象を広げるときには,「未然防止の必要性」を挙げてきて,現時点で特に被害が顕在化・深刻化していないところについても,将来何か問題が生ずるかもしれないので,あらかじめ未然防止をするために対象を限定せずに拡大するという考え方が述べられていることです。

このような考え方は,権利者の側からも強く主張されたわけでもありませんし,また,知財本部での議論も飽くまで海賊版対策であって,現に生じている被害に対して早急に対応してほしいということでありまして,これまでの議論の経緯を踏まえても、「未然防止の必要性」というのを強調されるのは適当でないように思います。報告書(案)では63~64頁や76頁でさらっと出てきていますが,きょうの2-1でもこれが大きく取り上げられていますので,この点に事務局の考え方が示されているとみることができそうです。そのような「未然防止の必要性」を強調して、既に被害が生じていない部分についても広く網を掛けるのだという立場に立てば,これは特に限定も付さず対象を一般化するということになるかもしれませんが,そのことに伴う様々な問題が指摘されているわけでありますから,余り未然防止の必要性を強調して立法に当たるのは適当でないように思います。

それから,先ほどからの議論をお聞きしていてすれ違いがあると感じますのは,違法であることを認識しながらダウンロードをするのはけしからんというわけでありますが,無限定な対象の拡大に対して慎重意見を述べる立場というのは,違法と適法の間にはいろいろな広いグレーゾーンがあって,これは神様の目から見れば違法・適法が定まっているのかもしれない,あるいは裁判になればそこで白黒が付けられるかもしれないけれども,一般の人が利用行為するときにはその判断が付きかねる場合が少なくないという点を問題としているわけでして、そこに議論のズレがあります。

先ほど「黙示の許諾」がある場合は適法であるといわれましたが、それでは、黙示の許諾があるというのは,一般の利用者はどのようにして確かめればよいかということは非常に難しい問題です。この種の問題は,以前に権利制限に関するワーキングチームで、例えばパロディについて議論をするときにも見られた問題ですが,適法だとしてしまうのは差し障りがあるけれども,多くの場合は黙示に許諾されていて,権利者は権利行使しようと思っていないが、ただ,利用行為の態様に問題があれば,権利行使をする可能性を留保しておきたいというような領域があるということです。こういう中間の,違法か適法かというのがはっきりしない、あるいははっきりと分けられない広い領域があって,そういう領域についてどう扱うかというのがここでの問題です。これに対して,刑事も含めたサンクションの威嚇効果によって,そういう領域について利用者は慎重に臨むべきだということを強調していくと萎縮効果が生ずるわけでありますから,それは適当でないということです。

それから,主観要件につきましては,そこも単に「違法であることを知りながら」という録音・録画の要件をそのまま維持するだけでは問題であって,重過失により知らなかった場合はこれに含まれない,つまり,重過失を含めて利用者の過失責任は問わない、違法かどうかについて検討を怠ったことについてサンクションを加えるわけではないということと,それから,事実の認識だけでは足りず、違法性の認識についても確定的であることが必要であるということ,これは報告書(案)の79頁では「適切に検討・対応を行う必要があるものと考えられる」と書かれていますから,この点は必ず立法によって対応がなされるものだと思いますが,それだけでは十分でないところをどうするかというのが客観的要件による限定の問題です。

人の物を盗んではいけないのは当たり前であって,そして,有体物であれば,客観的状況から人の物であるか否かは容易に判断できるのが通常ですから、これを盗ってはいけないのは当然でありますが,盗品かどうか分からないというときに利用者はどのような行動を取ることになるのかというのがここでの問題で,国民一般の自由の過度の萎縮をもたらさないようにしなければいけないということに留意する必要があります。そのような観点から,主観要件だけでは必ずしも十分でない部分がありますので,さらに客観的な要件で民事,刑事とも対象を絞るべきかどうかというのが争点でありまして,そこに問題のポイントがあるということを事務局におかれましては十分に留意されて,今後の立法化にのぞまれることを期待したいと思います。

【道垣内分科会長】吉村委員。そろそろ時間が……。

【吉村委員】短くさせていただきます。短く話します。瀬尾さんがおっしゃったような経緯も私も存じ上げているつもりで,それから,小委員会いろいろもめているぞという話は聞いていて,何日か前までは私は,もしかしたら田村先生,井上先生が激烈な批判をここで展開されるんじゃないかと思いながら来たわけですけれども,最後までいろいろな御調整をされたということで,ここまで来ているなという理解をさせていただきました。

となると,もうあとは,法制化で文化庁さんがそういう配慮ある法制化に向けて努力されるということでいいんじゃないかなと思います。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。御配慮頂きました。

参考資料2に関係法令が上がっております。森田委員が「答申」とおっしゃいましたけれども,この点につきましてはどうも諮問はないようでございます。21条1項2号により,重要事項について,重要事項は1項に書いてあることですけれども,意見を述べているだけで,それが報告書のようでございます。したがって,諮問を受けて答申するというのとはやや違うようでございます。文化審議会の意見というのは,次の5ページの文化審議会運営規則の中で,分科会の決議をもって審議会の議決とするということになっているので,ここでその意見について取りまとめていただければ,この21条1項2号に従って意見が出されるという仕組みでございます。

それ以降のことは,関係部局に委ねられることになり,最終的には国会の御判断でありまして,そこに向けての意見としてこの表現でよいのか,この専門家を集めた分科会の意見としてそれでいいのかという点を御審議いただければと思います。

短くだけ。どうぞ。

【大渕委員】1点だけ。先ほどちらっと出ておりましたけれども,普通であれば,刑法ですら事実の錯誤は犯罪の成立を妨げますが,法律の適用を間違っても,刑事ですら犯罪は成立するというところを,今回のは非常に詳細に書かれているとおり,事実の錯誤だけではなくて,法律の錯誤があっても民事すら責任を負わないという,場合によってはやや配慮し過ぎというぐらい行動の自由を重視したものであって,民事,刑事の学者から見たらびっくりするようなものになっております。そこのところはきちんと読めば明らかです。あまり言うと,今後、わざと間違えてとか,濫用とかいうような変な話になってしまうといけませんが,そこのところは十二分に配慮されているというところは御注意いただく必要があるかと思います。

【道垣内分科会長】ということで,この報告書のこの部分,第2章,きょう一番ホットなところだと思いますけれども,文言修正の御意見もございましたが,もしその御意見に御賛成の方があれば,私もそう思うとおっしゃっていただく方があれば,2票になりますから審議してもいいのですが,もしそうでなければ,このまま採択といいますか,議決するということでよろしいでしょうか。どうぞ、田村委員。

【田村委員】採択自体には反対いたしませんが,今日出てきた御意見のほとんどは,今後の事務局の対応についてだったと思います。ですので,それとは別に,是非事務局から,今後どのような立法をお考えなのかということを少し御披露していただくのが必要ではないかと。皆さんが,そういうことを聞きたがっていたように思います。

【道垣内分科会長】ただ,それはこの分科会の役割ではないと思われます。しかも,事務局としてここで何らかのコミットメントができるはずもなく,後ろには国会が控えているので、ちょっとそれはいかがなものかと思います。

【田村委員】そういうことでしたら,是非こういう新たな規制を設けるときは、まずは一歩ですので,そのベースラインは最低限であるべきだと思います。どちらかというと,事務局の有力な選択肢は,自由を拡大するとか規制をなしにする方が頑張って拡大すべきで,コンセンサスが得られないところは規制するという方向に思えますがむしろ話は逆ではないでしょうか。小委員会での全員のコンセンサスが得られているのは,最低限の規制からだということを是非踏まえて,また今日ももろ手を挙げて全面賛成という方はかなり少なかったように思いますので,是非それを踏まえて動いていただければと思います。

【瀬尾委員】ちょっと一言だけよろしいですか。

【道垣内分科会長】はい。

【瀬尾委員】申し訳ありません。済みません。時間が押しているところを申し訳ございません。今回の話は,そもそも文化庁さんが,今回5回ですかね,法制・基本問題小委員会を開催いただきましたけれども,そもそも相当無理な日程に,海賊版のワーキングチームの会議が押したためになってしまいました。もう数か月しかないというような中で決めなければいけない。本当はもっと時間があったはずなんですけれども。

そういった意味でいきますと,やっぱり政府の会議全体のバランスということもあって,今の田村先生含めて,多分法制・基本問題小委員会の先生の中での御不満は,やっぱりプロセスの圧迫の中で生じたものもあり得ると思います。ただ,これにつきましては,文化庁さんはあの中で5回やられたというのは,私はすごい開催だとはっきり言って思いますけれども,時間については,今こういうふうにして,文化審議会の場では時間が足りなくて審議が厳しかったということについては,これは知財本部の方の会議の席上できちんと,こういうふうなことの時間をもう少し取らないといくら何でも難しいよということは申し上げようと思います。それでできる限り濃密な議論をしていただけるような,政府間の会議のバランスを取るべきなのかなと今日は感じましたので,私,一委員ですけれども,そういうことは今後申し上げていきたいと思いますので,それだけ一言付け加えさせていただきます。

【道垣内分科会長】分かりました。もっとも、反対に急ぐべきだという御意見も随分あったと思います。サブスタンスについて何か問題があれば問題ですが,プロセスは早くできるものは早くした方が一般にはいいと思われます。出来上がりはこの紙です。この紙について,このままでよろしゅうございますか。

ありがとうございました。

それでは,ちょっと押しておりますけれども,次は第3章のアクセスコントロール等に関する保護の強化でございます。これにつきまして,もう既に御説明いただいていますので,御意見等ございますでしょうか。

よろしゅうございますか。急ぐようですが,本当に急いでいますけれども。

もし戻っても結構ですが,次に第4章についてはいかがでしょうか。

よろしゅうございますか。

第5章,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入。森田先生とかに語らせるとたくさんいろいろな面白いことがあるかもしれませんが。よろしゅうございますか。

それでは,第6章,7章も含めてですが,いかがでございましょうか。行政手続に係る権利制限の規定の見直し,その他の事項です。よろしゅうございますか。

どうもありがとうございました。

ということで,では,議事の2番目のこの分科会報告書は,原案のとおり決定するということ、すなわち、これを意見として申し述べるということにさせていただきたいと存じます。

では,次の議事の3番目,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等についてでございます。これにつきましては,末吉主査より,まずは御説明をいただきます。

【末吉委員】今年度の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会における審議経過につきまして,資料4に基づきまして御報告いたします。

保護・利用小委員会では,昨年度に引き続きまして,クリエーターへの適切な対価還元に係る課題について検討を行ってまいりました。今年度は,前年度までの検討を踏まえつつ,私的録画について補償すべき範囲の検討を行い,対価還元の手段について具体的な制度設計に向けた検討を行いました。今年度の審議経過報告は,これまでの4年間の審議の状況を一度整理し,まとめたものとなります。時間も限られておりますので,今年度の議論に重点に置きながら,全体について御説明いたします。

まず3ページをごらんください。本小委員会では,一昨年度,クリエーターへの対価還元の現状について整理を行いました。私的録音と私的録画それぞれのコンテンツの流通モデルごとに,契約実態等と対価還元の現状を整理いたしました。

次に,10ページをごらんください。補償すべき範囲については,まず補償が必要となるのは,権利制限規定により権利者に不利益が生じている場合であると考えられることを確認しております。その上で,この不利益は補償が必要な程度かという点については,平成4年の補償金制度導入時における整理の確認をしつつ,現時点でも私的録音・録画の実態があり,補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があると言えない場合には,なお補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられると整理いたしました。

これを踏まえまして,音楽コンテンツについては12ページ以降,動画コンテンツについては15ページ以降において,補償すべき範囲についてまとめてございます。音楽については,プレイシフトやバックアップを目的とする私的複製やダウンロード型の音楽配信サービスで購入した音楽コンテンツの複製を論点としております。動画については,タイムシフトを目的とする私的複製や,デジタル著作権管理,DRM技術の有無による補償すべき範囲の切り分けを論点としております。

これらについて,対価還元の手段の検討を具体的に進めるためには,私的録音・録画の実態を確認することが必要です。そのため,昨年度は録音について,今年度は録画について実態調査が実施されましたので,その結果を踏まえて検討を行いました。それが20ページ以降です。

録音については,実態調査結果とそれに対する評価は,昨年度の分科会でも御報告した内容を再掲したものです。録音体験者は全体の約4割であること,録音の使用機器としてはパソコンやスマートフォンなどの使用割合が比較的高いこと,過去1年間に録音対象とされた曲数は3年間で減少した一方,実際に録音された曲の総数は3年間で増加していることなどが分かりました。

録画につきましては,今年度,実態調査が実際されました。録画体験者は全体の7割であること,録画に使用される機器としては,ブルーレイディスクレコーダーが4年前と同様最も多いことが分かりました。そのため,同じく論点となっているタイムシフトについては,後で見るためという回答が最も多く9割程度でございましたが,一方で興味ある番組を保存するためとの回答も4割程度でございました。このように,4年前と比較して録画実態に大きな変化はないと言うことができるところでございます。

時間の関係で一部のみ報告させていただきますが,実態調査報告の全体版は参考資料に掲載しておりますので,後ほど御確認ください。

続きまして,38ページ以降ですが,整理した3つの対価還元手段について基本的な考え方を昨年度の審議経過報告において整理したもの,これを掲載しております。補償金以外の手法としては,契約と技術による対価還元手段と,クリエーター育成基金ついて検討しましたが,現時点において,補償金制度に完全に代替し得るとまでは言えないと考えられるとともに,そのような代替措置が構築されるまで手当てとしては,引き続き補償金制度により対価還元を模索することが現実的であるとする意見が多かったところです。

そこで,小委員会では,特に本年度は,このような議論や,本年度までに実施した実態調査結果を踏まえながら,クリエーターへの対価還元手段について現実的かつ実効的な手段を構築していく観点から検討を深めました。47ページをごらんください。対価還元の手段の見直しの方向性について記述しています。複製の実態を踏まえますと,汎用機器を補償金制度の対象とするべきかが課題となります。これについては,1,多様な提供主体の責任,2,課金対象を機器と記録媒体に限定している現状,3,私的複製を行わない購入者への補償金返還の実効性の確保の3点について議論しました。

小括として50ページから51ページにかけて議論をまとめております。これらの論点のうち,3つ目の補償金返還の実効性の確保の課題は,支払い義務者の位置付けの在り方に直結する課題であり,この点について抜本的に見直すとした場合には,検討に更に時間を要することが懸念されます。他方,この問題は長年課題とされてきた問題であり,現実的かつ実効的な手段を模索する必要があるところです。そのような観点から,録音と録画に分けて,明らかになった実態を踏まえつつ検討を行いました。

そこで,52ページからが私的録音についてです。総体として私的複製は減少しているとして,補償の必要性は乏しいとする意見がある一方で,実際に私的複製の実態がある以上は補償が必要だという意見がありました。他方,パッケージソフトについては,特にレンタルCDは私的複製の可能性が高いとしつつ,補償金制度を前提としながら,補償金を製品価格に一律に上乗せ徴収する現行の方式以外の方法についても提案がありました。

小委員会では,当面の手当てとしての現実的な解決策として,検討を深めるべき2つの点が明示され,1つは,私的録音の蓋然性の高い機器への課金を行うという現行の補償金制度が予定している対象機器について,私的複製の実態を踏まえて確認していく必要があるとするとともに,もう一つは,補償金の徴収方法の在り方の工夫など,多様な私的複製の実態を踏まえた適切な対価還元手段の構築に向けた検討を深める必要があると整理しました。

55ページから私的録画についてです。こちらは,先に申し上げたDRMやタイムシフト目的の録画の論点を中心に議論しました。DRMについては,先ほどごらんいただいた私的録画の実態調査において,実際の録画回数が一,二回が多かった結果から,ダビング10という回数制限は,私的録画の回数を制限していると評価できないという意見が出されました。ただし,これに対しては,そもそも放送におけるコピー制御技術が不要であるという意見もありました。

タイムシフト目的の録画に対する補償の要否については,制度導入時にも検討されており,今に始まった論点ではないことを確認しつつ,実態調査においても,2014年の調査結果と比べてそれほど状況に大きな変化が見られないことが確認されています。現実的な解決策としては,録音における場合と同様に,私的録画の実態を踏まえ,私的録画の蓋然性が高い機器として具体的に何が該当するのかを確認していく必要があると考えられるとしています。また,タイムシフト目的の録画に対する補償の要否は,具体的な補償金額を定めるに当たって検討する必要があるという意見がありました。

最後に,具体的な制度設計の議論を整理したのが59ページ以降です。代替措置が構築されるまでの当面の手当てとして,ただいま御紹介をした2点について再度記載をしております。1つは,現在の補償金制度の運用を前提としたときに,補償金の対象とされるべき機器・記録媒体としては,具体的に何が該当するのかについて実態を踏まえた確認をすることです。なお,この対応を進める際には,併せて,補償金制度に内在する課題や運用上の課題に関する指摘に留意しながら制度設計を行うことが必要であるとしています。

もう一つは,契約と技術による対価還元手段や,補償金の徴収方法の在り方の工夫など,私的複製の動向をより適切に捕捉し得る新しい枠組みの構築に向けた検討です。これについては,利用者,メーカー,権利者の各当事者から今年度新たに提案があったものであり,これについてもその構築可能性について検討を深める必要があります。

60ページ以降は,1つ目の現在の補償金制度の運用を前提として手当てを行うとした場合の考え方について議論の整理を行っています。基本的には昨年度議論した内容が中心ですので,時間の関係上割愛いたします。

以上,簡単ではございますが,報告とさせていただきます。保護・利用小委員会の委員の皆様方には,本年度も精力的に御議論いただきました。この場をおかりして御礼申し上げます。

保護・利用小委員会の審議経過報告は以上でございます。ありがとうございました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。これは結論がまとまったという報告書ではなくて,審議の経過をおまとめいただいたということでございますが,何か御意見等ございますでしょうか。

どうぞ,渡辺委員。

【渡辺委員】様々な観点から御意見が出されて審議していただいて,音楽家としては非常にありがたく思います。ただ,この審議はずっと続いていてなかなか結論が出ないということで,余りに機器も多岐にわたっていますから,その全ての機器に対して補償金をどのように算出するかとか,それから,映像ということを含めると話はややこしくなって,これは多分なかなか結論が出ないで,ずっとまた来年度も審議だけで終わっていくというようなことが予想されるというふうに,そこに対して危惧を感じています。

録音・録画補償金が始まって,当時は例えば音楽専用のCD-Rとかそういったものに対して補償金を取るということが決められていて,ただ,それ以降もどんどん機器の発達によっていろいろなものが,PCの中で録音できる,そして,複製のCDも作れるというようなことからいろいろな問題が起きているんですが,ただ,それを多岐にわたって結論を出そうとすると難しいとすれば,例えば現時点において,メーカー名を出して申し訳ないですが,ウォークマンとか,あれはもうハイレゾに特化した音楽を聞くというところに商品価値を出して,あれは確実に音楽専用器だと思われます。それから,iPodを私も持っていますが,確かに写真なども取り込める。でも,あれを今,携帯もあるという時代に,わざわざ写真を見るためにそれを使っているだろうか。あれを買う人たちは,やはり音楽専用器として使いたいから購入する。それを売っている現時点においては,やはりそれはもう音楽専用CD-Rと何ら変わらないと音楽家としては感じるのでありますが,それがなぜ簡単に機器の対象にならないのかというのをじりじりと待っているというのが心境であります。

ですから,多岐にわたって結論を出すのが難しいのであれば,これはもう間違いなく音楽専用の機器であろうと思われるものに関しては早く結論を出してほしいというのが個人的な思いであります。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

そのほかございますか。

どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】この審議経過報告ということなんですが,僕もこの問題を15年やっていまして,16年目になるんですけれども,いつも議論は両論併記ということで終わっていて。今年の議論というのはかなりいいところまで行ったはずなんですね。具体的な話も出ていたにもかかわらず,最終的に総花的な経過報告になっているというのは非常に残念でございます。

現に複製の実態があるわけですね。先ほども申し上げましたけれども,録音で40%,録画70%という人たちが複製というものを身近なものとしてやるという状況がある一方で,補償金制度に反対する方々は,違うんだと。これからは複製ということが世の中からなくなって,全てライセンスでコントロールできる世界が来るんだから,補償金制度は要らないんだとおっしゃるんですけれども,だったら,先ほどの30条1項の話になるわけですね。やたら広い自由を認めなくても,ストリーミングでできるんだったら,じゃ,そこを見直していきますかということを言うと,いやいや,それは消費者の権利だからみたいな話になってしまう。補償金は負担したくない,自由は欲しいという,いささか行き詰まりの議論になってしまっているように感じます。

来年度以降どういうふうに話が進んでいくか分かりませんが,その中で参加することになれば一生懸命やっていこうとは思うんですが,どっちにかじを振るのかということを,例えばイギリス型の,私的複製の自由がないけど補償金制度がない世界もあります。そっちに振るのか,そうじゃないのかというようなことをもう政策的に判断して結論を出していくことが必要なんじゃないかと思います。税金を使って審議会をやっているわけですから,そこで十何年も結論が出ないということはあり得ない話なので,しっかり頑張ってそこをやっていきたいと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思いますけれども,なかなか難しいところが・・・・。

大渕委員。

【大渕委員】私も保護・利用小委員会の委員をずっとやっておりまして,両論併記が続いていることについては,いくら何でもいいかげんにしろといわれかねない状態になってきていると感じております。何らかの前進,どちらに向くにせよ,両論併記がこのまま続くわけにはいかないというのがまず1点です。

それから,何度も繰り返しておりますように,30条2項というのは30条1項とワンセットとなっているという非常に重要な点で,元々30条2項の後ろ支えがあってこそ30条1項が現在でも生きているというところがありますので,30条2項の方が機能不全になると,30条1項は極めて重要なものでありますが,その土台が掘り崩されてきかねないと思っております。

蛇足ながら,先程のダウンロードの方も,日本の30条1項というのは非常に私的複製に優しいものだと言われていて,優し過ぎるのではないかと言われる方もいらっしゃるぐらいなのですが,そこで諸外国にはあまりないような明らかな違法ソースからのダウンロードでも自由というような行き過ぎを入れると,30条1項が必然でもないので,それ自体の土台が揺らぎかねません。これは非常に深刻な問題ですので,きちんとやらないと30条1項は守れないということが重要だと思っております。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

龍村委員。

【龍村委員】私も小委員会に参加させていただいております。いろいろ議論を伺っておりますけれども,とにかく利害対立が激し過ぎて,恐らく大きな制度改正のコンセンサスを取ることは難しかろうという状況になっているわけですね。そういう前提で見ますと,現状の制度を前提にして何ができるかという問題に絞り込まざるを得ないのではないかと思います。今回の経過報告もその方向性を示したものであると理解しております。結局,「主として」録音・録画の用に供される機器とは何を指すと解釈されるべきなのか,経過報告はこの点について,概括的には私的録音・録画の「蓋然性」の高い機器というくくりで考えていこうという方向性を打ち出したものだと思います。

したがいまして,次年度から御議論いただくのであれば,では,何がこれに該当するのかという各論に入らないとならない,総論のところでどういう制度設計にし直すのかということで議論しても,もうこれは延々と続くだけだと。我が国においてはこの点についてのコンセンサスは取れないという状況が現実になっていることを踏まえて,もっと具体論,各論で議論するしかないと思います。その意味で,次年度以降是非御議論いただきたいのは,どの機器,役務を対象にするかを具体的に俎上に載せた上でそれぞれに検討を加えるという議論に進んでいただきたいと思っております。

【道垣内分科会長】これも先ほど申し上げた,法令上は意見を述べるということで,この分科会がこのテーマについて重要だからとう判断をして小委員会を作って,これを議論しなさいというのでお渡ししていて,その経過報告が出てきているわけです。もし早く結論を出せというのがこの分科会の御意見であれば,それはそのように次年度以降,委員会のマンデートとして,タイムリミットを付けるというのもなくはないと思います。決定はコンセンサスによるということにはなってなくて,先ほどのルールによれば,多数決で決められるので,決めようと思えば決められるわけです。そこまで行くかどうかはともかくとして,とにかく急いでやる必要はあろうかと思います。

どうぞ。

【椎名委員】今,龍村委員のおっしゃったことも全くそのとおりで,今できること,それから,これから考えなければいけないことと2つこの審議経過報告は書いていると思うんです。蓋然性という言葉は僕はこの補償金制度で初めて知ったんですけれども,必然性ほどは高くないけれども,蓋然性があるというようなことで成立してきた部分で,この蓋然性というところで対象を捕捉すると,今の複製実態の大半が入らないという問題も一方であるんですね。

この審議経過報告ではどういうことを言っているかというと,現状のスキームの中で,具体的に何が該当するのかをきちんと議論しましょうということを言っているのと,もう一つは,やはり購入者に一律課金するというやり方では,汎用的な機器では制度が成立しにくいないということを言っていて,そこは知恵を絞る必要があるということを書いてあるんです。そこの議論をやらないと,補償金自体の実態がなくなってしまうということが一方であるので,やはり来年の議論の中では,現在の制度で捕捉すべきものをきちんと具体的に議論することに加えて,いわゆる汎用的な機器に関する仕組みを考えていくということも重要な論点になるのではないかと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

それでは,この点はここまでにさせていただきまして,次は4番目の議題,国際小委員会の審議の経過等についてでございます。これは私が小委員会の委員長をやっておりますので,私から申し上げます。

資料5でございます。先ほど申し上げたこの分科会からのマンデートは,国際小委員会には,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,それから,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方を検討せよということでございました。これについて次のような検討を行いましたので,御報告申し上げます。

まずは,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,これはWIPOにおける議論をWIPOの議論に参加されている事務局から御報告いただきまして,我が国の取るべき立場等について議論を行ったところでございます。まずは、これも先ほどの話と同じように,ものすごく長い間やっている,放送機関の保護についての条約作りについてであります。いつからというのは今正確に分かりませんが,相当長くやっております。WIPOでは結論がいまだに出ないという状況でございます。

今期の委員会では,放送機関が行うインターネット送信,主に見逃し配信についての保護の在り方や,放送機関に与えられる権利についての議論を行いました。さっきの資料5の3ページにございますように,我が国としては早期に条約を作るべきだとずっと言い続けていて,難しい話を置いておいて早くやったらどうかというのが全体のスタンスなのですが,ネット配信事業者とのバランスに考慮するべきだという意見等が出ております。

今後,焦点となると思われますのは,アメリカから新たに出てきた提案でございます。これについて,幾つか分かりにくい点があるので,こういう点を明確化すべきじゃないかという議論や,あるいは全体として国際的な放送の保護として十分なものにすべきだ、これだけ時間を掛けたのだからちゃんとすべきだという意見や,あるいは国内の侵害実態や法制度を踏まえた観点から各国で受け入れられるような工夫をすべきだという意見が出ているようでございます。

もう一つWIPOにおいて,権利の制限と例外,その他の議論も行われておりまして,それについて国際小委員会で議論を行いました。そのほか,美術品がオークションで転売されるごとに著作権者に売価の一部を与えるという追及権についてWIPOで議論がされているところでございます。追及権につきましては,我が国の現状を把握するために,有識者や画廊の方,あるいはオークションハウスの方々からも意見のヒアリングを行いました。

5ページにありますように,美術品の著作者が音楽や文学の著作者よりも著作権収入に関して不利であると言われております。1回売ってしまってそれっきりだからです。そういう認識の下,一部の国では追及権が導入されているという実態について,あるいは追及権の導入による美術品取引市場への悪い影響もあるんじゃないかという点について,さらにその執行,実際に実効的に取れるのかという点等について議論がされました。これらを踏まえまして,追及権の対象となる取引や,集中管理の手法,あるいは追及権料の分配方法などを今後WIPOで議論されていくと思われますけれども,それについて我が国としても適切に対応すべきだという議論がございました。

大きな2番目で,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございます。これは7ページから8ページにまとめておりますところ,海外における著作権侵害の最新状況等について文化庁,事務局からの御報告を頂きまして,どうすべきかという議論を行いました。

侵害者の匿名性の高さ,あるいは不正ストリーミング機器の被害等についての報告がございました。文化庁としても,今現在取り組んでいる取組,あるいは委託調査でございますけれども,日本のコンテンツ企業が海外で権利執行して,どういう事例があるのか,どういう問題が起きたのかということについての調査も行われているということを伺いました。そういうことを踏まえまして議論を行いまして,より多様化・複雑化している著作権侵害に対して技術的・法的質問がございました。

また,意見としては,海賊版対策は継続的に対応しなければいけないということ,文化庁としてもきちんと注力すべきだという意見、それから,先ほど申しました事例集が出来上がった後は,そこに基づいて審議をしなければいけませんし,引き続きそういう調査も必要だという御意見がございました。

今後ともなかなか海賊版,これもイタチごっこでございますけれども,なかなか終わりません。国内のみならず,国際的な局面を前提にどうすべきかということを小委員会として議論してきました。委員の皆様には,熱心に御議論いただきまして,この場をかりてお礼を申し上げます。

以上が経過報告でございます。

これにつきまして,何か御意見等ございますでしょうか。

瀬尾委員。

【瀬尾委員】済みません,1つだけ。美術の委員がきょうは欠席なさっていることから追及権について一言申し上げます。これにつきましては,美術の関係の方々としては,過去十数年,もう20年近く熱望されてきた権利でもございます。最近は,権利者の国際団体であるCISACからも,これについてはこの権利をきちんと確立したいというような御希望を伺っております。

また,私個人の意見としましては,やはり日本の家庭の生活に美術品がきちんと普及していくような,誰の家にも絵が掛けられるような,そんなような文化的生活をするためには,若手の育成が不可欠だと思っております。そういったことを後押しするような制度にもなり得ると思っております。一方で,非常に少ない金額ということもございますけれども。どうしてもメーンストリームにならないで片隅で語られることが多いテーマなんですが,是非周知も含めてこの追及権につきましては取り上げていただいて,少なくともまずは検討若しくは内容を周知,そういったことで文化審議会の席で御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。今の御意見は,国際小委員会でWIPO対応というよりは,日本法として独自立法もあり得るので,来年度以降のテーマとして取り上げるべきだという御意見かと思いますので,それはあり得るだろうと思います。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますか。それでは,この点は以上とさせていただきます。

その他でございます。昨年の著作権法改正等について,事務局から御報告いただけますでしょうか。

【大野著作権課課長補佐】時間が押しておりますので,ごく簡単に御紹介をいたします。参考資料5から7をごらんいただければとおります。

まず参考資料5は,いわゆるTPP整備法の施行通知でございます。御案内のとおり,昨年の12月30日に施行になっております。1ページ目の1ポツから5ポツまで非常に重要な改正が盛り込まれております。このうち特に保護期間の延長につきましては,国民の方々の御関心も高いということで,文化庁でQ&Aを作成し,積極的な周知に努めているところでございます。

次に,参考資料6は,いわゆる平成30年の著作権法改正でございます。こちらは,昨年の12月28日に関連の政省令などが公布されまして,基本的に本年の1月1日から施行されているものでございます。改正事項は,参考資料6の1枚目に1ポツから4ポツまで記載のとおりでございます。このうち,2番,教育の情報化の関係につきましては,1月1日施行ではなくて,公布から3年以内の施行ということになっておりまして,現在,関係者の方で施行に向けた準備を鋭意進めていただいているところでございます。

それが参考資料7でございます。教育の権利制限に伴う補償金とか,その他,本日も複数の委員から御指摘のあった,教育現場における普及啓発,研修などを含めまして,幅広い課題について関係者間で議論を行うフォーラムが立ち上がっておりますので,御関心があればまた御参照いただきたいと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

何かございますでしょうか。著作権課は人数が余り多くないですけれども,毎年いろいろな仕事をされていまして大変だと思いますが,病気をされないように頑張ってください。

よろしゅうございますか。

では,閉会ということなのですが,本日は,今期最後の著作権分科会でございまして,中岡文化庁次長がいらっしゃっています。一言頂ければと思います。

【中岡文化庁次長】今回の著作権分科会を終えるに当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

今期の著作権分科会におきましては,昨年度からの継続課題でございますが,リーチサイトへの対応に加えまして,本日も大変熱心な御議論いただきましたダウンロード違法化の対象範囲の見直しや,著作物等の利用許諾に関わる権利の対抗制度の導入などの新規課題につきましても御審議を頂戴いたしまして,本日この報告書として法改正の方向性をお示しいただいたところでございます。迅速な対応が求められる重要な課題につきまして,精力的に御審議をいただきましたことを感謝申し上げます。

本日の御議論にもございました,インターネット上の海賊版による被害は日々深刻化しております。その中で,きょうもいろいろ開示していただきまいたけれども,政府として考えられる対策を総動員をして,一刻も早く被害の拡大を防止する責務がございます。文化庁と致しましては,著作権法を所管する者と致しまして,制度の整合性はもちろんのことでございますけれども,本日取りまとめいただきました報告書の内容,また,本日も様々御意見を頂戴いたしました立法上あるいは運用上の配慮のことにつきましてもしっかりと踏まえまして,今国会に著作権法改正案を提出すべく準備を進めてまいりたいと考えておりますので,引き続き御指導を賜われれば存じます。

また,今期の分科会におきましては,クリエーターへの適切な対価還元や著作権保護に向けた国際的な対応,インターネットによる国境を越えた海賊行為についての対応の在り方につきまして御議論いただきまして,今後検討を進めていく上で重要な御示唆を頂戴いたしました。各委員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中にかかわらず,多大な御尽力を賜りましたことに改めてこの場をおかりいたしまして感謝申し上げまして,私の方からの御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

それから,もう一つ,規定により,松田委員におかれましては,次期の委員への任命ができないため,これが最後の会議の御出席になりますので,一言御挨拶頂ければと思います。

【松田委員】ありがとうございます。年齢によって今期限りでございます。いろいろありがとうございました。私,33年間著作権審議会とこの分科会の委員を拝命してまいりました。この間の著作権法の改正と施策を一言で言うならば,コンピューター情報処理と情報通信と,これによる社会の変革に対応した情報法制としての著作権,これを審議してきたのだろうと思っております。

この間,これら技術,社会変革を捉えて,著作権法からデジタルコンテンツとネットの部分についてこれらを取り出して別の運用にするということの運動が起こりました。それから,一部の研究者からは,米国流のフェアユースの導入などの動きがありました。本分科会と致しましては,基本的スタンスを譲らず,必要な改正と施策を重ねてきたと考えております。振り返れば,これでよかったのではないかと思っております。

しかし,この間の分科会は,著作権の在り方について大きく梶を取っていたということになるのだろうと思います。研究者の要請などはここに影響したものと考えています。特に平成21年以降の改正を振り返りますと,情報処理,情報通信に対応した著作権法の改正と言うことができましょう。30年の改正の柔軟な権利制限規定の導入と,教育関連の35条関連の改正は,この大きな流れの改正であったと思います。

これら改正を踏まえますと,著作権法は,改正から更に実務的な実行の場面に移るのではないかと思っております。この場面においては,協議・協定によるソフトローの形成が重要になると考えております。ソフトローの調査によるところによりますと,権利者団体と利用者団体が,特に利用者団体はプラットフォーマーですが,協議することなく,それぞれ使用ルールを定めてソフトローとしているというところが見られます。柔軟な権利制限規定や35条関係の利用促進制度自体ではイノベーションは遂げられません。新たな需要に対してこれら規定の適用の限界をどのように定めていくかということは,両団体間における現実のルールの策定が必要です。これは協議によって形成するべきだろうと思っています。

私は分科会を去りますけれども,著作権法のソフトローの形成の調査研究をしたいと考えております。33年間ありがとうございました。(拍手)

【道垣内分科会長】ありがとうございました。私が最初にこの場に加えさせていただいたときからずっと座っていただいて,たくさん貴重な御意見頂き,ぶれないしっかりした御意見をいつも頂いて勉強させていただきました。自分が去って大丈夫かと御心配だろうと思いますけれども,私も心配していますけれども,外から温かい声援を,厳しい声援でも仕方ないんですが,頂ければと思います。今後もよろしくお願いします。

私も今期,分科会長を務めてまいりましたけれども,一応これで切れますので,一言。この難しい時代における著作権の問題について,小委員会における議論を委員でなくても陪席させていただいたりしましたけれども,全く相当大変な状況です。先も見えないし,変化が激しい。しかし,どこかで決断しなければいけないと思います。茶園委員と末吉委員にはその難しいところをやっていただいたので私は大変助かっております。今後ともよろしくお願いいたします。委員の方々も本当に支えていただきまして,ありがとうございました。

では,以上で本日の委員会を終わらせていただきます。ありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動