文化審議会著作権分科会(第54回)(第19期第1回)

日時:令和元年7月5日(金)
10:00~12:00

場所:東海大学校友会館望星の間

議事

1開会

2議事

  1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
  2. (2)第19期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
  3. (3)小委員会の設置について
  4. (4)その他

3閉会

配布資料

資料1
第19期文化審議会著作権分科会委員名簿(109KB)
資料2
「知的財産推進計画2019」等の政府計画(著作権関係抜粋)(649KB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料3
第19期文化審議会著作権分科会における検討課題について(案)(66.1KB)
資料4
小委員会の設置について(案)(59.5KB)
資料5
授業目的公衆送金補償金に係る指定管理団体の指定について(148KB)
資料6
授業目的公衆送信補償金に関する検討課題の進捗状況(334KB)
参考資料
文化審議会関係法令等(146KB)
出席者名簿(54.4KB)

資料3,資料4,参考資料について異議なく,案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。

資料3
第19期文化審議会著作権分科会における検討課題について(66KB)
資料4
小委員会の設置について(59.2KB)
参考資料
文化審議会関係法令等(145KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。

○本分科会の分科会長の選任が行われ,道垣内委員が分科会長に決定した。

○分科会長代理について,道垣内分科会長より鈴木委員が指名された。

○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

(傍聴者入場)

【道垣内分科会長】傍聴者の方々におかれましては,長い間お待ちいただきまして,申し訳ございませんでした。

私が分科会の会長に選任されました道垣内と申します。また,分科会長の代理としては,鈴木委員を指名いたしましたので,御報告申し上げます。

本日は今期最初の著作権分科会になりますので,議事に先立ちまして,中岡文化庁次長から一言御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

なお,カメラ撮りがあるようですので,次長の御挨拶までとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【中岡文化庁次長】ただいま御紹介いただきました文化庁次長の中岡でございます。今期の著作権分科会の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

先生方におかれましては,日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして,御協力・御指導を頂戴いたしておりますとともに,このたびは御多用の中,著作権分科会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。

昨年度の著作権分科会におきましては,「リーチサイトへの対応」等の海賊版対策をはじめとする著作権等の適切な保護を図るための措置のほかに,「著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」などの著作物等の利用の円滑化を図るための措置につきまして,制度改正の方向性を示す重要な御提言を頂戴しております。

文化庁におきまして,この内容を踏まえまして,さきの通常国会への法案提出に向けて準備を進めておりましたけれども,法案の具体的な要件に関しまして様々な御意見があった,これはマスコミ報道等で御案内だと思いますが,国民の皆様の十分な御理解を得るには至らないという判断があり,法案全体の提出を見送ることといたしております。

今後の法案の取り扱いにつきましては,現時点ではスケジュールや具体的な内容等は決まってはおりませんけれども,海賊版による被害は深刻な状況でありまして,早急な対応が必要であることは論を待たないところでございます。

深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じることと,国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないという2つの課題を両立させることが非常に重要でございまして,国民の皆様の声を丁寧に伺いながら,引き続きしっかりと検討を進めたいという考えでございます。

さて,本日の著作権分科会は,今期の第1回目の会合でございますけれども,5月から始まりました令和の時代の最初の会合でもございます。新たな元号となりました令和は,日本最古の歌集でございます万葉集からの引用でございますけれども,梅の花の下,生まれた歌だと捉えておりますが,この膨大な著作物の中からたった2文字を選び出しまして,これからの新しい時代の意味を読み解かれましたように,著作物は,時代を超えて受け継がれ,新しい文化を築く源となるものでございます。

一方で,昨今の情報通信技術の発展等を背景にいたしまして,著作物の創作・流通・利用をめぐる状況が,日々,刻々と進化しております。その中で,著作権制度を最新の時代状況に適合させていくために,何が必要なのかを見極めて,適時適切な対応を講じていくことの重要性もますます高まっていると認識しております。

とりわけ,著作物の創作・利用の態様の変化を踏まえながら,クリエーターへの適切な対価の還元と,著作物利用の円滑化を両立させることが大きな課題となっているものと承知しております。

先般,EUにおきましてデジタル単一市場における著作権指令が成立するなど,世界各国におきまして,こういった課題への対応が精力的に進められております。我が国におきましても,その状況を適切にフォローしながら,国内事情も踏まえた対応の在り方につきまして検討していく必要がございます。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門のお立場から,新しい時代におけます我が国の著作権制度・著作権施策の在り方につきまして,忌憚のない精力的な御議論を頂戴したいと思います。

私からの御挨拶は以上でございます。今年度も何とぞよろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】御丁寧な御挨拶,ありがとうございました。

では,議事に入りたいと思います。この議事の中では恐らく「その他」に該当するのだと思いますが,最後になると忘れてしまいそうなので,議事の公開についての申し合わせの改定について,御説明の上,お諮りしたいと思います。よろしくお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の参考資料の11ページをお開きいただければと思います。「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」という文書がございますが,この3ポツの(1)の部分につきまして,技術的な修正が必要になっております。

下線を引いておりますが,もともと「文化庁長官官房著作権課」と記載がされておりましたところ,昨年の組織再編によりまして,長官官房という組織がなくなりまして,「文化庁著作権課」に改編がされておりますので,その点につきまして技術的な修正をお願いしたいと思っております。

【道垣内分科会長】実質的な内容が変わるものではないと思います。この点,今の事務局の御説明のとおり,あるいはこの紙の11ページのとおり,改定したいと思いますが,いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内分科会長】ありがとうございます。では,今後はこのような規則に基づいて行うということにさせていただきたいと思います。

議事の(2)と書いてあるところですが,第19期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について,意見交換を行いたいと思います。

まずは事務局より,知的財産推進計画2019など政府の計画の内容と,それを踏まえた検討課題の案につきまして,御説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それではまず,資料2を御参照いただければと思います。知的財産推進計画2019をはじめとしました政府計画から,著作権関係部分を抜粋しておりますので,順に簡単に御紹介をしたいと思います。

まず,1ページの知的財産推進計画2019の2ポツ,(2),マル1「創造性の涵養・尖った人材の活躍」という部分でございます。こちらは知的財産の創造などを担う人材育成について記載がされたパートでございます。

まず,「現状と課題」といたしまして,尖った人材の才能を開花させるために,教育現場の内外において様々な学びの場の充実が求められていることが記載されております。とりわけ,従来から取組を進めている知財創造教育や,先端技術の活用,Edtech,文理融合型のSTEAM教育などを推進していく必要があるという問題意識が記載されております。

具体的な施策につきましては,1ページの下のあたり,「施策の方向性」というところから記載がございます。1つ目は,知財創造教育に関して,教材等の収集・作成,それらを活用した実証授業の実施などを進めていくことが記載されております。

次に,2ページの上の部分に,著作権教育についての記載がございます。2018年度著作権教育教材等の検証事業とございますが,こちらは昨年度,文化庁で実施した事業でございます。この検証事業におきまして,既存の様々な教材につきまして,必ずしも教育現場で認知がされていないといった課題も明らかになっておりますので,その結果を踏まえて,教材等の開発・普及など,効果的な普及啓発を実施していく旨が盛り込まれてございます。

次に,マル5「模倣品・海賊版対策の強化」でございます。「現状と課題」のところには,著作権侵害がますます悪質かつ巧妙になっており,海賊版被害が非常に深刻な状況であること,また,そういった状況を踏まえまして,昨年度来,政府全体として総合的に対策を検討してきたことも記載がされております。

これを踏まえた具体的な施策につきましては,「施策の方向性」に記載の3つでございます。1つ目が,インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため,効果的な著作権教育の実施,正規版の流通の促進など,関係省庁等において総合的な対策メニューを実施するために必要な取組を進めること,その際,取組についての工程表を作成し,進捗・効果を検証しつつ行うということが盛り込まれてございます。

また,その下はいわゆる普及啓発でございますが,模倣品・海賊版を購入しない,また,侵害コンテンツについては視聴しない,こういった規範意識をしっかりと形成していけるように,関係省庁,関係機関が一体となった啓発活動を推進する旨が盛り込まれてございます。

その下は,先ほど御紹介した著作権教育に関する同様の記載でございます。

次に,3ポツ,(2)マル3「データ・AI等の適切な利活用促進に向けた制度・ルール作り」という部分でございます。「現状と課題」の部分につきましては,昨年の不正競争防止法の改正についての記載のほか,著作権法の改正におきまして,AIをより深化させるための学習用データの収集・蓄積などにも資するよう,新たな権利制限が設けられたことなどが記載されております。

また,次の段落には,海外において,各国で戦略的なデータ管理に関する整備が進められていること,さらに,次の段落では,AIによる創作物につきまして,著作権法や特許法においてどのように取り扱っていくのかということについて,論点となり得る旨が記載されております。

具体的な施策につきましては,4ページの上の部分に2つ記載がございます。1つ目は,2018年の著作権法改正におきまして,いわゆる柔軟な権利制限規定や,教育の情報化に対応した権利制限などが創設をされておりますところ,これらにつきまして,ガイドラインの策定,普及啓発など,適切な運用環境の整備を行うこととされております。

また,2つ目は,新しい課題でございますが,研究目的の権利制限規定の創設や写り込みに係る権利制限規定の拡充など,昨年度の審議会において検討の必要性について御指摘を頂きましたので,こういった課題を含めまして,著作物の公正な利用促進のための措置につきまして,検討・措置を行う旨が記載されております。

続いて,4ポツ,(2),マル2「クリエイション・エコシステムの構築」という部分でございます。「現状と課題」の部分におきましては,コンテンツの国内市場が横ばいを続ける一方で,海外市場が大きく成長しており,我が国にとっては,ある意味,大きなチャンスが生まれていることなどが記載されております。

とりわけ,2段落目の3行目あたりからでございますが,質の高いコンテンツが持続的に生み出され続けるために,コンテンツの利用に応じてクリエーターが適切な評価・収益を得られ,それを基に新たな創作活動を行うことができる,これによって,全体としてコンテンツ市場拡大へとつながっていく,これをクリエイション・エコシステムと呼んでおりますけれども,こういった仕組みの構築が求められる旨が記載されております。

具体的な施策につきましては,次の5ページの下半分でございます。1つ目は,コンテンツの利活用を促進するために,従来から取組を進めております音楽分野における権利情報データベースの整備や,それを活用した一括検索サイトの開設などのための実証事業を実施しまして,権利処理プラットフォームを速やかに構築すること,また,併せてブロックチェーンなどを活用しまして,著作物に関する権利処理・利益分配の仕組みの構築を検討することが盛り込まれております。

2つ目は,新しい課題として,放送番組をインターネット上で同時配信など行う際の権利処理の円滑化についてでございます。関係者の意向を十分に踏まえつつ,運用面の改善を着実に進めること,また,制度の在り方につきましても,今年度内早期に検討を開始しまして,必要に応じた見直しを本年度中に行う旨が記載されております。

3つ目は,継続検討課題でございますが,クリエーターに適切な対価が還元され,コンテンツの再生産につながるよう,私的録音録画補償金制度の見直し,当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討・措置を行うことが盛り込まれてございます。

本文につきましては以上でございまして,6ページから17ページまでは,それぞれの施策についての工程表が付けられております。説明は割愛いたしますので,必要に応じて後ほど御参照いただければと思います。

次に,18ページを御覧いただきたいと思います。ここからは,知的財産推進計画以外の政府計画ということになります。まず,成長戦略フォローアップという文書におきまして,先ほど御紹介したのと同趣旨でございますが,コンテンツの円滑な流通を図るために,権利処理手続の円滑化・効率化の仕組みを図っていくこと,また,下の段では,インターネット上の海賊版につきまして,総合的な対策を講じる旨が盛り込まれているところでございます。

19ページ,20ページは,これに対応した工程表でございます。

次に,21ページを御覧いただきたいと思います。21ページの上の段が経済財政運営と改革の基本方針2019,いわゆる骨太の方針と呼ばれているものでございます。このうち,マル3「文化芸術立国の実現」というところの中に,上から4行目あたりでございますが,海賊版対策を総合的に推進する旨が盛り込まれてございます。

それから,下の段が規制改革推進に関する第5次答申として,規制改革推進会議で決定された文書でございます。この一番最後の段落に,先ほど御紹介しました放送のインターネット上の同時配信などに係る権利処理の円滑化につきまして,先ほどの知財計画と同趣旨の記載がございます。

今回の答申の前提となる昨年度の規制改革実施計画の抜粋が,次の22ページでございますので,御関心があれば御参照いただきたいと思います。

資料2については以上でございます。

続けて,資料3について御説明をさせていただければと思います。ただいま御紹介しました政府計画を踏まえまして,今期の著作権分科会における主な検討課題を事務局の案として整理をした資料でございます。大きく審議事項マル1からマル4まで区分して記載しておりまして,それぞれ3つの小委員会と使用料部会に対応した課題として想定しているものでございます。

まず,マル1が「著作権法制度の在り方及び著作権関係施策に係る基本的問題に関すること」でございます。主に6つの課題を想定しております。

1つ目が,独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与等について,ということで,こちらは昨年度御議論いただきまして,一般的なライセンスの対抗制度について結論を出していただきました。その際,独占的ライセンシーに対する差止請求権,それから独占的ライセンスの対抗制度につきましては継続検討となっておりましたので,今期,御検討をお願いしたいと思っております。

それから2つ目の写り込みの拡充,3つ目の研究目的の権利制限の創設につきましては,昨年度の小委員会におきまして検討の必要性について御指摘を頂きましたので,今期,新規の課題として設定してはどうかと考えております。

それから4つ目,インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制につきましては,リーチサイト対策とセットで御議論をいただいてまいりました。まずは民々の取組を見守るということになっておりましたので,そういった取組の状況もフォローしながら,必要な検討を頂くことを想定しております。

それから5つ目が,柔軟な権利制限規定についてでございます。昨年の法改正におきまして,47条の5という条文が新しくできまして,検索サービスと解析サービスのほかに,新たなニーズが出てくれば,政令でサービスを追加できるという仕組みになっております。この新たなサービスのニーズにつきまして,昨年度ニーズ募集を行い,それに基づいて,政令の制定の要否について御審議いただきましたが,今年度も制度の周知を引き続き図った上で,改めてニーズ募集を行うことなども想定しております。

それから最後,6つ目が,デイジー教科書等の外国人児童生徒への提供について,ということで,新しい課題でございます。現行著作権法におきましては,障害のある児童生徒のために拡大教科書やデイジー教科書などを作成できるという規定がございます。

これに関しまして,近年,教育現場から,日本語に十分に習熟していない外国人の児童生徒への指導にとっても拡大教科書ですとかデイジー教科書が効果的だという御指摘が上がってきてございます。

この点につきましては,今,文部科学省の教育部局におきまして,教育の在り方,教材の望ましい在り方について議論が行われておりますので,その状況を踏まえながら,文化庁としても著作権の部分について検討を行っていきたいと思っております。

次に,審議事項マル2「クリエーターへの適切な対価還元及び権利処理の円滑化等に関すること」でございます。1つ目は,従来からの継続課題である私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入についてでございます。本年2月に審議経過報告を出していただいておりますので,それに沿って,今年度,より具体的な検討をお願いしたいと考えております。

それから2つ目は,新たな課題でございます。先ほども御紹介しましたが,放送番組をインターネット上で同時配信などする際の権利処理の円滑化についてでございます。こちらは運用面の改善についても御検討いただきたいと思っておりますし,さらには著作隣接権に係る制度の在り方も含めまして,総合的に検討いただきたいと思っております。この点につきましては,現在,総務省におきまして,放送業を所管する立場から,関係者のヒアリング,課題の整理などを行っていただいておりますので,そういった状況も踏まえながら,著作権に関する対応について審議いただくことを想定しております。

次に,審議事項マル3「国際的ルール作り及び国境を超えた海賊行為への対応の在り方に関すること」でございます。1つ目は,昨年度来,検討いただいております放送条約への対応に加えまして,先般,EUで新たな指令が出されるなど,諸外国で様々な制度改正の動きがございますので,そういった状況を把握・分析いただくことも考えております。

また,2点目は,国境を超えた海賊行為に関する対応でございます。海賊版被害が非常に深刻になっておりますので,権利行使に係る課題を分析しまして,権利者の方々が海外で有効に,効果的に権利行使できるようなノウハウの整理につきまして,審議会としても御議論いただきたいと思っております。

それから最後,審議事項マル4が「使用料部会に関すること」でございます。1つ目は,昨年の法改正で導入することになった授業目的公衆送信補償金の額の認可に当たっての検討でございます。現在,関係団体におきまして施行の準備が進められておりますが,今年度,認可申請が上がってまいりましたら,使用料部会で額の適切性などを御審議いただくことを想定しております。

その他,例年どおりでございますが,著作権者不明等の場合の裁定制度の補償金につきましても検討課題になろうかと思っております。

簡単でございますが,事務局からは以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

今,資料2と3を御説明いただいたわけですが,資料2は,政府の方でこのように進める,あるいはスケジュールもこのようにするということをお決めになっていることでございまして,それを踏まえるのは当然かと思いますけれども,資料3の案は,この分科会において決定すべきことであり,資料2のことを踏まえることは当然ながら,これに拘束されるわけではなく,それ以外の重要なこともあれば,御審議いただきたいと思います。

そのことは参考資料の文化審議会令2ページ目の第五条に,著作権分科会がすべきことというので,二号の方は法律で定められていることですが,一号の方は,著作者の権利,出版権及び著作隣接権の保護及び利用に関する重要事項を調査審議することとなっておりまして,具体的な文化庁長官等からの諮問があるわけではなく,この分科会において重要な事項を特定して,それを今期審議していきましょうということを決めるのが,今,この議題でございます。

ですので,資料3をたたき台にして,皆さん方の御意見を伺って,これを場合によっては一部修正することもあり得ますし,あるいは,例えば審議事項マル1にはたくさんの事項が書いていますけども,優先劣後があるのかないのか,是非早くしなきゃいけないことがあるのかないのか等も含めて,あるいはこれ以外にもこういうことが起きていて,そこは早く対応しなきゃいけないということがあれば,それは是非御指摘いただきたいと思います。

我々としては審議会としての意見を言うだけですので,それが直ちに実現するわけではございませんけれども,せっかく各分野の専門の方々にお集まりいただいておりますので,広い見地から様々な御意見を頂ければと思います。

なお,本日の議題はこれが中心ですので,時間は十分にとっております。御遠慮なく御発言いただければと思います。お願いいたします。何かございますか。どの分野でも結構ですし,あるいはもっと大局的な点でも結構ですし,すごく小さな話でも結構です。いかがでしょう。

どうぞ,渡辺委員。

【渡辺委員】審議事項のクリエーターへの適切な対価還元及びというところで,私的録音録画補償金制度の見直しということが書かれております。これが,長い間,議論を重ねて,なかなか結論が出ていない。内容がやはり結論を出しにくい部分があって,これはほっておくとずっと出ないんじゃないかという危惧もありますので,今年度,何とかして結論を出していただきたいという思いが強くあります。

5月に行われましたCISACという著作権としての国際連合,著作権協会国際連合と訳されておりますけれども,その組織の総会が日本で行われまして,CISAC決議として,3点,決議が行われまして,そのうちの1つが,私的録音録画補償金制度について,EU並みに早くしなさいよというような思いが込められた決議が行われております。

ただ,日本は日本なりの事情があって,なかなか結論に至らないというのはあるんですが,ちなみに私は,CISACの総会でパーティーが行われたので,そこに出席いたしましたが,そのときにイタリアの関係者とお話をしたときに,日本はまだまだというか,機能していないと。イタリアでは,例えばiPhoneとか,スマートフォンに関して,現実的にどのくらいのお金を補償金として取っているかという話で,5ユーロ取っているという話でした。

日本の現状というのは,私的録音録画補償金制度は存在しているのだけれども,そこに適用される複製機器とか媒体が,古いまま,ずっと改定されていない。対象になる機器,例えばDATとか,あるいはMDとかですね,現在使用されていないものに関してのみ,補償金制度が適用されているということで,現実的ではないということで,そこを何とか著作権者,特に音楽家にしてみれば,現実的に使用されているPCとかスマートフォンとか,現実的にダウンロードしたものあるいはCDからコピーしたものを聞く媒体とか,そういったものに補償金制度の適用をお願いしたいところですが,そこでいつも議論になるのが,PCは別に音楽に特化した仕様ではなくて,様々なことに利用されるのだから,それはいかがなものかという話がいつも出てくるので,私としては,具体的な名前を出したらあれかもしれませんが,ハイレゾ音質で聞けるということに特化して宣伝をしているポータブルオーディオプレーヤーがあるわけです。それは明らかに音楽に特化した仕様ということが公に出ているわけですから,少なくともそういった機器は,MDウオークマンって昔ありましたが,同等の内容なので,これがその媒体になっていないというのはまずおかしいと思います。

そしてあと,PCに関しては,何らかの結論……,私の勝手なアイデアですけれども,PCにおける,例えばWindowsであればMediaPlayer,MacであればiTunesというソフトがあるわけで,音楽を例えばコピーする,そこでCDを複製することをPCでやりたいと考えている人はそれ付きのPCにする,そうでない人はそのアプリを入れないというようなことで差別化をして,そして,そういったiTunesを例えばMacに入れたいと望まれる方には,補償金の決められた額を払っていただくというような,何か具体的な方策を考えない限り,多分ずっと結論が出ないのではないかと思っておりますが,これは単なる私の勝手な個人の意見でありますが,何かそういう具体的なアイデアを出して,何としてでも結論を出していただきたい。

現実に,例えばそういったときの議論に,今,レンタルCDももう落ち目だし,ダウンロードが主流あるいはサブスクリプションに移行しているのだから,そんなものは全然必要ないんじゃないかという意見も出てきますが,いやいや,まだまだレンタルCDショップは,当時の半分ぐらいになったとはいえ,存在しているわけですから,明らかに存在しているということは借りている人がいて,そしてそれを少なからずCD化して聞いたり,あるいは何かにダウンロードしたものを聞いているということで,著作権が侵害されているのは間違いないですね。私的利用ということに関して。

さらに言えば,もしかしたら自分が借りてきたものをさらにCDにして人に渡すという行為も,昔よりは減っているとはいえ,今でも行われていると私は感じます。私の周りでもそういったことは現実に起きているので。

ですから,現時点において,早急にこの結論を出していただきたいというのが私の思いであります。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

この点,もう少し御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。

どうぞ,高杉委員。

【高杉委員】今,渡辺委員からお話があった,作家の立場からの気持ちとして,まさに私も共通の認識を持っているわけでございますけれども,昨年度,小委員会で私的録音録画補償金制度の問題につきましては2つに大きく整理されておりまして,恐らくは今の制度で予定している録音録画専用機器について漏れがあるのかどうかを確認することと,それから録音については今お話があったパソコンとかスマートフォンでの利用の実態があることにどう対処するのか,この2つを分けて議論するという,それが今期のステージだと認識しております。

今,知財計画で御説明がありましたとおり,私的録音録画補償金制度の問題については,言葉としてクリエイション・エコシステム,非常にいい言葉だと私は思いますけれども,社会的なコストをできるだけ抑えて,社会全体の福利の最大化を図る,そういう制度として,私的録音録画補償金制度がクリエイション・エコシステムとして再構築,どういうふうにすればできるのかという議論を,今期,是非していただいて,結論を出したいと考えております。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ほかにいかがでしょうか。

どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】同じく私的録音録画補償金制度に関する話なんですが,私はこの件を,いつも言う話なんですが,平成15年の私的録音録画補償金制度の見直しの検討というところから始まりまして,当時,パソコンによるリッピングができるようになってきたということで,SCMSですか,そういったコピー保護技術を前提とする補償金制度が成り立たなくなっているというところから議論が始まって,それから十何年間,ずっとこの議論をしているんですが,道垣内先生がおっしゃいましたコンフリクトということをどう考えるのか。

意見の対立があるというのは当然なわけですけれども,その意見の対立の向こう側に,どれが最適な解なのかということを政策的に検討し決定していくというところがないと,延々議論をしているということになりかねないと思っておりまして,今期は是非コンフリクトを解決して,一定の解を得ていくという方向に持っていければなと強く思っているので,よろしくお願いしたいと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

この後の議題で,小委員会を設置して検討を進めるということになると思いますが,そうなりますと,小委員会に入っていらっしゃる方はその小委員会の審議事項についてはさらに議論する機会があるわけですけれども,この分科会の委員で,小委員会に分属されない方は,今,このチャンスが,小委員会に対して,その上の分科会の委員として意見を述べられるチャンスですので,そういう方からも是非御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。

どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】審議事項の4にも入っているようですが,こちらも授業目的の公衆送信の補償金ということで,制度設計としては全く同じなんですね。そういう意味では,補償金制度の意味,価値,目的など,そのあたりをしっかり国民にも理解してもらわないと,議論をしても,さっきのコンフリクトの問題で終わってしまいます。なぜ補償金制度という形になってきているかと,著作権法のたてつけの問題としても,情報(著作物)の価値,意味を守るということを理解した上で国民がどうそれに関与していくかというところでは,同じことを言って恐縮なんですけども,地道な著作物の価値,意味を正確に伝えることが大切です。それからここでエコシステムという言葉も出てきているので,まさにSociety5.0とか,新しい価値・デザイン社会では,子供たちの創作行為を促し,心身ともに豊かな社会をつくっていこうと。その意味では,国民自身が著作権制度を正しく理解することを,最も分かりやすい1つのテーマだと思います。

これは専門家だけが議論するんではなくて,なぜこういう補償金という制度になってきているのかということについては,審議会でもいろいろ他国の報道や法制度の紹介がありました。ここの審議会だけでなく,文部科学省を中心に,情報の価値とか意味とか著作物の大切さとかをわかりやすく理解する教育をどうしたらいいのかという議論を是非していきたいなと思っておりますし,私は個人的には創作という言葉が著作権の中で最も重要だと思っています。創作の意義について,ワーディングといいますか,言葉化,言語化し,情報教育を通し言葉を落とし込んでいくような作業も,地味ですけども,必要なのかなと思っています。

意見です。以上です。

【瀬尾委員】じゃあ,よろしいですか。

【道垣内分科会長】どうぞ。

【瀬尾委員】全般的に少しコメントさせていただきたいと思います。

まず最初に,法制・基本問題小委員会で検討を予定している審議事項1ですが,まず写り込みに関するということですけれども,今,実はデータベース化とかいろいろな形で著作物を使って,写り込みということは映像,写真になるんですけれども,この場合,一番問題になるのは,著作物の写り込みというよりは,どちらかと言ったら,商標,トレードマークと,若しくは一番大きいのは,肖像です。人の顔が写り込むことによって,肖像権,肖像プライバシー権,それからパブリシティー権,このために使えないというのが実はデータベースの現場で一番大きな問題になっています。

これは何とか解決しなきゃいけないんですけれども,これを写り込みという著作権法上でどこまで解決できるのかということを,広い視点でこれは御議論いただきたいと思います。

例えば,これは写真の中で今検討している試案なんですけど,大きなデータを個人と結び付けない形でビッグデータを運用することが既に行われています。例えば,今,AIによって写っている人の顔を個人と結び付かない匿名化フィルターのようなものを使って,個人の肖像を匿名化してしまう,つまり,その人と認定できないような変更を加えてしまうことで,人が写っている写真も,個人認証ができない形にしてしまうようなフィルターが逆にできるだろうと。

これは実は写真という,真を写すと書いてあります根本に関わる問題,写真分野においては大変危険かつ重要な問題なんですが,例えば1つの事象をアーカイブなんかに登録する場合には,そのようなことも考え得る。

つまり,広くテクノロジーと,広範にどうしたら,写り込んでいるもの,たくさんの権利を処理できるかということについて,広めの視点で御議論いただきたいと思います。新しいテクノロジーに関しての提供については,やぶさかではありません。

あともう1つ,2つ目の研究目的に関わるという権利制限ですけれども,非常にさらっと書かれていますが,研究というのが事業とかなり結び付いております。つまり,一般の企業活動と研究とがかなり一体化している状態で,どこまでを研究目的として,そしてまたさらに現在ある市場について,どのようにアプローチするのかということについて,ここについては現実的かつ慎重な議論をお願いしたいと思います。

あと,基本的に取り上げていただきたいものですが,追及権というのがあります。これは美術家連盟さんでも常におっしゃっている話ですけれども,原作がどんどん転売されていったときに,元の作者に還元されるシステムなんですね。そんな大きな市場になるものではないと思いますけれども,追及権については,今後いろいろな形で影響が出てくるし,ヨーロッパ,その他外国との整合性もございますので,少なくともお題の中に,例えば追及権のような新しい権利について,検討を行うとか状況を知るとか,リサーチの段階でも結構ですので,何らか入れていただけるとありがたいかなと思います。

それからもう1つ,海賊版です。海賊版については,去年,議論を尽くしまして,知財でも審議会でも1つの結論を得たと思っておりますけれども,現実に至らず,いろいろな形で現在進行中と思っておりますが,より慎重な議論が必要だということももちろん理解しています。

この場合について,新しくこの議論をどうこうではなくて,出版社さん,それから漫画家さんにきちんと立法すべき事実をご提出していただきたい。これがない限り,この議論というのは,なぜ必要なのかにエビデンスが加わらない限り,スタックしているんじゃないかと思います。これについては,是非出版社さん,漫画家さんの強い後押しをお願いしたい。審議会での議論は結論を得ていることですが,それなしにこれ以上の進捗を図るのは難しいと思います。

最後にもう1点だけ。今,eスポーツと言ったりして,ゲームが非常に焦点になってきていますけれども,ゲームについて,コンテンツの利活用について,著作権法からアプローチできることがないのかどうかについて,ゲームと事業との結び付きについての現状を御調査いただくようなことがあってもいいのかなと思います。

簡単に言ってしまいますと,これまでゲームというのは家の中で勝手に独立していたものですけれども,例えばポケモンGOというソフトによって,実際のリアルな動きとゲーム上が結び付いてきている。また,各地方創生ムービーとか,いろいろな形で日本の施策とコンテンツが事業的に結び付いて,具体的な経済活動を喚起している,こういう現状があります。

これについて,著作権法は何かをしなくていいのか。何かできることがあるのか。少なくともその内容を共有していくことが,今,必要なのではないかということから,そういったことを,これはどの委員会でやるのか,大本の審議会の中でやるのかは別にして,何らかの形で触れていくことが,著作権の世界にばかり閉じこもるのではなくて,広めの視野を持つという意味で,効果的なのではないかなと思います。

幾つか箇条書きで申し上げましたけれども,以上なことを勘案していただいて,充実した審議会の1年に御計画いただければと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

審議事項の1番についても御意見が出ましたので,そちらも含めて,もちろん3,4でもいいのですが,何かございますでしょうか。

どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】審議事項の1ではなくて,審議事項の2でございますが,新たな課題ということで,放送のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化(著作隣接権に関する制度の在り方も含む)についてということが挙がっております。

同時配信等に係る権利処理の円滑化ということなんですが,通信と放送の融合がますます進展する中で,NHKさんが本格的なテレビ番組の同時配信を今年度中にも開始予定であるということでございますので,これは喫緊の課題ではないかと承知しております。

利用者の方々からも,様々,制度見直しの要望が出ているところでもあるんですが,見直しに当たっては,やはり権利保護と利用円滑化のバランスをいかにとるかということが非常に重要になってくるかと思います。

著作隣接権に関する制度の在り方を含むという記載がございますので,その観点から申し上げますと,同時配信等というのは国際条約に定める公衆への伝達に当たる利用なわけですけれど,日本の著作権法では,レコードの公衆への伝達について,同時配信等に係る許諾権を実演家やレコード製作者に与える一方で,レコードの演奏・伝達については無権利というようなことになっているわけでございまして,いささかアンバランスというような状況にあると思います。

したがって,バランスのとれた議論を行うためにも,同時配信等だけに着目するのではなくて,公衆への伝達全体との関係や公衆への伝達に係る諸外国の制度状況についてもしっかりとフォローしながら,真摯な議論を進めていただけれればと思っていますので,よろしくお願いします。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

審議事項マル2の2つ目の問題を,審議事項2と一緒にしておいて大丈夫でしょうか。上の方の問題だけでも相当大変そうなので,もし急ぐということであれば,むしろ1に回すか,新たにもう1つ小委員会を作るというのは,いろいろな予算上の点とか,難しいと思いますが,ここから外した方が早く進むかもしれないですけれども,今のご指摘はそれもあり得るということでしょうか。

とにかくこれをちゃんとやるべきだということですよね。

【椎名委員】政府の各会議等で本年度中にというようなことをおっしゃっているというところもありまして,どういう座組みということは,私,申し上げるわけには,事務局さんの御検討なさるところだと思いますが,もちろん様々なコンフリクトも存在するでしょうし,しかしながら,最適な解をどういうふうに見ていくのかということをきちんと議論していくためには,独立した会議体でやっていくのも1つの手ではないかと思います。

【道垣内分科会長】井上委員,どうぞ。

【井上(伸)委員】やはり審議事項2の私的録音録画でございます。録音の方は,今,いろいろな方からお話が出ました。録画の方も,これまでは放送に対してダビング10とかコピーワンスとかいろいろありましたが,今後,4K放送,8K放送時代になりますと,そのまま録画することでかなりの高質な画像が残ることになります。

こちらは,映像ソフト業界,映像パッケージ業界におきましては,まさに死活問題でございまして,この辺を従来とはまた違う次元できちんと御議論いただいてと思います。そうでないと日本のパッケージ業界が存亡の危機になるということでございますので,是非その辺の御認識の下に協議をしていただければと思っております。

【道垣内分科会長】どうぞ,井村委員。

【井村委員】海賊版対策に関してですけれども,先ほど瀬尾委員からもお話がありましたが,エビデンスに関しては出版界で何が提出できるかというのを引き続き検討していきたいと思います。

ただ,冒頭の文化庁次長様からの御挨拶の中にもありましたとおり,出版界においては,とにかく日々莫大な損害が発生しているというのが事実でございます。資料2と3の中に総合的な対策を考えていると書かれておりますが,余り総合的にしてしまうと,スピード感がどんどん落ちていくというのを非常に危惧しております。

そういう意味では,できるだけ限定的でも結構ですので,とにかく前に進めるようなルール作りを是非引き続き御検討いただきたいと考えております。

以上でございます。

【道垣内分科会長】海賊版対策についてのご指摘の点は,審議会としては既に意見を取りまとめたところでございまして,もちろん社会の変化があればやぶさかではございませんけれども,とりあえずはこの審議会としては済んでいるという位置付けでございます。国会での御審議の問題に委ねるということで今のお話は,この審議事項に加えるということではないですね。

そのほか,いかがでしょうか。

どうぞ,渡辺委員。

【渡辺委員】先ほど追及権のお話が少し出ましたので,今回,検討課題に入らない……かもしれません……。

【道垣内分科会長】いえ,追及権を審議事項に入れるべきだという御意見であれば,そうおっしゃっていただければと思います。

【渡辺委員】そうですか。追及権のお話と,それからCISACの総会においての決議の中に,追及権の問題も入っておりました。

それからもう1点,まだ余り検討がされていないかなと思われることに,日本の映画における監督の著作権という問題といいますか,個人的には私は映画監督にも著作権は認められていいだろうと思う者の1人なんですけれども,日本ではとにかく映画監督には著作権が認められておりません。脚本家には認められておりますが,ですから,DVD等,例えばソフト化されても監督は何も権利を得ることがないという現状でありますが,そういった現状をどう考えるのか,何か検討課題に入れていただいてもいいのではないかと個人的に思いますので,お話しさせていただきました。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。映画はいろいろ歴史的な経緯もあったようですけれども,それが今まで,ずっとそのままでいいのかということ,あるいは映画を超えて,ほかにも同じようなことがあるかもしれません。

どうぞ,龍村委員。

【龍村委員】先ほど椎名委員から御指摘のあった審議事項2の2番目のテーマに関連して,公の伝達権という点が指摘されたわけですけれども,確かに様々,この問題は指摘されていますが,著作権分科会ではまだ手が付いていない分野だろうと思います。

今回の知財推進計画では,資料2の5ページの「施策の方向性」に著作隣接権の同時配信の点は触れられているのですが,著作隣接権に関する公衆に対する伝達権の点は,ハイライトした形では出ていないわけなのですが,聞くところによりますと,本年,発効した,日本EU経済連携協定の中でも取り上げられており,レコード演奏権・伝達権について,EUとの間でも,協議事項とされ,政府レベルでそういう取り決めがあるという背景もあるようですので,一つ大きなテーマであろうと思います。

ただ,その性質の在り方とか,そういうものが恐らく放送の取り扱いと,場合によってはリンクする可能性もあるのかという感もありますので,2番目の同時配信の件は,かなり広がりがあり,広く捉えて公衆の伝達権とも関係がある問題かと思います。

あるいは,3つ目として独立して,実演権に関する公衆の伝達権というものも一つ取り上げてもいいのかとも思います。

【道垣内分科会長】それは,放送だけではなく,それ以外についてもということですね。

【龍村委員】そうですね,放送以外のものもある。

【道垣内分科会長】分かりました。

そのほか,いかがでしょうか。

既に申し上げましたように,審議事項をこの分科会で決めて,次の議題になりますが,それを小委員会で御議論いただいて,それをまた戻してもらうというシステムを考えているわけです。ですから,小委員会で何を審議してほしいのかということをここに書き込んでおくことは意味があるんですけれども,追及権のような新しい権利についても,あるいはeスポーツについては,私,よく分からないんですが,そういうことについても,「等」と書いてあるので排除はされていないと思いますけれども,しかし,その中でも何か明示している他の事項と同じレベルで書くべき問題だということがあるかもしれません。

それから,クリエーターの先ほどの私的録音録画補償金制度を早く決着させるべきだというご指摘はもっともだと思います。世の中にコンフリクトは山ほどあって,その中には,もっともっと難しいコンフリクトは山ほど世の中にはあるので,この問題はそれほど難しい問題ではないと私は思います。様々なコンフリクトをつかさつかさで処理していっているわけですから,著作権分科会として,この問題を意見が対立しているからといってそのままほっておくというのは全くおかしなことで,大きな方向性として,適切な対価の還元をすべきでないと言っている人はいないはずですので,現在の技術にあまり依存しないで,うまいシステムを作ることができればいいわけです。いいアイデアを,著作権の御専門の方もいらっしゃるので,これでいかがかみたいなものを出していただくといいんじゃないかと思いますが,大渕委員,何かございますか。

【大渕委員】妙案があればこのように10年以上も続いていない,妙案がないからみんな苦しんでいるわけですから,これは妙案を出すか出さないかの問題ではないわけです。1ミリも進まずに十数年過ぎているという状態ですので,世間からも批判を受けても仕方ないですし,どなたか言われましたとおり,必ず決めるという意気込みの問題だと思います。議論はやろうと思えば幾らでもできるのですが,議論のための議論ではなくて,この状態をどうにかしなくてはいけないという意気込みであり,妙案というようなレベルの話ではないのではないかと思っております。

ただ,もう1度,問題を見直してみると,補償金の本質論のようなところが意外と議論されていないのではないかという気がいたします。私としては,この補償金というのは,もともと普通に複製権侵害があれば差止めと損害賠償と両方請求できるのですが,権利制限により差止めの方は押さえ込んで報酬請求権だけに絞っているという本質のところがあまり注目されていないように感じます。それによって,結局全員が得しているわけです。差止めは受けずに済んでいるけれどもという,中間的な,ゼロか100かではない,いわば50のような形で利益調整するという,これ自体が妙案というべきものであります。せっかくの妙案を使わずに放っているという状態ではないかと思います。そこに立ち返った上で,あとは,ただひたすらきちんと進めるということしかないのではないかと思っています。

【道垣内分科会長】その整理をした紙とかを頂けると,審議がすごく進むのではないかと思います。

田村委員,いかがですか。

【田村委員】もともと,なぜ私的録音録画補償金を設けなきゃいけないかというところで,実は根本的な思想の対立があると思っております。

割と主流なのは,今,大渕委員がおっしゃいましたように,複製にはもともと本当は権利が存在しているということを前提とするものです。その複製権が,私的録音録画機器が世の中に普及しているがために,たくさんのユーザーがいるから実際に権利行使するのは困難で,―現にそのため私的複製をセーフにしているわけですけれども―,その分,どこかで複製に対する補償を,まさに補償という言い方をしておりますように,補償を求めていくという発想です。こちらが多分主流だと思います。

他方,私が前から申し上げておりますように,もともと複製に対して権利を及ぼすということも,実は1つの公理ではないということを前提とする考え方もあります。例えば,複製に権利を及ぼすのが始まったのは,本当に著作権の黎明期からですけれども,それはなぜかと言えば,その時代は複製する人はすごく少なくて,その後も二百何年もの長い間,出版,音楽,映画のいずれの分野でも複製をできる人は本当に少なかったということに起因しています。

そういう時代にも,実際には利用者がいました。利用はやはり昔から多いわけです。ところが,利用からお金を取ることは,とてもではないけれども難しい時代がありました。そこで,私的録音録画補償金は,複製に着目してお金を取っていたシステムである,と私は理解しております。

つまり,本来,利用からお金を取るべきところを,取りやすいところから,現実的なところから取っていくというシステムにおいて,その一過程が,複製だったと思うのです。

そういうふうに考えていくと,複製で権利行使ができないから補償するという発想でいくのではなくて,一番容易に取れて,大渕委員もおっしゃいましたけど,一番容易に取れて,かつみんなウイン・ウインになるようなところを探していくという発想になると思います。

よくこの議論をするときには「いや,私的録音録画補償金を導入したときではなく,今はプロテクションが進んでいるから,コピーをコントロールできるから,こういうのは要らないのではないか」という議論が割と多いようです。しかし,先ほどの申し上げた考え方から,私はむしろそうではなくて,このように思っています。まず,技術的な可能性とは無関係に,世の中で文化の発展に著作物が一番貢献している。そのときにどのような形で利益を管理しているかを考えると,複製の対価ではなくて,利用で恩恵を受けている人たちがいて,そして,かつ現実には,数がそれほど多くないポイントがあるわけです。そのポイントが,今のところは録音録画機器媒体,あるいはさらに広げれば複製機器媒体があって,それらはまだ幸い,昔の複製のような状況です。つまり,今はまだ,たくさんの人が自由に,我々私人が勝手に,複製機器媒体を作るということが現実になっていないです。これが現実になればまた話は別ですが。そうではないという現在の状況下では,昔複製だったところみたいな形で,ポイントとして,著作物の利用に関わっているがまだ数が少ないところ,そこで現実に対価を還流できるところがあることに着目して作っていくという発想の方がいいと思っています。したがって,複製の補償という発想ではなくて,利用に対する対価を適切に管理するポイントという発想です。

ここはこういう大きな議論をする場ではないと言われるので黙っていましたが,わざわざ御指名を受けたので,日頃から思っていることを申し上げてしまいました。

【道垣内分科会長】大きなお話は本当に大切だと思うのですが,それはしかし,委員会でやっていると議論が拡散してしまうので,できたら紙を出していただくとありがたいと思います。

【田村委員】いや,今,述べたいことは述べたので,この点は議事録の文書に残すことでお許しいただければと思います。

【道垣内分科会長】議事録だけではちょっと足りないと思うので,できたら紙を頂ければ,整理ができていいのではないかと思います。

世の中,対立はどの分野にもあり,それに第三者的な人が入って調停をするという,その調停の仕方もまた様々あるわけでございますけども,対立されている方々も,何か案を作っていただいて,これでどうかという議論をしていただかないと,抽象的に議論しているとなかなか進まないのでお願いできないでしょうか。

大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】私も自分の理想とするものはあるのですが,2つ視点がありまして,喫緊にやらなくてはならない話と中長期的な話に分ける必要があると思います。学者だとどうしても中長期的なことをやりたくなるのですが,それをやると,結局1ミリも進まないということになってしまいます。今まで中長期的な話をやり過ぎて進まなかったので,複眼的に,中長期的にはこうだけれども,まずはできるところからやっていく, 今までの概念等の中でも十分できるところがあるので,まずはそこを一歩一歩進めていって,その間に中長期的なものをやるというようにしないと,結局物事が全く進まないのではないかと思っております。

【道垣内分科会長】それも,ですから,抽象的に言われると,なるほどと思いますけども,どの辺が動かす最初のステップになるのか,是非具体的な御提案を頂ければと思います。

この審議会は,意見を述べるという機関なので,いつまでも意見を述べないと,どこかで方針が決まってしまい,立法がされてします。そうしますと,この著作権分科会の存在意義も問われることになります。最初に申しましたように,この審議会は別に聞かれているわけでもないのに意見を言おうという仕組みですから,何らかの外の動きを待つ必要はありません。このような状態が続けば,どこかで決まって,どこかで法案ができて国会を通ってしまうことがあるんだということをご認識の上,審議会としては早く議論をまとめるというのが必要ではないかと思います。

どうぞ,高杉委員。

【高杉委員】審議事項マル2の丸の2つ目,椎名委員と龍村委員から公衆への伝達全般の議論をという話もちょっと出たんですけれども,今,こちらに事務局の方で用意していただいた内容は,放送のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化ということで,これは,先般,放送法が改正されて,NHKさんが今年度末にも常時同時配信を開始すると。それを優先的にまず議論すべきだと私は考えておりまして,公衆への伝達一般の議論につきましては,この場なのか……,議論が必要ないということではなく,議論はどこかで必要だとは思うんですが,適当な場で別に検討すべきじゃないかと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

その取りまとめをしなければならないわけですけども,資料3の紙に何か修正を加えるとすると,少なくとも1番のところに追及権等について追加するということが考えられます。追及権等の新しい権利と書く必要があるかもしれません。それ以外に,映画監督の権利やeスポーツをめぐる問題等のご指摘もありましたが,それらは末尾の「等」で読んでいただくことになろうかと思います。以上が審議事項1についての私の今の原案です。

それから,審議事項2の2番目の点をここに入れたままでよいのかという点は,いかがでしょうか。1の方に入れるとワンオブゼムになってしまいますので,2つのうちの1つという方が目立っていいかもしれません。事務局に伺いますが,それぞれの小委員会の開催回数とかは厳格に決まっているわけではないですよね。

【大野著作権課長補佐】小委員会について,開催回数やスパンは決まっておりませんので,必要であれば,短いスパンでたくさん議論することも可能だと思います。

また,これまでも早急な対応が必要なものについては,ワーキングチームを設置して集中的に議論するということも行われてきましたので,それらの課題が同じ小委員会に入ったとしても,ワーキングチームで早く結論を出すべく検討することは可能かと思っております。

【道垣内分科会長】分かりました。であれば,どちらに入っていてもいいということですかしらね。タイトルからするとマル2でもいいかもしれないですけど,タイトルを変更することもできないわけではありません。もし2番目の権利処理の円滑化という事項を審議事項2から外せば,クリエーターへの適切な対価還元に関することだけの小委員会になります。どちらが収まりがよろしいでしょうか。

どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】高杉さんのおっしゃった同時配信だけをフォーカスしてやるということになると,やはり公衆への伝達に関する著作隣接権制度全般の話をしないと,そこだけ持っていって権利制限とかという話は恐らくないのであろうと。

そうすると,かなり大きな話になることは間違いないので,先生がおっしゃったように,これだけまた別に会議体を設けてやるということも,あるいは考えられるのではないかと思います。

制度論なので,どこの小委員会に属するかというと,僕自身のイメージでは,法制・基本問題小委員会みたいなところが適当なのかなと思っていたんですが,これでは保護・利用小委の事項になっていくであろうことが読み取れるので,もし可能であれば,公衆への伝達の問題も含めて,著作隣接権制度の全般的な議論をする場を設けていただけるのだったら,是非そのような形にしていただけたらなと思います。

【道垣内分科会長】4つ目の小委員会を設置する方がよいということでしょうか。

どうぞ,田嶋委員。

【田嶋委員】検討課題の1,2,3,4の中に放送という文字が出てくるものが2つございますので,緊張感を持って出席をさせていただいております。

同時配信の権利処理の円滑化の件は,知財計画にも規制改革推進会議の答申にも,今年度中に結論を得ると書いてありますので,議論が多分急がれるのであろうと思います。

どちらの小委員会で御議論があるにしても,これまでの例で申しますと,1に上がりますと,法制・基本問題小委員会ということで,これは学識者だけの御議論になりますし,保護・利用小委員会の方に入りますと,ステークホルダーによるメンバー構成になりますので,どちらの組織でどのように御議論が進むにしても,座組み,メンバー構成などについては御配慮いただければと思います。

以上です。

【道垣内分科会長】なるほど。ワーキンググループを作るときに,そこは考慮することはあり得るかもしれません。私は,業界的なことはよく分からないですが,審議事項マル2の1番と2番,これはきっと関係者は違いますよね。

【高杉委員】一部だけじゃないですかね。

【道垣内分科会長】一部違うだけですか。

どうぞ。

【高杉委員】私の認識では,昨年度までは保護・利用小委のメンバーには放送関係者,民放さんだけですけど,入っておりました。ただ,NHKさんが入っていなかったので,入れていただく必要があると思いますけど,基本的には1と,上と全く関係がないステークホルダーがいるかというと,そうでもないような気がします。

【道垣内分科会長】1というのは,私的録音等のことでしょうか。

【高杉委員】私的録音の方。

【道垣内分科会長】同じ方々でもよいということですね。

【高杉委員】はい。

【道垣内分科会長】そうですか。であれば,2に入れておいて,ワーキンググループをしっかり立てて議論を促進していただくということにし,この点は原案どおりでもよろしゅうございますでしょうか。

追及権についてはいかがですか。字が出ておいた方が,今後メンバーも変わるかもしれませんので,忘れないように,どういう結論になるかは分からないわけですけども,追及権等についてというのを一つ入れておくということでいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

では,その点だけ付け加えていただいて,「等」のところに先ほどの議論は入っているというのが議事録を見れば分かるということにさせていただきたいと思います。

そのほか,何かありますでしょうか。

どうぞ,田村委員。

【田村委員】先ほど道垣内委員からペーパーを出すように要請を受けたので,責任上,出すことにいたしますが,どういうところにどうやって出せばいいでしょうか。道垣内先生にお手紙で送るというわけではないですよね。

おいおい追加的に作ったものを事務局に届けて,しかるべき対応をしていただく,例えば委員会に届けていただくとか,あるいは委員の方に配布していただく,という形でよろしいですか。

【道垣内分科会長】小委員会の参考資料になるような紙ということで。

【田村委員】では,そのようにいたします。

【道垣内分科会長】大渕委員も,よろしくお願いいたします。

紙という趣旨はテキストベースでの議論が可能となるようなものということですので,電子的なものを頂ければそれで結構です。テキストがないと,空中戦で終わってしまって,どっちが勝ったのかよく分からないということになるので,是非テキストベースで話を進めていって,決着を目指して頂きたいと思います。

タイムリミットを設定するということはできないかもしれませんけど,分科会の総意としては,早く決着を付けるべきであるというコンセンサスがあったということにさせていただければと思います。ありがとうございました。

それでは,議題(3)小委員会の設置につきまして,御審議いただきたいと思います。

これは,分科会の運営規則第3条第1項に規定がございまして,今期の小委員会の設置案について,事務局からまず御説明いただけますでしょうか。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料4を御覧いただければと思います。「小委員会の設置について(案)」ということで,事務局の案を記載した資料でございます。

まず,「1 設置の趣旨」にございますとおり,(1)から(3)まで3つの小委員会を設置してはどうかと考えております。1つ目が法制・基本問題小委員会,2つ目が著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,3つ目が国際小委員会でございます。

「2 各小委員会の審議事項」については,(1)から(3)までに記載のとおりでございますが,先ほど御審議いただいたとおり,より具体的な課題について御議論いただきたいと思っております。

それから「3 各委員会の構成」につきましては,著作権分科会長が指名する委員,臨時委員及び専門委員により構成するという扱いになっています。

また,「4 その他」といたしまして,議事の手続など,必要な事項はそれぞれの小委員会で定めることになっております。

これらの取り扱いについては,昨年度と変更はございません。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,御意見等ございますでしょうか。

よろしければ,資料4のとおり小委員会を設置させていただきたいと思います。これは分科会の決定として,そうさせていただきたいと思います。

そして,小委員会につきましては,資料2を修正した紙に基づいて御審議を進めていっていただきたいと思います。

なお,著作権分科会におきましては,先ほどの運営規則第2条により,使用料部会を設置することになっております。使用料部会と,ただいま設置の決定をいただきました各小委員会に属すべき委員につきましては,規則に基づいて分科会長が指名することになっておりますので,この点は,後日,事務局を通じて委員の皆様にお知らせさせていただきたいと存じます。

それでは,最後にその他の議題でございますけれども,御案内のとおり,昨年5月の著作権法改正によりまして,教育の情報化を推進するための権利制限規定,いわゆる授業目的公衆送信補償金制度が導入され,まだ施行はされてませんが,3年以内の施行ということになっております。

これに関連して,今年2月に文化庁長官より,補償金の徴収・分配を担う指定管理団体として,一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会,SARTRASと略称されることになるようですが,これが指定されております。

この点,文化庁から御報告いただけますでしょうか。

【日比著作権課著作物流通推進室長】失礼いたします。それでは事務局から,まず資料5に基づきまして,指定の件について御説明申し上げたいと思います。

資料5の1ページ目ですけれども,著作権法第104条の11におきまして,授業目的公衆送信補償金の請求の行使主体として,全国を通じて1個に限り文化庁長官が同意を得て管理団体を指定するという制度になってございます。

平成28年9月に関係する権利者団体39団体によりまして,教育利用に関する著作権等管理協議会が設立されまして,そこが,もしこの制度が導入されることとなった場合には,補償金に関する業務を行う受け皿となるという意思を表明されておりました。また,今年1月22日に一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会,略称SARTRASが設立されまして,文化庁からの指定についても同意をされたところでございます。この団体が法定の要件を満たしますことから,今年2月15日に文化庁長官による指定管理団体としての指定を行ったということでございます。

下半分ですけれども,「3 代表者」,SARTRASの代表者は,土肥一史日本複製権センター理事長でございます。

1ページおめくりいただきまして,2ページ目,SARTRASの事業ですけれども,(1)著作権法に基づく認可を求める補償金の額の決定,徴収及び分配その他補償金を受ける権利の行使に関すること。また,(2)著作権又は著作隣接権の管理業務,そして(3)著作権制度の普及啓発及び調査研究等を行うということでございます。

「6 構成員」ですけれども,こちらにあります会員団体として,新聞,言語,出版,視覚芸術,音楽,映像という分野でそれぞれ6つの団体が構成団体としておりまして,それぞれの協議会の中に正会員として御覧の各権利者団体が所属されているという状況でございます。

次の3ページに,SARTRASの役員名簿をお付けしております。本日は瀬尾委員が御出席でございますが,常務理事としていらっしゃいますし,また,理事・事務局長として野方英樹日本複製権センター事務局長代理が就かれておりますので,本日はこのお二方から,現在の準備状況につきまして,進捗を御説明いただきたいと思っております。

それでは,瀬尾委員,よろしくお願いいたします。

【瀬尾委員】今御紹介に預かりました瀬尾でございますが,写真著作権協会ということもございますけれども,このたび,SARTRASの常務理事として運営に当たるということで,業務をさせていただいております。

最初に,お手元の資料6に基づきまして,事務局長の野方から御説明をした上で,概観について,私から申し添えたいと思います。

まず,野方さんから。

【野方理事・事務局長】SARTRASの事務局を担当しております野方と申します。よろしくお願いいたします。失礼して,着席して説明させていただきます。

資料6を御覧ください。1枚めくっていただきますと,文化審議会の平成29年の報告書におきまして,補償金制度について一定の方向性が示されております。この制度の下では,非常に多岐にわたる権利者が対象となりますので,そうした方々と教育機関との手続の負担を軽減するための窓口の一元化等,御覧のような内容が記されておりましたところです。

先ほど日比様よりありましたが,権利者側が既に1つの任意団体を作っておりまして,そちらが中心になりまして,この報告書に基づきまして,次のページにございます著作物の教育利用に関する関係者フォーラムを設置するための準備を行ってまいりました。

こちらは,このページの最終段落にございますように,権利者団体と教育関係者が共同して設置をし,文化庁・文部科学省・有識者の方々より助言を得つつ,この制度を動かしていくための環境整備に取り組むということで,権利者側あるいは教育側の皆様から15名前後の委員の方に御出席いただいて,さらに有識者の方を加えて開催されるという運びとなりました。

昨年11月に始動しまして,まず昨年度中に合計16回のフォーラムを行っております。最も多いときで,委員の方とオブザーバーの方,陪席の方を含めまして,80名以上の方が御出席されるようなこともありまして,非常に関心高く,また,委員の方も欠席される方がほとんどないという状況で進めることができております。

次のページになりますが,このフォーラムの構成ですけれども,全体を取りまとめる総合フォーラム,これは昨年度の期間中に3回実施しました。そして,個々の課題,これは分科会の報告書で上げられたものに対応しまして, 4つの専門フォーラムを運営しましたが,そちらは合計で13回にわたりまして行っております。

それぞれの専門フォーラムの内容につきまして,簡単に触れさせていただきますが,まずは補償金に関する専門フォーラムでございます。こちらの最も大きなポイントは,授業目的公衆送信補償金の額を幾らにするかということでございますが,まだ検討中の内容でもございまして,本日,額をお示しはしておりませんけれども,このフォーラムの中では,まずは権利者側として考える額をお示しして,いろいろな御意見を頂いたということでございます。

次のページに,補償金のフォーラム総括についてまとめさせていただいております。文化庁様でまとめていただいております,補償金を認可申請をするときに,審査の基準となる幾つかの項目がございます。例えば通常の著作物使用料の相場に比べてどうであるかとか,教育機関の支払いの手続負担に配慮しているか等,挙げられているわけですが,こうしたことの1つ1つに,教育側としてどういうふうに考えますかというところをいろいろと意見交換する場として,非常に有益だったと考えております。

それから,審査基準の中に教育機関の現状とニーズに合っているか,という項目もございます,その現状とニーズを確認するための意向調査を現在しておりまして,これを実施した上で,これからの利用者団体の方に対する意見聴取あるいは認可申請に向かっていくという流れになると考えております。

フォーラムの2つ目が普及啓発になりますけれども,これは現状考えられる普及啓発等につきまして意見交換をしました。やや長期的な視点で検討に入ったのですけれども,最後の回になりまして,そもそも補償金制度を始めるに当たって,開始時期の広報活動は非常に重要であろうという御意見も頂きました。

この点につきましては,先ほど申しました意向調査は,ウエブアンケートという形で今まさに実施しているところでございます。その対象の学校は,全校というわけにはまいりませんでしたので,無作為で抽出した小学校から大学までの,全部で4,500校を超える学校様にアンケートでの御回答をお願いしております。このことは,ある意味,1つの広報活動の端緒になるのかな,とこちらは考えておりまして,円滑な導入に向けてこれからもいろいろできることをしていきたいと考えております。

続きまして,ガイドラインのフォーラムですけれども,こちらは,法解釈に関するガイドラインが必要であるという分科会で頂きました御指摘に対応しまして,検討当時,改正著作権法35条の解釈指針と呼んでおりました資料に基づきまして,著作権法の条文にあります用語の理解1つとっても,そこに齟齬がないように,教育機関側と権利者側で違うことを考えてしまわないように,丁寧に言葉をまとめるという作業を中心に,こちらも意見交換をさせていただいております。

その過程におきまして,著作権法の条文に基づいて作成した資料になりますと,学校の現場の先生方がそれを読んでそのまま理解できるかという点に関しては,やはり少し難しい面もあるかなというところがありまして,そこで出てまいりましたのが,学校の現場でよくある事例,例えば,黒板に著作物を板書する,といった事例をたくさん集めて,それぞれの事例で,それぞれ無許諾・無償でできるんですとか,これは補償金の対象なんですとか許諾が要るんですとか,そういった形でまとめていくという方向性が見えてきたところまでが昨年の成果だったと思います。

そして,専門フォーラムの最後に,ライセンスについてですけれども,著作権法35条ではカバーされませんが,教育現場でよく行われる利用というものがあるという御指摘の中で,学校内で行われるようなものについて,35条の適用外なのだから直ちに個々の権利者と個別に許諾契約を結ばなければいけない,となりますと,やはり非常に手続負担が高くなります。そこで,せっかく補償金の枠組みができるということを利用しまして,権利者横断的に包括的に許諾をするライセンスの仕組みができないかということにつきまして,検討いたしました。

このことにつきましては,いろいろな学校で考えられる許諾の必要な場面等を共有させていただきまして,こちらは権利者側がライセンスを出すというお話なので,SARTRASが管理事業者となって,一定の範囲の権利の委託を受けて管理をするという方向で,こちら側が預かるかたちで,昨年度の検討を終わっております。

続きまして,これらの昨年度の検討を踏まえまして,今年度の流れにつきまして触れさせていただきます。

少しめくっていただきまして,14ページになりますけれども,先ほど御説明いたしました昨年度開催されております教育関係者フォーラムにつきましては,改めて一本化した上で継続させていただくということで,6月に第1回目を開催させていただいております。委員の方にもできるだけ過去の経緯も承知していただいた方に継続してお願いするということで,スタートしているところです。

その中で,喫緊の検討課題と考えておりますのが,ガイドラインに関わるところでございます。先ほど申しましたように,典型例をまとめるという作業と,その典型例がなぜそこに当たるのかということを説明するような,先ほどの御説明の解釈指針,今,名前を運用指針という名称に変えておりますけれども,これらのセットでガイドラインという形にしていけるのではないかということで,現在,検討を進めているところでございます。

また,次のページですが,こちらはフォーラムというよりも,SARTRAS内部の検討になりますが,管理事業として,SARTRASが著作権管理事業法に基づきまして管理事業者としての登録をするということの決定をいたしまして,今,具体的にどの範囲を対象にするかということを,ガイドラインを横目に見ながら検討しているところでございます。

最後に,今後のスケジュール(案)でございますけれども,まず,先ほど申しましたように,補償金に関しましては,現在,ウエブを通じましてアンケートを行っております。このアンケートの結果の集約も含めまして,8月から9月の時期に,法律で定められております利用者団体への意見聴取の手続を行いまして,その内容を踏まえ,また,その意見の必要な反映をした上で,認可申請をさせていただいて,できましたら年内に認可を頂ければと考えております。

実施については来年4月からを目指しているわけですが,仮に本年中に認可が頂けるようであれば,準備的に来年1月から契約を受けさせていただければ,スムーズに手続に入っていけるのではないかと考えております。

次のページが,ライセンスでございますけれども,ライセンスの性質が,先ほど申しましたように,学校の現場で必要な個々の許諾を取るのは難しいという利用に関するものですので,補償金制度と並行して,同時期に実施できることが望ましいと考えております。最終的に来年4月に管理が開始できるように,御覧のような形で手続を進めていければと考えております。

今御説明しました内容につきまして,一番最後のページに記載しましたSARTRASのホームページがございます。このホームページには,今申し上げたフォーラムに関する情報もご覧いただけますし,公開が可能とされております資料につきましては,どなたでも御覧いただけるようになっております。こちらもお時間がありましたら御参照いただければと存じます。

以上でございます。

【瀬尾委員】今,概要を野方から御説明させていただきました。私からは,概要ということで御説明させていただきます。

法改正が審議会の決定によって決まって,昨年,法改正になりました。その中で,受け皿団体を作ってこれに取り組んできたわけなんですけれども,はっきり言って大変困難な内容です。非常に大きな内容ですし,国民の税金から支払われると思われる多くの補償金を含んでいる,非常に大きな制度だと自覚しております。

ただ,4つの課題に対して非常に真摯に取り組んできた結果,教育関係者の皆様からは一定の理解は得られていると思います。

とは言え,非常に権利者に対しての疑義があることも事実です。つまり,どのようにして徴収されるのか,それは明快なものなのか,そういったことがいろいろ疑問もおありということもあります。

ただ,それを1つずつ丁寧に解きほぐしていって,そしてきちんとした提出,申請を行うことに,今,全力を注いでおります。

つまり,この後,申請を出した後,文化庁様から,これじゃ不足なんじゃないのとか,又は教育関係者の皆様から,これじゃちょっと納得できないねとか,いろいろな話があってはいけないと思いますので,でき得る限り,丁寧な御説明をしていきたいと思っています。

そして,これは最初に権利者団体で旗揚げしましたときにも申し上げましたけれども,教育関係者と権利者が一丸となってICTを推進するという,本当にかつてない試みだと思っていますので,是非ともこれを成功させなければいけないという思いで,常務理事という業務に当たっております。

4つのフォーラムにつきましては,先ほど野方さんから説明したとおりですけれども,2020年4月からという実施については,今の時点での極めて時間が足りないことではないかという御疑念も多々おありかと思います。

ただ,2020年4月から小学校において新指導要領が実施されます。著作権法改正をして,そしてきちんとした体制をとっているにも関わらず,4月からの新指導要領の実施に制度作りが間に合わないとすると,これは権利者側としては至らないという御批判も受けかねないと思っておりますし,やはり喫緊の課題として対応すべきと考えております。

そのために,2020年4月からという目標をきちんと掲げて,それに向かって進んでいるということでございます。

その中で,いろいろなことがありますけれども,まず,高等教育の皆様からは,これだけでは足りないよと。ライセンスが必要だと強く言われています。このライセンスをどうやって出していくのか。これを並行して,補償金制度と一緒に構築を行っているというところがあります。

また,ライセンス,それから補償金をやるために,一般の先生方が見て分かるガイドを作らなければいけない。つまり,難しい著作権法の解説書を出すのではなくて,先生たちがこれを見ればよりどころとなるようなガイドを出さなければいけない。これによってきちんとした区切り書きをしなければいけないということから,ガイドの作成にも当たっています。

これにつきましては,9月の段階ではとりあえずまとまった部分だけ,それから3月までの間により多くの部分をまとめていこいうと考えております。

こういう形で,今,進めている補償金制度の構築ですけれども,大変困難もあると申し上げましたし,疑義もあるということでございますが,私はこの制度の大きさと効果からすると,極めて順調だと申し上げてよろしいかと思います。何よりも,いろいろな困難は残りつつも,教育関係者の皆様とともにこの制度を作ろうという意思が酌み取れるからです。

この問題につきましては,先ほどから私的録音録画補償金の問題もございましたけれども,今後の補償金制度そのものの仕組みの在り方にも大きな影響を及ぼすものだという観点も持っております。単に教育のものだけで終わるものではなく,これが1つのモデルになるのではないかなとも感じております。

最後にもう1つ申し上げますと,今の考え方を一歩進めていくと,今後の著作権の在り方の中で,報酬の取り方,つまり,今ですと1つの著作物を使って幾らという考え方がありますけれども,かなりの部分で,例えば補償金制度というのは社会的なサブスクリプションモデルではないのかなと考えています。

つまり,広く徴収したものをどうやって個別に分配するのかは,テクノロジーで解決する。例えばブロックチェーンであったり,そういったテクノロジーをかりて,これから,いわゆるコンテンツに対する収支についてはサブスクリプションモデルに移っていくようなことがあり得るのではないかなと私は個人として考えていますし,今回の補償金制度はそういう形のワンステップであろうかと考えております。

個人的なそんな思いも基にしつつ,また,教育関係者の皆様の思いも受けつつ,これを行っているわけなんですけれども,文化審議会からの4つの答申にしっかりと答えて,そして,これについて,また皆様に,きちんとこういう形になりました,こういう形で教育関係者の皆様から御理解を頂きましたということを御報告する機会があればいいなと思っております。

9月中の認可申請を目指して,今,鋭意進んでいるところでございますので,皆様におかれましても,SARTRASのホームページ等を御覧いただきながら,御注目いただければと思います。

また何らかのお問い合わせ等ございましたら,私でも野方でも結構でございますので,いろいろ現状についてはお話しできるところはお話していきたいと思います。

また,文化庁様もこの制度の確立に対して大変な尽力を頂いておりますけれども,やはり今後も,審査する側,我々はお願いする側ということから,遺漏なき,社会的にどのような批判にもきちんと耐えられるような申請を作っていきたいなということで,努力をしております。

時間がもしございますようでしたら,この場でも御質問をお受けすることは可能でございます。

以上で御説明とさせていただきます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。この場で何か御質問があれば,時間を用意しておりますけれども,何かございますでしょうか。

暑い夏になりそうな感じですね。(笑)

【瀬尾委員】いや,もう暑いです。本当に暑苦しい。

【道垣内分科会長】そうですか。苦しいのはちょっと困りますね。

【瀬尾委員】暑いだけじゃない。暑苦しいなんです。これが問題です。

【道垣内分科会長】ほかにこちらで用意している議題はございません。もし何かあれば,もう少し時間はありますけれども,よろしゅうございますでしょうか。

よろしければ,きょうはこのくらいにしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がありましたら,お願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日はどうもありがとうございました。

次回の著作権分科会の開催につきましては,それぞれの小委員会での検討状況を踏まえながら,また日程調整をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】では,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会の第54回を終了させていただきます。ありがとうございました。

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