著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第6回)議事録

(1)開会

【野村主査】
それでは,ほぼ定刻が参りましたので,ただ今から過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会第6回を開催いたします。
 本日は,ご多忙の中ご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところです。特にご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

(2)中間整理(案)について

【野村主査】
 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにいたします。
 それでは,さっそく議事に入りますが,本日は事前にお知らせしたとおり,これまでの議論をまとめた中間整理(案)について議論をしたいと思います。
 まず,事務局から配布資料の確認と中間整理(案)の説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
 それでは,まず配布資料の確認でございますけれども,「議事次第」の下半分に本日の配布資料を記載してございます。
 資料としましては,1点だけでございますけれども,中間整理(案)本体とそれからその後ろに一枚紙で,目次だけを取り出したものをご用意しております。
 そのほか参考資料1は議事録でございますけれども,過不足等がございましたらご連絡をお願いいたします。
 よろしければ,では引き続き資料の中身についてご説明をさせていただきたいと思います。
 まず,目次の方をご覧いただければと思います。一枚紙の方ですが,大きく4章立てで整理をいたしております。
 第1章は「はじめに」ということで,これまでの検討の経緯,それから各課題を整理している部分でございます。
 それから,第2章は,5月の本委員会で中間総括として取りまとめいただいたものをベースにしまして,その後の議論などをつけ加えた形で構成をしております。
 第3章は,「保護期間の在り方について」ということで,こちらは昨年10月の分科会にご報告いたしました検討状況の整理を基に作成してございまして,それに第1節,第2節のような現行制度の説明をつけ加えたほか,その後出された意見などを加味して構成しております。
 なお,昨年10月の検討状況の整理から多少第3節の中身の柱立て,項目立てを変えておりますけれども,大きく言いますと,3から8までを「文化の発展に与える効果の観点」ということで大くくりにしまして,その中でそれぞれの論点についての項目を立てるという形にしております。柱立てについても,後ほどご意見をいただければと思っております。
 それでは,本体の方に移らせていただければと思います。1ページの「はじめに」から順次ご説明をさせていただきますけれども,多少お時間をいただくことになるかもしれません。よろしくお願いします。
 第1章は,昨年10月の検討状況の整理とほぼ同じものを,そのまま記載しているだけでございます。変わっているところとしましては2ページの上の方の「その後」というところからで,これまでの検討経緯を加筆したことと,その段落の下に「本中間整理は」ということで,この中間整理の性格について言及をしております。
 この中間整理は,5月の中間総括で取りまとめられた課題については,その後の議論を補足したものであるということと,それ以外の検討課題につきましては,意見の状況を整理して,今後の論点を明確にする観点から中間的な整理を行ったものという形で記述しております。
 その下の2の「各課題の関係」のところは,昨年の10月のものと同じでございますけれども,掲げられた課題につきまして,延長される場合の困難さとして出されたもの,それから保護期間の延長によって,そのほか影響を受ける課題という形で,課題がそれぞれ検討に上ったと整理をしております。
 なお,この保護期間延長に絡んで指摘された課題につきましては,保護期間延長に伴う弊害として捉えるべきではない,異なる捉え方をすべきという意見もありましたけれども,それにつきましては最後のところで改めて触れるという形にしております。
 「はじめに」のところは,以上でございます。
 それでは,第2章のところに移らせていただきますと,4ページでございますが,こちらは5月の中間総括のところから見え消しで修正をしております。
 中身を変えているところは,5ページの最後のところで検討経過を追加しているようなものもございますが,中身として変わっているのは,10ページからご覧いただければと思います。
 こちらは第2節「多数権利者が関わる場合の利用の円滑化」のところですが,注に1つご指摘を追加しております。
 こちらの議論は,共有ワーキングチームの報告を中心に構成をしているわけですけれども,なぜここを中心と据えたかということについて最近の少子化傾向などに触れたわけでございますけれども,これに関しまして,だからといって課題がなくなるわけではないのではないかというご意見がありましたので,それを注でつけ加えさせていただいております。
 その次の変更点は,大分飛んでいただきまして,26ページ以降でございますが,権利者不明の場合の制度的な対応についての部分でございます。
 26ページは,単純な言葉の変更でございますが,中身に書いてあるものが制度改正だけではなかったので,タイトルを修正させていただきました。
 次は28ページでございます。28ページの(3)以下でございますけれども,5月の中間総括の段階では,こういう制度設計はどうかという論点提示の形で文章を書いておりましたけれども,それをそうでない形に改める形で幾つか修正をしているとともに,30ページでございますけれども,権利者不明の場合の制度設計の提案につきまして,こういった意見がありましたという形で検討の結果の部分を書き加えてございます。
 ざっとご紹介いたしますと,主な指摘としましては,A案の方がいわゆる権利制限型でございますけれども,こちらの方がシンプルな制度ではないかという指摘ですとか,事前に金銭の支払いをする仕組みがあった方がいいという意見,それから両案の折衷的な形がいいのではないかという意見もございましたし,あと実演家等保護条約の解釈次第によっては裁定制度という選択肢も考えておくべきではないかとのご指摘もございました。
 また,A案の細かい制度設計につきましては,捜索の基準あるいは使用料額の決め方についての指摘のほかに,事後的に権利者があらわれた場合の効果についてさらに工夫が必要という指摘もございました。
 こういったことを受けまして,まとめとしましては,何らかの制度的な対応が必要であるという意見について概ね異論はなかったけれども,制度の詳細を検討するに当たっては,保護の実効性が失われないように配慮しつつ必要な制度的な措置が行われることが必要という形で,検討の結果をまとめております。
 次の大きな変更点は49ページでございます。第4節のアーカイブのところは変更ございません。第5節「その他の課題」というところで,幾つか書き加えてございます。
 1番は「意思表示システムの在り方について」でございます。こちらは昨年来,検討課題として掲げておりまして,昨年10月の検討状況の整理に記載をしておりましたけれども,いわゆる「クリエイティブコモンズ」あるいは「自由利用マーク」などの意思表示システムをどのように活用促進していくかという点でございます。これにつきましては,いろいろご指摘はあったのですが,2番目の○の中ほどですが,法的に解決すべきなのか,それとも民間の取組に任せるべきか慎重に検討すべきという指摘もございまして,さらに民間でも様々な取組,ご提案がなされている状況にあるということでもありますので,こちらの部分の取りまとめとしては,引き続きこの民間の動きを注視しつつ,必要が生じてくれば法的な課題を検討していく,という形で取り扱ってはどうかとまとめております。
 2は,権利者多数,権利者不明,アーカイブ関係について指摘されたもの以外の利用円滑化方策についての指摘の部分でございます。
 書き加えているものとしては,こちらは中間総括を議論した際にご意見として出されたものを加筆したものでございますが,保護期間延長の懸念として提起された問題点だけ一つ一つ対応していけばいいという問題ではなくて,インターネット社会の中で著作権がどうあるべきかという観点から考えるべきだというご指摘がございましたので,これを記載するとともに,その下の部分で,そういった課題について今の検討状況,例えば法制問題小委員会などでもそういったことが検討されているということを書き加えてございます。
 第2章の利用円滑化方策につきましては,以上でございます。
 その次の51ページ以降は第3章「保護期間の在り方について」の整理でございます。
 昨年10月の検討状況の整理に,それまで出されたご意見などを列挙といいますか,整理をしておりますけれども,こちらは,それをベースにしつつ,その後のご意見などを書き加えた形になっております。
 ここから20ページぐらいは単なる現行制度ですとか経緯など,事実関係の整理ですので,項目だけご紹介いたします。
 51ページは過去の検討の経緯ということで,これまでの著作権審議会あるいは文化審議会著作権分科会での検討について簡単にご紹介をしております。53ページは,その後,平成17年で検討課題として設定された後の関係団体からの要望について簡単にご紹介をしております。
 54ページ,こちらは「検討の視点」について整理をしたものでございますけれども,これは昨年10月の検討状況の整理と同じものを記載しているだけでございます。
 その次は56ページでございますけれども,「制度の現状」といたしまして,我が国の現行制度と現行制度に至るまでの改正の経緯,そして,過去延長されたときの理由について記述をしている部分でございます。また58ページは,続きまして戦時加算についての現行制度をご紹介しております。
 59ページは,諸外国あるいは関係条約の現行制度についての項目でございます。59ページのところは,条約についての現行制度と,なぜ50年が採用されたのかという理由について整理をしてございます。
 その次は,60ページで主要国の保護期間の状況,それから61ページで諸外国の戦時加算の状況を整理してございます。それから67ページでは,「諸外国の保護期間延長の背景」についての状況を整理しております。こちらは以前,各委員にお送りした冊子を要約したもので,前回の小委員会でも参考資料としてお配りしたものをそのまま貼りつけております。
 こういった現行制度をつらつらと整理した上で,72ページからが各論点について,この小委員会で出されたご意見の整理となっております。
 こちらの「各論点についての意見の整理」のまとめ方でございますけれども,論点ごとにそれぞれ意見を整理しておりまして,のご議論としては,それぞれの論点ごとの優先順位などに関する指摘もありましたが,その点については最後で触れる構成にしております。
 また,それぞれの論点の中での意見の整理の仕方でございますけれども,コンセプトとしましては,主要な意見を列挙すると。昨年10月の検討状況の整理に記載されていた意見も含め,主要な意見を列挙して,最後で共通の問題意識なり,あるいは裏に潜んでいる争点が洗い出せるような部分は,それについても記述するというコンセプトで各論点について記載をしてございます。
 それでは,それぞれ各論点の中身についてご説明させていただければと思います。
 まず1つ目は,各国の延長の背景に対応する事情が我が国ではどうなっているのかという部分でございます。
 (1)から(6)まで「国際約束の規定との関係」,「市場統合等の要請」,「平均寿命の伸張」,「貿易上のメリット」あるいは「保護期間の長さについての国民意識」,「その他」という形でそれぞれまとめておりますけれども,(1)の「国際約束の規定との関係」では,例えばイギリスなどではそういったことが延長の理由にされているということがございましたけれども,これについては,世界の共通ルールに則していく必要があるという意見と,それから共通ルールは何なのかというようなご意見,それからまずWIPOで議論をすべきだというご意見あったわけですけれども,この部分の取りまとめとしましては,73ページの4行目ぐらいからでございますけれども,結論としては現在の状況としては,そもそも国際的な趨勢をどのように捉えるかという現状認識の点で,まだ意見が集約されていない状況にあるのではないかという形で,この論点についての現段階での整理をしております。
 それから,(2)の「市場統合等の要請」のところでございます。
 こちらは,ご案内のようにEU,それからオーストラリア,韓国でもFTAに伴って延長がされているわけですけれども,これについての我が国の状況はどうなっているかというと,現在のところ,2国間協定については保護期間延長を盛り込むような合意はないわけでございます。ただ,両国間の制度の調和を図るという目的で行われているものとしましては,「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」の中で,延長の要請が出されているという状況でございます。
 この点に関する意見は,その次の○のところですけれども,日本ではEUとは事情が異なるけれども,自由な流通にも考慮するということがあり得ないわけではないというご意見ですとか,下から2番目のところで,相手方との交渉のカードはとっておくべきというふうなご指摘がございました。
 この点のまとめとしましては,次の74ページのところですけれども,そもそも国際的調和の必要性についてどう考えるのかという論点とも密接に関係している部分でございますので,後ほどそちらのところで取り扱うということでまとめております。
 (3)の「平均寿命の伸張」のところですけれども,こちらはベルヌ条約が死後50年を保護しているという,それの趣旨に関係する部分でございます。我が国の平均寿命の状況はどうなっているのかといいますと,つらつらデータを書いてございますけれども,50年余の間で20年  以上延びている状況ということと,平均寿命のほかに出産年齢も高年齢化が進展しているという状況が一つあるということでございます。
 こういうような現状に対する意見としましては,次の○で肯定的な意見もあれば,その次の○で否定的な意見も沢山出てきております。
 このような肯定的な意見と否定的な意見との差がどこにあるのかということにつきましては,75ページの真ん中付近で分析をしておりますけれども,結局のところはベルヌ条約の制定趣旨に立脚して議論を行うのか,それとも別の趣旨から議論をすべきなのかというところが,この点についての見解を異ならせている根源的なポイントではないかということで整理しておりまして,結局のところは,それは著作権の淵源をどのように考えるのかとも関係する非常に深い問題が裏にあるというところでございます。
 (4)の「貿易上のメリット」につきましては,アメリカはこういう理由を延長の背景の1つとしているわけでございますけれども,我が国の状況では国際収支,これは現金の移動ですけれども,これを見ると5,000億円超の赤字になっているということで,その他貿易収支あるいは直接投資なども含めた状況を考えても,ゲームソフト以外については概ね輸入超過なのではないかというような状況が,意見として出されております。
 これに関する意見としましては,逐一ご紹介はいたしませんけれども,上から4つぐらいの意見は,収支動向をそもそもどう捉えるのかというご意見,それから,その次は単なる国際的な資金の移動に注目すべきではないというご意見,それから国益とはそもそも収支だけではないのではないかという,そういった観点からそれぞれ双方の立場のご意見がございました。
 この部分のまとめとしましては,76ページの下の方の○でございますけれども,結局のところは著作権についての考え方の違いがあるのではないかということでございまして,国境を超えて著作物を保護し合う仕組みだということで考えれば,アメリカのものも日本のものも区別なく考えるので,収支は余り注目すべきではないという意見につながっていると思いますが,一方で,アメリカの延長のような例との関係を考えると,一国の経済上のところからどう考えていくかという感じで意見が出てきていると。それによって,国際収支についての評価が大きく異なっているのではないかとまとめております。
 (5)は「保護期間の長さについての国民意識」でございまして,韓国がこれを一つの材料としているわけですが,我が国についても民間でそういった調査が行われておりまして,一般の著作物の保護期間については,「どちらかと言えば長い」,「長い」と答えた方が40%以上というような形になってございます。
 この調査につきましては,前回の小委員会でご発表いただきましたけれども,この数字がどこまで意味が持つものかについてはさらに調査が必要というようなことを言われておりまして,本小委員会の議論を踏まえた上での意識調査など,さらに詳細なものがあれば望ましいということで記述しております。
 その次は,2番目は「国際的な制度調和の観点」でございます。
 こちらにつきましては,一部市場統合の要請の部分でも触れましたけれども,保護期間の実効性を確保するためには制度調和が必要なのかどうか,あるいはその次のページで,コンテンツの空洞化が起こるのではないかという懸念からそういったものが必要なのかどうか,あるいは保護期間が異なることに伴う管理コストなどをどうするかという観点から,それぞれ賛否双方の意見が出されております。
 一般論としては,保護期間に限らず制度が同じ方がやりやすいという議論が一般的にはございますけれども,この点に関しましては,一番下の○のところで取りまとめとしまして,仮に調和させる必要があるのだとしても,結局どこの国を基準に調和させるかというふうなご意見がいろいろございましたので,最終的には,保護期間についての国際的な趨勢をどのように捉るかと最終的に密接に関係してくる論点でございまして,その国際的な動向をさらに踏まえて検討を深めるべき問題になるのではないかということでまとめております。
 次は79ページから,こちら以降は「文化の発展に与える効果の観点」でございます。最も多くの意見交換が行われた項目でございますので,こちらは幾つかの項目に分けて整理をしております。
 この3のところは,まず総論でございまして,一番上の○のところは,そもそも文化の発展というものをどのように捉えるのかについて,意見の相違があったということをご紹介しております。
 1つ目の意見は,オリジナリティの高い作品を手厚く保護することが重要であって,安易に過去のものを借用した作品が大量に流通しても,それは文化芸術の発展にはならないというご意見でございます。それに対して2つ目は,文化とは評価がつけられないものだというところに立脚しまして,文化の発展を情報の豊富化として捉えるべきだと。こういった2つの根本的な認識の違いが,まずあったかと思います。
 これが,それ以降のそれぞれの論点でも意見の違いの大元になっている部分があるのかと思われますが,以下の整理では,とりあえず幾つか論点ごとに分けて,それぞれの意見の違いを見るという形にしようかと,整理しております。
 1つ目の論点は,79ページの2つ目の○のところですけれども,作品が豊富に社会に提供されることになるかどうかについて,保護期間延長の効果がどう働くかという議論でございます。新たな作品の創出意欲が増加されるかどうか,既存の作品を再び世に出す意欲が促進されるかどうか,こういった2つの観点から後の4の「創作意欲への影響の観点」で,それぞれ意見を整理してございます。また,併せてその中では,個々のクリエーターのインセンティブに関連する意見も整理をするという形としております。
 2つ目の論点は,実際のコンテンツ産業の実態についての論点でございますけれども,コンテンツ産業は1つの作品への投資とそれに対する収益との関係だけで成り立っているわけではなくて,その作品から得られた収益を次の創作に投下するサイクルを踏まえて考えるべきだというご指摘に関係して,関連のご意見を後の5のところで整理をしております。
 その次の論点は,プロ以外のものについてどう考えるかというところに密接に関係する点ですけれども,土台となる過去の文化遺産を利用することができる状況を整えることが重要という観点に関連するものでございまして,こちらは専らパブリックドメインにすることによるメリットとして語られることも多いわけでして,関連のものを含めて,後の6の「公有による文化創造サイクルへの影響の観点」で意見を整理するという形にしてございます。
 なお,こういった形で個別の論点ごとにばらして以下を整理しておりますので,ちょっと争点がそれぞれの論点だけを読むと分かりにくい形になってしまっているかもしれません。最終的にはそれぞれの各論点のメリットを比較してどれが大きいのかという形の議論になってくると思われますので,この点をこの節の最後の8のところで整理をするという形にしております。
 という形ですので,各論点につきましては,今までの部分と違いまして,意見の列挙の後ろにこういった形で整理ができるのではないかというような記述は余り設けておりませんで,意見の列挙にとどまっている部分が多いのですが,そういった形でございます。
 順次ご紹介をいたします。
 4(1)は「新たな作品を創出するインセンティブ」についての意見交換の状況でございます。
 基本的な提案としましては,経済学の分析の観点から2つございました。1つは書籍の出版点数との関係で実証的に調べられた結果ですけれども,保護期間を延長しても増加は1-2%であるということと,それが創作の誘引になるかどうかは疑問であるというようなご主張でございます。
 一方で,2番目のところは,わずかな収益増加でもインセンティブになり得るのではないかということと,一部の特定の条件下では保護期間延長によって投資が増加する可能性もあるというモデルのご紹介がございました。
 これに関する意見としては,まずⅰ)の意見につきましては,実際には投資の誘引となる影響はもっと少ないはずだというご意見,あるいは作品数だけを数えた分析では実際のインセンティブは見えてこないのではないかというご指摘ですとか,写真の分野などでは前提が異なるのではないかという反論があった一方で,さらに,例外的なケースを前提とするわけにはいかないという再反論がございました。
 ⅱ)の分析につきましては,そのような特定の条件ではなく,投資がなくても個人的に生み出せるような分野,コンテンツもあり,この分析は成り立たないのではないかというご反論ですとか,一部の特殊なケースをもとに議論するのはどうかというご指摘がされております。
 その次の82ページは,(2)追加投資のインセンティブに関する分析の整理でございます。
 基本的な提案としましては,この2番目の○のところで簡単に触れておりますけれども,アメリカでは過去の著作物の保護期間を延長する正当化の根拠としまして,事後投資による著作物の価値向上というところが1つあったということでございます。
 これにつきましては,関連する意見としましては,関連産業では実際にそのような現実があるというご指摘のほか,その82ページの一番下のご意見ですけれども,この事後投資が正当化されるためには,財産権がないと著作物に対する投資,活用がなされないという前提が必要だということと,独占的な財産権者が市場競争よりも優れているという前提がなければこの議論は成り立たないのではないかというご指摘がございまして,それに関連して83ページで,もろもろのご意見が出されている状況でございます。
 それから(3)で関連しまして,こういった分析で用いられているインセンティブと,個々人のクリエーターが実際に創作意欲を生じる場合とはちょっと実情が違うのではないかという観点からも議論がされております。
 こちらもいろいろなご指摘があったのですが,こちらはまとめとしまして,84ページにこれらのご意見を総括しておりまして,こちらでは結局,概念の違うものが含まれているのではないかということでございまして,作品を着想して生み出す個々人の行為のところを創作と呼んでいるか,それとも事業者がそれを社会に出すところまでを含めて創作と捉えているかによって,こういった意見の違いが出てきているのではないかということでございます。
 この個々のクリエーターと事業者との関連につきましては,後の5のところで関係の意見を整理しております。
 また,関連で(4)で,いわゆる人格的利益についての意見も整理してございます。
 こちらは,基本的には昨年10月の検討状況の整理のところから余り変わっておりませんで,85ページの最後の意見が少し付け加わっている程度でございます。漫画のキャラクターなどについて人格的利益が語られる場合が多いけれども,それは別の著作権以外の方法で保護することも考えられるのではないかというご指摘でございました。
 その次は5でございますけれども,「コンテンツ事業者を介した文化創造サイクル」について保護期間延長がどういう影響があるのかという論点でございます。
 こちらは,実際のコンテンツ事業者からのご発表がありましたけれども,例えばⅰ)のところで,過去の数少ないヒット作の安定的な収入が新しい才能の発掘あるいは新人の作品発表の場になって,これで育成することによって創造サイクルがスムーズに回ることになるのだというような基調提案といいますか,ご発表がございました。
 これに関する意見としては,このページから次のページにかけてですが,そういった一部のヒット以外のもの,大半のヒットしないものについても保護期間延長がされてしまうことによる弊害が問題なのだという反論がなされております。
 また,関連としまして,コンテンツ事業者が個々のクリエーターに創作の場を提供していて,それが個々のクリエーターの創作意欲を支えているのではないかという指摘に関しましては,こういったパトロン的な役割を担っている人にとっては保護期間延長が長い方が経済的利益を得やすいということではないかという指摘がされております。
 また,このパトロンということに関連してでございますけれども,保護期間延長ということではなくて,公的な主体が文化創造サイクルを支えるということで考えるべきではないかというご指摘もございましたので,ここで記載をしております。
 中身自体は昨年10月の整理から変わっておりませんけれども,総括としまして,下の3行でございますが,この論点につきましては,結局は民間のコンテンツ産業による文化の下支えにどこまでの役割を求めるのか,それと公的な支援との役割分担の議論なのかと思っております。著作権による手法と公的支援の手法によるものと,それぞれ得手不得手がございますので,そういった論点が問題になってくるかという整理でございます。
 それから,87ページの6は,逆に保護期間延長によるメリットではなくて,保護期間を終了させることによるメリットについての議論でございます。
 (1)番のところで,その基調的な提案がされておりますけれども,パブリックドメインにすることによって利用の拡大あるいは利用方法の革新,再創造,取引費用の削減というような4つの効果が上がるというような基本的な考え方が示されております。
 実例としましては,アメリカの書籍分野の実証研究では,パブリックドメイン化された作品のほうが多く出版されているという点,それから利用方法の革新としましては青空文庫などの本,それから格安DVDなどの例を出して検討がされております。
 再創造については次のページで扱いますけれども,こういった基調的な意見につきまして,反論としては,出された意見は87ページの下から2番目の・のところですけれども,インターネット上のアーカイブなどは利用方法の革新となっているけれども,これは保護期間内でもやろうと思えばできることで,切れた場合の革新という関係に立つものではないのではないかという意見がございました。
 それから,88ページは,パブリックドメインになることによって再創造が促進されるというような観点のご発表についての意見でございます。
 関連のご意見としましては,一番上の・でございますけれども,1億総クリエーターと言われるようになっている今の状況では,プロ以外の人による文化創造が大きな意義を持ってきているということでございます。それに関連して,パブリックドメインの効果というのは高まっているというご指摘でございます。
 3番目以降は,そこから先は逆にハードルがあることによって,新しい創作性を付加するインセンティブになっているのか,それとも逆に下から3番目の・のように,パブリックドメインになるとそのままだと権利がないので,逆に創作性を加えて権利を発生させようというイン  センティブが生じて,それによって新たな創作物を創作するインセンティブが出てくるのではないかというご意見で,権利があるかないかによってどちらが創作性が高まるのかというご議論がされております。
 そのほか,89ページは,プロ以外による文化創造の活動は実際どうなっているのか,保護期間延長によってどうなるのかという,前回の小委員会で報告を受けたことについて整理をしております。
 前回でしたので,少し省略をいたしますけれども,90ページのところで,さらにそれと関連する論点としまして,「ネット時代における情報流通の在り方との関係」ということで整理をしております。
 こちらについては,特にパブリックドメインにする効果と密接に関連はしていますけれども,情報の流通の仕方が急速に変わっている中で,情報流通のための社会基盤の一つとして著作権法制がどうあるべきなのかということを考えるべきだとの指摘がございました。
 これについては,幾つか利用円滑化方策についての第2章でも触れましたし,あと法制問題小委員会ですとか,別の知的財産戦略本部でもそれぞれこういった観点から検討が進められておりますので,保護期間の在り方に関する特有の論点はどういうことなのかということで,ここで整理をしております。
 関係のご意見としましては,出されたものは,インターネットでは現在,著作権など気にせずいろいろ著作物利用がされていて,このような状態であれば保護期間は何年であっても関係がないというご意見がございまして,それに関連してこういった収益機会の減少が保護期間延長のきっかけになるのだということと,逆に,法律とビジネスが乖離しているということであって,権利を強めれば解決するというものではないという両方の観点のご指摘がございました。
 これらを踏まえますと,これが保護期間延長とどういう論点の関わりになってくるのかということで整理をしていますけれども,敢えて保護期間との関係に絡めるとすると,権利の実効性次第によって保護期間延長の効果が変わってくると,そういったご指摘かと考えられると整理をしております。
 そういった観点で捉えた場合には,権利の実効性あるいは関連ビジネスの動向も今後の議論の参考とすることが適当ではないかということでございます。
 8は,これまで意見を整理してきた各論点ごとの関係をどう考えるのかという点でございます。どの論点の議論に高い優先度を置くべきかということによって,恐らく結論をどうすべきかということが決まってくるわけでございますけれども,大きくまとめて評価を行っている意見としては2点,基本的な意見を整理しております。
 1点目は,ごく一部の巨匠のような場合を念頭に置いて,残り大多数の著作物についても延長してしまうことが問題であるという意見。
 それから,逆に生き残っているものがごくわずかだということであれば,著作権が切れたとしても使われるものがごくわずかであって,延長することによって生じる損失もごくわずかだというご意見。そういった観点に立った上でそれぞれの論点のメリット,デメリットを考えていくべきではないかというご指摘でございました。
 また,そのほかに各論点のメリットに対して,それぞれ別の対策によって対応が考えられるのではないかということ,あるいは折衷的な対応策が考えられるのではないかというご指摘もございました。
 1点目は,問題はプロのクリエーターをどのように育てていくかということが大事だということであれば,保護期間延長ではなくて,別の対応策でも話し合っていけるのではないかというご指摘でございます。
 逆の観点からは,パブリックドメインになることによるメリットがあるということであれば,それは権利制限規定を用意することで対応ができるのではないかというご指摘でございます。
 また,人格的利益を確保するという点では,これは著作権ではない別の権利で対応することができるのではないかというご指摘もございました。
 それから,保護期間延長を折衷的な方法で行うというご指摘もございましたが,これは昨年10月の整理のものをそのまま記載しているだけでございます。
 それから,関連する論点としまして,映画の著作物の保護期間,それから著作隣接権,それから3で「戦時加算」についての意見の状況も整理してございます。
 映画についての論点は,映画につきましては平成15年に70年ということになっておりますけれども,そのときの法改正の趣旨が保護期間の起算点が映画の場合は死後ではなく公表後であるということに伴う実質的な差を解消するということでございましたので,仮に一般の著作物の保護期間が70年になった場合には,それとの調整がさらに必要になるのかという論点が生じてくる可能性がございます。
 この点については,まだ特にご議論をされているわけではございませんけれども,当面は一般の著作物についての議論を進めた上で,その動向を踏まえて対応を検討するという形でどうかと思っております。
 2番目は,著作隣接権についての議論でございます。
 著作隣接権については,諸外国の動向があれこれございまして,これもご紹介したところですけれども,実演・レコード条約の4分の1近くが70年以上の保護期間になっているという状況と,最近の状況では,イギリスでは著作隣接権の保護期間延長について否定的な見解がなされているということと,前回,朝妻さんからご発表あったところですけれども,欧州委員会では最近延長の提案がなされているという状況の変化があるということでございます。
 これに関係する主な意見の整理でございますけれども,大きく2つの観点から整理をしてございます。
 94ページの○は,著作権の保護期間の在り方と同様の観点からの議論でございまして,インセンティブの議論でありますとか,そういった議論がされております。
 それから,95ページの上のところは,著作権と違う議論もできるのではないかというような観点から指摘があります。特に実演,あるいはレコードもそうですけれども,著作権延長の弊害として言われているようなことは隣接権には当てはまらないのではないかという,違いに着目した指摘がされております。
 こういった点を踏まえまして,隣接権につきましては,95ページの2番目の○の「しかし」以降のところで取りまとめをしてございますけれども,まだまだ著作権について意見の一致が見られていない状況なので,隣接権も当然同じ状況なのですけれども,今後につきましては,隣接権固有の課題を必要に応じて検討しつつ,まずは著作権についての議論を進めて,その動向を踏まえて,併せて検討をするという形でどうかということでございます。
 それから,次の戦時加算につきましては,昨年10月以降それほどご新しく指摘が出てきているわけではありません。最後のまとめとしましては,下から5行ぐらいですけれども,この課題はいずれにしても著作権の保護期間の在り方の動向によっていろいろ影響が出てくるという問題でございますので,まずは著作権についての議論を中心とした上で,その動向を踏まえて検討をするということでどうかということでございます。
 このような点を含めまして,第4章が最後の整理でございます。今後の方向性についての議論ですが,まず利用円滑化方策と保護期間の在り方の関係をどう考えるのかということですけれども,いろいろご指摘がございまして,この小委員会のもともとの問題意識としては,保護期間を延長するのであればこういう支障が生じるのではないかという観点から利用円滑化方策を検討してきたわけですけれども,それに対しまして,97ページの真ん中から下ぐらいの2番目の・のところですけれども,保護期間延長とは別個の課題であるという捉え方をすべきだと,保護期間延長に関わらず実施すべき問題なのではないかというご指摘もございました。
 こういったご指摘を踏まえまして,今後これをどう考えていくのかということですが,98ページの上で整理をしてございまして,指摘された項目だけ取り上げて円滑化方策を論じるべきではないというご意見もありましたし,著作権につきましては長さと幅の両方を勘案すべきだという意見もございましたので,今後については他で検討されています権利制限の見直しなども含めまして著作権法制のバランスとしてどうなのかと,延長したら保護と利用のバランスが崩れるのかどうかという,そういう観点から両方の関係を考えていくべきであるということで整理をしております。
 また,保護期間の在り方については,現在の状況の整理としましては,第3章でそれぞれ見ましたとおり,いずれの論点についても,肯定的な立場,否定的な立場両方から意見が出されておりまして,また論点ごとの関係をどのように考えるかということについても,それぞれの論点を優先順位などについていろいろとご指摘がある状況でございます。
 その中で概ね意見の一致が,認識の一致が見られているのかなという点は,保護期間の延長の必要性やメリットに関しまして,メリットを受けられる少数であるが価値の高い著作物があるということと,それ以外の多数の著作物が関係してくることについてどう考えるのかという点。ただ,両方を合わせて考えた場合には,そのメリットをどう評価するかについて,そこまでの合意は得られていないという状況かと思われます。
 また,それと比較対象となる保護期間が切れた場合のメリットにつきましては,一部こういう例があるという形のご紹介がございましたけれども,そのメリットはどういう仕組みで生じてくるのかというところをもっと掘り下げていくと議論ができやすいのかなというふうに状況を整理しております。
 いずれにしましても,双方のメリットを単純に比較して二者択一の形で議論をするという形は,もちろんございますけれども,それ以外に双方のメリットを両方受けられるような方法はないかなどの観点も含めつつ,今後検討が行われるべきではないかという形で整理をしております。
 99ページ,今後の議論といたしましては,利用円滑化方策について,この中間整理で一定の取りまとめを行ってきたものの,それ以外の点ではさらに検討を行うべき事項が残されており,著作権法制全体として保護と利用のバランスについて,調和のとれた結論が得られるよう検討を続けることが適当という形で最後を締めております。
 ご説明が長くなりましたけれども,ご指摘をよろしくお願いいたします。
【野村主査】
 それでは,ただ今のご説明に基づきまして,ご議論をお願いしたいと思いますが,残りの時間で限られておりますので,全体を区切って章ごとにご議論をお願いしたいと思いますが,中心は第2章,円滑化方策と,第3章の保護期間の在り方であろうかと思いますが,そういった観点から時間配分をしたいと思います。最初に全体的な構成及び第1章について,何かご発言ございますでしょうか。
 実質的に,この部分は昨年からそれほど大きく変わっておりませんけれども,ここは特によろしいでしょうか。
 それでは,特に第1章についてはご意見がないということで,また後ほどございましたら,お気づきの点がございましたらご発言いただければと思います。その次に第2章の「過去の著作物等の利用の円滑化方策について」ということで,これは5月の中間総括からある程度,加筆訂正をしたところでございますけれども,これについてページ数でいいますと4ページから50ページということになります。何かお気づきの点ございましたらいかがでしょうか。
【野村主査】
 瀬尾委員どうぞ。
【瀬尾委員】
 ちょっと質問ですけれども,この中で幾つかある程度の幅はあるものの,結論とまではいきませんが,何らかのまとまりを見た部分があるのではないかと思うのです。
 例えば,そのA案,B案の部分とか,そういうところである程度の幅に狭められている部分があると。実際にこの部分というのは,今後どういう扱いになるのか。例えば,法制問題小委員会さんの方に回って,そこで法的な検討をされて実務的な動きになるのか,何か全部このままずっと中間まとめで出したままというのでなくて,具体的なタイムスケールの中でどういうものがこの中であるのかどうかを伺いたいと思います。また,そのタイムテーブルはどうなるのか,もしそういうことがあれば少しお伺いしたいと思います。
【黒沼著作権調査官】
 本小委員会としましては,全体は「中間整理」という形にはなっておりますけれども,この第2章の部分につきましては,前回も中間総括という形で,特に検討の熟度が高いものという形で先に取りまとめがされた経緯がございます。
 ただ,この部分は,また法制問題小委員会でも,いわゆるデジタルコンテンツ流通促進法制の大きな要素の一つとして検討をされておりまして,この部分をどうするのかにつきましては,また明日の法制問題小委員会でも議論があろうかと思いまして,それを踏まえて,またその後の10月の分科会もございますので,そのご意見も踏まえて検討していくことになると思っております。
【野村主査】
 今日の段階では,それでよろしいでしょうか。
 ほかに,この点について何かご発言いかがでしょうか。特に第2章についてはよろしいということでしょうか。
 それでは,とりあえず先に進ませていただいて,また後でお気づきの点ございましたらご発言いただければと思います。第3章の保護期間の在り方についてということで,ここは新たに昨年からの審議の経過を踏まえて書き下ろされた部分でございまして,多くの点において,いろいろな意見をある程度網羅して整理しているということで,特に具体的な方向性を示すというところまでは行っておりませんけれども,ここの部分についてご意見等ございましたら,ご発言をお願いしたいと思います。
 今日の段階では,10月1日に予定されております分科会にこれをご報告して,そこでいろいろご意見が出ると思います。それを踏まえてまた1月に我々の任期も来ますので,そこまでにまた議論を進めたいというふうには思っておりますけれども,そういう意味ではまさに中間整理ですけれども,いかがでしょうか。
 大体,従来のここでの皆さんのご発言は,ある程度,反映されているということでよろしいでしょうか。
 生野委員どうぞ。
【生野委員】
 保護期間のことに関してです。著作隣接権の保護期間について,95ページの2つ目の丸のところで大体整理されていると思います。レコードについて,このペーパーの中でもいろいろ意見が取り上げられてありますが,重ねて言わせていただきますと,そもそも著作権と著作隣接権の実質的な保護期間の格差に関して,合理的な理由がどうしても分からないということ。
 それと,レコードについては,デッドコピーだけが規制されているわけですから,創作あるいは準創作に関する阻害要因とは全くなっていないということ,また,制作する段階における投資,事後投資や,デジタル化などの継続的なメンテナンスが必要であることから,レコードについて保護期間の延長をということで申しております。
 また,この整理の仕方で,特に2つ目の丸の第2段落下から3行目ですか,「今後,この課題については,著作隣接権に固有の問題と思われる論点について必要に応じて検討を加えつつも」という記載のうち,「必要に応じて」という箇所がどうも気になります。
 私も実演家を代表されている椎名委員も,必要だと思ってぜひ著作隣接権の議論をしてほしいということで述べているわけで,この「必要に応じて」というのはカットしていただくとか,積極的な検討を今後もお願いしたいと思います。
【野村主査】
 この「必要に応じて」を削っちゃうという,そういうご意見ということでよろしいでしょうか。
 この件について,いかがでしょうか。特にほかの委員の方はご意見がなければ,削ってみますか。
【黒沼著作権調査官】
 「必要に応じて」と書いたのですが,確かに課題として2つ違う課題があると書いた上での話なので,ここだけ急に「必要に応じて」となると違和感があるという,そういうご趣旨なのかもしれません。もし,そういうご趣旨であれば,修正をすべきかと思いますが,よろしゅうございますか。
【野村主査】
 それじゃ,ちょっと事務局と私の方で生野委員のご発言の趣旨を踏まえて,若干修文するということでよろしいでしょうか。
 ほかの点,いかがでしょうか。特に,ご発言ございませんでしょうか。
 そうしますと,まだ大分時間がございますけれども,第4章についてはいかがでしょうか。時間は十分ございますので,場合によっては,ほかの前のほうに戻ってご発言いただいても結構ですけれども。
【瀬尾委員】
 よろしいですか。
【野村主査】
 はい。
【瀬尾委員】
 これは全般的なところですが,戦時加算についてという部分でございます。戦時加算についてということで,今回,著作権の保護期間の延長問題と密接にリンクをするということで書かれておりますけれども,実際に戦時加算を解消するためには,具体的にどういうことができるのかとか,どういうふうな手順があるのかとか,可能性の問題,手法の問題が余り書かれていないし,実際に議論にも余りならなかったのかなという気がいたします。
 それは,今度は国の中で保護期間の延長だけを前提として,その後までこの問題について検討を加えないということが今後よろしいのかどうか。私としましては,この戦時加算の解消というのは,やはり非常に大きな解消すべき問題なので,もう少し今後は議論の台にのせていただきたいなというふうに思います。
 まとめの中で,特別な過渡的な変更とかは必要とするとは私は思っておりませんけれども,ちょっと弱いという意見を言わせていただきます。
 1つ意見として,以上です。
【野村主査】
 それじゃ,ただ今の意見は意見として事務局のほうで記録しておくということで,ほかの点いかがでしょうか。
 全体について,最初に戻って第1章からも含めて,特に何かご発言ございませんでしょうか。
 三田委員どうぞ。
【三田委員】
 このまとめは,これでいいと思うのですけれども,今後の展開ということを考えて,少し意見を述べさせていただきたいと思います。
 ネットの時代になりまして,1億総クリエーターというようなことが言われているわけでありますけれども,1億総クリエーターというのは,何も今に始まったことではなくて,どんな方でも日記をお書きになりますし,お手紙をお書きになることもあるだろうと思います。著作権というものが,ほかの知的所有権と一番異なっているところは,登録制ではないということであります。手紙や日記を書いたら,書いた時点で著作権で守られてしまうということであります。
 しかし,そういう形で一つ一つの著作物が守られてしまうということは,また利用者にとっては大変不便なことでありまして,登録制にしたらいいというようなご意見もこの会議の中でも出てまいりました。ただ,それを全部を登録制にするというのはベルヌ条約に違反しますのでできないわけでありますけれども,しかし,一方では著作権の保護期間50年を70年に延ばすと,年月が経てば経つほど,行方不明になる著作者や著作権継承者は多いということは事実であります。
 この会議のヒアリングにおいて,多くの方が延長に反対をされましたけれども,その中の多くは,50年が70年になってしまうと,ますます行方不明のものが多くて事務が繁雑になるとか,実際問題,人を捜すということが不可能であると,だから反対であるという意見が大変多かったように感じております。
 私自身,それは確かにそのとおりであったということでありますけれども,しかし,一方では何十年もたってもなおかつ需要のある作品というのは,歴史に名を残すような文豪であるとか,あるいは人々に歌い継がれていく歌であるとか,そういうものの数は1億総クリエーターと言われるものの,1億というものを分母にとりましたら大変少ないわけですね。
 大変少ないから,それを無視していいのかということではなくて,そんなに少ない人が実は50年以上たったコンテンツの大半を占めているということの方が重要であります。
 また,そういう重要な作品というのは,出版者なり,レコード会社なり,JASRACさんなりが著作権の継承者をちゃんと把握しておりますので,決して行方不明になっているわけではないんですね。ですから,そういう管理事業者に許諾を求めて一定の使用料を払えば,たやすく使えるということであります。
 今,谷崎潤一郎の文庫本が売られておりますけれども,これは著作権が切れたからといって,安くなるわけではないのですね。ですから,著作権が切れてお金を払わなくてよくなったからといって,得られるメリットというのはそれほど多くはないと思うんです。
 むしろ,著作権が長くなって困るというのは,行方不明になって捜しようがないというものが非常に多いということですね。例えば,昔の早稲田文学みたいなものを復刊しようと思っても,文豪というのはすぐに見つかるわけでありますけれども,昔の同人誌とか大学の紀要のようなものを復刊したり,あるいはネット上に載せようとしたときには,小さなコラムを書いているような人まで含めますと,行方不明者が非常に増えてしまうということが大きな問題であります。
 この問題というのは,何らかの形で積極的に解決していく必要があると思います。50年でパブリックドメインになるからというようなことで,今までそれが一つの解決であるというふうに考えられてきたのは,むしろ消極的な解決法であろうと。50年以内のものについても,一定期間以上たったものについては積極的に利用できるような新しいシステムは作るべきであろうと思いますし,また行方不明になった人の多くは,いつお亡くなりになったかということすら分からないというケースが大変多いのですね。ですから,50年で切れましたという確認もできないというものが多いわけであります。
 ですから,50年で切れるものをパブリックドメインでみんなで利用しようということよりは,もっと積極的に世の中のみんながあらゆるコンテンツを利用できるような方法を探るべきだろう,そういう趣旨で何らかの形の利用促進のシステムが必要であるということを従来から申し上げてきましたけれども,文化庁さんの方でも,A案,B案という2つの案を出していただいております。
 ただ,A案,B案というものは,現在のところ示されているだけで,A案がいいとか,B案がいいとか,あるいは折衷するのか,あるいはもっと違う画期的な案があるのかということは,まだ議論されておりません。
 今後の方向性として,この新しい利用促進のシステムというものをもっと議論をして煮詰めていくことによって,私はヒアリングで提出された延長反対のご意見のある部分,あるいはもしかしたら多くの部分が解決されるのかもしれないというふうに考えております。
 なるべく具体的に利用促進のシステムを考えて,それをまた利用者の方にお示しすることによって議論が解決の方向に向かうのではないかなという期待を持っております。
 また,ネット関係に関しましては,著作権に絡む新たな法律を作ろうという動きがありますけれども,これを実現,これは例えネットに限られるものにしても,ネットに載っているものと一般の文字,書籍等に出ているもの,互いに関連し合っておりますので,ネットだけで例えばフェアユースというような概念を出してしまいますと混乱が起こるおそれがありますし,また,そういう法律というのは,何らかの形で著作権を制限することになるだろうと思われます。
 だからといって,私は大反対だということを申し上げているのではありません。クリエーターという者は,読者なり,聞き手なりと触れ合いたいという思いで創作をしているのだろうと思います。ですから,利用者が増えるということは,大変ありがたいことでありますけれども,しかし,これは権利者と利用者がしっかりと話し合いをして,起こり得る様々なケースについて議論をした上で,例えば綿密なガイドラインを作っていくというような作業を進める必要があるだろうと思いますけれども,そういうものを関連して利用促進のシステム全体についてしっかりと議論をするということが,この小委員会においても必要なのではないかなというふうに考えております。
 できれば,この中間のまとめ以後,次のまとめの間にそういう建設的な議論が行われることを期待したいというふうに思います。
 以上です。
【野村主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,ほかにご発言ございますでしょうか。特に,よろしいでしょうか。
 中山委員どうぞ。
【中山委員】
 今の三田委員のお話を聞いていますと,十分儲かった人がより沢山儲けたいと,私にはそういうふうに聞こえてならない。文豪だとか,あるいはディズニーとか十分儲かっている。それならもうそれでいいじゃないかと,私は感じがするわけです。
 むしろ,問題は十分儲かっていないような作品が埋もれてしまわないようにするにはどうしたらいいかということこそが一番大事な問題ではないかと思っています。
 それから,もう一つ,著作権が切れた後,出版しても値段は変わらないというお話ですけれども,それは確かに著作権料は大体1割ですから,理屈からいっても値段が1割下がるということになるわけですけれども,それはもう出版時代の話でして,インターネット時代の話とは全く違うわけですね。既に青空文庫を見れば,無料で我々は読めるわけです。あれが無料で読めなくなるというふうになるわけですから,現在においては,昔の出版状況と全く同じ状況で論ずることはできないだろうと思います。インターネット時代,ブロードバンド時代にはどうあるべきか,それが私は中心的な課題になるのではないかと考えております。
【野村主査】
 三田委員どうぞ。
【三田委員】
 こんなふうに中山先生とずっとさしでやりとりをするのもいかがなものかというふうに思いますけれども,確かに値段をつけて売ることによって阻害されるものはあるだろうと思います。しかし,新しい時代でありますから,我々の方も我々が管理を任せられております著作者に関しましては何らかのデータベースを作って,その中に意思表示のシステムを盛り込んで,もう実際に経済的な利益を生み出していないような作品については,そこで意思表示をして,どうぞ青空文庫さん,できればネット上に載せてくださいというような,そういうことを権利者のほうから積極的にお願いするということも可能でありますし,むしろそういうことが盛んになれば作品の流通というものも,より進むのではないかと思います。
 繰り返しますけれども,何十年もたってから経済的利益のあるものというのでは限られているのですね。ですから,この意思表示システムを使えば大部分のものはネットで流れてもいいだろう。
 ただ,ご遺族の見解等によって,今,青空文庫は自由に読めるわけでありますけれども,それを100円ショップの業者が本にして売るということも自由になされております。これも意思表示のシステムを使いまして,ネットはオーケーだけれども,それを勝手に本にするのは駄目だとか,それぐらいのことはご遺族の権利として意思表示するというようなところを残していただければ,著作権を延長することが必ずしもコンテンツの流通を妨げるということには決してならないというふうに私は考えております。
 今までのような固定した概念で著作権というものを考えるのではなくて,新しい時代に即した新しいシステムをこれから権利者と利用者が両方知恵を合わせて考えていく,そういう議論の場が必要ではないかなというふうに考えます。
【野村主査】
 では,先に椎名委員。
【椎名委員】
 中山先生は,儲けている者は,もうそれ以上儲けないほうがいいのではないかというふうにおっしゃったのですが,僕はこういう言い方をずっとしていて,職業的にコンテンツを生み出している人間は,著作権というものを一つの要素として生活の糧を得ていくわけであって,別に沢山儲けていない人でも,糧を得るチャンスが広がることは喜ばしいという思いから保護期間が延びることを期待する人があるのではないかと思うのですね。
 この間も,終わりのころにちょっと触れたのですが,この議論は,これからどういうふうになっていくか分かりませんが,断じて延ばさせない,断じて延ばさせるという議論で終わってしまっていいのかどうかという,延ばしたらどうなのか,延ばさなかったらどうなのかという角度でもう少し,例えば延ばしたらどうなるかというところで利用円滑化策であるとか,その権利者側の提案とかということがあったと思うのですね。
 もう少しそういう,ある種のリアリティのあるところでもうちょっと話が進んでいけばいいなと今は思っております。
 以上です。
【野村主査】
 それじゃ,続けて里中委員。
【里中委員】
 同じような感想なんですけれども,儲けるとか儲けないとか,ただならみんな喜ぶとか,そういうようなお金の話ばかりが表に出ますと,この問題の本質からちょっと外れるのではないかという気がするのですね。
 現実に,ここで取り交わしたいろいろな意見について,一般の方の意見を受けとめるコーナーがありますよね。そこへの書き込みを見ていますと,ああ,ちょっとひどいなと思うような,つまり著作権者たちあるいはその周りにいる人たちは,より一層儲けたいがために期間延長を言っているのだと決めつけて,そして,そんなに欲が深いのだったら著作権を相続するときに相続税をかけるべきだとか,そういうのが出ているのです。
 皆さんすごく,皆さんというのはそういうふうに誤解している皆さんですけれども,著作権なんて持っていたって,それが商品化されない限り一銭にもならないわけですね。一銭にもならない,形にもならないものを持っていて,どうして相続税を支払わなければいけないのか,そう思います。
 例えば原物があったとしても,絵描きさんが絵を残して亡くなった,その方の絵は号幾らだと,じゃ残された絵にはこれだけの値打ちがあるから財産と見なされて相続税がかけられるわけですよね。だけど実際,物というのは売買したときに当然,所得税が発生するわけですから所得税だけで十分なのに,どうして持っているだけで売買をしていないものに税金が生じるのか分かりません。
 過去,奥村土牛さんのご遺族の奥村さんが余り絵をお売りにならなかったので,原物がいっぱい残っていたと。それで,相続税がどんとかかってきた。家にたくさん絵が残っていたから,号幾らの対価だからお金に直すとこれだけだと。それで相続税がかかってきて,とても支払えないわけですよね。それに対するアピールとして,こんな税制はおかしいんじゃないかということで,ご子息は泣く泣く世間に対する,税制に対するアピールのつもりで絵を焼かれたんですよね。本当に文化的損失ですよね。何ておかしいんだろう,この国は,と思いました。
 ほかのさまざまなものも,持っているだけで税金がかかるというのは,子孫に対して,おまえ楽をして儲けるのは卑怯だぞと言って罰を与えているような感じで,この国というのは,とにかく少しでも財産を持たせないために努力をしているという,そういう感じがします。
 著作権という形のないもの,商品として流通しなければお金にならないものに対してまでも相続税をかけるべきだなどという意見が出てくるのは,著作権の利用の仕方によってお金がどうこうするという,そういう言い方がここですごく沢山なされてしまう,そういう影響もあるかなと感じました。
 本日のここに書かれてある中から外れますが,きっと多くの延長派の人は,お金は多少の理由にもなるかもしれないが第一義ではないと。また,延長しないという方もそうだと思うのですけれども,そういう経済効果というのは,これは出してみないと分からないものですから,出してみないと分からない経済効果をもとに論じたり,フリーのほうがこれだけ活性化するという,いろんなその経済効果によりますが,そういうところから離れて,効果は効果,ここまで平行線をたどって見えてきたわけですから,それだけ複雑な問題を軽々に結論を出すのはかえってよくないと思いますので,こういう委員会とか立ち上げますと期限を区切って答えを出さなければいけないという何か暗黙のルールみたいなのがあるとは思うのですが,長引けば長引くほど一般のいろいろこれまで著作権に興味を持たなかった方にも,いろいろ真剣に考えていただくきっかけになるのではないかと思いますので,あせらずに延々と10年がかりで論じられてもいいのではないかと思っております。
 このまとめに関しての意見ではないのですが,これからのこともありますので,ちょっと感想を述べさせていただきました。
【野村主査】
 中山委員,どうぞ。
【中山委員】
 相続税については誤解があるようですけれども,これは財務省の審議会ではありませんのでそれは省略いたしますけれども,著作権にも当然,相続税がかかります。かからない方がおかしい。ただ,算定,つまり幾らの価値があるかという判断は難しいけれども,確実にかかります。それはここではおいておき,先ほどの椎名さんのお話ですけれども,私は著作権者あるいは著作者が利益を得るように行動するのは当たり前だと思っていますし,むしろ現在のクリエーター,全部とは言いませんけれども,ほとんどのクリエーターには見返りが少なすぎるのではないかと思っております。
 だから,もっともっとシステムを変えて,もっとクリエーターを厚く保護しなければ日本の文化は発展しないと思っています。私が言いたいのは,死後70年後のことを考えるくらいなら,むしろ現在のクリエーターに,このインターネット時代にどうやって利益を還元するか,そちらの方を考えなければいけない。
 死後50年以内の方がむしろ問題で,50年を超えて70年まで儲ける必要はないでしょう,それだけの話で,権利者が利益を追求するのは,私は当然だと思っています。
【野村主査】
 ほかに,いかがでしょうか。
 椎名委員どうぞ。
【椎名委員】
 実演家の場合は死後ではない,というところが問題なんです。
【野村主査】
 いかがでしょうか。
 佐々木委員どうぞ。
【佐々木(隆)委員】
 非常にささいなことで恐縮でございますけれども,98ページの一番最後の「検討が行われるべきと考える」ということですが,今の先生方の議論をお聞きしても,やっぱりここが非常に重要なポイントだろうと思うのでもうちょっと,私の個人的な感情としては,もう少し強い言葉でというか,もう少しここのところを「行われるべき」というさらっということじゃなく,もうちょっとしっかり書き込むということが可能かどうかご検討いただいて,別にこれでよければこのままで結構です。
【野村主査】
 ほかにいかがでしょうか。
 瀬尾委員どうぞ。
【瀬尾委員】
 今回,この延長ということを基本にして話をしてきて,いろいろな意見が出て,大変よいことだと思います。
 また,死後50年から70年に影響することの是非ということで,今,中山先生からもご指摘もあったようにいろいろな意見が出ております。また,今のクリエーター,現存している今の創作に直接プラスになるような施策もしくは方策をということも,これははっきりと私もそうであるべきだろうというふうに思います。
 ただ,それとその50年,70年がどう絡んでくるのかというのは,今まで私は別個に考えていましたが,やはりこの前申し上げたようにトータルバランスで考えていくにはどうしたらいいのか。ただ,そう思いつつも,例えば50年から70年に延長した場合,不明者が増えると,これがやはり大変な問題になるということで,それに対してやはり何らかの,例えばサイトを拡張しようとか,それから先ほどA案,B案であったような方策を考えてみようとか,そういうことは検討されてきました。
 ただ,今非常に重要な,では今の著作権のある現在のクリエーターたちにどういうふうに還元したいとか,そういう人たちのプラスになる施策を考えるかというふうなことの具体的な内容というのが,今まででは出てきていないというふうに私は思います。
 例えば,どう利用するかは出てきていますけれども,クリエーターたちにどう還元する仕組みであるのかということについて,やはりもう少しこの議論を深めていきバランスをとった議論の中で考えていく,そういう先行きがこの小委員会にあると私としてはよろしいのではないかなと。
 せっかくいい議論に,最初ずっと平行線で来ていたものが,いい議論になってきつつある,非常にこれからが脂の乗ってくるところなのかなと思いますので,この併記した状態を1番スタートとして,今度は生きている,現存しているクリエーターたちにどういうメリット還元ができるかの議論をした上で,もう少しいろいろ総体的な検討を試みていただきたいと。
 今日の議論を伺ってもそうですが,今後に対して大変望みがある,また有益であろうというふうに思いますので,今後もこれをこの延長線上で,ぜひ継続していただきたいというふうに思います。
 以上です。
【野村主査】
 ほかにご意見いかがでしょうか。 では,生野委員どうぞ。
【生野委員】
 先ほど青空文庫の例が出ましたけれども,青空文庫の意義は,ただで入手できるというところにあるというよりも,過去の名作で,ユーザーがアクセスしようとしてもアクセスできない,入手できないといったところを,アクセス可能にした点というところだと思います。
 ということで考えれば,今後,保護期間が延びても,ネットワークにおいて供給にかかるコストが下がるということから事業者が十分できる話なのですね。それを先駆けてやった青空文庫は,先見の明があると思うのですが,今後,著作権の保護期間が延びてしまうと利用がなかなかできなくなるという点については,十分それは解消できるような道筋というか,それはもうあるのではないでしょうか。
 また,保護期間が延びることによってその収益を,出版物でいえば出版社が新たな作家の発掘や育成などの投資に充てることが可能となるといったことを考えれば,単純に保護期間が切れて情報がアクセスしやすくなる,ただで入手できるということだけが意味あるということではないということを言いたいと思います。
 以上です。
【野村主査】
 佐々木委員どうぞ。
【佐々木(隆)委員】
 ちょっと青空文庫のことで補足させていただきたいと思いますが,出版界全体で電子出版に対する取組みというのは,ほかのジャンル,音楽分野なんかに比べて若干遅れていたわけですね。その中で,非常に限られた技術的環境の中で青空文庫というのは,先行してスタートしてきたわけです。
 現状は,出版物をいわゆる携帯電話やPCなどのデジタルデバイスで閲覧する,電子出版ビューアーの技術と普及が進んでまいりまして,ご承知のとおり携帯の電子出版市場も今では年間400億円ぐらいの規模になっております。それから,日本ではまだ普及が遅れておりますが,ソニーやアマゾンの電子出版端末は年24万台以上販売されました。
 日本の出版界もこのような技術環境やビジネス環境の進化を利用して,事業として電子出版化に非常に力を入れてくるようになってきました。そういう意味で今後,今まで再版を止めていた作品や休版,絶版にしていたような作品も,積極的に出版社側が復刻していくという動きは進んでいます。過去は青空文庫さんにある意味頼っていた部分がありますけれども,今後は出版界を挙げて電子化が本格的に進むので,そういった意味でこれから今まで書店で手に入らなかった多くの出版物も含めて,本格的に電子出版事業に取り組む技術的環境,ビジネス的環境が今整いつつあるということをご報告しておきます。
【野村主査】
 ほかにご意見いかがでしょうか。
 それでは,この中間整理(案)そのものについては,先ほど生野委員から著作隣接権について検討の必要性をもうちょっと明確にというご意見がございまして,それからもう一つ,佐々木委員からも著作権の保護期間について,同じように今後の検討の必要性ということをもう少し強調してはどうかというご意見をいただきまして,これらについては,事務局と私にお任せいただいて,若干表現で工夫できればと思います。そのようにさせていただくということで,残りの部分については一応,本日の案で中間整理(案)として取りまとめるということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,この「文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理(案)」につきましては,10月1日に開催予定の著作権分科会において私から分科会で報告をして,ご審議をいただいた上で意見募集を行うということが予定されておりますので,この意見募集の方法について,事務局からご説明をお願いいたします。

(3)その他

【黒沼著作権調査官】
 例年,秋の分科会が行われました後は,その時点でまとまっているものについて意見募集をさせていただいております。この問題につきましては検討途上という部分も多々ありますが,前回ご発表いただいたような,例えば意識調査などもございましたので,意見募集自体が大きな意識調査の一つの手段ではございますけれども,そういったものをうまく生かして何かできないかということも含めまして,方法を考えていきたいと思っております。
 簡単でございますが,以上でございます。
【野村主査】
 何か今の意見募集について,ご意見,ご発言はございますでしょうか。
 それでは,そちらの方は進めていただくということで,まだ時間は十分ございますけれども,何かご発言はございますでしょうか。
 それでは,特になければ,30分ほど早いですけれども,本日はこのくらいにしたいと思いますが,事務局から連絡事項ございましたらお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
 本日は,どうもありがとうございました。
 次回の小委員会の日程ですけれども,また日程調整など決まりましたら,改めてご連絡をいたしたいと存じます。どうもありがとうございました。

(4)閉会

【野村主査】
 それでは,本日はこれで第6回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせていただきます。
 本日は,どうもありがとうございました。
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