文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第1回)

日時:平成30年6月15日(金)
    13:00~15:00
場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会主査の選任等について
    2. (2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会審議事項について
    3. (3)クリエーターへの適切な対価還元について
    4. (4)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1-1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会委員名簿(107.1KB)
資料1-2
小委員会の設置について(平成30年6月8日文化審議会著作権分科会決定)(59.2KB)
資料1-3
第18期文化審議会著作権分科会における検討課題について(平成30年6月8日文化審議会著作権分科会決定)(64.8KB)
資料1-4
文化審議会著作権分科会における「クリエーターへの適切な対価還元」に関する主な意見(100.7KB)
資料2
これまでの検討の状況(80.9KB)
資料3
平成29年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(1.2MB)
資料4
「平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について」(平成29年3月13日)抜粋(291.1KB)
資料5
地上デジタル放送におけるダビング10の実施に係る整理(131.8KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(134KB)
参考資料2
第18期文化審議会著作権分科会委員名簿(113.1KB)
参考資料3
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会検討課題に関する「知的財産推進計画2018」について(67.5KB)
出席者名簿(55.8KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会委員を事務局より紹介した。

○本小委員会の主査の選任が行われ,末吉委員が主査に決定した。

○主査代理について,末吉主査より大渕委員が主査代理に指名された。

○会議の公開については運営規則等の確認が行われた。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【末吉主査】傍聴者の皆様,お待たせをいたしました。傍聴者が入場されましたので,改めて御紹介させていただきますが,先ほど主査の選出がこの場で行われまして,主査に私,末吉が,また,私から主査代理に,ここにおられる大渕委員を指名いたしましたので,御報告を申し上げます。

本日は,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の今期第1回となりますので,永山審議官の御挨拶を頂きたいと思います。

なお,カメラ撮りされる場合につきましては,審議官の御挨拶までとさせていただきますので,御了解ください。

では,お願いいたします。

【永山審議官】それでは,次長の中岡が所用で今日は遅れて参りますので,代わりまして,私の方から,今期第1回の小委員会の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げたいと思います。

委員の皆様方におかれましては,御多用の中,小委員会の委員をお引き受けいただきまして,ありがとうございます。また,本日は足元のお悪い中,御出席いただきまして,重ねて御礼(おんれい)を申し上げます。

著作権制度を巡りましては,最近様々な動きがございますので,私の方から3点御紹介させていただきたいと思います。1点目が,著作権分科会におきましても,これまで精力的に御議論いただき,昨年の4月に御報告を頂きました「柔軟性のある権利制限規定」や「教育の情報化の推進」などを内容とする著作権法の改正が,去る5月に成立いたしました。10年来の課題であるこれらについて,国会での御審議を経まして,内容が確定したということでございます。したがって「柔軟性のある権利制限規定」については来年の1月から,「教育の情報化の推進」につきましては,公布の日から3年以内の政令で定める日ということで,これから若干の準備がございますが,今後実施に向けて様々な作業がスタートしていくということになってございます。一つ,大きなポイントだと思っております。

二つ目が,現在参議院でTPP11の批准に向けた法律改正の審議が行われております。御承知のように,アメリカが離脱をいたしましてTPP11という形で内容が固まり,現在審議が行われています。内容としては著作権保護期間の50年から70年への延長が含まれております。したがって,参議院での審議において,可決がもし行われるということになりますと,TPP11発効の日から保護期間が延長されるということになります。これは現在,国会での審議中ということでございます。

また,去る4月に,知的財産戦略本部と犯罪対策閣僚会議の合同会合で,インターネット上の海賊版への総合的な対策が政府全体の対策として決定されました。その中には,広告対策など経済産業省が担当している部分がございますけれども,著作権制度の関係ではリーチサイト対策なども含まれております。今後は来年の通常国会への法案提出に向けて,関係省庁が取り組んでいくということになっております。

これらの様々な動きがございますが,正に著作権をめぐる社会経済の様々な変化の中で,権利の適切な保護と円滑な利用を図っていくということで,現在,様々な議論がなされ,様々な政策が実施,実行されているということかと思っております。

また,本小委員会において直接的に検討いただくテーマとしては,先ほど主査の方からも御紹介がございましたが,クリエーターへの適切な対価の還元,またコンテンツの再生産ということでございますけれども,今週6月12日に開催されました知的財産戦略本部で決定されました「知的財産推進計画2018」におきまして,これらの課題について,審議会で検討を進めて結論を得た上で,必要な措置を講ずるということが求められております。この重要なテーマにつきまして,引き続き御審議を頂きたいと考えております。

昨年度の本小委員会では,特に私的録音というものに焦点を当て,クリエーターへの適切な対価還元の手段について御検討を頂き,私的複製の実態を踏まえた制度的な手当の必要性について御議論を頂きました。今年度は,昨年度の審議経過報告に取りまとめを頂きましたとおり,これまでの検討結果や議論を土台にしまして,私的録音に係る対価還元手段の具体的な制度設計について御検討を進めていただくものと考えております。私的録音録画補償金制度の在り方や,対価還元手段の在り方につきましては,長年検討が進められてきた重要な課題でございます。社会的理解の得られる仕組みの構築に向けて,是非とも皆様のお力添えを頂きたいと思っております。

委員の皆様方におかれましては,議論の集約に向けて一層の御協力をお願いいたしまして,私からの挨拶とさせていただきます。これからも,どうぞよろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。

次に,今期の本小委員会の審議事項につきまして,先日の著作権分科会における意見の状況も含めまして,事務局より説明をお願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】それでは資料の1-2と資料1-3を御覧いただきたいと思います。先週6月8日に,著作権分科会におきまして小委員会設置の決定が行われました。資料1-2にございますとおり,本小委員会におきましては,クリエーターへの適切な対価還元等に関することを審議事項として,委員会の設置が決定され,そして資料1-3でございますけれども,検討課題例といたしましては,対価還元手段の具体的な制度設計について等とされております。

先日の著作権分科会,そしてまた,昨年度の「審議の経過等について」が分科会に報告されたときの昨年度末の分科会委員の主な意見を,資料1-4で簡単にまとめさせていただきましたので,併せて御紹介をさせていただきます。

資料1-4の上の方から申し上げます。一つ目ですけれども,社会に対して著作権の正しい理解に向けた機運を醸成するには,今はよい時期であるといったことなどでございます。

二つ目ですけれども,我々が日常見えなくなっている部分にお金が掛かっているが,その対価は誰かが負担しなければいけない。今こそ,このことを社会に向けて発信しないといけない。

その次ですけれども,日本のように精神文化が豊かになってきているにもかかわらず,豊かな情報にお金を払いたくないとか,海賊版を利用したりすることは非常に悲しいといったような御発言がございました。

その下のところでありますけれども,対価還元手段の考え方についてというくくりで整理をさせていただいております。一つ目ですが,メディアは常に変化しているといったことについての御言及。二つ目ですけれども,この対価還元手段の議論ですが,この一,二年で本格的に進みだしてきたと感じているといった御指摘。その次につきましては,現行著作権法の30条の1項と2項の関係性についての御発言です。2項の補償金制度が付いているからこそ,30条1項の幅広い私的複製が許されるという,その全体を視野に入れた上で,どのように30条1項をしっかり守って,それを含め著作権制度全体を維持するかといった御指摘です。

それから,その下ですけれども,超高速で技術の進化がある分野なので,現実に即した形で対応していただきたいといった御意見です。

裏面ですけれども,一つ目のところにつきましては,対価還元手段の選択肢の一つとして出ておりましたクリエーター育成基金についての言及もございまして,そのような将来に向けての種まきをしっかり御提案いただけるのは,よいことだと。そして二つ目のところですけれども,ある種,未来予測もしながら議論していく必要もあるのではないかといった御意見です。

その下ですけれども,技術の進歩に遅れることなく,クリエーターへの対価という,文化を守っていくための原資を確保すべく積極的に取り組んでいただきたい。

最後のところですけれども,制度がないということは私的録音録画が対価なしに自由にできるということではない。このことを確認した上で,正しい理解の普及につなげていただきたい。

このような御意見を,分科会においてはいただいていたというところであります。

説明は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは,事務局より御説明を頂きました本小委員会における審議事項につきまして,御質問などがございましたら,皆様から,どうぞ,お願いします。

【太佐委員】太佐でございます。今,御説明いただいた資料1-4の著作権分科会における「主な意見」というところで,抜粋を書いていただいているところでありますけれど,事前に拝見した範囲では,少なくとも公開されている議事録には明確に書かれていない記載があったように記憶しております。これは非公開の審議があったので,そういったところからもまとめられているということでしょうか。厳密にここですというところまでは,お時間を取りますので言及しませんけれども,拝見した範囲では,同じ記載がないところがございましたので,それを確認させていただければと思います。

【末吉主査】事務局からお願いします。

【白鳥著作物流通推進室長】会議は公開の会議ですので,議事録を参照して作成させていただきました。ただし,今回ここに記載させていただく上で,若干要約などさせていただいたところ,あるいは趣旨を補足させていただいたところがある部分はお許しをいただければと思いますが,基本的には公開の場で出された意見を,ここに集約させていただいているというものでございます。

【末吉主査】よろしいですか。

【太佐委員】再度確認させていただきますけれども,一応キーワードで検索してみると,同じ表現が見当たらない部分がございましたので,そのあたりを確認させていただきました。

【末吉主査】ほかにいかがでございますか。審議事項に関する御質問等。

ここは,この程度でよろしいですか。ありがとうございました。

それでは,今日の議事の三つ目に入りたいと思います。クリエーターへの適切な対価還元についてでございます。本件につきまして,本小委員会における昨年度までの審議の状況も含めまして,事務局より説明をお願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】それでは,引き続きまして資料2を御覧いただきたいと思います。本小委員会におきまして,これまでどのような検討を行ってきていただいているかといったことについて,1枚紙で簡単に整理させていただきました。

本小委員会につきましては,平成25年度からスタートしております。25年度におきましてはワーキングチームということで,もともとは法制・基本問題小委員会の下での議論ということでスタートしておりましたが,クラウドサービスなどと著作権との関係についての整理を頂き,27年度2月に,その報告書を小委員会として取りまとめいただいております。その後,平成27年度からクリエーターへの適切な対価還元ということにつきまして,私的録音録画と,それぞれの観点を踏まえつつ,27年度の欄のところにございますけれども,(1)現状,(2)補償すべき範囲,(3)対価還元の手段といった三つの点について順次検討を行うこととして,順次ヒアリングなどを進めていただいております。

28年度につきましては,最初の2点についての論点について整理など行っていただきました。その検討を踏まえ,昨年度につきましては,特に録音について,三つ目の論点であります対価還元の手段といったことについても一通り御検討いただきながら,整理を頂いたというところでございます。その間,録画については,特に(2)の補償すべき範囲の検討につきまして,一昨年度の議論の状況で一旦中断しておりまして,29年度は特に議論されていなかったという状況になります。

このため,一番下の欄にございますとおり,今年度につきましては,まず録音については三つの論点は一通り御議論いただいた状況でありますので,特に対価還元の手段について,具体的な制度設計に向けた検討を行うこと。それから,録画につきましては,二つ目の論点であります補償すべき範囲についての検討を引き続き行っていただきながら,対価還元の手段についても,論点としては残っているということで整理させていただいております。

30年の3月に「審議の経過等について」としてお取りまとめいただいたものの中におきましても,この対価還元手段の在り方について方向性を示していくことが必要とされております。資料3を御覧ください。確認まで,内容について簡単に御紹介をさせていただきます。

構成ですけれども,最初に「はじめに」といったことの後に,基本的考え方というものが続いて,2ページからは,私的録音の現状等についてということで,実態調査の結果の概要が示されています。

11ページからですけれども,この対価還元の手段として三つの選択肢を想定して,御検討いただいております。11ページにありますとおり,一つ目が私的録音録画補償金制度,二つ目が契約と技術による対価還元,三つ目がクリエーター育成基金ということでございます。

12ページ以降が検討結果等になっております。冒頭の柱書のところに,先ほど申し上げた対価還元手段の在り方について方向性を示していくことが必要と考えられるとしておまとめいただいております。内容についてですが,1ポツにあります基本的考え方の(1)にありますけれども,一つ目のパラグラフの真ん中に,「このため」という文章がございます。私的複製に係る対価還元手段については,このような広範な私的複製の範囲を維持することを前提とした上で検討を進めるべきであるということを確認しつつ,その2行下ですけれども,どのようにしたら実効性のある公平で現実的な解決策となるのか,先ほど出ておりました各手段の組合せも含め,総合的に探っていくべきであるといったところを,まず確認を頂きました。

その後,内容としては,先ほどの実態調査結果などにも触れながら,具体的な検討としては14ページの真ん中のところ,2パラグラフ目からですけれども,特に録音等の曲数の実態について意見を頂いておりました。二つ目のパラグラフの3行目あたりですけれども,録音等の対象曲数は,3年前に比べて減少していること等を捉えて,私的録音録画補償金制度の廃止・凍結を求める立場からは,私的複製の量は補償を必要としない程度まで減少したといえるのではないかという意見がありました。

それに対して,その次のパラグラフですけれども,他方,実際に行われた録音等の曲数に着目すると,既に自分で入手していた音楽音源については,各機器等の録音等の曲数は全般的に増加しているといったような御指摘もあったところです。

こうしたことも踏まえつつ,16ページですけれども,対価還元手段の検討の方向性というところになりますけれども,二つ目のパラグラフ,「もっとも」と書いてあるパラグラフの中段以下のところになりますけれども,三つの手段が提示されている中で,特に契約と技術による対価還元手段の可能性を模索する御意見も頂いたわけでありますけれども,その手段につきましては,現時点でその実現可能性や範囲は明確ではない。今後,実効性ある契約と技術による対価還元モデルが構築され,どのように有効に機能し得るのか推移を見守っていくことが重要である,とされております。

そして,また私的録音録画補償金制度の見直しに関わって,様々な意見があったわけでありますけれども,廃止・凍結を求める立場,補償金制度による対応を求める立場,いずれにつきましても,その下のパラグラフですけれども,「いずれの見解も」という箇所にありますとおり,私的録音の実態を踏まえるべきだという点では一致をしてきたということであります。

そのような中で,廃止・凍結を求める立場の方は,現状において少なくとも制度の拡張を検討することができる現状にはないという御意見が出されましたけれども,この補償金制度につきましては,長年検討が進められてきた課題であるところ,対価還元手段の在り方については,私的録音録画補償金制度に代わり得る対価還元手段がない範囲においては,私的複製の実態があり,かつ現行制度上の私的録音録画補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとは言い難(がた)いことを踏まえれば,そのような代替措置が構築されるまでの手当てとして,引き続き私的録音録画補償金制度により対価還元を模索することが現実的であるとする意見が多かった。もとより,この考え方については,制度を拡張するという性格の見直しではなくて,私的複製の実態を踏まえて,複製の実態に沿った柔軟なスキームにするなどの工夫を講じようとするものだといったような整理もされているところであります。

このようなことを全体の基本的な考え方のところで整理しつつ,先ほど出ておりました三つの手段それぞれについて,様々な課題も指摘されておりましたので,その課題についての整理と,それに対する考え方の整理が18ページ以降に行われているというのが昨年度までの状況でございます。

以上になります。

【末吉主査】ありがとうございました。本小委員会が議論のテーマとしているクリエーターへの対価還元の在り方につきましては,私的録音録画補償金制度の在り方の見直しに関係する問題としまして長年議論を積み重ねてきた課題であるという認識をしてございます。

先ほどの事務局からの御紹介にもありましたとおり,先週6月8日に開催された著作権分科会におきましては,この課題について議論をしっかり前に進めてほしいといった趣旨の御意見も複数頂いたところでございます。

したがいまして,著作権分科会の下に設置されている本小委員会といたしましては,そのことを十分に意識して審議を進めていく必要があるのだと思います。

先ほどの審議経過報告にありますとおり,今期は昨年度における検討結果を踏まえながら,引き続き私的録音に係る対価還元手段について,具体的な制度設計に向けた検討を深めるとともに,私的録画に係る対価還元手段の在り方について検討を行い,対価還元手段の在り方についての方向性を示していくべく検討を進めていきたいと考えておるところでございます。

そこで,今期第1回となる本日におきましては,まずは昨年度議論できていなかった私的録画に関する課題を中心に検討を進めていきたいと考えておりますが,その議論に入る前に,全体を通じまして,何か皆様の御意見ございますようでしたら,まずお願いいたします。いかがですか。

どうぞ。

【世古委員】JASRACの世古でございます。この会議の冒頭で,末吉主査から6月8日の著作権分科会の御意見がございました。私も昨今の,特に漫画の海賊版サイトブロッキングに関しまして,一番驚きましたのは,子供たちが,漫画はただではなかったのかというような反応があったということでございます。著作権分科会の中でも,そのようなことから啓蒙(けいもう)といったことが必要だというようなお話でございますけれども,著作権というのは創作のインセンティブということもございますけれども,一番重要なところは,国民として尊重して守っていくべき権利の一つだということだと思います。

子供たちが,コンテンツはただという認識というのは,そのような肝要な部分が伝わっていないのではないかと思います。著作権の大切さというのは,何も教育というだけではなくて,家庭内の複製であっても,我が国では私的録音録画制度によって,きちんとクリエーターに対価が還元されているということを見える形で示す。我々大人が示していくことが大事なのではないかと思っております。

今,現状では正当な対価が還元されていない以上,一刻も早くこれまでの議論を結実させるようなことができるように,この会議の中でしていきたいと思っております。

よろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【太佐委員】初めての参加なものですから,確認をさせていただきたいと思っております。1枚紙の資料2の方ですけれども,これまでの検討状況の流れが書かれてございます。このような理解でよろしいですかという確認なのですけれども,平成28年「私的録音」の欄を見ますと「補償すべき範囲」の「整理」と書かれており,「私的録画」の方を見ますと「補償すべき範囲」の「検討」と書かれておりまして,本年度その「補償すべき範囲」の「整理」をいたしますという流れになっております。「私的録音」のところだけを見ますと,かくかくしかじかの範囲で補償は必要であるというように結論付けて整理が終わっているような印象を受けてしまうのですが,一応そこは結論付けられているわけではなく,具体的な対価還元手段の具体的制度設計の中で,また議論されていくという理解でよろしいですかということで,この資料への質問でございます。

【末吉主査】今の質問は,資料2の28年度欄のところに私的録画の(2)が「検討」とあるけれども,その趣旨ですね。

【太佐委員】そうです。「検討」と「整理」という表現を使い分けていらっしゃるので,「整理」で終わっていると,もう結論が出ているような印象があります。

【末吉主査】分かりました。これは事務局にお願いします。

【白鳥著作物流通推進室長】平成28年度において,私的録音録画について,補償すべき範囲のところの表現が違うという点に関してなのですけれども,これは,補償すべき範囲についての一昨年度の検討結果を前提にしております。

私的録音については,コンテンツの流通形態についていろいろなパターンがある中で,どの領域において私的録音がありうるのかといったことについて,例えば,マルチデバイス・ダウンロードをどうするかといった点については,この委員会としては私的複製から除外しましょうという確認がされるなど,平成28年度の審議経過報告の中で,一定の整理が行われたところです。

これに対して,この後の議題においても出てきますけれども,録画につきましては,コンテンツの流通形態の確認は行われたのですけれども,補償すべき範囲について,整理が行いきれているかというと,一部の論点については両論併記のところがありましたので,「検討」と表現させていただいております。

【末吉主査】よろしいですか。この表で平成30年度のところは,補償すべき範囲の整理からやるというのは,これはそのとおりなのです。そのような意味では,上に「検討」とあるけれども,平成30年度も整理を,録画の補償すべき範囲の整理をやるのだという理解でいいですね。

私は誤解していますか。もう1回お願いします。

【白鳥著作物流通推進室長】恐らくこの後,資料の説明をさせていただくことになると思いますけれども,録画について補償すべき範囲について,一昨年度の小委員会において論点整理は行われたのですけれども,必ずしも具体的な整理といいますか,結論めいたところまでは出ていなかったので,その続きを,これまでの議論をまず確認しながら,今回その内容についてどのように整理すべきかというところを御議論いただければと思っております。

【末吉主査】分かりました。検討はしたけれど,成果は得ていないと,成果まで行くのが今年度だという理解でよろしいですか。

【太佐委員】継続して参加されている委員の方が御理解されているのかと思うので,私は単純にそのあたりの意図を確認したかったということでございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに御質問ございますか。御意見はよろしいですか。

ありがとうございました。著作権分科会の御意見も踏まえまして,昨年度の審議経過報告をベースとして議論を今年度も前に進めてまいりたいと考えておりますので,どうか御協力いただきたいと思います。

それでは,残りの時間で私的録画に関しまして,これまでの議論で積み残された課題について検討を進めたいと思います。具体的には,私的録画に関する補償すべき範囲と課題になります。まず,事務局より御説明をお願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】それでは資料4を御覧いただきたいと思います。先ほど話題に出ておりました補償すべき範囲のうち,私的録画に関わるものについて,一昨年度における議論がどこまで進んでいたかといったことを,確認をまずさせていただくために,この資料4を準備させていただいております。

なお,一昨年度の審議経過報告の全体につきましては,委員の皆様方には机上配布資料を適宜御参照いただければと思いますが,資料4に沿って御説明を申し上げたいと思います。動画コンテンツに関しましては,どのような流通形態があるかといったことが,資料4の1ページ目のところに整理されております。パッケージ販売,無料放送,有料放送,動画配信,パッケージレンタルといった五つの形態についての確認がされております。それぞれにつきまして,録画という行為が可能なのかどうかといったことや,また,契約でどのような処理がされているかといったことが,こちらのページに整理されております。

なお,このことが図式化をされているのが,1枚更にめくって3ページ目のところになりますけれども,動画コンテンツの流通というところで,今の五つの類型が左の方にございまして,その右側のところに,個人的又は家庭内等の閉鎖的範囲というところについて,ダビングが可能なのか,コピーが可能なのかといったことの整理がされております。

網掛けになっているところに,ダビング10とかコピーワンスといった記載があります。ここが複製可能な領域になっているということで,それがどのような流通形態によるものかといいますと,左側の方を見ていただくと,無料放送,そして有料放送といったものが,そうした領域であるということでございます。

1ページ目に戻って御覧いただきますと,今の観点について文章にしておりまして,二つ目のところに無料放送ということが書かれております。無料放送番組については,孫コピーを禁止して,複製の回数を10回までに限定するダビング10が原則として採用されているという状況になっています。

有料放送につきましては,複製の回数を1回に限定するコピーワンスが原則として採用されておりまして,それ以外のコンテンツの流通形態については,消費者が私的複製を行うことは,DRM技術によりできないといったようなところが書かれているわけでございます。

1ページおめくりいただきますと,今確認を取っていただきましたとおり,有料放送と無料放送につきましては,私的録画が発生しうることから,ここについて補償すべき範囲をどのように考えるかといったことについて御議論がありました。一つ目の論点につきましては,放送波を最初に録画する部分について,補償すべき範囲に含めるか否かといった点でございます。二つ意見が並べられておりますけれども,タイムシフトというものについて,どのように考えるか。実際の放送時間では見ることができない放送番組について,録画をしておくことで御自身にとって都合の良いほかの時間帯でそれを視聴するといったことに関わりまして,どのように考えるかということでありまして,一つ目のポツにつきましては,そのようなものは権利者に不利益は生じないという御意見です。

その下の御意見につきましては,それでも録画物が残存する,見た後も録画物を消去するのではなくて残存するのであれば,それは権利者に不利益が生じないとは言い切れないのだという御意見があったということであります。

二つ目のところですけれども,権利者がDRMを自由に選択できる場合に,選択されたDRMの範囲内で行われる私的録画について,補償すべき範囲に含めるか否かといったところでございます。幾つか意見がありますけれども,権利者がDRM技術を選択できない現状においてはという文脈で御指摘がありますけれども,基本的にそういったことが現状であって,したがって権利者への対価還元が必要だということです。対価還元ができないのであれば,権利者が自由にDRMを選択できる環境を構築すべきだといった御意見です。

二つ目のポツにつきましては,選択肢の多少はあれ,何らかのDRM技術を選択できる以上は,権利者が私的複製の範囲をコントロールしていると評価するべきだという御意見です。

三つ目のところにつきましては,劇場映画についてはコピーネバーが原則としてビジネスモデルとして展開をされている。その一方で,テレビ番組での放送についてのみ,現状ダビング10のルールがあるということで,そこについては権利者が私的複製をコントロールできない状況であるといった御意見です。

最後の四つ目のところにつきましては,様々な制約や実社会の要請の中でDRMが定められているという状況の中で,権利者の自由意思でDRMを選択できるわけではないのではないかといった御意見でございます。

あと,論点としては三つ目となりますけれども,一番下にありますとおり,コピーネバーの運用が可能となっているペイパービューについて,補償すべき範囲に含めるか否かといった論点もありました。もっとも,ここは意見が対立しているということではなくて,コピーネバーという部分に関して,少なくとも映画についてはコピーネバーを運用しているものについては補償を求めるものではないという御意見があったことの紹介であります。

そういった意味で,録画に関して補償すべき範囲という点につきましては,先ほど「検討」というように書かせていただきましたと申し上げましたけれども,三つ御紹介させていただきました論点のうち,一つ目と二つ目に関して様々な御意見を頂いたということで,そこがまだ整理というところまでには至っていないのではないかという認識の下,先ほどのような表現をさせていただいたというところであります。

それからあと,御参考までに資料5も御用意させていただきました。こちらは先ほど出ておりました無料放送について,ダビング10が今採用されているということについての紹介が,一昨年度の審議の経過報告についてありましたけれども,こちらについては総務省の情報通信審議会において過去に検討が行われたものでありますので,その検討の状況を,関係部分の抜粋ですけれども,御紹介をさせていただきたいと思います。

資料5の1枚目のところにありますのは,平成19年の情報通信審議会における中間答申の抜粋です。まず回数制限に関する検討の前に,このページの上の方に下線を引かせていただいておりますけれども,情報通信審議会としての共通認識,基本的な考え方として二つ示されております。一つは,コンテンツを尊重(リスペクト)し,これを適切に保護すること。二つ目が,その創造に関与したクリエーターが,適正な対価を得られる環境を実現すること。この二つを基本的な姿勢として課題を検討することが必要だとされております。

あわせて,総務省の審議会以外にも,コンテンツに関わって様々な検討が行われているといったことの御紹介の中で,マル1,2,3とありますけれども,二つ目のところに私的録音録画補償金制度の在り方といったものの紹介があります。

こうした基本的な考え方の上で,このダビング10というものに関わりまして,具体的には回数制限をどのように考えるかといったことの検討が行われる中で,ダビング10の10回の回数制限の根拠として,1枚おめくりいただきまして,裏面の下のところにその数値についての具体的な考え方が整理されているといったことになっております。

さらに,翌年の平成20年の6月に,この情報通信審議会におきましては第五次中間答申が出されております。適正な対価還元ということが情報通信審議会における基本的な姿勢として打ち出されているわけですけれども,そのことと,補償金制度の在り方の関係性について,平成20年の中間答申において示されています。ここで記されておりますのは,補償金制度については,現在文化審議会で検討されているところ,その検討における早期の合意形成を期待しつつも,その在り方自体が総務省の情報通信審議会の検討対象とはならないのだということについて異論は見られないというような整理がされております。

ですので,総務省さんのこの会議における検討とは切り離した形で,この補償金制度については文化審議会で検討をされていると。そこは飽くまで切り離して検討されるものだといったことが,この平成20年の中間答申において明記されているということです。

以上,過去の経緯などについて,御紹介をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま御紹介いただきました事項のうちのダビング10が決定された総務省の審議会の答申におきましては,補償金制度は総務省の審議会の検討対象ではなく,文化審議会での早期の合意形成を期待するとされているところでございます。したがいまして,10年前の総務省の答申ではありますけれども,放送に関する私的録画について,対価還元をどのように図るべきかは,この文化審議会において早期に決着を図るべきことが期待をされているということを確認することができるように思います。

その上で,私的録画についてですが,一昨年の検討においては動画コンテンツの流通形態については,無料放送と有料放送に限られるということの確認がなされておりまして,それについて補償すべき範囲についての検討が行われました。

本日は,それらの検討事項のうち,意見が両論併記されていたもの,具体的には本日の資料4の2ページ目のイ,これまでの論点及び意見のうち,(i)と(ii),この二つの論点を中心に,皆様方の御意見を頂きたいと思っているところでございますが,その議論に入る前に,まず一昨年の検討において整理されている動画コンテンツの流通形態の分類。あるいは,それぞれにおける録画の可否などの整理について,その前提となる事実など,アップツーデートが,もし必要なことがあるという点があれば,情報の御提供あるいは御意見などを頂ければと思います。

加えて,私的録画全般についての御意見も,ここで頂けたらと思います。いかがでございますか。

【椎名委員】録音に限った話ではないのですが,前回の検討の最後の頃に御指摘申し上げたところではございますが,スマートフォンに新たに搭載された機能についての話をしたいと思います。iPhone等でiOS11にバージョンアップされてから画面収録という機能が追加されております。このボタンを押しますと,スマートフォンの画面上に再生されている音楽なり映像なりをコピーすることができて,一つの動画ファイルを形成することができるという機能でございます。

この機能は,従来ストリーミング,すなわち視聴することを目的に流れているコンテンツをローカルでコピーすることができるという機能でございまして,コンテンツの流通経路を様々に議論してきた後から出てきた問題でございます。ここの部分は,当然ながらストリーミングされているコンテンツというのは,ストリーミングで視聴することにおいてのみライセンスをされている部分で,そこからコピーを生成するということは,どなたも費用を負担していないということになりますので,ここで整理されているもの以外の要素として付け加えるべきではないかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。今,椎名委員は資料4に参考で付けられている図を御覧になりながら,スマホの新しい機能についても付け加えるべきであるという御意見を言われたと思います。

華頂委員お願いします。

【華頂委員】委員会の第1回ということもありまして,これから始まる,ここにも呈示がございますタイムシフト,それからDRMとは一体何たるものやというような今期の議論にも影響があるとおぼしき近似の私的録画を巡る現状の一端を御報告,発表させていただきます。

御案内のとおり,本年12月1日からBS,CS放送による4K,8Kの実用放送がスタートするわけです。世界的にもまれである高精細画像による放送が始まるわけですけれども,かつての映画フィルムの情報量は4Kクオリティーとされておりまして,デジタル化された今でも映画は4Kと非常に親和性が高いという状況で,4Kクオリティーはマスターデータとほぼ同じ解像度となります。

一般的にアナログ時代のコピーは劣化するといわれていました。それがデジタルになって,劣化しない大量のコピーが可能となり,これに鑑みて私的録音録画補償金制度が整備されたというようないきさつがあると記憶しております。

今般の4Kによる放送において劣化しないコピー,これに加えまして,映画に着目すればマスターデータと同等の4Kクオリティーのコピーが可能となる環境が出現することになります。いろいろな意味で,映画製作者にとって脅威となる状況が出来(しゅったい)するわけでございます。外国映画,すなわち洋画の製作配給会社の中には,この4Kクオリティーのコピーを非常に重く見て,特に二次利用のウインドーの早いBS,CSの有料チャンネルにおいては,放送権を販売する条件としてコピーネバーの運用を強く求めていると仄聞(そくぶん)しております。当該放送事業者にとって,ビジネス上,洋画の編成は必須でありまして,死活問題に直結しますので,現在のところ水面下で激しい交渉が続いていると聞いております。

さて,今現在,無料放送はダビング10の運用でございますが,BS,CSの有料放送についてはおおむねコピーワンスの運用となっております。この対応については,某有料放送のホームページのQ&Aに,このように書いてあります。「番組の著作権保護の観点から,ダビング10には移行しません。ハリウッドメジャースタジオ系映画会社をはじめとする権利元との契約上,番組は従来どおり1回だけ録画可能,コピーワンスの制御信号を付けて放送しますというように明記されております。」この記載からしても,4K放送にナーバスになっている洋画の製作配給会社がコピーネバーの対応を求めているという話が現実味を帯びてくるということでございます。

ただし現時点では放送素材としてのピュア4Kの作品はまだ数が少なく,2K素材のアップコンバートによる4K放送を,どのように洋画会社が考えるかが交渉のポイントではないかと思っております。

このように,現状では交渉の余地がまだ残っているのですけれども,洋画の製作配給会社は将来的に増加するピュア4Kによる放送については,コピーネバー対応の実施を譲らないと思われます。仮に洋画の製作配給会社の要求が通った場合は,コンテンツホルダー側が現在の四つの制御信号であるところのコピーフリー,コピーワンス,ダビング10,コピーネバーを自由に選択できる環境になるものと思われます。

私ども映連は,平成27年12月にA-PABの前身である当時のNexTVフォーラム宛てに,民放連,音事協との連名で4K,8K放送におけるコピーネバー運用への御対応のお願いという書簡を送りました。今般の洋画の製作配給会社の対応に先んじて,コピーネバー運用を要望したわけでございます。このようないきさつからも,4K,8K放送において,邦画も洋画に足並みをそろえざるを得ないといえます。私的録画補償金制度が形骸化して途絶している状況を鑑みれば,致し方ないのかなと考える次第でございます。

振り返って思い出してみますと,私的録画補償金の運用がされていた時代でも,洋画の製作配給会社の一部は,建前上テレビ放送からの私的録画を認めていないという立場を取って,補償金を受領(じゅりょう)していませんでした。ありていに申し上げれば,洋画の製作配給会社は,補償金があろうが,なかろうが,そのスタンスはいつも同じだということでございます。

一方,私ども日本の映画製作者はといいますと,日本の著作権法であるところの第30条2項が正常に履行されている状況下であれば,従前もそうであったように,少なくともコピーネバーの運用を求めることはできないというように認識をしております。映画ビジネスの一端とはいえ,目前に迫った4K,8K放送のスタートが,思わぬ形でこのように波紋を広げる形となった今,この委員会ではより一層の迅速かつ建設的な議論が求められているのではないかと思う次第でございます。

近似の御報告と議論の方向性についての意見でございました。以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにはいかがでございますか。どうぞ。

【小寺委員】まず1点が,先ほど椎名委員から御指摘がありましたiPhoneOSにおける画面録画機能に関してでございますけれども,今,試してみたところ,ネットフリックスを録画しようとしてみたのですが,実際には録画ボタンは押せるものの,録画はできませんでした。それ以外の,例えば普通の写真とか動画を再生した画面は録画ができます。

ということは,権利保護をしているアプリケーションに対しての画面録画は,たとえOSが提供している機能であっても使えないというリクエストがあれば,OSは録画しないという実装になっているものと思われますので,これは今後も,商業コンテンツに対して録画できるのかどうかは,要調査の必要があろうかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【椎名委員】そこまで詳しくお話ししなくて申し訳なかったのですけれど,ネットフリックスの,あるいはアマゾンプライム等々,有料配信されているコンテンツはコピーできません。しかしながらYouTube等にユーザーオリエンテッドなものとか,お金を取って配信しているもの以外は,現状複製ができるというところでございます。そのあたりは正に私的複製に該当してくる部分ではないかと思いますので,その部分の検討が必要だと思っております。

【末吉主査】ありがとうございました。いずれにしても検討対象にすべしということと承りました。ありがとうございました。

ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【松田委員】今の技術に対応して,機器においてどのようなコンテンツが複製されてしまうのかということは,ここで議論する前に,そのような現在の技術状況を調査して,この委員会に出してもらうということの方が一番いいのではないかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございますか。この点は,これぐらいでよろしいですか。

ありがとうございます。それでは引き続きまして,二つ残されている論点ということで,補償すべき範囲についての各論の一つで,(i)の放送波を最初に録画する部分について,補償すべき範囲に含めるか否かという点でございます。これはタイムシフトについて,どう考えるかということについてでございまして,現行の補償金制度においても想定内のもので,今に始まった問題提起ではないとも思われますが,皆様方の御意見を頂きたいと思います。いかがでございますか。

どうぞ。

【小寺委員】1番の最初の丸の方は,私ども消費者団体の主張ということになろうかと思うのですけれども,この主張は現在も変わっておりません。あと1点プラスして申し上げると,例えば放送をそのまま生で見たときにおける経済効果,例えば挿入されるコマーシャルの効果であるとか,あるいは映画であれば,劇場公開されるシリーズの前のものが公開されて,その映画を見て,映画を見に行こうというアクションであるとか,そういった経済効果が,放送されることで見込めるわけですけれども,生で視聴した場合の経済効果と,タイムシフトで視聴した場合の経済効果に差があるのかどうかということを考えますと,余り差はないのではないかと思います。

したがって,ここは今回新しく河島先生が参加されまして,これまで経済学の観点で私どもが議論をすることができませんでしたけれども,経済的な観点からして,放送における,見られるということの経済効果が録画によって減少するのかどうか,そういった観点で今後議論をするというのも,一つの方向性ではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【岩本委員】今,小寺委員御指摘があった,タイムシフトによってCMの効果が減じられるかどうかという話なのですが,詳しく調べたわけではないので,明確なことは言えない部分はあるとは思っていますが,CMによっては,そのときの即時性を求めて広告主がCM枠を購入して流しているものが当然ございます。ですので1年後に見るといったことになった場合に,実はもうその商品が売られていなかったり,キャンペーンがないといったようなことは,当然起こり得る話なので,それがどれだけの損失を生んでいるかということに関しては,なかなか定量的にしゃべることは難しいとは思うのですけれども,損失がないといったことまでは言い切れないのかなと感じております。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

大渕委員。椎名委員にはその後回します。恐縮です。

【大渕主査代理】不利益については,もう何度も申し上げているところなのですが,委員も変わられていますので,再度申し上げます。法的不利益と経済的不利益というのはきちんと区別しなければいけないのに,それをしていないために議論が大きく混乱していると思います。まず法的不利益の方は,確実にあることは間違いがありません。本来であれば,放送した人は,そこでは見られるだけで終わっていて,見るだけであれば著作権法上の問題は全くないのですが,複製という行為を介在させるわけですから,そこで複製に伴う法的不利益というのはないはずもないのであります。それは何度も言っているとおりなので,それだけなのですけれど,ただ,恐らく趣旨は,法的不利益と経済的不利益も考えても悪くないのではないかということかと思いますが,経済的不利益の方も,恐らく最初のときには,そのときにコマーシャルを流して見てもらうのが一番よいと思って,種々考えた上でスポンサーさんは契約して流しているわけですから,それを一番自分がベストと思うときでないときに流されるということについて,経済的不利益もないはずもないのではないかと思います。

そのような意味では,法的不利益は必ずあるし,経済的不利益というのも,よほどの特殊な事情でもない限り,ないとはいえないということになるのではないかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。

椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】今,大渕委員のおっしゃったことで,ほぼ終わってしまったのですけれど,付け加えるとすれば,15年間この議論をしてきた中で,不利益の立証をせよという話がずっとあって,逆に言うと,不利益が存在しないことを立証しろというような話にもなり得るわけなのですが,実際イギリスで補償金制度などの手当てをせずに私的複製をオーケーにした法改正について,クリエーターに不利益が存在しないことの立証が不十分であるということで,その法改正が否定されたというようなことがありました。ここの議論に入ると,なかなか隘路(あいろ)に入ってしまうのではないかと。悪魔の証明ではないですけれど。だから,余りそこで重箱の隅に入っていっても,結論を得る助けにはならないのではないかと思いますので,それだけ。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに。どうぞ。

【小寺委員】この話は,程度問題ということもあり得ると思うのです。つまり,必ずしも権利者に不利益が生じないとはいえない,だから必ず補償は必要であるという,ゼロでなければ補償という,そこなのかなというところを我々は疑問視をしておるわけで,それは零細であれば,ある程度我慢するというか,相殺できる部分もあるというか,そのようなグラデーションの中のどこにポジションを置くのか,判定のスイッチを置くのかという話ではないのかなと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがですか。どうぞ。

【椎名委員】この議論の中で,かなり前の段階で,日本の私的複製に関する範囲が非常に広いという話があって,補償するということを否定するのであれば,30条の1項を狭めるのですかという議論があったと思うのです。その立場はとらないという結論を,この委員会は出して議論をしてきたということになると思うので,今おっしゃった程度問題という話がありますけれど,補償の必要がないというように結論付けたら,30条1項の話に戻っていってしまうような気がします。そうすると議論がぐるぐる回ってしまうようなことになりはしないかというように懸念しております。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがですか。どうぞ。

【華頂委員】先ほど皆さんに御報告した,洋画の製作配給会社の対応を見れば,不利益は当然あります。不利益があると思うからこそ,今の有料放送で早いタイミングで出すものについては,コピーワンスでやれと言っている。それを有料のBS,CSは,そのとおりやりますといって契約をしている。4Kになったらコピーネバーでやれと,今そのように条件を突き付けているわけです。それは洋画会社に立ってみれば,コピーされることが,イコール不利益なのだということです。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【太佐委員】議論をぐるぐる回すつもりはないのですけれども,基本的には私的複製があるとそれについて不利益は生じていると。それが補償金の対象とし得るものか,程度の問題だというようなお話がありましたけれど,それが補償金の対象になったとして,ではクリエーターに適切に還元されているかという,その先の問題もございます。それこそ具体的な制度設計というお話なのかもしれませんが,そこまでつながった話をしなければいけないのかなと。断片的に,ここのフェーズがこうです,ここのフェーズがこうですということだけでは,多分全体の制度設計はできないのかなという印象を受けました。

では,どうすればいいという話ではございませんけれども,現時点での印象でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【河村委員】議論がまた30条があるからとか,私的複製による法的不利益の話になったので,利用する立場から,私どもの考え方を述べておきたいと思います。私的複製がある以上,法的不利益があると専門家の方がおっしゃっていますが,私たちもいろいろな勉強会などをしていますけれども,それが法的不利益だとしたら,法的不利益がない状態というのは私的複製をさせないということになります。30条はデジタルコンテンツのことだけいっているわけではないので,仮に誰も私的複製をしないことで権利者さんたちの被害がないとするならば,著作物の私的複製ができない世界というのは,利用者にとってはものすごく不利益のある世界となります。テレビ番組にしても,ニュースもやっておりますし,知る権利とか,いろいろな消費者としての権利という立場から言うと,私的複製できない世界が仮に想定されますと,こちら側には大きく言いますと憲法上の個人の権利も含めて非常に不利益があるということになります。権利者に完全な真ん丸の権利があるのが普通で,そこを削って不利益が生じているということではなくて,個人の立場で家庭内で自分や家族程度の人たちが楽しむ分であれば,私たちにはその権利の領域が本来あって,他方に,権利者の権利があるということで,足して真ん丸であるという著作権の考え方の説明を私は聞いたことがございます。権利者の権利が削られているのではなくて,そもそも,両者の領域が存在して,それを足して真ん丸ができているのだと。難しい学術的なことは分かりませんけれども,個人が私的な複製をすること自体が,即法的に不利益なのだと決め付けられてしまうと,私たちにはもともと何の権利もないかのようになりますので,そこは,ほかの説もあるということを申し上げたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございました。

いろいろ御議論いただきまして,ありがとうございます。どうぞ。

【大渕主査代理】今の点,分かりにくかったと思いますので,御説明しますと,不利益というのは,ユーザーの方もある種の不利益があるのかもしれませんが,クリエーターは,もともと複製権という権利を与えられていますので,無断で複製されないという利益があるのに,複製されているから,それは法的不利益であります。そして,その両方を調和して作ったのが30条の1項と2項の両方を含んだ現行法であります。他方で,私もそうですけれど,私人としては自由に私的使用の範囲内であれば複製をしたいということがあって,それも非常に重要な利益なわけであります。それも前に土肥先生が非常に詳しく言われていましたが,日本の30条1項というのは非常に我々ユーザーに温かい。私的使用目的ですれば,つまり,使用者が複製をすれば一般的に権利制限が成り立ちますから,国によっては部数が限定されたり,いろいろ手段が限定されたりというのがありますが,我が国では我々ユーザーに非常に優しい。そのような意味では,我々ユーザーの利益というのもきちんと守って,その両方を調和してでき上がったのが30条1項,2項なのであります。

でき上がった当初はアナログしか考えていないので,2項がなくてもバランスが取れており,非常に優しい,各国に例のないほどプライベートコピーに優しい法制になっていましたが,デジタル時代では,もうそれは立ち行かなくなってきました。立ち行かなくなったから30条1項をやめる,ないしは削るということもあり得たのでしょうが,それはせずに,多少1号,2号,3号で削れていますが,基本線を守って,従前のアナログ時代と同じようなフリーなプライベートコピーを許す代わりに,空(あ)いてしまった穴の部分は補償金で埋める,特にその穴がひどいのが録音録画だったから,それを埋めるというこということになりました。要するに両方の利益をうまく調和したわけであります。権利制限の最大のポイントというのは排他権を抑え込んで差止めされないのだけれども,不利益が生じている部分は補償金という形で間接的にリターンがいくという点であります。そのように両方の利益をうまく調整して,当時の先輩方が知恵をひねりにひねった,これはドイツの知恵だと思うのですがも,その両者の利益を調和するような形の要が補償金制度なものですから,それがワークしないとなると,先ほどの大きなピクチャー全体が崩れてしまうというところが大きな問題だと理解しています。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【上野委員】私は,この委員会を3年以上にわたって外から見ておりましたけれども,なかなかまとまらない議論の背景には,二つの基本的に異なる考え方が潜んでおり,その対立がずっと続いているだけではないかと感じております。

その二つの考え方というのは,前に論文でも書いたのですけれども,第一に,私的複製というのは本来自由なものであって,権利者に報酬を払う必要もないのだという考え方があります。このように考えるのであれば,たとえ私的複製が行われたとしても,――大渕委員の言葉を借りるのであれば――「法的な意味の不利益」はないということになりますので,何か現実の特別な経済的不利益ないし損失がなければ補償の必要はないということになります。これに対して,第二に,私的複製というのは完全に自由というわけではなく,著作者等は,私的複製について排他権を有しないとしても,報酬を受ける権利は有するのだという考え方があります。このように考えるのであれば,何らかの私的複製が行われるのであれば,これについて「法的な意味での不利益」というものがあるということになりますので,具体的事情によって報酬の額や最終的可否は変わり得るとしても,補償の必要はあるということになります。

この二つの考え方は,基本的な出発点を異にするものでありますので,なかなか折り合いをつけるのは難しいものだと私は思っております。特に本委員会のように,直接の利害関係を有する当事者が委員の多数を占める場で,これ以上の接近を期待することは容易でないように思います。

もちろん,ヨーロッパは基本的に後者の考え方を採っていると思いますし,日本の制度ももともと後者の考え方に基づいているところがあると私は思っています。ただ,今,議題になっているのは,資料4の2ページ目に書かれているように「(i)放送波を最初に録画する部分について,『補償すべき範囲』に含めるか否か」という点なのですから,ここで議論すべきなのは,たとえ後者のような考え方を採るとしても,タイムシフト目的で行われる私的複製についてまで補償の対象に含めるべきか,ということにあるというべきです。実際,ヨーロッパにありながらも,イギリスではタイムシフト目的の録音録画については報酬の必要がないとされているわけですので,我々がヨーロッパ的な考え方に基づくとしても,タイムシフトについてまで補償の対象に含めるかどうかは,どちらの考え方も成り立ち得るところですので,この点をもっと議論すべきではないかと私は思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがですか。今日のところは,ここまでにしますか。またいずれ検討させていただくことになると思うのですが。

それでは,続きまして(ii)の,権利者がDRMを自由に選択できる場合に,選択されたDRMの範囲内で行われる私的録画につきまして,補償すべき範囲に含めるか否かという点でございます。この点につきまして,皆様の御意見を承りたいと思うのですが,いかがでございますか。

既にまとめペーパーで,資料4の2ページ目ですけれど,今の論点については四つの黒ポツが付されていて,ここまでの検討では,このような意見が出てきているわけでございますけれども,これを補充ないし特にこれに付け加えるというような御意見があれば。

どうぞ。

【龍村委員】これは質問でもあるわけですけれども,特に動画関係のビジネスに携わっていられる方,華頂委員などにお伺いしたい点でもあるわけですけれども,DRM技術そのものというのは技術的な方法で,コピーされないことを物理的に妨げる技術といいますか,そのようなものだと思うのですけれど,DRM技術を使いながら,実際にコンテンツを提供する場合に,ライセンスという,つまりDR技術を前提としたライセンスをしているのか,ライセンスとは関係なくて,ただ事実上,物理的なそういった妨げる技術といいますか,そのようなものを付した商品として取り扱ってくださいといっているだけの話なのか。

ライセンスというものが,果たして入っているのかどうかです。その辺によって扱いが変わる可能性がないではないということもございますので,その点,お尋ねしたいと思います。

【末吉主査】華頂委員,お願いします。

【華頂委員】放送は一部そのような条件を付けて,先ほども御説明しましたけれども,我々映画を番組販売する場合には,事業者側にDRMを求めます。どこまで保護してくれるのだと。放送以外はコピーネバーのDRMを装着して利用してくれと。そうしないと契約しないです。

ですから洋画の製作配給会社が,今現在の有料放送に条件を付けているのは,ダビング10が当然信号があるのですけれども,ダビング10は許可しない。コピーワンスで放送してくれと,そうすれば放送権を売りますということで,WOWOW以下コピーワンスでやっているということです。

だからコンテンツホルダー側が事業者側にDRMを求めるという構図だと思います。

【末吉主査】どうぞ。

【龍村委員】つまり法的な意味でライセンスということではなくて,物理的にそのような妨害物を搭載,実装しているというものであるというほどのことであれば,ライセンスとか法的な評価を施されていないといいますか,そのような次元の話なのではないかと思うのです。

もし,DRM技術を用いた取扱いというだけの実態なのであれば,私的録音録画制度とDRM技術の実装の事実が併存している場合に,それをどのように考えるか。この2番でいえば,一番上の黒丸と二番目の黒丸が対立していると思うのですけれども,それをどのように考えるかといった場合,どうも両者はただ並存しているのだけなではないかと思うのですが,いかがなものでございますか。

【華頂委員】ここにも書いてあるのですけれども,コピーネバーの究極の選択,これが選択できない場合には,コピーワンスでも,コピーがそこでされるわけですから,我々日本の映画製作者は,そこに補償金を求める。かつてそうであったように,今でも補償金を求めるというスタンスは変わっていないです。

【末吉主査】よろしいですか。

どうぞ。

【大渕主査代理】先ほど龍村委員がお聞きになった点は,私も前からすごく知りたいと思っていたところなのですが,先ほどの華頂委員のお答えを聞くと,中間というのも何なのですけれど,要するにコピーネバーは本当にコピーがネバーなのだから,ライセンス以前にコピーがないのだから,補償金もない。逆に言うと,コピーネバー以外のDRMであれば,一定程度はコピーがされるのだから補償金の対象には当然なるという,このような簡単な発想だったのかというぐらいクリアな話なのですが,そのようなことであれば,先ほどのライセンスかどうかというよりは,そもそもコピーが発生するかしないかという問題なのでしょうか。

先ほどの御趣旨は,コピーが発生するにしても,ライセンスということなのですか。ネバーであれば,そもそもコピーが発生しないから,その関係では。

【龍村委員】ネバーは別格のようですが,DRM技術というものが,要は私的録音録画制度を排斥するわけではなく共存しているわけです。それがあるから私的録音録画が排除されるというものではなくて,土台は全部共通で,ただ,そのような技術が事業者によって使われているというだけの話ではないかと思います。

【華頂委員】デジタルの技術が日々進捗しているわけですけれども,DRMも進化しているし,その一方で,先ほど申し上げたように画質の部分でもどんどん進化している。高精細画像になればなるほどマザーのデータに近くなって,4Kは正しくマザーをコピーされているのと同じになる。そういったときに,一方で進捗している技術のDRMをきちっと使って,違法に拡散しないようにすることが保護と利用の両輪だと思うのです。これはデジタル技術の進歩に両方とも沿っているということです。

【大渕主査代理】それであれば,コピーネバー以外はコピーはできるけれども,それもしてほしくないというか,別にそれを納得してライセンスしているわけでもないというお答えかと思うので,ネバーもネバーでいいのですけれど,あってもそれは別にライセンスしているわけではなくて,ネバーにしていないだけだということであれば,補償の対象には当然なるのだろうと思われます。

それと,先ほど1のところで発言のタイミングを逸したので申し上げますと,どなたかがイギリスの例を出されたのですけれど,イギリスはさほど私的複製に優しくなくて,日本は非常に私的複製に優しい国だから,その大前提が違っているので,そこは混ぜるとかえって議論が混乱してしまうと思います。日本は物すごく私的複製がやさしいから,当然きちんとそれの下支えとして補償金で補わなければいけないのですけれど,イギリスは,漏れ聞くところによると,さほど優しくなくて,客観的には違法な状態があると聞いております。国によって法律などが違いますので,例えばドイツの同一性保持権と日本の同一性保持権は全く条文が違いますから,ドイツの議論をそのまま持ってこられないのと同じように,大前提のところをそろえないと,違う制度を持ってくると議論が混乱するだけですので,ここでは飽くまで日本のように非常にプライベートコピーに優しい国の議論に特化しないと,議論が崩れてきてしまうのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【松田委員】皆さん方の議論で,DRMとの関係では方向性が出たように思います。コピーネバーについては補償金の対象にしないというのは,そのとおりです。DRM技術が選択できるから,私的複製の範囲から外すというのは,極端な議論です。これには決定的な無理があると思います。DRM技術が選択できる権利者が,複製してもいいというライセンスがあるかのように評価して,私的複製の範囲から外すということは無理があると考えます。

しかしながら,DRM技術を掛けていて,そしてその技術の範囲内で対価を取っているという場合には,ライセンスになると私は思います。DRMを掛けて幾つまで複製が良いというように許諾をしている場合はライセンス契約で考えるべきだと思うのです。ライセンス契約がある以上は,それは私的複製の問題からは外すべきです。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。まず河村委員から。

【河村委員】是非整理していただきたいのですけれども,いろいろな御意見はあると思うのですけれども,DRMの範囲内でしている複製が私的複製か否かという問題と,私は私的複製だと思っていますけれども,補償の範囲,今いわれている私的録画補償金の補償の範囲かどうかという議論なのかをはっきりした方がいいと思います。DRMが掛かっている中は私的複製であるかないかというのは,何か今問題になろうとしているのですか。

【末吉主査】どうぞ。

【華頂委員】河村委員の御意見もあったので,簡単に整理しますと,要は先ほども申し上げたコピーフリー,コピーワンス,ダビング10,コピーネバー,この四つの制御信号が今組み込まれているわけですけれども,コピーネバーを選択できる状態で,その権利者,コンテンツホルダーがコピーワンスあるいはダビング10,究極的にいえばコピーフリー,これを選択して放送をする。これは明確に権利者側がコピーネバーを選択しないで,コピーしてもいいよというアピールですから,だからそこに補償金云々(うんぬん)の話はないと思います。だってコピーネバーを選択できるのに,そうではなくてコピーができる状態で送っているわけですから。

だから全ての四つの信号が選択できた場合においてのみ,私的録画補償金を映画製作者としてはもらうことはできないです。コピーネバーが選択できる以上は。コピーネバーが選択できなくて,ほかの三つの信号のみどれかを選択しろというのであれば,映画は究極的にコピーネバーのビジネスモデルですから,これはどうしても対価の還元がないとビジネス上は非常にまずいという状況です。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【河村委員】言葉足らずだと誤解を招くといけないので,もう一度申し上げたいのですけれども,私はずっとここで録画補償金の場合は対象となっているのが無料放送,公共放送の話なんだと申し上げてきました。民放,NHKです。公共的ということで免許を与えられていて,いろいろ放送法にも縛られていたりします。録画補償金が対象にしようとしているのはその分野なのだということが大前提にあるのです。私はDRM反対でずっと総務省で言ってまいりましたから,DRMもそもそも要らないと思っています。家庭内でやる私的複製ですから,海賊版を作る人に関しては別途施策が必要ではないかと思っていますけれども,ニュースあり,いろいろな事故の報道あり,災害に関するものもあり,スポーツあり,いろいろな番組がある,そのような公共的な放送に,私的複製というものができませんがその代わり補償金はありませんとかいう世界がいいとは,私の立場から絶対に言えません。まずは私的複製は当然だと思っております。公共的な放送で,芸能人の方が出ているようなものばかりではなくて,報道やいろいろな方の発言なども含めまして,市民として私的に複製する権利は本来あるはずです。

ですからDRMが掛かっている範囲が私的複製ではないとなりますと,究極には,コピーネバーにされることにもあらがえないという世界になってくるような気がしますので,そこは,もし本当にそのような議論をしているのであれば,私は公共的な放送に私的複製というのは必ずできるべきだと思っているので,そういう意見を言わせてください。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【大渕主査代理】少し前のお話であったのですが,これも以前からすごく気になっているのは,30条1項があるという前提では,別にお金を払わなくても自由に複製できるわけですから,それをあえてDRMの解除か何かは別として,お金を払っているというのは,ある種30条1項の権利制限をオーバーライドするような契約というか,そこのところが重要ではないかと思っております。

本来であれば自由に,私も一私人として,30条1項を満たす限り自由にできるのであれば,別にお金を払う必要もないのに,あえて先ほどのDRMを掛けていて云々(うんぬん)と組合せというかどうかは別というのは,むしろ30条1項を減らしてというか,オーバーライドしてなしにして,30条1項がなければ複製したら侵害になってしまいますから,そこはライセンス契約をしてお金を払うとなっているので,そこは私は前から違和感があるのは,私も実は河村委員と同じで,30条1項はほかの国に比べて非常によい制度だと思っていますので,そこのところがだんだんと満足にリターンが来ないのであれば,もうコピーネバーにしてしまえと議論が逆に振れてしまっているようにも感じます。本来はきちんとリターンが行くべきだというのに,それが行かないのであれば全部止めてしまえという,むしろ逆の方向に走ってしまい,マイナスのスパイラルのようになっています。先ほどの華頂委員のお話も,究極はそこに行きつくのではないかと思います。一番よいのは,プライベートユーザーは自由に必要なコピーができて,その代わりきちんとリターンが行くという形です。これはドイツ人が悩みに悩んで作った補償金制度ですが,その趣旨がだんだん忘却されて変な方向に向かっているような気がします。補償金でのリターンが行くというところがうまくいかなければ,しようがないから根本で断ち切りたいという方向に行っていますが,それは非常に好ましくありません。課金ということになると,我々プライベートユーザーが一々どのような番組をいつ見たというようなことを何かしら他者に見られることになるので,そのようなプライバシーの侵害もなく,家庭内には法が入らない形で自由にできて,かつリターンはきちんと行くという,これがドイツ人以来悩んで考えたことなので,この精神を生かすような形で議論を進めていく必要があると思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。

まず華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】この資料5のダビング10を実施する際の総務省の中間答申なのですけれども,この会議に私も出席をさせていただきました。この頃は私的録画補償金がきちっと履行されているような状況だったと思うのですけれども,この会議でコピーネバーという言葉を一言も発したことはありません。それはなぜかといえば,そのときは30条2項がきちっと生きていたから,コピーネバーという言葉は口が裂けても言えないですということでございます。

【末吉主査】河村委員,どうぞ。

【河村委員】私の先ほどの意見は,ただで何もかもやらせろといった意味で言ったわけではございません。補償の必要性でいえば,これから調査すると思いますけれども,数が減ってきていることですとか,DRMが掛かっている中,補償の必要がある程度なのかを見るべきです。あるいは先ほど新しい技術がたくさん出てきてというお話がありましたが,ユーザーの立場から言いますと,デジタル録画に補償金が入った頃に比べて,テレビ番組を録画メディアに残すための録画はしにくくなっています。ハードディスクに入れるのはすごく簡単になりましたが,そこから出すことは普通の消費者にはとても難しくて,ほとんどの人が,主婦連合会の会員程度ですと,昔でしたらVHSとかに残していたような人たちでも,今はそのようなことはできないのです。ハードディスクはできますけれども,そこから何か媒体に移すなどということは,同じメーカーの何とかの機器でなければ駄目だとか,外付けの機器になったときにいろいろできる,できないというルールがありまして,皆様御存じの方や,御存じではない方もいるかもしれませんが,本当にやりにくくなっているという現状があります。ハードディスクに入れてタイムシフトはしているかもしれませんけれども,明らかに補償が必要なようなコピーというのは減っていると思いますので,そのあたりは調査で出てくると思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

今子委員,どうぞ。

【今子委員】二つありまして,一つ目ですが,今,総務省の方で2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて放送番組の同時再送信,見逃し配信をどんどん進めていくということについて議論がされています。ここ1年で議論が進んだことだと思いますので,今後の放送コンテンツの視聴の在り方という点を含めて,この方向性に照らし議論をするべきと思っております。

二つ目は,タイムシフトについては,補償金を支払う必要はないという考えもあるという御指摘がありました。一方で,先ほど大渕委員の方から,単に国による違いとか,私的複製で認められた範囲が広いか狭いかで違ってくるという御指摘があったところなのですけれど,今日でなくてもいいのですけれど,双方について詳細に御説明をいただければと思うのと,この点はすごく重要だと思うので,厳密に議論していけたらと思っています。

といいますのも,先ほどの小寺委員の不利益がゼロでなければ補償という点に疑問があるという御指摘と重なるのかなと思いましたので,お願いできたらと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。今子委員の今の御趣旨は,調査対象は何になるのですか。確認なのですけれど,何を調査すればいいかということ。

【今子委員】ごめんなさい,調査なのか,ここの場で教えていただいて議論をするというやり方でもいいし,方法は別に希望はございません。

【末吉主査】それは何についてですか。

【今子委員】タイムシフトについては補償金を支払う必要はないという話について,そのような考えがあるのかどうか。

【末吉主査】それは日本国内ですか。それとも比較法的なことですか。

【今子委員】今,イギリスではあるというお話があって,日本でもこのような考え方が採れるのかどうか。

【末吉主査】なるほど。イギリスを中心として。分かりました。

ほかにいかがですか。龍村委員からいきますか。

【龍村委員】また,先ほどの問題に戻りますけれども,DRM技術の話ですけれども,DRM技術の選択の次元の問題と,法令上の著作権法であるとか,そのような問題とは,どうもディメンションが違うのではないかというような印象を受けているのですけれども,実際DRM技術を選択するという行為が,どのくらいまでの法的な意味合いを含めて行われているのか。例えば,メジャーなどは米国内や海外においてどのような判断で選択しているのか。あるいは日本において,日本の法令が適用される範囲内で,例えばDRM技術を選択するときに,その選択したということがどのような法的意味を持っているのか認識した上で,例えば契約上どのような契約が締結されていて,本当に30条をオーバーライドしているような合意内容が入っているのかとか,その辺に非常に興味があるのです。

ですので,DRM技術の議論を,法律の次元に降ろしたときに,法律的にどのように評価するかは,別途行わなければならない問題かと思うので,その辺の実態を調査する必要がありそうな気はいたします。

【末吉主査】松田委員,どうぞ。

【松田委員】龍村委員の今の質問は,結局はDRMという技術とライセンス契約のすみ分けの問題なのではないですか。ライセンス契約というものがなくとも,DRMは掛けることはできます。それをどのように評価するか。ネバーについては,私的複製の問題外になる。それ以外は複製があるのだから,私的複製の問題になる。ただ,これだけ。

DRMがライセンス契約として見られるような場合については,そのライセンス契約で処理されてしまっているのだから,これは私的複製の問題にはならない。このようなことではないですか。

この組合せは,ある意味では可能性としては無数にあるわけです。ということは,個別事案において出てきたときに判断するほかない。場合によっては,DRMは厳しく掛けているけれども,ライセンス契約というものはないというように認定される場合もあるだろうし,契約文書ないしは規約にあるから,これはライセンス契約として処理されているというように認定されるものであるというように思います。

【末吉主査】ありがとうございます。私も松田委員がおっしゃるとおりだと思うのですが,龍村委員の御主旨はDRMを掛けているということを,もう一度法的評価を考えた方がいいというように受け取らせていただきました。そのようなところでよろしいですね。

どうぞ,河村委員。

【河村委員】録画補償金はテレビに掛けているということで,私はそのスタンス一辺倒なのですが,私の知る限り,無料広告放送とか,NHKに類するような放送局がDRMをかけて,スクランブルをかけて放送している国はないと聞いております。日本だけです。もちろん有料放送にはかけています。無料広告放送と,公共NHK的なところは,どの国もDRMをかけないで放送していると聞いておりますが,もし最近そうではない国が出てきたことを御存じでしたら教えてください。

【末吉主査】それは諸外国でですね。

【河村委員】諸外国です。

【末吉主査】どうぞ。

【華頂委員】先ほど龍村委員の御質問というか,調査依頼というか,私,先ほども資料5にあります,総務省のダビング10を決めた会議に出ていましたけれども,いきなり声が掛かって出席したのです。そのときまでデジタル放送の,たしかこのときは,これから中間答申がさかのぼること2年とか3年やっていたと思うのですけれども,そのときはデジタル放送の試験放送をやっていて,メーカーさんと放送事業者さんがコピーワンスの運用で試験放送をしていたのです。コピーワンスで録画をすると,当然ハードディスクには残ってタイムシフトも当然できて,1回だけムーブで外の保存用の媒体に動くといったときに,ムーブしている最中に電気的なトラブルが起こると,もう残っているものもムーブですから消えていきますし,こちら側に行くものも途中から遮断されて,とにかく両方とも駄目になってしまうというようなユーザーさんからのクレームがかなり来たというようなことで,私の理解は,この会議にステークホルダーみんな集められて,このようなことになっています,ですから複製回数についてコピーワンスはぐあいが悪いので,だけどもデジタル放送で非常に劣化しないデータがコピーされるので,どのようにしたらいいかということで始まったのです。

我々はいろいろな意見を言いましたけれども,どの権利者もコピーネバーということは一言も言っていません。私的録画補償金が働いていましたから。何だかんだ言いながら,村井主査が,結局はいろいろな理由はここに書いてありますけれども,ダビング10で行くのだと。

我々は別にダビング10を選択したわけでも何でもないのです。今も現在もダビング10でやっている放送に,我々は番組を供給しているというようなことなのです。ただし,先ほども申し上げましたように,ハリウッドメジャースタジオはウインドーの早い有料のBS,CSはダビング10が当然信号があるので,コピーワンスでやりなさいということで,全ての有料放送はコピーワンスに規格が統一されているということです。

【末吉主査】ありがとうございます。

上野委員,どうぞ。

【上野委員】この論点についても,二つの基本的に異なる考え方が背景にあると私は見ています。

つまり,第一に,技術的手段によって私的複製をコントロール可能であるにもかかわらず,任意に権利者がこれを十分活用していないのであれば,権利者はその限りで私的複製を容認したと理解できるので,その私的複製について利用者が補償金を払う必要はないという考え方があります。第二に,権利者が技術的手段によって完全にコピーネバーにしているのであれば権利者は補償金を請求する立場にないとしましても,一定の範囲で現実に私的複製が可能である以上,その限りで利用者が補償金を支払う理由はあるという考え方があります。

以上のようなことは,飽くまで議論の整理のために申し上げているだけなのですけれども,1点だけこれに関して指摘しておきたいのは,補償金制度が導入された際,平成5年に施行された当時の対象は録音だけでしたし,録音といっても対象機器等として政令指定されたのはMDとDATだけでしたけれども,それらの機器等にもSCMSという技術的手段は施されており,デジタルコピーは1世代しか作れなかったということです。もちろん,1世代のデジタルコピーを複数作ることはできたわけですけれども,孫コピーは作れなかったわけです。そういう技術的手段が用いられていることを前提として補償金制度がスタートしたということは,改めて認識しておくべきだろうと思います。

もちろん,現在は,当時と比べて,技術的手段にバラエティーがあるではないかとか,権利者が技術的手段を選択できるではないかといった御指摘もあるかと思いますので,その点をどのように考えるべきかということこそ,ここで議論されるべきではないかと思います。

なお,先ほどイギリス法について御発言があったので,誤解がないように一言申し上げておきますと,イギリスには補償金制度がなく,そもそも私的複製として許される範囲が狭いというのは大渕委員がおっしゃった通りですけれども,イギリス法70条の規定はタイムシフト目的の録音録画については補償なしに権利制限を行っており,それが欧州指令の下でさえも許容されていると考えられるわけですので,そうであるならば,その点は,我が国の立法論においても参照する価値があり,そのような観点からタイムシフトについては我が国でも補償の対象に含めなくてよいという考え方も成り立ち得ると考えられるところですので,飽くまで論点の整理としてそのようなことを申し上げたまでであります。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【大渕主査代理】今の最後の点は,立法論は立法論でよいのですが,恐らく我々の非常に好んでいない方向性を大前提とする立法論である点には大いに注意を要します。イギリスのように私的複製の権利制限を狭くして補償金なしという制度が日本にとってよい制度なのかという問題であります。補償金については,ここで今議論しているところですが,30条1項を減らしたいと思っている人は誰もいないので,そこのところは大いに注意しなければなりません。ほかの国の制度は何かよさそうに見えるけれど,やってみて気がついたら,30条1項の範囲が大幅に減ってしまっていたということになると大変なので,そこのところは十分に注意が必要であるということだと思います。

先ほど松田委員等が御指摘された点については,私もDRMは別にライセンスを含んでいなくて,事実上コントロールしているだけの話ではないかと思っております。ひるがえって考えてみると,前から強調している点ですが,30条1項がある限りはプライベートユーザーは自由に複製できるので,ライセンスを受ける必要は全くないわけであります。

そこで最初から食い違っていて,イギリスなどのように30条1項的なものが狭い国であれば,ライセンスを受けて使いたいというのは分かるのですが,日本では,自分自身の限りであれば,ライセンスする必要は全くないわけであります。それが我々の30条1項のよいところなのですから,そこを混ぜてしまうと議論が完全に混乱してきてしまいます。基本的には30条1項に当たればライセンスはいらないというのが前提であります。ライセンスしなくても自由にできるものを,あえて好き好んでお金を払う必要も全くないわけであります。そこの議論は本来,法が想定しているような30条1項で十分できるというところをピン留めしないと,議論が大きく混乱してくると思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

時間の関係がありますので,最後,太佐委員の御意見で,今日のところは閉めさせていただきます。

【太佐委員】ありがとうございます。事業者の観点からということで,2点ほどコメントさせていただきたいと思います。まず,この資料の流通チャネルの図のお話でして,コピーネバーが選べないのなら補償の必要があるというような方向の御意見があるのだと思いますけれども,確かに一つのチャネルだけ見てしまえば,これしか選べないということでございますけれども,コンテンツホルダーの方から見たときに,選ぶ流通チャネルというのは補償金導入時から比べると非常に多様化していると理解しております。それこそコピーネバーも選べるルートがある。コンテンツによっていろいろあるというのは承知の上で,このあたりは,それこそ技術と契約の世界で多様化してきた部分ではないかと思いますので,そういった点も考慮していただく必要があるのかなと。その流通チャネルだけ見ると,これしか選べないけれども,どのチャネルを選ぶかは,依然選択肢はあるのだろうという視点も必要なのではないかと思いましたというのが1点です。

それからもう一つ,2点目というのは,補償金というのは,導入しましょうとなった途端にコストを掛けずにちゃりんちゃりんとお金が入るものではなくて,実際には仕組みを開発するコストがあり,額を交渉するコストがあり,補償金を徴収するコストがあり,それを還元するコストがありと,そういったコストの部分というものがございます。

最終的な目標というのは「クリエーターへの対価還元」ということでございますので,それらのコストとのバランスも考えた上で,補償金が妥当なのかというところも,事業者としては見ていただきたいと思った次第です。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。そろそろお時間なので,今日のところはこれで打ち切らせていただきます。

【華頂委員】一つだけ。この後,調査があるというので。

【末吉主査】調査は,この後やります。ほかにも言い足りないところとかございましょうが,是非事務局の方までお寄せいただきたいと思います。それから,念のためのリマインドですが,資料4の2ページ目にございますとおり,コピーネバーは(iii)のところで,一応外出しになってございますので,コピーネバーの問題は補償すべき範囲の論点から,一応これまでの検討のところでも外れておりますので,それでDRMを自由に選択できる場合というのが(ii)になっていると理解をしておりますので,その点,リマインドしたいと思います。

次回は私的録画についての議論を更に深めるということとともに,昨年度の審議経過報告にもありましたとおり,私的録音に関する制度設計の議論に入っていきたいと思います。その際は,補償金制度を見直すとした場合の在り方について議論を行うことができればと思います。

なお,昨年度の検討においては私的複製の実態を踏まえるべきことを確認したところです。昨年度は私的録音についての実態調査を,事務局において行っていただきましたが,今年度の私的録画に関する検討においても,昨年度と同様に実態調査を進めていきたいと思います。

事務局におかれては,調査項目等について,小委員会の委員からも御意見を頂き,実態調査の結果については適切なタイミングにて本小委員会に御報告をお願いしたいと思います。

調査報告につきましては,各委員から個別に御意見を頂くことになりますが,この場でということで,華頂委員から発言なさりたいという趣旨でございますので,頂きます。どうぞ。

【華頂委員】設問に対する意見なのですけれども,「放送番組のうち,映画やテレビドラマが録画できなかったら不便ですか」というような意味の質問を設定することが可能かなというお願いです。昨年の私的録音の議論の際にも,この資料3にも書いてありますし,それから小寺委員や河村委員から,たしか今や音楽をコピーして楽しむ時代ではなく,サブスクリプションの音楽配信サービスなど,コピーを伴わない利用形態が増えているという御意見があったように記憶しております。

映像の方も,テレビドラマはTVer等のキャッチアップ,それから映画は放送よりも早いウインドーの配信などが非常に整備されて,鑑賞できる環境が整備されつつあるというようなことで,この際,このような録画に代替するシステム,それからビジネスとの関係性を明らかにすることも重要ではないかと。

同時に,先ほども冒頭でお話しいたしましたように,コピーネバーの取扱いによる放送も現実味を帯びてきておりますので,そのあたりの調査結果も情報として知って心構えをしておきたいというような意味もございます。是非御検討ください。

【末吉主査】ありがとうございます。それ以外も,皆様の御意見を後で頂きたいと思います。

それでは,事務局の方から連絡事項をお願いします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】御連絡いたします。2点ございます。まず1点目でございますけれども,議事の最初の方にございます資料1-4の関係で,太佐委員の方から事前に議事録等御覧になったけれども,見覚えのない記載があるというような御指摘がございまして,事務局からはオープンの議事での御発言についてまとめているということで申し上げました。それ自体は間違っておりません。

ただ,今年度第1回の著作権分科会については,6月8日に開催されまして,その分の議事録については,まだ公開になっておりませんので,その点につきましては,公開後御覧いただければと思います。

2点目につきましては,次回の本小委員会の開催につきましてでございますけれども,日程が正式に固まり次第,また御連絡をさせていただきたいと思います。

ありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。定刻を過ぎてしまいましたが,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,第1回を終わらせていただきます。

本日は,どうもありがとうございました。

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