文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第3回)

日時:平成30年9月4日(火)
10:00~12:00
場所:文部科学省東館3F1特別会議室

議事

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
具体的な制度設計に向けた検討(案)(312.6KB)
資料2
太佐委員発表資料(1.2MB)
参考資料
平成29年度文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(抜粋)(1.2MB)
出席者名簿(54.8KB)

議事内容

【末吉主査】それでは,定刻となりました。ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第3回)を開催いたします。

本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には入場いただいているところでありますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

なお,本委員会における審議において,スマートフォンに関しても私的録音の実態があることが報告されまして,補償金の対象とすることの是非について議論が及んでおります。これにつきまして,太佐委員より,通信ネットワーク機器・端末メーカーの団体である一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)を御紹介いただきました。同協会に打診をさせていただきました結果,今回より,同協会ICT基盤部長の多賀谷様にオブザーバーとして出席いただくことになりました。多賀谷様,よろしくお願いいたします。

【多賀谷氏(一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会)】よろしくお願いいたします。

【末吉主査】また,事務局に人事異動がありましたので,報告願います。

【堀内著作物流通推進室長補佐】御報告いたします。7月27日付けで,文化庁長官官房審議官に内藤敏也が着任いたしております。

【内藤審議官】よろしくお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】また,8月17日付けで著作権課専門官に大野雅史が着任いたしておりますが,本日は別の公務により遅参いたします。以上でございます。

【末吉主査】次に,配付資料の確認をお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】配付資料につきまして御案内いたします。

まず,資料1といたしまして,具体的な制度設計に向けた検討(案),資料2といたしまして,太佐委員御発表資料,参考資料といたしまして,平成29年度本小委員会の審議の経過等について(抜粋)でございます。また,委員の皆様方には,机上配布といたしまして,検討課題に係る委員からの意見一覧をお配りさせていただいております。適宜御参照いただければと思っております。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。皆様資料はよろしゅうございますか。

それでは,はじめに,議事の進め方につきまして確認をしておきたいと思います。本日の議事は,(1)クリエーターへの適切な対価還元について,(2)その他となります。

それでは,議事に入りたいと思います。クリエーターへの適切な対価還元につきましては,前回に引き続きまして,具体的な制度設計に向けた検討を行いたいと思います。前回の会議の後,各検討課題につきまして,追加で御意見がある場合は事前に事務局までお知らせいただくようお願いをしておりました。本日の資料1は,前回の会議での御意見と会議後に追加で頂いた御意見を反映したものとして,事務局にて準備していただきましたので,事務局にはそれらの意見の紹介をお願いしたいと思います。

なお,前回の会議におきまして,昨年度に実施された私的録音に関する実態調査に関しても,委員より御意見等がありましたので,本年度より新たに委員に御就任いただいた方もいらっしゃいますので,念のため確認の意味で,昨年度の私的録音実態調査結果についても御紹介いただきたいと思います。私的録音録画補償金の見直しについての検討は約10年前に開始いたしました。本小委員会の検討も本年度で4年目を向かえ,今年も既に9月に入りました。委員の皆様方におかれては議論の集約に向けて,特に現実的かつ実効的な対価還元手段の在り方を意識しながら,御議論を頂きたいと思います。

本日は,各課題・論点について御意見等を頂いた後,残りの時間で対価還元手段に関する今後の方向性の全体像,いわば骨太の方向性につきまして御意見を頂きたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。

それでは,まず事務局より昨年度の審議経過について御紹介いただき,続いて資料1の御説明を頂きたいと思います。それでは,お願いします。

【白鳥著作物流通推進室長】参考資料を御覧ください。こちらが,平成29年度の本小委員会における審議経過のまとめになっております。そのうち,特に私的録音の実態調査結果,そして,それを踏まえた具体的な検討結果などについてまとめた箇所を抜粋したものを,本日はお配りしております。

ページをおめくりいただきまして,2ページからが,私的録音の現状等です。昨年度行いました実態調査の結果を紹介しております。2ページにつきましては,聴き放題の音楽配信サービスの利用者がここ3年間で増加している状況が紹介されています。3ページにおきましては,過去1年間に録音を行ったことがある者の割合が4割で,これは従前行いました調査結果とほぼ変化はない状況になっておりました。

3ページの下です。録音に実際に使用した機器につきましては,光学メディアドライブ付きのパソコンが5割,スマートフォンが4割,そしてポータブルオーディオプレイヤーもそれに次いで多い状況でありました。

5ページからが2次調査結果となっております。録音を行った方を対象とした調査です。

更におめくりいただいて6ページです。図表4-2でございます。過去1年間に録音した1か月当たりの平均曲数について尋ねる問いです。その曲数については,コピー元の音源の曲数で回答を頂いております。こちらについては,全般的に3年前に比べますと減少している状況が見られました。

他方,6ページの下,(5)です。対象曲数ではなくて,実際に行った録音等曲数の総量の変化を見たのが,図表5-1と5-2です。これは過去1年間に新規に入手したか,以前から入手していたのかといった音源の性格によって二つに分かれております。過去に既に自分で入手していた音源に関しての録音曲数の総量は,全般的に増加している状況が見られました。

このような調査結果を踏まえながら本小委員会で御検討を頂いた結果が,12ページ以降に整理されております。特に,14ページの中ほどになりますが,第2パラグラフのところからになります。先ほどのように,録音等の対象曲数が3年前に比べて減少していましたが,このことを捉えて,補償金制度の廃止・凍結を求める立場からは,私的複製の量は補償を必要としない程度まで減少したと言えるのではないかという意見がありました。他方で,実際に行われた録音等の曲数に着目すると,既に自分で入手していた音楽音源については,曲数は全般的に増加している状況が確認されました。また,その次のパラグラフですが,3年前との対比ではなくて,約10年前の調査結果との対比で見れば,ポータブルオーディオやパソコンへの保存曲数は増加していました。ただし,引き続き書かれておりますが,もとよりこれらの曲数の中には30条1項の私的複製の対象外と考えられる複製も含まれるとする指摘がなされる一方,対象外と考えられるそれらの曲数の全体量は必ずしも明らかではないとされました。

こうしたことを総合的に踏まえると,「したがって」からのパラグラフです。現在も補償金制度に関して,これを廃止するほどに必要な立法事実があるとは言えないのではないかという意見があったとされております。また,その次のパラグラフの最後です。近い将来のうちに私的録音の全体の量が確実に更に減少していくといった主張は,広い支持は得られなかったとされております。

こうしたことを踏まえながら,対価還元手段の検討の方向性について,次の16ページに書かれております。第2パラグラフです。契約により許諾される複製の全体量が増加していくのであれば,30条1項の私的複製の範囲は狭くなっていくことになります。そのことにより,実際に補償が不要だと言える程度まで狭くなっているかと言えるかについては,契約と技術による対価還元モデルの今後の構築状況次第であるとも言えると。しかし,現時点においては,その実現可能性や範囲は明確ではない。今後,特に契約と技術による対価還元モデルについては,どのように有効に機能し得るか推移を見守っていくことが重要であるということについて確認し,ここは特に異論はありませんでした。

その下にしばらく補償金制度の在り方に関しての記述が続いております。補償金制度については廃止・凍結を求める立場と,現状の実態を踏まえて見直しを行うべきだという立場の御意見を頂いたわけです。16ページの下の「ただし」から始まるパラグラフです。どちらの立場,どちらの見解も録音の実態を踏まえるべきだという点では一致しています。そのまま文章が続いております。補償金制度は長年検討が進められてきた課題であるところ,対価還元の在り方については,補償金制度が平成4年からスタートしているわけですが,補償金制度に代わり得る対価還元手段がない範囲においては,私的複製の実態が有り,かつ現行制度上の私的録音録画補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとは言い難(がた)いことを踏まえれば,そのような代替措置が構築されるまでの手当てとして,引き続き補償金制度により対価還元を模索することが現実的だとする意見が多かったとしております。ただ,もとよりこれは補償金制度を拡張する性格の見直しではなく,複製の実態に沿った柔軟なスキームにするなどの工夫を講じようとするものだといったようなことが書かれております。昨年度の本小委員会におきましては,私的録音の実態を踏まえてこのような審議結果報告が取りまとめられた状況になっています。

そこで,本日の資料1を御覧ください。昨年度の審議結果報告につきましても,特に具体的な制度設計の議論を深めるべきことが確認され,それに基づいて本年度から本小委員会では,具体的な制度設計に向けた検討も取り上げて議論を行ってきていただいております。

1ページ目につきましては,先ほど主査よりお話がございました。より現実的かつ実効的な方策とするために,どのような観点から議論すべきか,どのような観点からその制度を構築すべきかという観点を示していただいております。そうした観点をこの具体的な制度設計の議論をしていく際に念頭において御議論いただきたいという観点から,ここに三つ丸が書かれております。

まず,一つ目です。購入者にとって受け入れやすい対価還元手段とするためには,どのような制度設計とすべきかという点が一つです。二つ目につきましては,特に補償金の対象を広げる場合には,汎用機器は使用実態が多様なことなども含めつつ,また欧州などにおける状況などを踏まえつつ,実効性のある現実的な方策とするためにどうすべきかといった点です。三つ目につきましては,パッケージCDあるいは配信音源かで,この対価還元の手段によってなじみやすさに違いがあるかといった点も意識しながら,御議論を頂ければと書かれております。

こうしたことを御参照いただきながら,このたび委員の先生方には,事前に各論点について御意見を出していただいております。それをまとめたのが,資料1の次ページ以降になっております。各検討課題につきましては,既に前回の会議において御議論いただいたものです。そうした議論の中で既に御発言を頂いた御意見の見直しも含めて,今回御意見を頂いたものを全部反映したものがこちらの資料になっております。順に検討課題に沿って概略のみ御報告したいと思います。

2ページ,補償金制度の見直しに関してです。対象機器・記録媒体の範囲につきまして,まず検討課題1-1です。スマートフォンにおける画面収録に関しての機能について,どのように評価できるかといった問い立てに対するものです。これにつきましては,そもそもこの機能は私的複製の促進を目的とするものではないという御意見を頂く一方で,実際に私的複製が可能なのであれば対象とすべきだといった御意見も頂いております。また,無料でストリーミング配信されるものも画面収録ができることをどう考えるかについて,3ページの上に御意見を頂いております。併せまして,この機能の動向,そして実態などを踏まえながら継続検討すべきではないかといった御意見も頂いております。

検討課題1-2です。これは汎用機器等を補償金の対象としてよいかといった観点でございます。これは昨年度も先ほど御紹介をした観点を踏まえながら御検討を頂いております。これは実態として複製が可能である以上は広く対象とした上で,実際の実態調査を踏まえて対象とするか否か,そしてまた補償金額をどうするかを検討すべきだといった御意見を頂く一方で,五つ目の丸につきましては,必ずしも私的録音録画に供されるとは限らないのが汎用機器だと,補償金制度の対象とすることには反対だという御意見も頂いています。

それから,3ページから4ページにかけましては,私的録音録画に使用される可能性があることを元に,広く汎用機器全体を対象とすることは国民の理解が得られないのではないかといった御意見を頂いております。他方で,先ほどの現実的かつ実効的という問題意識にも対応していただいている御意見だと思いますが,4ページの上から四つ目のところにつきましては,通常私的録音に供される機器を対象とすることでどうか,といった御意見も頂いております。

また,ここの論点につきましては,アプリケーションなどのソフトウェアの機能をどのようにこの補償金制度の中で評価すべきかといった問題提起も頂いております。また,一番下のところにつきましては,支払方式についてもこの対象機器を考える上で重要な論点になってくるのではないか。併せて総合的に議論すべきではないかといったことで御意見を頂いております。

5ページからは対象機器・記録媒体の決定方法について,検討課題2です。対象となる機器・媒体については,現状では個別に政令で技術仕様に着目して規定をする状況になっております。こちらについては,私的複製の実態を踏まえて柔軟な運用を可能とする観点から,機動的な対応が可能となるような規定ぶりとするべきという御意見と,あとは一番上にありますのは,現状の方式を維持すべきではないかと,そのような慎重な議論を踏まえた決定がされる方式を採用すべきではないかといった御意見を頂いております。

また,6ページにおきましては,クラウドサービスの扱いについてどう考えるかといった点についても言及いただいております。こちらも汎用機器に関して議論した論点にも関わるかとは思います。この規定の仕方ということで,クラウドサービスについてもサービスを規定することで対象とすることができるのではないかといった御意見もある一方で,現時点でサービスを加える形にすると,非常に課題が多いのではないか。特にクラウドについては,サービス提供者が海外事業者の場合にどのように運用するかといった課題もあるとして,当面は対象としないという御意見も頂いております。

また,次の補償金額の決定に関わりましては,検討課題3-1です。こちらについては,対象機器等について政令で定める方式に関わる論点です。柔軟な運用を可能とする場合には,対象機器の決定と補償金額の決定を一体的に行うのがいいのではないかといった御意見を頂きました。

検討課題3-2です。補償金額等を決定するに当たりまして,当事者の協議をどう考えるか,どのように位置付けるべきかといった問い立てであります。この辺は前回の会議において,ドイツやフランスの状況も共有されました。ドイツは純粋に当事者間で協議を行って解決を図る方式が法律上組み込まれておりますが,仲裁制度がドイツでは確立している状況との対比で見ると,このような方式は日本での導入は難しいだろうという御意見を頂きました。また,当事者の関与に関しては,何らかの形で必要だろうといった御意見や,最終的に法的権限を有する専門機関が決定できるようにすることも選択肢であるという御意見も頂いております。他方で,決定方式としては,現行の仕組み以外には適切な方法は思いつかないといった御意見も頂きました。

8ページですが,補償金額の算定に当たりどのような要素を考慮すべきかでございます。DRMや私的複製の実態,価格,複製機能という御意見を頂いたところでございます。

補償金の支払義務者,これが8ページの中段以降になっております。検討課題4の現在の支払義務者あるいは協力義務者の位置付けについて,特に製造業者等の位置付けについてはどう捉えるべきかといった論点がございます。こちらにつきましては,現在協力義務とされていることに関して,制度を実効あらしめるために何かしらの見直しの必要があるのではないかといった問題提起もあり,この議論がなされております。これについては協力義務としての位置付けを維持する立場と,支払義務者として位置付けるべきではないかという立場の両方の立場から御意見を頂いております。他方で,仮に現在の制度を維持するとした場合,これは五つ目の丸です。例えば,現在の実務運用,すなわち,補償金を上乗せし販売して,購入者から受領した補償金を管理団体に納付するということについて,法令上明記してはどうかといった御意見も頂いております。また,この関係におきましては,サービス提供者,販売業者の扱いをどうするのかといった問題提起も出されました。

それから,10ページに移りまして,補償金の分配等という論点が続きます。検討課題5-1です。元々補償金制度に内在する課題として,分配を受ける権利者の正確な捕捉が困難であることが当然組み込まれている状況の中で,その限界を認識しつつも分配・支出の適切性をどのように確保すべきかといった問いになっております。これにつきましては,実態調査を定期的に行うという観点と,そのような限界も併せまして共通目的事業が制度として組み込まれております。それらの組合せも行いながら分配の適切性を確保すべき旨,御意見を頂いております。

その次の検討課題5-2です。これは録音と録画のそれぞれの管理団体をどう考えるかについてでございます。現在,録画については管理団体は存在しておりません。仮に録画についても補償金制度の対象とする場合についてはどのように考えるか,12ページの上にあります。両者,つまり録音と録画については,補償金は一体的に徴収する。そして管理主体も一元化することが望ましいだろうという御意見を頂いております。

また,共通目的事業につきましては,検討課題6-1です。特に,「クリエーター育成基金」の提案が一つの選択肢として,この小委員会で御議論いただく中で,クリエーター育成基金の精神については補償金制度の共通目的事業において生かしていく方策が適当ではないかといった御意見があり,そうした観点からどのようにそれを生かしていけるのか,このように改善がされ得るかを御議論いただきました。その中で,共通目的委員会という,共通目的事業の使途を決定する委員会の委員構成の見直しや,支出先についてのアイデアなども頂きました。

13ページ,検討課題6-2です。これは補償金制度の最後の検討課題になりますが,共通目的事業の2割と法令上定められているものについて,これを引き上げるべきかとどうかの御議論を頂いております。総じて申し上げますと,2割を明確に法令上引き上げるべきだという立場と,現行の割合は維持しながら,分配の過程において構成団体である権利者団体において各権利者に分配を頂くときに,各会員間での分配において共通目的事業に資する事業への支出を行うこと,そして,その割合を高めることも考え得るだろうという御意見を頂いております。このように,共通目的事業のための支出割合については,その割合を増やしていく観点での御意見を大体頂いたのではないかと思われます。

それから,14ページ以降が補償金制度に代わる代替措置についてです。契約と技術の手法につきましては,先ほど御紹介しました昨年度の審議経過報告にございましたとおり,対価還元モデルとして,どのようなモデルが構築され,どのように有効に機能し得るのかについて推移を見守っていくことが重要だと確認されておりました。

このことを踏まえつつ,果たしてどのような実効的な手段が想定され得るかについて,検討課題7-1で議論されております。一つ目の丸です。特に,市販CD,レンタルCDからの複製について,そこに焦点を当てたクリエーターへの対価還元策の検討を行うことが考え得るのではないかとございました。他方で,放送につきましては,例えば無料放送についてはプライシングインが不可能であることも含めて,現在の契約と技術の手法の提案に関わりましては,現在のビジネスモデルの大幅な見直しは現実的に受け入れ難(がた)いという観点での御意見を頂いております。

検討課題7-2です。これは将来的な姿に関わる論点と考えられますが,契約と技術による対価還元手段により私的録音録画の対価還元が実現されるとした場合に,30条1項の私的録音録画に係る権利制限規定を維持する必要があるかという問いです。これについては,複製の許諾によって対価を徴収している関係にあるので,30条1項の権利制限を認める必要はなくなるだろうといった御意見を頂いております。他方,そもそも契約と技術で全て100%カバーできるものではないとして,30条1項は維持すべきとの観点からの御意見を頂いております。

最後のクリエーター育成基金については,16ページになりますが,検討課題8-1です。こちらについては,この手段についてもより議論すべきという御意見を頂きました。他方,検討課題8-2でございます。この基金の在り方,考え方につきましては,正確な把握が極めて困難だということを捉えて,クリエーター育成に支出することが果たして正当化できるのかどうか。また,配分も極めて難しいのではないかといった観点,それからまた,個人への直接的な資金助成は妥当なのか,合理性を保(たも)てるかといった観点から,慎重にならざるを得ないとする御意見を頂きました。

以上,御意見の状況などを御説明申し上げました。よろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。これより意見交換に移りたいと思います。先ほど申し上げたとおり,事前に追加の御意見を頂いておりますので,各検討課題についての御意見はおおむね出たものと承知しておりますが,更に追加あるいは補足の御意見があればお願いしたいと思います。

それでは,前回と同様三つに分けて御意見を頂戴したいと思います。まず,1の私的録音録画補償金制度の見直しから意見交換を行いまして,その後,2の代替措置についての御意見をお願いしたいと思います。私的録音録画補償金制度については,まず(1)対象機器・記録媒体について,これは資料1の2ページから8ページの中ほどまで,御意見をお願いしたいと思います。検討課題1-1,これは2ページにありますが,これは画面収録に関するものでございます。この点につきましては,前回の会議で紹介がありましたとおり,本日太佐委員から画面収録について御紹介を頂けるとのことでございます。

それでは,まず太佐委員,お願いいたします。資料2でございますね。

【太佐委員】ありがとうございます。JEITAの太佐でございます。このような発表の機会を頂き,御礼(おんれい)申し上げます。

2ページ目を御覧ください。項目として 2点ございます。1点目は,本日宿題として頂戴しておりました「スマートフォンの画面収録機能」についての説明でございます。2点目は,冒頭,御説明があったとおり,資料1について発言していない意見であっても追加をしてほしいと,事務局より事前に要請を受けておりましたので,その検討内容をまとめたものでございます。資料1は,検討課題が15あるようですが,そのうちの8割方が補償金に係るものです。多くが補償金の拡張ありきの課題設定に見えてしまうものですから,JEITAとしてなかなか意見を出しにくい項目になっております。冒頭,主査が「骨太な方向性」という表現を使われておりましたけれども,そういった観点からの意見もJEITAとしては提示したいと考え,この2点目を追加した次第でございます。このような形式を取らせていただくことにつき,事務局そして主査に御了承いただき感謝しております。ありがとうございました。

早速,内容に入ってまいりたいと思います。まず,1点目,「スマートフォンの画面収録機能」についてで,3ページ目になります。これは前回の小委でもポイントは発言させていただきましたが,そもそも,なぜこれが宿題になったのかと言いますと,現在スマートフォンでは動画を収録する機能も含まれているようだと,であるならばスマートフォンも補償金の対象とすべきではないかという御意見があり,そのような御意見の根拠になっているということで,その機能の内容について説明してほしいという流れであったかと思います。

まず,「機能説明」のところでございます。大きく3点ございます。まずは,機能の有無と,その機能をどうやって実現するかについてでございます。この点に関しては,元々機器そのものに,デフォルトでと申しますか,当初から機能があるものとないものがございます。そのような機能を持たない端末であっても,事後に画面収録のためのアプリをインストールすることで,そういった画面録画を行うことが可能になっています。つまり,機器のレベルでは,画面収録機能があるものと,ないものが存在しうるということです。

2点目,「機能の目的」でございます。これについては,この小委員会での議論の対象が私的録音録画でありますので,そういった用途にも使えるだろうと御指摘を受けているわけですが,そもそもの開発意図は,特定の用途を持たせることを目的としていないという意味で,機能として「汎用」であることをここで申し述べたいと思っております。メーカー側あるいは開発者側の説明としては,例えばユーザーが電話の操作やメールの送り方などを実際に動画として画面を撮りそれを誰かに伝えるであるとか,アプリの開発者がどのようにそのアプリを操作するかを説明する動画を撮るであるとか,そういったものを共有することが想定されております。これが2点目の「機能の目的」でございます。

3点目,実際何でも画面収録が可能なのかという制限の有無についてでございます。これは実際にやってみれば分かることではありますが,保護技術がかかったコンテンツの視聴に際し,アプリ側やウェブサイト側からその機能を使えないようにする仕組みが用意されております。つまり,権利者には一定の配慮をもって,この機能が提供されているということでございます。

多少詳しい内容を「技術説明」の欄に書かせていただきました。元々この小委の議論のとっかかりになったのは,iPhoneのiOSの最新のバージョンでこういった動画を収録する機能が追加されました,という紹介からであったと記憶しております。たしかに,iOSのバージョン11では,こういった機能が用意されております。ただ,これはオプションの機能でありますので,それを使うためには,ユーザーは,別途設定をしないといけないということでございます。

Android携帯に関しては,そういった機能をそもそも持っていないものもあれば,持っているものもございます。これはAndroidというOSが元々オープンソースであって,機器メーカーや端末メーカー,通信キャリアの御意向に沿って,その機能を実際にカスタマイズして追加することが一応可能になっています。機器によって当初から実装されているものと実装されていないものがあるのが,Android携帯の現状でございます。

OSのレベルでそういった画面収録の機能がないものにあっても,実際検索していただければ分かりますが,画面録画ができるアプリ,これは通常のアプリとは別の画面収録に特化したアプリですが,そのようなアプリもたしかに存在しております。それをダウンロードすれば使えることになるわけです。

以上まとめますと,画面収録機能はそもそも機器レベルではその機能の実現方法に多くの種類がございます。そして,その機能の目的は私的録音録画に特化したものではなく汎用のものでございます。加えて,画面収録ができないようにするための技術仕様が公開されておりますので,画面録画をしてほしくない権利者の方には,それを止める仕組みが用意されているということです。なお,同ページ右側の図は,OSレベルで機能を有する場合と,後から加える場合の2パターンを形式上表現したものでございます。

もう1点,補足させていただきますが,YouTubeのことがよく言及されます。YouTubeさんはストリーミング形式ですので,そもそも複製されることを想定してはいないかと思います。YouTubeさんに限らずだと思いますが,それぞれの利用規約の中で明示的に「許可されていないダウンロードはしてはなりません」という趣旨の規約がございます。それに反してダウンロードするのは,その時点で規約違反になります。補償金が対象として扱うのは飽くまで適法になされた複製ですので,ここで議論する枠内の話ではないのではないかと考えております。

以上,スマートフォンの画面収録機能が,契約と技術により権利者の意に沿わない録画が行われないようにコントロールされていることを説明させていただきました。

質問等はまとめてかと思いますので,続いて2点目の「今後の議論について」の内容を少し説明させていただきます。15分程度と伺っておりますので,できるだけコンパクトに述べさせていただきたいと思います。

4ページ目にまいります。JEITAの基本的なスタンスです。全般の議論というよりは,ここ2回の小委の議論を背景に書かせていただきました。ここまで,補償金制度を拡張することを前提とした議論に終始しているように見えましたので,そういった補償金制度にこだわらない,より総合的な解決の在り方について議論がなされるべきという見解を持っております。冒頭ございましたとおり,実際に実効性のある「骨太の方向性」を,ということであれば,補償金以外の施策も広く検討されるべきではないかということでございます。

四角囲みのところは昨年度の経過報告からの抜粋です。今回頂いた参考資料に含まれているところもございますし,これに含まれていないページからの記載もございます。実際に「実効性のある(現に権利者にリターンのある)公平で現実的な解決策」を「総合的に探っていくべき」と報告書の中にも書かれており,そういった視点からの議論もしていただきたいという要望でございます。加えて,それとの関連で一律の対価上乗せ等に関する課題が挙げられており,これについても少し言及し,その対価還元の在り方を提言したいということでございます。

ということで,2点,ここではフォーカスをさせていただいております。1点目,対価還元の在り方について。現状,私的録音録画がなされるかどうか分からない,ただその可能性,蓋然性があるということだけで,汎用機器等を補償金の対象にすることには,納得感がなく賛同できないというのは,前回小委でも発言させていただいたとおりでございます。であれば,どうするかという話ですが,現状,私的録音録画の可能性が高いと評されるコンテンツの流通形態において,クリエーターへの実還元が十分でない部分があるということであれば,そこに焦点を当ててその過程でどう対価を回収,還元するかを実効性,公平性,社会的コスト等を考えて検討するべきではないかと考えております。

補償金制度は,御承知のとおり,「事前に間接的にかつ一律に」何らかの対価を回収する仕組みでございます。「クリエーターへの適切な対価還元」がこの小委の目的であるとするならば,「その都度直接的にかつ個別に」という仕組みで対価を回収,還元する方が,よりクリエーターへの対価還元に資するのではないかと考えている次第でございます。

2点目(「一律の対価上乗せ等への対応」)について,その具体的な実現手段として,ここではレンタルCDの例を書いております。レンタルCDを借りてそのユーザーが複製する。そこの実際の不利益が大きいということであれば,その部分にフォーカスをあて,その過程の中で対価を回収し還元する方法があるのではないかということです。このような方法と機器にあまねく補償金を課す方法と,どちらが合理的かについて検討し,社会的理解を得ていく必要があるのではないかということでございます。

次の5ページ,6ページは,そういった視点,すなわち個々の流通形態に着目して個別に議論を深めることが必要ではないかという観点からの議論のための資料です。5ページ目が録音の部分,6ページ目が録画の部分になります。音と映像に分けて,JEITAなりの理解として整理をしてみました。今日ここで詳細を議論することではなくて,今後議論される中でその材料として使っていただければという思いも含めて,JEITA会員企業の方が夏休みの宿題のように非常に時間をかけてまとめた資料ですので,是非活用していただければと思っております。

まず,5ページ目を簡単に説明させていただきます。これは音楽コンテンツの流通形態ごとに対価還元の実情や録音の可能性などについてJEITAなりの情報と意見を整理したものでございます。左の欄は,コンテンツごとの流通形態のタイプをリストしております。上三つがCD,下二つがネットを使った配信でございます。横軸はどういうものを項目にしましたかといいますと,まずは実際に対価を還元する機会があるかないか。結論から申せば,これは理論的にはあるだろうということで全て「○」としてございます。

次の「対価還元の実情」の欄は,音についてのみ設けております。これは平成28年度の小委報告の中で録音の評価について一定の言及がなされておりますので,これにも配慮しつつコメントを付けました。ここの評価に関しては一部議論はあると思いますが,JEITAとして考える意見をそこに書かせていただきました。一部報告書の内容と結論において異なる部分がありますが,それこそ再度評価しその妥当性を検討する箇所かと思っております。

そして,「技術によるコントロール」があるかないか。この欄を見ていただくと,CDについて×をつけてございますが,実際には,SCMSにより孫コピー以降はできないであるとか,一定のコントロールはなされております。ここでは形式上×にさせていただいておりますが,全く技術によるコントロールがなされていないというわけではない点は,言及しておきたいと思います。

最後,「消費者による録音の可能性」の欄です。ここも評価が分かれる部分はあるかもしれませんが,JEITAとしてはこのように考えるという意見として整理させていただいております。ダウンロードの例ですと,実際はダウンロードをした後,複製しようと思えばできるのではないかという御意見があるかもしれません。これは事実上マルチデバイスで使用することができるという契約のもと,技術的なコントロールを施した上で提供していることで考えれば,実際にそこから更に録音物(私的複製物)を作る可能性というより必要性は乏しいのではないかということで,×を付けております。ここはもし個々に議論になるようであれば,そのときにお話させていただきたいと思っております。

以上,まとめでございますが,音の流通経路に関してはいずれの流通形態においても対価還元の機会は存在する。実際に録(と)っているかどうかは事実の問題であり,その評価は分かれるところでありましょうが,実還元が十分でないエリアがあるなら,そこに着目して具体的な議論をするのが合理性に合うのではないか。つまり,そういった各コンテンツの流通形態や複製行為の適正な評価抜きに汎用機器を補償金対象とすることは合理性を欠くのではないかという意見ございます。

6ページ目,録画の方です。ここは現在実施されているアンケートの結果を待っているところでございますから,本日は余り詳しく言及しないようにしたいと思います。左側の流通形態のところ,グループとしては大きくは三つに分かれます。上三つがDVD,BD,ブルーレイですね。下二つがネット配信,真ん中が衛星やケーブルも含めた放送関係でございます。対価還元の機会ですが,やろうと思えばできるだろうということでここでは○にさせていただいています。「技術によるコントロール」の欄ですが,ここはJEITAとして技術的な内容を説明する機会が多いでしょうから,JEITAなりにどういった技術が適用され,どういうコントロールがされているかを整理したものでございます。最後にあるのが「消費者による録画の可能性」の欄です。これも今後個々の議論になる場合には,個別に言及させていただければと思っております。

ここでまとめです。音もそうなのですが,動画のコンテンツには全て何らかの技術によるコントロールが適用されていると理解しております。コンテンツ提供者は多様な流通形態から選択してこれを実際に組み合わせている。余り満足でないということであれば,それを更に選択することも可能です。ということで,JEITAとしては,この領域は技術と契約によるコントロールにより対価還元が可能な領域であると理解しています。

急ぎ足で恐縮ですが,次のページです。これはまた違う観点からの資料でございます。前年度のJEITA資料でお話しした内容と一部重複しますが,これは,実際,補償金を広く導入している国とそうでない国を比較し,コンテンツ市場全体がそれぞれどのようになっているかをまとめた資料でございます。国民一人当たりの年間コンテンツ消費額,それから補償金の支払額を比較して表にしております。

これを見ていただきますと,欧州各国,補償金を多くかけている国は市場そのものが大きく成長しているとは言えないのではないか。一方,アメリカですが(アメリカは一部補償金の仕組みはありますが,実質的に機能しているとは言い難(がた)い状況と認識しております),そちらの方はコンテンツ市場が大きく成長しているということで,補償金だけに依存するよりは,よりクリエーターに適切に対価を還元するための原資となる「コンテンツ市場の成長」に目を向けるということも重要ではないかという視点の提供でございます。

7ページと8ページは,今後「議論を深めるべき課題」についてです。冒頭お話しいただいた資料1に関して何か追加の意見があればということで,JEITA内で意見を募ったものをある程度リストに整理してみたものでございます。冒頭お話ししましたとおり,JEITAとしては,補償金の制度見直しありき,特に拡大の方向での見直しありきという考えには賛同できません。ここでは,「仮に」見直すとしても,という前提で,幾つかリストさせていただきました。

1点目,汎用機等を対象とすることについてです。汎用的な機能があるとして,その機能の目的に,これは冒頭にも御説明しましたとおり,実際に私的録音録画を意図しないものが多く含まれるわけでして,その目的をどう評価するのかでございます。さらに,その他の視点として,その機能を誰が提供しているかという主体の問題がございます。冒頭のスマートフォンが典型例かと思いますが,機器メーカーだけがその機能を提供しているわけではなく,それ以外に多くの当事者が関与するわけです。そういったものをどう評価するのか。補償金の中に取り込もうとすればするほど複雑化するのではないかという懸念がございます。実際,ハードとソフトの組合せやサービスとの組合せを考慮するとなると,多くのステークホルダーの関与が必要であり,この点については最後の方にも言及してございます。そうした「機能の提供主体」が複数関わる場合に,どのように制度を設計するのかという問題提起でございます。

2点目,特に政令指定方式や補償金額の決定の方式に関しては,現状,政令指定方式が採用されておりますが,そこに至った経緯を鑑みますと,これは明確性や法的安定性の観点から,また対応の迅速性という観点から利があるわけです。したがって,ほかの方式を採用するということであれば,その合理的理由は何かという点から慎重に御議論いただきたい。特に,私的録音などを行わない消費者から見ると,財産権の侵害につながりますので,より慎重に御議論いただきたいと思います。

時間を超過しておりますと事務局からありましたので,少し急いでまいります。9ページ目です。これも個々の論点に関しては,小委の議論の中で言及させていただきたいと思いますので,飛ばします。「契約と技術による対価還元」のところです。これも現行の補償金制度を終息させるならその基準はどうあるべきか,どうであれば終息させられるのかについて,議論は全くされていないという点を言及しておきたいと思います。

最後です。この小委で議論されている課題について。1点目は既に申し上げたとおりでございます。コンテンツの流通経路ごとにその内容を評価する形が,クリエーターへの対価還元に資するという意味で重要ではないか。2点目,社会的コストです。特に汎用機への拡大となると,ここ小委の構成メンバーだけの検討では不十分です。CIAJさんが参加されるのはいいことだと思います。それから,最後の点です。これは資料1の最後にも論点として出てきている,30条の見直しについてです。ここでは,30条廃止論というよりは,現実的な形で30条を再設計することの可能性について言及しております。必要あれば,このような論点についても議論の場に出すべきではあろうという点,述べさせていただきます。

すいません。時間を超過してしまいましたが,以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。太佐委員からは画面収録に関する御説明のほかに,対価還元方策についての議論の方向性についても御意見がありました。対価還元方策の全体像につきましては,本日の会議後半に御議論いただくことといたします。

まずは,各手段の各論点に対する委員の御意見の状況について,確認しておきたいと思います。そこでまずは資料1のうち(1)対象機器記録媒体について,検討課題の1-1から3-3,ページ数では2ページから8ページの中ほどまでの検討課題について御意見をお願いいたします。なお,ただいまの画面収録に関する太佐委員の御説明に対して御質問がある場合は,このタイミングで併せてお願いいたします。どうぞ。

【椎名委員】御説明ありがとうございます。画面収録については,私的録音録画は目的としているのではない,技術的にはこうであるという御説明はよく理解できたのですが,実際に無料で配信されているYouTubeをそこで録音録画した場合,これは違法複製に当たるという御説明だったと思います。ただ,見る限り,30条1項の私的複製から除外されている,どの項目にも当たらないような気がしますが,何をもって違法というような……。

【太佐委員】私の理解ですが……。よろしいですか。

【末吉主査】どうぞ。

【太佐委員】そもそもストリーミングですので,複製されることを想定していないページであるということに加え,利用規約でダウンロードしてはいけないと書かれております。利用規約の法的性質をどう見るのかは,実際ここで議論はなされていないのかもしれませんが,その規約に反してそれでも複製をするとなると,これは補償金の性質がそもそも法が許容する「適法な」私的複製によって権利者に生じた不利益を補填するものと考えれば,そこは違法な範疇(はんちゅう)と評価していいのではないかと。つまり,補償金の対象としては,そのような動画サイトからの録音録画を取り上げるのは違うのではないかということでございます。

【末吉主査】どうぞ。

【椎名委員】契約違反であるとは思いますが,それが違法になるところについて著作権法との関係でいうと明確ではないという印象を持ちました。それと,実際にこの機能が違法な複製を助長することもあり得べしということなのですよね。

【太佐委員】助長する意図がないことを,少なくともメーカーの立場からは御説明申し上げたという次第でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。御意見,御質問ありますか。どうぞ。

【高杉委員】椎名委員と重なりますが,利用規約に書き込んだことによって違法になることはないと思います。条文を見ますと,30条1項の3号で著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音録画をその事実を知りながら行う場合が違法なので,その事実を知らなければ違法ではないという整理だと思います。

【末吉主査】はい,ほかにありますか。何かお話がありますか,どうぞ。

【太佐委員】そうすると,この利用契約をどう見るかという,結局その議論になるのかと思っておりますので,その点もし不十分ということでは御議論いただければと思っております。

【末吉主査】ほかにいかがでございましょうか。この点に限らず,8ページの中ほどまでの点でいかがですか。どうぞ。

【世古委員】2ページのマル1,対象機器・記録媒体の範囲についてですが,四角枠のところで,現状として私的録音の対象は専用機器や記録媒体の一部のものに限定されており,実際に私的録音に使用されている機器・記録媒体一体型の録音機器,あるいは汎用機器は対象になっていないとされています。私的複製に使用されているこれらのもののうち,これまでは汎用機器をどうするのかということに議論が集中しているような気がしますが,肝腎の記録媒体一体型の録音専用機器,これについては私的複製の対象とすべきだろうと思いますので,改めて意見として申し述べさせていただきます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。

世古委員の御発言で確認しておきたいですが,もう少し機器の内容を詳しくお話しいただけると有り難いと思ったのですが,皆さん御理解あるかもしれませんが,すいません。

【世古委員】例えば,iPodやウォークマン,商品の名称でいうとそういったものです。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。何か御発言……。

【太佐委員】すいません。8ページの途中までということでございましたので,実際の課題でいうと,例えば課題3-2や3-3の辺りも今発言すべしということでよろしいでしょうか。

【末吉主査】お願いします。

【太佐委員】先ほども少し触れましたけれども,政令指定方式以外に「関係当事者による協議を重視する方式」はどうかという意見が,この資料1ですと検討課題2や3-2や3-3あたりに出てきますが,この点については,JEITAとして具体的に意見を述べていないものですから,言及させてください。こちら側の意見がないかのように見えてしまいますので。

我々としては,基本的に,政令指定方式という慎重な議論を重視する方式が採用されるべきだろうというスタンスでございます。ただ,関係者協議の方式をもし「仮に」採用するということであれば,という前提で発言させていただくと,実際には,権利者,私的録音録画を行う者…典型的には消費者,それから製造業者やサービス業者など一定の協力義務を負う者といった全ての関係者が協議して,全会一致を原則にすべきであろうと思っております。そして定期的に内容を見直す。そういう慎重さが必要なのではないかと。特定の機器やサービスなど,購入したものすべからくに補償金が税金のようにかかってしまう印象を持ちますが,そういったものであるなら,より慎重に決定されるべきだろうということです。

あと,補償金額の算定に当たってDRMの有無を考慮するという御意見がございます。我々JEITAとしては,DRMを付してあるものは基本的には何らかの形で技術と契約によるコントロールが可能だろうと考えておりますので,そもそも補償金額の算定の根拠とすることにはならないのではないかという点も付言させていただきます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【椎名委員】DRMを考慮することは僕が書きました。DRMというのは,DVD型のコピーネバーというものから,ある一定の,例えばワンジェネレーションだったらいいですよというものもあれば,何個までだったらいいですよというものもあれば,何ジェネレーションでもいいですよ,という具合にコントロールが可能なわけです。そうすると,そこで起きる私的複製の実態も変わってくるので,当然ながら要素として可変的に考えていかないと駄目だと考えて,要素としては必要だという意見でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【太佐委員】御意見ありがとうございます。そういった点は我々も承知しております。であれば,それは補償金で手当てするものなのかという問題提起をさせていただいているという理解でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかの皆さんはいかがでございますか。どうぞ。

【奥邨委員】少し今の流れと異なってもよろしいですか。

【末吉主査】どうぞ。

【奥邨委員】ここで今日も含めてお話が出ています,ソフトウェアとハードウェアのセットで録音録画ができる場合に関しての私なりの理解です。今日のような形でOSに取り込まれている場合もある。それからOSにはないけれども,例えばスマートフォンにおいて後でアプリを追加される。いろいろなパターンがあるとするならば,現状の制度の上で考えるのだとすれば,小売に最初に供された時点の録音録画の機能で判断すべきだろうと思います。ハードウェアにそれがその時点に,ハードウェアというか単体,小売に供された状態の商品がOS込みでも何でもいいです。基本的には録音録画ができるのであれば,それはそういう評価です。ただ,その時点でなければそれは当然関係がない。それとは単体でというのは,それらについては対象とする可能性はあり得ることにはなる。それを無理やりハードの方に引っ付けて考えることはできない。ただ,その点は全般について今回対象にするのですかというのは,それはまた汎用機器も含めて別の議論としてあります。分け方としては,小売に供された状態で考えるのが,今の枠組みに乗せて考えるならばそう考えるのが素直なものと今日のお話を伺っていて思いました。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【河村委員】先ほどiPod,ウォークマンという名称が出ました。私は首からウォークマンを下げていましてハードユーザーです。非常に細かい制度設計の議論になっていますが,参考資料で以前の録音に関する調査結果が出ています。自分が過去に購入したCDからの録音についてもカウントされています。私もCDを買います。配信より,ジャケットなどがありパッケージが好きなので買います。しかしながらCDそのものから音楽を聴くことはしません。パッケージとしてはそういう買い方しかできないから仕方なくてCDを買います。聞くためにはウォークマンなどのデバイスに入れなければいけないので複製行為があります。その一方でCDそのものからは聞いていないのです。つまり聴き方が時代とともに変わっているというだけのことです。例えばかつてのLPレコードでも何でもいいです。新しいオーディオセットに買い替えたら,その新しいオーディオで聞くときに「侵害ですね」などとは当然複製していないから言われないわけです。ただ,ウォークマンを買い替えれば,スマートフォンを買い替えれば,同じ人が同じお金を払ったものを同じ耳で聞くために入れ替えなければならない。そのたびに調査で,何回も複製していますねとカウントされる。もうこの際実際本当に損害を与えているのか否かに目を向けなければ,いつまでたっても,複製がゼロではないですね,法的不利益の存在がありますねなどと言われ続けることになります。

もうかつて大昔にこういう場で言ったことで,もう1回言わせていただきたいのは,複製することで損害を与えていることは,複製を一切できなければ損害を与えない,クリエーターが得をするかのような世界になるはずだと思います。私はウォークマンで聞けなかったらCDを買いませんから,そもそも売れなくなる。複製ができないと,クリエーターも損をするのです。この間も「コピーネバー」でテレビ放送をしたら,コンテンツの権利者が大変もうかるかのような御発言もありました。でもそれでは見る機会が減るだけのことであります。実際に損害があるのかを見るべきだと思います。ゼロでないから制度が必要だといっても,制度に対してコストもかかりますので,少し現実を見ていくときが来ていると思います。ですから,もう少し実態に目を向けてから細かい制度設計に入っていくなりしないといけないと思います。このまま制度の作り直しありきの形でいくのは,消費者団体としては反対です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【華頂委員】いつもこうやって反論するのですが,今の河村委員の意見に「コピーネバー」という言葉が今出ました。仮にテレビ放送が「コピーネバー」になると,リアルタイムで見られなかった方々がそのコンテンツを見たいという欲求があったとして,我々コンテンツホルダーは次のビジネスにつなげられると。別に損しているわけではないです。次のビジネスが展開できるということです。映画というのはワンソース・マルチユースで,そうやってあらゆる局面で収益を最大化するというビジネスをやっています。そういうビジネスにつながっていくということです。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【河村委員】そのことについてもうこれ以上踏み込みません。私の意見は違いますということを申し上げておきます。これはこの資料が録音のことを言っているのか,録画のことを言っているのか本当によく分からないのですが,何か全体には両方のことを全てカバーしている資料でしょうか。

【末吉主査】のつもりですが,どこか御指摘……。

【河村委員】そうだとすると,しつこくて申し訳ありません。録音と録画はコンテンツや提供のされ方や位置付けにおいて全く種類が違うものなので,市民といたしましては一緒にしないでいただきたいと。というのは,録画の中で補償金の対象として残っているものはテレビ放送だけともう確認済みです。音楽を聴くことと,無料放送を見ることは全然違う種類のことです。放送法など見ましても公共性などのことがきちんと書かれている。先般放送法の改正という話が起こったときには大反対の意見を主婦連から出しました。無料放送は重要な情報インフラです。無料放送とはそういうものです。それを享受することは市民の権利と言っていいと思います。音楽と,放送法で位置付けられているような無料放送についてのコンテンツの話と一緒にしないでいただきたいです。既にテレビ放送にはDRMがかかっていてその不利益・不便さは全国民が被っております。そこの辺をきちんと公平に見た上でやらないと,これは純粋に著作権法の観点から見るだけではなくて,市民の持つ権利の侵害という面からも見ていただかないと,非常に偏ったものになります。

繰り返しますが,何回か前に言いました。複雑な仕組みをかけない,つまりDRMをかけ,スクランブルをし,限定受信機能を付け足すなど,そういうことが一切ないきれいな情報インフラとしての無料放送が実現されたあかつきには,透明性の高い,補償金制度に類するような対価の還元制度があってもいいと考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。かなり具体的なところにお話が及びましたので,範囲を広げさせていただきます。各お立場はありますが,実態に即して制度を見直していきたいという方向では大体同じように思います。ただ,お立場が違うということではないかと思います。

資料1の(2)の補償金の支払義務者から補償金制度の最後の論点,(4)共通目的事業まで,つまり検討課題の4番から6-2番まで,8ページの中ほどから13ページまで,ここまで通していろいろ御議論を更に深めていただきたい。補足いただくことをおっしゃっていただきたいと思います。いかがでございますか。どうぞ。

【椎名委員】戻ってしまうのですが,政令による指定のことです。現行の政令による指定の方式を維持すべきであるという御意見に対しては,ここに現れてきていないのですが,現行の政令に指定の仕組みは具体的なある一部の技術を特定して,それに合致するもののみ指定することになっています。実際,実態とはかなり乖離(かいり)していることから,そもそも政令指定方式は機能しなくなっているという背景があります。だから,現行のかたちを維持するというのはいいですが,そうだと全く機能しないということなので,その点だけ一言。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【太佐委員】関連するので一言申し述べたいと思います。冒頭から説明しているとおり,私的録画を行わない市民からすると,この機器を買えばすべからく補償金が課されるという世界になりますので,財産権を侵害するおそれが生じる状況になるものと考えております。明確性という観点からすれば,技術的に特定し表現することはむしろ当然なのではないかというのが,我々JEITAの意見でございます。ここは対立すると言ってしまえばそれまでですが,それぐらいの仕組みが必要だろうと考えている次第です。

【末吉主査】どうぞ。

【松田委員】政令指定であるかないかと,今の私的録音録画をしないユーザーとの関係は,政令指定をしても,法令で規程を作っても,全く同じ問題が起こるわけです。ですから,そのお答えは少しもう一度検討すべきだと思います。それは何かと言うと,政令指定した方が機器メーカー,メディアメーカーにとって公平になるかどうか。ないしは法律で定めて政令指定しない方が公平であるかと。この視点のみだろうと私は考えます。

【末吉主査】ありがとうございました。どうぞ。

【華頂委員】いろいろルール,議論,御意見ありますが,今そこの部分に松田先生も言及されました。30条2項が別になくなったわけではないこの現状においては,その都度適宜適正に対象機器を政令指定していくという,非常にシンプルなポイントにこの議論は精練されるのではないかと思います。これは意見です。

マイクを頂いたので,太佐委員の資料です。スマートフォンの画面収録機能について3ページです。この一番下に赤いラインで白抜きの文字があります。これは私,非常に大好きな言葉です。「技術と契約により権利者の意に沿わない録画が行われないようコントロールされている」と。私的録画といいますと放送側の録画になりますので,では放送がこのようにコントロールされているのかを,まず太佐委員に質問したいと思います。

【末吉主査】いかがですか。

【太佐委員】そういう意味では,資料的には6ページの話になるのだろうと思います。どの放送についてどの流通経路が選ばれるのかを議論していくところです。念頭に置いていらっしゃるのは,無料のデジタル放送の領域でしょうか。この領域については,無料ですので対価還元の機会はなかろう,コントロールもされていないだろうという御意見かと思います。

それこそ河村委員が御発言されたとおり,日本の放送というのは世界で唯一と言っていいほど全ての放送に何らかのプロテクトがかかっている現状にあって,この流通経路を使われている。実際に全く対価還元の機会がないのかというところは,多分もうずっと議論されているところでしょうけれど,大もとの放送契約のところで,対価を得る手段として何らかの手当てがされているのではないかと。実際に何らかの利益があるから,その無料の放送に乗せるということもあるのではないかと我々は思っております。これはJEITAというよりは一視聴者としての意見となるかもしれません。

ですので,全くコントロールされていない現状ではないという我々の理解は変わりません。実際に対価還元機会を得ようと思えばできるところに関しては,我々のそのスタンスは変わっておりません。余りかみ合ってない議論かもしれませんが。

【末吉主査】どうぞ。

【松田委員】無料放送が,何らかの対価を放送事業者ないしはそのコンテンツの著作権者に与えていることは間違いないと私も思います。その点は全く異論はありません。恐らく委員において一人も異論はないところでしょう。通常は,民放の場合においては,それは広告の対価という形で収受していることになります。しかし,この対価は,そのコンテンツが私的使用のために複製されることの30条の適用を受ける複製についてクリエーターに対する還元ができているかどうかという視点はないでしょう。

【末吉主査】ありがとうございます。もう1回いきますか。どうぞ。

【華頂委員】今録画の対象になる放送,全て「ダビング10」ということになっています。これは我々が特に希望したわけでも何でもなく,そういう意味では意に沿わないDRMといっても意に沿わない形で放送されていると思っております。

【末吉主査】どうぞ。

【大渕主査代理】支払義務者の関係で,太佐委員が先ほど御説明を省略されたところです。資料2の8ページに,緑色で「補償金の支払義務者・協力義務者」と書いてあるところの最初のポツのところです。私的録音録画の行為主体(消費者)とメーカー等の位置付けとして,(注)として「製造者が共同不法行為でない認識VSドイツをどう整理するのか」は,これは恐らくドイツでは共同不法行為と考えているが,製造者,JEITAさんはそうは考えていないという御趣旨かと思います。このような理解でよろしいですか。

【太佐委員】そういう理解でございます。実はこの辺りは,明確に我々も全て調べ切れているわけではないということで,こういう脚注のような形にさせていただきました。メーカー等を支払義務者にすべきであるという議論がございますが,ドイツと同じようにということであれば,少し前提が違うのではないかという問題提起と御理解いただければと思います。

【大渕主査代理】JEITAさんもお認めになられるとおり,製造者が共同不法行為であるというのがドイツの立場でございます。この点がドイツの補償金制度の出発点となっております。メーカーも共同侵害者だということを前提にして,それは皆にとってハッピーかというとそうではないので,適法にしたということで,これは前々回ぐらいに御説明したドイツは禁止権,排他権を押さえ込んだという話であります。

要するに,我々の法律としても,30条がない状態が出発点なわけです。それだとユーザーは責任を負ってしまうし,ユーザーの方は機器がなければ録音や録画ができないという意味では,メーカーも全く無関係というわけにはいかないから共同責任を負うというのはドイツと同じ状態です。それはアンハッピーなのでそれをやめて,まずはそうなってしまうと差止めを食らってしまいますので,それは困るというのが権利制限の一番の基本だと思います。差止めはしません。そうすると残るのは金銭請求ですが,日本は早いうちから30条で非常に気前よく全部白にしてしまっているので表面化しておりません。30条がなければ,下手すると差止めを食らってしまうし,そうでなくても金銭賠償を払う前提なものであります。ここはゼロが出発点というわけではなくて,差止めはされないというのは30条があるが故にそうなります。

これも前から申し上げているとおり,日本は補償金のある権利制限が少ないので,権利制限すると払わなくて当然と思われている面がなくはない。ドイツの条文などを見ると,むしろ補償金付きの権利制限の方が多いぐらいです。ドイツでも,排他権,禁止権だけを押さえ込んで金銭請求はするのが第1段階といえます。第2段階が金銭請求までもしないという,日本で言えば引用のようなものだといえます。前々から気になっていますが,メーカーはそのような意味では,30条がなければそもそも責任を負い得る立場にあるということが出発点となります。

そうなると,前回申し上げたとおり,実際の複製者,支払のところは,購入者になったりと,いろいろ複雑になっていますが,基本はそれにつき協力義務があります。本当は一番ストレートな補償金制度のルーツからすると,ドイツやフランスのように,金銭についてはメーカーだけにかけて,差止請求権は私人もメーカーも全部なしにするというのが自然といえます。日本は私人に対する金銭請求権は残していても,実際上はそれを協力義務としているのですが,ドイツは私人に対する方はもうやめてしまってメーカーだけにしており,むしろこちらの方がすっきりしているくらいです。実はこれが一番幸せですが,日本の現行制度では,私人は金銭支払義務を理論的には負うが実際には払わないというやや中途半端な形になっています。むしろ私人の方はなしにしてメーカーだけ残すのがドイツの形だと思います。そのようなことについて,日本の現行制度はやや中途半端な形になっているが,基本線はさほどは異なっていないと思います。

何を申し上げたいかと言うと,私も懸念していますが,これをどんどん進めていくと契約プラス技術で今はもう30条は要らないという話になっていきます。それは恐らく皆にとって非常に不幸な状態です。他方で,30条を残すということになったら,先ほどのようなことをする必要があるのであって,そのような点からは支払の制度を作るからには,また同じように協力義務と書くと,法律上権利は請求できないとなってしまったら大変なことになります。ここのところは,きちんと支払義務者として明確化することが一番よいのではないかと思っています。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【松田委員】私も大渕先生と結論的に同じ意見でございます。他国において,機器メーカー等がこれら制度がない場合における著作権の侵害になるかどうか。共同不法行為者になるかどうかという議論はせずに,日本は30条を維持して,そして言ってみれば私的に録音録画することの一定の法的地位を与えながらそれを解決しようとした。このことの立法の経緯を是非むしろ尊重してほしいと思います。それで,著作権法の中に機器メーカー等に関する直接請求権,義務を定めれば,その前提の民事法制全体の議論を得ずとも請求権としては法定できると,私は考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかに,どうぞ。

【太佐委員】何度も申し訳ございません。30条との関係について盛んに話が出てまいりました。それもこの後の論点の一つなのかなと思っておりますけれども,メーカー等を支払義務者として位置付けることについては,昨年の経過報告でも整理されているかと思いますが,その正当化根拠はないと基本的に考えております。その30条の範囲が広いからということが議論の前提にあるようですが,これは条文として自由だという世界と,現実に自由かという世界とはイコールではないと認識しております。

であるとするならば,30条はこれ自身をなくすことにはつながらないものの,現実的な形で設計をし直すことは議論から排除はされていないと考えております。本来的な私的録音録画制度の趣旨に鑑みれば,メーカーが当然に支払義務者となるべきであるという帰結は,首肯し難(がた)いロジックと考えております。ここで結論を出そうということではございませんが。

【末吉主査】分かりました。どうぞ。

【華頂委員】ここにいらっしゃる数人の方も,この議論のもう10年以上前当初からこの席についていると思います。振り返って考えてみると,最初私が初めてこの席に着いたときには,iPodのような汎用機器,この取扱いをどうするかとたしか議論が始まったと記憶しております。これは前にも申し上げました。それがなぜかそもそも論をやろうという話になって,ここまできているのではないかと思います。

今30条の話が出ましたが,ここまで本当に来たら,大渕先生はそういう議論は不幸だとおっしゃいますが,30条自体をもっと深掘りする,あるいは30条を御破算にして1回一からリセットしてやろうということになる。それが究極のそもそも論です。私はそう思います。

【末吉主査】どうぞ。

【河村委員】何か議論がスタックしてくるとすぐに「では,30条」という話になるといつも思います。私は先ほど太佐委員がおっしゃったことと同じことを申し上げたいです。

法律で許されている自由の範囲が広いことと,現実にその範囲の自由を消費者が行使しまくっているとか,損害を与えているということは違うということです。また,その自由の範囲は今でも権利者さんによって自在に狭められています。マルチデバイスも30条ではないですねといっているのはそういうことです。消費者は,権利者側の好きなように狭められてしまう,狭めることについて権利者側は禁止されていないですから。DRMを放送にかけることでも自分たちが決めたわけではないとおっしゃっていますが,かけたいという強い要望があったからそういう形となったのです。消費者側は,法律で自由だとされている範囲が広いかもしれませんが,権利者さんやいろいろな都合で幾らでも行使できる範囲は狭くなっていきます。

では,「補償金を払いたくないというなら30条をなくしませんか,なくしましょうか」というのは,全く理屈としても私は理解することができません。補償金というのは,そもそも補償金を払わなければいけないほどの損害を与えているかという程度の問題だと思います。自由がある以上は補償金だという理屈にいつからなったのかがよく分かりません。

補償金が入ってきたのは,デジタルの録音録画機が出てきたときです。その頃はテレビにDRMがかかっていませんし,孫コピーも全部全く自由なデジタルコピーがいっぱいできました。音楽に関しても,デジタルのメディアの中にコピーして,それをたくさん所有するような社会的な風潮もありました。

全く今違います。音楽はそれを聴くために仕方なく複製行為をしているというケースがほとんどです。テレビに関しては,もう1回しつこく言いますが限定受信,コンディショナルアクセスやコピー制御やメッセージ機能などが,情報インフラのような公益的なものといわれている無料放送にそれら全部がかけられていて,全テレビ視聴者が権利者さんのためにそれらの制限に縛られています。そのような条件の下で消費者側は自由はそんなに行使できていないしする風潮もない。つまり,程度としてはもう既に補償金を払うような程度の複製ではないと思います。

著作権法に30条が存在することから考えると,複製がゼロにならない限り払わなければいけない理屈はないと思います。もし,深掘りして30条とおっしゃるのであれば,著作権法の解釈の仕方がとても私は偏っているように感じます。もう少し違う立場の著作権の解釈をなさっている方も呼ぶなど,委員にするなどしないと,私は素人ですからそれが当たり前なんだと言われているように感じてしまいます。いろいろ著作権の学習会などに行きますと違う考え方の方がたくさんいらっしゃいます。そういう意味でも,本当に深掘りするとおっしゃるなら,全国民的議論も踏まえてそれをなさったらいいと思います。そのときにはいろいろな立場のいろいろな学説を支持する方を呼んでいただきたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【椎名委員】話があちらに行ったりこちらに行ったりしているので,まず今の30条について僕の意見を言います。

基本的に,この話は30条1項があって,30条2項の補償金制度が機能していない,対価が還元されていないことを出発点にしているわけです。対価の還元の方策はどういうものがありますかということで,実際どういう対価が還元されているのですかという検証を踏まえて,例えば補償金制度による解決,あるいは契約と技術による解決とやってきている。

基本的に契約と技術による解決をすると言うならば,30条1項があったらライセンス契約などできないわけです。そういう方に腹を決めて向かうのなら,30条1項はなくして,大渕先生のおっしゃる不幸な世界だとは思いますが,これは僕ら権利者もなくせという主張をしたことは1回もありません。だけど,契約と技術による解決に向かうのだったら,30条1項をなくして,契約と技術での対価の還元を奨励していく。それがなされていないものは全て違法なものの世界になっていく。それだったらそれで権利者も腹を決めますよ。そういう提案が大勢を占めるのだったら,そういう方向でいいと思います。補償金制度には賛成できない,30条をいじることは許さないというのは,これは議論の出発点を飛び越えてしまっていて,お話にならないという気がいたします。

それから,支払義務者のことは僕も何回か発言しているので,重ねてかぶせてしまって恐縮ですが,汎用機の問題,それから返還請求の問題など,そういったあらかたの問題が,メーカー等の複製手段の提供に着目するという立場に仮に立つとすれば,全て解決するとは言わないですが,かなりの部分が咀嚼(そしゃく)できるようになっていきます。そのことからも,大渕先生もおっしゃったし,松田先生もおっしゃいましたが,この際,複製手段の提供者を支払義務者にするという選択肢を大いに検討する価値があると思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【松田委員】私の名前が出ましたので。権利者の方と30条の根本に返って考えてくれと。それから,消費者団体は,特にテレビの状況においてゼロでないならば私的録音録画補償金制度を機能させることは行き過ぎではないか,実態を見ろとこういう意見が相互出たところです。

30条1項をなくすことは全体として不幸になります。これはやめましょう。そして,そういうことを避けて制度を作ろうとしたのが,暫定的ではあるでしょうが,参考資料の3月5日の報告書になっているだろうと思います。そして,ゼロにならなければ課金するぞということを決してこれでは言っておりません。立法事実としては廃止をするほどに変更された状況があるとまでは言えないのが,この段階での実態調査を踏まえたまとめであると私は理解しております。

ですから,ゼロにならなければ課金するという御意見はどこにもないのではないかと思います。いかがでしょうか。その点の辺りで制度を具体的に検討,進行することを総務にお考えくださることを私としては望みます。

【末吉主査】ありがとうございます。今おまとめいただいたような感じがいたします。いろいろな御意見をありがとうございました。もう既に出ている御意見の補充もあったかと思います。大体伺っておりまして,松田委員のおっしゃるとおりだと思います。

もう少し具体的な制度の中身まで是非今年度は進みたいと思うので,更に先に進ませていただきます。太佐委員が御指摘されていた代替措置の論点がまだ残っております。これは検討課題の7-1,それから8-2まで14ページ以降でございます。特にクリエーター育成基金につきまして具体的な御提案や,もしかしたら反対といういろいろなコメントが既に来ていますので,補充を頂く方がおられましたら是非御発言を頂きたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【太佐委員】先ほどの松田委員の御発言からの流れです。おっしゃるとおり,前年度の報告書では,正確な表現は忘れてしまいましたが,補償金制度の廃止はしないという方向のコメントはされている。ただ,拡張という方向での議論も結論付けられていないと理解しております。

そうした場合に,我々の今回の資料で,論点・視点の一つとしてお話ししたのは,こういうそれぞれのコンテンツに様々な流通形態があり,それぞれについてどの部分の対価還元が不十分なのかに着目し,そこでその不十分さを補うためにどういう施策が適切なのかを考える,ということです。補償金なのか,ライセンスなのか。それこそライセンスも契約と技術による対価還元の一つではあるかと思いますが,そういった個々の実態に応じた議論をしてもいいのではないかということです。

ということで,今回の意見は,代替措置というかはともかく,そういった視点での議論が必要ではないかという提言です。プライスインしている,していないという議論もございましたが,機会があるのであれば,そこで何らかの対価を回収し還元するという視点も必要なのではないかと今回申し上げた旨,繰り返させていただきます。

【末吉主査】ありがとうございます。繰り返しになると思いますが,今の太佐委員の御指摘は,御説明いただいた資料2の例えば5ページ,あるいは6ページなどで対価を回収する機会があると。

【太佐委員】はい。

【末吉主査】そういうところに着目して具体的な制度設計は考えられないかと。

【太佐委員】そうです。

【末吉主査】おおよそそのような御趣旨という理解でよろしゅうございますか。

【太佐委員】それで結構でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。この点につきましてはどなたか御意見ございますか。どうぞ。

【大渕主査代理】また繰り返しと思われるかもしれませんが,ここが30条1項の一番重要なところです。対価の還元と言えば,別に30条1項をなしにしてもそのような意味では権利者の方はそちらの方がハッピーなのかもしれません。対価の還元と言えば30条1項を全部なしにして,全部1個1個課金していけば一番多く取れるとなります。しかし,それが我々にとって幸せな状態かというと,恐らくそれを進めていくと30条1項は全部なしで,いちいち我々が日々何を見たか課金を通じて把握されることになるという,非常に洗いざらいプライバシーがなくなるような状態,プライバシー侵害が発生します。そのようなものを避ける意味もあって,ドイツ人が悩みに悩んでほかの形で対価の還元を図るというのがこの制度であります。

言うのを忘れましたが,ドイツの場合,最初から放っておけば違法になるところを補償金と組み合わせて初めて,幅広の日本の30条に当たるようなものをやりました。日本は,何ゆえか,やや先走って30条2項の下支えなしで,最初から出口を広くしてしまいました。その辺りは歴史的に加戸先生が頑張りすぎた,早まり過ぎただけで,本来はドイツのような,フランスもそうですが,きちんと下支えを付けた上で,30条1項的なものを認めるのが筋なので,そこを崩すと,私も消費者の1人ですが,私的複製者にとっていろいろな意味で非常に不幸なことになります。そこを押さえないと,契約と技術でやるのはいいですが,それを進めていくと30条1項廃止論になってしまいます。そこのところはきちんとピン止めをしないと全ての議論がめちゃくちゃになってしまうのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【太佐委員】契約と技術で手当てされるので,30条1項は全て廃止すべきというスタンスは全く取っておりません。その点は誤解のなきようにいただきたいと思っております。

そもそもここの小委で議論されているのは,従来ある著作権管理団体の皆様が関与されている音楽や映像のコンテンツ,それについて30条の果たす役割は何かというところだと思います。そういう意味での30条を現実的な形で設計し直すことはあり得るだろうというコメントです。30条1項を全て廃止すべしという結論につながるような意見は申し述べているつもりはございません。その点,繰り返させていただきたいと思います。

【末吉主査】はい。ほかにいかがですか。どうぞ。

【世古委員】今の点でございますが,太佐委員の資料の5ページで,対価の還元機会はCDであれば消費者が購入時,CDレンタル等であれば貸出時にあるということですが,著作権法は何も30条だけでできているわけではなくて,著作物の利用者は利用形態に応じてそれぞれ権利者に支分権のライセンスを受け,使用料を支払って適正に音楽コンテンツビジネスを行っているわけです。それぞれの商品の価値やコスト,コンテンツの価格を考えながら,著作物の使用料を権利者にお支払いいただくことで成り立っているわけです。

ですので,CDを製作するレコード会社さん,あるいはレンタルCDを行っているレンタル店さん,ダウンロードあるいはストリーミングの配信を行っている音楽配信事業者さんは,コンテンツを消費者の手元に届けるために,それぞれが必要とされる著作権法上発生する権利をクリアしているわけです。自分たちの行うビジネスについては何ら不正なものはないという形に権利処理しているわけです。

そこから先,消費者の手元に届いてからの消費者の複製行為については,コンテンツの配信事業者さんや製造事業者さんは責任を持っていません。それはなぜかと言えば,30条1項で消費者は私的複製が自由利用できるからです。コンテンツ提供者側には消費者が複製する権利を処理する必要はないという前提があります。そこから先の消費者が行う複製についてどうやって処理をしていくのかというときに,まず考えられるのは,購入時等に消費者が複製をする場合について,その都度ライセンスでもって購入者が処理をしていく方法しか本来はないはずです。

それでは家庭内で行われる複製そのものは把握できない,そういったことを把握するためのコストもかかるし現実性にかけることで,30条1項で私的使用目的の複製については権利処理の必要はないということになっているわけです。そして,その法的な不利益を補償金でカバーしようということです。契約で権利者へ対価還元をしようというのであれば,消費者に私的複製でも複製の権利処理をしないといけない義務がないとならない。販売の際に対価還元の機会があるといっても,消費者は自由利用できるのであれば,わざわざ対価を払うことはありません。ですので,前提として30条1項があるかないかという話をどう考えるかということだと思います。還元機会が購入時にあるというだけでは,その後の消費者が行う私的複製の補償金をどうしていくかの議論はできないのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。太佐委員の御説明も世古委員の御説明も大変よく分かりました。意見の対立があるところですが,かなり具体的なお話をしていただいているようなので,話を先に進めます。

本当であれば論点の1番から8番まであって,もう少し整理整頓できるとよかったのですが,基本的な対立構造は余り変わらないような感じがします。まとめを省きまして,一通り各論点につきまして1番から8番まで考え方の整理を行ってまいりました。大体書き連ねられていることに各委員の本日の発言を足していくと一定の一致できるところもあります。ただ,対立の点が残っていると思います。

残りの時間でございますが,これまでの御意見を踏まえて,対価還元手段についてもう少し現実的あるいは実効的な手段という観点から,対価還元手段の全体像につきまして,御意見,御議論を頂きたいと思います。その際には資料1の1ページ目の囲みの中,ここに先ほど河村委員も言われたところですが,購入者にとって受け入れやすい対価還元手段であることが一つ目の丸,汎用機器の問題点につきましては二つ目の丸,音源の違いによってなじみやすさも違うのではないかという点も三つ目の丸で指摘されております。あるいは本日は太佐委員より,録音については音楽配信以外の流通形態に焦点を当てて具体的な議論をすべきではないかなどの御意見を既に頂いております。それらの御意見も参考にしつつ,更に皆様御議論があればどうぞ。いかがでしょうか。

どうぞ。

【椎名委員】購入者の受入れやすさという点に関して,去年の議論の中で出てきた実態調査結果,先ほど御紹介された中にはありませんでした。参考資料の10ページにございます「補償金を支払うことは必要だとお考えか」に「はい」と答えられた方々が65.3%いました。これはたしか小委員会の議事録にも残っていると思います。ずっと前も全く同じ調査をしたことがあって,それと比べると増えている,それもかなり増えているということが数字としてあったと思います。これはもう,いま身近に複製手段が昔と比べ物にならないほどたくさんあることを前提に,その中にある人たちが補償金を説明されたときに,それをある種肯定的に考えるという土壌ができあがっているものと考えてもいいのではないかと思います。

ただ,各論の中で指摘させていただきましたが,団体と団体との話合いによっていろいろなお金が動いていくというよりは,もっとユーザー,購入者が肌身に分かるように,ここでこの機器を買ったときに幾らの補償金を私は負担しているのかと明確に分かるような,なぜそのようなものが必要なのかについて,きちんと説明をしていく形での制度づくりをしていかなければいけないのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【太佐委員】何度も申し訳ございません。昨年の実態調査を踏まえた参考資料についての言及がありましたので,今椎名委員が御指摘いただいた点にも少し関係するのかと思います。

これはそもそも質問の内容,例えば典型的には報告書の3ページの図表2の質問などがそうだと思いますが,「過去1年,CDやラジオ,テレビ云々(うんぬん),録音,コピー,ダウンロード,アップロードしたか」という比較的広い言い方で複製機会を尋ねる問い方をしています。この中には既に契約等で処理されているダウンロードも含んではいるとは思いますが,その辺り,峻別(しゅんべつ)された上でデータが読み取れるのかというと,今のところそうではないのではないか。そこは昨年度の時点できちんと言えと言われればそれまでですが,そういった広い解釈ができるアンケートに答える消費者の方の視点に立った場合に,現在の補償金が射程として想定していない複製行為もこの回答の中には含まれてしまっているのではないかという点は指摘させていただきたいとは思います。

【末吉主査】ありがとうございます。念のためですが,このデータについての御反論も随分ございましたので,それは御承知ですか。

【太佐委員】私,委員としては本年度からですが,それは承知しております。口幅ったいことを申し上げて申し訳ございません。

【末吉主査】せっかく太佐委員にマイクを持っていただいているので,私から一つ確認です。クリエーターの育成基金に関して,お説を持っておられるようです。何かこの場で特に御意見をおっしゃる必要があれば,更にもう少し付け加えるところがあればお願いします。

【太佐委員】そうですね。ここは,まだJEITA内部でも議論がございます。原資をどうするのかという部分が一番大きいのかと思いますが,現行の補償金の延長で考えるのは同じ議論になってしまうところでどうかという点,あとは実際にクリエーターへの対価還元といったときにどうしても間接的な形にならざるを得ないので,個々のクリエーターに対してはどういう還元がされるかという点など,いろいろと考えるべきことがございます。そこまで踏まえた設計をしないといけないとなると,どうすればいいのか悩ましいと考えているというのが現状でございます。明確な解はないといいますか,現在も検討中,考慮中という状況でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【小寺委員】クリエーター育成基金に関しまして,アイデアを出したのは私どもの団体でございます。これまでの委員会の中でも折に触れ,主査が育成基金を考えるならどうしたらいいかと度々水を向けていただいております。私どもだけの知識でこのクリエーター育成基金なる制度,システムの頭から尻尾まで全て考案できるわけではございません。やはり,皆様方の御協力がないと制度をもし仮に立ち上げるとしたら設計がうまくいかないだろうと。権利者団体の皆様も若いクリエーターに対して育成基金を出したらどうかに関して,殊更には反対されることもないのではないかと私は把握しております。一度架空でも構いません。このような基金を例えば設定するとしたら原資はどうするのか,それから集金システム,分配,事務局の構造を皆様と一緒にアイデア出しを一度してもいいのではないかと。そうしないと,これを検討したとはなかなかまとめにも書けないのではないかという気がいたします。ただ,今後の議論のスケジュール等を考えますと,録画に関してのアンケート調査がされる予定になっております。その調査が出てくれば当然その調査を元にしてその実質的な実態等を踏まえて,どのように制度設計をしていくのかという話にどうしてもなってしまいます。この検討のタイミングについては主査にお任せをしたいと考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【椎名委員】クリエーター育成基金に関しての検討は,去年の議論の中で一通りはやったという気がしています。その後,小寺委員から「全額回したらどうか」というお話もあったわけです。基本的にそこで全額なのか,1割なのか,2割なのか。基本的に権利者の意志なのではないかと申し上げます。

だとするならば,現状ある共通目的基金と非常に似通ったものになる。それは現状2割と法定されていますが,それをどう考えるのかということで,恐らくは制度の全体像の中で議論をしていく話ではないかと思います。その議論がされるときに提起したいこととしては,クリエーター育成基金といったときに「あなた,クリエーターですか。では,お金あげます」ということをどう管理するのかです。例えば,顕彰制度やあるいは留学のためのスカラシップとか,そういったことがあると思います。それは,補償金の管理主体だけでマンパワーとして一体できることなのだろうかということが恐らく出てくると思います。

原資をどこに見るかというような話が出ましたが,その運用を一体どこがやるのだろうということも,恐らくは議論の中できちんとしていかなければならないのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【大渕主査代理】このクリエーター育成基金について私は最初から余りよく分からないのですが,クリエーター育成基金を作ったらよいというアイデア自体は分かります。しかし,ここでやっている議論自体が元々対価還元手段をどうするのかということです。そうであれば,補償金でやるのか契約と技術かは,先ほど言った意味では私は30条の方がいいとは思います。アイデアとしては分かるのですが,これは最初から非常に違和感があります。当てはめるとしたら現在ある共通目的の中の一つの趣旨としてはあり得ます。それは,むしろどちらかというと,対価還元できたものを直接分配せずにクリエーター全員のための共通利益になるようなもののために,その原資に回すという全く別の話です。これを最初から三つの代替手段として並べるのには違和感があります。これが入っているためにこの議論が全体的に,基本はきちんとクリエーターにリターンが現実的に行くという話が非常に分かりにくくなっています。ここは整理した方がよい。

その集まった原資のうちの一部をここに回すのは,リターンを直接得ずに間接的にそのような形でいいという,飽くまでリターンがきちんといったのを自分でキャッシュ等でもらうのか,そうでないかという話です。この点を整理しないと議論が分からないまま進んでしまうと思います。

【末吉主査】ありがとうございました。どうぞ。

【龍村委員】私も同じような印象で,このクリエーター支援資金という考え方は,ここで議論されている問題とは別物ではないかと。むしろ,文化芸術振興政策の中の一部として位置付けられるものであって,アーツカウンシル制度などの周辺政策を含めた文化芸術振興政策全体の中で考える問題ではないかという印象があります。

それと,前に戻りますが,より実態を踏まえた柔軟な運用を可能とする制度という視点は非常に重要な課題だと思います。一番ネックになっているのは,対象機器が政令指定になっている,そういう部分が大きいのではないか。5ページに出ておりますが,「政令改正で閣議決定」という重いプロセスを経なければならないところがネックになるのではないか。

その意味では,もちろん政令に委任されているので,政令で大きな枠組みを決めることになりますが,もう少し委任立法の仕組みを柔構造にして,より具体的な指定は規則,あるいは告示などに再委任していくといいましょうか,より機動性のある指定の仕組みにしていくという方向であれば,現行の枠組みを使ってそのまま転用できるのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。お時間の関係で意見交換はこのくらいにさせていただきたいと思います。

本日頂きました御意見を踏まえまして,現実的かつ実効的な対価還元手段の在り方につきまして,更に追加の御意見がある委員におかれては,どうか事務局までお寄せいただきたいと思います。事務局におかれては,各委員に対して意見提出のための様式をまた送付いただきまして,意見を頂くように御提案くださいませ。

先ほど小寺委員からもございましたが,次回は私的録画に関する実態調査結果の中間報告,まだ最終ではないようです,中間報告ができるようなので,それを頂きまして,録画の実態についても確認をしながら,具体的な制度設計の議論の集約に向けて検討を深めたいと思います。

主査といたしましても,現実的かつ実効的な制度は,補償金にしましても,クリエーター育成基金にしましても,大変難しいものであるとは重々認識しております。であればこそ,皆様のお知恵を是非拝借したいと思っております。

その他御質問,特段ございませんか。時間になりましたね。本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】次回の開催につきましては,期日確定次第,御連絡をさせていただきます。また,先ほど主査より御指示のございました御意見の御提出も,様式等につきましてはまた別途御連絡させていただきたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。

【末吉主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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