文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第1回)

日時:平成30年6月20日(水)
15:30~17:00
場所:文部科学省東館5階5F3会議室


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)法制・基本問題小委員会主査の選任等について
    2. (2)著作権法の改正について
    3. (3)今期の法制・基本問題小委員会における審議事項について
    4. (4)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について
    5. (5)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
第18期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(107.7KB)
資料2
第18期文化審議会 著作権分科会 法制・基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について(案)(284KB)
資料3-1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方の検討について(325.6KB)
資料3-2
ワーキングチームの設置について(案)(46.1KB)
資料4
リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について(案)(758.8KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(82.5KB)
参考資料2
第18期文化審議会著作権分科会委員名簿(14.9KB)
参考資料3-1
著作権法の一部を改正する法律の概要(21.8KB)
参考資料3-2
著作権法の一部を改正する法律の概要 説明資料(1MB)
参考資料3-3
著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院・参議院)(647.7KB)
参考資料4
学校教育法等の一部を改正する法律の概要(149KB)
参考資料5
第18期文化審議会著作権分科会における検討課題について(平成30年6月8日文化審議会著作権分科会決定)(10.3KB)
参考資料6
小委員会の設置について(平成30年6月8日文化審議会著作権分科会決定)(57.4KB)
参考資料7
平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(平成30年2月28日文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会)(665.1KB)
参考資料8-1
「知的財産推進計画2018」等で示されている今後の検討課題(422.5KB)
参考資料8-2
インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(314KB)
参考資料8-3
インターネット上の海賊版対策に関する進め方について(253.6KB)
参考資料9
文化審議会著作権分科会(第51回)における意見の概要(16.1KB)
机上配布資料
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究報告書(1.8MB)
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究資料編(7.7MB)
著作権法の一部を改正する法律(新旧対照表)(282.2KB)
学校教育法等の一部を改正する法律(新旧対照表)(189.4KB)
出席者名簿(46.1KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員を事務局より紹介した。

○本小委員会の主査の選任が行われ,茶園委員が主査に決定した。

○主査代理について,茶園主査より大渕委員が主査代理に指名された。

○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【茶園主査】では,傍聴者が入場されましたので改めて御紹介させていただきますけれども,先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして,主査に私,茶園が,主査代理に大渕委員を指名いたしましたので御報告いたします。

本日は今期最初の法制・基本問題小委員会となりますので,中岡文化庁次長から一言御挨拶を頂きたいと思います。

なお,カメラ撮りにつきましては,文化庁次長の御挨拶までとさせていただきますので,御了承願います。

では,よろしくお願いします。

【中岡文化庁次長】おはようございます。ただいま紹介いただきました文化庁次長,中岡でございます。今期最初の法制・基本問題小委員会の開催ということで,一言御挨拶を申し上げます。この御挨拶の内容につきましては,分科会に御所属の先生方には二度目になるわけですけれども,新しい先生もいらっしゃいますので,申し上げたいと思います。

先生方におかれましては,御多用の中,法制・基本問題小委員会の委員をお引き受けいただきまして,また,本日は大変足元の悪い中,御出席賜りましてありがとうございます。

昨年度までの本小委員会におきましては,「柔軟性のある権利制限規定」あるいは「教育の情報化の推進」などにつきまして,制度改正の方向性を示す重要な提言をちょうだいしたところでございます。これを踏まえまして,今年2月23日に,盛りだくさんな内容を盛り込みました著作権法の一部を改正する法律案といたしまして,政府として今国会に提出したところでございました。この提出までにも様々な御議論がございまして,その過程で,本日も御出席賜っておられる先生方にも様々な場面で御意見発表を頂きまして,円滑な国会提出に向けて御協力賜りました。改めて御礼を申し上げたいと思います。

また,今年に入りましてからは,国会におきまして本法律案を御審議賜りました。様々な御質問を頂いておりましたけれども,その間,参考人質疑ということで,元委員の先生あるいは現委員の先生にも意見発表していただきまして,大変ありがとうございました。法案は先月18日に成立いたしまして,先月25日に公布がなされたところでございます。

今般の改正に当たりましては,10年来の課題でございました柔軟な権利制限規定等々の重要課題がございましたが,結果といたしまして我が国にふさわしい,保護と利用のバランスの取れた制度設計を御提言いただけましたことを,改めてこの場で御礼を申し上げたいと思います。

また,本小委員会で御提言いただきましたデジタル教科書の制度化に係ります権利制限規定等の整備につきましても,学校教育法等の一部を改正する法律案として著作権法の改正を盛り込んでおりまして,これも先月25日に成立,今月1日に公布されたというところにつきましても御報告申し上げたいと思います。

文化庁におきましては,今年6月15日に,それまでの文化財保護委員会と旧文部省文化局が合体して庁になりまして丸50年ということでございます。また,先日8日には文部科学省設置法の改正につきましても成立しております。この内容は,本年10月に組織改編をするわけでございまして,大きくは京都移転への対応と,もう一つ,文化芸術基本法が16年ぶりに改正されまして,観光の関係,あるいは国際文化交流,障害者の方々の芸術など文化の分野が様々広がっているものにつきまして,文化庁が総合的に推進する立場で仕事ができるようにということで,設置法も改正しておるわけでございます。

この中で,著作権課は一体どうなるのかという御心配も頂いたわけでございまして,国会でも御議論になったわけですけれども,特に関係団体あるいは他省庁との調整が非常に頻繁にあるところだという観点を踏まえますと,そういったものは東京に残すという政府の移転の大方針がございますので,それに従いまして,東京に存置する方向で調整しているところでございます。

こういった中で,近年,インターネット上での海賊版による被害が一層深刻化・複雑化しておりまして,その対策が急務であることから,先般の国会等でも様々な御質問をちょうだいしておりますし,政府決定としても,今年4月にインターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策が出されております。

しかしながら,法制的な調整は今後になりますので,本小委員会におきましては,本決定も踏まえていただきまして,既に昨年度までに御検討いただいておりますリーチサイト等への対応を含みますインターネット上の海賊版対策を中心といたしまして,各検討課題について,精力的な御審議をお願い申し上げたいと思います。

最後でございますけれども,委員の皆様方におかれましては,お忙しい中,大変恐縮でございます。一層の御協力をお願い申し上げまして,私からの御挨拶とさせていただきます。

本日はありがとうございました。

【茶園主査】中岡次長,ありがとうございました。

続きまして,今のお話の中にもございました今国会での著作権法の改正につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】まず,お手元に参考資料3-1をお願いいたします。今般の著作権法改正の概要でございますけれども,こちらは,昨年おまとめいただきました報告書に基づきまして,丸1から丸4の4つの柱についての制度整備を図るものでございます。1つ目はデジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備,2つ目は教育の情報化対応,3つ目は障害者の情報アクセス機会の充実,4つ目はアーカイブの利活用促進というものになってございます。

参考資料3-2は,少し条文の骨格が分かる部分がありますので御紹介したいと思います。

まず,8ページでございます。柔軟な権利制限規定につきましては,大きな方向性をおまとめいただいたわけでございますが,御提言を踏まえまして,左側にあります現行規定を整理統合いたしまして,右側にある3つの柔軟な規定を整備するという考え方を取っております。

第1層につきましては,著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用という一般的な規定を設けました。また,新47条の4としまして,電子計算機における著作物の利用に付随する利用等についての一般性の高い規定を置かせていただいております。

第2層につきましては,新47条の5としまして,スライド11,「新たな知見・情報を創出する電子計算機による情報処理の結果提供に付随する軽微利用等」と題する条文になっておりまして,所在検索サービス,情報解析サービスといったサービスを掲げるとともに,丸3でさらに新たなサービスが出てきましたら政令で追加していくという拡張性を持たせる形で,一定の要件の下で軽微な利用が可能になっている規定になってございます。

参考資料3-3で,付帯決議についても簡単に御紹介しようと思います。参議院の方でポイントとなる部分だけ,かいつまんで御紹介します。

1ページめくっていただいて,縦書きの大きな文字で書いてあるものでございますけれども,2番では,柔軟な規定の導入に当たりまして,利用の萎縮や,逆に著作権侵害の助長が起こらないようにガイドラインの策定などをすることが求められております。

3番では,先ほど御紹介いたしました軽微利用等を認める47条の5の新しいサービスを定める3号の整理については,関係者の意見を踏まえつつ速やかに定めることとなっております。

また,ちょっとページが進みまして5ページの10番では,知的財産に関する学習,教育機会の充実が言われてございます。

続きまして,参考資料4は学校教育法等の一部改正法でございます。主な内容としましては,1ポツにありますとおり,現在,学校教育法の中では,紙の教科書の使用義務が掛かっておりますけれども,丸1にありますように,紙の教科書,検定済み教科書の内容をそのままデジタルに記録したもの,デジタル教科書と俗称するものを紙の教科書に代えて使用することができるという規定が置かれております。したがいまして,学校教育法の定義に基づくデジタル教科書につきましては,2ポツで,著作権法の改正もいたしまして,紙の教科書と同様に著作物の掲載を無許諾で行えるようにするとともに,補償金請求権を付与するといった規定の整備をいたしております。

それから,本日,資料を御用意しておりませんけれども,平成28年12月にTPP12の整備法が成立いたしましたが,今国会におきましてはTPP11の締結に向けた国会審議が進んでおりまして,TPP11協定のための整備法が新たに提案されております。そこでは,TPP12の整備法で行われました著作権法改正については,全てTPP11のための実施に伴って行うという内容の規定となっております。法技術的には,施行日を,TPP12法のものについてTPP11協定発効時に変えることになっております。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等がございましたら,お願いいたします。よろしいですか。

では,特に何もないようですので,次の議事(3)に入りたいと思います。今期の法制・基本問題小委員会における審議事項についてです。去る6月8日に著作権分科会が開催されまして,今期の検討課題及び本小委員会を含みます3つの小委員会の設置が決定されております。今期の本小委員会の審議事項について確認したいと思いますので,本小委員会における当面の検討課題につきまして,紹介していただきたいと思っております。この点,事務局から御紹介をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】では,まず参考資料5をお願いできますでしょうか。今月8日に著作権分科会におきまして御決定いただきました,今期の分科会における検討課題という文書でございます。こちらにおきましては,今後,知財計画2018の策定等を踏まえまして見直しを行うことも前提としまして,法制・基本問題小委員会関係では審議事項丸1が定められております。例年と同様に,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することとされた上で,検討課題例としましてインターネット上の海賊版対策等とされておるところでございます。

それから,このときの著作権分科会でどんなテーマについて議論があったのかにつきまして,参考資料9で簡単に御紹介したいと思います。前回,8日の分科会におきまして海賊版対策の問題がいろいろ取り上げられまして,それに伴いまして,著作権教育・普及啓発をまさにこのときにしっかり考えるべきだという御意見ですとか,下の方の海賊版対策についても,被害実態などもしっかり確認した上で考えていくべきじゃないかといった様々な議論がなされたところでございます。

法制度の関係では,追求権というのが2ページ目にございまして,権利者に係る委員から,この点を何らかの形で取り上げてほしいという御意見ですとか,ほかにも御意見があった状況でございます。

資料2を御覧ください。こうしたことも踏まえまして,今期の法制・基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について(案)という資料として御用意しております。

まず,1番,インターネット上の海賊版対策につきまして,先ほど次長からも説明がございましたように,かねてリーチサイトの問題などを取り扱ってきたわけでございますけれども,(1)問題の所在の2パラグラフ目にありますように,昨今,運営管理者の特定が困難なものなど,その被害が深刻化している状況の中で,政府全体としての「緊急対策」,その「対策に関する進め方」と題する文書が4月に決定されてございます。こうしたことも踏まえまして,パラグラフが1つ飛びまして,「進め方」においては,リーチサイトについて「早急に検討を進め,臨時国会又は次期通常国会を目指し法案を提出する」となっておりますし,海賊版サイトへの閲覧防止措置(ブロッキング)について政府として検討を行い,「次期通常国会を目指し,速やかに法制度の整備に向けて検討を行う」とされてございます。また,その他論点としては,静止画のダウンロード違法化も掲げられているところでございます。

次のページの真ん中あたりをお願いいたします。こうした問題意識を受けまして,今後取り組むべき事項としまして,まずリーチサイトに関する課題につきましては,具体的な制度整備に向けた検討を迅速に進めていく必要があるとしております。

次に,ブロッキングに関する課題等につきましては,「進め方」に基づいて今後行われます政府全体の検討状況を踏まえ適宜対応する必要があるとしております。政府全体の検討といいますのは,具体的には,知的財産戦略本部にタスクフォースが新たに設けられまして,今週から議論が開始される予定と伺っておりますので,そこでの議論の状況も踏まえてということになろうかと思います。

次に,5ページをお願いいたします。2ポツ,著作権教育・普及啓発の充実でございます。先ほど御紹介しましたように,こちらは分科会でもいろいろ議論があったところでございまして,その重要性は論をまたないところでございますけれども,分科会報告書,今回の法改正を契機としまして,さらに一層,取組の充実が求められている。そして,先ほどございましたインターネット上の海賊版被害の深刻さとの関係では,国民が安易に海賊版の閲覧を行わないような意識醸成も重要ではないかという問題意識をここで示させていただいております。

こういう問題意識を受けまして,(2)今後取り組むべき事項でございます。この問題につきましては,実は平成14年,15年ほど前に著作権小委員会で議論いただいたところでございますけれども,次のページ,そうした議論を踏まえてこれまで進めてきた取組の内容につきまして,その効果・検証を行うことや,国内の関係機関が実施する普及啓発事業の現状把握なども行いまして,今後,著作権教育・普及啓発に関する施策の検討,充実に努めることとしております。この点は知財計画でもいろいろと記載がございますので,後ほど御覧いただければと思います。

続きまして,3ポツ,新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備でございます。

【澤田著作権調査官】8ページを御覧いただけますでしょうか。新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関しましては,これまで文化庁において把握したニーズの整理・分類を行い,優先的に検討することとしたニーズについては,先ほど御説明した今般の法改正において対応したところでございます。その他,検討に着手するに至らなかった他のニーズについては,今後,各ニーズの分類及び優先度や課題の内容を考慮しつつ,順次,検討を行うことと昨年度の本小委員会でも御整理いただきました。

このうち,利用許諾に係る著作物を利用する権利の対抗制度の導入や独占的ライセンシーへの差止請求権の付与といったライセンス契約に係る制度の在り方については,昨年度の本小委員会において検討を行っていくべきであるという議論が出たことを踏まえまして,昨年度,文化庁委託事業として調査研究を実施してまいりました。この調査研究の内容の簡単な御紹介と,この問題に関連する今後の進め方について,資料3-1に基づいて御説明させていただきたいと思います。

資料3-1,1ページ目にございますとおり,昨年度,文化庁委託事業として,「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究」を,一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)に委託して実施してまいりました。

2ページ目を御覧ください。この調査研究においては,著作物の利用許諾に係る権利の対抗制度,独占的ライセンシーへの差止請求権を付与する制度の2つの制度の導入に関する検討を行いました。具体的には,社会におけるライセンス契約の実態,制度が存在しないことにより問題が生じた事例の有無など,利用環境への影響などを把握するためにアンケート調査やヒアリング調査を実施し,それと並行して,有識者からなる検討委員会を設置し,民法法理との整合性,他の知的財産権法との整合性,その他必要な事項について調査を行ってまいりました。

アンケート調査,とヒアリング調査の概要,調査研究の体制につきましては,3,4,5ページを御覧いただければと思います。

ここから具体的に調査研究で検討しました事項について,御説明させていただきます。7ページを御覧いただけますでしょうか。

まず1点目,利用許諾に係る権利の対抗制度についてです。これはどういう問題かと申し上げますと,現行法上,著作物の利用許諾契約における利用者(ライセンシー)は,著作権が譲渡された場合に,著作権の譲受人(第三者)に対し,当該利用許諾に係る権利を対抗する手段がありません。これは,著作権法上,その権利の対抗に関する規定が置かれていないことに起因しております。また,この対抗制度がないことに起因しまして,2つ目の丸,ライセンサーが破産・倒産した場合に,破産手続等の開始時に利用許諾契約が双方未履行の場合には,破産管財人から契約を解除されるおそれがあるという問題がかねてから指摘されておりました。

こうした対抗制度が設けられていないために,利用者はライセンス契約に基づく利用を行う地位を確保することができず,安心してライセンス契約に基づくビジネスを行うことができる環境にないのではないかという指摘がなされてきたところであります。

8ページ目にお進みください。こうした状況を踏まえまして,調査研究において現在の状況を調査しましたところ,1つ目の丸のとおり,現在,ライセンス契約の継続中にライセンサーが第三者に著作権等を譲渡する事案や,ライセンサーが破産する事案が一定程度,存在していることが確認されました。もっとも,譲受人から引き続き許諾を受けられる場合や,破産管財人等から著作権等の譲渡を受ける場合など,利用が継続できている例も多いことが確認されました。その一方で,やはり譲受人から許諾が受けられずに利用が継続できなかった事例,また,譲受人から許諾を受けるために追加の支払いを求められた事例などが存在することも,併せて確認されました。

9ページ目,現在,この問題に関して,実務上の対応で十分に対応できるのかという点でございます。例えば,ライセンスの代わりに著作権の一部譲渡を受けることによる対応の可能性についてですが,一部譲渡に関しましては,権利者の抵抗感から,それを受けることが難しい場合もありますし,どこまで権利の細分化が認められるか等について見解の一致を見ておらず,不明確な部分がある。また,ライセンス契約に譲渡禁止条項を盛り込むなどの契約における対応が行われておりますが,これは第三者に対する法的な拘束力がないため,利用の継続の確保にはつながらないと考えております。

この点に関する関係者の意見でございますけれども,ライセンシーからは,ライセンス契約に基づくビジネスにリスクを感じていることなどを理由として,対抗制度の導入を求める意見が多く出てまいりました。また,この問題に関して,昨今のビジネスに関わる事業者の多様化などにより,今後,対抗制度が存在しないことによって利用の継続に支障が生ずる場面は急速に増えるのではないかといった指摘もございました。ライセンサーの立場からは特にデメリットが生じるといった意見は見られず,むしろ対抗制度の導入でライセンスが安定的な制度になることによって,著作権者の意に反して著作権譲渡を迫られる状況を変えられる可能性があるのではないかといった指摘もあったところです。

こうした検討を踏まえまして,調査研究においては,ライセンシーが著作物の利用を継続できる地位の確保については課題があり,譲受人の取引の安全も考慮しつつ,利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について検討がされるべきであると考えられるとされました。

続きまして,10ページ目,この問題に関する論点の整理としましては,まず,対抗制度の導入の許容性に,し,譲受人に与える不利益の程度,著作権等管理事業への影響などを検討してまいりました。対抗要件の在り方に関しましては,特許法で導入されている当然対抗制度,登録対抗制度などの各対抗制度について,メリット・デメリットなどを検討してまいりました。また,この対抗制度の導入に伴うライセンス契約の承継の有無といった点や独占的ライセンスの保護などについても論点の整理を行いました。

事務局としましては,調査研究における整理を踏まえて,民法法理との整合性,他の知的財産権法との整合性,契約実務に与える影響等を考慮しつつ,今後,対抗制度の在り方を検討する必要があるのではないかと考えております。

続きまして,2つ目の問題である独占的ライセンシーへの差止請求権の付与について御説明させていただきます。

12ページ目を御覧ください。現行著作権法上,特許権等の専用実施権のような物権的な利用権は出版権以外には存在せず,また,利用許諾を受けた利用者(ライセンシー)には差止請求権が付与されておりません。そのため,独占的な利用に対する期待を有している独占的ライセンシーであっても,無断で著作物を利用している侵害者に対して差止請求をすることができず,原則として著作権者から差止請求をしてもらわなければならないというのが現状でございます。

こうした状況を踏まえて,独占的ライセンシー自ら侵害行為を排除することが困難な状況にあり,また,独占的ライセンシーの独占的な利用に対する期待に対する保護が十分ではないのではないかという指摘がなされてきたところでございます。

13ページ目,この点に関する現在の状況でございます。アンケート,ヒアリング等では,独占的ライセンシー自らが差止請求をすることができず,著作権者に対して協力を要請する必要があるという現在の制度では,十分に実効的な海賊版対策に取り組むのが難しい状況にあるといったことが明らかになりました。例えば,数え切れないほどに存在する著作権侵害に対して対応する際に,逐一,独占的ライセンシーが著作権者に対して協力を要請することは困難であることや,差止請求に際して,著作権者であることの証明を求められ,その際に著作権者の実名や住所などの個人情報やその証明書類を渡すことが求められる場合があり,著作権者・独占的ライセンシーの双方がそれを避けたいと考えていること,また,税関の水際差止めにおいても同じような問題があることが分かりました。

続きまして,14ページ目に移っていただきまして,この問題に関しても現在の実務における対応で十分に対応できているかという点が問題になるわけですけれども,例えば,独占的ライセンシー自らの名義で侵害者に対して「著作権者の著作権を侵害していますよ」と警告状を出すということが実務上,行われているわけでございますけれども,効果があるかはISPや侵害者等の対応によるところが大きく,十分に効果が上がってはいないといった指摘がございました。著作権の一部譲渡による対応については,先ほどのような問題がある。また,債権者代位権の行使も理論上,考えられるわけでございますけれども,その行使が,認められるには,裁判例上ではライセンサーが契約において,侵害排除義務を負っていることが必要であるとされておりまして,現在の状況において,アンケート,ヒアリングでは,必ずしも広くそのような内容のライセンス契約が締結されていないことも明らかになりました。

この点に関する関係者の意見としましては,ライセンシー,ライセンサー双方,侵害対策の手段が増えることに関しては肯定的であり,この制度に対して肯定的な意見が多く見られました。他方,ライセンサーからは,自身の承諾なく差止請求権が行使されることになりますので,そのことに関する懸念も示されたところであります。

こうした状況を踏まえまして,調査研究においては,独占的ライセンシーが期待する独占状態の実現に関しては課題があり,独占的ライセンシーの権利の性質や著作権者に与える影響も考慮しつつ,独占的ライセンシーに差止請求権を付与する制度の導入について検討がされるべきであると考えられるとされております。

15ページ目,この点に関する論点の整理でございます。民法法理との関係や準物権的な権利を創設するという選択肢の可能性,著作権者の意思との関係などについて,論点の整理を行いました。

この問題に関する今後の進め方について,事務局として考えているところを17ページ目から御説明させていただきたいと思います。

これまで見てきましたとおり,調査研究においては,両制度の導入について検討を行う必要性が示されたところであります。これを踏まえますと,事務局としましては,本小委員会においてもこれらの制度の導入について検討を行っていただくことが必要ではないかと考えております。調査研究においてこれらの制度導入に関する論点について一定の整理がなされましたが,いずれの制度につきましても,民法法理との整合性,他の知的財産権法との整合性,契約実務に与える影響などに配慮した制度設計の在り方については更なる検討が必要なところであり,その検討は専門的・集中的に行うことが望ましい考えております。

以上を踏まえまして,事務局としましては,本小委員会の下にこれらの問題について検討するワーキングチームを設置し,検討を進めることが妥当なのではないかと考えております。資料3-2が,そのワーキングチームの設置についての案でございます。

1にありますとおり,ワーキングチームの名称としましては著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム,検討課題は今,申し上げてきた課題とその他の課題となっております。チーム員の構成や議事の公開については,資料3-2を御覧いただければと思います。

本日,他の検討課題の進め方と併せまして,このようなワーキングチームの設置についても御審議いただければと考えております。

【秋山著作権課長補佐】それでは,また資料2に戻っていただければと存じます。9ページ目,4ポツ,権利者不明著作物等の利用円滑化でございます。

(2)にございますように,昨年度来,裁定制度について,オーファンワークス実証事業実行委員会による実証事業がなされてきておったところでもございますし,次のページにありますように,コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業も行われてきておりますことから,これらの取組が着実に実行されていくことが適当であるとしてございます。

それから,真ん中あたりの拡大集中許諾制度につきましては,昨年度の小委員会におきまして調査研究の結果の御報告をさせていただいた上で御審議いただいたところですが,その御審議の結果,今後は具体的なニーズを把握した上で検討を進めていくという方針になったと承知しております。したがいまして,今期につきましては,事務局において行いましたニーズの把握の結果の報告をさせていただきまして,それを踏まえて,必要に応じて本小委員会等で検討を行っていただくということを考えてございます。

次に,5ポツは今後状況等の進展に応じて検討すべき課題と位置付けております。ただし,本小委員会において御検討いただくことを前提としたものではございませんが,御紹介させていただきたいと思います。

1つ目が法の適切な運用環境の整備についてでございます。こちらは,先ほど御紹介いたしました平成30年改正法における柔軟性のある権利制限規定の整備に伴いまして,今後,ガイドラインの必要性等について検討していく必要があるのではないかと考えています。まずは政府において関係者における具体的なニーズや公的な関与に対する期待の有無,その内容を把握した上で,今後,必要に応じて国としての支援を行っていくとしております。

次のページをお願いいたします。2つ目は教育の情報化の推進等でございます。こちらも,昨年4月の分科会報告書において,補償金制度の運用に関する検討,ライセンシング環境の整備・充実,著作権法に関する研修・普及啓発,ガイドラインの整備といった4点について,総合的に取り組むべきことを提言いただいております。こちらにつきましては,今後,関係者における取組状況を把握した上で必要な支援を行っていくとしております。

教材の共有についても,ニーズを吟味した上で検討していくという方針になってございましたが,最後のパラグラフにございますように,教育利用に関する著作権等管理協議会におきまして,現在,ライセンシング環境の整備に向けた検討が進められております。ここの検討の中で,教材等の共有についても対象にして,今後,関係者のニーズの把握を行って検討いただくことになっておりますので,そうした状況も踏まえつつ,本小委員会としては適切な時期に御検討いただきたいと思っております。

3つ目は障害者の情報アクセス機会の充実でございますけれども,積み残しの課題としましては,放送番組へのアクセス環境の充実に関する御要望がございます。こちらは今,関係者の協議はまだ取りまとまっていない状況ですので,その進捗を注視しながら,適切な時期に検討いただくこととしております。

4つ目は放送コンテンツの利用円滑化でございます。こちらは15ページを先に御覧いただこうと思いますけれども,この6月に規制改革実施計画というものが規制改革推進会議の答申を踏まえて閣議決定されておりまして,放送を巡る規制改革という柱の中で,コンテンツ流通の推進という目的のために以下の2つの措置を講ずるとなっております。

まず,aでは,権利情報データベースの実証事業を進めることのほかに,権利情報の集中管理,包括的な権利処理,収益分配の改革について,今後,総務省が課題を整理して,文化庁も必要な検討を行うとなっております。bでは同時配信に係る著作権等処理の円滑化も総務省の検討を受けて文化庁で検討となってございますので,これらについても,総務省の検討が進みましたら,またその状況に応じて本小委員会でも御検討いただきたいと存じます。

最後に,著作権分科会で御意見がございました追及権につきましては,私ども事務局としましては,今後,国際小委員会で御決定いただくことになろうかと思いますけれども,同小委員会ではWIPOにおける追及権の議論なども踏まえながら御審議いただくことがまずは適当ではないかと考えておりますので,そのようにお進めいただきたいなと考えています。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等がございましたら,お願いいたします。

【大渕主査代理】詳細な御説明をありがとうございました。

1点だけ,ライセンスのところについて,あらかじめ意見を述べますので,御参考にしていただければと思います。折に触れて散発的には申し上げているので,またかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,今般の2つの論点のうちの当然対抗制の関係で,もちろん著作権法を考えるに当たって民法法理との整合性は重要ですが,やはり重要なのは,民法は有体物を対象にしているし,著作権法は無体物を対象にしているということで,本質的な差異があることであります。もともと著作権は所有権の概念を流用しておりますので,非常に参考になる面はあるのですが,有体と無体では大本のところが全く違います。

ローマ法以来の一般原則と言われている「売買は賃貸借を破る」というのがこの話の根本にあるかと思うのです,が,ローマ法の時代には有体物しかなかったから,ローマ法以来の有体物のルールとしては,一般原則は「売買は賃貸借を破る」のかもしれませんが,無体の場合には有体とはそもそも全く別の法体系でございます。民法が父で一般法で,知的財産法が子で特別法と思っておられる方が割といらっしゃるかと思いますが,よく考えると,有体物についての法が民法で,無体物についての法が知的財産法だから,強いて言えば兄のようなもので,別に父ではないということでございます。

その関係で申しますと,平成23年改正特許法で当然対抗制を導入したわけですが,その際には,特に民法の先生から最後まで非常に強い反対がありました。最後はそこのところを御納得いただいて,なるほど,有体物と無体物とは違うんだ,それだったらよかろうということで現在に至っているわけであります。またそこの議論を繰り返してもしようがないので,まずは頭を切り替えて,これは無体物の問題だということを念頭に置いて議論していただければ議論がスムーズに進むのではないかと思います。

特許の場合には,一応,通常実施権の登録対抗制度はあったのですが,それが余りに使い勝手が悪く,私が論文で書いたとおり,期待可能性がないようなものなので放棄せざるを得ませんでした。著作権法の場合にはそもそも対抗手段がないものですから,より当然対抗制を導入する必要性は高いので,私に言わせれば,当然対抗制は当然であるということになります。そのような意味で,一日も早く議論を前に進めていただければと思っております。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに御意見,御質問等がございますでしょうか。

【中村委員】中村でございます。知財計画2018の取りまとめを担当いたしましたので,補足までに報告をしておきますと,今回,知財計画の中では,柔軟性のある権利制限規定が整備されたことを踏まえてガイドラインなどの策定などの措置を講ずるといったこと,ブロックチェーンを活用した権利の管理などを進めること,海賊版サイトの対策に踏み込むことなどを明記いたしました。

その中で,特に海賊版対策については,先ほどお話がありましたように,4月13日に海賊版サイトの緊急対策を政府が決定したところでありまして,これはブロッキングを緊急避難と解釈するというものでございましたけれども,問題とされた3つのサイトは,その後,見られなくなっておりまして,ブロッキングも今,実行はされておりませんので,ひとまず沈静化して,膠着状態にあります。

こうした中で,今度の金曜日の朝,22日に知財本部の下で第1回のタスクフォースを開く予定にしておりまして,そこでは正規版の流通方策やブロッキング法制度の検討を集中的に進めることにしています。その対策は,ここで検討されているリーチサイト対策や著作権教育,啓発などとセットで推進すべきものだと考えておりますので,この会議をはじめとする関係各方面と連携して進めてまいりたいと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。では,松田委員。

【松田委員】松田です。私自身としては,リーチサイトとブロッキングの関係は,早期にリーチサイトの立法要件を検討して立法手続に入るべきだと思っていました。かなりの議論をしていることと,ブロッキングとはまた違う性質,差止請求権の構成ということで,みなし侵害規定が導入できるかどうかという視点で捉えればいいので,それは早急にやるべきだと思っておりました。しかし,ブロッキングの問題が大きくなってきてしまっていますので,ブロッキングができるような状況が起こるとリーチサイトの立法がどうなるかという問題も確かにあるのかもしれませんが,まずここの委員会においてリーチサイト,その後,ブロッキングというふうにすべきではないかなと思っております。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。

では,いろいろ御意見等を頂きまして,どうもありがとうございました。

先ほどの説明の中でもあったのですけれども,著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームにつきまして,事務局からの説明がありましたとおり,本小委員会に設置することとしたいと思っておりますけれども,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。御異議がないようですので,ワーキングチームを設置することとさせていただきます。

それでは,今期の本小委員会における検討は,先ほど御説明されたように,ここに整理した方針に沿って進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

では,続きまして,議事(4)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について議論を行いたいと思います。本課題につきましては,一昨年より2年間にわたりまして議論を行ってきておりまして,各論点について,各委員の御意見は相当程度,明らかになってきたように思っております。つきましては,今期は早期の取りまとめに向けまして,具体的な制度設計の在り方についての議論に進んでいきたいと考えております。事務局におきましては,そのような観点から資料を用意していただいておりますので,これに基づいて議論を行うことができればと考えております。

では,事務局より説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。資料4を御用意いただけますでしょうか。「リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応について(案)」と題するものでございます。

こちらの資料の位置付けとしましては,主査からもございましたように,具体的な制度設計についての議論に進んでいくという視点から,何か1つの軸足を置きながら制度設計を検討いただきたいとの考えから,事務局として,議論のためのたたき台のようなものを一案として御提案するものでございます。本日,これを基に活発な議論を頂きたいと思っております。

まず,1ポツ,問題の所在につきましては,もう2年前にヒアリングを行って明らかになっている部分でございまして,ちょっと古い情報ですので,記憶を呼び起こしていただくために確認までに御用意したものでございます。被害実態としましては,リーチサイトやリーチアプリにおける違法コンテンツの拡散が問題視されておられまして,検索サービスにおける結果の表示ということも指摘があったため,そういったことに対する対応が要望されていたと承知しています。

なお,念のため申し上げておきますと,ISPなど利用者側の意見は昨年度,聞きまして,参考資料7でその御意見を紹介しております。最終的な報告書ではそういった御意見も当然,御紹介していくわけでございますけれども,そちらはまた参考資料を御参照いただければと存じます。

2ページ目,検討の視点につきましても,昨年度,おまとめいただいた視点を確認までに転載したものでございますので,説明は割愛させていただきます。

3ポツ,対応に当たっての基本的な考え方でございます。事務局としてお示しする案としましては,権利の適切な保護と正当な表現の自由の保障のバランスがかねて議論になってきたわけでございますので,そうした観点から,侵害コンテンツの拡散に対する寄与の度合いに着目しまして,一定程度,場等を限定した上で対応を考えてはどうかという考え方に基づいて整理させていただいたものでございます。

以下,御説明申し上げます。

1つ目の丸でございます。まず,権利者から御報告のあったことなどを踏まえますと,リーチサイトやリーチアプリが侵害コンテンツの拡散に寄与している度合いは大きいのではないかと考えております。

2つ目の丸でございます。消費者が実際にアクセスする経路としましては,URLを打ち込むなどしてリーチサイトやリーチアプリに直接到達するというやり方もあろうかと思いますけれども,インターネット情報検索サービスを通じて到達する方法も一般的ではないかと考えられるところでございます。このサービスにつきましては,サービスそのものは中立的な目的で提供されているわけでございます。もっとも,海賊版に関連するキーワードなどを入力することによりまして海賊版のリンク情報を容易に取得させる手段として実際上は機能しているというところだと考えておりまして,そうしたことからしますと,検索エンジンは侵害コンテンツの拡散に相当程度,寄与しているのではないかと考えられるところでございます。

そうしたことを踏まえまして,権利保護の実効性確保という制度改正の目的に照らせば,これらの経路を通じて行われる侵害コンテンツの送信による被害の発生の停止や予防の必要性は高いのではないかと考えられます。

他方で,個人が一般的な言論活動の一環として行うSNSなどにおける単発的な表現が代表例ですけれども,そういったものの中に侵害コンテンツのリンク情報が含まれているというケースについて,その被害実態は必ずしも明らかではないのではないかと考えられるところでございます。正当な表現行為の萎縮が生じないよう,こうした場における表現行為は今般の法的措置の対象とはしないこととしまして,これについては引き続き現行法の運用にゆだねることが適当ではないかとしております。

以上が基本的な考え方でございます。

次のページをお願いいたします。今回,先ほど申し上げたように,侵害コンテンツの拡散への寄与の度合いに照らしまして,4ポツ,リーチサイト等への対応,数ページ後の5ポツ,検索エンジンへの対応と2つに分けて整理させていただきまして,まずリーチサイト等の関係でございます。

(1)は,民事(差止請求)の対象とするものについての議論のたたき台をお示ししております。冒頭の柱書きにありますように,以下の要点を充足するような場合に著作権侵害とみなすこととしまして,差止請求の対象としてはどうかという御提案でございます。注にありますとおり,以下の内容はそのまま条文化しようという前提でお示ししているものではございませんので,その点,御留意いただければと思います。

まず,丸1,場・手段についてでございます。こちらは,まさにリーチサイト等に限定するということをどのように実現するかという非常に重要な部分でございますけれども,「主として違法な自動公衆送信を助長する目的で開設されているものと認められるウェブサイト等」,若しくはそうした機能を担っているものといった形で限定してはどうかという御提案でございます。

丸2,主観につきましては,「違法にアップロードされた著作物と知っている場合,又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」などとしてはどうかとしております。また,これまでの審議会の御審議の中で御意見がございましたとおり,加害目的などの要件を加える必要は,この場の限定がしっかり機能している場合においては,ないのではないかという御提案でございます。

主観について,さらに御審議いただきたい点としましては,みずからがリンク情報の提供等を行ったときに,その場が丸1の要件に該当するような悪質な場であるということについての認識を要件とするかどうかという点でございます。

次のページをお願いいたします。丸3,行為についてでございます。どういった情報提供などの行為を差し止めの対象とすべきかについては様々な議論を頂いてきたところでございまして,1パラグラフでは,いわゆる直接のリンクまでとするべきか,あるいは,実質的にはエンベッドリンクのような,1つのコンテンツに到達が非常に容易なものにすべきかという御議論を頂いたり,次のパラグラフにありますように,検索機能を使って侵害コンテンツへのリンク情報を取得することを可能とする特定の指令をボタンのように設置しまして,そこを押せばそういうことが可能になるような手段の提供はどうかという御議論をしていただいたわけでございます。これらにつきましてはいずれも,小委員会の御議論としましては,当該侵害コンテンツへの到達を容易にできるものと評価できるのであれば,同様の法的評価が可能ではないかという御意見があったと承知してございます。

こうした御意見を踏まえまして,御提案としましては,「したがって」のパラグラフの下線が引いてあるところにございますとおり,著作物への到達を容易にするための情報提供等と評価できる行為については,差止請求の対象とすべきでないかとしております。

次のパラグラフは,海外で行われた違法行為についても,国内で行われたとしたならば違法となるべき行為についても対象とすべきじゃないかという御提案でございます。

丸3,行為につきまして,さらに御審議いただきたい点としましては,アプリの扱いはこの枠組みでいいかどうかということでございます。この類型自体がもう忘れられているかもしれませんので,もし不安な方は別紙2を御覧いただければと思いますけれども,外部情報取得型丸2,アプリ提供者以外が外部サーバーに蔵置したリンクを取得するタイプのものについても,今回,差し止めの対象とすることがよいか。それから,2つ目のパラグラフにありますように,外部情報取得型丸2は,ユーザーによる情報の取得行為に対する関与の度合いということに照らして言えばリーチサイト運営者よりは小さいのかなとも思えるわけですけれども,いずれも侵害コンテンツへの到達を容易にしている情報の提供といった形でまとめて処理することが適当かどうかも御審議いただければと存じます。

米印,リーチサイト運営者にどういう責任が及ぶべきかという論点につきましては,これまで様々な御議論を頂いて一定程度,整理がされてきたと思っておりますので,詳しく説明はいたしません。ポイントとしましては,リーチサイト運営者が責任を負うべき場合としては,個々のリンクとの関係で,間接侵害の議論などに照らしまして責任を負い得るということだとは思いますけれども,そうした個々のリンクに係る責任と離れて,独立してサイト運営行為を対象とすることは難しいのではないかという御議論であったかと存じますので,その内容をここに整理しております。

6ページの丸4,対象著作物についてでございます。御提案としましては,対象著作物は特に限定を要しないのではないかとしております。理由としましては,例えば有償著作物に限定しますと,実際の被害状況や今後,被害が考えられるような様々な著作物が対象にならない可能性が出てまいりますので,権利保護が不十分になる可能性があること。それから,今回,みなし侵害として差し止めの対象としようとしている行為は,そもそも違法行為を助長するような悪質な行為だということを前提にしているわけでございますので,基本的には著作物の種類によって権利保護に差異を設けることは控えた方がいいのではないかという考えでございます。

さらに,表現の自由への萎縮ということからしましても,要件が追加されればされるほど対象になるか否か不明確になるという御意見もあったわけでございまして,そうしたことからも,この考え方は正当化できるのではないかと考えてございます。

対象著作物の論点につきまして,さらに御審議頂きたい点といたしましては,「原作のまま」という要件を付したり,デッドコピーに限定したりすることが適当かどうかというところでございます。こちらにつきましては,一部改変を加えたり,翻案したりして作成された侵害コンテンツへのリンクを張ることを差止請求の対象とするかどうかという問題なわけですけれども,こういうものを権利保護と表現の自由の保障のバランスの観点からどちらに振るべきかという御議論だろうと思っております。

「また」以降はちょっとテクニカルな立法技術の問題にもなってまいりますけれども,「原作のまま」と書いた場合に,それはどういう範囲を指し示すのだろうかといったことですとか,「デッドコピー」というのは定義できるのだろうか,どう定義するのかといったことについても,もし御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思っております。

続きまして,最後に,その他の要素としまして,今回,リーチサイトなどの悪質な場にまず場を限定するという前提ではありますけれども,そうした要件も含めて,1から4の要件を前提とした場合に,なお更に正当な表現行為として差止請求の対象から除外すべきケースがあるかどうかということについて御審議いただければと思います。

8ページをお願いいたします。刑事罰についてですけれども,まず丸1におきましては,罰則を設ける必要性について記載させていただいております。結論としては,これを肯定するという方向でございまして,理由付けとしましては,以下3点でございます。

まず,侵害コンテンツの拡散に寄与する悪質な行為について,著作権侵害とは独立して今回差止対象としようとする制度趣旨に照らしましたら,これはやはり罰則を認めることによって抑止効果を生じさせる必要があるのではないかという考え方でございます。また,実際上の必要性としましても,幇助行為だけを立件するのは実務上難しいのではないかという御意見もございました。さらに,みなし侵害も含めた著作権法体系における罰則全体との均衡の観点からもそのような取扱いが適当ではないかと考えられるところでございます。

そして具体的な制度設計,対象となる行為でございますけれども,2つ,以下,アとイについて罰則を定めるべきではないかという御提案でございます。1つが,リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報等の掲載行為,こちらは先ほどの(1)で御議論いただくことになる行為でございます。こちらについては罰則の対象とすべきでないかとしております。ただ,「なお」というところですけれども,過失による侵害行為については対象から除外してはどうかとしております。次に,リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為でございます。ここに記載しておりますとおり,こうした行為は侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場の運営や手段の提供ということでございまして,社会総体として見たときに,著作権者に深刻な不利益を及ぼしていると評価できることから,個々のリンク情報提供行為とは独立して,社会的な法益侵害を及ぼすものとして罰則の対象とするべきではないかとしております。

以上がリーチサイト等に対する対応でございます。

次に,5番,インターネット情報検索サービスへの対応についてでございます。

まず(1),基本的な前提の部分ですけれども,3ポツで述べましたとおり,インターネット情報検索サービスは中立的なサービスでありますものの,実際上は侵害コンテンツの拡散に相当程度寄与しているのではないかと考えられるところでございます。また,リーチサイト・アプリ等に関して,4ポツで検討したような法制度の整備が仮に図られるという場合においても,日本法が適応されないものについては,依然として検索サービスを通じたアクセスという経路が残るということが考えられるわけでございます。

したがいまして,3つ目の丸でございますけれども,インターネット情報検索サービスにおけるリンク情報の提供行為を差止請求等の対象とすることについて検討する必要があるのではないかとしております。その際に,以下の性質も考慮する必要があるのではないかと考えております。

まず,先ほど来申し上げておりますとおり,当該サービスの目的は中立的なものであって,侵害助長を別に目的としているものではないということです。それから,このサービスでは,海賊版サイトとかリーチサイトのみならず,一般のサイトも幅広に含まれているということでございます。それから3点目としまして,当該サービスにおける検索結果の提供は,当該事業者による表現行為としての側面を有するということのほか,現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているということでございまして,この点は最高裁においてもプライバシーに関する,いわゆる忘れられる権利に関するような事案でございますけれども,ここで認められているところでございます。他方,こうしたサービスがそうした役割を担うとしましても,全ての情報提供が正当化されるということでは必ずしもございませんで,国民の権利保護など公共の福祉のための一定の制約を受け得るということは当然のことだと思います。

こうしたことを踏まえまして,更に御審議いただきたい点でございますけれども,インターネット情報検索サービスについて差止請求等の対象にするべきかどうかということについて御議論いただきたいと思います。

なお,10ページの中ほどにある参考は,昨年の小委員会において関係者からヒアリングをしたときの現状について御紹介しております。1つ目の丸は,インターネットサービス事業者さんからの御説明でございました。現状としましては,アメリカのDMCAに基づいて対応しているということで,この仕組みは世界中で同様にやっていますので,日本のものも削除していますという御説明でございました。それから,権利者側の方からも,最近では個別のページについては対応されているという御説明があったところでございます。

ここから具体論に入りますけれども,(2)民事(差止請求)についてでございます。仮にインターネット情報検索サービスについて差止請求等の対象とする場合には,以下のような要件を充足するような場合に著作権侵害とみなすこととしてはどうかという論点設定でございます。

まず,場・手段については,侵害コンテンツの拡散への寄与の度合いに照らしまして,広くインターネット上の情報を対象とする検索サービスとしてはどうかと。言い換えますと,特定のウェブサイト内のみに限って提供されるような検索機能というのは除外されるということになろうかと思います。

丸2,主観要件についてですけれども,当該サービスは通常プログラムによって自動的に行われておりまして,このサービスの役割も踏まえますと,事前監視義務を課すような制度を事実上課すのは,適当ではないのではないかと考えられるところでございます。したがいまして,主観要件につきましては,違法にアップロードされた著作物と知っている場合としてはどうかということでございます。

丸3,行為につきましては,リーチサイトなどへの対応と同様に,著作物への到達を容易にするための情報の提供等としてはどうかとしております。

それから,1つ飛ばしまして「また」のところですけれども,今回,差止請求となるリンク情報から,例えば一般的なSNS等における,言論行為の中に侵害コンテンツへのリンクが入っていたという場合は除外した方がいいのではないかというのが3ポツでお示しした基本的な考え方でございまして,こうしたものを除外する方法についても御検討いただきたいと思っております。この点につきましては,事務局としましては,リーチサイトや海賊版蔵置サイト内のウェブページに係るURL等に限定することはどうかとしております。

この行為について更に御審議いただきたい点としましては,検索エンジンの検索結果としてリーチサイトや海賊版蔵置サイトのトップページのURLが表示される場合に,これについての差止請求権を認めるべきか否かという論点でございます。こうしたトップページといいますのは,通常は特定のコンテンツ,請求権者である著作権者の特定のコンテンツへの到達に直ちにつながるとは言いがたいものが多いのではないかと思われるわけでございまして,個々の著作権者がトップページのURLの削除の請求までできるということになりますと,過剰差止めになるのではないかと思われるところでございます。一方で,実質的な必要性という意味では,一般的な侵害コンテンツへのアクセスの経路としましては,情報検索サービスからトップページにまず入りまして,そこを介して侵害コンテンツに到達するという経路が一般的でないかとも考えられますことから,権利保護の実効性の確保のために対応の必要性が高いと考えられるところでございまして,こうしたバランスといいますか,こういうことについてどう考えるべきかという論点設定をさせていただきました。

続きまして12ページ,対象著作物それから丸5,その他の要素,これらはいずれにつきましてもリーチサイト等への対応と同様に御議論いただきたいと思っております。

それから,(3)刑事についてでございます。こちらもインターネット情報検索サービスにおけるリンク情報等の提供行為を仮に一定の範囲で差止請求の対象とするという場合に刑事罰を科すべきかどうかという点について御審議いただきたいと思います。

それから,最後に6番としまして,法の適切な運用環境の確保ということについても論点として設定させていただいております。これは4番,5番の議論が熟してから最終的に深まっていくテーマであろうと存じますけれども,いずれにしましても一定程度,今回の法制度の整備によりまして抽象的な要件が掛かってくる部分があるのかなと考えられるところでございまして,法の予測可能性の確保という観点から,関係者におけるガイドラインの策定も視野に置いて議論していく方がよろしいのではないかと考えております。

御説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いしたいのですけれども,論点が非常にたくさんございます。そこで,3つに区切って議論を進めていければと思っております。まず1つ目が,1ページから7ページまで,すなわち1ポツ,2ポツ,3ポツと,4ポツの(1)民事(差止請求)についてまでです。2つ目が8ページの4ポツ,(2)刑事についてであり,3つ目が9ページ以下,すなわちインターネット情報検索サービスへの対応についてです。この3つに区切って議論を進めていければと考えております。

では,まず1つ目の1ページから7ページ,すなわち1,2,3と4ポツの(1)民事(差止請求)についてまでについて,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。

前田委員。

【前田(健)委員】最初のリーチサイト・リーチアプリ等への対応についての民事のところについてですけれども,私としては,基本的な方針として,大きなところはこれでいいだろうと思っております。それで,その具体的な論点についてどう考えるかということですが,たくさんありますので,まず4ページ,5ページの,丸2,丸3あたりについて私からコメントさせていただきたいと思います。

まず主観についてというところで,リーチサイト等であることの認識も必要かという論点が示されておりますけれども,私は特段必要ないのかなと思っておりました。と申しますのは,丸1の場・手段についてというところで,客観的にリーチサイトと認められるようなものかどうかという要件が課せられているので,通常,こういったサイトに接した人はそういうサイトであるという認識があるだろうという推認ができることに加え,仮に知らなかったとしても,そこには重過失なり何なりがあるのではないかと考えられるからです。

次に,行為についてというところですけれども,これはどういった行為まで対象にするのかということが問題になっていると思います。特にアプリ型の提供の場合について,どうやって行為の外縁を区切るかということが問題になっていると思います。今ここに示されている考え方は,侵害コンテンツへの到達を容易にしているかという視点が示されていて,それで区切って広げていけるのではないかというものだと思います。そして,で具体的に示されている外部情報取得型丸2のようなものが,その考え方で含められるかということが問題になっていると思います。もし全て侵害コンテンツへの到達を容易にしているかという評価尺度でやって,外部情報取得型丸2のようなものまで含めていくということにすると,どこまで広がっていくのか不明確ではないかという御意見もあろうかと思います。

ただ,私としては,これは結論からいえば,1つの考え方でまとめて処理するという方が分かりやすいのではないかと思っております。つまり,どういった行為が対象になるかということをこの法制度に接する人が明確に予測することができ,かつ様々な技術の発展に対して柔軟に対応できるようになるために,1つ考え方を示すということが重要なのではないかと思います。

ただし,そのときに,今ここに書かれている侵害コンテンツへの到達を容易にしているというだけで十分なのかというと,それはちょっと足りないのではないかなと思います。ここで典型的に想定されているものはリンク情報だと思うのですけれども,リンク情報というのは,侵害コンテンツへの到達を容易にしているということもありますが,ここを踏めばすぐ侵害コンテンツにたどり着けるという,その情報と侵害コンテンツとの間の結び付きが極めて密接という状況があると思います。そういったことまで含めて,侵害コンテンツへの到達が容易になっているというプラスアルファは,それについての直接性というところまで含めれば,この外部情報取得型丸2みたいなものも包括的に理解できるのはないのかなと思っております。

差し当たり以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。では,奥邨委員。

【奥邨委員】まず全体的なことを一言申し上げますと,私自身は,もともとそれは必要であるということが前提で去年も申し上げてきたと思いますので,その対応をするということについては賛成であります。

ただ問題は,昨年もるる申し上げましたように,現状,特にSNS等をはじめ,若い方を中心に,リンクというもの自体がコミュニケーションのツールとして非常にカジュアルに使われているという実態を考えたときに,全てのものが対象になってしまうと,現状の行われていることから大きな変化を与えるということで,混乱もあるでしょうし,誤解もあるでしょうし,いろいろな問題を起こすだろうという心配があると。

一方で,違法コンテンツへの誘導が権利者に多くの影響を与えている,被害を与えているということを考えれば,やはり対策は必要である。という,そのバランスを考えたときに,悪質性の高い,特に違法なコンテンツへの誘導を助長するようなサイト,それを具体的にどうするかというのはこれから議論がされていくんでしょうが,ここに一応の方向が出ていて,私もおおむねはいいのだろうなと思いますけれども,そういう形の場やアプリに限って,そこへリンクを掲載する行為からまずは対象にしていくというのは,非常に妥当な出発点だろうと思っております。したがって,その点は,今回の事務局の方向性に私は賛成をいたします。

あと,細かな論点の中で,いろいろあるんですけれども,2点だけ申し上げます。まず,今ちょうど前田委員からありました5ページの外部情報取得型2についてなんですが,少し微妙なところがあるかなと,思います。後ろの別紙の資料を拝見しますと,今回の資料の別紙の最後の「(「アプリ」型における)アプリを介したリンク情報の提供方法」の中で,外部情報取得型1というのは,アプリの提供者がリンク情報そのものも提供する,アプリとリンク情報を両方提供するということになっているんですが,2の方は,アプリ提供者はアプリしか提供しないで,リンク情報自体はどこかから持ってくる,誰か別の人が提供するという形になっているということになります。すると,いろいろな性格分けがあると思うんですが,そういうアプリ提供者というのは,性格を分けますと,資料の5の下のところにあるリーチサイト運営者と理屈としては似ているということになるのではないかと。場を設定しているだけということで,そこへ情報を載せているのは別の人です。3のところで対応されている行為,今回差止めの対象になるとされている行為は,基本的にはリンク情報であったり,リンク情報と等価と思われるような情報を掲載したり,指令を掲載する行為というふうに特定されているわけですが,それとの関係でいうと,外部情報取得型2は少し場面が違うような気が。先ほどあったように,違法なコンテンツへの到達を容易にするというくくり方でくくれば何でも入ってしまうところではあるんですけれども,全体の整理の中からいうと,外部情報取得型2だけが,リンクそのものやリンクに等価なものを本人が提供していないのに差止めの対象になるというところにおいて,少し差があるのかなと思っております。

それから同じく5ページの,「国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものに係るリンク情報等についても差止請求の対象とする」という部分でございます。これは例えば現行の,今回の改正前の,本年の改正前の47条の6の検索エンジンに関する規定などでも,送信可能化にあっては国内で行われたとしたならばという,したならば規定というのが幾つか入っております。したがって,これ自体は考え方としてあり得ることだと思うんですが,例えば海外のパロディのサイト,パロディの動画があったとした場合に,そのパロディの動画に対してリンクを張るということがどういう評価をされるんだろうかということで,実はこの問題は今まで余り考えたことがなかったんですが,検索エンジンのときもこれで本当によかったのかというのはあったかもしれないんですが,考え方としてパロディ等々についてリンクを張るということをどう考えるかと。ただ,今回については,先ほどもあったように,場自体を違法なものを助長する場というふうに特定するので,そういう場にわざわざパロディを書き込むこともなかろうといって少し弱まるのかもしれないんですが,将来的にはいろいろ拡張されたり変化したりしていくことも考えると,「国外で行われたとしたならば」という,このしたならば規定の在り方でいいのか,それとも,著作権法でもう一つ,譲渡権の消尽のときは,日本法の権利と対応する権利が国外で正当に行われているならばいいんだと,国外で正当な行為だったらいいんだという,国際消尽の考え方がありますけれども,逆に言えば,海外のパロディがオーケーなんだったら,海外のその国のものでオーケーなんだったら,そこへリンクしても構わないという考え方もないわけではないと思いますので,その辺どうするかというのが1つ考え方としてあるのかなと思っております。

以上です。すみません,長くなりました。

【茶園主査】では大渕委員。

【大渕主査代理】,事務局で今までの考え方を整理していただきましてありがとうございます。

まず,基本的な視点につきまして,今回のこのペーパーの特徴は,みなし侵害というものを使って規制しようということだと思われます。これはまた見解の相違になりますが,私は,現行法でも,前からやっている間接侵害,要するに幇助者に対しては差止めができると思っておりまして,今回のペーパーを拝見しますと,ここに挙げられているとおり,2ちゃんねる小学館事件で,一審では差止めを認めてなかったのですが,高裁では一定の範囲では差止めを認めているのでありまして,幇助者とも評価できる者に対して差止めができるとの判決が出ております。

それを踏まえつつ,私の理解では,幇助というのは実体が従たるもの,ですが,リーチサイトはそうでは,ありません。これに関しては前も申し上げましたが,リーチサイトというのは,幇助しているだけではなくて,こんなに簡単にできるのならやってしまおうという教唆的な面もあるし,送信を幇助したり教唆したりしているだけではなくて,むしろ事後従犯的というか,侵害を別途,刑法でいえば,昔でいう贓物罪,今でいう盗品等に関する罪と基本的には同様に,侵害ファイルをまき散らしてもいます。教唆も含み,幇助の面もあり,事後従犯の面もあるという,複合的な,正犯と同視し得るような非常に悪質な行為であり,それを事務局の方で知恵を絞られて4ページの丸1,丸2のところで,悪質な場に絞り込んでいるというのがこの案全体の出発点で,あると思います。助長というのは恐らく,幇助的な意味の助長もあれば拡散的な助長もあって,両方入っているわけですが,それがここで悪質なものに,絞られているために,その他の点では余り絞らなくて済んでいるというのがこのペーパーの特徴ではないかと思います。

その関係で,先ほども出ておりました4ページの下のところの1,2で絞ってあれば,更に御審議いただきたいところというのは,それ以上にリーチサイトであることの認識というのは必要ないのではないかと。大本のところで認識で絞ってあればこれは必要ないのではないかと思います。

それから,今の点と関係しますが5ページのところで,一番肝になる概念は,幇助に似てきますけど,到達を容易にする,容易ならしめているという点であります。前で絞った上での幇助という感じかもしれません。ここで絞っているので,先ほど反対の意見がありましたが,私としては,更に御審議いただきたい点の外部情報取得型丸2というのも,メルクマールを容易にしているということであれば,これは,自分では提供してないけれども,人の情報をある種組み込んだ形でやっているので,そこのところは,自分で提供しようが人が提供しているものを自分の中に取り込んでやろうが,到達を容易,悪質な形で大量的に到達を容易にしているという点では,区別するのは難しいというように思っております。

それから,間接侵害も入れていただきまして,やはり今回のポイントは,みなし侵害と間接侵害,でありまして,一般法理の方は,特に立法はしないのですけど,それを念頭に置きつつ組んでいくというのは,良い役割分担だと思っております。

その関係で,7ページまでかと思いますけど,対象著作物については,前の方で絞り込んでおりますので,有償著作物に限定する等というようなことには必要もなく,かつ弊害があるのでやらないほうがよいと思いますから,これも事務局意見に賛成です。

それから,6ページから7ページのところも重要,であり,やはりルールはシンプルでないと,いけないと思います。侵害に当たるか当たらないかが分からないようでは,それだけで妙な形で萎縮効果が働いてくるので,最初のところをどう書くか重要ですけど,丸1,丸2のところできちんと絞ったら,あとは余計なところでは余り,絞らないほうがかえっていいのではないかと思っております。

その関係で7ページのところも,「原作のまま」「デッドコピー」とかいうと,少し変えたものですぐ潜脱されるということになりかねないし,これ,をやり出すとまた,「原作のまま」「デッドコピー」を規定するだけでも非常に難しくなって,かえって萎縮効果が働くので,前の方で絞った上で,このような余計なところで絞らないほうがよいと思います。

それから,丸5も重要ですが,私は,前申し上げたとおり,間接侵害でやるのであれば32条なども含めて,絞り込みの道具立てというのは現行法,にも入っております。今まで何度も申し上げておりますように,私は救うべきパロディは32条で救われると思っています。しかし,今般のみなし侵害はそのような話ではなくて,特に因果的寄与が特別に強度で悪質なものをくくり出してきているものなので,そういうものであれば,先ほどあったように,丸1,丸2を満たすようなものというのは,絞り込んでいるからパロディ等関係ないだろうというように思っています。だから,このようなことも必要ないのではないかということであります。やはり絞り込みを丸1,丸2で果たしているということに尽きるのではないかと思っております。

【茶園主査】ありがとうございました。では,龍村委員,お願いします。

【龍村委員】4ページの更に御審議いただきたい点,認識要件の点ですが,悩ましいところではありますが,丸1の「場」の要件ですね,「助長寄与場」とでもいいましょうか,この要件を,ここでは民事の差止請求の要件の議論でありますが,ほぼ同様に刑事についてもこれが前提になるようですので,この助長寄与場というものは,刑事においては客観的構成要件要素になると思われます。そうしますと,やはり事実的故意,構成要件的故意の対象としてその認識が要求されるのが原則になるかと。そうだとしますと,民事と大きな隔たりがあっていいのか,民事の場合も,同様としなくてもいいのかという疑問があります。

また,それが,ある意味,実質的な意味では,表現の自由とのバランスといいますか,そういう観点からしましても,認識を要求するという線がウェルバランスなのではないかという考えもあるかもしれません。もちろん,民事の場合,知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合も含めるようにすればいいわけですから,丸2の主観面のところで違法にアップロードされた著作物の認識においても,知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には肯定するわけなので,それと同じレベルにおいて助長寄与場の認識も捉えるということも可能なのではないかと思います。それと,丸3,行為の方ですけれども,確かに御指摘のように,外部情報取得型丸2はやや違う類型だなということが見て取れるわけですけれども,実質的には,やはりこれも到達を容易にしているということでは同じことで,ただ,みずから提供したサイトではないので,一種の媒介行為に近いのかと。情報の提供等と評価するといいましょうか,提供ないし媒介といいましょうか,媒介行為の方に近いのかと。ただ,その媒介も広義では,情報到達容易という概念の中にやっぱりインクルードされるという意味ではそこに入ると思いますので,要件の表現は工夫するにしても,そこに入れるということはあり得るのではないかと思います。

【茶園主査】では,小島委員,お願いいたします。

【小島委員】5ページのところですけれども,先ほど奥邨先生からも御指摘のあった,「国内で行われたとしたならば」というところですが,この問題というのは,私自身は媒介者責任の,準拠法の問題が関係してくるんじゃないかと考えておりまして,2009年だったかと思いますが,国際小委員会の国際管轄準拠法ワーキングチームなどでもこの問題を議論したと記憶しています。

媒介者責任の準拠法については,国際的に見てもきちんとした見解は定まっていないと思っておりまして,それはどうしてかというと,媒介者自身が,何らかの表現行為,あるいは伝達行為ということをやっている以上は,場合によってはその媒介者の表現の自由とか,そういうふうな問題も出てきかねない。

そうなると,例えば媒介者が常居所を置いている地の法を準拠法にするというふうな案もあったりするんですが,そうなりますと,そこでは常居所地の法は外国法になってしまいますので,外国法上の表現とか伝達に関する自由とかと,日本法の表現の自由が抵触するというような,そういう場合もあるんじゃないかということを議論したように思います。

そうなってきますと,このあたりをどういうふうに整理するかというのは非常に難しいんですが,先ほど奥邨先生からパロディというお話がありまして,そういうふうなものがどんどんサイトの中で割合,が多くなっていくと,当然そういう緊張関係に関する問題が顕在化してくるということになるんだろうと思います。もっとも,少なくとも5ページのところで議論しているリーチサイトというものは,先ほど来,議論のある,場とか主観などの要件でかなり絞りが掛けられていると思いますので,こういうものについては,奥邨先生もおっしゃっておられましたが,「国内でしたならば」という規定をある程度,いわゆる直接侵害に引き付けて考えるということをしても,それなりに合理的なのではないかなと,私個人は考えております。

ただ,後のほうの議論になりますが,検索サイトなどになってきますと,この,緊張関係がより顕在化するだろうとは理解しております。

とりあえずは以上でございます。

【茶園主査】ほかにございますか。では,鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】4ページの「更にご審議いただきたい点」ですけれども,これは,丸1で選択肢として示されている最初のかぎ括弧の「目的」と書くか,それとも2つ目のかぎ括弧の「機能」という客観的な要件として書くかと連動する問題なのかなと思います。

「目的」と書けば,下の「審議いただきたい点」で「認識も要件」ということをわざわざ書かなくてもいいのではないか,逆に,あえて「機能」と客観的に書くのであれば,さらに「認識」を求めると,実質上,「目的」を必要とするに近くなってしまうので,むしろ「認識」は不要とした方がよいのではないかということで,丸1の選択のどちらを取るかというところに帰するのかなと思います。

私自身は,客観的に「機能」と書き,それから,丸2の本文に書かれたような主観的要件を設ければ,それ以上に,「審議いただきたい点」で聞かれているような認識の要件はいらないのではないかと思います。

【茶園主査】ありがとうございました。では,上野委員。

【上野委員】時間もございません,3点コメントさせていただきます。

1つ目は,丸2の「主観」に関して,場の性質に関する,認識まで要件とするかという点で,いろいろ御意見があったかと思いますが,ここに書かれている認識というものが,リンク情報の提供等を行う場が丸1の要件を満たすような限定的なものだということを知っていることを意味するとしますと,権利者としては,リンク情報の提供等を行う者が,リンク先が違法であるということを知っているか,あるいは過失により知らないことのみならず,これに加えて,その場の性質についてまで知っていたことを立証しないといけないということになりますので,やや権利者にとって立証負担が大きいのではないかと思います。

ただ,もし,それが立証負担の問題だけであれば,ここにいう場の性質に関する認識はただし書きにおいて規定することなどによって,その立証責任を転換するという手もあるかと思います。

2点目は,丸3の「行為」に関してですけれども,外部情報取得型丸2に関しましては,これが「侵害コンテンツへの到達を容易にしている」と評価できるのであれば,差止の対象に含めて良いという点については,私も同じ考えを持っております。

その上で,条文化に当たりましては,どこまで抽象化するかというのが問題になるところで,あります。現状の「送信可能化」の定義(2条1項9号の5)も,「公衆送信し得るようにすること」とだけ書いているのではなく,その手段をイとロという形で限定的に定めておりますが,これと同じようにするのがいいのか,それとも,将来的な技術の変化に対応,できるように条文上は抽象的な要件にしておきながら,その明確化についてはガイドラインを活用する手もあるかと思います。

3点目は,丸5の「正当な目的を有する場合の取り扱い」についてでありますけれども,みなし侵害ということにしますと,引用規定など権利制限規定の適用を受けられない可能性が考えられますので,もし丸1の要件を満たすような限定的な場において,適法引用に当たるような形でリンク情報のつぶやきをすることについて,これを許容すべきだと考えられるのであれば,――丸1の場がどれくらい限定されるかにもよりますけれども――,特に先ほどの場の性質に関する認識を要件にしないとする場合は,やはりこれが許容されるようにするための何らかの,安全弁があった方がいいように思います。

その際には,今回のTTP11協定に伴う改正によって設けられることになる新113条3項における「場合を除き」というような除外の仕方が参考になるのではないかと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。では,森田委員,お願いします。

【森田委員】先ほどの鈴木委員の御発言とも関係いたしますが,今回の案で重要な意味を持っているのは,丸1の「場・手段について」の限定をどのように行うかであり,この点がポイントだろうと思います。

ただ,丸1では,限定する方法として,「主として違法な自動公衆送信を助長する目的で開設されている」という主観的な要件による限定と,「主として違法な自動公衆送信を助長する機能を担っている」という客観的な要件による限定とを例示したうえで,「サイト開設等の目的や客観的に果たしている機能に着目して」,限定してはどうかとまとめられていますが,これが主観と客観の2つの要件で絞るという趣旨なのか,いずれかの要件で絞るということなのか,そのあたりがまだ曖昧なままの案になっています,この点がどうなるかによって,丸2や点線の囲みの「更にご審議いただきたい点」についての考え方というのも変わってくると思いますので,まず,丸1の方をどのように考えるのかについて,今後より明確に詰めていただきたいと思います。

私自身としましては,2の「検討の視点」に示された考え方を踏まえますと,客観的要件と主観的要件の両面で,限定するというのが重要ではないかと思います。そこで主観的な要件が入ってくるとしますと,この丸2の「主観」についても,違法にアップロードされた著作物と知らないけれども,違法な公衆送信を助長する目的があるという場合があるのかというと,違法な公衆送信を助長する目的があるという場合には違法にアップロードされた著作物と知っているのが通常であるといえますから,「違法にアップロードされた著作物と知っている場合」という,要件は,丸1の主観的要件の中に吸収されます。丸1の要件の方でいろいろ絞っていくと,丸2のほうで重ねて主観要件を加える必要はないが,丸1で主観的要件をなくしてしまうと丸2のほうで独立に問題となるという御発言が続いたと思いますが,まずは丸1の限定の仕方について今後詰めていった上で,それ以外の点について詰めていくという検討の必要があるかと思います。

それから,7ページの丸4の「対象著作物」について更にご審議いただきたい点として,「デッドコピー」に限定したりすることは適当か」という点については,私自身は限定する方がよいのではないかと思います。一部改変や翻案したりして作成された侵害コンテンツを差止請求の対象に含めるかどうかというところで,「権利の適切な保護と表現の自由の保障のバランスの観点」とありますが,「検討の視点」にありますように,今般の対応というのは,およそ一般的に違法と適法の境界をどのように画定するかという問題ではなく,特に緊急に対応する必要性の高い悪質な行為をくくり出して対応するということであり,それによって負の効果を抑えるという点が主眼でありますから,そういう観点からいきますと,果たして一部改変や翻案について含める必要があるという立法事実が現時点で存在するのかどうかという点を検討すべきであろうと思います。この部分については,違法と適法の境界の一般的な線引きの議論がどうも紛れ込んでいるような気がいたします。

以上であります。

【茶園主査】ありがとうございました。では,最後に井奈波委員。

【井奈波委員】6ページ目のリーチサイト運営行為そのものの差止請求についてというところで過剰差止という言葉が出てきますが,私自身は,これは本当に過剰差止に当たるのかどうかということについて疑問に思っております。

ネットではなくてリアルの世界を考えてみると,例えば1つの書籍とか,1つのCDとかに違法な著作物が1個入っていたとしても,全部差止の対象になり,それを過剰差止とは言わないと思います。

なので,リーチサイト運営行為そのものも,差止の対象にしていいのではないかと考えておりますけれども,そのこととの対比で,前の5ページのさらに御審議いただきたい点にある外部情報取得型の丸2についても,リーチサイト運営者と同視できるということで,それもやはり同じように対象にすべきではないかと考えております。

また,こちらを対象にすべきであるとすると,リーチサイト運営行為そのものについても対象にしないとバランスが悪いのではないかと考えております。

【茶園主査】どうもありがとうございました。本日は,全部について御意見を伺いたいと思っておりますので,ほかに御意見等がございましたら,後ほどお願いすることといたしまして,次は,2つ目の8ページ,(2)刑事についての部分について,御意見,御質問等がございましたら,お願いいたします。

では,深町委員。

【深町委員】刑事についてですが,2点ありまして,1つ目はアの類型についてです。リーチサイト・リーチアプリ等におけるみなし侵害の行為についてですが,先ほど来から問題となっている4ページ目の丸2の主観の話が,まさにこちらに跳ね返ってくるものと思われます。

要するに,リーチサイトであることの認識を要件とするかということですが,少なくとも刑法においては,もし客観的構成要件においてリーチサイトという場に関して規定するのであれば,それについての認識が必要であるということは,故意処罰の原則(刑法38条1項,)からすると当然ということになります。そうすると,特に明文でリーチサイトについての認識が要らないという形で過失犯処罰の趣旨を明示しない限りは,刑法の議論としてはその認識が必要となるということになろうかと思われます。

そうしますと,少なくとも刑事についてはリーチサイトであることの認識がなければ処罰対象となりません。翻って考えてみますと,そもそもリーチサイトという場に限定することこそが,行為状況・手段の限定として可罰的な違法性を括り出しているのですから,この点についての認識がないと,やはり故意処罰の原則からして不十分であると考えられるところです。

したがいまして,(1)のみなし侵害行為のうち,過失によるものについては処罰対象から外すというのであれば,まさしくリーチサイトであることの認識についても,この点が過失であるような場合については処罰対象から外すという形で,ここはやはり認識が必要だという形で一貫させるべきであろうと,少なくとも刑事罰については思うところです。これが1点目です。

2点目に,リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為という場の提供,それ自体を処罰対象とするというのは,差止請求の対象とはならない行為について,刑事罰の対象とするということを意味します。

この点については,先ほど井奈波委員からも御意見があったところと連動すると思うのですが,差止請求の対象とはならない程度の行為について刑罰の対象とするのが妥当なのかという,疑問がやはり生じるところです。もちろんそういう事例が注10には示されているところですし,このリーチサイト運営行為,リーチアプリ提供行為というのは,先ほど大渕主査代理がおっしゃった点にも関わりますが,要するに盗品等関与罪における事後従犯的性質(いわゆる「ブラックマーケット」の形成)とも類似した,違法行為を促進・助長させるような場を設定するという,類型的な違法性の高い行為だということ自体は,まさにその通りであると思うのですが,場の提供・運営行為それ自体を処罰対象とするということであれば,まさに,そういう場の提供自体が有する類型的な違法性をきちんと括り出さないといけないと考えます。要するに,そういう場にリンクを張る行為ではなく,そうした場を運営する,行為や提供する行為自体の悪性を問題とするということですので,先ほどの過剰差止の話とも関連するのですが,その中には良いものも存在するが悪いものも存在するような,そういった場を提供・運営することが,それ自体として刑罰の対象となるという形で構成されることになるので,その場合には,注10に出てくる技術的保護手段の回避措置のような,まさにそれ自体として専ら良くない形で使われるものが想定されるような規定と比べると,適法なものと違法なものが混ざると表現すべきでしょうか,そういった場の中に,あるもの全てが悪いものであるとは限らないという可能性があるわけです。

したがいまして,リーチサイト運営やリーチアプリ提供,特にサイトの運営につきましては,過剰差止の問題があるのと同じように,適法なものも違法なものも含まれうる場を運営する行為について,主として違法なものが含まれる場を運営するという点に着目して,その法益侵害性の高さというのを独自に括りだすという形で限定しないと,こうした処罰規定の創設は困難であると思われるわけです。

これとの関係で,アとイについては,将来こういった行為類型を処罰対象とするときに,どのような法定刑を設けるのかといったことについても,今後より丁寧な検討が必要であろうと思う次第です。

以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。では,松田委員。

【松田委員】今の刑事との関係で,民事に戻って恐縮ですが,私の意見は,主としてという,おおよそ一定の幅を持った概念を設けても,助長する目的の目的というのは,本来これは主観的要件で,この丸1に書いてあるのではないと思っておりました。だから,機能と言ってもいいのかもしれません。

これについては,主観的要件を差止の要件とせず,丸2の主観的要件のみ,すなわち著作物として知っている場合ないしは知ることができるに足りる相当な理由がある場合,これのみを主観的要件として差止は認めるべきであると思っております。

しかしながら,これと同じ要件をパラレルに刑事罰規定にすることになりますと,恐らく,主として助長する機能を持っているという場の認識これ自体も故意の要件になると私は思っております。また,それでいいのではないかと思っております。

刑事については,一定のたがが,主観的要件の行為の認識,どこまで客観的状況を認識する必要があるかという点については,主としても含まれるということになると思います。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】もう皆さん言われていますが,刑事では,構成要件に書かれているものは全部故意の対象となるというのは,別に書かなくても当然なので,そこはもう議論する必要もないように思います。普通は刑法の一般原則は故意犯しか処罰しない,そして,故意犯だったら構成要件に掲げたものは全部故意の対象になるという,非常にシンプルな話だと思います。

先ほどどなたか言われたとおり,民事,刑事が逆転する原則はおかしいので,民事の方で適法なのに刑事では違法となり,刑罰に服してしまうというのはおかしいから,その点は注意する必要があると思っています。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。では,末吉委員。

【末吉委員】深町委員が先ほど言われた,イのリーチサイトの運営,リーチアプリの提供行為を刑事罰化する検討は非常に重要だと思います。

この刑事罰で,運営,提供行為が射程に入ってくるということと,ちょっと戻りますが,6ページの6行目,なお書きのところが,これは「場」についての違法行為を民事上認めることが,限定的な場合ではあるがあるという指摘で,私のような実務家から見ると,プロバイダ責任制限法を使って発信を止めるという方が一番速い。それより速いのがサイトブロッキングだと思っているんですけれども,少なくともリーチサイトのところで,民事,刑事で「場」自体を止める,仮に民事でだめだとしても,刑事罰にまでなってしまうと,プロバイダの協力も得られるかもしれないという意味では,実務家としては,救済という観点からは非常に重要なファクターだと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。では,最後,3つ目の,9ページ以降のインターネット情報検索サービスへの対応についてにつきまして,では,奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】2点だけ簡単に。まず,ここの規定ですけれども,アメリカですと512条d項というのがあって,これはセーフハーバーの規定なのですが,アメリカの判例法上は検索エンジンがリンクを提供すること自体が著作権侵害になるかどうかというのは議論が分かれます。

分かれますが,Notice and Take Downをすれば損害賠償請求を免れるというセーフハーバーがあり,かつその場合は,512条j項に基づく差止命令の対象にもなるという形で,裏側からこれは書く形になるんですけれども,ほとんどこれと同じような対応が決められているということだと理解をしておりますので,事業者の方にも聞いてみないといけないと思うのですが,検索サービスの実態に,現状やっておられることに大きく支障はないのではないかという気がいたしております。

それが,まず1点目の評価で,もう1点は,先ほど,私,外部情報取得型アプリの2について申し上げましたけれども,あれにつきまして,私としてはむしろこちらのインターネット情報検索サービスに近いと思いますので,こちらの中の一類型として整理をした方が全体的には貫徹できるのかなと思います。あれを規制対象から外していいということではなくて,先ほど他人の情報を媒介するというお話がありましたけれども,それとの関係でいえば,どちらかといえばこちらに近いのではないかなと思っています。

ただ,そうした場合に,こちらの一般的なインターネット情報検索サービスと外部情報取得型2とではちょっと状況が違いますので,要件が違ってきたり,対応が違ってきたりすることはあると思いますが,整理としては,1の中に入れて情報を容易にするものとし始めると,先ほど前田委員からもありましたように,どんどんどんどん拡張していきますので,それよりは少し性格を分けた方がいいのかなということを,少し漠然と今思っております。

以上です。

【茶園主査】ほかに。では,森田委員。

【森田委員】今回,これまでの議論を整理いただきまして,その結果,5の「インターネット情報検索サービスへの対応」の問題というのは,その前のリーチサイト・リーチアプリ等の問題とはかなり異質な問題だということがはっきりしたように思います。そのことは,「検討の視点」に「さしあたり緊急に対応する悪質な行為類型を取り出して対応を検討する」とありますが,ここで検討されているのは,そのような悪質な行為類型として,インターネット情報検索サービスを取り出すということでは,全くないことにも示されているように思います。

それにもかかわらず,インターネット情報検索サービスについても,リーチサイト・リーチアプリ等と問題の立て方がパラレルになっているわけですが,丸1の「場・手段について」という項目は立てていますが,この点ではまったく限定がないということですし,丸2の「主観要件」というのは「違法にアップロードされた著作物と知っている場合」とありますが,差止請求をした場合にはそれによって違法にアップロードされた著作物であるということで知ることになりますから,過去の行為について損害賠償請求するのとは異なり,将来に向かって差止請求をする場合は過去に知っていたかどうかは問題にならないはずでありますので,丸2についても何らの限定も課されないということになります。そうしますと,要するに,違法な著作物であればすべて差止請求の対象に含めて,特に要件として限定しないことになるのではないかと思います。ここでは,情報検索サービス一般について,どのような情報であればその検索結果の表示から削除をしてくれということが言えるかという一般論が問題となっていると思いますが,そのような議論はこの場ではほとんどしてこなかったので,その点の検討は十分でないところがかなりあるかと思います。

この資料4は,インターネット情報検索サービスの問題を,リーチサイト・リーチアプリ等とパラレルに問題を立てようという構成になっていますが,情報検索サービスというのは,結果として違法行為を助長するという面もあるけれども,それはニュートラルな立場から,全ての情報をプログラムを用いて自動的に収集し,検索結果として提供しているだけであって,違法な情報について拡散しようという目的で行われているものではありません。したがって,リーチサイト・リーチアプリ等についてと同様の考え方からその対象を限定するという問題ではありません。そういう中立的な立場から,インターネット上の情報流通の共通基盤として不可欠な役割を果たしている検索事業者について,違法な著作権侵害行為の拡散を回避するために一定の協力を求めるとすれば,どういう場合であれば可能であるかという意味では,サイトブロッキングとも共通する面がある問題でありますので,リーチサイト・リーチアプリ等の延長上に位置づけるのではなく,インターネット情報検索サービスについては,そのあたりの問題全体について整理を,もう一回基礎からやっていただく必要があるのではないかと思います。

以上です。

【茶園主査】では,前田委員,お願いします。

【前田(健)委員】今,御整理ありましたように,こちらの検索サービスの対応については,行為の主観的な意味での悪質性に着目するわけではなくて,客観的に著作権侵害を助長する結果を生み出してしまっているという,行為の客観的な結果に着目して規制するということだと思うので,そういう意味では,リーチサイト,リーチアプリに対する対応とは趣旨が違うということは,私もそのとおりだと思います。

その上で個別具体的な話ですけれども,3点ほどあります。

まず,以上のような状況を踏まえると,侵害コンテンツに係るリンク情報の提供行為が,そういったリンクが検索結果で示されることによって侵害を助長するという事実が仮にあるのだとすると,これの削除を要請するということはあってしかるべきだと思います。現状,既に自主的に対応もされているということなので,請求権を創設する必要性というのは必ずしも高くないのかもしれませんけれども,そういった運用に対して正当性を与えるという意味では必要なのかなと思います。

2点目が,トップページをどうするかということです。トップページを検索結果で得て侵害コンテンツにたどり着くということは,実態としてはたくさんあるように思いまして,そういった意味では,社会的な観点からすると抑える必要性というのはあるのだろうと思います。

ただ,一方で民事の差止請求権というのは,あくまで個々の著作権者の救済というたてつけによって与えられると思いますので,サイト全体について,トップページの検索結果を表示させないということが,個別の権利者の救済というところから,どこまで正当化できるのかなというのは,ここの整理にも示されているとおり,疑問の面はあるのかなと思っています。一方,集合的な意味での著作権者の救済という意味では正当化できる余地があるように思いましたので,もしこういったものについて差止請求権を認めていくのであれば,個々の権利者の救済ではなくて,集合的な意味での著作権者の救済という位置付けにする必要があるのかなということを考えております。

それから,3点目です。刑事罰についてですけれども,現状,個別リンクについては自主的に対応いただいているということですし,仮に対象をトップページに増やしたとしても,恐らくそこは自主的に対応していただけるということが見込まれるのではないかと思います。そういった状況の中において,あえてエンフォースのために刑事罰を設ける必要性というのは高くないのではないかと認識しております。

以上です。

【茶園主査】では,大渕委員,お願いいたします。

【大渕主査代理】先ほどのリーチサイト,リーチアプリと,この検索はパターンが違うことは間違いがなくて,向こうは目的,機能なのですが,こちらの方は結果が出てしまったという点で違うのですが,少なくとも出たことを知った後で放置すれば似たような話になってくるわけであります。要するに結果が出たからというよりは,分かって,かつ削除を求められているのにあえて放置するというのは,先ほどの目的なりというのにかなり近い形に,なってきます。それは容易化する行為をずっと続けているということになってきますので,そのような意味では,書き方は変わってきますが,先ほどの横並びで,これも拡散を助長するような悪質な行為だからみなし侵害にする必要は高いのではないかと思っております。

そのような意味では,先ほどのメルクマールにする限りこれも入ってくるし,それから,トップページについては,私はやはり差止でやる以上,個別の対応になりますが,一律にトップページを除外してしまうと,トップページにさえ行ってしまえば,そのまま簡単に最後までいくような場合でも,それが全部すっぽ抜けてしまいます。このような形で一律に除外してしまうと,せっかく制度を作るのに実効性がなくなってしまうので,配慮するとしたらもう少しきめ細かくすべきであって,トップページを一律除外するというのは問題であると思います。

【茶園主査】松田委員。

【松田委員】まず,トップページの点の意見を言います。トップページを外さないことには実効性がないということが,具体的な争訟において立証できる場合においては,112条第2項のその他侵害の停止,又は予防に必要かを裁判所に判断してもらえばいいと考えます。言ってみれば,この立証をするかどうかに係らしめたらいかがかと思います。

しかしながら,私の基本的意見はもっと前の段階にあります。果たして,5のインターネット情報検索サービスとしての差止を考察するときにおける場・手段というのを10ページに書いてあるわけですけれども,この場・手段についての記載は,先ほどの4ページの場の記載とタイトルは同じですが中身は全く違うわけです。ここまで広げていいのかと思います。

【茶園主査】時間が参ったのですけれども,全体を対象に,今回,是非とも意見を述べたいということがございましたら,お願いいたします。何かありますでしょうか。よろしいでしょうか。では,どうもありがとうございました。

リーチサイト等への対応につきましては,次回は取りまとめに向けて,さらに議論を深めていきたいと思います。事務局におかれましては,本日頂きました御意見を踏まえまして,論点の整理をお願いいたします。

他に特段ございませんでしたら,本日はこれぐらいにしたいと思いますけれども,最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】次回,小委員会につきましては,日程調整の上,改めて御連絡したいと思います。ありがとうございました。

【茶園主査】では,ありがとうございました。

それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第1回を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動