文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第3回)

日時:平成30年9月10日(月)
10:00~12:00
場所:東海大学校友会館望星の間


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料
リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関する論点整理(案)(1.1MB)
出席者名簿(46.5KB)

議事内容

【茶園主査】それでは,定刻になりましたので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第3回)を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございますけれども,特に御異議はございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

では,まず事務局の人事異動についてですけれども,前回の開催以降,事務局の人事異動があったそうですので,御報告をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御報告申し上げます。8月17日付で文化庁長官官房著作権課専門官として,大野雅史が着任しております。

【大野著作権課専門官】大野です。よろしくお願いします。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元,議事次第を御用意ください。配布資料としまして,リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関する論点整理(案)と題する資料を御用意しております。それから,本日,机上のみでございますけれども,インターネット情報検索サービスにおける検索結果に関する参考資料を御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお申し付けください。

【茶園主査】よろしいですか。では,初めに議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は,(1)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について。(2)その他ということになります。

では,早速議事に入ります。まず(1)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応についてです。本課題につきましては,前回の本小委員会において,権利者やインターネット情報検索サービス事業者からヒアリングを行いまして,検索サービスへの対応,それからリーチサイト等への民事及び刑事での対応について議論しました。

本日は,事務局におきまして,これまでの本小委員会での議論を踏まえまして論点整理を行って頂きましたので,その御説明を頂くとともに,幾つかの場面に区切って御審議いただきたいと思っております。

審議の進め方につきましては,三つに分けまして,まずは問題の所在から検討の視点等まで,2番目,その次に,リーチサイト・リーチアプリ等への対応について,3番目,最後にインターネット情報検索サービスへの対応についてという流れで進めていきたいと考えております。

それでは,まずは1ページ目から20ページ目までなのですけれども,問題の所在から検討の視点等までにつきまして,事務局より資料の説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。資料を御用意ください。第1節から20ページまでにつきましては,主にこれまで御紹介しましたような情報を改めて整理したものが大半でございますので,省略しながらポイントのみ絞って御説明していきたいと思います。

まず第1節,問題の所在でございますが,検討の経緯につきまして,これまでの経緯を知財計画の御紹介等を含めて御説明しておりまして,更に3パラ目の方では,昨今のインターネット上の海賊版の被害の深刻化を受けまして,政府の知財本部のタスクフォースが設置されたこと。それから,そこでは海賊版対策に関する総合的な対策の取りまとめを行うべく,様々な手法について検討が行われておりまして,そこではリーチサイトへの対応,それから後ほど御議論いただく,インターネット情報検索サービスへの対応についても掲げられているということを記述しております。

次のページをお願いいたします。第1節2ポツとしまして,リンク情報等の提供による侵害コンテンツへの誘導行為に係る現状を整理しております。こちらの(1)リーチサイト・リーチアプリ,(2)でインターネット情報検索サービスといった形で,場面に応じて整理をしておりますけれども,基本的には既存の情報でございまして,まず(1)リーチサイト等につきましては,電気通信大の調査の概要ですとか,それから本小委員会において行いました権利者へのヒアリングの御紹介を通じまして,リーチサイト等を通じた被害がかなり深刻であるということがうかがえるものとなっているというように承知しております。

中身は省略させていただきます。

5ページ,インターネット情報検索サービスについて,こちらでもヒアリング等の結果を御紹介しております。こちらも詳細は割愛させていただきますけれども,インターネット情報検索サービス事業者,主な事業者としてグーグル様からヒアリングを行ったわけでございますけれども,グーグル様の方では個別コンテンツのリンクの削除ということにつきまして,かなり精力的に対応いただいておりまして,海賊版対策に前向きに取り組まれているということが把握されております。

7ページ以降の方で,主に権利者の御意見等,権利者から把握された情報などを御紹介しておりますけれども,権利者におきましては,特にトップページなどをはじめとしまして,更に改善すべき点があるといったことが紹介されているというところでございます。

8ページ(3)におきましては,こうした場合以外にもゲーム関係者の方からは大手の汎用的な目的のUGCサイトにおいて,ゲームの違法コピーが蔵置されたサイトへのアクセス方法からダウンロード方法までを指南するようなものもあるといった,別の切り口の実態が説明されておりました。

続きまして,9ページでございます。現行法による対応可能性ということにつきましても,一昨年,昨年と御議論頂いたわけでございます。まず,著作権侵害コンテンツに係るリンク情報の提供等の性格というものにつきましては,過去の裁判例では著作物の自動公衆送信や送信可能化には,そのものには該当しないというような判断が行われた例もございますし,また,幇助への該当性についても,その事案では否定されたという事例もございますけれども,一定の場合には公衆送信権侵害の幇助が成立する可能性があるといった解釈論も展開されておるところでございまして,本小委員会におきましても,そうした解釈論が複数の委員から示されたという状況でございます。

このようなことも踏まえまして,損害賠償請求との関係では,著作権侵害の幇助若しくは単独に請求は可能,対象となり得るという御意見があったところでございます。

また,差止請求につきましては,直接侵害ということにはならないというように理解した場合には,基本的には差止請求は困難だと考えられるわけでございますけれども,幇助に該当するとした場合につきましても,肯定的に捉える意見もありました一方で,否定的に捉える御意見も多く示されたという状況でございます。

刑事罰につきましては,幇助に該当するということでしたら,刑事罰の対象にはなり得るわけでございますけれども,しかし立件が困難だという場合も多いのではないかといった課題が指摘されたところでございます。

以上のことを踏まえまして,本小委員会では差止請求権の付与及び刑事罰の導入について,特に検討を行う必要があるということで議論がなされてきたという旨を記載しております。

10ページ目をお願いいたします。こちらでは関係者等の意見ということで,これまでの小委員会におきますヒアリングにおいて示された意見等を御紹介しております。まず1番,権利者団体の御意見としまして,こちらも詳細は割愛してまいりますけれども,まずリーチサイト・リーチアプリについては,これも問題が深刻であるということで,民事,刑事両方について対応を求める意見がございました。

それからインターネット情報検索サービスについて,次のページでございますけれども,こちらは将来的な立法措置ということも御要望されつつ,特にトップページの問題につきましては,当事者の協議によって今後解決を進めたいという御意見がございました。

続きまして,2ポツ,ISP関係団体,消費者団体からのヒアリングも行いました。12ページをお願いいたします。総論的な御意見が多く寄せられたわけでございますけれども,表現の自由に関する萎縮効果への配慮ですとか,立法事実の確認といったことが必要だという御意見がございました。

それから次のページ,インターネット情報検索サービスにつきましては,検索事業者の方からは,資金源を断つといったことも含めてパッケージの対応が必要ではないかという御意見ですとか,それから三つ目のポツでございますけれども,日本で独自の法律を作って,独自のフォーマットというものを作りますと,それで削除通知を別途しなければならないということで,時間やコストが掛かるということで,引き続きDMCAを活用してほしいという御意見でございました。

それからDMCAの運用面での改善につきましては,権利者との話合いで取り組む方がよいのではないかという御意見でございました。

それから,レイヤーは違いますが,憲法学者の木下先生より意見の提出をいただきました。今回の課題いずれも,表現の自由との関係について押さえておくことが求められておったわけでございますので,リーチサイト規制全般,それからインターネット情報検索サービスとの関係につきまして,それぞれ意見の提出を頂いたところでございます。こちらも詳細は割愛いたしますけれども,ポイントのみ御紹介しますと,まずリーチサイト規制との関係につきましては,動画等自体のURLを提供する行為の規制といいますものは,伝統的な著作権法の枠組みの範囲内での規制と実質的に同視できるということで,直ちに憲法上の問題は生じないとされておりました。しかし萎縮効果への配慮から,対象を海賊版に限定すること等々の必要性については検討が必要であるとされておりました。

それから,16ページをお願いいたします。インターネット情報検索サービスとの関係でございますけれども,とりわけ平成29年1月の最高裁決定によって得られる示唆を踏まえた御意見を御紹介頂いたわけでございます。これにつきましては,平成29年最高裁決定といいますのは,インターネット情報検索サービスのインターネット上の情報流通の基盤としての役割を踏まえても,検索結果の削除を法的に義務付けることは憲法上許容されるという前提があるというように御説明がありまして,その最高裁決定の示した明白性要件との関係では,著作権を法的に保護することは,他の対立する諸利益よりも優越するということは既に法律によって合意されているというような考えによって,改めて利益衡量論を持ち出す必要はなく対応ができると。しかし,その明白性要件に関連して,過剰削除の問題については配慮が必要であるといった御意見がございました。

こうした理論を踏まえまして,19ページでございますけれども,第3節としまして,検討の視点等について,まとめさせていただいております。こちらも,いずれも既に先生方に御覧頂いた文書でございますので,簡単に説明いたしますけれども,まず1番,検討の視点につきましては,主に今回は表現の自由の萎縮効果等への配慮から,3パラ目にありますように,リンク情報の提供行為全般について,違法と適法の境界を画定することは必ずしも容易ではないということも踏まえまして,今般の検討ではリーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為による被害状況を踏まえ,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型を取り出すということにいたしました。

三つ目のパラを付け加えさせて頂きましたけれども,すなわち今般の制度整備といいますものは,そうしたリンク情報提供行為全般に関する解釈に影響を与えるということや,まして間接侵害一般に係る解釈に影響を与えるということを企図するものではないということを付け加えさせていただいております。

2ポツ,対応に当たっての基本的な考え方につきましては,こちらも既に御覧頂いたとおりでございまして,リーチサイトやリーチアプリ,それからインターネット情報検索サービスが侵害コンテンツの拡散に寄与しているということを触れた上で,これらについての対応の必要性は高いというようにしておるところでございます。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では,ただいま御説明頂きました内容につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますか。

では,特にないようでしたら,後ほどでも結構ですので,先に進みたいと思います。続きまして,21ページから33ページ,第4節1ポツ,リーチサイト・リーチアプリ等への対応について,事務局より説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】それでは21ページをお願いいたします。第4節,対応の方向性としております。まず1ポツのリーチサイト・リーチアプリ等への対応について御説明申し上げます。(1)民事の差止請求についてでございます。まず総論という部分,少し加筆いたしましたけれども,リーチサイト・リーチアプリといったものは侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い「場・手段」であるということですので,これらを通じて侵害コンテンツに係るリンク情報等の提供をする行為は,基本的には著作権侵害と同視すべき大きな不利益を著作権者に与えるものであると評価できることから,著作権者の権利保護の実効性を確保するために,当該行為を一定条件の下で差止請求権の対象とすることが適当と,少し趣旨を付記しております。

具体的な方法案としましては,著作権等を侵害する行為とみなすことが考えられるとしております。

続きまして,ここから各論点,既に御議論頂いた内容を整理したものになります。場・手段につきましては,二つ目のパラグラフにありますように,「主として違法な自動公衆送信を助長する目的,若しくはその機能を担っているウエブサイト等」としまして,そのサイトの目的や機能に着目して,侵害コンテンツへの到達を容易にすることを通じて侵害の助長に寄与する蓋然性の高い場等に限定することは考えられるとしております。この限定方法につきましては,目的及び機能両方に着目するという考え方もあるというように御意見もございましたところでございます。

これらを踏まえまして,具体的な制度設計に至っては,目的と機能それぞれに着目する場合に生じる効果を吟味しつつ検討が行われることが適当としております。

ウ,主観についてでございます。こちらは著作物のアップロードが違法なものであるか否かを,リンク情報等の提供者が判断するというのは容易ではないという場面も存在すると考えられるところから,表現の萎縮につながる可能性もあるということで,一定の主観要件を課すことが適当としております。なお,表現の萎縮という部分につきましては,差止ぐらいであれば,さほど萎縮にはならないのではないかという御意見もあったところではございますが,今般の制度趣旨に鑑みて,特に悪質な行為に限って,このような表現の萎縮にも配慮するということで,今回の方向性とさせていただいております。

具体的にはというところで,「違法にアップロードされた著作物と知っている場合,又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」等として,侵害コンテンツであることについて故意・過失が認められる場合に限定することが適当としております。

それから,これ以外の観点としまして,リーチサイト等の場等であるということについての認識を求めるか否かということについても御議論がございましたが,これに積極的な御意見もございましたが,消極的な御意見も複数ございまして,また23ページの上から四つ目のパラグラフにありますように,場・手段についての要件との関係を踏まえて検討するべきという御意見もあったところでございます。これらを受けまして,具体的な制度設計に当たっては,これらの意見を踏まえ,場・手段に係る要件によって生じる効果を吟味しつつ,検討が行われることが適当というようにしております。

続きましてエ,行為についてでございます。資料のつくりとしましては,侵害コンテンツへの誘導の直接性,ローマ数字1,それから侵害コンテンツの誘導の方法,ローマ数字2,ローマ数字3としてリーチアプリの取扱いと三つに分けておりますけれども,議論頂いた中身としましては,24ページの二つ目のパラグラフにございますように,観点は様々ありますが,基本的にはリーチサイト等を巡る技術の進展や実態の変化に応じて制度整備の趣旨が適切に実現できるような柔軟性を備えたものとなるよう,実質的に侵害コンテンツへの到達を容易に行えるようにする情報の提供等と評価できる行為であれば,これを差止請求の対象とすることが適当であるとしております。

こうした考え方につきましては,2侵害コンテンツへの誘導の方法についても,24ページの下から二つ目のパラグラフに記載をしておりますし,25ページ,リーチアプリの取扱いにつきましても,5パラ目のところで,そのような考え方を付記しております。

それから,リーチアプリにつきましては,アプリ提供行為全体の差止が認められるか否かにつきましては,その次のオ,差止請求の客体についてに関する論点で取り扱うべき内容と同様の問題であるということを,その次のパラグラフで記載をしております。

それではオに参ります。まずローマ数字1,個々の著作物に係るリンク情報等の提供行為に関する差止請求につきましては,26ページの1パラ目にございますように,サイト運営を行いまして,リンク情報等を削除する権限及び義務があるにもかかわらず,第三者によって書き込まれたリンク情報等を削除せずに放置しているという者も,一定の場合にはリンク情報等の提供行為の主体と評価され,差止請求が認められ得るという考え方を整理しております。

具体的にどのような場合に,そのような主体と認められ得るのかということにつきましては,2ちゃんねる小学館事件の考え方が参考になるという御意見もございましたし,それから,その次のポツの方にありますように,2ちゃんねるのような汎用的な場ではなくて,侵害の助長を目的とした場等としてリーチサイトが定義されるということから,2ちゃんねるの事案とは異なる法理によって主体性が認められるという御意見もございました。

それから「なお」以下のパラグラフでは,こうしたサイト運営者に対する差止請求権が認められる場合について,立法的に明確化するべき否かという議論をして頂きました。この点につきましては,一番下のパラグラフにありますように,間接侵害におけるサイト運営者の責任全般に関連するものであるということでありまして,立法的対応を行うことによりまして,予測可能性の向上につながるという意義はございますけれども,リーチサイトに限りまして特別な制度を設けた場合に,現行法の解釈に悪影響を及ぼすということも懸念されるわけでございますので,こうした点を踏まえた検討は必要ではないかというように書かせていただいております。

次に2番,リーチサイト運営行為そのものに関する差止請求についてでございます。まず前提としまして,1パラ目にございますように,個々の著作物に係るリンク情報等の提供行為に関する予防措置というのは112条2項で認められますので,侵害の対応によりましてはリーチサイト自体の削除は同項に基づいて認められるという可能性は当然配慮されていないわけでございます。ここでの問題設定としては,そうしたものを離れまして,抽象的にリーチサイト運営行為自体を著作権者の利益を害する危険をもたらすものとして差止請求の対象とすべきか否かというような問題設定をしたわけでございます。この点につきましては,先ほどのパラグラフですけれども,過剰差止の問題があるということで,慎重な検討が必要であるとしております。

しかしながら,この問題につきましては,後に述べますインターネット情報検索サービスにおけるトップページの問題とも共通する部分がございまして,この点につきましても,集合的な意味での著作権者の救済という位置付けにすることによって,差止請求権を法定していくという余地があるという御意見も出ているところでございます。

それから,少し話がそれますけれども,「また」というパラグラフにございますように,政府の知的財産戦略本部におきましてサイトブロッキングの制度化を含めた議論がされているわけでございまして,仮にサイトブロッキングが制度化される場合に,サイト単位でのブロッキングを請求することができる主体についても整理が必要であると考えられるわけでございまして,そうした主体について,どのように整理がなされるのかといったこととの整合性も踏まえつつ,本問題についても慎重に検討をする必要があるとしております。

次のページをお願いいたします。次の論点はカ,対象著作物についてでございます。まず一つ目,有償著作物等とか商業的な目的の著作物といった形で,著作物の書類によって限定を行うべきか否かという議論を頂いたわけでございますが,この点については,限定すべきではないという整理としております。

それから2番,デッドコピー等への限定を行うべきか否かということにつきましては,前回の権利者団体からの具体的な事例の御報告なども含めまして,マル1からマル13までの様々な具体例を少し念頭に置いて,どれを対象にすべきか,すべきでないかという議論を頂いたわけでございます。総合しますと,マル5のマンガを翻案し,新たなマンガを創作したものというのは二次創作的な事案でございまして,これ以外のものにつきましては,多くはオリジナルの相当部分をそのまま使っているということでありますので,こうしたことを念頭に置きますと,29ページの「これらについては」というパラグラフのところですけれども,マル5以外は少なくとも差止対象とすべきという御意見が複数あったわけでございます。マル5の二次創作的なものを含めるか否かにつきましては,立法技術とか潜脱の可能性といったことから,積極的な意見はございましたが,他方で,これを賛同する御意見はそれほど多くはなくて,消極的な御意見があったところでございます。

また,仮に二次創作的なものを除いた範囲を対象にすべきだと考えた場合に,これを具体的にどのような方法論,法技術によって,それを画定していくのかということについては,様々な御意見がございました。例えば,27条や28条の侵害を除くという方法ですとか,あるいは「原作のまま」とすべきという御意見などございました一方で,しかし,そうした方法では対象が狭くなり過ぎましたり,潜脱のおそれがあましたりするといった御意見ですとか。そもそも複製と翻案ということの境界というものも,必ずしも明らかでないということで,そうした内容について詰めるべきだという御意見などございまして,立法技術の面から慎重な検討を要するという旨の意見もあったところでございます。

こうしたことも踏まえまして,少し飛びますけれども30ページの下から二つ目のパラグラフでございます。オリジナルの著作物の相当部分を,そのまま利用しているようなケースにつきましては,差止の対象とするべきという考え方を基本としつつ,具体的な制度設計に当たっては,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応という今般の制度整備の考え方,対象範囲を限定することによる潜脱のおそれ,立法技術上の対応可能性などを踏まえて検討を行うことが適当であるとしております。

それから,第3の観点として,国外における侵害コンテンツの取扱いについても御議論頂きましたが,こちらにつきましては,次のページにございます。現行法でも30条1項3号ですとか,新しい47条の5第1項ただし書など,複数同様の趣旨から見られるわけでございまして,こうしたことも踏まえまして,同様に国内で行われたとしたならば,著作権の侵害となるべきものに係るリンク情報等についても,差止の対象とすることが適当としております。

最後に,キ,その他の要素としまして,例えば正当な目的を有する場合に,そういった行為を差止の対象から除外するといった例外規定のようなものは必要かという点についても御議論頂きましたが,こちらについても積極,消極の両面御意見がございました。積極的な御意見としましては,何か安全弁があった方がいいのではないかという御意見があったわけでございますけれども,消極的な御意見としましては,今回のみなし侵害というものは場とか主観等の要件によりまして,相当悪質なものに既に限定をしているということですので,重ねて対応の必要はないのではないかという御意見がございました。したがいまして,これらの意見を踏まえまして,具体的な制度設計に至っては場・手段に関する要件の設定の仕方も念頭に置いて,そうした場等において行われる侵害コンテンツへのリンク情報等の提供をする行為のうち,差止の対象外とするべきケースとして,どのようなものがあるかを検討した上で,特別な除外規定の要否の判断が行われることが適当としております。

以上が民事に関する議論を整理して頂いたものでございました。

次に(2)刑事でございます。まず,新たな罰則を設ける必要性につきまして,これは特に何も付記しておりませんけれども,これまでの御議論のとおり,設ける必要があるということです。現行法ではなかなか幇助といった形での対応は難しいといったことですとか,今回の制度整備の趣旨から必要だというように書かせていただいております。

32ページ,イ,具体的な制度設計についてでございますけれども,ここも特段変更はなく,まず1番,リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報の提供行為について,これを罰則の対象とするべきだというようにしております。2パラのところで,「ただし」というところで,過失によるものにつきましては,対象から除外することが適当としております。

それから2番,リーチサイト運営行為,リーチアプリ提供行為に係る罰則も,個々の著作物等に係るリンク情報等の提供行為とは独立しまして,社会的な法益侵害を及ぼすものとして罰則の対象とするべきというようにしております。

次のページをお願いいたします。また,このサイト運営行為に対する罰則との関連におきまして,リーチサイトより悪質な行為と評価できる海賊版蔵置サイトの運営者の行為についても,今般の制度整備に係る措置との均衡を図るという観点からも,必要な措置を講じるべきであるとしております。

それから3番,法定刑につきましても,現行法の様々な罰則も御覧いただきながら,前回御議論頂いたところでございまして,これは,その御意見を並べて御紹介しております。例えば一つ目のポツのところでは,今回リーチサイト運営行為とリンク情報提供行為を比較した場合に,後者は社会的法益侵害ということになるわけですけれども,だからといって直ちに法定刑が重くなるということとは直結しないとされており,しかし非常にリーチサイト運営行為が大きな集合的な権利侵害性をもたらすというように評価するのであれば,法益侵害性は高い。したがって法定刑を重くするということも考えられるという,一つの考え方をお示し頂きました。

他方で,同様と評価するという考え方もあり得るといえばあり得るということを,二つ目のポツで御紹介いただいているところでございます。

これらを踏まえまして,一番下のパラグラフでございますけれども,具体的な制度設計に当たりましては,現行著作権法における罰則の法定刑の考え方との整合性に留意しつつ,今般創設する各罰則の法益侵害の度合いに照らして,適切な法定刑が検討されることが適当であるとしております。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいま21ページから33ページのリーチサイト・リーチアプリ等への対応についての部分を説明頂きましたけれども,この説明頂きました内容につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。

田村委員。

【田村委員】特に大きな話ではないのですけれども,私もこの案でお話ししたところですが,29ページの最後に,27条と28条を省いた形での21条型,つまり複製あるいは無形利用も含めてそのままの利用を対象とするという方法,を前回御提案したところです。ただ,この27,28条除外型でいくと,翻訳の問題はどうするのかとか,色彩の問題はどうするのかという御意見もあるということで,それに対して私の考え方を述べさせていただこうと思います。既に30ページでも,翻訳された部分以外の絵の部分がそのまま利用されているので27条と28条を除外する案でも捕捉しうるという理解かもしれないと適切に指摘していただいており,私もそのようにも思っております。とはいいましても,確かにどのように解釈したらよいのか,27条,28条で絵の部分も含めて複製ではない,あるいはそのままの利用ではない。そのままの利用というのは,27,28条型になっているというような理解もあり得るので,考えたのですけれども,一つの定義で全部押さえるわけでは,ありません。一応ベースとしては27,28条を除くとしながらも,例えば,既に著作権法43条2号に著作物の例外を,そのままの利用だけを原則例外にしつつ,翻訳だけは入れるというような形で,二段構えで規定している例があります。29ページの最後の案に加えて,疑義があるところを押さえるために,例えば翻訳は入るとするとか,あるいは,私は色彩は必ずしも対応は不要ではないかと思うのですけれど,もし色彩を加えることについても,創作性があるのではないかと疑義が仮にあるとすれば,場合によっては色彩の変更を入れるというような案があるように思っています。

特に前半の翻訳は入れるというのは,30ページの御意見を踏まえれば,そのような二段構えのものが必要であるように思っております。

【茶園主査】では,前田委員。

【前田(健)委員】今,田村委員から御指摘がありましたデッドコピーのところに関して,私からもコメントさせていただきたいと思います。ここでそもそもデッドコピーをどうして限定するという議論が出ているのかというと,今般の改正は特に悪質性の高い行為に限定するということですが,恐らく著作権法において著作権者の利益として最も重要なものの一つとして,オリジナル作品についてのマーケットは保護するというのがあると思います。オリジナル作品をオリジナルとして享受すること,あるいはそれに供し得るようなものは必ず押さえなければいけないという考え方があると思っております。そのようなもののことをデッドコピーという言葉で表現しようとしているのかなと思います。

デッドコピーというものをどのように定義していくのかということなのですけれども,既存法の概念を使って,特に何か一つの概念を新しく定義するという形ではやらないという,やり方と,デッドコピーというものを,この際だから定義するというやり方と両方あり得ると思うのです。田村先生のお話は,どちらかというと既存法の概念の組合せだけでやった方がいいということなのかなと理解しました。

ここは考え方が分かれるところだと思うのですけれども,私個人的には,デッドコピーなるものについて(単なるコピーとは),異なる扱いをするべきだという考え方が著作権法の中に随所にあるように思います。例えば非親告罪の対象をどのように絞るかという議論でも,そのような観点が出ていたかと思います。

現行法の翻案や,原作のままという概念が,デッドコピーと,そうではないものを区別する道具として,割と近い位置にあるわけですけれども,それも完全に対応していない。少なくとも対応していないという考え方が有力に存在するというのが問題なのかなと思います。

私は,そのような,やや議論が錯綜している状況があると思いますので,この際デッドコピーというものをきっちり定義する方向で考えるというのも,一つの方向としてはあり得ると思います。

そのように申し上げることのもう一つの理由は,定義の仕方によっては脱法,・潜脱の問題があるのではないのかという指摘がありまして,もしデッドコピーという概念を,その趣旨がきっちり読み取れる形で定義ができるのであれば,裁判所もその趣旨にのっとった運用をするということがある程度期待できるのではないかと思います。その場合には,脱法や潜脱の可能性というのは,ある程度抑えられるのかもしれないと思っております。

以上です。

【茶園主査】今,対象著作物についての意見が続きましたけれども,特にこの部分について,ほかに御意見,御質問はございますか。

では,井上委員。

【井上委員】今の点でございますけれども,既存の枠組みを使って整理するのか,それとも,新たにデッドコピーを定義し直すのかというようなお話がありました。新たに定義し直すに近いのかもしれませんけれども,113条5項の商業用レコードの還流に関する制度の,ように,当該著作権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることになる場合に限りなどという要件で絞っているものもあり,著作権者に与える利益といった規範的要件を立てることも可能なのかなと思いました。

有償といった基準では,昨今のビジネスモデルから難しいというお話がありましたが,著作権者に与える利益を不当に害するというような要件であれば,例えば漫画を翻案し新たな漫画を創作したものについては,対象から外すこともできると思いますので,そのようなアプローチもあり得るのではないかと思いました。

【茶園主査】ほかに何かございますか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】今の点は皆が悩んでいるところなのですが,「原作のまま」もかなり多義的だし,デッドコピーというのはもともと和製英語なのでしょうか,各自でイメージしているところが非常に違っているので,漠然とした学説上の議論であればよいのですが,法令上の用語として,これをそのまま入れてしまうとなると,かえって,範囲が不明確になってしまって,別の意味での萎縮効果が働いてきたりする恐れがあるように思います。そのあたりは先ほど出た価値的なものを,やむを得ずに入れる場合はしかたなしに入っている例がありますが,できるだけそのようなことは避け,脱法の点もありますが,慎重に対処すべきと思っております。

【茶園主査】では,田村委員。

【田村委員】前田先生と井上先生が,脱法,潜脱の話をされていたのですけれども,もう一つ,もちろん萎縮効果の点も,今,大渕先生からもありましたように非常に大事だと思いますので,余りふわっとしたものは私はかえってよろしくないかなという気もしております。

28から30ページのまとめの中に,萎縮効果の点が余り指摘されておりませんで,もしかして私は読み間違えているかもしれませんが,29ページ中頃の「原作のまま」のところについては萎縮効果が働くという言葉が入っているのですけれども,28ページの総論的な,なぜデッドコピーとの限定を行うかについてのところ,(に特にそれが書いていない。その反面,脱法という話が,むしろいろいろなところに出ているような気がします。ちょうど28ページの有償著作物の方には萎縮効果の話が入っているので,できれば萎縮効果ということにも配慮する必要があるということを,28ページの「いわゆるデッドコピー等への限定を行うべきか」の最初のところか,あるいはアンド・オアで30ページの2のまとめの文章のところに,―そこも潜脱のおそれとかいろいろ書いてあるのですが,萎縮効果が入っていないように思いますので,―入れて頂いた上で御検討いただければと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますか。よろしいですか。

では,今議論のあったデッドコピーも含めてで結構なのですけれども,全体を対象として御意見を頂きたいと思います。

では,窪田委員。

【窪田委員】済みません,この方向で検討してほしいとか,この方向でお願いしたいという趣旨では全くないのですが,今回のものを基本的には論点整理という形で示されていて,その多くの部分というのは侵害コンテンツに対する差止等に関しての要件の話ということがあるのですが,差止の請求権者については論点としてあげなくてもよいのか確認をさせてください。あるいは立法的な提案ということの中に含んでいるということなのかもしれませんが,特にリーチサイトのような形で全体にわたって非常に多数のものに対しての差止を行うという場合に,場合によっては差止の請求権者の問題というのがあるのかなとも思うものですから,その点だけ確認できればと思います。

【茶園主査】では,事務局の方からお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】,今回差止の対象とすべき行為類型につきましては,個々の著作物に係るリンクを掲載したものに対する差止請求ということでございますので,当該著作物の著作権を有する者が請求権者ということになろうかと思っております。

サイト全体に対する差止請求を,個々の著作権の円満な実現という話を離れて抽象的に付与するという議論をする場合には,誰が請求できるのかということが,より問題として顕在化してくるわけでございまして,その点につきましては今回は具体的な制度整備の方向性はお示しいただいていないというように考えております。

【茶園主査】ほかに,全体的に,いかなる論点でも結構ですけれども。

では,奥邨委員。

【奥邨委員】ありがとうございます。2点ございます。どちらも内容について反対とか,そのようなことではなくて,確認というか,補足というか,そのような形で少し発言しておきたいと思いました。31ページのキのところでございますけれども,現状,具体的な制度設計に当たって,場・手段に関する要件の設定の仕方も念頭に置いた上で,このようなその他の要素で例外を認めるかどうかということについては,検討すべきだという御意見が出ているというようにまとめていただいているということ,これは賛成でございます。

ただ,ここでも出ていますように,基本的には積極論に近い方がいいのか,消極論に近い方がいいのかというのは,場の設定の仕方自体によって変わってくるというところがございますので,場の設定が非常にしっかりしていれば消極論のような考え方でも,基本的には問題がないということになりましょうし,場の設定の仕方が少し抽象的になってしまうと,何らかの手当てが必要ではないかという積極論に傾くのだろうと思います。その点は既に記載いただいているわけですけれども,念のために申し上げましたのは,最初の時点で,このことをはっきりしておかないと,今後いろいろな変化が起こってくる中で,将来的なことを考えると,場の設定もだんだん変更されていくということも将来あり得るかと思います。

そうなったときに,例えば,最初しっかりした場であったので,特別な例外を置かなかったけれども,将来,仮に場が少しずつ緩んでいくということがあれば,その際には,そのような例外を改めておく必要がある。最初から置いていなかったから,ずっと置かなくていいのだということにはならないのだろうということで,ここは相関関係なのだということを一言コメントしておきたいと思いました。

それからもう1点は,33ページのところでございます。リーチサイトへの対応を図ることが必要であるということと,そうすると,より悪質である海賊版蔵置サイトの運営者自体についても何らかの措置が必要であるということ,これは総論としては全く異論のないところでございますし,そうしないとバランスが取れないのではないかと,全くそのとおりかと思うのですけれども,1点だけ気になりますのは,海賊版蔵置サイトと書きますと非常に悪いことをしている悪い人だけというように思うのですが,実態は,クラウドロッカーの場合があり得るわけでございます。そうしますと,クラウドロッカーなのか,海賊版蔵置サイトなのかというのは,非常にいろいろと考えていかないと難しいところがあって,これは前に議論しましたタイプ2ロッカーとか,そこの議論に全部戻ってくる話になってしまいます。そこでせっかくいろいろ議論しましたことと矛盾しない中で,悪質な行為を取り出していくというような,バランスを図る必要があるのだろうと思いましたので,その点だけコメントさせて頂きました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかに何かございますか。井奈波委員。

【井奈波委員】以前,意見を述べさせて頂いた問題ですが,27ページの,リーチサイト運営行為そのもの自体に対する差止請求で,これが過剰差止といわれている点について,過剰差止ではないのではないかということは,以前意見を述べさせて頂いたところですので,そのような意見もあるということは,一言付け加えておいていただけないかと思います。

また,32ページの刑事処罰の議論にも関わるのですけれども,まず刑事処罰の件で,深刻な不利益を及ぼしていると評価できる行為に対して,民事で差止請求できないというのはおかしいのではないかと思いますし,逆に刑事でできて民事でできないということはバランスを欠いていて,刑事処罰の謙抑性の点からも問題があるのではないかと思います。バランスを欠いているのではないかという意見も,以前出されていたかと思いますので,その点も一言書き加えていただけないかと考えております。

【茶園主査】水津委員。

【水津委員】21ページの中で,場の要件として,サイト開設の目的を要件とする考え方について,次の2点が少し気になっております。

第1に,サイトが客観的に果たしている機能に加えて,サイト開設の目的を要件とすると,リンク提供者とサイト運営者とが別人である場合において,リンク提供者によるリンク情報の提供行為が,主として違法な自動公衆送信を助長する機能を担っているサイトにされているという,場に関する客観的要件を満たして,かつ,侵害コンテンツであることについての故意又は,過失という主観的要件を満たすときであっても,サイト運営者が主として違法な自動公衆送信を助長する目的でサイトを開設していない,という反論をリンク提供者に,許すこととなります。サイトが客観的に果たしている機能に加えて,サイト開設の目的を要件とする趣旨は,差止請求の対象を悪質なものに絞り込む点にありますが,そこまで絞り込むのが適切であるかどうかを,検討すべきだと思います。

第2に,サイト開設の目的を要件とする考え方によると,主観的要件は,場についての主観的要件の中に吸収されるという分析が示されています。リンク提供者とサイト運営者とが同一人であるときは,そのとおりかもしれませんが,両者が別人であるときは,そのようにはいえないように思いますので,二つの主観的な要件は,一応別のものとして扱っておいた方がよい気がいたします。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では,大渕委員。

【大渕主査代理】先ほどの井奈波先生の御発言について,私は個別の話は別として,一番の基本線は非常に重要な点なので,賛同いたします。私が折に触れて申し上げてきたように,損害賠償,差止め,刑罰と並べてみれば,一番峻厳な制裁は刑罰なのに,そちらの方が要件が緩いといったアンバランスがあることには非常に違和感があります。また私の持論になってしまいますが,知りながら違法なリンクを張れば,常にかどうかは別として,公衆送信の幇助に当たって刑罰の対象になるというのは,誰も異論がないにもかかわらず,それ自体が差止めの対象にならないということに,私は非常に違和感があります。しかし,今般の作業はそのような話ではなくて,ただ単に差止めの対象を明らかにするというよりは,先ほど方法論として論じられましたが,みなし侵害ということで,これは特定の構成要件の幇助というよりは,新たな構成要件を作り出すという非常に重い内容ですので,そこの点を含めてきちんと,直接侵害と間接侵害とみなし侵害と,三つを整理しながら,かつ,それと刑罰とのバランスも考えていく必要がありますので,その点も御配慮いただければと思います。

【茶園主査】では,田村委員。

【田村委員】今の点に関連,するのですけれども,ただ民事,刑事の順で,横に順番に,損害賠償,差止,刑事罰という形で並べるわけにはいかないところがあると思っています。民事の損害賠償請求というものは,過去の行為に対する救済ですけれども,差止めは現在に加えて,将来の行為の停止の問題が含まれます。そして,刑罰は過去の行為に対する制裁ですので,民事から刑事になだらかに順番にものが並んでいるわけではなくて,過去の行為に対する問題なのか,将来の行為に対する問題なのかという区別があり,そのように考えると,過去の行為に対する損害賠償と刑事罰,将来の行為に対する差止請求というように並べることができる,ということを,まず踏まえる必要があります。

そして,27ページの差止請求というのは,主に将来のことを考えているので,損害賠償は認めておいて,しかし差止請求は認めずに,しかし,更に刑事罰はまた認めるのはおかしいという御疑問に対しては,一つの説明が付くと,思います。なぜかといえば,過去の行為であれば,例えば損害賠償であれば,既に問題となっている,リーチサイトがどのくらい侵害に貢献しているか,侵害に寄与しているかということがもちろん分かるわけで,そして誰の著作物が侵害されたかも分かるわけで,侵害された著作権者が損害賠償を取るというのは,もちろん構わないし,刑事では,それが刑事罰に値するなら刑事の制裁もあり得るところだと思います。

他方で,差止請求は将来の話なので,将来どのように発展していくのか分からないということと,そこに金銭的な救済ではないので,リーチサイトの運営を認めるか否かということで不可分一体にオール・オア・ナッシングの処理しかできないという限界が加わります。例えば,今我々が念頭に置いているリーチサイト以外にも,様々なものがこれから出てくるし,また,それはもしかしたら奥邨先生がおっしゃるとおり,定義次第によるかもしれませんが,場合によっては,は何か特別にこのようなリーチサイトに味方するような団体が出てきて,半分とはいわないまでも,かなりの数の,1割とか2割くらいは許諾をされているような場合があり得るのです。そのようなときでも,8割が侵害であれば,損害賠償や刑事罰は過去の行為に対する問題として,どれが侵害か分かっていますから,救済なり制裁が正当化されることは十分あり得ます。他方,そのような場合に,差止めについては,全部差し止めると適法の部分も含めて利用できなくなるという問題が起きますし,また,これがどうなるか分からないということなので,そこは解放しておくというのは十分あり得るので,単純な民事,刑事の並べ方には,私は違和感を覚えます。そのような将来的な問題であり,二者択一的な処理に伴う限界という趣旨が,今回の文章には入っていないので,できれば入れていただけると助かります。

【茶園主査】大渕委員。

【大渕主査代理】損害賠償,差止め,刑罰を,ただ並べたわけではないのであって,井奈波委員が先ほど言われたようなバランスというものは,十分考える必要があると思います。今まで損害賠償は割と簡単に認めるのに,差止めの方は非常に過大視していたのですが,関係の方々に聞くと,差止めの方は下ろせばいいけれど,損害賠償の方は莫大な金額になって,そちらの方が怖いということもありますので,そのような点は総合的に事前,事後,峻厳さ,あるいはリアルな影響力などを考えて,個別的に考えていく必要があると思っております。

【茶園主査】ほかに何か御意見,御質問等ございますか。

では,上野委員。

【上野委員】ありがとうございます。今回の論点整理は,大変適切にまとめられたものと感じておりますので,ひょっとしたらどこかに書かれているかもしれないのですが,今まで特に御議論がなかった点に関しましてお伺いしたいと思います。と申しますのも,基本的にこの論点整理というのは,著作権侵害を対象にされているかと思いますけれども,隣接権の侵害とか出版権の侵害とかというのは,どうなのかということであります。

もちろん,隣接権や出版権についてどれくらい立法事実があるか分かりませんけれども,例えば著作権がないクラシック音楽のレコード,のリーチサイトのようなものがあるといたしますと,これはレコードや実演に関する隣接権の侵害サイトへのリンクということになるかと思います。

この論点整理でも,冒頭の方の関係者の意見のところでは,隣接権とか出版権とか出てくるわけなのですけれども,「等しきものは等しく扱う」という一般的な考えからいたしますと,著作権侵害サイトに関して規制するであれば,隣接権についても同じように考えるべきではないかという考えも成り立ち得るように思います。

ただ,この論点整理では,「場」の設定のところで,「違法な自動公衆送信」という定義の仕方をしておりますので,隣接権に関して「違法な自動公衆送信」になり得るのかという難しい問題が出てくるのは理解しておりまして,既に事務局ともディスカッションさせて頂いたのですけれども,今回の論点整理は別に隣接権等を検討対象から除外しているわけではなくて,検討対象になっているという理解でよろしいでしょうか,ということをお伺いしたいと思います。

以上です。

【茶園主査】では,事務局において何かありましたらお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】事務局としましては,そのような前提で議論が進められてきたと承知しております。ヒアリングにおきましても,レコード製作者の方ですとか放送事業者の方々からも被害実態の報告を受けておりますし,出版社の方からも,そのような御意見もあったというように承知しておりまして,それを前提に議論を頂いたのだろうと理解しております。

【茶園主査】ほかに何かございますか。

では,もし何かありましたら,後ほどお願いするといたしまして,続きまして,最後ですけれども,34ページから最後の42ページ,すなわち2ポツ,インターネット情報検索サービスへの対応についてという部分ですけれども,この部分について議論をお願いしたいと思います。

では,まず事務局より,この部分の説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】資料34ページをお願いいたします。2ポツ,インターネット情報検索サービスへの対応について,(1)対応の必要性についてでございます。まず第3節2ポツで述べましたとおり,インターネット情報検索サービスは中立的な目的で提供されているものではありますものの,侵害コンテンツのリンク情報を容易に取得させる手段として実際には機能しており,侵害コンテンツの拡散に相当程度寄与していると認められるとしております。

また,詳しく御紹介しませんでしたが,第1節では現状を整理しておりまして,そこで把握された実態からは,個々の侵害コンテンツのリンク情報については,現在事業者さんの御協力によりまして,DMCAに基づく削除が精力的に行われているということでございますが,リーチサイトや海賊版サイトのトップページにつきましては削除ですとか,あるいは降格という処理が十分ではないという御指摘も権利者からあるところでございます。

それから,現にということで漫画村の場合ですと,全アクセスのうち,検索サービス経由のものの占める割合が32%,初期ではそのような数字でございましたし,閉鎖直前では24%あったということでございますし,また長期間にわたって,これ老舗といわれていましたけれども,そのようなリーチサイトにつきましても検索サービス経由のものが2割以上となっておりました。

これらのサイトに関して,権利者の報告によりましたら,侵害コンテンツのリンク情報について,そのサイト内のものについて削除のリクエストをたくさん送り続けてきたものの,なかなか降格処理が行われずに,漫画村ですと,ずっと1年間検索結果に載り続けていたのだというような御指摘もあったところでございます。したがって,降格処理というものが適切に行われていないのではないかという御指摘がございました。

それから,こちらの事務局の方で少し調べたのですけれども,大手のインターネット情報検索サービスを使いまして,アニメ無料というキーワードを用いて検索を試みてみますと,検索結果の1ページ,こちらは10件表示されるのですけれども,そのうち6件が,そしてその上位3件が違法配信されているアニメに係るリーチサイトと疑われるサイトでございました。

それから,済みません,漫画というのは漢字の漫画の場合でございますけれども,漫画,ダウンロード,無料,rarというキーワードを用いて検索しますと,検索結果の1ページ目に表示されるリンク中7件,上位4件が違法配信されているマンガに係るリーチサイトと疑われるサイトでございました。単に,マンガ,無料と検索しますと,最近は無料のマンガサイトが公式なもので増えてきているようでして,そちらに関しては適法なものがあったり違反なものがあったりというように承知しております。ちなみに,こちらの結果につきましては,本日机上配布資料の方でそれぞれの結果を御紹介しておりますので,適宜御覧いただければと思います。

こうしたことから,検索サービスは既に名が知られているリーチサイト等に到達するための手段のみならず,リーチサイトや海賊版サイトを探したいと考える利用者に対して,これらのサイトを発見させるという機能を果たしていると認められるとしております。

また,リーチサイト・リーチアプリ等に関して,国内法の及ぶリーチサイトにおけるリンク情報等の提供行為につきましては,法整備をすることによって差止請求等が可能になるわけでございますけれども,いずれにしても,リーチサイト等でも日本法が適用されないものというのは残り続けるわけでございまして,これらのものを通じた侵害コンテンツの拡散というものにつきましては,特にインターネット情報検索サービスによって,そういった国内法の及ばないリーチサイト等へのゲートウエーが提供されるということによりまして,侵害コンテンツへ拡散されることを防ぐというのは,リーチサイトに関する国内法整備のみでは困難であるとしております。

したがいまして,以上のことを踏まえれば,インターネット上の海賊版による被害を軽減させるためには,インターネット情報検索サービスにおけるリンク情報の提供行為,とりわけリーチサイトや海賊版サイトのトップページについて,検索結果から表示されないようにする等によって,インターネット情報検索サービスを経路としたこれらのサイトへのアクセスを防止するため,対応を行う必要性が認められるとしております。

ちなみに,こうした対応の必要性につきましては,ここには特に付記しておりませんけれども,冒頭御紹介いたしました知財本部の方でも,現在様々な選択肢を議論するというようにされておりまして,サイトブロッキング以外の取り得るあらゆる手段は講じて,いろいろな形で海賊版の対策を進めていくとされておりまして,そこではリーチサイトと,この検索の問題が挙げられているという中で,本小委員会としても,しっかりこのような対応の必要性について方向性をお示しいただくことの意義があろうかと考えております。

(2)対応を検討するに当たっての視点につきましては,こちらは既に御議論頂いたとおりでございまして,インターネット上の検索サービスについては,実際上は侵害コンテンツの拡散に寄与している部分があるということは御説明したとおりでございますけれども,一方で,当該サービスの特殊性といいますか,そのようなことへも配慮は必要であると考えられるところでございます。具体的にはサービスの目的が中立であることですとか,一つ飛ばしまして,当該サービスがインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているといったこと等々にも留意が必要であるというように記させていただいております。

これらを踏まえまして,どのような対応が考えられるかということにつきまして様々議論頂いたところでございます。(3)これまでの主な議論の状況を大きく三つに分けて御紹介しております。一つ目が,立法的対応によることに積極的な御意見,二つ目が,立法的対応をする場合には慎重にやるべきだという御意見,三つ目として,まずはソフトロードによる対応,当事者間での解決を促すべきという御意見でございました。

まず,立法的対応によることに積極的な御意見を幾つか御紹介しますと,36ページの一つ目のポツでございますけれども,このサービス自体が中立的なサービスということで,行為の主観的な意味で悪質だということではないにしても,客観的には侵害を助長しているという結果を生んでいるということですので,リーチサイト等とは趣旨が違うわけですけれども,検索結果に関して削除要請ということはあってしかるべきだという御意見がございました。ほかに同種の御意見が複数ございました。

それから,少し飛ばしまして,下から二つ目の黒ポツですけれども,トップページのURLの削除についての立法を考えるべきという御意見もございまして,その際は,先ほどのサイト全体の差止という問題と同じ問題がありますけれども,過剰削除の問題がありますので,集合的な意味での著作権の救済という観点で,消費者団体訴訟のような,関係する権利者に関わる団体が請求する場合に差止を認めるような特別の立法もあり得るのではないかという御意見もございました。

それから,37ページの三つ目のポツですけれども,差止請求を認めるとしても,通知の方法については工夫が必要ではないかという御意見もございました。特に観点としては事前の監視義務というのを事業者に課すというのは適当でない。それを実現するためには,単に侵害と知っている場合というだけではなくて,一定の手続に従ったノーティスを受けて,初めて削除義務が生じるような形がいいのではないかという御意見もございました。

続きまして,マル2,立法的対応をする場合は慎重に検討を行うべきという御意見もございました。一つ目のポツですけれども,下から3行目,中立的な立場からインターネット上の情報流通の共通基盤として不可欠な役割を果たしている検索事業者に,侵害行為の拡散回避するための協力を,どのような場合に求められるかということについては,しっかり基本的なところから整理する必要があるという御意見がございました。

それから,38ページの一つ目の黒ポツの部分ですけれども,平成29年最高裁決定の枠組みで示された「明らか」要件についても,著作権の文脈でどのように理解するべきかという意義については,改めて検討する必要があるのではないかといった,根本的な部分についてしっかり議論するべきだという御意見がございました。

少しはしょらせていただきまして,39ページの方に行ってください。マル3,ソフトローなどにより,まずは当事者間での解決を促すべきという御意見もございました。例えばプロバイダ責任制限法ガイドラインにつきましても,当事者間でかなり抽象的な規定の運用方法について議論がされてきたわけでございまして,あのようなケースのように,検索エンジンにつきましても問題解決に向かって協議ができる場を設定するという方が望ましいのではないかという御意見でございました。

また同様の観点から,グローバルなルールでは日本で不十分なところがあると,問題があるということであれば,法律上何らか事業者に口出しする方法がないというのは望ましくないというようにされまして,立法措置の可能性というのは残しつつも,しかし,まずは一定期間内,当事者がアグリーメントを作るといったことにしまして,その後,効果が出ているかを確認し,効果が出ていなかったら立法を行うといった形で,小委員会としての考えを明示する。そして本小委員会でどのようなフォーラムがあり得るかとか,アグリーメントの作り方などについて議論することは,選択肢としてあるのではないかという御意見もございました。

少し飛ばしまして,40ページをお願いいたします。これらの小委員会の御議論を踏まえまして,(4)差し当たりの対応の方向性の案をお示ししております。少しこれまでの議論の要約のようになりまして,重複もありますけれども,読み上げさせていただきます。(1)で述べましたとおり,インターネット情報検索サービスは中立的な目的ではありますが,客観的には侵害コンテンツの拡散に寄与している。こうしたことを踏まえまして,サービス事業者が検索結果に表示されているリンク情報が侵害コンテンツに容易に到達することを可能とするものであると知りながら,これを放置する行為については,一定の場合に法的責任を負うべきと,差止請求があってしかるべきという意見が複数の委員から寄せられたわけでございますし,また,トップページについても,立法的な対応ということの可能性についても意見があったわけでございます。

他方で,インターネット情報検索サービスへの差止請求権の付与につきましては,そのサービスの公益的な性格を踏まえて慎重に検討を行うべきといった御意見もございました。こうしたことを踏まえまして,更に検討を行う必要があると考えられるところでございます。

また,このページ最後の部分ですけれども,個々の侵害コンテンツへのリンク情報についての削除請求権については,既にこの情報については検索サイト事業者の御協力によりまして既に米国法にのっとったルールに従いまして,対応が既になされているというところでございます。41ページの「したがって」のパラグラフですけれども,仮にトップページの対応を検討することに意義があるとしたとしても,これについても過剰削除の問題等々,これもクリアすべき問題がありますので,こちらも慎重な検討が必要だとしております。

このような中,権利者団体からは,まずはインターネット情報検索サービス業者と権利者との協議の場を設けるということが要望されておりますし,検索サービス事業者側からも話合いによる解決というようなことを志向する御意見が寄せられております。このような方向性につきましては,委員の先生からも支持する意見があったというところでございます。

以上のことを踏まえまして,本小委員会としては,差し当たりの対応として以下のような対応をとることが適当としております。一つ目のポツ,まずインターネット情報検索サービスによりまして,侵害コンテンツへのアクセスの助長が防止されるということ,つまりそうした問題を手段を限定せずに,実効的な方策を採ることが重要であるという考え方を整理しました上で,そのための方法として立法的措置も検討の対象となりうるが,関係者の意向も踏まえれば,まずは当事者間協議の場を設けて運用上の解決を図るということも有力な選択肢としております。

具体的には,トップページの検索結果からの削除,若しくは降格処理が適切かつ円滑に行われ,実際にアクセスが防止されるという状態が確保されるよう,プロセスや内容の透明性にも配慮しつつ,運用上の改善方策を検討されることが期待される。その方策につきましては,今後当事者間で,このサービスの公共性,それから権利者の利益保護のバランスに留意して検討されることが求められるが,例えば,以下のようなものが考えられるとしております。一つ目,リーチサイトや海賊版サイトのトップページの検索結果からの削除が認められ得る場合には,その基準を明確にすること。二つ目,次のページで,リーチサイトや海賊版サイトのトップページを含むサイト全体について,検索結果における降格処理が行われるメカニズムの明確化及びその運用の改善を行うこととしております。

したがいまして,差し当たりの本小委員会としましては,権利者団体及び検索サービス事業者に対し,速やかに協議の場を設定し,具体的な改善方策の検討に着手することを求めるとともに,しかるべき時期に,その検討状況の報告を求めることとする。具体的には,本課題に関する検討の中間的な取りまとめを行う時期におきまして,両当事者から取組の進捗状況の報告を求めたい。そして,その段階において当事者間取組によって課題解決の見通しが得られるかどうかを見極めた上で,立法的対応の検討を進める必要があるか否かについて判断を行うこととしたいというように御提案しております。

御説明は以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。インターネット情報検索サービスへの対応についての部分につきまして説明頂きました。この説明頂きました内容につきまして御意見,御質問等がございましたら,お願いいたします。

小島委員。

【小島委員】ありがとうございます。権利者団体の皆さんなどからの御意見を拝見していますと,リーチサイト等のトップページの削除や降格処理などについて,情報検索サービスの提供業者がDMCAなどの外国法に基づく処理を志向していて,日本法の実情にどこまで配慮してくれているのかという懸念というか,御批判が見られるように思います。

まず原則論としては,そのような情報検索サービスの提供者にも一定の法的責任が生じる場合があって,その際の準拠法としては,私は結果発生地としての日本法が適用されるべきであると考えております。

しかしながら,日本法の考え方を,グローバルな環境で活動するプラットフォームに対して,どこまで実効的に及ぼせるのか,このような問題が現れているのだろうということです。この点について,前回の委員会のときには考えがまとまっていなくて発言できなかったのですけれども,インターネット環境における,同時発生的な著作権の侵害,ユビキタス侵害と言ったりすると思いますけれども,このような問題については,最も密接な関連を有する地の法を単一に適用すべきだという考え方があります。言い換えれば,その限りでは属地主義的なモザイク的な処理を外すべきであると,このような考え方が,アメリカ法律協会とか,マックスプランク研究所とか,あるいは日本の2つの研究グループからとか,立法提案のレベルではありますけれども,なされていまして,2009年度の国際裁判管轄・準拠法のワーキングチームでも,この点についての議論と報告書に記述があると理解しています。

ユビキタス侵害への救済における連結点としての最密接関連地の決め方というのは,それぞれの立法提案の中でもいろいろな考え方が示されているわけですけれど,もし仮にそれが日本であるということになれば,世界中の侵害に対する救済について日本法を一律に適用するという考え方も出てくるだろうと思います。

このようなときに,情報検索サービスの提供者が外国法に基づく対応をしているというように見られるものの,日本法に基づく利益についてより一層配慮してほしいということも必要な場合もあるかもしれません。そのような場合には,ユビキタス侵害における準拠法決定の考え方なども,ある種てこにして,この報告書の39ページに書かれているような当事者間での解決を含めて,サービス提供者に対応を迫っていくという戦略もあるのかもしれないとは感じております。

しかしながら,媒介者の責任の準拠法決定というのは,媒介者自身の表現の自由というような観点にも当然配慮するべきですので,どこまで,直接侵害的なものに引き付けて考えてよいのかという点については,様々なアクターの利益についての配慮が必要であるという指摘も同時になされていますので,この点については知的財産法と国際私法の両方の観点から,より包括的に理論的な検討を深めていくべきであろうとは考えております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】私は,前回申し上げたように,リーチサイト・リーチアプリは基本的にみなし侵害的なもので対処するという立場なのですが,この検索の関係は,一般法理というか,間接侵害,で対処できるような話ですし,その具体的内容はノーティス・アンド・テークダウンという,ごく普通の常識的な話であります。DMCAでやっているような特定性のあるノーティスが来たら,それに従ってきちんと下ろしさえすれば,それ以上責任は負わないという,非常に合理的だと思われる内容であるし,前回お聞きしたようにグーグルもそのとおりDMCAに従ってやっているということであります。それをソフトローと呼ぶのか,私が思っている一般法理のとおりに従っていると思うかの違いはあるにしても,当事者もそれを欲していて,それでうまくいくのであれば,その程度のものをリーチアプリやリーチサイトと同様にみなし侵害という新たな構成要件でやるような大掛かりなものの対象にするのは,必ずしも適当でないと考えます。結果的には,私はこの事務局提案の方向で,一般法理と思うか,ソフトローと呼ぶかは別として,当事者の協議で,当事者が欲していて,かつ降格処理とかいろいろな,必ずしも普通の形ではできないようなものを含めてできますので,これはやってみる価値があると思っております。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますか。では,生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございます。今,お話がありましたように,事務局の方から41ページ以降おまとめ頂きましたとおり,ソフトローによる対応というのは一つの非常に重要な選択肢であろうかと思います。その上で,3点ほど。一般的に,このようなソフトローを用いた立法施策の方法論というものを考える上で,3点ほどコメントというか,言いたいところがありまして,一つは,前回森田委員からも御言及のあったところかと思いますが,今回,検索エンジン事業者というところと,それから権利者の側というところで,利害の一致というものが比較的見やすいところであり,であるが故にソフトローによるアグリーメントというものを期待できるという部分が確かにある。

しかし一方で,今回影響を与える範囲というのも,考えようによっては非常大きいところです。例えば,利用者をはじめとする第三者の利益といったようなものが,必ずしも反映される保証というのはここにあるわけではございません。それから,加えまして,こちらは表現の自由にも関わるところというものを,本来民主的なプロセスで定められるべき法といったようなものを,ある意味では,民間のプレーヤーに権限を委譲するといった側面もあろうというところ。当然当事者というのは検索エンジン事業者と,それから権利者というところが前提にはなりましょうけれども,そこに本小委員会の議論を適切に反映いただくという観点からも,例えば政府関係者であるとか,あるいは独立した第三者であるとか,そういったところが適切に関与することは求められてしかるべきなのかなといった点が一つでございます。

それから2点目といたしまして,例えば今回の差し当たりの対応という形でソフトローという対応を選択するに当たっても,一般論として,こちらも事務局が適切におまとめ頂いたことの繰り返しとなるのだと思いますけれども,これは例えばハードローによる立法,例えばトップページへの対応をどのように求めるかといったようなことについて,それを排除するわけでは全くないということ。もちろん自主規制でも自主的な対応によって問題が解決されるようであれば,その分立法事実というものが縮減しましょうし,あるいは今回そのような形でトライをしてやってみたところで,もし自主的な対応によってうまくいかないということであれば,それはハードローによるしかないのだということで,それは少なくとも部分的には立法事実というものが高まるところはございましょう。

ある意味では,正に今回お示しいただいているように,ある種,いってみれば立法の予見可能性というように申しますか,経済学的にいうと,そのようなコミットメントというものをある程度明確に示すことによって,当事者同士での問題解決というものを正しく促進するという機能が,適切な関与の仕方によってはあり得るだろうということです。

そして三つ目に,今回仮にここで提示された期間と方法に基づいて一定の対応がなされるとなったとして,一方で,引き続きそれはその場限りというわけではなく,そのソフトローによる対応というものが適切に機能しているのか,し続けているのかということは継続的にチェックをしていくことが必要というのは,どうしてもあろうところ。当面の期間というものが重要ではありましょうけれど,その後も含めたチェックと,そして関わり方というのが非常に重要になろうかと思います。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかに何かございますか。よろしいですか。では,全てに対してで,結構ですけれども,何かございますか。よろしいですか。

では,松田委員。

【松田委員】兼ねて私はインターネット情報検索サービスへの対応については,リーチサイトの部分の立法を対処等としても,情報検索サービスについては,いましばらく待つべきではないかという意見を出したことがあります。正直言って,何が起こるか分からないというのが,この部分にはあるような気がしてなりません。

この前のグーグル等からのお話を聞いたところ,かなりの対応がとられているという御発言がありまして,私自身もその印象を受けたところは間違いございません。それはアメリカの法制に基づいて対処をとっていれば,日本の状況においても,いいのではないかということでありましたが,これは一つは削除側からいたしますと,日本法制によって新しいルールを作られることに対する心配というか危惧というか,できることなら避けたいという状況があるのではないかというように思っております。

したがって,アメリカ法にのっとっていればというようなことだけではぐあいが悪いと思います。そこで,先ほどの基本的な意見の上で,情報検索サービスについては,ある程度の期間を定めて,ソフトローの形成がきちんとできているかどうかということを検証するというような機関というか,場というか,委員会というか,もちろんここでやってもいいわけですけれど,そのようなことが必要で,もう一度そのような状況がきちんと処理されているということであれば,そのまま継続するというような,何か形を作らなければいけないのではないかという思いでおります。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますか。よろしいですか。では,龍村委員。

【龍村委員】検索サービスについて,当事者間協議の場を設けるというのは,一つとのソリューションだと思います。先ほどリーチサイトの方で出てきましたけれども,民事と刑事のアンバランス云々という話もありましたが,リーチサイト運営自体が刑事罰を科されるようなものについては,検索サービス側として協議の場で,特に削除対象にしようとか,いろいろと柔軟な解決も図れるのではないかというような気がいたしますし,望ましい方向ではないかと思います。

それと,リーチサイトの運営に関する,先ほど話題になりました社会的法益侵害として罰則を設けるという件ですが,今の刑罰では別添の3のように,懲役,罰金というものになるわけですが,刑事罰,として,付加刑的なもの,例えば財産犯における没収とか,追徴とか,もあると思います。この種のインターネット上の犯罪において,どのような刑罰が望ましいかという点については,過去余りそのようなものを想定した刑事罰法制というものがなかった,議論されていなかったのではないかと思います。有体物における没収に相当するようなものとして,秩序罰としての制裁金,課徴金の課金というようなものや,行政制裁としてサービス提供の停止・拒否などで,技術的に立法可能なものがあるのであれば,将来的にはそのようなものも視野に入れて頂いたらどうなのかと思いました。

【茶園主査】ありがとうございました。

よろしいですか。では,どうもありがとうございました。

本日は幾つかの貴重な御意見を頂きましたので,今後頂いた意見を踏まえまして,取りまとめを行っていきたいと思っております。他に特段ございませんでしたら,本日は時間も若干早いですけれども,これぐらいにしたいと思っております。

最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】次回小委員会につきましては,改めて日程調整の上,御連絡したいと思います。どうもありがとうございました。

【茶園主査】では,どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会,第3回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動