諸外国の立法例

研究目的の権利制限

ドイツ法(「外国著作権法令集(37)-ドイツ編-」2007年3月,社団法人著作権情報センター)

第52a条 授業及び研究のための公衆提供

  • (1) 次の各号に掲げる行為は,その都度の目的上必要であって,かつ,商業的でない目的を追求するものとして正当とされるかぎり,許される。
    • 1. (略)
    • 2.公表された著作物の小部分,僅かな分量からなる著作物及び新聞又は雑誌に掲載された編集構成物の少量を,専ら明確に限定された範囲の者のためにその者自身の学術研究を目的として,公衆提供すること。
  • (2) (略)
  • (3) 第1項の場合においては,公衆提供のために必要とされる複製も許される。
  • (4) 第1項に基づく公衆提供については,相当なる報酬を支払うものとする。この請求権は,集中管理団体によってのみ行使することができる。

第53条 私的及びその他の自己の使用のための複製

  • (2) 著作物の複製物の少量を製作し又は製作させることは,次の各号に掲げる目的に応じ,それぞれ当該各号に定める条件に従う場合には,許される。
    • 1. 自己の学術的使用に供するため複製がその目的上必要と認められる場合にかぎる。

イギリス法(事務局仮訳)

(研究及び私的学習)

第29条

  • (1) 非営利目的の研究を目的とする文芸,演劇,音楽又は美術の著作物の公正利用は,十分な出所明示を伴うことを条件として,著作物のいずれの著作権をも侵害しない。
  • (1B) (1)の目的での公正利用に関し,現実的に又はその他の理由により出所の明示が不可能な場合は,これを要しない。

オーストラリア法(「外国著作権法令集(33)-オーストラリア編-」1999年3月,社団法人著作権情報センター)

第40条 調査または研究のための公正利用

  • (1) 調査または研究を目的とする言語,演劇,音楽もしくは美術著作物または言語,演劇もしくは音楽著作物の翻案物の公正利用は,当該著作物に対する著作権の侵害にあたらない。
  • (1A) 言語著作物(講義録を除く)の公正利用は,教育機関に所属する外部学生による研究もしくは調査の認可課程の目的でまたはこれに関連して行われる場合には,当該著作物に対する著作権の侵害にあたらない。
  • (1B) 第(1A)項において,講義録とは,講義または指導を行う者が研究もしくは調査においてまたはこれに関連して作成する言語著作物をいう。
  • (2) 本法において,言語,演劇,音楽もしくは美術著作物または言語,演劇もしくは音楽著作物の翻案物の全部または一部を複製することによって行われる利用が,調査または研究のための当該著作物または翻案物の公正利用にあたるか否かを判断するにあたって検討すべき事項には,以下を含む。
    • (a) 取引の目的および特徴
    • (b) 著作物または翻案物の性質
    • (c) 当該著作物または翻案物を通常の商業的価格で合理的な期間内に入手できる可能性
    • (d) 当該取引が,当該著作物または翻案物の潜在的市場または価値に及ぼす影響
    • (e) 当該著作物または翻案物の一部のみが複製される場合 当該著作物または翻案物全体に対する,複製された部分の量および重要性
  • (3) 第(2)項にかかわらず,調査または研究のための言語,演劇もしくは音楽著作物またはその翻案物の複製による利用においては,
    • (a) 当該著作物または翻案物が定期刊行物中の記事である場合――当該著作物または翻案物の全部または一部が,
    • (b) その他の場合――当該著作物または翻案物の相当部分を超えない部分が,調査または研究のための著作物または翻案物の公正利用の対象とみなされる。
  • (4) 第(3)項は,定期刊行物中の記事の全部または一部の複製による利用において,当該刊行物中の異なる主題を扱う別の記事も複製されている場合には適用しない。

第47B条 コンピュータ・プログラムの通常の使用または研究のための複製

  • (1)・(2) (略)
  • (3) 第(4)項に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製により侵害されない。
    • (a) 当該複製物が,当該プログラムの背後にあるアイディアおよび当該プログラムが機能する方法を研究する目的のために,当該プログラムのコピーを実行する技術的過程の一部として,付随的かつ自動的に作成され,かつ
    • (b) 当該コピーの実行が,当該コピーの保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり行われる場合。
  • (4) 第(3)項は,コンピュータ・プログラムの侵害コピーからの複製には適用しない。
  • (5) (略)

カナダ法(「外国著作権法令集(26)-カナダ編-」1999年3月,社団法人著作権情報センター)

調査又は私的研究
29.調査又は私的研究を目的とした公正使用は,著作権を侵害しない。

アメリカ法(「外国著作権法令集(29)-アメリカ編-」2007年7月,社団法人著作権情報センター)

第107条 排他的権利の制限:フェア・ユース

第106条および第106A条の規定にかかわらず,批評,解説,ニュース報道,教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む),研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は,著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は,以下のものを含む。

  • (1) 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)。
  • (2) 著作権のある著作物の性質。
  • (3) 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。
  • (4) 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。

上記の全ての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合,著作物が未発行であるという事実自体は,かかる認定を妨げない。

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