「研究開発目的の著作物利用」について

2008年8月1日 法制問題小委員会ヒアリング資料

インターネットにおける写真利用の現状について

インターネットでの写真利用は,鑑賞用途のみならず,直観的に情報を伝える記号として,利用が増加してきている。これはまた,普及率が非常に高い,携帯電話に搭載されたデジタルカメラの高精細化によって,加速される傾向にある。ブログなどの新しい利用方法においても,この傾向は変わらない。一方,写真利用が増加する中で,事件性があったり,社会的に有害な写真が,即時に大量複製され,短時間で流布するなどの問題も起きている。これは,ネット上で無断使用と再掲載が繰り返されることで,事実上,無限に近い増殖となり,一度そのような流出を見ると,止めるすべがない。このように,利用が急速に進み,解決すべき問題も多いが,インターネットの普及において,写真の果たす役割は極めて大きい。現在は,そのような普及の現状をみすえつつ,写真利用に関してのルール作りや体制づくりが進行している。

インターネットについての研究に対して

インターネットについての研究は,技術的な分野からのアプローチとともに,社会学的な分析研究が考えられる。これは,仮想空間上の社会を分析することでもあり,秋葉原の無差別殺傷事件のように,インターネットと強く連動した現実の事件に対して,有効な再発防止策を講じるためなどにも重要であろう。現状では技術が先行している状況ではあろうが,今後の健全な情報化社会の形成には,必要な分野と考えられる。

研究開発目的の著作物利用に関する問題点

このような研究の有用性を認めることはやぶさかではないが,この問題を議論する前提となる,いくつかの問題点を挙げる。

(1)「研究」とはどのような範囲の行為を指すのか。

  1. そもそも「研究」の定義が不明確なために,相当広い範囲の行為までも含みかねず,そのような行為全般に利用を許すことは,事実上の無制限になりかねない。また「研究」と企業の営利活動としての「運用」との境界線についても,非常にあいまいである。

(2)「目的」と「主体」は何か。

  1. 企業の営利を目的とした研究や,「主体」が個人である場合など,「研究」と称することで,すべての場合において利用可能にすることは現実的に考えられない。蓄積の責任等はどのように担保されるのか。前述のように,一度流出したデータを止めることは不可能である。どのような場合が想定され,どのような運用を想定しているのか,もう少し,具体的な事案の提示が必要である。

(3)写真に対して,独自の利用方法が想定されているのか?

  1. 例えば,写真のみをクロウリング,蓄積し,画像で検索を行うなど,写真独自の研究利用の状況が考えられるのか。写真,画像分野において,具体的に検討しなければならない状況があれば提示していただきたい。

以上

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