「研究開発目的の著作物利用」についての権利制限に対する意見

2008年8月1日

社団法人日本民間放送連盟
知的所有権対策委員会IPR専門部会
法制部会主査 池田 朋之

現状

  1. 民間放送事業者に対し,研究開発を理由とした放送番組の提供要請はあまり無い。
  2. 仮に提供要請があったとしても,放送番組を複製して提供することは困難。
    番組関係者が多岐に渡るため,その許諾が得られにくい(著作権等のみならず,一般人の肖像権やプライバシーへの配慮も必要)
    個別の要請に対して生ずる,複製する手間やコストの問題
    各放送事業者において,提供してよいと判断する「研究開発」の範囲が明確ではない

権利制限について

  1. 科学技術の研究開発目的とはいえ,権利者の権利を一定程度制限することについては,慎重な態度で臨むべきであると考える。
    また,仮に研究開発目的において著作権権利制限を行うのであるとしても,その対象となる研究開発の範囲や,著作物の複製の範囲,翻案の程度等の基準を厳密に定めるべきであり,著作物の利用と保護のバランスを常に取りながら運用されなければならない。
  2. 放送番組,特にテレビ番組をインターネット上で配信する場合は,ニュース映像やプロモーション目的などの例を除けば殆どの場合においてDRMをかけている。したがって,インターネット上で収集しうるテレビ番組の多くは,違法にアップロードされたものと推定される。このような違法流通物は権利者やコンテンツホルダーの意図に反して配信されるものであり,たとえ研究・開発の目的であったとしても,それを権利者の権利を制限してまで収集することを認めることの妥当性は低いと言わざるを得ない。
  3. 科学技術の研究開発を目的として著作物を収集・利用するのであれば,その主体となる研究・開発機関について明確な定義づけをし,その対象を厳密に限定すべきである。さもなければ,「研究・開発」という名目による抜け道ができてしまい,権利者の利益を不当に害することとなる恐れがある。

以上

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