新聞各社の主な意見(メモ)

2008年8月1日

今回のヒアリングについて,時間的な制約もあり新聞協会で意見集約を図ったわけではない。新聞協会加盟各社の一部の考え方・意見を募っただけに過ぎないことを,まず明確にした上で,それらの中の代表的な意見を紹介したい。であるから新聞協会としての意見は留保となる。

総論

  1. I,IT技術の普及・汎用化,グローバル化に,現行の著作権法が対応し切れていない側面があることは理解できる。だが,その一方で,新聞社・通信社が長年にわたって蓄積してきた過去の記事のデータベース,ウェブで提供している記事等は,膨大な人材やコストを投じて営々として作り上げて来ている貴重な知的財産(報道資産)であることも理解していただきたい。
  2. II,新聞社の中には,構築したデータベースを活用して報道事業を行っている社もあり,すでに「研究開発」目的のために,報道資産を販売している社も多い。これらの報道事業に影響がでないよう,著作権者である新聞社等の意向も十分に配慮し,慎重な態度で検討していただきたい。

言語データに関する報道事業

  1. 1,一部の社では,膨大な言語データを必要とする,コーパス辞典等の作成,文法研究,日米翻訳ソフトの作成,言語構成の分析,検索エンジンのキーワード抽出などの「研究開発」などの目的で,年間の記事データをDVD等に採録して販売している。
  2. 2,一部の社では,過去の紙面のデータベース化を行い,「近・現代史の研究」などの目的でDVDやウェブで販売している。
  3. 3,多くの社で記事のテキスト・データ等をデータベース化し,一般のユーザーに有償で利用してもらっている(いわゆる記事検索サービス)。なお,記事データベースとしての使用に関しては,個人情報保護,肖像権,プライバシーの問題等もあり,新聞社としても慎重に配慮して対応している側面があることを付言しておきたい。

主要な意見

  1. 1,「研究開発に相当程度萎縮効果」の記述は,意味が不明瞭ではないか。単なる印象論に基づいて法改正の議論が進むようであれば,新聞社としては著作権者の立場から憂慮せざるをえない。
  2. 2,「研究開発」の定義があいまいになり,拡大解釈されて一人歩きする恐れはないのか。「研究開発」の範囲を限定,かつ明確にしてほしい。仮に法改正をするならば,ウェブ上で,氾濫している記事・写真の無断転載,無許諾利用などの取り締りと罰則強化を同時にして欲しい。
  3. 3,実際にIT企業などが,翻訳ソフト,検索キーワードの抽出,文法の変化・変遷の研究,新語の意味の変容などの指標作成のため,新聞社から邦文或いは邦文・英字の記事データのセットやウェブ上での記事データを購入しているという事実と整合性が保てるようにしていただきたい。
  4. 4,日本版「フェア・ユース」の導入には,慎重に対応してほしい。
  5. 5,報道事業の縮小をもたらす可能性がある法改正は,報道機関および報道行為そのものを脆弱にさせ,真の公益には繋がらないと考える。公益とはなにかを熟考して,検討してほしい。

以上

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