研究開発における情報利用の円滑化のための権利制限について
ヒアリング資料

2008年8月1日

社団法人 日本書籍出版協会
副理事長 金原 優

標記について,当協会としての意見を以下に申し上げます。

研究開発のために著作物の内容が利用される場合は許諾対象とすべきと考えます
出版物として発行される著作物,とりわけ学術的内容を有する著作物は,学術研究あるいは研究開発の場で読まれ,利用されることを目的として創作されます。つまり,これらの著作物は,学術的な研究およびその帰結としての新たなシステムや製品の開発のために使用されることを本来の目的としており,このような利用形態の一部でも権利制限の対象にされるということは,「著作物の通常の利用を妨げる」ことになり,ベルヌ条約上認められないというべきです。

著作物が「素材」「サンプル」として利用される場合の権利制限には反対しません
いっぽう,著作物そのものの享受を目的とするのではなく,研究開発の過程において適法に入手された著作物が「素材」あるいは「サンプル」として利用されることについて,権利制限の対象とすることにはあえて反対はいたしません。
ただし,「素材」等として使用された著作物が,研究開発の成果として公表されるものに明示的に含まれている場合は,その公表時以降については,その著作物の利用は著作権者の許諾の対象にすべきであると考えます。

出版活動と競合するおそれがある場合の対応について
また,著作物が研究開発の成果に含まれていない場合であっても,その成果物が出版者の活動に競合し,著作権者及び出版者の利益に影響を与えるようなものであるような場合は,その研究開発に著作物が用いられるときに権利制限を行うべきではないと考えます。当初の研究の時点では予想がつかない商用化が行われる可能性もあり,どのような場合に権利者の利益を害することになるかを類型的に予測することは困難であり,権利制限の規定を設けるとする場合には,但書として「著作権者等の利益を不当に害する場合はこの限りでない」旨の規定が必要であると考えます。

以上

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