(平成22年第12回)議事録

1.日時

平成23年1月17日(月) 10:00~ 12:00

2.場所

ホテルフロラシオン青山 2階 芙蓉

3 出席者

(委員)
大渕,岡山,小泉,清水,多賀谷,茶園,道垣内,土肥,中村,中山,前田,村上,森田,山本(たかし),山本(りゅうじ)の各委員 
(文化庁)
吉田文化庁次長,芝田文化庁長官官房審議官,永山著作権課長ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)技術的保護手段及びその回避規制について
    2. (2)契約・利用ワーキングチーム及び司法救済ワーキングチームからの経過報告について
    3. (3)文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成21・22年度報告書(案)について
    4. (4)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1-1
資料1-2
資料2-1
資料2-2
資料3

6 議事内容

【土肥主査】
それでは,ただ今から文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第12回を開催いたします。
本日はお忙しいところ,ご出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点特にご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】
それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴をいただくことといたします。
それでは,事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】
それでは,配布資料の確認をいたします。
お手元の議事次第の下半分をご覧ください。
まず,資料1-1といたしまして,本小委員会の技術的な保護手段に関する中間まとめに対する意見募集の結果概要を配布してございます。
また,資料1-2といたしまして,同じく意見募集の結果を配布してございます。
それから,資料2-1といたしまして,ネット上の複数者による創作に係る課題に関する検討経過報告を,また資料2-2といたしまして,間接侵害に関する検討経過報告を配布してございます。
最後に資料3といたしまして,本小委員会の平成21・22年度報告書(案)を配布してございます。
配布資料は以上でございます。
落丁等ございます場合には,お近くの事務局にまでお声がけいただければと思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,議事に入りますけれども,初めに本日の議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。
本日の議事は(1)技術的保護手段及びその回避規制について,(2)契約・利用ワーキングチーム及び司法救済ワーキングチームからの経過報告について,(3)文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成21・22年度報告書(案)について,(4)その他,この4点となります。
まず,(1)につきましては,前回の本小委員会において取りまとめを行いました技術的保護手段に関する中間まとめにつきまして,昨年12月13日に文化審議会著作権分科会において報告をし,その後12月14日から1月7日にかけて意見募集が行われました。
本日は意見募集の結果につきまして,事務局から報告をいただき,その後意見交換を行うこととしたいと存じます。
次に,(2)につきましては,契約・利用ワーキングチーム,司法救済ワーキングチームにおいて検討が進められておりましたので,本日はその検討経過のご報告をいただき,その後議論を行いたいと思います。
それから,(3)につきましては,本小委員会の平成21・22年度報告書(案)につきまして,事務局から簡単にご説明いただいた後,これも議論を行いたいと思います。
それでは,まず(1)の議題に入りたいと存じます。
まず,意見募集の結果につきまして,事務局から報告をお願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】
それでは,資料1-1に基づきまして,技術的保護手段に対する中間まとめに対する意見募集の結果概要についてご報告いたします。
まず,箱書きの中にございますように,昨年12月14日から今年の1月7日まで意見補充を行いました結果,お寄せいただいたご意見,団体,個人の総数は団体が12団体,個人が56名の合計68団体・個人でした。また,寄せられたメール等の総数は団体が32通,個人が91通の合計123通でした。
項目ごとのご意見の件数につきましては,資料中の4にあるとおりですので,後ほどご覧いただければと思います。
なお,1通の意見が複数項目にわたることがございますため,件数の合計は3に記述してございますメール等の総数とは一致しておりません。ご了承ください。
次に,5の各項目についての主な意見の内容について紹介いたしますが,時間の関係もございますので,掲げておりますご意見の中から同様な内容につき複数のご意見が寄せられたものを中心に紹介させていただければと思います。
また,3ページ以降に記載しております意見につきましては,より分かりやすい論理とするため,いただいた意見の内容に応じ,適宜分類を整理し直しておりますので,その点も予めご了承いただければと思います。
それでは,3ページ以降をご覧ください。
まず初めに,第1章に関連するものといたしまして,2010年にアメリカ著作権局が明らかにしたDMCAの新たな適用除外項目の紹介が,iPhoneのJailbreakについてのみの紹介にとどまっており,検討が不十分だったのではないかとのご意見やACTAに関するご意見といたしまして,ACTAについては多くの問題が国際的に指摘されており,そのような条約が批准されることを前提とした国内法の改正の議論を行うべきではない。そういったご意見がございました。
次に,第2章のところで,[1] 立法事実・被害実態に関する意見でございますけれども,アクセスコントロールの回避機器の氾濫等によって,近年コンテンツ産業に大きな被害が生じていると報告される現状において,著作権法の技術的保護手段に関する規定を適切に見直すことによって,この状況を是正するとした中間まとめに基本的に賛成であるとするご意見がございました。
一方で,アクセスコントロール技術につきましては,平成11年,平成18年の検討時において,著作権法での規制対象に含めないとされたものでございますけれども,当時と現在で特殊な立法事実の変化というものは生じていないのではないかとのご意見や「違法複製ゲームソフトの使用実態調査」にある被害額等は,信用がおける数値ではなく,サンプル数としても少なく,正確性に欠けるので,そういった結果を法改正の根拠にするにはいかがなものかといったご意見がございました。
また,[2]の技術的保護手段の見直しに当たっての基本的考え方に関するご意見といたしましては,中間まとめの整理は保護技術の実態に即した適切な考え方であり,賛成であるとするご意見があった一方で,機能としてのコピーコントロールという概念は非常にあいまいであり,拡大解釈される可能性があり,開発者を萎縮させるおそれがあるのではないかといったご意見や著作権法は既に著作物の違法ネット流通については,送信可能化権を創設することなどにより対応しており,今ある法的権利を適切に行使すれば,違法ネット流通は相当程度抑止することが可能ではないかといったご意見がございました。
また,[3]のアクセスコントロール機能のみを有していると評価される保護技術に関するご意見いたしましては,いわゆるアクセスコントロール機能のみを有する技術については,現行著作権法の体系を大きく変更する可能性があるため,今回の見直しに当たっては対象としないことに賛成といったご意見があった一方で,こうしたアクセスコントロールが社会的にどのように「機能」しているのかを評価するに当たっては,法的予測可能性が担保されるとともに,事業活動に萎縮効果が生じないようにするため,評価の方法や基準等の明確化が不可欠であるが,限定的な範囲で締結されているようなライセンス契約をも考慮してしまうと,結果として,特定のプラットフォームの保護につながり望ましくないといったご意見,それからクラウドサービスやインターネット上の著作物の適法な利用によるビジネスを可能とするアクセスコントロール技術の回避についても,むしろ著作権法の規制対象とすべく,検討を継続すべきといったご意見がございました。
次に,音楽・映像用の保護技術の実態とその評価のところでございますが,まず[1]の「暗号型」技術に関する意見といたしまして,「保護技術が社会的にどのような機能をはたしているか」という観点から再評価をし,CSS等の「暗号型」技術が,アクセスコントロール機能とコピーコントロール機能を合わせ有するものとして評価している中間まとめの整理は実態に即した適切な見解であるといったご意見がございました。
一方で,放送用のB-CAS方式はコピーコントロール機能もアクセスコントロール機能も持っておらず,B-CAS方式の目的は受信装置を制限する効力のみに使われる場合がほぼすべてであるといったご意見や中間まとめの整理では,ライセンス契約が法と同等の力を持つことになり,問題ではないかといったご意見がございました。
それから,[2]の「非暗号型」技術に関するご意見といたしましては,非暗号型技術には,コピーコントロールCDのように消費者の正当な利用を害するものもあり,こうした非暗号型技術を十把一絡げに権利対象とすることには同意できないといったご意見がございました。
次に,ゲーム機・ゲームソフト用の保護技術の実態とその評価に関するご意見といたしまして,いわゆるマジコン規制については当然のことであり,賛成であるとするご意見があった一方で,自主制作ソフトと海賊版ソフトを見分けることができない仕組みを保護することは,本来著作権法による権利が及ばない部分,この場合自主制作ソフトの実行制限と書かれてありますけれども,を巻き添えにするものとなることから,こうしたことのないようにするべきであるといったご意見や中間まとめ中,「特定の者によるプラットフォームの保護を認めるという観点に立つものではない」と述べている以上,技術的保護手段を有する機器との相互運用性が妨げられたり,あるいは自主制作ソフトウェアなどの適法な著作物の利用が妨げられたりすることのないよう,配慮されるべきであるといったご意見がございました。
続きまして,第2節3(3)のまとめに関するご意見といたしまして,PC以外のプラットフォームのゲーム,ニンテンドーDSやPSP,WiiやPS3といったゲームプラットフォームではゲームソフトとプラットフォームが強く結びついており,別のプラットフォームで動作できるようにする必要は開発・製作上ないことから,プラットフォームに強く結びついたゲームソフトウェアに対する暗号化回避,セキュリティ上の仕組みを回避するソフトウェアに対する違法化は理解,納得できるとする意見があった一方で,複製そのものの防止を行っていない場合についてまで,技術的保護手段の対象と評価することは,結果として,著作権保護に名をかりたプラットフォーム保護という弊害が生じるため妥当ではないといったご意見やマジコン規制を実現しつつ,プラットフォーム保護という弊害が生じないような規制の実現を図るべく政府内部での十分な調整がなされなければならないといったご意見,さらには中間まとめにおきまして,暗号化の解除でも当該解除により視聴が可能となる場合や,いわゆるマジコン等によりゲームソフトの使用が可能となる場合には,技術的保護手段を回避した後に支分権を侵害する行為が存在しないため,そもそも第30条第1項第2号の適用そのものは受けないと中間まとめ中あるとされている点については,現行法の解釈を維持し,適法行為の範囲が狭められるものではないことが明示されており,評価できるといったご意見がございました。
次に,第3章の技術的保護手段の定義規定等の見直しのところで,まず[1]の技術的保護手段及びその回避の定義に関するご意見といたしまして,暗号型技術が含まれるように技術的保護手段の方式に関する定義規定を見直すという本中間まとめの見解は,利用者の予見可能性への配慮という見地からも適切であると考えるといったご意見や,一方で規定の見直しには賛成であるが,法律が技術の進歩に追いつかないこと等を踏まえ,特定の技術を前提とした限定的な規定ではなく,暗号技術を含む著作権者等の意思に基づいて用いられた著作権侵害の防止又は抑止のために効果的な手段が幅広く含められる定義内容とすべきであるといったご意見がございました。
また,そのほかにも保護手段及び回避の規定の見直しの際の条文化については,罪刑法定主義に反しないよう「明確性の原則」に特に配慮することとったご意見や企業の事業活動に萎縮効果を及ぼすおそれがあることから,現行の「抑止」の規定の見直しを行う場合には,技術的保護手段の対象範囲が明確になるよう,慎重に検討することといったご意見,それから中間まとめにおいて,「権利の実効性」という表現が何度も用いられているが,適法行為の範囲が狭められないよう配慮した規制とされなければならないといったご意見がございました。
続きまして,第4章の技術的保護手段の見直しに伴う回避規制の在り方の第1節,基本的考え方に関するご意見といたしまして,条文にあいまいな部分が残ると,当初の想定を超えて規制対象を拡大解釈されるおそれがあり,権利者の過度の権利主張や,ユーザーの過度の萎縮を招きかねないため,拡大解釈の余地が無い条文にしていただきたいといったご意見や「社会的実態を踏まえ」とあるが,「社会的実態」は日々進化・変化していくものから,保護と利用の均衡を保つために,米国のDMCAが導入しているような,規制による影響についての定期的な意見の募集や,規制によって生じた不利益を治癒するためのモラトリアムを設けるなどの措置も必要であるといったご意見がございました。
それから,第2節の回避機器規制につきまして,それに関するご意見といたしましては,新たに規制対象になる以前から所持しているソフトウェアの所持に対しては,規制対象から外すべきであり,また輸入に関しては,新たに規制対象となったものでも故意でなければ規制対象にすべきではないといったご意見やマジコンと呼ばれる特定の機器の禁止なら範囲も絞れて規制も理解できるが,余りに規制対象範囲が広がると技術発展にも影響があるといったご意見,また法改正を行うに当たっては,厳密な適用範囲の特定が必要であることから,少なくとも複製防止技術の具体的な登録制度が不可欠であると考えるといったご意見がございました。
それから,回避装置等の種類との関係に関するご意見といたしましては,まずいわゆる汎用装置に関するものといたしまして,汎用的な装置を技術的保護手段の回避対象としないという,現行法を維持していくことが必要であるとするご意見があった一方で,汎用的な装置等についても,その装置が使われる主な目的や社会的な機能,使用実態の観点から見れば,技術的保護手段を回避するためのものであると評価される場合には,規制の対象とすべきであるといったご意見がございました。
それから,いわゆる無反応機器に関連するものといたしましては,「無反応機器」を技術的保護手段の回避対象としないという,現行法を維持することといったご意見,それから中間まとめにおいては,幾つかの点で消費者の権利に配慮している側面が見られ,喜ばしいく評価でき,例えばいわゆる「無反応機器」が規制対象とならないようにすることについても,引き続き配慮が必要であるといった記述は今後も継続的に求めたいといったご意見がございました。
その他のご意見といたしましては,過去に購入したメディアの規格が古くなり再生機器が市場で購入できなくなった場合,持っている再生機器が故障してしまうと鑑賞ができなくなってしまうといった状況が生じ得るが,こうした状況を回避するために,再生機器が販売終了により存在しない場合等の場合には規制の対象外とすることや,最新のメディアでの提供を義務化することなどについて検討する必要があるといったご意見をいただいております。
次に,回避行為規制について,第3節に関連するものといたしましては,コピーしたゲームがプレイできるということは憂慮すべきことだが,回避行為自体の規制には慎重であるべきといったご意見や仮に暗号の復号それ自体が技術的保護手段の回避と整理されると,暗号を復号した上で視聴する機能しか持たない場合であっても,「回避プログラム」の公衆送信と見なされるという懸念があるといったご意見がございました。
また,権利制限規定との関係に関する意見といたしましては,バックアップ目的の複製の場合には,私的複製を認めてほしいとのご意見やDVDやBlu-ray Discを購入しても,それらをポータブルデバイスに複製することができなくなり,私的な利用が阻害されることになることから反対であるとのご意見,それから業として行われるものはともかく,家庭内で行われる私的複製行為については,そもそも行為の把握のしようがなく,規制の実効性がなく,無理に規制しようとすれば弊害が大きいとのご意見,DVDなどへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失にはなり得ず,またインターネットに投稿されることによって生じる被害は公衆送信権によって処罰することが可能であるといったご意見がございました。
また,そのほかにも電子的に記録された著作物への障害者のアクセスのためにも障害者が必要とする方式に変換するための複製が必要になるため,障害者のアクセス保障を目的とした利用については,技術的保護手段の回避が可能な制度設計を求めるといったご意見や権利制限の一般規定が法制化された場合,技術的保護手段を回避した利用であっても権利制限の対象となる可能性があるが,この点の考え方を示すべきではないかといったご意見がございました。
次に,第5章に関するご意見といたしまして,個々の私的複製による被害法益は大きくないにしても,その総体としての被害法益は膨大であると考えられることから,著作権侵害を抑止する観点からも,私的使用のための回避行為を伴う複製行為についても刑事罰化するよう,見直しの検討をするべきといったご意見がございました。
以上,中間まとめ本体の記述に関するご意見としては以上のとおりでございますが,そのほかの主なご意見といたしましては,著作権法の可及的速やかな改正,施行を希望するといったご意見,そういったご意見があった一方で,中間まとめが2カ月間の検討でまとめられ,実際に法改正まで行われようとしていることは問題であり,さらなるヒアリング等が行われることを望むといったご意見や,不競法と別個に著作権法を改正する必要性について検討するべきであるといったご意見がございました。
以上,中間まとめに対する意見募集の結果概要について,主なものをご紹介させていただきました。
時間の関係上,ただ今ご紹介できなかったご意見につきましては,後ほど資料の方をご覧いただければと思います。
なお,資料1-2におきましては,寄せられたご意見をそのままの形でまとめさせていただき,整理したものをご用意してございます。併せて後ほどご覧いただければと思います。
意見募集の結果概要報告については,以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,(1)の議題に入りたいと思います。
まず,意見募集の結果報告を踏まえまして,ご意見,ご質問がございましたらお願いをいたします。
いかがでございましょうか。
ご質問ございましたら,ご質問でも結構でございますので。
特によろしゅうございますか。
特にないようでございましたら,議題の(2)に入りたいと思いますけれども,もし後ほどまたご質問,ご意見ございましたら,最後のところでそういう機会を設けたいと思いますけれども,次に入ってもよろしゅうございますか。
それでは,たくさんの方,団体,個人の方に貴重なご意見をちょうだいしたということについて,お礼を申し上げておきたいと思います。
それでは,次に議題の(2)に入りたいと思います。
これはワーキングチームからの報告ということになりますが,まず契約・利用ワーキングチームからの報告をお願いしたいと存じます。
本日は座長であります末吉委員がご欠席のため,座長代理である森田委員からネット上の複数者による創作に係る課題についての報告をお願いしたいと思います。
それでは,よろしくお願いいたします。
【森田委員】
それでは,契約・利用ワーキングチームにおける検討経過につきまして,資料2-1に基づいてご報告いたします。
まず,1ページをご覧ください。
ネット上の複数者による創作に係る課題につきまして,前年度に引き続き,平成22年2月18日の法制問題小委員会において設置されたのがこのワーキングチームとなります。参考の1から4といたしまして,関係する知的財産戦略本部における検討経過や知的財産推進計画が引用してありますが,このような議論の流れで検討が行われてきております。
今期はネット上で複数者により創作される著作物に関して,主に権利処理ルールの明確化という観点から,契約による対応の可能性について検討を実施いたしました。
なお,チーム員につきましては,資料2-1の3ページに記載がございます。
具体的な検討の経過につきましては,資料2-1の2ページの2.をご覧ください。
今期は3回会議を開催し,第1回においては奥邨チーム員から,この問題に関する国際的な議論の動向について,第2回においては川上チーム員から,ニコニコ動画におけるネット上の複数者の創作によるコンテンツの現状について,第3回においては野口チーム員から,海外の関連サービスの紹介及び関係する法的論点等について,それぞれご発表をいただき,それに基づく議論を行いました。
今後の方針につきましては,2ページの3.に書いてあるとおりでございます。動きの速い分野でもあり,またこれまで余り深い議論がなされていなかった課題でありますが,今期に引き続き,主に権利処理のルールの明確化という観点から,契約による対応の可能性を中心に,立法措置による対応の可能性も含めて,さらなる検討を実施し,なるべく速やかに一定の結論が出せればと考えております。
報告は以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただ今のご説明につきまして,ご意見,ご質問ございましたらお願いをいたします。
よろしゅうございますか。
いずれにいたしましても,次の次期に権利処理ルールの明確化という観点から,さらに検討を進めていただけると,速やかに一定の結論を得るようになさると,こういうことでございますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,次に間接侵害につきまして,司法救済ワーキングチームの座長であります大渕委員からご報告をお願いいたします。
【大渕委員】
それでは,皆様,お手元にございます資料2-2という資料が「間接侵害」に関する検討経過報告ということでございますが,この資料に基づいてごく簡単にご説明させていただければというように思っております。
それで,最初に「1.問題の所在及び検討経緯」でございますが,これは今までどおりでありまして,間接侵害と呼ばれている問題はここにございますとおり,著作物等の利用について自ら(物理的に)利用行為を行う者以外の者が,どのような場合に著作権法上の責任を負うのか,これは言い換えますと差止請求権の相手方になるのかという,いわゆる「間接侵害」に関する問題について検討を鋭意行ってまいってきたわけでございます。
それで,その次のパラはいろいろな関係の動きについて,ごく簡単に書いてあるわけですが,それをちょっと飛ばしまして,時間の関係で,今ここにあるような状況の下で,これは2方向からニーズがございまして,著作権者の立場からは,権利行使が可能な範囲を法律上明確化すべきだという,そういう立場からのリクエストと,今度は逆に,利用者の側からは,権利行使が可能な範囲について,法律上,著作権法上の責任を負わない範囲を明確化すべきという逆の方向からのリクエストが出て,いずれも強まっておるわけでございます。
そして,なおここにございますとおり,知財計画2010においても,本課題について検討が求められているところでございます。
それで,2.で「検討経過」でございますが,これは昨期での検討を踏まえた上で,今期も検討を行っておりますので,若干おさらい的に,昨期においてはどういう点が打ち出されたかという点を申し上げておきますと,ここにございますとおり,(a)として,差止請求権の相手方というのは直接侵害者に限定されず,一定範囲の間接侵害者(間接的関与者)も,差止請求権の相手方となり得るという,いわゆる直接侵害者非限定説かどうかという,これが分析軸の第1本目でございまして,それとその次に分析軸の第2本目といたしまして,(b)にいって,今のように,直接侵害者に限定せず間接侵害者も差しとめの対象になり得るということを踏まえた上で,そのような間接侵害の成立については直接侵害の成立が前提となるという従属説に立つかどうかという,この2本の分析軸を中心に検討を行ってまいりました。そして,このような分析軸に沿って法制化することとした場合に,これまでいわゆる間接侵害であるとして取り扱われてきた,カラオケ法理等に基づいて行われているものが多かったかと思いますが,そういう裁判事例について,著作権法上,直接侵害と評価すべきケースと間接侵害と評価すべきケースとを適切に分類していくことについて検討を進めてまいりました。
そして,この直接侵害とされるケースの具体化・明確化に向けて整理を行うとともに,間接侵害と評価されるケースにつきましては,提供する物及びサービスが著作権侵害の用に供される蓋然性とか,これが第1点でございますが,それから提供する物及びサービスによる権利侵害の発生の認識の有無,あるいは3番目に侵害発生防止のための合理的措置の有無等といった要素を考慮対象とした上で,それらの組み合わせを考えつつ,それぞれの場合に想定される論点について検討を行ってきたというのが昨期に打ち出した方向性でありますが,それを今期も継続して進めまして,先ほど申し上げた試案について検討を実施するという一般論的なものに加えまして,具体的な裁判例という具体的な当てはめとの関係で,先ほどのポイントがどういうふうな形で具体的に採用していくのかという検討を行いました。
それと,もう一つ大きな点といたしましては,先ほどの試案を基に関係団体から意見聴取,ヒアリングを行いました。
それから,またもう一つ違う方向性といたしましては,次に2ページに入っていただきまして,さらには,知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会における検討を踏まえまして,いわゆる「リーチサイト」,これはここでの定義は別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めたサイトが,いわゆる「間接侵害」との関係でどのような位置付けになるのかについても,これも先ほどの文脈の中で,この問題についても対象として加えて,現状を把握するとともに,検討を開始いたしました。
それが今期での検討状況でございますが,それを踏まえまして,「3.今後の方向性」としては,今期は第1パラグラフにあるとおり,先ほどの作業を行ってきたわけですけれども,今後につきましては,第2パラグラフですが,本課題につきましては,ご案内のとおり早急な対応が求められているということで,今期は開催状況といたしましては,3ページにございますとおり,ちょっと遅れてしまいましたが,チーム員については3ページの下半分にある,ここにあります従前のとおりでございますが,開催をこれも鋭意進めておりますが,なかなか今期もいろいろ問題が山積しておりまして,権利制限の一般規定ですとか,先ほどの技術的保護手段の見直し等々の中では鋭意進めてきたということでございますが,早急な対応が求められているという社会状況にも十分留意いたしまして,できるだけ作業を加速いたしまして,引き続き望ましい制度設計について,さらに検討を進めるとともに,それからこれは近く関係する事案につき最高裁判例が出される動きということで,これは注2にありますとおり,まねきTVとロクラクⅡ事件について,これは聞くところによりますとまねきTVが18日,それからロクラクⅡが20日ということで,明日なり,直近したところで非常に近く出される動きもあることですから,またこれはその内容についても十分な検討を行って,可及的速やかに一定の結論を得るべく,一層努力してまいりたいと思っております。
簡単でございますが,以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただ今の間接侵害についてのワーキングチームの報告について,ご質問,ご意見ございましたらお願いをいたします。
特によろしゅうございますか。
今ご報告ございましたように,非常に重要な問題でもあり,権利者側にとっても利用者にとっても非常に関心のある,こういうテーマ,問題でございますので,非常に難しい問題とは存じますけれども,できるだけ可及的速やかに結論を得ていただければというふうにお願いをしたいと思います。
【大渕委員】
了解いたしました。
【土肥主査】
それでは,今度は議題の(3)でございます。
この文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書(案)についてのご報告をまず事務局からお願いをいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】
それでは,資料3に基づきまして,法制問題小委員会の平成21・22年度の報告書(案)の内容を簡単に説明させていただきます。
まず,1ページ目をご覧ください。
1ページ目におきましては,報告書全体にわたるはじめにについて記述をいたしております。
ここでは第9期及び第10期において検討が行われました課題や本小委員会の下に設置されましたワーキングチームなどについて記述をいたしております。
また,結論を得られた課題については,その結果を示すとともに,引き続き検討が必要とされた課題については,経過報告を示すこととしたといった記述をいたしております。
続きまして,2ページから39ページにかけましては,第1編として「権利制限の一般規定」について記述してございます。
こちらの内容につきましては,前回の本小委員会でご了承いただいた内容をそのまま記述してございますので,具体的な内容の説明につきましては,割愛させていただきます。
続きまして,40ページから65ページにかけましては,第2編といたしまして,「技術的保護手段の見直し」について記述してございます。
こちらの内容につきましても,前回本小委員会でご了承いただきました中間まとめの内容を大きく変えて記述してございませんが,これまでの本小委員会におけるご議論等を踏まえまして,若干追加して記述した箇所がございますので,その点について説明をさせていただきます。
60ページをご覧ください。
60ページの冒頭2とございますけれども,その上から4つ目の段落でございますが,ここで自主製作ソフトに係る記述を追加してございます。
具体的には,そこにある記述のとおりでありますけれども,ここではゲーム機,ゲームソフト用の法規制に関しては,自主制作ソフトを使用する場合があるが,規制の必要性の高さ等の観点から,規制そのものに例外を設けるのではなく,法の適用に当たって当該回避装置等が社会実態上どのように用いられているか等を総合的に勘案して判断されるものと考えられるといった記述を追加してございます。
そのほか,技術的保護手段の記述に関しましては,中間まとめが最終報告になることを踏まえまして,41ページにございますはじめにの記述,それから同様の趣旨で65ページのおわりにの記述も変えてございます。
恐縮ですが,特に最後の65ページのおわりにの方をご覧いただければと思います。
65ページのおわりにのところにおきましては,最後の段落におきまして,今後立法措置を講じていくに当たっては,保護技術とその回避の実態や明確性の原則等にも十分配慮しつつ,検討・作業を行う必要があること,それから障害者への情報アクセスの確保など,制度の適切な運用を図るとともに,社会的実態等を踏まえつつ,時宜に応じ必要な見直しを行う必要があることについて,追加して記述してございます。
続きまして,第3編のその他の課題についてでございます。
ここでは第1章におきまして,公文書管理法に関する権利制限規定についての記述がございます。
この点につきましては,昨年5月27日に開催されました第5回の法制問題小委員会においてご議論をいただき,報告書(案)にございますように,国立公文書館等の長が公文書管理法に基づいて国民からの利用請求に応じて公文書等を写しの交付等の方法により利用させること及び適切な記録媒体により永久保存することにつきまして,それぞれ権利者から許諾を得ることなく利用できるよう,必要な範囲で公表権や複製権等を制限する等につき,ご了承いただいたところでございます。
具体的な内容につきましては,恐縮ですが,後ほど報告書(案)の方をご覧いただければと思います。
最後に,第2章のいわゆる間接侵害に係る課題についての記述と第3章のネット上の複数者による創作に係る課題についての記述につきましては,先ほどそれぞれ大渕委員,森田委員からご説明をいただいた内容を記述してございますので,こちらにつきましても恐縮ですが,説明は割愛させていただければと思います。
資料3につきましては,以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただ今の説明を踏まえまして,報告書(案)について,ご意見,ご質問ございましたらお願いをいたします。
どうぞ,中村委員。
【中村委員】
大渕先生にちょっと一つ間接侵害のところで,資料3の報告書(案)の77ページなんですけれども,判決等をご検討された中でウィニー刑事事件控訴審という刑事のことも書かれておりまして,一方で間接侵害のテーマ設定が著作権法上,差止請求権の相手方になるのかという民事のように読んでおったのですけれども,これは間接侵害の今後のご検討は刑事の処罰の在り方にも影響するという可能性はあるのでしょうか。
【大渕委員】
ご質問いただいた,これは資料3の77ページのところに,これはウィニー刑事事件控訴審と挙げられているこの点についてのお尋ねではないかと思うのですが,先ほど最初に申し上げましたとおり,要するに著作権法上の差止請求権の相手方という論点として検討してまいりまして,その際に素材がたくさんあった方がよかろうということで,これは刑事事件ということは知りつつ,これと同じ事実関係の下で,民事として考えたらどうなるかという,そういう観点からこれを活用したということでありまして,刑事事件そのものとして検討したということではございませんので,ここまで申し上げましたら,先ほどに対する回答にもなろうかと思いますが,検討は民事面で関連としてあくまで扱ったというだけで,刑事面に対象としているものではございません。
【土肥主査】
ほかにございますか。
よろしゅうございますか。
今のご質問のように全体でも結構でございますので,技術的保護手段の点についてでも結構でございますので,どうぞご遠慮なくご意見ございましたらお願いをいたします。
よろしゅうございますか。
つまりそういたしますと,今ご説明ございました報告書(案)については,皆様のご了解をいただけると,こういうことにさせていただきたいと思いますけれども,よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,この報告書(案)については,本法制小委として了承したという扱いとさせていただきます。
それでは,この今ご了承いただいた報告書につきましては,1月25日に開催が予定されておる著作権分科会において,これは私の方から報告をして,分科会において審議をいただいた上で,文化審議会著作権分科会の報告書として取りまとめられることが予定されておりますので,ご報告いたします。
それでは,全体について何かご質問,ご意見等ございましたらお願いいたしますが,今期を振り返ってでも結構でございますので,ございますか。
もしないようであれば,少し時間は早いのですけれども,本日はこのくらいということにさせていただきたいと思いますけれども,何かございますか。よろしいですか。
それでは,今申しましたように,本日は今期最後の法制問題小委員会でございますので,吉田文化庁次長からご挨拶をいただければ幸いでございます。
よろしくお願いいたします。
【吉田文化庁次長】
文化庁を代表いたしまして,今期の著作権分科会法制問題小委員会が一つの区切りを迎えるに当たりまして,一言御礼を申し上げます。
今期の法制問題小委員会におきましては,ただ今の報告書の中にもございましたけれども,権利制限の一般規定,それから技術的保護手段の見直し,さらにネット上の複数者による創作に係る課題,それから間接侵害などといった我が国の著作権制度の在り方に関わる大変大きなテーマについてご審議をいただき,また先ほどのような形で報告書としてまとめていただきました。ありがとうございました。
ご提言いただきました事項につきましては,この後著作権分科会でご了承いただきました後,可能な限り,できる限り早い時期に法案化の方向に持ってまいりたいと存じます。この報告書の中にも様々な法案化に際しましての留意事項といったものがございますので,そういったものも十分私どもとしては配慮しながら,法案化に努めてまいりたいと思います。先生方におかれましては,今後とも引き続きご協力をいただきますようお願いを申し上げます。
最後になりましたけれども,今期大変先生方お忙しい中,特に技術的保護手段の関係につきましては,短期間であったにも関わりませず,精力的にご審議にご尽力いただきまして,誠にありがとうございました。重ねて先生方に御礼を申し上げまして,今期の最後のご挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】
委員の皆様方におかれましては,精力的なご議論をいただきまして,誠にありがとうございました。
先ほど土肥主査の方からご紹介ございましたように,次回1月25日開催の著作権分科会におきまして,本日ご了承いただいた本小委員会の報告書のご報告を土肥主査の方からされる予定となっております。
なお,著作権分科会につきましては,1月25日,(火)でございますが,10:00から12:00,場所は旧文部省庁舎6階第2講堂を予定しているところでございます。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,これで今期の法制問題小委員会を終わらせていただきます。
この期において皆様の審議に関するお力をちょうだいいたしまして,本当に厚くお礼を申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。
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