放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第7回)

日時:令和2年11月30日(月)

13:00~15:00

場所:AP虎ノ門Jルーム

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)報告書案について
    • (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

資料1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(報告書案)(704.5KB)
資料2
第5回規制改革推進会議投資等WG(令和2年11月25日)における意見概要(192.3KB)
参考資料1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームにおける審議スケジュールのイメージ(124.3KB)
参考資料2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第1回から第6回まで)における意見概要(485.5KB)
参考資料3
基本政策小委員会(第2回:10月19日)における委員の意見概要(237.7KB)
参考資料4-1
総務省提出資料(「放送コンテンツの同時配信等における権利処理円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ」概要)(300.9KB)
参考資料4-2
総務省提出資料(放送のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ)(別紙を含む)(554.7KB)

議事内容

【末吉座長】ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム」(第7回)を開催いたします。

本日は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉座長】ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することは,どうか御遠慮いただきますようお願い申し上げます。

それでは,事務局より,配付資料の確認をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料一覧を御覧いただければと思います。

まず資料1が,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等についてと題する本ワーキングチームの報告書案でございます。資料2が,先日開催されました第5回規制改革推進会議投資等ワーキンググループにおける意見の概要を整理した資料でございます。また,参考資料としまして,審議スケジュールのイメージや,これまでのワーキングチームにおける意見概要などをおつけしております。不足などございましたら,事務局までお伝えいただきたいと思います。

【末吉座長】それでは,議事に入りますが,初めに,議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。本日の議事は,1,報告書案について,2,その他の2点となります。

事務局で,これまでの本ワーキングチームでの議論を踏まえ,本件に関する制度改正等について報告書案を用意していただいています。また,先日25日水曜日に開催された規制改革推進会議投資等ワーキンググループで,本課題が議論されています。併せて事務局より御説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,まず資料2のほうを御紹介させていただきたいと思います。

先日,11月25日に投資等ワーキンググループが開催されておりまして,そこでいただいた意見を内閣府規制改革推進室にまとめていただいておりますので,御紹介をさせていただきたいと思います。

まず,1つ目の丸は総論的な御意見でございまして,制度設計は細部の「詰め」が重要であるため,多くの関係者に納得いただけるような制度にする必要があること,また,技術の進展に対応できるような制度にする必要もあるという御意見でございます。

2つ目は,許諾推定規定に関して,「推定を覆す事情の例」の範囲が広いと安定的に利用ができないので,例示は限定的・具体的なものに絞るべきという御意見でございます。

3つ目も同じく「推定を覆す事情の例」につきまして,対価の水準が重要な論点であるということで,手続的にきちんとディスクロージャーして契約を行っていれば,対価の水準をもって後出しで異議申立てができないようにするとよいのではないかという御意見でございます。

それから,次も許諾推定規定に関しまして,推定が覆るリスクへの対応として,ガイドラインでは契約内容に踏み込んだ議論,契約ひな形を作る必要もあるのではないかという御意見でございます。

次の丸は,政省令,ガイドラインの策定は可能な限り早く行い,ガイドラインの公開後にも効果検証を行う必要があるという御意見でございます。

次の丸は,法案の施行期日に関しまして,オリンピックの間は先行適用することができないかという御提案でございます。

次の丸は,この分野は進化が速いことも踏まえて,条文上に見直し条項をつけることが有効ではないかという御意見でございます。

それから,次の丸は,ローカル局の権利処理のリソースが十分でないということも踏まえて,ガイドラインはローカル局でも十分活用できるものにする必要があるという御意見でございます。

次の丸も同じくガイドラインにつきまして,ベストプラクティスを随時追加し,FAQ,Q&Aを充実させるべきという御意見でございます。

次の丸は,「フタかぶせ」の原因,誰が拒否しているのかを開示してはどうかという御提案でございます。

それから,次の丸は,有料配信の取扱いについては,将来を見据えた議論が必要であるという御意見でございます。

それから,次の丸は,アウトサイダーの補償金に関しまして,窓口一本化についてはコスト負担への対処を考える必要があるという御意見でございます。

それから,次の丸は,権利者の中にも十分な交渉を持たない方もいるため,そういう人たちにもしっかりと制度などの周知をしてほしいという御意見でございます。

それから,次の丸は,国民目線という観点から見た場合には,見逃し配信の期間,フタかぶせの割合が重要であるため,視聴者側へのヒアリングや,サービス開始後の調査も行う必要があるのではないかという御意見でございます。

それから,最後の丸は総括的なコメントでございまして,推定規定を放送事業者と権利者の双方が不安なく利用できるようにすること,それから,「アクセス困難者」への補償金が円滑に分配されるようにすること,この2つについては,法施行までにしっかり当事者間協議を進めるべきという御意見でございます。また,繰り返しですけれども,ガイドラインはローカル局にも使えるように,万人に分かるような形で記述すべきという御意見や,制度をまず実行に移し,課題があれば早急に対処するというアジャイルな運用が重要であること,また,引き続きスピード感を持って国民,放送事業者,権利者全てがWin-Winとなる姿を実現してほしいという御意見もいただいたところでございます。

資料2については以上でございます。

続けて,資料1について御説明を差し上げたいと思います。これまで御議論いただいてきた内容を踏まえまして,本ワーキングチームの報告書案を事務局で作成しておりますので,順次御説明をいたします。中間まとめの内容と重なる部分も多いですけれども,確認の意味も込めまして,改めて全体をざっと御紹介したいと思います。

まず,冒頭の4行では,検討の経緯などにつきまして,幅広い関係者からヒアリングを行った上で集中的に議論を進めてきたこと,政府においては,今後この報告書の内容に沿って,速やかに法整備等の対応を進められることを期待するということを記載しております。

その下からが具体的な内容でございまして,まず1.基本方針におきましては,放送番組の同時配信等が視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興などの観点から非常に重要な取組であり,放送と同等の権利処理を可能とする制度改正等を目指して検討を進めていく必要があるということを記載しております。

また,3つ目の丸の2行目から3行目辺りでは,視聴者・放送事業者・クリエイターの全てにとって利益となるような措置を迅速に講じていくこと,その際には,多様なサービス形態や実態の変化等に柔軟に対応できる仕組みを構築することと,放送事業者からクリエイターに対して適切な対価が支払われるようにすることが極めて重要であるということを付記しております。

次の2.では,課題の整理及び検討の進め方等といたしまして,総務省で取りまとめていただいた要望に基づき,どのような整理をして検討を進めてきたかということを記載しております。

具体的には2ページの点線で囲った部分でございますけれども,取りまとめいただいた要望の性質に応じまして,この枠囲いにありますとおり,著作権制度の改正により対応すべき事項と,制度改正をまたず,速やかに運用面での対応を進めるべき事項に仕分けをした上で,前者について優先的かつ集中的に議論を行ってきていただいたところでございます。後者の課題につきましては,早急に当事者間での協議・対応を進めるとされておりまして,既に当事者間での議論が進められているところでございます。

いずれにしましても,下から2つ目の丸の最後の辺りから記載をしておりますとおり,制度・運用の両面から,実効的かつ合理的な対応について早急に措置を講ずべき,さらに制度改正を行った後も,丁寧にフォローアップをしながら,必要に応じてさらなる対応の検討を行うことも求められるとしております。

また,最後の丸になお書きで記載しておりますけれども,今回の対応をきっかけに,権利情報のさらなるデジタル化・集約化など,この課題に限らず様々な場面における円滑な権利処理に資する取組についても検討していくことが望まれるとしております。

次に,3ページからが3.制度改正の内容でございます。ここではまず総論として,対象とするサービスの範囲について記載をした上で,5ページ以降,各論として各課題ごとの対応について記載をしております。

まず総論,制度改正によって利用円滑化を図るべきサービスにつきましては,1つ目の丸にありますように,同時配信・追っかけ配信・一定期間の見逃し配信を対象とすることを基本にしております。ただ,2つ目の丸の最後に記載のとおり,個々の論点・規定の性質に応じて,対象となるサービスの範囲が若干異なる場合もあり得る点には注意が必要としております。

詳細につきましては,下のところで,検討に当たっての視点と,対象サービスの範囲を画する要素と,それぞれ記載をしております。(ア)から(エ)の視点に基づいて,それぞれの要素について議論を行っていただいた結果を①~⑦で記載しております。

まず,要素の1つ目,配信のタイミングや期間でございます。先ほど申し上げましたとおり,一定期間の見逃し配信まで対象にするとしておりまして,見逃し配信の期間につきましては,過度に期間が拡大しないよう注意しながら,実態に即した柔軟な期間設定を可能とすべきとしております。

それから,マル2の放送対象地域との関係につきましては,放送対象地域に関わらず,同時配信等を可能とすることとしております。

またマル3,放送で流す番組との差異につきましては,権利処理未了のために生じるフタかぶせなど,必要最小限の内容変更を認めるということと,CMの差し替えについても特段問題がない旨を記載しております。

続いて4ページにまいりまして,マル4,配信形態につきましては,放送事業者からの御要望に基づきまして,ストリーミング形式での同時配信等を対象とすることにしております。

またマル5,実施主体につきましても,放送事業者からの御要望に基づき,放送事業者が主体的に実施していると評価できるサービスであれば,配信プラットフォームが自前かどうかを問わず対象にすることにしております。

それから,マル6,視聴者からの対価徴収の有無に関しましては,多様なビジネスモデルに柔軟に対応し得るよう,法律上,無料配信に限定する旨は規定せず,今後のサービス実態等を踏まえつつ,政省令等において具体的な取扱いを規定することが適当としております。

なお,※に記載のとおり,仮に有料配信サービスを対象にするということを検討するに当たりましては,視聴者の利便性と,インターネット独自コンテンツの配信サービスとの関係に留意するとともに,放送事業者が有料配信とする場合の権利者への対価還元の取扱いを含めて権利者に説明し,その理解を得る必要があると考えられる旨も併せて記載をしております。

次にマル7が,ラジオや衛星放送・有線放送等の取扱いでございます。1つ目のポツに記載のとおり,放送関係団体からは,地上波テレビ放送と同様に取り扱ってほしいという意向がある一方で,権利者側からは,ニーズが不明確,もしくは音楽配信ビジネスなどとのバッティングを懸念する御意見も示されていたところでございます。実態として,こういったサービスについては,地上波テレビ放送と一定の差異を有すると考えられる部分もありますけれども,今回の改正の趣旨を踏まえますと,明確なニーズがあり,権利者の利益を不当に害しないものについては,可能な限り対象に含められるようにする必要があると考えられるとしております。

このため,結論としては一番下のポツに記載のとおり,ラジオ・衛星放送・有線放送等を類型的に対象サービスから除外することはせず,音楽配信ビジネスとバッティングする部分などを具体的に特定し,そうした必要最小限の部分のみが除外されるように措置されることが適当としております。その際,実態等を踏まえて,柔軟かつきめ細かな対応を行う観点から,政省令等において具体的な規定を行うことが適当としております。

続いて,5ページから各論(各課題ごとの対応)でございます。

まず,(1)の権利制限規定の拡充につきましては,マル1からマル6までの規定について,基本的に全て同時配信等への適用拡大を行うことにしております。

まずマル1,34条1項につきましては,特に公益性の高い場面について定めるものであり,権利者団体からも特段の反対はないということで,同時・追っかけ・見逃し配信全てを対象に含めることにしております。

マル2の38条3項につきましては,前段と後段で分けて記載をしております。まず2つ目のポツでは,特に後段(通常の家庭用受信装置を用いる場合)については,権利者からの懸念の声も強いということも踏まえつつ,少なくとも同時配信については対象に含めるとしております。この点に関して,委員から,追っかけ配信についても,同時配信に準じたサービスとして対象に含めるべきという意見があった点にも留意する必要があるとしております。

一方で,前段の非営利・無料で行う場合については,後段と比較すると権利者に与える影響も限定的であると考えられるため,見逃し配信まで対象に含めることも検討する余地があるとしております。

いずれにしましても,結論としては,一番下のポツに記載のとおり,こういった考え方を踏まえて,法整備に当たって視聴者や伝達を行う者にとっての利便性と,権利者の利益保護のバランスに十分留意しつつ,具体的な対象サービスの範囲を特定することが適当としております。その上で,一部の権利者団体から御指摘のあった本規定の在り方全体につきましては,今回の議論とは切り離して,別途,関係者を交えて丁寧に検討を行うことが適当としております。

続いて6ページにまいりまして,マル3の39条1項,それからマル4の40条2項,こちらについては公益性の高い場面についての規定であり,反対も想定されませんので,同時・追っかけ・見逃し配信は全て対象に含めることにしております。

次に,マル5の第44条(一時的固定)でございます。2つ目のポツに記載のとおり,同時配信等を行うためには,基本的にその前提として,様々な著作物等を記録媒体に固定する必要があるところ,特に権利制限に基づいて同時配信等を行う場合には,固定(複製)だけ許諾を得るというのは困難であろうということで,それに対応するためにも,この規定も同時・追っかけ・見逃し配信を全て対象に含めることとしております。

その際,権利制限に基づいて同時配信等を行う場合だけでなく,許諾に基づいて同時配信等を行う場合も権利制限の対象にするかどうかというのが論点として残っておりました。その点が3つ目のポツでございまして,現行規定上,許諾に基づいて放送を行う場合の一時的固定も権利制限の対象となっているということから,本規定の正当化根拠がマル1,マル2,すなわち性質上権利を及ぼすべきではないということにあるとすれば,必ずしも権利制限に基づいて同時配信等を行う場合に限定する必要はないという考え方もあり得るということを踏まえながら,法整備に当たって具体的な取扱いを整理することが適当としております。

次に7ページにまいりまして,マル6の第93条については,第44条の一時的固定と同趣旨の規定でございますので,同様に,同時・追っかけ・見逃し配信を対象に含めることとしております。

次に,(2)が,借用素材を含む著作物及び映像実演に関して,放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化でございます。

まず,基本的な考え方の1つ目の丸におきまして,こうしたものについては,放送の許諾を得る際に併せて同時配信等の許諾の交渉を行うことも可能であることから,現行制度が特に同時配信等を困難にしているという事情は認められない旨を記載しております。

ただ,2つ目の丸にありますように,こういったものについて,放送はできるけれども,同時配信等ができないという事態も現実に生じております。具体的には,(ア)のように,当事者間での交渉の結果,放送でのみ利用可能という条件で契約を行うこととなった場合,これについては著作権制度の考え方からしても,権利者の理解を得られず,制度改正による対応というのは難しいだろうとしております。

一方で,(イ)に記載の,契約の際に同時配信等の可否を明示的に確認できておらず,権利者の意向が明らかでない場合につきましては,制度改正をする必要があるだろうということでございます。具体的には,一番下の白丸の4行目辺りから記載のとおり,放送及び同時配信等に係る許諾権原を有する者が放送番組での利用を求める契約を放送事業者やその委託を受けて放送番組を制作する者と締結するに当たり,別段の意思表示をしていない場合には,放送だけでなく同時配信等の許諾も行ったと推定する旨の規定を設けることが考えられるとしております。

次に8ページにまいりまして,許諾推定を及ぼす範囲につきましては,同時・追っかけ・見逃し配信全てを含めることが考えられますけれども,追っかけ・見逃しまで推定を及ぼせるかどうかについては,法制的な観点からの精査も行う必要があるとしております。

また,次の丸では,許諾推定規定によって,権利者団体から不利な条件での契約を強いられるという懸念も示されておりますので,その払拭の対応についても検討を行う必要があるとしております。この点に関しては,※を3つ付けておりまして,1つ目の※では,権利の一部または全部を著作権等管理事業者が管理している場合については,基本的に推定が及ばないだろうということを記載しております。また2つ目の※では,当然ですけれども,推定規定については反対の事実を証明することで覆すことができることを記載しております。また,3つ目の※では,法改正で推定規定を設けた場合でも,それ以前に締結された契約についてまで直接の推定効果を及ぼすことはできない旨を記載しております。ただ,過去に放送やオンデマンド配信の許諾を包括的に得ていた場合などに,その契約解釈としてリピート放送の同時配信等を許諾したと認める場合もあり得ることから,その旨も併せて付記しております。

いずれにしましても,推定規定につきましては,権利者の懸念を払拭しつつ,安定的な利用が可能になることが重要であるため,具体的な適用条件等について,明確かつ分かりやすいルール作りを行う必要があるとしております。

その観点で,マル2,許諾推定規定の制度設計・運用等という部分で,前々回のワーキングで御議論いただいた結果を整理して記載しております。具体的には,ここに(ア),(イ),(ウ)と書いてありますけれども,3つの観点から推定に係る条件,推定が覆り得る事情(考慮要素)について議論いただきましたので,9ページのローマ数字1,2というところでそれを整理しております。これを基本にしながら,より具体的な内容につきましては,法施行までの間に総務省・文化庁の関与の下,関係者間で議論し,ガイドラインを策定することが適当としております。そのガイドラインにおきましては,許諾推定を覆すことができる標準的期間の取扱いや,許諾推定規定が直接適用されない場面における契約解釈も含めて,必ずしも法律上の要件に限らず幅広い事項について議論がなされ,合理的なルール作りが行われることが望ましいとしております。

許諾推定に係る条件については,ローマ数字の1に記載しております。まず,放送事業者側に求められる条件としては,同時配信等を業として実施していること,それを権利者が把握できるよう一定の方法で公表していること,契約に当たって「放送」のみを行う(「同時配信」等を行わない)旨を明示していないことの3つを記載しております。3点目に関しては,単に放送すると伝えただけで,これに該当することにはならない旨も付記しております。

それから,権利者側の別段の意思表示の在り方,こちらも3つ記載しております。1つ目は,別段の意思表示は契約時に行うこと。2つ目は,メールなどを含めた書面での契約の場合には,別段の意思表示も書面で行うこと。3つ目は,別段の意思表示には,同時配信等を拒否する旨の意思表示のほか,同時配信等を行うに当たっての条件等を伝える意思表示が含まれることでございます。

また,※に記載のとおり,推定規定の適用の可否に直接影響するものではありませんけれども,仮に権利者側が同時配信等を許諾する権原を自分が有していないという場合には,契約時にその旨を放送事業者に伝えていただく必要がある旨も記載しております。

次に,ローマ数字の2が,推定が覆り得る事情(考慮要素)の例でございます。ここでは前々回のワーキングチームでの議論に基づいて,2つの考慮要素を記載しております。1つ目は,その権利者が同じ放送事業者との間の過去の契約交渉において,同時配信等を明確に拒否する旨の意思表示をしていたことでございます。これに関して矢印のところで典型的な例を記載しております。具体的には,権利者が番組のジャンルなどに関わらず長期間にわたって繰り返し同時配信等を拒否する旨の意思表示をしていた場合,あるいはごく近接した過去において同様のジャンルで同一著作物の同時配信を拒否する旨の意思表示をしていた場合,こういった場合にはこれに該当するだろうということを記載しております。

2つ目の考慮要素は,権利者に支払われた対価が,明らかに「放送」のみを行う場合の水準であったことでございます。これも矢印のところで例を記載しておりまして,放送のみを行う場合の対価の水準と,放送と同時配信等を併せて行う場合の対価の水準の相場が異なるという場合に,前者の水準しか支払われていない場合などには,これに該当するであろうと記載をしております。

なお,※1に記載のとおり,これらはあくまで考慮要素でございまして,これに該当することのみをもって必ず推定が覆るわけではありませんので,その旨記載をしております。

それから,10ページの※2でございますけれども,こうした推定が覆り得るという特殊事情がある場合には,放送事業者が権利者に対して明示的に同時配信等を行う旨を伝えるなどした上で,契約を締結することが望ましい旨,記載をしております。逆に言うと,そうすることによって容易にリスクを解消することもできるということだと理解をしております。

次に,3つ目の措置が,レコード・レコード実演の利用円滑化でございます。

基本的な考え方に記載のとおり,放送と同時配信等の制度上の差異に起因する課題を解決するために,円滑に許諾を得られないレコード・レコード実演について,補償金支払いを前提にした権利制限規定を創設することにしております。なお,このレコード・レコード実演の定義につきましては,括弧書きで補足をしておりまして,商業用レコードや配信音源に係るものに限るというのが放送事業者・権利者を含めた当事者の認識ということでございましたので,その旨を確認的に記載しております。

次の白丸では,対象とするサービスの範囲につきまして,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることが適当としております。

次の丸では,制度改正の対象とするレコード・レコード実演の範囲について,前回のワーキングチームでの議論をまとめております。かぎで記載のとおり,著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ音楽分野の権利情報プラットフォーム上で適正な使用料で確実に許諾する旨の権利者の意思表示がされていないものを対象にすることを基本としております。ただし,前回も御議論があったように,マル3の日本の管理事業者が管理していない外国原盤につきましては,我が国の権利情報プラットフォームで意思表示をさせるのは現実的ではないところ,権利処理窓口が明らかとなっている場合にまで一律に権利制限するのは適当でないことから,慎重に取扱いを精査の上,適切に対象範囲を確定する必要があるとさせていただいております。

なお,一番下の丸に,この制度改正の対象とする者の呼称,呼び方について記載をしております。先ほど御説明したとおり,今回の制度改正の対象者は,いわゆる「ノンメンバー」からさらに一定の者を除いた者を指しますので,新しい用語を作る必要があろうかと思います。この点,放送事業者側から見た場合に,許諾を取るためのアクセスが困難という点に着目して,便宜上「アクセス困難者」と呼称してはどうかと考えております。これについては,よりよい呼称がありましたら,ぜひ御提案をいただきたいと思っております。

次に11ページにまいりまして,マル2が補償金のスキームでございます。こちらは前回のワーキングチームにおきまして,(ア),(イ)という2つの観点で議論を行っていただいた結果をまとめております。より詳細な運用などにつきましては,これも総務省・文化庁関与の下,さらに関係者間で議論をした上で,合理的なスキームを構築していくことが適当としております。ワーキングチームの結果をまとめた基本的な考え方は,下に4点記載をしております。

1点目は,「放送事業者による権利処理手続の簡素化」と「アクセス困難者による対価獲得の実効性確保」の両面から,一元的な窓口を設けることを可能とするのが望ましいと考えられること。ただし,実際に一元的な窓口となる団体を指定するか否かについては,アクセス困難者の規模,手続コストの負担などを踏まえつつ,合理的な運用の可能性を見極めた上で判断する必要があるとしております。

それから,2つ目は,アクセス困難者が自らのレコード・レコード実演の同時配信等での利用状況に基づき適切な対価を確実に受け取れるようにするための措置を講ずる必要があること。その具体的な内容については,放送事業者,著作権等管理事業者等に過度な負担が生じない合理的な方法を関係者間で検討する必要があるとしております。

それから,3つ目は,仮に著作権等管理事業者が補償金の指定管理団体を兼ねるという場合には,委託者に係る許諾使用料とアクセス困難者の補償金を区分して受領・管理する必要があり,その前提として放送事業者も両者を区分して支払う必要があることでございます。また,この補償金をこの団体が事前にまとめて受領するという場合には,どうしてもアクセス困難者に分配しきれない場合が出てきますので,そういう場合には一定期間経過後に放送事業者に返還したり,権利者全体に裨益する事業に支出するなど,公正な取扱いを行う必要があるとしております。

それから,4点目は,アクセス困難者への補償金の分配に係る手続コストについてでございます。前回の議論踏まえて,アクセス困難者への補償金から充当することを基本としつつ,その負担の在り方について関係者間で検討する必要があるとさせていただいております。

続いて4つ目の措置,リピート放送の同時配信等における映像実演の利用円滑化でございます。

まず基本的な考え方としましては,12ページに記載のとおり,過去に制作した放送番組のリピート放送につきましては,原則許諾不要になっていますけれども,そのリピート放送を同時配信等するという場面になると,許諾が必要になるという課題がございます。これを解決するために,2つ目の丸の2行目辺りから記載のとおり,リピート放送と同様,初回の契約に別段の定めがない限り,リピート放送の同時配信等に係る実演家の許諾は不要としつつ,通常の使用料相当額の報酬の支払いを求めることにしております。

その際,対象とするサービスの範囲につきましては,レコードと同様,同時・追っかけ・見逃し配信を全て対象に含めることが適当としております。

また,制度改正の対象とする映像実演の範囲,これは前回の議論どおりでありますけれども,著作権等管理事業者による集中管理(非一任型を含む)が行われておらず,かつ,権利処理窓口が明らかとなっていないものを対象にすることを基本としております。

また,これも前回の議論どおりですけれども,初回放送時に同時配信等がされていない場合や,法施行前に初回放送が行われている場合,こういった場合には,リピート放送がされる場合の同時配信等について,実演家の許諾意思を推認することが難しく,また初回放送時点での別段の定めというのも期待しづらいと考えられますので,別途同時配信等の前に特定のウェブサイトでの公示などを通じて実演者側の意思表示の機会を確保する必要があると考えられる旨記載をしております。

なお,制度改正の対象者の呼称については,先ほどのレコードの場合と同様でございます。

また,マル2,補償金スキームにつきましては,先ほどのレコードの部分の記載と全く同じでございますので,説明は割愛いたします。

最後に,13ページの(5)裁定制度の改善でございます。

まず,マル1の協議不調の場合の裁定につきましては,現在放送だけに限定されておりますけれども,同時・追っかけ・見逃し配信全てに適用できるように拡充していくことにしております。また,著作権隣接権にも準用することが適当としております。

それから,マル2の権利者不明の場合の裁定につきましては,放送事業者の要望に基づいて,3点措置を講ずることにしております。

1点目は,14ページのローマ数字1,補償金の事前供託免除の拡大でございます。民放事業者について,権利者が現れた場合における補償金支払いの確実性を担保するための要件を設定しつつ,事前供託免除の対象に加えることとしております。具体の要件の在り方につきましては,こちらに記載のとおり,放送政策の観点から見た放送事業者の財務状況の健全性等を基準とすることを視野に,文化庁・総務省で引き続き検討を進め,早急に具体的な対応を決定すべきとしております。

それから,ローマ数字の2が,「相当な努力」の要件緩和でございます。CRICのウェブサイトへの広告掲載につきまして,広告掲載直後からの申請を可能とすることで,利用開始までの期間を1週間程度短縮できるようにしようというものでございます。

ローマ数字の3,申請手続の電子化につきましては,可能なところから速やかに進めることとしております。

最後のマル3が,裁定に係る事務処理の迅速化でございます。今回の制度改正を機に,裁定制度の利用ニーズがより一層高まることも見込まれますので,文化庁において事務処理に係る体制の充実に努めるとともに,申請から利用開始までの標準的な処理期間を定めて公表するなど,事務処理の迅速化に向けた対応を進めるべきとしております。

本文は以上でございます。15ページ以降では,付属資料といたしまして,ワーキングチームの委員名簿,これまでの審議経過,それからヒアリングに御協力いただいた団体の一覧などをおつけしております。

事務局からは以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。

それでは,今の事務局の説明を受けまして,報告書案の内容について議論を行いたいと思います。

ただいま事務局から説明がありました資料1の内容について,御意見,御質問等がございましたらば御発言お願いいたします。いかがでしょうか。

今村委員,どうぞ。

【今村委員】全体を通して念のため確認をさせていただきたい点があるんですけれども,外国の原盤だとか,そういった外国の権利者のことについていろいろ考慮されてきた部分はあると思うんですけれども,今回の放送のインターネット同時送信という問題は,我が国の放送事業者が行う同時配信というものに限定したそういった制度体制という理解でよろしいんでしょうか。それとも,そういう限定は特に法制度上はなされないという形で理解すればよろしいんでしょうか。念のため,今まで確認しなかったので,確認させていただければと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。お願いします。

【大野著作権課長補佐】今回は,主として日本の放送事業者が円滑に同時配信等を実施できるように制度改正をしようというきっかけで議論が進んできたものと思います。ただ,日本の著作権法を改正する際には,わざわざ国内事業者に限るということは規定しないのが通例かと思いますので,改正法の要件に当てはまってくるのであれば,必ずしも国内の事業者が行う場合に限定されず,規定が適用される余地はあり得るのではないかと思っております。

【末吉座長】よろしゅうございますか。

【今村委員】ありがとうございました。

【末吉座長】ほかにいかがでございましょう。池村委員,どうぞ。

【池村委員】11ページの補償金スキームの辺りなんですけれども,指定団体を指定するか,どの団体を指定するか等については,この報告書の段階では確たる方向性は書かずに,今後の関係者間での議論を踏まえて決定するというふうに理解しました。これはこれでやむを得ないと思うんですけれども,法改正したものの,肝腎の議論がまとまらずワークしない,同時配信も進まないということにはならないように,関係者間でしっかり御議論いただければと思いますし,その議論がうまくまとまるよう,適宜,文化庁,総務省もサポートしていただきたいなと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。ありがとうございます。

ほかにいかがでございましょう。大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】おまとめいただきまして,ありがとうございます。2つ大きなものがあるので,細かいあとの法的なものは2度目に申し上げますけれども,まずは今,池村委員も御発言があった11ページの補償金スキームというところが政策として非常に大きなものかと思いますので,ここでちょっと意見というか申し上げたいと思います。

今言われたとおりに,やはり補償金,この中では権利制限の中では補償金の比重がとみに高まっていますけれども,やはり補償金というのは現実に運用できなければしょうがないので,そのためには,私としてはやはり今あったように,一元化するかどうかが,これ,両論併記みたいになっていますけれども,実際は恐らくウィン・ウィンという観点からすると,アウトサイダーも含めて一元化されていないと,放送局のほうも困るし,アウトサイダーも結局,実際には補償金が来ないということで,恐らく現実性として一元化した窓口にならざるを得ないんじゃないかと思います。

それに関連して1点申し上げたいのは,要するに,これは前から気になっております,11ページの補償金スキームの一番最後のポチのところにも出ていますけれども,手続コストを誰が負担するかという,これ,法律の問題ではないんですけれども,先ほどの一元化すべきというのは法律の話なんですけれども,根元にあるのは経済の話で,誰がこの手続コストを負担するかという,この部分を考えずには法律を,きちんと政策を運営することができないので。

その観点からは,前々からも申し上げていたんですけれども,これはよく考えると,前半のほうにも関係しますけれども,大原則は放送局のほうがアウトサイダーと個別に契約すればそれで済むと言えば済む話なんですけれども,それは非常に手続コストがかかるので,それよりははるかに合理的なものが,権利制限を認めれば,要するに,個別の契約というのは物すごく手続コストがかかるけれども,それから見れば,補償金のほうがはるかに日本国全体にとって手続コストが下がるという意味では,この補償金スキームの受益者というのは,放送局であり,恐らくアウトサイダーでもあるんでしょうけれども。

その観点から言うと,申し上げたいのは,アウトサイダーにはメリットがあるけれども,インサイダーにとっては関係のない話なので,実際上,事務負担はレコ協さんにやっていただくしかないと思いますが,現実的にはまた新たな団体をつくったりするのも大変なので,現実にインサイダーを代表しているレコ協さんについでにアウトサイダーについてもやっていただくから,ここにあるように,その際にはインサイダーとアウトサイダーとを混ぜたら大変なことになりますので,きちんと分別管理して,そういう意味では,レコ協さんは,インサイダーの代表という従来の立場に加えて,アウトサイダーの分もついでにやりますということになるので,そういう意味では,この補償金スキームというのは,レコ協さんにとっては特段メリットがないと。場合によってはインサイダーの利益に反するかもしれないということで,他方で,放送局のほうは,補償金がなくて,個別の契約にしたら物すごい手続コストになりますから,この制度にとっての最大の受益者になるので。

その観点からいうと,やはり法律的には,前,別途の補償金のところでたしか龍村先生が受益者負担ということを言われましたけれども,それは法律の原則としてあるので,やはりコストは誰が負担するかというものの1つの原則は,利益を得る者が負担すべしという観点からすると,ここはそういう意味ではきれいに出来ていて,事務の負担はこういうきれいな仕分になるんじゃないかと思いますが,本来業務じゃないけれども事務の負担はレコ協さんに負担していただくけれども,コストの負担のほうは別にレコ協さんは受益者でもないので,むしろ放送局のほうが受益者なので,そこのところのコストの分配がうまくいっていないから,そこできれいに,コストはレコ協が負担しなくてもいいということになると,一元化とかそちらのほうも進むんじゃないかと思います。

他方,前,これは内山先生が言われたとおり,別に放送局が必ず負担……,放送行政が国家の政策の観点から負担するということもあり得るので,いずれにせよ,ここでレコ協に事務負担に加えてコスト負担まで課すというのはバランスを失しているので,そこのところは,事務負担はしょうがありませんけれども,コストのほうはむしろレコ協に負担させないように持っていくと,一元化のところもうまくいって,全体がウィン・ウィンに。細かい話はいたしませんけれども,全体の手続の負担のところをきちんと,法律に書く話じゃないんですけれども,決めない限りはこれはうまく進まないのではないかという気がいたします。

以上です,取りあえず。

【末吉座長】ありがとうございます。もう一問あるんですか。大丈夫ですか。

【大渕座長代理】もう一つありますけれども,補償金が一段落したら,お話しします。

【末吉座長】分かりました。それでは,ほかにどうでしょう。中村委員,どうぞ。

【中村委員】よく短期間で関係業界や関係省庁を調整して報告の案に持ち込んでくださったと思います。これに関わるほぼ全ての方々の合意を得た案になるんじゃないかと期待をしているところなんですが,1点気がかりなのは内閣法制局です。これまでも著作権制度の改正に当たって思わぬ壁となって政策が進まないということがありました。私にはその正当性が理解できないことも過去にはございました。本件についてそのような懸念はないのか,本案がここで報告書としてまとまれば,政府内において順調に成案となりそうなのかということについて,事務局から見方をお教えいただければと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。この点いかがでしょう。

【大野著作権課長補佐】政府内の調整の話でございますので,ここで具体的に申し上げることは差し控えたいと思いますけれども,ここで報告書が取りまとまりましたら,我々としても最大限その内容を反映すべく,内閣法制局ともよく調整をして,皆さんが納得できる制度をつくっていきたいと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。よろしくお願いします。

ほかにいかがでしょう。どうぞ。

【龍村委員】資料の10ページの一番上のところですが,推定が覆り得る事情の※2のところが記載されたということは望ましいことだと思います。1点若干補強するとすると,結局ここで処理され,クリアランスが取れていれば問題は生じないわけですから,とても重要な手続だと思います。ですので,行き違いが生じないように,むしろ同時配信を行う旨を伝えることを義務づけするという行き方もあるのかもしれない。事前の重要事項の説明が義務づけられているものが,不動産取引など様々な法分野で存在しますが,そういうものを使うというのも一法かと思った次第です。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】奥邨です。簡単に。非常に瑣末なことで申し訳ないんですけれども,「アクセス困難者」という単語が若干気にかかります。法律に出てくる言葉ではないので構わなと言えば構わないんですけれども,行政がお使いになる文脈の何とか困難者というのは,例えば帰宅困難者とか買物困難者というように,その人が困難という意味なんですね。帰るのが困難とか,買物が困難。なので,アクセス困難者について,さっき御説明があったように,放送局がアクセスするのが困難な権利者という使い方ってあんまりないと思うんです。どちらかというと,権利者側がアクセスが困難みたいに見える可能性もあって,ちょっと言葉としては違和感があるなと思いました。

方法としては2つあって,何らかの別の言葉を考えるというのが1つと,あとは,報告書の中だけの言葉ということであれば,下のところで,便宜上,アクセス困難者と書いてありますところ,さっき課長補佐がおっしゃったように,放送局がアクセスするのが困難な者をもって,というような説明をつけておかないと分かりづらいかな。

別の言葉としては,あんまりきれいな言葉じゃないんですけれども,こういう場合,普通,要何とか者というんですね。要介護者とか要支援者という言い方は行政さんよくお使いになるので,それに近いのであれば,要探索権利者,探索が必要な権利者というのは,ほかの使い方ということでは似ているのかなと。

ただ,大げさな言葉をわざわざつくる必要もないので,このまま使うのだとすれば,放送局がアクセスするのが困難な者をもって,ここではというぐらいに入れておいたほうがいいのかなと思います。全体との中でやっぱりアクセス困難者という言葉がちょっと違和感があるなという気はいたしました。言葉遣いで,報告書の中だけのことなので,意見として受け取っていただければ結構です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。内山委員,どうぞ。

【内山委員】先ほど大渕先生のお話のところで,少しだけ気になったのは,確かに受益者負担という考え方,あるいは原因者負担という考え方は確かに経済学としてのベースですけれども,誰が受益者かなというふうに考えたときに,確かに放送局というのは否定はしませんが,恐らく最大の受益者は権利者だと。ここで言うところのアクセス困難者に該当する権利者が最大の受益者なので,前回たしか今村先生だったと思うんですけれども,まずは彼らが取るべき権利料から差っ引くと。それで赤字が出たらどうしますかという話を前回していたと思いますので,多分そのスキームで考えていたほうが,順番で考えていたほうがよろしいかなと思いました。

以上でございます。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【大渕座長代理】今の点よろしいですか。

【末吉座長】大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】私も,前回も申し上げましたけれども,アウトサイダーですか,アクセス困難者,アクセス困難者にそんなにやるんだったら,先ほど言われたみたいに,放送局がアクセス困難者とするだけでも随分意味が分かるかと思いますので。もうアクセス困難者だけでもいいし,何かやるんだったら,何か割とシンプルなものにとどめておいたほうがいいかなという気がします。

それから,今の点は,もちろんアウトサイダーから事務費を引くのは私も当然と思って,前回,そこで頂戴すればいいでしょうと申し上げたんですけれども,恐らく問題になっているのは,費用倒れになったりしてということなので,第一義的には,それだけ事務経費がかかっているんだったらアクセス困難者から取るというのはいいんですけれども,それで取り切れない場合を恐らく心配されているので,あまりに額が,配分額で全部取っても残らないぐらいのときなので,そういう意味では受益者はアクセス困難者と放送局ではあろうかと思います。レコ協ではないと思います。

ただ,強いて言えば,アクセス困難者は別に自分はそのまんま,法改正してくれなくても,今までの契約どおり単発でやってもらえばいいという意味では,そんなに受益者かなという気はしますけれども,ただ,実際に差っ引くというのは全く当然だと思っています。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。どうぞ。

【龍村委員】瑣末なことですけれども,アクセス困難者という用語が,困難である主体に着目すると用語としておかしいとすると,冒頭に「被」とつけるのも一法かと思います。被告人の「被」,被アクセス困難者という考え方もあるかと思いました。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。もうこの報告書の案につきましては,ほかに御意見,御質問等はございませんか。

【大渕座長代理】じゃ,ちょっと。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】先ほど申し上げた前半部分で,もう別に修正してほしいというのではなくて,今までのを取り入れていただいてありがとうございますというか,確認だけなんですけれども,これ,結構いろいろな大きな論点が,例えば4ページでいうと,有料をどうするのかというのも,本文と,それから,※のところでうまくまとめていただいていて,こういう方向で。今まではこれはゼロか100かみたいな話になっているのは,当面,法律上は限定しないけれども,政省令では決めるし,その方向性というのはここに※印に書いていただいているとおりかと思いますので,要は,ローマ数字の1と2のところが両方満たされるような状態になって初めて政省令に書くことができるという方向性がうまく示されていますので,これで非常に大きな論点としてあったのが最後きれいに整理できたかと思います。

それから,衛星放送も同様であって,うまく,今まではゼロ,100みたいな話だったんですけれども,実態に応じてきめ細かく政省令で決めるという線を出していただいているので,これもよろしいかと思います。

それからあと,細かい点なんですけれども,ここは別に文章を変えてくださいという意味は全くないんですけれども,7ページの下の,例の「委託を受けて放送番組を制作する者を含む」というのは,これはいわゆる手足論,私は何か手足論というよりは,本当は手足型共同行為論かと思っていますけれども,法律に書かなくても,今までも,頭のほうを書いていれば,それが手足を使うというのは当然含まれているというのは,恐らく例えば図書館なんかは,あれは一応,複製の主体は司書となっているけれども,その手足として利用者が行うという,そういう形になっています。この辺はあんまりもともと心配する必要もなく,きれいにまとめていただいていて,そういう意味では,今までの難問は……,ざっと今もう一回確認して見ています。

あと,あれもそうですね。44条のところも,最終的には,これはたしか許諾による固定も,ライセンスを取っているから,それを無視しないでほしいということを言われたかと思うんですが,それに対して私のほうから,具体的にどういう程度のライセンスなんですかというのを具体化を求めていてもあんまり出てこないところを見ると,最終的にはこれで済むような話かと思います。何かそれで,権利制限ができないような大きなマーケット的なものがあるんだったらと思ったんですけれども,そこのところも念のためお願いしていたら,特に出てこなかったので,最終的には,そうであればこれでいいので。そうなると,今までの……。

あと,1点だけ。さっきの点にも関わりますけれども,推定をやたらと細かく,これだと大き過ぎるからとかいろいろあるんですけれども,これ,前々から申し上げているとおり,そういうのが気になる人は,最初に戻りますけれども,推定はもうこれ以上,別に難しくも詳細にも簡単にもならずにこれは非常によく書いていただいているかと思いますので,これに気になるようであったら,原点に立ち返ってきちんと契約をしてくださいとしか言いようがないので。契約が何らかの理由でできない場合でも,安全弁としてこれがあるので,これはこれ以上にあんまり過大な期待をするのは難しいので,これが気になるような方は,もう原点に立ち返ってきちんと個別を。

その際には,明示義務まで必要かどうかは別として,恐らく今後は,放送しか言わないと放送だけと取られるから,当然,配信があるのに放送だけと取られるので,むしろこういう契約は,放送及び配信というようなのでワンセットで考えていったほうがいいぐらいの話に。ワンセットで考える時代に放送だけ言うと,むしろ放送だけに絞ったと取られるおそれすらありますので,むしろもう普通にやるんだったら,配信を全然しない場合は別ですけれども,放送及び配信ということでワンセットで考えていっていただいたほうがいろいろトラブルもなく,最初の契約も放送及び配信契約ということで進んでいくのかなというふうに思っています。

取りあえず以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。どうぞ。

【龍村委員】追っかけ配信,見逃し配信,同時配信の3パターンがいろいろな箇所で言及されていて,分かりづらいところがあるので,別途資料として,同時配信,追っかけ配信,見逃し配信を表にして,分かりやすく整理された資料があると非常に便利だと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。今村委員,どうぞ。

【今村委員】11ページの補償金スキームに係る基本的な考え方で,アクセス困難者,先ほど,要探索権利者とか被アクセス困難者というような言い方も出てまいりましたけれども,分配し切れない補償金が出た場合の扱いについてなんですけれども,権利者全体に裨益する事業に支出するというのはいいかと思うんですが,放送事業者に返還するという方法を取りますと,補償金の支払いが結果的に不要となるレコード実演とかレコードを使用する行動を選択するように変に促す可能性もなきにしもあらずですし,本来払うべきものを後で返すというのは何か変な利得を与える可能性もあるので,どちらかといったら,私は,放送事業者に返還するという取扱いはややいびつなのではないかなと感じました。意見です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

せっかくですので,前田委員,いかがでございましょう。

【前田委員】私からは特に意見はございません。報告書をきれいにまとめていただいて,事務局が大変御努力していただいたと思います。本当にありがとうございました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかに御意見等ございますか。

【大渕座長代理】ちょっとよろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】あんまり手が映らないんですけれども,大渕です。よろしいでしょうか。今,今村先生のをお聴きして,11ページのところですけれども,これ,よく分からないんですけれども,アクセス困難者に分配し切れないというのは,要するに,アクセス困難者が最後まで見つからないから分配できないということなんですけれども,確かにこれ,分配できないから放送局がもらうというのも変な話ではあるので,さっきのじゃないですけれども,もともと手続コストもかかっているわけだから,あるとすれば,そのまんま手続コストに入れちゃうか,レコ協というか団体のところで今まで費用もかかっているから,もろもろの費用に充てるか,あるいは共通目的事業なので。言われてみると,やっぱり返すというのは,先ほど言われたような,大きく言うといびつな構造とかになりますけれども,そこまで言わなくても,本来分かればきちんとアウトサイダーに行くべきものが,分からないからといって放送局に戻ってくるのもちょっと変な話だなと思いました。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。このような報告書をまとめるということでよろしゅうございますか。ありがとうございます。大体皆様方の御意見を伺うことができましたので,本日はこのぐらいにしたいと思います。

本日の議論を受けまして,報告書を作成することといたしたいと思います。いろいろな御意見をいただいておりますので,この御意見を踏まえた具体的な追記・修正につきましては,私のほうに御一任をいただければと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉座長】ありがとうございます。それでは,そのように取り扱わせていただきます。

最後に,出倉審議官から一言御挨拶をお願いいたします。

【出倉文化庁審議官】審議官の出倉でございます。今期の本ワーキングチームを終えるに当たりまして,一言御挨拶を申し上げたいと思います。

委員の皆様方におかれましては,御多用の中御協力いただき,誠にありがとうございました。本ワーキングチームでは,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に向け,幅広い関係者からのヒアリングを行った上で,集中的かつ丁寧に御議論いただきました。その結果,この多岐にわたる課題につきまして,総合的な解決を図るための制度改正の方向性をきめ細かくお示しもいただいており,これによって放送番組の同時配信等が抜本的に円滑化がなされ,視聴者,放送事業者,クリエイターの全てにとって利益となる,こういうことが期待できるものと私たちも受け止めております。

今後,基本政策小委員会及び著作権分科会での議論を経まして最終的な報告書が取りまとまりましたら,その内容に沿って早急に法整備等の対応を進めていきたいと考えております。また,細部を含め残された課題もございますので,引き続き,総務省と共に関係者間の協議,これを着実に進めてまいりたいと考えてございます。

最後に,委員の皆様方に,御多用にもかかわらず多大なる御尽力をいただきましたことにつき改めて感謝を申し上げまして,私からの挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【末吉座長】ありがとうございました。

本日の議論の内容を基に報告書を取りまとめ,後日,基本政策小委員会で私から御報告をさせていただく予定であります。

最後に,事務局から連絡事項がございましたらば,お願いします。

【大野著作権課長補佐】本ワーキングチームでは,計7回にわたり集中的な御議論をいただきまして,大変ありがとうございました。今,座長からもございましたとおり,報告書につきましては,後日,基本政策小委員会に報告をし,その後,パブリックコメントなども行った上で最終的な取りまとめに向けて議論を進めていきたいと思っております。引き続き,皆様方におかれましては御指導をいただければと思います。よろしくお願いします。

【末吉座長】それでは,本日はこれで,第7回ワーキングチームを終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動