文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会
平成28年度「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」(第6回)

日時:平成29年2月13日(月)
17:00~19:00

場所:旧文部庁舎6階第二講堂

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等に関する報告書(案)(1.4MB)
資料2
著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等について(検討結果報告)(923KB)
資料2別添1
著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する調査研究報告書(2.4MB)
資料2別添2
著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する調査研究(資料編)(817KB)

議事内容

【土肥座長】それでは,定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」第6回を開催いたします。

本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とはするに及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥座長】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴をいただくことといたします。

それでは,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に議事次第を御用意ください。配布資料一覧としているところに,資料1としまして,本ワーキングチームの報告書(案),資料2としまして,作業部会の検討結果報告,それから,資料2別添1,2としまして,調査研究に関わる資料を御用意しています。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥座長】ありがとうございました。

それでは,議事に入りますけれども,初めに,本日の議題です。議題は(1),新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等に関する報告書案について,(2),その他となっております。

新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等につきましては,本ワーキングチームにおいて議論を進めていただいておりましたけれども,これまでの検討を通じまして,議論は一定程度熟したと,こういうことでございますので,前回のワーキングチームにおきまして,事務局に報告書案の作成をお願いしていたところでございます。

これを受けまして,事務局において,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等に関する報告書案を作成いただきましたので,本日は,これにつき,事務局にまず説明をしていただき,その上で,内容について議論を行っていただきたいと思っております。

なお,権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する作業部会における検討につきましては,12月の本ワーキングチームにおいて検討経過を御報告いたしましたけれども,その後,更に議論が進み,このたび,検討結果報告が取りまとめられております。

報告書案は,この作業部会の検討結果報告も盛り込んだ形となっておりますので,この点についても後ほど議論を頂きたいと思っております。

なお,報告書案は大部に及びますので,先に権利制限規定の在り方に関する部分について議論を頂き,その後,ライセンシング体制等の在り方に関する部分について,議論を頂ければと思っております。

それでは,事務局より,報告書案について説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】資料1を御用意ください。

1ページめくっていただきまして,目次でございます。ローマ数字1から順に,「問題の所在」,「検討手法と検討経過」,「検討結果(権利制限規定の整備について)」,それから,4,「検討結果(ライセンシング体制の充実について)」,5,その他のニーズについてという順になってございます。以下,順次御説明申し上げます。まず,ただ,大部ですので,はしょりながらということにさせていただきます。

まず,1ページ,「問題の所在」につきまして,1.「検討の経緯」につきましては,平成21年頃からの法改正の経緯などをここで記しております。省略いたします。

3ページ,2.「『柔軟性のある権利制限規定』の検討にあたっての基本的な考え方」,こちらは本課題の検討を開始するに当たりまして,平成27年の小委員会での議論ですとか,それから,今年度の最初の著作権分科会や小委員会の議論につきまして,御意見を御紹介しております。

4ページの方ですけれども,こういうような意見を踏まえまして,下の1から4の視点ということで,1としまして,多様な選択肢の中から最も適切な柔軟性を備えた規定を考えていくということ,2,政策目的と政策課題をしっかり掘り下げて議論するということ,3,ニーズを把握すること,4,制度を整備することの効果や影響を踏まえるということという視点を抽出して議論をしたというふうに整理しております。

5ページをお願いいたします。「検討手法と検討経過」でございます。こちらは第1回のワーキングチームでお決めいただいたものをそのまま転載しております。

8ページをお願いいたします。2.「効果と影響等に関する考察について」でございます。こちらは作業部会の方でも検討結果報告で記載させていただいております効果と影響等に関する考察を行うこととした趣旨やその観点について,エッセンスを記載いたしております。

9ページをお願いいたします。3,「検討結果(権利制限規定の整備について)」でございます。1.「ニーズ募集に基づくニーズの整理」としまして,ここにあります二重丸のところのニーズが今回優先的な検討ニーズということになりましたということを表記しております。

10ページ目をお願いいたします。2.「優先的に検討することとしたニーズに関する検討」ということで,(1)では,ニーズ募集の内容,それから,ニーズ提出者からのヒアリングの結果などを基に,優先的に検討することとしたニーズの内容をまとめております。こちらも中身は割愛させていただきます。

それから,14ページの下の方,(2)としまして,「各ニーズに関する権利者団体からのヒアリングの結果について」もこちらで主な御意見を紹介させていただきました。こちらも省略させていただきます。

18ページをお願いいたします。3.「著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等」でございます。こちらも大半は12月の作業部会の検討経過の中で記載されておりましたことをそのまま盛り込ませていただいておりますので,今回,検討結果報告において,アップデートのあった部分を若干補足しながら御説明したいと思います。

まず,(1)のところで,「検討手法」のところに,利用者団体を追加しております。学校,図書館,公益法人,社会福祉法人といった主に非営利の法人中心に,2,500団体程度にアンケート調査をかけたということでございます。

その結果を若干御紹介しようと思いますが,資料2の後ろの方にあるんですけれども,資料2の16ページをまず御覧いただけますでしょうか。

以前,企業のものは御紹介したとおりですけれども,「訴訟リスクを伴う業務実施に対する抵抗感」について,利用者団体,非営利の団体にお伺いしたところ,「非常にある」,「ややある」という抵抗感があるとお答えになった数はおおむね6割と,企業と似通った数字になっておりますが,「非常にある」とされた割合が相当程度高くなっております。

それから,下の方で,「新事業展開におけるコンプライアンス意識」というところにつきましては,「ある」というのが9割になっておりますので,1割程度,企業より高い上に,「完全に合法である確信がある場合にのみ実施する」と回答になった団体が7割ということで,大幅に企業より高いという数字が出ております。

それから,一つ戻っていただきまして,14ページの方で,「権利制限の規定ぶりに応じた事業展開のしやすさ」というところにつきましても,企業と利用者団体,横で比較いただけるようになっておりますが,主に個別的な規定,具体性の強い規定の方を先行されるという傾向が企業よりも更に高いということが言えようかと思います。こうしたことも,先ほど,またすみません,報告書の方に戻っていただきたいと思いますけれども,追記をしております。すみません,19ページですか。

この利用者団体向けの調査結果も含めまして,結論としましては,12月におまとめいただいたものと変わりはないわけでありまして,19ページの真ん中のパラグラフにありますように,割合が小さいものの訴訟リスクを取ることに積極的な企業等については,「柔軟性のある権利制限規定」を導入することについて,「公正な利用」の促進効果が一定程度期待できると。一方で,大半の企業や団体については,高い法令遵守意識や訴訟を回避する姿勢から,柔軟性の度合いが非常に高いものに対してはそれほど大きな効果を認めていないという評価になっております。

それから,少し飛ばしまして,21ページですけれども,不公正利用の助長という効果がどの程度あるかということに関して,三つ目のパラグラフにおきまして,アンケート結果の内容を少し分析していただいた結果,著作権法への理解度が高い者ほど訴訟リスクを恐れ,理解度が低い者ほど恐れないという相関関係が見られたという結果が明らかになっております。また,二つ下のパラグラフの方では,訴訟を前提とした権利行使の難しさということにつきまして,幾つか情報が追記されております。

あとは,作業部会との関係では,23ページでございますけれども,真ん中の辺りに,「刑法体系との関係」について少し記載が追加されております。ここでは,明確性原則との関係で,著作権法の権利制限規定をどのように評価すべきかということについて,憲法学者の先生,それから,刑法の学者の先生を中心に,ここでおまとめいただいております。

ここでは,試み,三つの規定形式の明確性について検討したとされておりまして,小さなローマ数字1の方では,「公正か否か」という抽象的な基準によって判断する,いわゆるフェアユース規定のようなものはどうかという検討がされております。

ここではこういう「公正か否か」といった判断をする規定については,「問題となる利用が生み出す社会的な利益の内容・程度と権利者に及び得る不利益等の比較衡量が求められるというところですが,こうしたことについて,「統一的な基準は見出しがたく,当該比較衡量の結果を通常の判断能力を有する一般人が予測すること」,こういった最高裁の判例の基準に照らして困難であるというふうに言われております。

それから,24ページ,2番目としまして,こちらは「『著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用』とは評価されない利用」というような規定形式の場合はどうかということでございますが,こちらにつきましては,「享受」の辞書的な意味ですとか,それから,既存の規定がこれに関連して様々例示として存在するということから,一般人の理解においても判断基準を読み取ることは十分可能であるとされております。

それから,3としまして,「電子計算機による情報処理により新たな知見や情報を生み出すサービスを行う場合において,当該情報処理の結果の提供に付随して,必要かつ軽微な形で著作物を提供又は提示する行為」に関する規定形式とされております。こちらにつきましても,適用場面が限定されているということですとか,サービスの提供に必要な限度であること,それから,質,量の観点から社会通念上わずかであるということが求められているという理解ができるということから,一般人の理解において,判断基準を読み取ることができるとされております。

作業部会の検討結果でアップデートがあったものについては以上でございます。

続きまして,26ページをお願いいたします。4.としまして,「制度整備の基本的な考え方」でございます。こちらは12月以降議論いただいてきたものと特に変更はございませんで,「明確性と柔軟性のバランスを備えた複数の規定の組合せによる『多層的』な対応を行う」べきという方向性を改めて確認させていただいております。御説明は割愛させていただきます。

28ページをお願いいたします。5.「具体的な制度設計の在り方」でございます。ここでは,まず,第1層から第3層まで順次御説明することにしておりまして,(1)は第1層に関わるものでございます。

前回のワーキングチームで御紹介した骨子案に比べまして,このア.というところで,それぞれの層の考え方を若干補足説明させていただいております。簡単に御紹介いたします。

第1層につきましてですが,著作権法の目的から著作者の経済的利益の保護を図るということを述べた上で,著作物の経済的価値といいますものが著作物を視聴する者により評価されることによって現実化するものであるというふうに述べまして,さらに,著作権法は,「著作物に表現された思想・感情が最終的に視聴者に享受されることを前提とした上で,その表現の享受に先立って著作物の流通過程において行われる」行為を「コントロールできる権利として著作権を定めることで,権利者の対価回収の機会を確保しようとしているものと考えられる」としております。

このような考え方に基づきまして,この第1層に該当する行為類型として,1,2,3のものがこれに妥当するというふうな流れにしております。これらの1から3のような行為につきましては,一番最後のパラグラフですけれども,「通常権利者の対価回収の機会を損なわない」行為であるというふうに整理をしております。

29ページの方ですけれども,イ.「優先的に検討すべきとされたニーズについて」でございます。こちらは骨子案の方で御紹介した内容と相当程度重複するわけでございますが,一番下のパラグラフの方に,現行規定との関係について若干御説明を触れさせていただきました。「現行規定に定める利用行為に類するものであるものの現行規定の対象範囲から外れるおそれのある行為」が生じているという指摘が,ニーズ募集の中でも,あるいは,ヒアリングの中でも出されたわけでございます。

具体的には,30ページをお願いいたします。脚注59におきまして,第47の7における「統計的」要件でありますとか,あるいは,第47条の5第1項の要件が厳し過ぎるということで,様々なものに対応できないという御指摘がある旨を追記させていただいております。

これは現行規定……,また本文に戻りますが,「現行規定の要件の一部に立法時に把握されたニーズの内容や技術仕様を前提として設定されたもの」であるために,「権利制限の対象から外れてしまうという事態が生じた」のではないかとしておりまして,少し飛ばしまして,第1層に係る制度整備に当たりましては,現行規定についても確認を行った上で,技術的中立性にも配慮しながら必要な手当てを行うべきであるとしております。

以上のことから,「第1層に当たる行為類型が可能な限り幅広く権利制限の対象となるよう,抽象的に類型化を行った上で柔軟性の高い権利制限規定を整備することが適当」としております。

また,具体的な制度設計に当たりましては,「第1層に当たる行為類型を包括的に権利制限の対象とする方法や,行為類型の特徴を踏まえた複数の規定を整備する方法が考えられる」ところです。「その際,現行の権利制限規定の立法趣旨や規定の在り方を活かす」こともあり得ますが,いずれにしましても,「規定の予測可能性と柔軟性のバランスに留意」して,制度設計を検討することが適当であるとしてございます。

それから,最後に,権利制限規定の許容する目的を超えて視聴等の用に供されることになった場合の権利者の不利益に対処するために,目的外使用を禁止するべき旨を付記させてだきました。

次に,31ページをお願いいたします。第2層でございます。「第2層の考え方」でございますが,こちらも若干,本来的利用とは何かといったことを補足説明させていただいております。第2層の「著作物の本来的利用には該当せず」という場合における本来的利用とは,「著作物の本来的市場と競合する利用行為を指し」,本来的市場とは,その著作物の本来的用途に沿って作品として享受させることを目的として公衆に提供又は提示することに係る市場を言うものとするとしております。

著作権法が著作権の付与によりまして保護しようとする中核的利益であると考えられることから,第3層に含まれるもののように,本来的市場に影響を及ぼすような行為につきましては,これを権利制限の対象とする場合には,相当程度高度な公共的な利益の存在が求められるわけでございます。換言しますれば,本来的市場に影響を与えないような利用行為については,要求される社会的利益の要求水準は相対的には低いということでございます。

もっとも,一定の不利益が及び得るということは否定できないわけでございまして,これを軽微なものにとどめることが求められるとしております。

少し飛ばしまして,イ.「所在検索サービス及び情報分析サービスについて」でございます。まず,(ア)「権利制限の正当化根拠」について,ここで整理をいたしました。所在検索サービスは,大量の情報があふれる情報化社会において,知へのアクセスを提供するものでありますし,また,情報分析サービスは,大量の情報から所定の目的に対応し分析結果を提供すると。いずれも高度な情報処理によりまして,社会に新たな知見や情報をもたらし,付加価値を創出するものであるというふうに理解ができます。

政府としても,こうしたIoT,ビッグデータ,人工知能を活用したイノベーションを促進するということを我が国の生産性向上の鍵の一つと位置付けておりますことから,これらのサービスには社会的意義が認められるとしてございます。

次のページをお願いいたします。また,こうしたサービスの過程で表示されるサムネイル,スニペットなどにつきましては,サービスの目的達成のために必要なものであるということ。さらに,著作物がこうしたサービスを介した公衆に知らしめられることとなりますれば,著作物が正規の形で利用される機会が高まるという正の効果も権利者に生じるというふうに考えられますので,その限りにおきましては,こうした利用がされることは,権利者においても容認する意思を有していると推認できるのではないかとしております。また,さらに,契約による対応可能性ということも現実的には困難であるとしております。

こうした正当化する事情が認められることに加えまして,次のパラグラフの6行目ぐらいからですけれども,著作物の表示につきましては,サービスの目的達成のために必要な限度で付随的に行われるというものでありまして,サムネイル,スニペットといった部分的利用等にとどまるとしております。こうした利用行為につきましては,本来的市場に影響を与えることにはならないと評価できますし,すなわち,こうした利用が非本来的市場に係るものでありまして,程度が軽微なものというふうにとどまるんであれば,権利者に及び得る不利益を小さなものにとどめることができるとしております。

以上のことを総合的に勘案しまして,権利制限の対象とするということが正当化されるとしております。

また,このような著作物の利用行為は第2層に該当するということで,社会的意義等の種類や性質に応じて,ある程度大くくりに範囲を確定するというふうにしております。具体的な範囲の確定の方法でございますけれども,サービスの外縁やその社会的意義の内容が明らかになっている所在検索サービス・情報分析サービスというまとまりに着目することが考えられるところでございます。

なお,こうしたサービスは電子計算機による情報処理によって社会に新たな知見や情報を創出するサービスであるという点で共通するわけでございまして,こうしたサービスはほかにも存在するわけでございます。こうしたその他のサービスにつきましても,適切な予測可能性を確保しつつ,また,権利者に及び得る影響に関し,同様の配慮を行うとういことを前提としまして,権利制限の対象となり得るような制度設計を採用するということも検討に値するとしてございます。

以下,留意すべき各論点について整理をいたしました。(イ)「権利者に及び得る不利益への配慮等について」でございます。1,「権利者の本来的市場への影響」でございます。

こちらも骨子の方で御議論いただいたところでございますが,形式的には,所在検索や情報分析の結果とともに著作物が表示等されるものでありましても,実質的には著作物そのものを享受させるということを目的とした,いわばコンテンツ提供サービスと評価すべきものも存在し得るわけでございます。こうしたものは本来的市場への影響を与えないという要請に反するものになりますので,権利制限の対象とならないようにすることが求められるわけでございます。

次のページの2パラ目でございますが,所在情報の検索結果や分析結果の内容をサービス利用者が自己の関心に沿うものであるか否かを確認したり,結果の信憑性・信頼性を証明したりする上で必要な場合に,その目的上必要な限度で,結果提供に付随して行われることが求められるというふうにしております。また,その上で,実際の結果としましても,そうした著作物の表示等が権利者の本来的市場と競合しないものに限って,権利制限の対象とされるべきであるとしております。

そして,両サービスが本来的市場に影響を与えるか否かの判断でございますが,これはいずれにしましても総合的な判断であるわけでございますが,例えば,その際,著作物の表示等が一般的には利用者が要している当該著作物の視聴に係る欲求を充足することとなるようなものであるか否かは一つの基準となるのではないかとしております。

また,この観点から,例えば任意の著作物の任意の部分が表示等されることとなるようにサービスの利用者が意図的にコントロールできるような機能等を提供しているサービスにつきましては,利用者がそのようなコントロールできないサービスに比べて,実質的にはコンテンツ提供サービスという評価がされやすくなるものとしております。

2番,「表示される著作物の質的・量的な程度について」でございます。こちらは前回の議論でも御確認いただきましたとおり,権利者に及び得る不利益が軽微であるということが求められるということから,表示等についても質的・量的に見て軽微なものであることが求められるべきとして確認させていただいております。

次のページをお願いいたします。3番,「著作物の種類ごとの特性や個別事情等に応じ権利者に及び得る不利益への配慮について」でございます。こちらにつきましても,個別事情に応じた不利益の度合いというのは異なるということを前提に,例としましては,映画等の「核心部分」の表示ということが出てきたわけでございますが,いずれにしましても,一律の具体的な基準を設けるのではなく,「権利者の利益を不等に害することとなる場合」には権利制限規定を適用しないとするただし書きを置くなど,事案ごとに権利者に及び得る不利益の度合いに応じて対応がなされるような制度設計を行うべきとしております。

また,このほかの例としまして,権利者がビジネス戦略上,露出をコントロールすることで利益の最大化を図るというようなビジネスが行われている場合について議論があったわけでございます。こちらにつきましては,著作権法の保護を及ぼすべきか否かというところで両論あったわけでございまして,こうしたことにつきましても,ただし書きによる対象などによるということが検討の対象となるという旨を記載しております。

4番,「権利者の利用を拒絶する意思に対する配慮について」でございます。こちらはインターネット検索エンジンに関する規定の状況も踏まえまして,「利用を拒絶する意思を有することが明らかな権利者に対し,一定の配慮を行うべきか否かが問題となる」という論点設定であったわけでございます。この点につきましては,権利者の利用を拒絶する意思に配慮することの意義を認める御意見もあったわけですが,一方で,その手段として,一律にオプトアウトを認めることとすることについては消極的な意見がございました。

少し飛ばしまして,次のページの真ん中辺りですけれども,これらの意見を踏まえまして,1,47条の6との比較からも,権利者の意思を一定程度尊重することが望ましい一方,所在検索サービスや情報分析サービスの社会的意義から権利者の権利を一定程度制限ことも正当化されると考えられること,2,「著作物の種類やその提供又は提示の態様等によって権利者の利用を容認する意思がどの程度推認されるかは異なり得ること」,この脚注の方では,現在,利用が既に廃絶されているかどうかといったことですとか,有料で公開されているかどうかといった観点がこうした判断の基準となり得る旨を追記しております。

それから,3としまして,「仮に理念として一定の場合にオプトアウトが正当化される場合であっても,サービスの態様な技術的・経済的な要素を考慮して適切な範囲にすることが求められる」というふうなことが言えるとしております。制度設計におきましては,これらの点に留意するべきこととしております。

最後に,「市場が形成されている場合について」でございます。こちらにつきましても,各サービスにおきまして,著作物の表示等について,ライセンス市場が形成されている場合に,これを優先させるべきかどうかという議論があるわけでございますが,次のページでございますけれども,こうしたことを明文上一律にライセンス市場が優先されるような仕組みを設けることは適当でないということで,個別の事情に応じて権利者の保護すべき利益への配慮が図られるような制度設計を行うことが望ましいとしております。

以上が,著作権法の制度整備に当たっての論点でございますが,それ以外の論点としまして,「著作権法で保護される権利以外の権利について」という内容をここで触れさせていただきました。本ワーキングチームの方のヒアリングにおきまして,放送関係者等から,「将来の取材活動が制約されることとならないよう,人権やプライバシー上の配慮からニュース番組等の二次的利用の管理を慎重に行う必要がある」という御意見が示されたところでございまして,この点につきましては,ワーキングでも御議論がございましたとおり,権利制限規定の整備によりまして,肖像権やプライバシーなど,著作権法上保護を受ける権利以外の権利の侵害が認められることとなるというふうに解してはならないとしております。権利制限規の適用を受けて,サービスを提供する者にあっては,当該規定の整備前と同様に,これらの権利を適切に保護することが求められるとしております。

次に,(3),第3層についてでございます。第3層の考え方についても若干補足説明をしております。第3層については,本来的利用を伴うというものでありますので,こうした市場における対価回収機会が失われることになって,相当の不利益が及び得るわけでございます。このために,社会的利益の性質な内容を踏まえた対応というのを比較考量の中で行う必要があるとしております。

イ.でございます。「優先的に検討すべきとされたニーズについて」でございます。翻訳サービスにつきまして,その正当化根拠に係る記述を2パラ目からしております。ここは以前も御紹介申し上げたとおりでございまして,政府の観光立国ですとか産業政策の辺りの記述を御紹介しておりまして,38ページでございますけれども,2パラ目のところでございます。観光立国,高度外国人材の受入れなど,さらに,外国人の人権保障の推進という観点から,我が国の言語の理解が困難な者に対して翻訳サービスを提供することには社会的意義ないし公益堆積が認められると考えられるとしております。

とりわけ,権利制限規定の整備の要請が特に強いのは,ニーズ募集でもございましたように,外国人が観光又は一般生活上必要とする著作物に係る翻訳サービスでございます。こうした著作物は商業的に流通しているものは少ないといったことから,権利制限を行うことがより正当化されやすくなるという趣旨を書かせていただきました。

こうしたことから,権利制限の範囲でございますけれども,まず,対象著作物については少なくとも無償のものに限定するということを前提に,さらに,権利者の利益を不当に害さないような範囲を画するべきであるとしております。

具体的な制度設計の方法につきましては,ここにぽつぽつと書かせていただいている意見の中で幾つか御意見があったわけでございます。まずは,博士論文など,政策目的と関係しない著作物は除外する方向で検討するという御意見ですとか,言語としては「日本語から外国語」へ翻訳するということだけを認めるべきであるという御意見ですとか,広告付きのものについては配慮が必要であるという御意見,それから,オプトアウトなどにも検討するべきという御意見,さらに,対応としまして,人間の観光ガイドが行うと同等の範囲にするべきだという御意見や,それから,提供目的を限定するという方法も考えられるという御意見があったわけでございます。こうした御意見を踏まえまして,制度設計を検討していくべきというふうにしてございます。

39ページをお願いいたします。(イ)「教育関係,障害者関係サービス等」でございます。こちらは特に具体的なニーズということではないわけでございまして,今後,具体的に想定されるサービスの目的・態様等が明らかになった段階で判断をするということにしておりまして,それとは別に,現在,法制・基本問題小委員会で検討が行われていることにつきましては,当該検討の結果を踏まえた規定の整備等を行うことが適当であるとしております。

以上……,すみません,まだありました,すみません。40ページをお願いいたします。6.「権利制限規定の整備に関連する事項」でございます。こちらは今期第1回の小委員会でも御決定いただきました検討課題の方でも取り扱うこととされていたテーマでございまして,事務局の方で案を整理させていただきました。

(1)「法の適切な運用を確保するための取組」としまして,ア.「ソフトローの活用等について」というふうにしております。こちらにつきましては,今回の規定の整備によりまして,ある程度柔軟性の高いものも想定しているわけでございますが,これまで確認してきましたように,柔軟性と明確性がトレードオフの関係になるわけでございまして,それぞれの弱みを補うための運用上の工夫が必要であるとしております。

まず,抽象度の高い柔軟性の高い規定を採用する場合には,予測可能性が低くなることへの対応が必要になってまいります。一つパラグラフを飛ばしまして,この点,委任命令ですとか司法による法規範形成というのが考えられるわけですが,それ以外の方法としましては,ソフトローの活用が考えられるとしております。

さらにパラグラフを飛ばしまして,ソフトローにつきましては,作業部会の方でも御検討いただきましたように,政策形成の……,すみません,ソフトローの形成過程への公的な関与の度合いというのは様々でございまして,ケース・バイ・ケースでこれから判断していくべきであるということを41ページの上の方までの間で述べさせていただいております。

次に,「第二に」としまして,個別・具体性の強い規定を採用する場合につきましては,逆に変化への対応可能性が問題になるわけでございます。新たに生じてきた行為類型が既存の規定の立法趣旨に鑑みれば,同様にその対象となるべきものであったとしても,文理上対象外となってしまう場合も生じるわけでございますので,こうした問題につきましては,法令の整備を待たずして,規定の趣旨を踏まえた柔軟な解釈がなされるよう期待されるということもございますし,ただ,そのための方策の一つとして,またソフトローの活用ということも有効ではないかというふうにしております。

それから,イ.「著作権法に関する教育・普及啓発について」でございます。法の適切な運用を確保していくためには,こうしたソフトローの整備,活用ということもそうですが,その前提としまして,我が国において,著作物の利用に関わる者が著作権法を十分理解しているということが必要になるわけでございます。しかし,アンケート調査の結果から,まだまだ我が国の著作権法普及状況は十分でないということが明らかになったわけでございます。

1ページ飛ばしていただきまして,最近,現在,知的財産教育について,国を挙げて推進していくというふうにされておるわけでございますので,こうした動きも踏まえながら,関係者において,教育や普及啓発に取り組むことが期待されるとするとともに,政府としても効果的な施策の充実を求めるというふうにしております。

最後に,「行政府における政策形成の在り方について」も若干付記をさせていただいております。今回,ワーキングチームとしましては,「柔軟性のある権利制限規定」の在り方につきまして,立法府,司法府の役割分担や特質を踏まえまして,立法府の判断に委ねるべき領域があるということで,とりわけ第3層はそういう領域であるということを述べたわけでございます。

しかし,立法府の判断に委ねるべきとした領域にありましても,政策形成過程の公正性・公平性の確保や,また,政策の妥当性,それから,迅速性といったことに留意していくべきことは言うまでもないということでございまして,第一,第二,第三と,その具体的内容を記載させていただきました。

長くなりましたが,御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥座長】ありがとうございました。

それでは,ただいまの,42ページまでですね,42ページまでの御説明について,御質問,御意見がございましたら,お願いをいたします。特段ございませんでしょうか。じゃあ,上野委員,どうぞ。

【上野委員】ありがとうございます。18ページ目から19ページ目にかけまして,アンケート調査とヒアリング調査のことが書かれております。これは,どのような規定の仕方をすれば公正な利用が促進されるのかということで,四つの選択肢を示してアンケート調査をしたということかと思います。

その結果としまして,「柔軟性の度合いが非常に高いもの」に対しては,「大半の企業」が「それほど大きな効果を認めていないものと評価できる」と,このようにまとめているようです。

この四つの選択肢は,(1)が非常に明確なものであるのに対して,(4)が非常に抽象的な規定ということになるわけですけれども,(4)のように,もし権利制限規定を抽象的な規定だけにしてしまった場合は,実際には公正な利用が促進されないというのはそのとおりかと思います。けれども,現在の著作権法に存在する大量の個別規定を全て廃止して,抽象的な規定だけを設けるなどというのはそもそも現実的な選択肢ではないと思いますので,本来問われるべきなのは,既存の個別規定カタログを維持することは前提として,それだけでよいのか,それともこれに加えて一般規定を設けた場合に公正な利用促進効果があるのか,それともないのか,という点ではないかという考えを私自身は持っておったわけです。そのことについては脚注の35にそのような指摘も想定されるというふうに一応記載していただいているところかと思います。

ただ,脚注35では,このような指摘に対して,明確な個別規定カタログに加えて抽象的な一般規定をも整備する場合の効果については,(1)と(4)の「それぞれの選択肢に対する回答を総合することで把握されることとなる」というふうに書かれておりますが,この「総合」というのはどういう意味だと理解すればよろしいのでしょうか。

つまり,非常に明確な規定(1)に肯定的な評価をした企業が7割弱で,非常に抽象的な規定((4))に肯定的な評価をした企業が2割弱ということなのですけれども,これを「総合」するというのは両者を足すというわけではないというように思いますので,ここにいう「総合」の意味について御説明賜ればと思います。

以上です。

【土肥座長】すみません,「総合」というのは何行目にあるどこですか。

【上野委員】脚注の35です。

【大渕座長代理】35の一番下の行です。

【土肥座長】なるほど。「選択肢に対する回答を総合することで把握される」。この部分の「総合」。事務局でお願いできますか。

【秋山著作権課長補佐】恐らく,何か事業展開に当たって,著作物を利用しようとする場合に,どのような権利制限規定が援用できるのかという判断をされることだろうと思います。

そのときに,個別規定と一般的な規定があった場合に,それぞれについて,どの程度事業展開上のリスクがあるのかということを企業が判断されるんだとしますと,それぞれの規定について,事業の実施しやすさということの回答がそれぞれの効果を表現しているんだろうと思っておりまして,先生がおっしゃったとおり,普通,AとBで足すというようななかなか単純な足し算にはならないと思いますが,それらを両方勘案するということだろうという意味で「総合」という表現をさせていただきました。

【土肥座長】いかがでしょうか。

【上野委員】その「両方勘案」の具体的意味がよく分からないのですが,(1)と(4)をどのように総合的に勘案すれば,既存の個別規定カタログと柔軟性の高い一般規定を両方とも設けた場合の効果が把握できるというご趣旨なのでしょうか。

【秋山著作権課長補佐】例えば,ある事業を行おうというときに,個別規定であれば7割方安心して使えるというふうに理解している企業が,一般規定であれば2割程度の安心感しかないということが,例えば7割,2割というときには言えるんだろうと思いますので,そのときに,その効果をどのように把握するのかというところで,なかなか足し算は難しいわけでございますけれども,それをちょっと「総合」という言葉で表現をしたんです。すみません,ちょっと答えになってないかもしれませんけれども。

【土肥座長】よろしゅうございますか。

ほかに御質問,御意見ございますでしょうか。前田委員,どうぞ。

【前田委員】報告書の31ページの「第2層の考え方」というところについて質問をさせていただきたいと思います。

「第2層の考え方」では,本来的利用という概念と,それから,本来的市場という概念が中心に来ていると思います。31ページの定義を見ますと,本来的用途に沿って作品として享受させると書かれております。注60を見ると,アメリカの裁判例が引かれておりまして,その一番下のところで,原著作物の代替物を提供するかどうかというところで最終的に判断がされたという記載があります。

この本来的市場ということの意味ですけれども,これは著作者が創作した著作物,原作品というか原作そのものがあって,それを作品として享受させるということが本来的市場の一番の中核に来るという,そういう整理を基にされている議論だという理解でよろしいのでしょうか。ここを確認させていただきたいと思います。

【秋山著作権課長補佐】ありがとうございます。考え方としましては基本的にそういう理解の下で書かせていただきました。ただ,作品というふうに表現させていただきました趣旨としましては,基本的にはそういう原作品が中心であろうと思われるわけですが,2次的な著作物を通じた利用ということも完全に排除できないのではないかと思いまして,若干幅のある表現とさせていただきました。

【土肥座長】ほかにございますか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】もう一点御質問させていただきます。23ページ目に,「刑法体系との関係」についてのまとめがございます。ここでは三つの規定形式を例に挙げて,明確性との関係について検討がされております。

一つ目が「抽象的な基準」による規定,二つ目が非「享受」利用を対象とする規定,三つ目が所在検索や情報分析サービス等を対象にする規定ということで,このうちの一つ目の「抽象的な基準によって権利制限の適否が判断されることとなる規定形式」を設けるということについては「明確性に疑義がある」というふうなまとめになっているように見えます。実際のところ,この23ページ目の下から11行目に,「『公正か否か』などの抽象的な基準」というふうに書かれております。

ですけれども,その次の行では,「当該規定形式については,例えば,『公正か否か』を判断するに当たっては……」とあり,ここでは「公正か否か」というのが一つの例として挙げられています。そしてこの後にいろいろと記述があって,段落の最後に結論として,24ページ目の7行目で「この規定形式では明確性には疑義がある」というふうにまとめられているわけですけれども,ここにいう「この規定形式」というのは,あくまでこの段落で一例として挙げられた「公正か否か」という文言を持つ規定形式について述べられたものだと理解してよろしいでしょうか。それとも,「公正か否か」という文言以外の「抽象的な基準」を持つあらゆる規定形式を全てが「この規定形式」に含まれるのでしょうか。

なぜこのようなことをお聞きしているかと申しますと,「公正か否か」という文言を持つ規定形式が「明確性に疑義がある」とされる理由について,資料23ページでは,「著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様などの考慮要素を踏まえて……利用目的が特定されて」いないからだと,こういう理由になっているわけですけれども,現行著作権法の中にも,同一性保持権の制約をする20条2項4号は,目的を限定せず,諸事情を考慮して「やむを得ない」改変は許されるとする規定です。したがいまして,そのような規定も含まれるとすると,既に現行法上の規定が明確性に疑義があるということになってしまいはしないのかという問題意識があります。つきましては,明確性に疑義があるとされている「この規定形式」という記述について,「公正か否か」という文言を持つ規定形式のみが対象となっているのか,それ以外の「など」というものを含んで書いておられるのかどうかということについて御質問させていただければと思います。

以上です。

【土肥座長】また,それをよろしくお願いします。

【秋山著作権課長補佐】私の理解では,ここでは「公正か否か」以外の規定ぶりの場合にどうかというところまで網羅的な議論はできていないんだろうと理解しておりますけれども,恐らく重要なポイントとしましては,23ページの1の下のパラグラフにありますように,「問題となる利用が生み出す社会的な利益の内容・程度と権利者に及び得る不利益等の比較衡量」についての判断ということができるかどうかというところなんだろうと思います。

したって,「公正か否か」という表現であれば,そういう判断は難しいというところまでここで明らかにされたわけでありますが,それ以外の規定ぶりがどうかということについては,こうしたことが言えるのかどうかということがまた更に議論されることになるだろうと理解しております。

【土肥座長】よろしゅうございますね。

どうぞ。

【大渕座長代理】今の点,御質問の趣旨が余りよく分からなかったのですが,回答の方はよく分かりました。これはまさしくここに書かれているとおりであります。著作権の権利制限の関係で,この20条の2項4号が例に出されることはあるのですが,これはおよそ次元が異なる二つのものを比較しているだけではないかと思います。

20条2項4号の方は,「やむを得ない」というこの文言だけでも,それから,立法趣旨からいっても,非常に限られた範囲だということが社会通念上おのずと明らかになっているのであって,別に比較考量による判断が必要だとされているわけではありません。

この4号につき比較考量をもって緩めようと主張する学説があることは承知しておりますが,立案者・立法者の意思からすると,決してそのような話ではなくて,不明確でオープンな形でなく,社会通念上明らかなやむを得ない範囲という明確なものがあるということであります。

そのようなことを前提とすれば,「やむを得ない」という文言と立法趣旨と,それから,著作者人格権という権利の性質から来る話と,政策目的やビジネス展開等,様々なことを考える著作財産権の話とは全く次元を異にする話なので,今申し上げたように,20条2項4号の話は4号の話として,ここはまさしく著作財産権についてここに書かれているとおりのことなので,私はこれを読んでも違和感はありません。

最終的に「公正か否か」というのでは,白紙委任ないし丸投げのような形で明確性がないので,きちんと規定を守りたい人にとっては守りようもなくてただ困ってしまいます。やはりルールというのは守ろうとしている人には守れるだけの明確性があることが大前提だと思いますので,そこを動かしてしまうというのは大きな問題だと思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。じゃあ,上野委員,どうぞ。

【上野委員】ちょっと繰り返しになってしまうのですが,この資料が「公正か否か」という文言を持つ権利制限規定は明確性に疑義があるとする根拠として,諸事情を考慮していることや利用目的が特定されていないことを挙げておりますので,そうであれば,20条2項4号も同一性保持権の一般的な権利制限規定というべきもので,特定の「目的」で行われる改変に限って適用される規定ではありませんし,「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」と定めており,著作物の性質,利用の目的や態様といった諸事情を考慮して適用される規定に他なりません。ですので,文言は「公正」ではなく「やむを得ない」というものではありますけれども,資料23ページにいう「抽象的な基準によって権利制限の適否が判断されることとなる規定形式」には当たると考えられます。そこで,ここで「明確性に疑義がある」とされている規定形式に同号のような規定が含まれることになりはしないかが問題になるため,そういう観点から御質問した次第であります。

しかし,事務局の御回答では,ここの記述,つまり,「この規定形式では明確性に疑義がある」というところの「この規定形式」というのは,「公正か否か」という文言を用いた規定形式だけを意味するものだというお答えをいただきましたので,私の懸念はそれで払拭されたと理解しております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。

ほかにございますか。よろしゅうございますか。いかがでしょうか。

42ページまでのところ,非常に重要な部分でございますけれども,この報告書案の考え方,説明,それについて御了解いただけますでしょうか。

御異議はないようでございますので,仮止めでございますけれども,42ページまでのところについては原案で了解いただいたということで,次に進めたいと思います。また,最後のところで何かお気付きの点がありましたら,また頂くと思っております。

それでは,次でございますけれども,43ページ以降の「ライセンシング体制の充実」の部分ですね。この部分以下についての御説明をお願いいたします。

【俵著作権課著作物流通推進室長】ありがとうございます。

まず,「ライセンシング体制の充実について」と,これは43ページ以降になりますが,この点について,まず説明をさせていただきたいと思います。

ニーズ募集においては,このライセンシング体制の充実による課題の解決,これらが求める意見も寄せられました。これらの意見について,このワーキングチームにおいて,一つは,B-1.として,「ニーズの内容が一定程度説明されているもの」,B-2.として,ニーズ提出者からの追加的な説明があれば,説明の内容や時期を考慮して対応を判断するもの,C.で,「既に審議会等で検討中又は過去の審議会で検討済」という形で三つに分類を頂きました。

それで,今回はこのB-1.とC.に分類を頂いた全ての御意見について,課題を整理して文化庁において検討を行いましたので,これらの検討の状況について説明をさせていただきたいと思います。

今回は,この検討の内容について,この報告書にも御反映を頂ければというふうに考えて,考えましたので,この報告書案に内容を記述した上で,この記述に基づいて説明をさせていただいて御意見を頂ければというふうに思っています。

この資料1の43ページの2.に,その「課題及び対応の方向性」ということで,これらについて説明をしたいと思います。

まず,課題の整理については,大きく五つに分けています。この2.の(1)から(5)まで,一つは,(1)が「権利処理の円滑化に係る課題」,(2)として,「権利者不明著作物等の利用円滑化に係る課題」,(3)として,「意思表示システムの普及に係る課題」,四つ目として,「放送番組の同時配信における著作物等の利用円滑化に係る課題」,そして,5番目として,「著作権の保護期間が満了した著作物等の利用に係る課題」の五つに課題を整理をさせていただいています。

さらに,その(1)の「集中管理団体を相手方とする権利処理の円滑化に係る課題」については,更に三つ,課題を整理しています。一つが,集中管理団体の創設や管理割合の向上,二つ目として,権利情報を集約したプラットフォームの構築,3番目として,これ,すみません,44ページの方になりますが,権利処理の窓口の一元化,この三つに更に分けています。

(2)の「権利者不明著作物等の利用円滑化に係る課題」については,更に二つ,裁定制度の改善と拡大集中許諾制度の導入という形で課題を整理をさせていただいています。

今回のこの課題の整理については全て頂いた御意見について分類できるようにしたものですので,項目立てをした課題については同様の意見が多く寄せられたものもあれば,意見が少数のものも混在していますが,全て分類できるように整理をしたものですので,御承知いただければというふうに思います。

最初の集中管理団体の創設や管理割合の向上についての意見に関してですが,これについては,集中管理の促進については重要な課題ということですが,これらは本来,当事者が自主的に行うべきものであるということで,行政の果たすべき役割としては,自由競争の下で民間主体が新規参入を行いやすい環境を整備することであるというふうにしています。

本年度,文化庁においては,前田委員にも加わっていただいて,これに関する調査研究,これは著作権等の集中管理の在り方に関する調査研究という形で調査研究を実施しています。この中では,管理事業法の規制の見直し,これの必要性であったり,そのほか,この法律の課題についても検討を頂いておりまして,この結果を踏まえて,必要な措置を講じていくというふうに考えていますので,その旨を記載しています。

この43ページの中段ぐらいのなお書きのところで,文化審議会における審議を踏まえて,この昨年,28年の10月に,権利者団体が「教育利用に関する著作権等管理協議会」を設置して,ライセンスなど,適切な制度の受け皿作りの検討を行っているということもありますので,この旨も記述をさせていただいております。

2番目の権利情報を集約したプラットフォームの構築についてですが,すみません,1枚めくっていただいて,44ページになりますが,文化庁においては,昨年度平成27年度に,これは末吉先生に座長をお願いしたものですけれども,調査研究を実施をいたしました。この中では,権利情報をまとめて検索できる総合検索システムの構築の重要性ということを示していただきまして,これを踏まえて,文化庁では,平成29年度の予算案に「コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業」という形で予算案として今,計上しているところです。この予算案が成立すれば,まずは音楽分野から,権利情報のプラットフォームの構築支援に着手するということで,この点について記述をしています。

3番目の権利の許諾窓口の一元化についての意見については,独占禁止法にも留意をしつつ,交渉や権利処理事務を一元化することについては,民間の自主的な取組として進めることが望ましいというふうにしています。これについては,例示として,音楽の3団体が「音楽集中管理センター」の設置について提案していることについても言及をさせていただいています。

そして,(2)の権利者不明の著作物の利用円滑化に係る課題についてですが,まず,1,裁定制度の改善についてになります。44ページの下から2段落目になりますが,平成28年2月に文化庁の告示を改正して,過去に裁定を受けた著作物の利用について,この相当な努力の要件を緩和しています。また,データベースについても構築をし,現在,約27万の情報について掲載をしています。

さらに,利用者の負担を軽減するという方策検討のために,28年10月から,権利者団体で構成する実行委員会に委託をしまして,この裁定制度について,利用者のために権利者の捜索や裁定申請を実行委員会が実証的に行うことを実施しております。今後は,この実証事業の結果を検証して,さらに,裁定制度の促進に向けて検討を行っていくということにしています。

そして,3番目ですが,公的なアーカイブ機関による裁定制度の利用の促進という課題についても意見が寄せられました。これらについては,権利者が現れたときに,補償金を支払うことが担保されているというふうに考えられる公的機関について,補償金を事前に供託するのではなく,権利者が現れた場合に支払うということを認める制度について検討を行っていますので,この旨を記述しております。

第二という形で,拡大集中許諾制度の導入についてです。これらについては,平成27年度に,外国の基礎調査を実施をいたしました。今年度は,この基礎調査も踏まえまして,この制度の我が国への導入の可能性であったり,その場合の課題について検討を行っています。これは上野委員に座長をお願いして,また,奥邨先生にも加わっていただいております。あと,きょうは欠席ですが,森田委員にも加わっていただいています。

今後は,これらの検討の内容を踏まえまして,我が国の著作権制度に係る具体的な課題を検討する際に,この制度の可能性を含めて議論をしていくことが必要というふうにしています。

3番目,「意思表示システムの普及に係る課題」ということで,これについては,「同人マーク」のような意思表示マークに公的な認証を与えることを求める意見というのが寄せられています。これらについては,この45ページの下の方になりますが,平成23年度に文化庁が調査研究を行っておりまして,「意思表示システムの在り方に関する調査研究」ということをしております。この中では,民間の自主的な取組を支援していくべきという方向性が示されておりまして,現在では,「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」といったような意思表示システムの普及のために,政府の広報物であったり,文化庁でいえば,著作権整備などでこの紹介・活用を行っています。

これらの意思表示システムの普及においては,特定の意思表示システムに認証を与えるということよりも,自由で多様な意思表示の在り方を尊重するということが望ましく,引き続き,意思表示システムという仕組み自体の普及を官民で進めることが適当というふうにしています。

次の46ページになりますが,「放送番組の同時配信における著作物等の利用円滑化に係る課題」ということで,これについては,放送番組で使用される楽曲を,インターネット配信をする場合に,その権利が異なる著作権管理事業者に委託されている場合があると。こういった場合については権利処理が複雑化するので,個々の楽曲について同じ,同一の管理事業者に委託を義務付ける制度の創設ということの要望がされています。

これについては,管理事業法であれば,国の役割を必要最小限度の関与にとどめて,自由競争により,我が国の集中管理が発展することを想定をしています。こういった管理事業法の趣旨であったり,契約自由の原則を踏まえると,権利者の委託先を政府が制限するということは適切ではないというふうにしています。

ただ,放送番組の同時配信に係る課題については,現在,情報通信審議会,これは総務省が主催してやっているものですが,この検討委員会において検討されていますので,ここで課題が具体的に示されれば,更なる検討が必要であるというふうにしています。

最後,「著作権の保護期間が満了した著作物等の利用に係る課題」ということで,これは公的な外部機関において,パブリックドメインになった作品のタイトルの一覧を作成,公開した上で,これらの作品自体も公開することが望ましいといった意見が寄せられました。

これらについては,保護期間が満了していることを第三者が判断するということは容易ではないといったことから,このようなデータベースの整備・公開をアーカイブ機関に義務付けるということは困難であるというふうにしています。

ただ,既に一部の機関では,自主的な取組として,こういったことも行われているようですが,最後に,そのパブリックドメインの作品などがデータベースとして公衆に提供されることで,これらの作品の活用が進むと考えられるということについても言及をしています。

以上になります。よろしくお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】では,続きまして,47ページの方も御紹介いたします。

5としまして,「優先的に検討することとしたニーズ以外のニーズについて」の取扱いを記載いたしました。ニーズ募集の分類上,A-1-2に分類されたもの,及び,A-2に分類されたもののうち,今回,検討対象とならなかったものとしては,ここに書かれました八つのニーズがあるわけでございます。

これらのニーズにつきましては,今般の優先的検討を行うこととしたニーズに係る課題への対応を行った後,2で述べた手順4による分類及び優先度を考慮しながら,順次検討を行うことが適当であるとしております。

また,これらにかかわらず,過去のワーキングチームにおきまして,重要性の指摘されたニーズがございますので,併せて御紹介しますと,「教科書・入試問題の二次利用」,「パロディ・二次創作」,「メディア変換サービス」,「図書館等における複製等」,「放送番組のインターネットでの同時配信」,これらについては重要であるという御意見があったわけでございます。

また,ニーズ募集におきましては,権利制限規定の見直し,及び,ライセンシング体制の充実以外の方法による解決を求めるニーズも寄せられているところでございます。これらにつきましても,「検討の進め方」に基づきまして,ニーズの内容や課題の優先度を踏まえ,必要に応じ検討を行うとしてございます。

御説明は以上になります。よろしくお願いいたします。

【土肥座長】48ページはよろしいということですか。

【秋山著作権課長補佐】48ページは「おわりに」というところは……。

【土肥座長】別個に分けては報告されないということですか。

【秋山著作権課長補佐】はい。ごらんいただければと思います。よろしくお願いします。

【土肥座長】分かりました。ありがとうございました。

それでは,ただいま事務局から説明がありました43ページから47ページまで,ここの記述について,御質問,御意見ございましたら,お願いをいたします。

御報告のときにいみじくもちょっとおっしゃった日時のところは何か訂正とか何かこの場でありますか。つまり,先ほど報告されながら,43ページでしたかね。平成28年12月という部分でちょっと逡巡されたんですけれども,ここがもし訂正されるんだったら,今の方がいいかなと思いますが。

【俵著作権課著作物流通推進室長】今って二十何年……。

【土肥座長】今は29年。

【俵著作権課著作物流通推進室長】すみません,28で合っています。

【土肥座長】よろしいですか。

【俵著作権課著作物流通推進室長】はい。すみません,ありがとうございます。

【土肥座長】もっと前じゃないかなと思ったと思われるんですけれども,私もちょっとそういうふうに思ったんですが,これは12月ですね。

【俵著作権課著作物流通推進室長】はい。

【土肥座長】ほかに,ほかにといいますか,特にございませんか。

なければ,御了解を頂いたものというふうにして,全体の,先ほどちょっと仮止めと申しましたけれども,全体を俯瞰して,何かございましたら,お願いをいたします。よろしゅうございますか。全体を通じて。龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】大きく言って,前半が権利制限のことについてで,後半の43ページからはライセンシング体制の充実についてという大きく二つに分かれていて,その二つの行き方は全くコンセプトが違うわけです。この二つは権利制限を加えてしまうという発想と,権利制限ではなくてライセンシング体制を充実すればいいのではないかという相反する方向の方向性の話だと思いますが,今回は,権利制限を中心に置いたわけです。他方,ライセンシング体制についてはやや民間の自主的努力に委ねるという方向で,問題をそこに委ねたニュアンスがあるわけです。

後者に関しては,別途,著作権等の集中管理に関する検討も平行して進んでいるということがあるようですので,その辺りとの関連といいましょうか,あるいは,そちらの制度設計の方で何か別の方法なり,検討をしているのであれば,その検討結果を盛り込むというというスタンスも考えられるような気もしますが,その辺はどのような進捗になるのしょうか。

【俵著作権課著作物流通推進室長】すみません,ありがとうございます。今,43ページで,この報告書案でいえば,43ページの(1)のところに,著作権等の集中管理の在り方に関する調査研究を実施というふうに記述をしています。実際これは管理事業法について,一つは,規制が,規制緩和が十分に行われているかという視点が一つかと思います。

ここで意見のあった,多く意見のあった集中管理を進めるべきということについては,その制度的な視点から見れば,この法律において規制が緩和が十分であり,その制度,管理事業を行うに当たって,何か実施がしづらいような仕組みになっていないかどうかという視点で見るというのが一つかと思います。

これに併せて,規制緩和だけではなくて,法律自体のある意味,規制強化というか,規制緩和以外の課題についても意見,パブリックコメントをお願いして意見を頂いています。この調査研究においては,全体,その規制緩和の視点と規制緩和以外の視点で出された課題について議論を頂いております。

これについては今年度中に報告書を整理していただいて,それを踏まえた対応をしていくことかなというふうに考えて,今回のこの意見,頂いたこのニーズ募集において意見を頂き,そして,このワーキングチームにおいて整理いただいた課題について言えば,その研究の,調査研究の中の前段の部分かと思います。

これについては,ここの報告書の中では幾つか検討しているものも,これ以外についてもありますが,この中では,その今年度の中でいえば,現在検討しているというこの状況についてここに記述をさせていただいて,その後の対応については文化庁なり,その取組について取組を待つというような形で書かせていただいたというものに。

それについて,どうすべきかということについては,もし御意見があれば頂ければと思いますが,一応その整理の今回の考え方としては,そういうふうな形で整理をさせていただいているということです。

【土肥座長】よろしゅうございますか。

ほかにございますか。全体を通じて,もう特に御異論がなければですけれども,本日,皆様の御質問,御意見,そういったものを伺いましたところ,御質問は幾つかございましたけれども,特に報告書案を修正するという御意見はないように承知いたしておりますので,この報告書案につきまして,了承を頂いたということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥座長】御異議はないというふうにさせていただきます。

御異議もないということでございますので,報告書は次回の法制・基本問題小委員会において報告をしたいと思っております。

本日用意しております議題は以上が重要なものでございまして,その他として,本ワーキングチームの第6回,最後になろうと思いますけれども,この最後の第6回において何か御発言いただけるようなことがあれば,いただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。よろしいですか。

それでは,先ほど申し上げましたように,最後のワーキングチームということでございますので,いつも御挨拶を頂戴しておりますけれども,永山審議官から御挨拶を一言頂ければ,幸いでございます。

【永山長官官房審議官】文化庁審議官の永山でございます。本ワーキングチームの委員の皆様におかれましては,一昨年10月の設置以来,1年4か月にわたり,熱心に御討議いただきまして,きょう,こういう形でおまとめ,御報告をまとめていただくということをまず感謝を申し上げたいというふうに思っております。

私,御承知のように,審議会,この問題,柔軟性のある権利制限規定について取り上げたのが平成21年から23年だったと思いますが,そのときの著作権課長ということで,きょう,おまとめいただいたことを,いろんな意味で,深い感慨を持って受け止めさせていただいております。

この前回の検討から6年,五,六年がたっておりますが,この間,大きく社会情勢は変わってきた,社会経済情勢が変わってきたというふうに思っております。特にAI,IoT,ビッグデータということで,著作物の利用形態が多様化,大量化しているという中にあって,著作権の保護と利用とのバランスをどう取っていくのかということは非常に重要な課題ということで,著作権法,著作権の世界に突き付けられた課題である,非常に重要な課題であるというふうに考えております。

それについて,今回,多角的に,著作権法の側面,理論的な側面だけではなくて,いろんな形のアンケート調査,また,社会経済学的観点からの分析ということで,非常に多角的な観点から検討いただきまして,非常に難しい問題ではございますけれども,今回,いろいろ与えられている条件の中では非常にベストの回答を頂いたんじゃないかというふうに私も考えております。

これからは,当然,手続としては,小委員会での御議論,また,最終的には分科会,審議会での御議論ということと平行いたしまして,政府部内,内閣法制局との調整,また,当然,与党の,法制化ということでは与党との調整ということがあるわけでございます。

今回こういう形で取りまとめを頂きましたので,私どももこれをベースにしながら,その実現に向けて,引き続き,最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。また,様々な場面で御指導いただくことになろうかと思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。

最後に,再度,この1年4か月にわたりまして,大変お忙しい中,御審議いただきましたことに感謝を申し上げまして,私からの挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【土肥座長】ありがとうございました。

最後に当たりまして,私からも一言ということでございますので,一言御挨拶を申し上げたいと思います。

先ほど,永山審議官からお話がございましたように,一昨年ですかね,一昨年の夏に文化庁においてニーズ調査をやっていただいて,112のニーズが寄せられたわけでございますけれども,これを全て,このニーズに対してお答えをするというお約束で始まったわけでございます。

このニーズの分類から,それから,そもそもニーズの明確性,あるいは,正当化の根拠,そういったものもきちんとしたものから漠としたものまで,いろいろあったわけでございますけれども,これらをきちんと整理していただいて,さらに,こういったものを仮に入れた場合の影響効果,こういったものについてもきちんと精査するようにというような分科会における各委員の御要望等もあったわけであります。

これらをほんとうに,ワーキングチームの委員の方はもとより,それから,作業部会において,広く部会委員の方々のお力,あるいは,青山社中の遠藤様を含めて,短い時間の中で検討していただいたわけであります。

その間,御案内のように,TPPがあったわけでありますけれども,ああいう大きな問題も中に挟みながら,きょうを迎えることができた。確かに,あと八つのニーズについてはこれからというところはあるわけでありますけれども,しかし,その八つのニーズを除いて,112のほとんどについて一応こういう形でまとめることができたというのを,もちろんチーム委員の方もすばらしいなと思うんですけど,事務局が何よりも少ないマンパワーの中でやっていただいたということを私は本当に,何ていいますか,感激をしておりまして,本来ならもう少し先になるんじゃないかなと思っていたものが,こういう形でまとめていただいたというのは非常にうれしく思います。本ワーキングチーム全員で代表してお礼を申し上げたいと思います。

残る八つのニーズというのはまだ大きなものがございますので,更に今後の検討の中で,作業の中で,結論に達していただければということを要望いたしまして,私の最後の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

それでは,本日はこれをもってワーキングチーム第6回を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

――了――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動