議事録

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第3回)

日時:
平成25年6月13日(木)
17:00~19:00
場所:
文部科学省3階講堂
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)紙の出版物・電子書籍等の実態について(関係者ヒアリング)
    2. (2)「電子書籍に対応した出版権の整備」について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【土肥主査】 それでは,定刻でございますので,まだお席に着いておいでにならない方もおいでになろうかと存じますけれども,そのうちお見えになると,このように思いますから,これから文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第3回)を開催いたします。本日は足元の悪い中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に本日の会議の公開につきましては,予定されておる議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばない,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特にこの点御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず,事務局からの配付資料の確認をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,配付資料の確認をいたします。議事次第の下半分をごらんいただければと思います。まず資料1といたしまして日本出版書籍協会より御提出いただきました資料を,資料2といたしまして電子出版制作流通協議会より提出いただきました資料をお配りしております。また,資料3といたしまして「電子書籍に対応した出版権」(仮称)の整備に係る法的論点例(案)を,資料4といたしまして「電子書籍に対応した出版権」(仮称)の主体及び客体についてという資料をお配りしております。このほか,参考資料といたしまして,第1回・第2回の本小委員会における関係団体ヒアリングの概要をお配りしておりますので,適宜御参照いただければと思います。配付資料につきましては以上でございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。それでは,初めに議事の進め方について確認をしておきたいと思います。本日の議事は(1)紙の出版物・電子書籍等の実態について,関係者のヒアリングを行いたいと思っています。(2)電子書籍に対応した出版権の整備について,(3)その他,この3点となります。前回の本小委員会では出版者への権利付与等として考えられる方策について,多数の関係団体の方からヒアリングを行いまして,その上で議論を行った結果,今後は電子書籍に対応した出版権の整備を議論の軸として検討を進めていくこととなっておりました。そのため今回から電子書籍に対応した出版権の整備について具体的な検討に入りたいと思いますけれども,まず(1)については紙の出版物や電子書籍等の実態について,私ども各委員の間で情報を共有したい,このように思いますので更に関係者からヒアリングを行いたいと思います。(2)については電子書籍に対応した出版権の整備について法的論点の議論に入りたいと思っております。
 それでは,紙の出版物や電子書籍等の実態についてのヒアリングを受けたいと思っております。紙の出版物の実態については一般社団法人日本出版書籍協会の堀内委員,恩穂井様,このお二方より,電子書籍等の実態については一般社団法人電子出版制作・流通協議会の小林委員,長谷川様,このお二方からヒアリングを行いたいと思っております。各団体よりヒアリングを行った後,まとめて質疑応答等を行いたいと思います。
 それでは,堀内委員,恩穂井様,よろしくお願いいたします。

【堀内委員】 それでは,説明させていただきます。資料1をごらんいただきたいと思います。1ページ~7ページに沿って説明をさせていただきます。まず1番に「出版物販売額の推移」でございますけれども,1996年の2兆6,560億円をピークに以来下降線をたどり,2011年では1兆8,040億,翌年には1兆8,000億も割り込んでおります。最盛時の30%以上の減少となっております。また,その中でもコミックは2009年から全体の減少幅以上に落ち込むようになっております。この間,書店での新刊書・新刊雑誌の購買に代えて,出版物へのアクセス手段の多様化がありました。多くは著作者,出版社への直接的な利益還元がなされない形でのアクセス手段の多様化ということが起きております。
 まず〔1〕とあります「公共図書館における貸出冊数」ですけれども,22年度は延べ6億6,000万冊ということで,昨年では7億冊を超えていると聞いております。これは新刊書が書店で売られる冊数を昨年あたりにもう逆転していると思います。それから,2番目に「新古書店での購買」ということで,これは最大手のブックオフで2013年の決算767億,このうち500億円ぐらいが書籍の扱いだと聞いております。大手3社でトータル1,200億円という額になっておりますので,これを新刊に換算すると相当に大きな金額になりますし,扱われている点数も図書館には及びませんけれども,数億点には上っていると思います。〔3〕「レンタルブック店の台頭」,2012年度で許諾対象の契約店数が1,893店になっております。これは貸与権管理センターに委託している著者数で言いますと1万人を超え,10万以上のアイテムがここに委託されております。1店舗平均2万点ぐらいの図書がここに常備されているということなので,4,000万点近いものが絶えず貸し出されているということになります。
 その下にありますのは、出版物の販売額の推移を,書籍,雑誌,電子書籍,コミックについてグラフ化したものでございます。
 2ページ目にそれを金額ベースで書籍,雑誌,電子書籍,コミックについて具体的な数字で1996年~2010年度まで示してあります。その下にある青グラフはこの間の,書店の推移でございます。現在,1万5,000店を切って1万4,000店ぎりぎりぐらいまでに減少しております。1980年代には,書店の数は2万4,000店以上と言われております。
 3ページ目をごらんいただきたいと思います。3ページ目はこれも1996年からの出版物の新刊の発行点数の推移ということで,ここにグラフと数字で示してございます。点数は増大しておりますけれども,この間に多くの社が文庫・新書という市場に参入してきておりまして,そういうこともあって点数が増えているということだと思います。
 4ページ目をごらんいただきたいと思います。「出版物の制作工程に要する標準的な期間」と書いてございますけれども,初めにお断りしておきますが,文芸書から専門書までそれぞれ1点1点制作に係る期間というのはまちまちでございまして,標準的と一くくりではなかなか言えないんですけれども,1つの典型的な例ということでAとBを例示しております。Aの方は書き下ろしの文芸単行本,Bの方は,著者が1人の学術専門書,このA・Bのジャンルにおける1つの例ということで御参考にしていただきたいと思います。また,最初の企画立案から原稿が完成するまでと,これも極端なことを言いますと1年から例えば10年,同じ書籍でも辞典なんかですと10年・20年かかるものございますし,これもまちまちでございます。それから,その後,体裁を指定したり,印刷所に入稿して校正・校閲,校了,印刷,製本,書店で販売されるまでにこういう過程をたどる訳ですけれども,これも学術専門書なんかですと特に校正・校閲のところは文芸書よりも期間が長くなるのが普通でして,これも1点1点,あるいはその分野によってまちまちでございます。あくまで,こういうような流れで本はつくられるという1つの参考にしていただければということでございます。
 そして5枚目に著者の方との企画の打合せから,原稿を頂いて本が形になって読者に届くまでを図にしたものがございますけれども,太枠のところが,出版社が著者とやりとりをしながら本作りに関(かか)わっているところでございまして,その下にある枠のところが印刷会社の主に担っているところと,そして製本,さらに取次販売会社,書店を経て読者に届くという標準的なところでございますが,この中で1つお断りしておきたいのは印刷会社のところのフィルムどり・フィルム出力とかございますけれども,これはちょっと古い形でして,現在はここがほぼデータでのやりとりという形になっております。ちょっと古い資料で恐縮でございます。
 そしてここの流れ,この図をちょっと説明させていただきますと,様々な著者の方々がいらして,出版社から依頼する場合もございますし,著者からの御提案を受けて企画がスタートするということもございますけれども,この企画から原稿,そしてそれを整理して入稿となる訳ですが,この企画から原稿に至るまでの間に著者とともに資料を調べたり,取材をしたりということで,ここも先ほど申し上げたようにそれこそ半年から10年まで様々な形があると思います。そしてこの中に書かれておりますこういう校正,校了,青焼校正,印刷,製本,その上の方に原価計算とか部数決定とか,それから,装丁,あるいは広告・宣伝ということも書いてありますけれども,これらはここに分かりやすく図式化しておりますが,実際にこういう流れで進むというよりは同時にいろんな形で作業が進むというように考えていただいた方がいいかと思います。例えば,どういう仕組みでどのくらいの定価で,部数で,用紙は何にしよう,あるいは装丁はどうしよう,そしてそれをどうやって広めるために宣伝活動をやっていこう,これらは,企画の進み具合,原稿の進捗状況などの様々な段階で,その本ごとに同時だったり相前後したりして作業が進むということです。
 そして印刷会社あるいはそれに関(かか)わるデザイナーだとかいろんなやりとりをしながら,印刷をして,そして今度製本会社で製本されると,取次会社を経て書店へ,そして読者の手元へと,こういうような流れになっております。ちょっといろいろ分かりやすく書き過ぎたきらいがございます。そしてこれは1冊の本ができるまでの過程をおもに制作工程的な観点から図にしたんですけれども,それ以外にも、本になるまでということで言いますと,例えば図の枠外になりますが、新しい書き手の方々を発掘していくとか,それから,それを支援していくとかいうことも出版社は担っておりますし,今度は出版物ができた後になりますけれども,発売後にも,適正な在庫管理あるいは出荷,そしてまた出版物に関する読者からの様々な問い合わせとか,クレームとか,こういうことも出版社の責任で対応しております。時によりますと名誉毀損とかプライバシー侵害とか,そういう訴訟なども著者とともに著者をバックアップしながら対応していくとか,本の企画から読者の手元まで届く,その企画以前,それから,読者の手元に本が届いた後まで,出版社は様々な形で1冊の本に関(かか)わっていくということでございます。
 そして次に6ページ目の出版権の設定契約あるいは二次使用等の実態についてということでございますけれども,これは2011年に書協が行った調査ですが,この調査によれば出版点数のうち契約書を交わしているものが73%を超えているということです。そして出版社が使用している契約書の8割近くは出版権設定契約となっているという結果が出ております。使用している出版契約書については書協のひな形,あるいはそれを著者との話し合いによって若干修正を加えたもの,このa・bで83%近くになっています。その下に著作権譲渡とかいう例もございますが、この辺になると医学書とか専門的なものでかなりレアなケースとなっております。そして2.ですけれども,二次出版,サブライセンスの実務についてということですが,通常文芸にしても漫画にしても,雑誌に掲載して,そしてそれが同じ出版社から単行本として出て,その後,例えば文庫になるとか二次使用という流れで進むことがわりと多いんですが,雑誌掲載をして他(ほか)の出版社から単行本が出るとか,あるいは雑誌掲載,そして掲載した出版社から単行本が出て,文庫本は他(ほか)の出版社から出るというケースもかなりの頻度でございます。そこのところを2.の下の方に6ページ,7ページにわたって書いてございます。
 そして(2)の「二次出版に係る一次出版社と二次出版社との契約」というところで,〔1〕,〔2〕,〔3〕とございますけれども,少し長くなりますがここをちょっと読ませていただきます。
 まず〔1〕「二次出版が自社で行われる場合。
 出版権は出版の態様における複製権の独占利用を出版社に認めるものである以上,一次出版物の発行の際になされた出版権設定契約は,自社で行う二次出版の際も当初の出版権設定契約の範囲内に含まれるものであると考えられる。ただし,実務としては二次出版においては出版物の判型,製本等の体裁,含まれる著作物の組合せ,価格等が変更されることがほとんどであるため,詳細な条件等については著作者に配慮し,その都度著作権者と協議の上,新たな合意を形成している」。
 〔2〕「二次出版が他社で行われる場合。
 出版権は現行法上は出版権者が第三者に対し出版権の再許諾を行うことは認められていない。ただし,実務上は出版権を設定した一次出版物が継続出版されている間に,その著作物の二次出版物が他(ほか)の出版社から発行されることも少なくない。文庫本がその典型的な例である。このような場合,二次出版社は一次出版社に対して二次出版料として二次出版物の価格の数%に相当する金額を一定期間支払うことが多い。これについてはどのような法律構成によるのか必ずしも確立しているとは言えない。著作権法逐条講義では「権利侵害についての責任追及はしないことで両者が了解を与え,その代償の意味のおける補償金として許諾料相当額を受領(じゅりょう)する」という慣行として動いていると述べられている」。
 〔3〕「雑誌掲載された著作物の二次出版が自社で行われる場合。
 著作物の雑誌掲載に際して出版権が設定されることは稀(まれ)である。これは出版権が継続出版の義務を課している等,比較的長期にわたり販売される書籍を想定しているためと思われる。雑誌への寄稿は連続的に掲載を予定する連載小説やコミック,コラムのようなものと,その号限りの単発的なものがある。連載小説等は多く場合その社での単行本発行を想定しているが,その場合も雑誌掲載時に将来の単行本のための出版権設定契約を行うことは稀(まれ)である。単行本発行の明示的な予約契約を結ぶ例も余りないと思われる。単発のコラム等を集めて1冊の単行本とする場合は,初出の雑誌出版社でない出版社からの発行も少なくない。この場合,単行本の出版社が独自に出版契約を結ぶことになり,初出出版社は特に権利主張を行うことはないと思われる」。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 次に,小林委員長,谷川様,よろしくお願いいたします。

【小林委員】 それでは,日本の電子出版について非常に概略を網羅的ですが説明をしたいと思います。じゃ,2ページ目は協議会の説明なんで,その後の「電子書籍市場と出版市場」というところを見ていただきたいと思います。日本の電子書籍の市場は2003年に3Gの携帯が出てきたときに始まったと言ってもいいと思います。そこから市場がどんどん大きくなりまして,2011年度まで実績が出ておりますが629億と,2012年度,昨年度ですが正式な数字がまだ出てないんで予測を書いてありますが713億と,このうち携帯ではなくていわゆる新しい電子書籍と言われているものが約300億の市場になっています。これは予測なんで294になっていますが現実にはもうちょっと少ないと思います。昨年の立ち上げが若干遅れたこともありまして,これより少ないと見ております。それに引換えアメリカが2012年に市場規模どのくらいあるかといいますと3,000億円あります。ですから,日本はまだ10分の1というところでございます。そのずっと予測の先を見ていただくと2016年度まで書いてありますが,ここで2,000億円になると予想されていますんで,2012年度からは大体倍々ゲームで上がっていけばこのくらいになるだろうという市場でございます。下の方に書きましたのは雑誌の市場も電子書籍,電子化されたものが販売されていますんで,まだ小さいですけれども,22億円程度あるというところでございます。
 じゃ,次のページへ行っていただきまして,じゃ,電子書籍を何で読むかという端末の話をしたいと思うんですけれども,今,非常に日本では電話機が普及しておりまして,しかもスマートフォンというやや画面の大きいものがどんどん普及しております。2012年度が2,972万台と言われています。今年度は3,240万台まで行くと言われています。日本の電話の契約者数が約1億1,000万台ありますんで,このスマートフォンの普及率が約3割まで来ているというところでございます。2012年度の実績に戻りますけれども,2,972万台のうち,私も使っていますが,このAppleの端末が1,066万台市場にあります。比率でいきますと35.9%,非常に人気があります。続きまして2番のタブレットですね。タブレットは皆さん御存じかと思うんですが色のついたもう少し画面の大きいものです。ここにiPad miniがありますけれども,こういったもので本を読むと。これは本を読む以外に動画も見られますし,いろんなことが見られるものです。この端末が2012年度,568万台です。今年度は690万台まで行くだろうと予想されています。またちょっと568万台の中の中身を申し上げますと,今,お見せしたAppleの製品ですが,これが298万台普及しております。比率で行きますと52.5%でかなりの普及率と言っていいと思います。
 それ以外に3番,4番,携帯電話,これをイメージしたのはフィーチャーフォンでまだ漫画を読んでいる人もいますんで書きました。もちろんパソコンで読むことができますけれども,携帯性,持ち運ぶのに便利だということを考えると1番,2番で読むことが多いと。ここに書きませんでしたけれども,電子書籍の専用端末というのがあります。大体専用端末はモノクロでできていまして,本を読むだけのためにありますんでモノクロで十分だと思いますけれども,こちらは機能が本を読むだけになっていますんで非常に扱いやすい,年を召した方も若干リテラシーの低い方でも扱えると思います。だから,アメリカでどの辺のあたりが買っているかといいますと,50代,60代の方がこの専用端末を買って本を読んでいらっしゃるという状況があります。
 じゃ,次のページに行きます。じゃ,プラットフォームの動向でございますが,読者の方はどうやって読んでいるんだといいますと,1番はさっき言いました2004年から来ているいわゆる3Gの携帯で読んでいる方,フィーチャーフォンで読んでいる方がまず1つあります。2つ目が今言った電子書籍専用端末,非常に扱いやすい端末でございます。3番目がここにアプリケーションと書きましたけれども,スマートフォンにおいてもあるいはタブレットにおいてもアプリケーションがダウンロードすることが出ます。それをダウンロードすることによってそこから本を買ったり,あるいは本を読めたりということができます。4番目にWebブラウザ,いわゆるインターネットでホームページとか全部Webでつくられていますが,これで見る方法が一応あります。日本ではまだWebで見るような電子書籍は無料のもの以外はないと思います。ただ,アメリカではアプリケーションをダウンロードしたり開くことに余り,何ていいますかね,好きじゃない人が多くて,海外ではWebブラウザで見るような傾向にあると思います,という4つの方法で電子書籍を読むということになっております。
 次のページへ行きますと,一応,電子書籍端末,タブレットを含めて主なものをちょっと書いてみました。画面の大きさとかいろいろ書いてありますんで,これは後ほど見ていただければと思っております。
 続きまして10ページ,11ページのところで「電子書籍・電子出版の示す範囲」という,一応,文化庁の方からそういうオーダーが出て説明しようと思ったんですけれども,正直言いまして私自身もどこからどこまでを電子書籍と呼ぶかという定義はまだ決まっておりませんので,若干私の私見も含めながら話をしたいと思います。「電子書籍・電子出版の概念」ということでページ11に表がございまして,まず一番上に新聞と書きました。いわゆる紙の上で本の形をしているものを,先ほど堀内委員からもありました二次利用としての電子書籍というのがあります。これが紙の本のコンテンツ,これですね。それから,最近ちょこちょこ出てきましたボーンデジタル,つまりデジタルで書いてデジタルが先に出ているというものです。それから,さっき言った日本で余りないけれども,Webコンテンツから電子書籍化されるもの,最近で見かけるのはブログ等々を電子書籍化する動きもございますので,そういったものが当てはまるかなと思っています。というのを今3つぐらい挙げましたけれども,これから何が電子書籍になるか分からないぐらいいろんなものが電子書籍になるんじゃないかと私は思っています。ですから,今までの法律等々では計り知れないものが多分出てくるんではないかなと思います。
 それから,真ん中にリッチコンテンツと書きました。これは前回お話ししたTTS(text to speech)が入った電子出版であるとか,それ以外に動画が入ったものであるとかいうのがこれからどんどん出てくると思います。それから,一番右が電子出版の新しいビジネス展開と書きましたけれども,今まで紙の本は本屋さんに行って自分の好きなものを買うという形で販売されておりましたが,今後はネットでいろいろなものがあります。SNSとかブログであるとか,あるいは,これはネット上ではありませんけれども,オンデマンド出版とかいろんなものがありまして,これが組み合わさった形で新しいビジネスがどんどん展開されるんではないかと考えております。
 続きまして,今度は電子書籍のフォーマットとか制作工程についてお話をしたいと思います。今,電子書籍は大きく我々2つに分けて考えています。1つはここにあるリフロー型,データがテキストでできておりまして,文字を大きくしたり小さくしたりすることによって,この絵で分かりますように画面上の文字数も当然変わりますと。大きいものであれば文字数は少なくなり,小さいものでは一杯入ると。一応データ自身は巻物のようになっていますんでどういう形でも対応できるようになっております。主なフォーマットとしては世界標準と言われているEPUB,もともと日本にあったXMDF,.bookという3種類がございます。次のページ,14ページですがこちらはいわゆるフィックス型と言われて画像としてデータを扱っているものです。これはちょっと漫画です。漫画はもちろん画像なんですけれども,これ以外に写真集と,文字も画像としてのデータでフィックスしたものはページ単位といいますか,画像1枚ずつといいますか,そういう形で表現するということになります。代表的なものはPCで扱うとき皆さんお使いになっているPDFがまず画像で扱ったものだと思います。という大きく2つに分けて画面で表現しているということになります。
 続きまして,15ページですが電子書籍のフォーマットとして今言った昔から日本にあるのはXMDFと.bookというものがありまして,これいわゆる日本語にマッチしたもの,縦書きであるとか,ルビとか,禁則処理ができたようなものでやってきました。ただ,先ほど言ったEPUBというものが世界標準になると言われていまして,EPUBでの日本語の表現ということがいろいろなところで言われるようになりまして,2番のところに書きましたけど,2011年10月にEPUB3.0というものが発表されました。これは日本語対応のもので,ここから日本では日本語用の開発が始まったということでございます。
 その次のページはそれぞれのフォーマットの特徴を書きましたんでちょっと省略させていただいて17ページを見ていただきたいと思います。EPUBはIDPFという団体が提唱するものでございまして,特徴としては今言った国際標準であると。それから,Web系と非常に親和性が高くて,さっき言った今後このフォーマットを使わずにWeb上で読めるようなことも将来的にはなっていくんじゃないかなと思います。それから,3つ目の特徴としましてオープンソースなので誰(だれ)でもつくれるということになっています。ただ,ここ1年ぐらいのことを言いますと誰(だれ)でもつくれたことによってEPUBも10種類も20種類もできてしまいました。それを出版社さんとかと話してだんだん作る側(がわ)にとって利便性があるように1つにまとめてきています。間もなく1つにまとまるような状態になっております。
 次のページでございます。じゃ,EPUB3.0の日本語表現ということで特徴を書きました。縦書き,右開き,ルビ,それから,縦中横,つまり真ん中に書いてある「平成18年12月25日」と,普通18とか12とか数字とか欧文は横になっちゃうんですけれども,それを縦にすることとか,あと禁則処理とか,そういう特徴があります。
 次,19ページです。じゃ,どうやって作るんだということをちょっとお話ししたいと思います。まずここに4種類ございまして,原本と書いてありますけれども,まずテキストデータのないものというのがあるんですね,古い本ですね。これはOCRというものを使ってテキストを抽出します。その後に校正と書いてありますが,このOCRを使った文字の抽出は100%抽出することはできません。類似した文字に読み込んでしまったり,特に旧字をやったときかなりエラーが出ますから,それを持って編集者の方には1回校正をしてもらう必要がございます。校正して直した後にここにXMLタグ付与というのがありますけれども,XMLというのは下に書きましたが,データの意味や構造を記述するものということで,例えば大見出し・小見出しの指示をしたり,あるいは行変えの指示をしたり,そういう指示をするものでございます。それが終わりますとオーサリングといいまして,さっき言ったEPUBとか.BOOKといういろんなフォーマットに変換をするということをします。その後にDRM,著作権保護の仕掛けを作ると,その上で読者に渡すという形になります。
 2番目はDTPデータとありまして,いわゆるテキストデータがあるもので,厳密に言いますとDTPデータは紙の本を作るためのデータでございますんで,そこからテキストを抽出します。その上で,抽出するだけですから校正は必要ないんで,そのままタグをつけてオーサリングをしてDRMというのが2つ目でございます。もともともうテキストのデータがあるものは抽出もすっ飛ばして,XMLタグをつけてオーサリングということになります。それから,さっき言ったフィックス物,コミックの原画と書いてありますけれども,これはコミックの底本をスキャンします。スキャンして画像にしたものをオーサリング,つまり必要なフォーマットに変えて,その後,DRMを経て出すというような4つがございます。期間的に言いますとこのOCRを使った場合は,OCRに早い遅いはあるんですけれども,ざくっと言いますと2週間ぐらいかかります。さっき言いましたその後の校正は出版社さんにお願いするんでいろんな期間がかかると思います。その後のタグをつけてオーサリングまでというのは大体1週間でできます,というのが制作の工程でございます。
 既刊本を出しましたので次のページ新刊本となります。新刊本ですと今イメージしているものは紙の本と電子書籍を同時に出すということをします。DTPデータというところから分けるんですけれども,今DTPデータはInDesignというソフトウエアを使って,集版ソフトですが,それを使ってページ立てをつくっています。上の方はそのページ立てをつくったものをそのまま判こにして印刷をします。あるいは,PODで1冊ずつ印刷すると。電子書籍の方はこの中間XMLファイルというものに変換しまして,ここでさっき言ったタグをある程度つけます。ある程度というのは,その後,今,実はいろんなフォーマットに自動変換をしています。変換ドライバと書いてありますけれども,それぞれのフォーマット固有のタグは変換ドライバでつけますが,共通のタグは中間XMLファイルのときにつけますという形で,新刊本はできていくという形になります。
 ページ21はそれをまとめたものなのでちょっと飛ばします。
 最後にページ22,今バリューチェーンといいますか,日本の電子出版市場の概要ということで書かせていただいています。著者の方が本を書き出版社さんに許諾をすれば出版社は電子書籍にする手配をし,出版社さんがデジタル化することもありますし,ここにあります電子書籍取次というものが電子化することもありますし,はたまた一番右側の書店が電子化することもございます。いずれにしてもできたものは出版社様,電子書籍取次,それから,書店ということに流れていきます。最後はもちろん読者に流れていきますね。今ちょっと上区分けしましたけれども,上の方,Amazon,Apple,kobo,Google,これは一応海外系ということでちょっとくくってみました。その下が書店系,主なものは紀伊国屋さんkinoppyというサービスがございます。それから,印刷系,BookLiveが凸版でhontoが大日本さんですね。それから,携帯,キャリア系は3キャリアとも書店を持っております。それから,端末メーカー系,ここにはソニーさんの名前を書かしてもらいました。出版様が運営している書店もあります。これは角川さんがやっている書店で,といような人たちが日本の電子出版市場で働いているということになります。
 最後のページですけれども,出版物の流れとともにお金の流れを一応書きました。物の流れはさっき言ったとおりなんですけれども,それに対して読者の方がお金を払うと電子書籍ストア,電子書籍取次,出版社さん,著者という4者でレベニューシェアをするというのがお金の流れでございます。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明につきまして質疑応答を行いたいと思います。まず御質問等ございましたらお願いいたします。小池委員,どうぞ。

【小池委員】 書籍出版協会さんの方の資料1について御質問等をしたいと思うんですが,最初の図書館で本が貸出数が増加していると,これは事実であるのでこれについてはこれで,日本図書館協会調査では昨年は7億冊を超えたということも間違いないことなのでここはここでいいんですけれども,ただ6億6,000万冊が新刊だったというわけではないということはお話ししておかなきゃいけないかなと思っています。当然といえば当然の話なんですけど,例えば私が働いているところで見たときにもいわゆる新刊本,この過去1年間の本がどうのくらい購入され貸し出されているか,それが全体の貸出しの割合の中でどのくらいあるかというのを考えたときには,よく言うロングテールの法則じゃないですけど,5年ぐらい前の本が貸出しの量が正直言ってピークを迎えるんですね。そして新刊本というのはそもそもがそんなに持ってないので,それが全体の貸出しの割合の中で占める割合というのは20%あるかないかとか,ちょっと,今,感覚で申し上げていて申し訳ないんですけど,そういう感じがあります。ですので,仮に6億冊貸出しがあったとすれば,そのうちのいわゆる新刊本というのは20とか30とか,そのくらいの比率じゃないかなと思っています。
 ただ,もちろん再版というか,重版されたものを買い替えという形でも購入していますので,長いいわゆるロングセラーというものも,この貸出しを占めているというのが実態だということですね。ただ,実際には数字が全国的な数字は余り押さえられていないので,これについては今のところ検証はできないと思います。ただ,以前,書協さんと協会の方で取り組んだ調査がありますけれども,それで見ても新刊本を例えば10万部刷ったもののうち図書館が何冊買っているかというのを,推計ですが一度したことがありますけれども,その割合というのはもちろん刷り部数にもよって違ってきちゃうんだと思うんですが,実態としての新刊がどのくらい図書館から借りられているかということについては,決して6億冊とか7億冊ではないということを,ちょっとお話ししておこうかなと思っております。
 それともう一つ質問なんですけれども,7ページのところで「二次出版が他社で行われる場合」というのがありますが,ここで多分商習慣だと思うんですけれども,他社で行われた場合ってここの記述でいくと例えばA社さんが最初の単行本を出して,B社さんが文庫本を出した場合にはA社さんにB社さんがお金を払うって,そういう構造ということですよね。そうだとすれば,著者さんにはお金というのはどういうふうに回っていくのかなというのが,素朴な疑問としてちょっと教えていただければ。

【堀内委員】 A社が最初の単行本を出して,そしてB社から文庫が出るというときにその数%払うというのは,それは最初に単行本を作った出版社に対して,ここに書いてあるとおり著作権とは別個の補償金というような意味合いで払うという慣行ですので,著者の方へのお支払いは大体発行定価の10%掛ける発行部数という通常の著者印税が支払われるものと思います。

【小池委員】 なるほど,素朴な疑問なんですけど,そうすると,B社さんはお二方に払うと,そういうイメージということですかね,最初のもともとの著者さんにも。

【堀内委員】 著者にはもちろん……。

【小池委員】 払われて……。

【堀内委員】 印税をお支払いして。

【小池委員】 あ,分かりました。

【堀内委員】 その上で最初のA社にも,最初につくったところのいろんなものに対して,法的にはどうなのか何ですけれども,お支払いするっていう慣行があります。

【小池委員】 あ,分かりました。ありがとうございます。

【土肥主査】 ほかにいかがでしょうか。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 本日は出版の関係の実情についてヒアリングで御紹介いただきましてありがとうございました。その上であえてややストレートにお伺いしますと,資料2の一番後のページのものが割と見やすい形で,要するにここでは電子書籍に対応した出版権(仮称)というのがペーパーに出ておりますけど,このような権利かどうかも含めてですが,出版に関する権利を与えるとしたらどのような者に与えるのが望ましいか,実情に合うかという点についてであります。著者という横に出版社(コンテンツパートナー)と書いてありまして,ここのボックスに挙がっているもので言いますと電子書籍取次,電子書籍ストア,CPなどいろいろありますが,これは電子書籍の流れだから今後変わることもあり得るのかもしれませんが,どのような立場の者に権利を与えるべきというか,ないしは、与えてほしいかというご希望も含めて、まずお伺いしたというのが1点目であります。
 それから,一番後の資料2のページ24のこの表で言いますと出版社という者はカンパニーですが,コンテンツパートナーというところで内容,この流れの中で行っている作業については、内容チェック,編集,ハイブリッド制作となっているのですが,最初にご説明いただいたのは紙本の方で、資料1でご説明いただいたかと思うのですが,これらの出版社が行う作業の内容というのは紙と電子とでどの程度変わってくるのかというのが2点目であります。以上の2点について,違う立場からかと思いますが、お二人からお聞きできればと思います。

【土肥主査】 それでは,最初に資料をお使いになったのは小林委員のところの資料ですので,小林さんの方からまずお答えいただければ。

【小林委員】 今回そもそもこの会議が電子出版権をどうするかという会議なんですけれども,サブでお話を聞いたところではそれぞれの著者の方の作品をいかにたくさん流通量を増やすという努力をする人が持つべきだと思うんですね。もう一つは違法のものの話が出ましたけれども,こちらもそうですね,違法のものをきちんとたたく人がその権利を持つべきだというふうに思います。今のところ紙の本も含めて出版物が出ますんでその近い人,もちろんそうでなく例えば一般企業で作った本があるとすれば,やはりそこに近くにいる人がそれを持てばいいと思いますし,ただ,企業で作る本よりも出版社さんが出す方が多いですから,ですから,その辺の方が持つのがいいんじゃないかなと思います。

【土肥主査】 堀内委員,いかがですか。

【堀内委員】 今の小林委員と同じように,もちろん著作権者である著者の意向というのがまず第一にありますけれども,そしてそれを形にして流通させる者がそういう権利を持つということが一番いいんじゃないかなと思います。

【土肥主査】 堀内委員のこれですよね,出版物の制作過程というのと,それから,小林委員のお出しになったこの最後の部分ですけれども,いわゆる電磁的な記録に置き換わる部分,つまり従来の出版物の場合だとこの図で言うとどこで電磁的な記録に換わってくるのか。それから,新しいといいますか,電子書籍制作・流通協議会のお作りになったこの表で行くと,今のお話だとどこでも行うというように伺えたわけですが,小林委員のお話だとやっぱり流通量を最大化する,そういう事業者のところに出版権というものを設定してほしいという御趣旨だったと思うんですけれども、それでいいのでしょうか。

【小林委員】 ちょっと1つの例を申し上げますと,昨年ちょっと用がありましてニューヨークに行きました。ニューヨークにいる日本人の方が,僕はビットウエイという電子書籍の流通の仕事をしています。自分は作品を書いたんだけど,誰(だれ)に頼めばいいか分かんないよと,何となく僕は頼まれてしまったんですね。ということは,その著者に対して誰(だれ)が流通拡大を担うかというともしかすると僕かもしれないんですね,私かもしれません。でも,それは実は全体の日本の中で著者の方一杯いらっしゃいますけれども,まれな例だと僕は思っていて一般的にはもう出版社に頼みにいくんだろうなと思いますので,実はその権利を持ち得る人というのはきっと一杯種類としてはあると思いますが,ただ,拡大することを一生懸命やってくれる人が多分その権利を持つんでしょうと思います。

【土肥主査】 私のお尋ねしたここで言うと従来の本の作り方と電子出版の場合と,どこが変わってくるという,どこで電磁的な記録が作成されるのかということはどうでしょうか。

【堀内委員】 済みません,野間委員からちょっと。

【土肥主査】 あ,そうですか,はい。

【野間委員】 今,私ども前回でもお話ししましたけれども,同一タイトルの紙と電子をほぼ同時に出しておりますので,その例で言いますと、この資料にある出版社から校了までの部分というのは全く変わらないところで,それを紙の印刷物として印刷会社さんを通じて作っていただくのか,印刷会社さんでやっていただくケースが多いんですけれども,そこで一緒にデジタルデータを作るのかということです。出来上がってきたものがパッケージ,有体物としての紙なのか,電子書籍として配信できるデータなのかという違いでしかありませんで,その後の広告宣伝であったり,その後の読者対応であったり,そういったところは全く変わるところはありません。現段階ですと,今,既に出したもの,過去の作品などを電子化するということが結構多いんですけれども,そういった場合においては先ほどの小林委員からの説明にあったとおり,OCRで文字の読み取りをやったりですとか、テキストを抽出して打ち出していくというようなことで,そのあたりですと出版社の役割というのは校正・校閲をきちんとやった上で,またその後,広告・宣伝,プロモーション・マーケティングを進めていく,そういったことが役割になります。

【土肥主査】 そうすると,この図で言うと印刷所としてくくってある,そこにおいて行われるということになりますか,この表では。

【野間委員】 印刷……。

【土肥主査】 この表ではそういうことになりませんか。

【野間委員】 自らデータを作ることもありますし,印刷会社さんはじめ製版会社さんにそのデータ作成をお願いすることもありますしという格好になりますけれども。本日は出版の関係の

【土肥主査】 はい,ありがとうございます。ほかに御質問等ございましたら,大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 先ほどの質問は、実は一番お聞きしたかったところなのですが,今言われているようなデータを作り直すとか校正をするというデータ的なものと,あとどういうふうに流していくのかというものの2つあり得るので,これら2つのものの関係をお聞きしたかったのです。これらを両方とも行う者が権利を得るのか,という点であります。また、要するに現在の紙本であったら先ほどあったように,印刷した会社も自力で印刷するかどうか別として,それで自分で流しているわけですけれども,電子になると印刷で売るといういわば静的なものではなくて送信化,公衆送信などの方の話になってくるので,そのようになるとどう変わっていくのかということであります。分かりやすいボックスと思ったのは、コンテンツパートナーと書いてあるこの出版社と,それから,電子書籍取次というかあるいは電子書籍ストアといういろいろプレイヤーが出てくるので,どこまでやった者が今回の権利を得るべきなのかという点について,そのコンテンツを作る側(がわ)の者なのか、流す方の者なのか,あるいは,両方ともやっている者なのかということをお聞きしたかったのです。

【土肥主査】 野間委員,今ので何かお願いできますか。

【野間委員】 それで言いますと我々が現在考えておりますのは出版した出版社とコンテンツパートナーということになります。流通させる者,著者の方から著者の方々と契約を結んで,それで流通させる者という形になると思います。

【土肥主査】 ほかにいかがでしょうか。渋谷委員,どうぞ。

【渋谷委員】 出版社の権利の問題が論じられるようになった始まりの頃(ころ)の状況を思い起こしますと,これは電子出版というものが行われるようになって,既存の出版社の紙本の出版のシェアが食われるんじゃないかと,そういうことで出版業界から声が上がったという,こういう経緯があったように思います。その経緯に立ち返って考えますと,今,野間委員がおっしゃったことに沿う内容になりますけれども,やはり電子書籍出版権のようなものがあるとすれば,それを付与されるのは現行の出版権を持っている出版社に限るべきではないかと私は思います。ボーンデジタル型のコンテンツを配信する業者がいるだろうと思うんですけれども,ボーンデジタル型のコンテンツですね,我々は何となくこれも書籍のようなものだというイメージを持っていますけれども,しかしインターネット上を流れる情報というのは,これはもう等し並にデジタルの情報なんでありまして,書籍に相当するような内容の情報であることもあれば,音であったり,画像であったりすることもあるわけですから,ボーンデジタル型のコンテンツを公衆送信する者に現行の出版権類似の権利を与えるとしますと,ほかの書籍とはみなせないようなデジタル情報を配信する業者にも,みんな同じような権利を与えなければいけなくなり,際限がなくなるんではないかなということを恐れます。
 この会議,二,三か月の間に結論を出さなくちゃいけない。そして出版社の権利を論ずるために招集されている会議だと思いますから,そういうふうに一般的に問題を拡散させる論点とは,ここで論ずるにはふさわしくない問題ではないかと思います。そもそものこの問題の始まりのことを思い起こし,また,今言ったようなからいうと,法理的にどうこうという問題を離れまして,実際的な問題としては現行の紙本を出版している出版社が紙本のシェアを電子書籍によって食われると,それを防止する方策として電子書籍配信権というか,電子書籍出版権みたいなものを認めるという方向が,実際的ではないかなと私は考えております。

【土肥主査】 ありがとうございます。小林委員が報告いただいたのはそういう内容よりも広い話としてなさったようにも伺ったのですけれども,何かありますか。

【小林委員】 最初に,最初の発言のとき申し上げたとおり,ここへ招集したのは,今,渋谷さんがおっしゃったということも言いましたけれども,一般的にやっぱりここで議論するかしないかは置いといて,ダイレクトあるいは電子がボーンデジタルとか,電子が先のものというのは間もなく出てきちゃいますし,それはそのときにもう一回考えればいいといえばそのとおりなので,今回は先ほど渋谷さんがおっしゃったように論点は,そこにあります,おっしゃったとおりのところにありますので,そこで議論をすべきだというのは私もそうです。

【土肥主査】 野間委員,どうぞ。

【野間委員】 渋谷委員から御指摘いただきましたけれども,紙の本が電子に売り上げを食われるから我々権利が欲しいということは全くございません。紙も電子も拡大させていこうというのが基本的なスタンスでございますので,紙がなくなるから,減るから何とか守ってくれということを考えているわけではなく,両方の市場拡大ということをやっていこうと思っています。出版物をどう考えるかということなんですけれども,それは確かにWebサイト上のいろんなものが全(すべ)てが出版物となってしまうとややこしくなってしまうということもありますので,1つの考えとしてはいわゆるISBNコード,これは(いわゆる)出版社ではなくても取得できるコードですので,ISBNコードを付与して流通させるものといったかたちで限定するというような考え方もあるのではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。客体をどうするのかということについては,ページ11のスライドに一番上に新聞があって,雑誌があって,書籍があって,コミックがあって,ブログとかカタログ・資料というふうにありますけれども,この点線の内側というのをお考えであるということですね。つまり逆に言うと個人出版とか同人誌とかブログ,カタログ・資料というものは,これは考えないという整理でよろしいんですかね。

【野間委員】 そこら辺はこれからの議論かと思うんですけれども,そういったものでも例えばブログを紙の本にしてISBNコードを付与して売っているものというのももちろんあるわけですし,どんどんジャンルというのは広くなっていくものだと思いますので,一概には言いづらいんですけれども,結局,何らかの例えば出版物という限定でISBNコードを付与するわけで,現在も書店さんで様々な文房具であったり,もちろんコーヒーもあったり,いろんなものを売っていますけれども,そういったものには付与されないわけです。では、電子書店で電子書籍として売るもの,ISBNコードを振るものって一体どういうものにつけていいのか,いけないのかということをきちんと判断する機関がございますので,例えばそのISBNコードというのは1つの目安になるんではないかなというところまでしか現状申し上げることができません。

【土肥主査】 この話はまだ先につながっていく話でございますので,また先の議論にしたいと思いますけれども,ほかの御質問ございますか。他(ほか)の質問はございませんか。金原委員,どうぞ。

【金原委員】 今,渋谷先生からボーンデジタルのものについてネット上で様々な情報が伝達されているということまでこの権利を広げるかどうかという,そういう御意見というか御質問かなと思いますが,今はそれほどないと思いますが出版でもいずれ取り組んでいくことになると思います。現状では紙媒体で出版されたものが電子になるというのがほとんどのケースだろうと思いますが,非常に近い将来はもう紙ではなくて最初から電子で伝達するという出版物が出てくると思います。問題はネット上で流通しているものが著作物であるかどうかというところが判断基準なんではないかと思います。ネット上で流通しているもので無料で閲覧できるものでも著作物性の高いものはもちろんあると思います。しかし出版社が事業として行うということになると基本的には著作物です。保護期間の終了したものもあるというケースもありますけれども,基本的には著作物を出版物として仕上げて,それに対してそれを作るための投資を行って伝達を図るということですので,そういうものを対象として今回の電子出版権というものを考えていただきたいというのが我々の現在の主張というか要請であります。
 ですから,ポイントとしては著作物であるかどうかということが非常に大きな問題ということだろうと思いますが,あと,それから,ネット上で流通するものが有料なのか無料なのかというのも1つの大きな判断基準だろうと思います。我々出版社も著作物を無料でネット上に公開するというケースもないではない。専門書の領域で言いますとオープンアクセスとか,著作者がその掲載料を支払って流通させるというものもありますので,有料か無料かということが必ずしも無料だから権利がない,権利が要らないということでも必ずしもないと思いますが,そのような判断,有料か無料かということも含めた判断が必要なんではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。少し具体的な話に踏み込んでしまって申し訳ないと思っておるんですけれども,具体的な話については,この後,意見交換をしたいと思っておりますので,まずこの段階では実態について2つの団体に御報告,ヒアリングをしていただきましたので,一応,その御報告については,ヒアリングについてはここで1回締めさせていただいて,この後の議論の中で小林様,堀内様の両委員にも御発言いただければと思います。
 それでは,2の「電子書籍に対応した出版権の整備」というのに具体的に入っていきたいと思うんですが,まずは法的論点の議論に入りたいと思います。「電子書籍に対応した出版権の整備」の議論に入るに当たり,まず事務局において考えられる法的論点の例をまとめていただいておりますので,これについて事務局から説明をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,資料3に基づきまして「電子書籍に対応した出版権」の整備に係る法的論点の例について御説明をさせていただければと思います。資料3をごらんください。前回の本小委員会におきましては,出版者への権利付与等についての4つの方策をお示しさせていただいて,その4つの方策のうち,(B)としておりましたけれども,電子書籍に対応した出版権の整備について,まずは議論の軸として検討を進めていくということになっておりました。この資料3は,その電子書籍に対応した出版権の整備について,検討する際に検討が必要となると考えられる法的な論点の例を記載させていただいたものでございます。また※印として書かせていただいておるところでございますが,電子書籍に対応した出版権ということにつきましては,これまで金子委員でありますとか,吉村委員から御説明がございましたように,具体的な提言が複数出されておりますが,この資料ではこれらをまとめてこの「電子書籍に対応した出版権」というふうに記載をさせていただいておりますので御承知おきいただければと思います。
 それでは,御説明に入りたいと思います。まず1ポツでございます。「電子書籍に対応した出版権」の位置付けということで,現行の出版権と「電子書籍に対応した出版権」の関係が論点になろうかと思います。具体的には,電子書籍に対応するため現行の出版権を拡張するということなのか,現行出版権のほかに例えば電子出版権なるものを創設するというのか,そういった問題でございまして,著作権法の中で全体としてどのように位置付けるのか,どのように整理をするのかという問題だと理解をしてございます。
 次に2ポツでございますが,先ほども少し議論になっていたところかと思いますが,権利の主体・客体ということで,「電子書籍に対応した出版権」の設定を受ける主体の範囲,すなわち誰(だれ)が権利者となり得るのかということ,そして「電子書籍に対応した出版権」の設定の対象となる客体の範囲,すなわち権利の対象物となる電子書籍等とは一体何なのかということが問題になろうかと思います。
 次に3ポツの権利の内容でございますが,「電子書籍に対応した出版権」の権利の内容としてどのような権利が必要になるのか。更にこれまでも議論になってございますが,金子委員より御説明のありました,対象を特定の版面に限定した権利の付与の是非,これについても議論になろうとか思います。
 4ポツはサブライセンスについてでございますが,電子書籍のみならず紙の出版物の出版も含めて,サブライセンスの取扱いをどうするのかということについて,議論になろうかと思います。また,サブライセンスを認めるという場合には,著作権者の関与の在り方について,どのように考えるのかということが議論になろうかと思っております。
 そして5ポツ,出版権者の義務についてでございますが,現行の出版権では原稿の引渡しを受けてからの出版の義務でありますとか,継続出版義務が規定されておりますが,「電子書籍に対応した出版権」についての義務の在り方がどういうふうにあるべきかということは論点になろうかと思います。また,あわせて紙の出版物についての出版権者の義務の見直しの要否についても議論になろうかと思います。
 6ポツの出版権の消滅請求についてでございますが,先ほどの出版の義務に関係してきますけれども,紙の出版物に係る出版権の消滅請求と「電子書籍に対応した出版権」の消滅請求の関係が論点になろうかと思います。
 最後に,その他といたしまして,「電子書籍に対応した出版権」の存続期間や「電子書籍に対応した出版権」の制限規定の在り方,それから,登録制度などによる権利関係の明確性の確保の在り方などが論点になろうかと思っております。
 事務局からは以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,法的論点例の(案)につきまして意見交換に入りたいと思います。御紹介にありましたように飽くまで法的論点の例ということで,各論点の更に細かな論点については今後の検討の中で個別の論点として取り上げていくことになろうと思いますが,まずは大きな枠組みとして本小委員会において検討すべき論点は,この記載されているところで必要にして十分なのかどうか,そういったことについて御意見がいただければと存じます。どうぞ御自由にお願いいたします。どうぞ,瀬尾委員。

【瀬尾委員】 一番最初に,今,非常に重要な論点が幾つか出てきていると思うんですけど,私はちょっと出版さんにお伺いしたいのは,電子書籍というふうに書いてあって何となく分かってしまうような気がするんですが,実際の今回の権利の拡張に関して,電子書籍の定義というものについて前から幾つかお話が出ていたかと思うんですけれども,どういうふうなものをまず電子書籍という範疇に含めているのか,これについての御意見をまずお伺いした上で絞っていかないと厳しいのかなと思いますので,まずどういったものを電子書籍として定義されているのかについてお伺いしいたいと思います。

【土肥主査】 ちょっと時間がかかったところを見ると,それをここで議論するようにという趣旨であろうと思うんですけれどもね。

【瀬尾委員】 まず出版さんの御意見を聞いてみたいと思います。

【土肥主査】 はい,じゃ,金原委員。

【金原委員】 非常に基本的かつ重要な御質問かと思いますが,これはもう御承知のとおり現在の出版権は紙媒体の出版物に対して権利を設定できるという趣旨で作られているわけであります。出版物が一体どういう形で流通しているか,あるいは発行されて流通しているかということになると,現在は紙にインクを乗せるという従来型の出版物に加えて,電子があります。電子についても様々な媒体がありまして,例えばDVDであるとかCD-ROMであるとか,あるいは最近はUSBもかなり許容量が大きいですから,そこにコンテンツを入れるということもあるのかもしれません。そういうふうないわゆるパッケージ型のものと,それから,ネット型のものと大きく分けて2つあると思いますが,我々としてはこのいずれもというか,両方とも電子出版物であるというふうに考えております。
 したがって,じゃ,この電子書籍というのをどう位置付けるかということですが,電子的な手法によってコンテンツを入手できる,やはり電子的な手法ですね,特定の媒体に記憶された情報を電子的な手法によって人間が知覚するものではないかと。つまり紙は目から,目で見ることによって,紙というものに印刷されたものを目で見てそれを知覚するわけですけれども,電子書籍というのはやはり目で見る。そこは変わりないわけですが,紙ではなくて紙以外の電子的な媒体に記憶されたコンテンツが発行されたものという定義ではないかと思います。その上で,じゃ,書籍とここで書いてあるんですが,いわゆる出版物のことをいろいろ呼び方がありまして,我々出版界では書籍と雑誌というのをまず2つに大きく分けております。単行本と定期刊行物という2つの分け方をする場合もありますけれども,ここで言うところの書籍というのは当然のことながら出版物全体を指すべきである。つまり書籍も雑誌も,それから,新聞もきょう委員として御出席ですが,新聞も立派な出版物でありますのでそういうものを含めて考えるべきではないかなと思います。つまり媒体としては電子的な手法によって初めてコンテンツが入手できるようなそういう媒体に記憶されたものであって,目で見ることについては変わりない。じゃ,その形の問題ですが書籍も雑誌もつまり文字あるいは画像を,記憶してあるもの全(すべ)てというふうに考えるべきではないかなと思います。

【土肥主査】 ありがとうございます。じゃ,菊地さんお願いします。

【菊地著作権課課長補佐】 すみません,事務局から1点だけ補足をさせていただきます。この資料3の中で「電子書籍」と書かせていただいているこの言葉には,特に私どもからこういったものを念頭に置いているというものは,ございません。今,瀬尾委員から御指摘いただいた電子書籍の定義というものは,まさにこれから非常に重要な議論になるところだと思っておりまして,資料4としてもまた後ほど時間をいただけるようであれば御説明させていただきますが,権利の客体として,何が電子書籍等として考えられるのかということを,まさにこの場で御議論いただきたいと思っておりますので一言補足させていただきます。以上です。

【土肥主査】 恐らくそういうことだと思っております。これは括弧付きでもございますので。ほかにそもそも,今,現在御意見を頂戴(ちょうだい)したいと思っておりますのは,大枠として議論の論点として,細かいのは別ですけれども,大枠として大体こういうところを想定しておいてよろしいかどうかということでございます。この点はよろしいですか。

【萩原委員】 済みません。

【土肥主査】 どうぞ,萩原委員。

【萩原委員】 大きくは権利の客体の話の範疇に入るのではないかとは思うのですけれども,普通,書籍というのを想定しますと単行本1冊で全(すべ)て完結しているというものが頭に浮かぶんですが,漫画雑誌のようにいろんな話が入っているものがある。そうしたときにその一部分に当たるある一話の漫画,これも1冊丸ごと複製するという形ではなくて,その部分だけを複製するという,その出版権の範囲というのでしょうか。そういうものも客体のところでしっかり議論していただければなというように思います。

【土肥主査】 恐らくこの後,問題になるんだと思うんですけれども,利活用を進めるというものと海賊版に対応してどういう手当をしておくかという2つ,両方あるものですから,今,萩原委員のおっしゃったところは十分今後念頭に置いて進めさせていただきたいと思っています。一応,大枠はこれでよろしいですね。。

【福王寺委員】 よろしいですか。

【土肥主査】 どうぞ。

【福王寺委員】 今,御説明があった中で電子書籍のフォーマットについては,EPUBということが国際標準になっているということをお聞きしました。そういった中で電子書籍について,海外のそれぞれの国の状況ですね。作家と出版社がどんな契約をしてどんな利益配分になっているのか。今,ドイツ,フランス,イギリス,アメリカと主だった国がございますけれども,その中で実際どういうふうになっているかということを,お忙しいと思いますが文化庁著作権課で調査していただいて発表していただいた方がよろしいかと思います。日本国内だけの問題ではないと思いますし,実際,様々な作品,コンテンツが世界中を流通しているわけですから,例えばフランスでどういうふうになっているかということを綿密に調査していただきたいと思います。フランスでは1920年にもう既に追及権(Resale Right)が出来上がっておりますし,作家という権利者を大事にしている国だと思います。
 また,いつも気になるところでは,日本における著作権の状況が流通と経済的効果ばかりが優先されているような感じがいたします。実際に弱い権利者もいるわけですね。もちろん強い権利者もいて弱い権利者もいる。また,大きな出版社もあれば小さな出版社もある。それぞれの立場で著作権についての考え方やその打合せの習慣が違うと思います。そういった実態をある程度調査していただかないと,この会議の進め方やいずれ出る結論についても流通と経済的効果ばかりが優先されていくような形になってしまいます。あと1つ,気になるところは,先日,金子委員から海賊版対策と利用許諾の促進は,表裏一体のものという説明がありましたが,それについてはどう考えても論理的にも無理があるんじゃないかなと思いました。この会議の中委員や出席者について,作家の権利者の方が少ないように思います。この出版関連小委員会に作家の委員を増やしていただきたいと思いますし,作家の意見というものも大事にしていただきたいと思います。【土肥主査】  福王寺委員の御要望なんですけれども,調査というのも割合決められたというか,限られた時間の中で検討するといたしますと,どの程度海外の事情の調査というのができるのかどうか。出版小委で考えるのか,あるいは基本問題あたりのところで別の委員会が何をするのか私は全然知りませんけれども,福王寺委員がおっしゃっておられるところはもうちょっと広い話で,基本問題にもつながるようなことなのかなと伺いました。ここで出版小委の議論のその中において事務局から報告があるかどうかは,ちょっとこれは私も事務局にお願いしづらいところがございますが,何か一応御要望が出ておりますので事務局からお答えいただけますか。

【菊地著作権課課長補佐】 今の御要望につきまして,どこまできるのかということもございますが,例えば出版者の権利であるとか出版契約に関連して諸外国の状況がどうなっているのかということは,机上に置かせていただいておりますような調査研究を過去にしたものがございます。今後,議論を進めていく中で,当然ながら諸外国の状況を視野に入れる必要がありますが,どういうものを資料としてお出しできるのかということについては,主査とも相談させていただきながら対応させていただければ有り難いと思っております。

【土肥主査】 細かい問題については,今後,適宜対応するようにいたしますけれども,一応大枠としてはこのあたりで議論を始めたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,残る時間で事務局から先ほどお話ありましたけれども,「電子書籍に対応した出版権」の整理に係る法的論点の中で,権利の主体及び客体についての議論が行われるのではないかなと思います。資料3の法的論点の例では「電子書籍に対応した出版権」の位置付けが最初に挙げられておりますけれども,この論点は全般に関係する問題でもございます。権利の主体・客体や権利の内容,出版権者の義務等の各論を議論してからの方が議論しやすいのではないかと思いますので,まずは権利の主体・客体から議論をさせていただければと思います。そこで「電子書籍に対応した出版権」の主体及び客体について,この点事務局から資料が出ておりますのでこの説明をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,資料4に基づきまして権利の主体・客体について御説明をさせていただきます。先ほど来もう既に具体的な議論に入っている部分もあったのではないかと思いますけれども,まず現行法での考え方について説明をさせていただきました上で,御議論いただきたいと思う点を簡単に御説明させていただけれと思います。
 まず1ポツの「権利の主体」についてでございます。現行法第79条第1項,2枚目に参照条文をつけておりますが,第79条第1項では,複製権者がその著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し,出版権を設定することができるとされてございまして,現行の出版権の主体は(1)として記載しておりますように,著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者ということになろうかと思います。ここでそれぞれ用いられております文言の意味につきましては,点線の枠で囲っておりますけれども,〔1〕の「文書又は図画」,〔2〕の「出版」,〔3〕「引き受ける者」について著作権法上に定義が規定されているわけではございませんので,参考といたしまして『著作権法逐条講義』における説明の要旨を記載させていただいております。
 まず〔1〕「文書又は図画」についてでございますが,この文言については,「著作物を文字・記号・象形等を用いて有体物の上に直接再現させたもの」とされてございまして,視覚的固定物や聴覚的固定物は含まれないということとされてございます。また,〔2〕の「出版」とは,「著作物を文書又は図画として複製し,その複製物を刊行物として発売・頒布すること」とされてございます。更に〔3〕の出版を引き受ける者に関連して「出版権者」となり得るのはと書いてございますが,「自ら出版することを予定し,かつその能力を有する者」とされてございまして,複製権者と出版者との中間にあって出版契約を仲介したり代理したりする性格の者が出版権者となり得るわけではないとされてございます。次に(2)で「紙の出版物及び電子書籍等の配信における実態」と書かせていただいておりますが,本日のヒアリング内容や配付されております資料を御参照いただきながら御議論いただければと思います。そして(3)の「検討事項」といたしまして書かせていただいておりますのは,「電子書籍に対応した出版権」の設定を受ける主体の範囲となる者は誰(だれ)なのかということでございます。これも先ほど御議論が少しありましたので,それを更に御議論いただければと思っております。
 次に2ポツの「権利の客体」についてでございますが,客体を明確に規定しているというわけではございませんけれども,著作権法の第80条,出版権の内容について定めております第80条第1項では,出版権者が「著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する」ということとされておりますことから,出版権の客体としては,この2ポツの(1)に記載しておりますように「印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製」されたものと考えられるのではないかと思います。この〔4〕につきましては,点線の中にありますように手写しや手書きでの複製は対象外という趣旨でございまして,また〔5〕の「文書又は図画」については,上の方の点線の枠内で〔1〕として書いてございますように文字・記号・象形等を用いて有体物の上に直接再現したものということになろうかと思います。
 (2)につきましては先ほどと同様ですので省略をさせていただきまして,(3)の検討事項といたしましては,先ほど来既に議論が出ているところでございますが,この「電子書籍に対応した出版権」の設定の対象となる客体の範囲について,恐らく紙の出版物を単に電子化しているようなものに加えて,ここに列記しておりますようなものが客体として認められるのかどうか,入れるのかどうかということが御議論になろうかと思います。具体的には電子的な文書又は図画のうち,ホームページやブログ,メールマガジンのような形で提供されているようなものも対象とするのかどうか,また電子的な文書又は図画のみならず音楽や映像等を含むいわゆるリッチコンテンツと呼ばれるものの扱いをどう考えるのか,更に音楽や映像のみで提供されているような場合をどのように考えるのか,最後にCD-ROMやDVD等の記録媒体によって提供されているものをどのように考えるのかということが御議論になろうかと思います。
 事務局から資料4についての説明は以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,意見交換に移りたいと思います。意見交換に当たっては先ほど紙の出版物や電子書籍の実態についてヒアリングを頂戴(ちょうだい)したわけですけれども,その内容も参考に御議論いただければと思います。また,堀内委員,小林委員には実態を踏まえて更に教えていただきたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 それから,前回の本小委員会において委員から御指摘がございましたように,海賊版対策のためという観点からの御意見なのか,あるいは電子書籍の流通促進のためという観点からの御意見なのか,もし可能であればそういうことも意識して御発言をいただければと思います。それでは,御意見・御発言ございましたらどうぞ。前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 資料4についての今の事務局の御説明に対する御質問をさせていただきたいと思うんですが。

【土肥主査】 はい,どうぞ。

【前田(哲)委員】 この1ポツの(1)の中で『著作権法逐条講義』の文書又は図画の定義を掲げていただいているのですが,この文書又は図画の定義の中には「有体物の上に直接再現されたもの」という要件を含んでいるわけでございますけれども,2ポツの(3)の中でおっしゃっている文書又は図画というのは,有体物の上に直接再現させたものという要件は含まないということですね。そう理解しないと,およそ電子書籍的なものというのは有体物の上に直接再現されたものではないことになると思いますので。

【土肥主査】 菊地さん,どうぞ。

【菊地著作権課課長補佐】 前田委員おっしゃるとおりでございまして,下の2ポツの(3)で言っている電子的な文書又は図画というところについては,法令の説明のように,上の〔1〕として説明してあるような,有体物の上に直接再現されたというところまで言ってしまうとちょっとおかしいことになってしまいますので,単に文書であるとか,図・写真であるとか,画像といったものがここでは念頭に置かれているというふうに御理解いただければ有り難いと思います。

【土肥主査】 ほかに御意見・御質問ございましたら。渋谷委員,どうぞ。

【渋谷委員】 「電子書籍に対応した出版権」の客体ですね,形式的な基準で決めるのがいいと思います。著作物であるかどうかとか,文化的に意義を有する情報であるかどうかというような実体的な基準を持ち出しますと,これはもう結論が出てこないわけです。出てこないから全部裁判に回ってしまう。ですから,基準としては形式的な方がいいと私は思いますね。少し前に野間委員が御発言になりましたけれども,ISBNコードがついているような情報ですね,これは文字情報として出版される情報なわけですけれども,そういうものに限ると。つまり私は出版社に「電子書籍に対応した出版権」を与えておけばいいということを冒頭で申しましたが,そういう観点からしますと客体もそういった形式的な基準で切っていくのがよいのではないか。法律具体的な妥当性を求める側面と物事をはっきりと割り切って法的な安定性を求める側面と2つありますけれども,この場合,私が申し上げているのは法的安定性を尊重する方がよろしいのではないかなと,そういうことでございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかに御意見・御発言ございましたらお願いいたします。瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】 先ほどのお話からの多分続きになるかと思うんですけれども,今回の話で出版社さんに新たな権利を付与するかどうかという議論だとする。そのときに,じゃあ,これをもっともっと権利者をこれまでの出版社さんの定義とか,その与える範囲というのをもっと広げたいという意向があるのかというと,私はそれはちょっと今までのところ余りそういう要望はなかったんではないかと思います。つまりこれまでの出版社さんと呼ばれていた方たちに新たにこれまで出版物と呼ばれていた対象に対して,より電子化に対応した権利を与えるという非常にシンプルな形の要望じゃないのかなと私は思っているんですが,これで例えば電子書籍の定義をどうするかとか,例えば出版社さんという定義をどうするかとか,より広い範囲のどこまで今度の対象になるとかをどんどん広げていってしまうと本当に拡散してしまうので,単純にこれまでの定義の上に乗っかった権利の拡張ということを考えていくと非常に分かりやすいんじゃないかと思うんです。私はそれがよろしいかなというふうに思っていますが,ちょっと経団連さんにお伺いしたいんですけど,今回の出版権の提案の中でより広く新しい参入された新規ベンチャー企業等が,こういう権利をごんごんとっていくこということについて要望が含まれているんだとするとまた別の話になるので,そこのところについてはお伺いしたいと思いますが,一応私は今回のこれについては今のような意見を申し上げます。

【吉村委員】 今回のこの小委員会で議論できる範囲がどこまでかという話は別にして,我々の考え方だけを申し上げれば,我々は電子書籍を出版するのは既存の出版社だけではないと思っており、むしろ既存の出版社でも電子書籍を本気でやるところは少ないのではないか,今後は新しい電子書籍の出版だけを行いたい企業がますます出てくるのではないか,と考えています。今,本として見られるコンテンツと電子書籍の画面上で見られるコンテンツが同じものである前提でしか話ができてないために,既存の出版社の権利を電子書籍に拡張させればそれでいいのではないかという方向に議論が流れている気がするのですが,私は、本として見られるコンテンツと電子書籍の画面上で見られるコンテンツは、事実もう既に違うものになりつつあると思っています。先ほどのご説明の中でリフロー型といった話がありました。このタイプは、いわゆる「版面」のイメージに近いと思われるフィックス型とは違う形式です。私どもといたしましては「版面」という言葉は使いたくありませんが。また,漫画についてはフィックス型が基本とのご説明はありましたが,既にフィックス型でない漫画も出てきているのではないかと思いますし,今後さらにもう少し違う形の進化を電子の画面上で遂げるのではないかという気もします。今回のこの小委員会でどこまで議論するのか,その後続けるのか,といったこととも関係してくるとは思いますが、私どもといたしましては、既存の出版社に電子書籍に関する権利を与えるという議論だけでは不十分だと思っております。

【土肥主査】 渋谷委員,どうぞ。

【渋谷委員】 経団連さんのような意見があるだろうということは予測していたわけですけれども,いわゆる電子書籍だけを出版する人たちの保護というのはまずは契約でやってもらうしかないんじゃないかと思うんですね。著作権者から許諾をもらってまずは電子書籍を公衆送信する権利を契約上得て,あと侵害だどうだという問題が生じてきたときは,これも著作権を譲り受ければその著作権を行使すればよいわけですね。諸外国では出版社は著作権者から著作権を譲り受けて侵害に対応できるというようなところもあるようです。そうしますと,以前から出版業界の方からよく聞くことなんですけれども,著作者との間がぎくしゃくしてしまうと,我が国ではとても著作者,著作権者から権利を譲り受けるなんていうことはできませんと,そうおっしゃるんですが,ただ,著作権の譲渡というのも本物の譲渡ではないわけで,これは信託譲渡ですよ。権利侵害があったときにこの権利を主張するということを内容とする信託的な内容の譲渡ですから,本当に丸々権利を譲渡しちゃってもう著作権者あと何も言えなくなるというものではないわけですから,ボーンデジタルの配信業者が利用権を取得して自分の利益を守るには,そういった著作権の信託譲渡を受けて,それで自力で自分の利益を保護するという努力をしてみる必要があるんじゃないかなと。
 新しいビジネスモデルを起こすわけですから,そういう努力を払うことは当然なされてしかるべきことではないかなと。まだどうなるか分からないビジネスモデルについて,国が法律で手取り足取り全部保護してあげますよ,これ全(すべ)て予測に基づく保護になるわけで,その保護が適切かどうかも分からないですから,そういう保護を国の方で用意してやる必要まではない。当面は契約でやってもらうと,それでどうしても不都合があるところが出てくれば国が公権的に手を差し伸べると,そういう順序になるんではないかなと思いますから,経団連さんの御意見はよく分かるんですが,直ちに,だから,法律でどうということにはなりそうもないということです。

【吉村委員】 よろしいですか。

【土肥主査】 はい,どうぞ。

【吉村委員】 今のお話は,既存の出版社と作家の人たちの間で100%契約ができている前提で、新規参入者に同様の努力を求めておられるようにも聞こえます。契約の実態については初回でも議論になったと思います。私も本当のところを知りたいところであり,いろいろな方にお話を聞くのですが,いろいろなご意見がございます。さきほどご報告いただいた書協の調査でも示されているように、100%契約できているという実態はないと理解しています。もちろんジャンル等によって状況は全然違っていて,100%近く契約できている分野もあることは理解しているつもりです。先ほどの先生のお話に出てきた「契約でいいではないか」という考え方自体は,確かにそのとおりだと私どもも基本的に思っております。契約がしっかりでき,それでビジネスが回るのであれば,もちろんいいと思いますし、是非やっていただきたいと思います。但し、その際は、既存の出版社さんであっても,新規参入者であっても同じ条件であるべきだと考えます。
 他方,いろいろ伺ってみると,すぐさま契約のみとすることは,なかなか現実的でないようです。そうであるとすれば,何らかの方策を考えなければなりません。そこで我々もない知恵を絞って,契約促進につながるかたちでの,新しい時代に対応した権利の創設を,ポジティブな意味合いで提言させていただいたつもりです。
 出版関連ビジネスの実態について必ずしも全て承知しているわけではありませんので,「それは違う」というご指摘があれば,この機会に是非勉強させていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【土肥主査】 松田委員,どうぞ。

【松田委員】 ここで,今,議論出てきたのは既存の出版社という言葉と,それから,ISBNを付するような出版物ということがありました。この内容は,余りはっきりしませんけれども,客体ないしは主体の限定をしようということであれば,著作権法は,そういう枠組みを持った法律ではないと考えます。著作権法は,同じことをしたら同権利が生じるようにしてあげなければならない法律だろうと考えます。だから,私は既存の出版社じゃない人が電子書籍の関係において例えばサービスプロバイダーが出版系の事業を設定して,電子書籍を業務をやるというふうにやったら,それは同じように権利を付与されるような土台をつくってあげきゃいけない,私はそこからスタートすべきだろうと思っています。

【土肥主査】 河村委員,どうぞ。

【河村委員】 まずは渋谷委員が前のパートのところでおっしゃっていた紙の出版権を持っているところが,電子出版の権利を持つべきだという意見には反対です。著作者の方がその方に出版してほしいと思って出版の契約をすることで発生する出版権を電子出版にも広げましょうということであれば,どんな会社であれ,著作者の方がそこに電子出版をしてほしいと思ったところと契約をなさればいいことだと思うので,紙の出版の権利を持っている方に電子出版もやってほしいとなれば、当然それでいいですけれども,必ずそうでなきゃいけないということには反対です。よく分からないのですが,紙の本を出版している会社と限定しますと,電子出版の契約を紙の出版権を持つところがしないとおっしゃったらどうするのでしょうか。私は著作者の方がここにお願いしたいという会社と契約をし,それがどのような者であれ同等な内容の権利が発生するということが良いと思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。じゃ,瀬尾委員。

【瀬尾委員】 ちょっと私の意見誤解されているかもしれないと思って補足させていただきます。旧来の出版社さんだけに与えるとかいう枠組みではなくて,定義をこれまでの出版社さんに与えられていた定義とか,そういったものをそんなに広げない方がいいんじゃないかということでお話ししただけであって,当然これまでの出版社さんと同じような業務をほかのところがやれば,当然その権利は与えられるでしょうし,ただ,対象物を音楽とかいろいろなマルチメディアに広げたりとか,例えば出版社の定義を広げていくともうどうにもならなくなるから,そこを絞ったらいいということを申し上げただけであって,旧来の出版社さんのみのテリトリーを守りましょうとかいう話ではない。ただ,定義としてこれまでの出版社という定義,それから,出版物の定義という部分を今回は逸脱しない範囲で議論をしていかないと,この(3)の検討事項の下にあるようにリッチコンテンツ,マルチメディアコンテンツみたいな形に広げていくと,これは議論が収拾できなくなるということを申し上げたんであって,決して出版社さん権益を守るために発言したわけでは全くないので,そこはちょっと誤解のないようにお願いしたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。野間委員,どうぞ。

【野間委員】 私も今の瀬尾さんの御意見に賛成でございまして,我々もボーンデジタルといわれるものを既にやっています。つまり著者の方と契約を結んでボーンデジタルで出版物を出すということをやっています。それがきちんと著者の方と契約を結んでいるにもかかわらず,それに権利が与えられないという形になるのは,それはそれで困りますので,別に紙と既存の出版社の既得権益,そもそも既存の出版社の定義自体が分からないんですけれども,我々はその既得権益を保護してほしいために権利を主張しているわけではございませんので是非御理解をしていただきたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 流通やっていますんで流通の実態だけちょっとお話ししておきたくて,今既に既存の出版社を通じないでボーンデジタルをやっている人がいて,既に5万,こっちはダウンロードといいますけれども,数万のダウンロードをもう得て読者をたくさん持ってやっている著者の方もいらっしゃるんですね。ですから,紙だけのことではなくてもうすぐそこまでデジタルだけとか,デジタル中心というのがもう来ていますんで,ここで決める法律が多分来年の国会の法制化で,その頃(ころ)にはもうそうなっているかもしれないんですね。ですから,ちょっとそれを意識すべきではないかなというのは私は思います。以上です。

【土肥主査】 権利の主体に関して現在規定があるように出版することを引き受ける者というふうになっておるわけでございまして,出版をすることを引き受ける者について例えば団体商標とか,地域団体商標のように更に何らかの主体要件を絞り込むというのは,それを少し難しいんではないかなと,私もそのように御意見を伺っておって思うところでございますが,客体についてはどうでしょうか。客体,つまりこの電子出版というんですかね,電子書籍の客体としてどこまで考えておくのがいいのか,この点はいかがでしょうか。基本的に引き受ける者が電子出版を引き受けるということであれば,紙だろうとボーンデジタルですか,そういうものであろうと全(すべ)てだという御意見も出ておりますけれども。

【野間委員】 じゃ,よろしいでしょうか。

【土肥主査】 はい,どうぞ。

【野間委員】 先ほど萩原委員もおっしゃられた,では,漫画の1話はどうするんだと。今一話ごとのばら売りというようなことをやることもありますし,そういった意味では紙では一話でばら売りということはできませんが,電子では一話でばら売りということもできます。この部分は、出版権を拡張するというところでどうなるのかなというのがあります。あとこれも疑問のひとつで,どなたに質問していいのか分からないんですけれども,これは侵害対策というところで申し上げますと,このケースは国内で非常に多いんですが,私どもは『FRIDAY』という雑誌を持っておりまして,その記事・写真というのが非常にインターネット上にスキャンされてアップロードされることが多いんですけれども,これを例えば記事を書いた方と契約を結ぶ,写真を撮られた方と契約を結ぶ,そういったときに出版権などは及ぶのかどうか。そのあたりは実態としてそういうことが起きているということを御報告させていただきまして,是非考えていただきたいなと思うんですけれども。

【土肥主査】 何か御意見ございますでしょうか。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 若干話が前後してしまいますが,主体の方についても発言してもよろしいでしょうか。

【土肥主査】 はい,どうぞ。

【金子委員】 主体についてこれは我々の提言を必ずしも前提としないで私の委員としての意見として申し上げれば,恐らく出版することを引き受ける者というのに該当するかどうかということよりは,後の方での継続出版義務等の義務の内容及び出版権の対象となる行為の内容によって,それが基本的には重要な要素となり,それについて著作者がある特定の主体に対してその権利,出版権を設定してよいと考えている場合には,それを1項の定義の主体に該当しないからといって無効にするということは,基本的には認める必要はないのではないかと思います。そういった意味では,主体について法律上の定義としてどういうことを置くのかということは,むしろそのほかの権利義務関係やどういった行為を対象とするのかのところで議論をすべきことであろうと思います。ただ,他方でここまで議論された中には今回の審議会での議論の内容をどういったものに対象を限定するのかという議論もあるかと思うんですが,それはまた別の視点で必要なことであろうと思います。定義としてで,その上で定義については基本的には著作者がそれを望んでいる場合には,主体として法律上限定を置く必要は特にないのではないかと考えております。

【土肥主査】 大渕委員の前に松田委員が手を挙げられたと思ったんですが違いましたっけ。じゃ,お願いします。

【松田委員】 客体についての意見はあるかということでありましたので,考えていることを整理させていただきたいと思いますが,この79条と80条を考えますと,資料4の一番下の幾つかの例が挙がっているところ,この両条における出版に該当するかどうかだけを考えるとすれば,現行法上ぎりぎりどこまでが出版と言えるかどうかということであります。CD-ROM,DVD等の記録媒体によって提供されるものも出版に当たるというふうに考えております。そもそも出版という概念は複製と頒布,支分権的に言うなら複製と頒布をする者というふうに私は考えております。それから,80条である印刷その他の機械的又は化学的方法というふうに書いてありますが,これは決して電子的な方法によって文字を写し出すことがこれに当たらないとは考えるべきではないと思います。その他の機械的方法に十分入るものではないかと思っております。したがいまして,音だとか,それから,動画として固定したものを複製・頒布することは出版ではないが,文字として再生するないしは固定した図画として再生するCD-ROM・DVD等の記録媒体の複製・頒布は出版に当たるというふうに考えております。

【土肥主査】 ありがとうございました。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 ちょっと先ほど主体のところは出版することを引き受ける者であろうということで,それ自体は余り異論ないと思うんですが,恐らくそこ自体よりは出版自体が現行法だと参考で〔2〕で書かれているとおり,出版とは著作物を複製し販売・頒布するという紙本的なものの出版なんで,今後これを出版をどこまで広げるかというところが,恐らくあと広げるか広げないかというところが,出版することを引き受ける者自体はさほど余りこれからバリエーションないと思うんですが,出版をどこまで入れるかというところで,まさしく今度また逆転しますけど,権利の客体でCD-ROM・DVDのパッケージ的なものが電子出版だというのか,それに加えて配信的なものかというのを区別しないと,そういう意味では主体を考えるに当たってもこの電子書籍の定義って一番つらいところに当たってきますけど,そこをある程度固めてそれぞれ,最後,権利もさっき飛ばしましたが,全体の関係,現行との関係というのも要するにある程度区分けして細かくしてみないと,どういうものが現行の出版権でない今後やろうとしているものかがはっきりしないとその関係も現れてきませんので,そういう意味ではある程度今までさらっと済ませた出版といってもいろいろ人によって内容が違ってくるんで,そこはある程度念頭に置きながら議論がかみ合うようにしていく必要があるんじゃないかなと思っています。

【土肥主査】 先ほど申しました出版することを引き受ける者ということなんですけれども,もちろん立法論をここでやっているわけですから,出版というのは現行法上言う出版という意味では決してありません。それはこれから先,議論があるところだろうと思いますが,例えば音のような,そういう視覚では認識できないようなものについてまで考えていくのかどうか,そのことは大きな問題ではないかなと思っております。
 実はお約束をした時間が来てしまいました。19:00になりましたのでやはりここで本日の委員会は閉じさせ頂こうかなと思っておりますけれども,よろしいでしょうか。また,次回,今月もう一回ございますので,そこでも更に議論を続けていければと,これからどんどん佳境に入っていこうかと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 本日はありがとうございました。次回の出版関連小委員会は,6月24日(月)の17:00から,一橋講堂の2階の会議場において開催する予定でございます。以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会出版関連小委員会の第3回を終了させていただきます。本日は熱心な御議論をありがとうございました。

―― 了 ――

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