議事録

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第5回)

日時:
平成25年7月5日(金)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館 阿蘇の間
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)「特定の版面」に対象を限定した権利の付与について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【土肥主査】 定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第5回)を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
 まず,前回の本小委員会以降に,委員の交代及び事務局の人事異動があったようでございますので,この点,御報告をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 まず,委員に交代がございましたので,御紹介をさせていただきたいと思います。
 日本美術著作権連合の,あんびるやすこ委員でございます。

【あんびる委員】 美術著作権連合からまいりました。福王寺先生に代わりまして今回からお世話になることになりました。至りませんが,よろしくお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 次に,事務局の人事異動を御報告申し上げます。
 7月1日付けで文化庁長官官房著作権課長に着任しております,森孝之でございます。

【森著作権課長】 森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されております議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴を頂くことといたします。
 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下半分をごらんください。まず資料1といたしまして,「『特定の版面』に対象を限定した権利について」という資料をお配りしております。また資料2といたしまして,日本複製権センターより御提出いただきました資料をお配りしております。それから資料3から資料7までにつきましては,それぞれ議事次第に記載の団体の委員より御提出のございました資料をお配りしております。それから資料8につきましては,「電子書籍に対応した出版権を整備した場合の構成について」という資料をお配りしております。
 このほか,参考資料2といたしましては,前回の第4回出版関連小委員会における主な議論の概要を作成させていただいておりますので,お時間のあるときにお読みいただければと思います。
 配付資料につきましては以上でございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。それでは,初めに議事の進め方について確認をしておきたいと存じます。本日の議事は,(1)「特定の版面」に対象を限定した権利の付与について,(2)その他の2点となります。
 (1)につきましては,特定の版面に対象を限定した権利の付与について,前半と後半に分けて議論を行いたいと思っております。前半では,「特定の版面」に対象を限定した権利の趣旨・必要性等について議論を行いたいと思います。
 具体的には,まず事務局から,これまでの本小委員会において「特定の版面」に対象を限定した権利に関し出された意見等を説明いただきたいと存じます。
 次に,公益社団法人日本複製権センターより,企業内複製等に係る権利の集中管理の実態等について御説明を頂戴(ちょうだい)いたしたいと存じます。
 それから本日は,一般社団法人日本書籍出版協会,社団法人日本漫画家協会,日本美術著作権連合,一般社団法人日本写真著作権協会,一般社団法人日本印刷産業連合会の5つの団体より,「特定の版面」に対象を限定した権利について意見発表の御希望がございましたので,各団体の委員より御説明を頂きたいと思っております。
 その後にまとめて質疑応答と意見交換を行いたいと思います。
 また,後半では,事務局から「電子書籍に対応した出版権」を整備した場合の構成について説明を頂いて,「特定の版面」に対象を限定した権利の付与について,更に議論を行いたいと思っております。
 それでは,早速ですけれども,「特定の版面」に対象を限定した権利について議論を行いたいと思います。
 まずは事務局から,これまでの本小委員会において「特定の版面」に対象を限定した権利に関し出された意見等についての説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,資料1に基づきまして,「特定の版面」に対象を限定した権利に関して,これまで本小委員会において出された意見などや本日の検討事項について御紹介させていただきたいと思います。資料1をごらんください。
 まず,1.でございますが,これまで金子委員より御説明のございました「特定の版面」に対象を限定した権利について整理させていただいております。まず,この「特定の版面」に対象を限定した権利につきましては,当事者の特約により特定の版面に対象を限定した上,その複製利用などにも拡張することを可能にするものであると説明をされておりまして,企業内複製やイントラネットでの利用許諾などに対応するとされてございます。
 この「特定の版面」につきましては,紙だけではなく電子的なフォーマットも含むと説明をされております。更に著作物でないものや保護期間が満了した著作物について権利を拡張するものではないとも説明をされております。
 なお,過去の本小委員会の配付資料につきましては,机上に置かせていただいておりますこの青色のファイルの中に入れさせていただいておりますので,この提言の原本や補足説明資料を参照する必要がございます場合には,脚注を参考に適宜御参照いただければと思います。
 続きまして,2.に移りますが,2.の関係団体ヒアリングの概要についてでございますが,こちらにつきましては,本日幾つかの団体より意見書が提出されており,この後,御意見を御発表いただくわけでございますけれども,第1回・第2回の本小委員会における関係団体ヒアリングの際にも,この「特定の版面」に対象を限定した権利について意見が出されておりましたので,第3回の小委員会の際に配付させていただきました概要の資料を御参照いただければと思います。この詳細の説明については省略をさせていただければと思います。
 それから3.でございますが,本小委員会の中で出されておりました意見等について整理させていただいております。まず,委員からの意見でございますけれども,企業内複製やイントラネットでの利用許諾などに対応するためなのか,何らかの版の違法コピーに対処するためなのか,権利を必要とする理由の整理が必要であるといった御意見がございました。また,企業内複製については,日本複製権センターが一定の効果を上げており,雑誌の違法コピーを止めるためであれば,出版権そのもので抑えられるのではないかといった御意見もございました。
 次に,金子委員への質疑応答としてございますが,まず「版面を作らなかった出版者に対しても権利の設定は可能か」という問いに対しまして,それは可能であり,版面を誰(だれ)が作ったかは重要ではないという旨のやり取りがございました。また,「著作権者が出版者Aと出版許諾契約を締結し,出版者Aが版面を作成し,その上で出版権者は出版者Aが作成した版面と同一な版面について,出版者Bと『特定の版面』に係る権利を設定した場合,出版者Bが当該版面の利用を第三者に許諾した対価を得た場合,出版者Aは,著作権者又は出版者Bとの間で別途合意がない限り,当該版面の利用による対価に関し分配を得ることはできないのか」という問いに対しましては,分配を得ることはできないという旨のやり取りがございました。
 こうしたことなどを踏まえまして,4.の検討事項といたしましては,まず「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の理由及びその必要性ということを書かせていただきまして,その上で,2つ目でございますが,「特定の版面」の対象とは何かということを書かせていただいてございます。
 資料1の説明につきましては以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 次に,公益社団法人日本複製権センターより,企業内複製等に係る権利の集中管理の実態等について御説明を頂戴(ちょうだい)したいと存じます。
 説明につきましては,公益社団法人日本複製権センターの副理事長をされておられます瀬尾委員,よろしくお願いいたします。

【瀬尾委員】 おはようございます。本日は,実は私は最初に申し上げておきますけれども,非常に微妙な3つの立場で発言をしなければいけないということで,申し訳ございません。最初の発表につきましては,公益社団法人日本複製権センターの副理事長として,複製権センターの立場でお話をさせていただきます。
 後ほど,写真著作権協会という写真分野としての立場でのお話もございますが,基本的に,あと,委員としての発言と,3つは正直言って分けて話そうと思っておりますので,申し訳ございません。そこのところを最初に申し上げておきます。多少混ざったら済みません。
 最初に,日本複製権センターの事業の概要と出版権の拡大による影響についてということで御説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料でございますけれども,最初の2ページ目,表紙の部分につきましては,JRRCという略称でございますが,こちらの内容について書いてございます。この中で重要な部分だけ申し上げますと,この複製権センターは4つの団体から成り立っているというところをご記憶いただきたいというふうに思います。著作者団体連合,これが文藝・写真・美術・脚本その他,皆さんクラシカルオーサーの団体でございます。一般社団法人学術著作権協会が学術論文をまとめている団体であり,また,この複製権センターと同じように実際に複写の管理業務,RROとしての管理業務もなさっていらっしゃるということでございます。
 そしてもう1つは,一般社団法人出版者著作権管理機構,通称JCOPYさんと呼ばれるところでございまして,こちらは出版者さんからの権利委託によって同じようにRRO,要するに複製権管理機構としての機能も果たしていらっしゃるということで,あともう1つは新聞著作権協議会さんで,こちらは新聞さんをまとめていらっしゃると。この4つの権利者団体が会員となって運営しているものが日本複製権センターであるということで,まずご記憶いただきたいというふうに思います。
 次のページへまいりまして,沿革につきましてはかなり古くから,1974年のこちらの著作権審議会の時代からさかのぼっていろいろな議論の中でなってきたのですけれども,この中で1つだけ申し上げておきたいのは,2012年の4月,公益社団法人になりました。そのときに,名称をそれまでの日本複写権センターから日本複製権センターに変更しております。これについての意味というのは,我々としては電子の時代にもより広い対応ということがあり得るのではないかというふうなことで,その対応力を拡充することと,これからの時代にきちんと対応するという意思を込めて,この変更を行ったということでございます。
 最後の行に書いてございますけれども,それと同時に新使用料規程を実施いたしまして,利用者団体の代表としまして経団連さんとの協議,その他団体さん,関係団体とのお話合いを通じて,新生JRRCということで,平成24年の4月からは全く新体制としてスタートしているというふうなところをご記憶いただければと思います。
 次に4ページ目,委託管理事業の管理状況でございますけれども,この中で管理著作物というのは,まず学術著作権協会さんからの2,344タイトルと単行本1,798冊,それから一般社団法人の出版者著作権管理機構さん,JCOPYさんからは1,147タイトルで単行本が8万1,960点と,新聞著作権協議会さんからは67社92紙ということですが,この丸4,著作者団体連合について,ちょっとここのところだけご記憶にとどめていただきたいのですが,こちらは合計1万4,317名の著作者による全著作物でございます。こちらのところを,実は今年度データベースによってタイトル数の数を出そうとしておりますけれども,後で申し上げますが,今のところ推定で最低でも20万冊から30万冊の委託があるというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。これはかなり控えめに見た実数でございます。これは国会図書館さんとの実証実験の中で,国会図書館さんのデータベースと著作者名を突合し,かつ,それを集積していくことによってタイトル数,厳密なタイトルではございませんけれども,タイトル数を出そうということを,現在試みております。
 契約者数が2,520件,これはグループもございますので,今,6,066社と契約を結んでおります。経団連さんに加入していらっしゃる上場企業さんを中心に実質的にかなりの企業さんと契約を結んでいると。
 また,使用料収入に関しましては,1億9,753万3,881円と,これは事業報告から細かい数字を拾ってきていますけれども,2億円程度の契約高があるというふうにお考えいただいてよろしいかと思いますが,これが今年度,新使用料規程が実施された平成24年度からは,こちらにつきましては使用料金規程改定によって50%程度の増額があるというふうになっております。具体的には3億円程度の売上げがもう見込まれているということになります。見込まれていたというか,前年度はそれくらい実績が,ごめんなさい。新しい契約がそのくらいあるということです。その中から分配を行ったり何かしているということでございます。
 概要につきましては以上ですが,次のページへ行きまして,実は今日お伝えしたいことは3点ございます。1つは,複製権センターがどのようにして,どういう団体と,どのように分配等種々しているのかということと,2つ目は,この[3]との関係はどういうふうになっているのかということ。そして最後に,現状の複製権事業の概要というものについて,短い時間の中ですのでちょっと早口,早まくりになりますが,お伝えさせていただこうと思います。
 まず,この利用者と権利者とJRRCの関係ですが,一部議論の中で複製権センターは全(すべ)て出版社を経由して委託をされているので,出版社が途中に入る構造については全く影響を及ぼさないのではないかという話を,審議会以外ですが,幾つか聞いたことがございます。ただ,こちらでごらんいただくとおり,その構造になっているのは,先ほどのJCOPYさんを通じたものだけであって,ほかの部分は全(すべ)て著作者若しくは学協会を通じて直接JRRCに権利委託を行っている,途中に出版社が介在しているわけではないということです。特に,例えば著作者に関して言いますと,各団体が個人の権利を取りまとめて,それを著団連という組織を通じてJRRCに直接契約をしているということになります。
 学協会さんにつきましては,学協会さんがその権利を取りまとめて,更に学術著作権協会さんによって取りまとめの上,JRRCに委託をされていると。JCOPYさんに関しましては著作者からその権利の委託若しくは代理,いろいろな形でございますけれども,権利行使を出版社ができるようにして,JRRCに取りまとめていると。新聞さんも直接預けているということでございます。
 ですので,出版社さんが介在することによって,その業務フローは変わらないということにつきましては,それはちょっと現実とは違う,ごく一部の部分であるというふうなことを申し上げておきます。
 それと,右側につきまして,この業務の中で複製権センターの最も重要な業務というのは何かというと,包括許諾契約です。つまり頻発で煩瑣な社内複写に関する権利をできるだけ取りまとめて,そして利便性を提供しつつ,権利者の権利も守るという集中処理機構としての機能を果たすということで,包括許諾契約がメーンの業務になっております。比率としますと,個別許諾契約につきましては1%以下,年にして20件とか,その程度の許諾件数でございます。99.9と言って間違いないくらいの率が包括許諾契約であり,先ほどの契約数となっているというふうなことでございます。
 次のページの6ページ目につきましては,その権利関係というのが書いてあるのですが,実はJRRCは包括許諾契約を中心に先ほどのような企業さんと契約を結んでおります。と同時に,学術著作権協会さんと,ここでJCOPYと書いてある先ほどの出版者著作権管理機構さんも独自に複製権管理をされている。この3者がそれぞれのテリトリーというか,得意分野,若しくは区分けされた著作物をもって,バランスをとった複製権管理をなしているということです。このような体制になったことの裏には,著作権等管理事業法による競争原理の導入等のことがございますけれども,三国鼎立(ていりつ)ではございませんけれども,今のところこの3者で安定しているし,この3者で行っている機構について,特段のその構成についての御要望を頂いているというのはございません。
 次に,では,この3による影響というものについて,図でお示ししました部分がございます。これまでは,特にこれの影響が強いのは著作者,直接著作者の部分でございますが,著作者は先ほど申し上げましたように,人としてこれまで取得し,かつこれから将来的に取得する出版物からの複製の権利を預かっております。その中で,例えば出版権があったとしても,それはその全人的な複製権の管理については左の図のように全く問題がなく,著作者の集中処理ができている。今回,出版権の拡大によって一部が出版社へ権利行使するところとなるとすると,1つの著作者の権利の中で一部出版社へ権利が行使される部分が出てきてしまうと。それがどの部分であるのかというのは,個別のタイトルから更に版面に至るまで個別の管理をするということが必要になってくるかと思います。
 ただ,これは出版社さんの団体も複製権センターに入っておりますので,そこへ預ければいいじゃないかというふうな御議論もあるかと思いますが,必ずしもJCOPYさんが全(すべ)ての,3,700社の全(すべ)ての出版社を預かっているわけでもなく,また,この契約がなされたこと自体をJRRCは相当綿密に知らないと,我々の管理する権利所在がどこであり,どれが抜けているのかということについて把握することがなかなか難しい状態になるのだろうというふうに予想されます。
 これが実際に中山提言3による影響なのですが,下の文章に行きます。先ほどの約1万4,300名の20万から30万点について,今申し上げたように,どの部分が委託されていて,どの部分が委託されていないのか,又は,もしこれを出版さんがJCOPYさん経由で委託してくるとしても,じゃあ,どの部分だけJCOPYさんの権利からの委託であって著作者が持っているのか等を,細かな細かなデータベースによって把握しなければならないのではないかというふうに懸念しております。こういうふうなことが,権利が拡散することによって複製権センターの集中管理,集中処理の基本的な部分に強い影響を及ぼすのではないだろうかという議論がなされています。ですので,この一部の部分についての複製権設定,特に版面という更に一部の単位から外れた部分についてまで別個の設定というのは,こういう可能性があるというふうに考えております。
 最後に,こちらは使用料規程改定をするときに,利用者代表として経団連さんと何度も協議をさせていただき,かつ,今後も定期的に経団連さんとのお話合いをさせていただくことになっております。そのときに,複製権センターと名前を変えたことにもよって,基本的には集中処理機構として権利者と利用者を強く結んでいくという方針で,前年より本質的にきちんとした進み方,改革を進めております。実際,その効果というのは利用企業さんからも一定の評価を頂いていると申し上げてもよろしいかと思います。
 また,最近進んでいないと言われる電子許諾に関しても,もう既に今年度,その検討に着手して,早期の決着を考えております。ですので,これにつきまして経団連さんからの要望,つまりこの利用についての要望というものは,我々に対して常に,当然至らないところもございますので,御提案いただくこともあるでしょうけれども,少なくとも利用者,広い範囲の利用者と我々中間処理機構,そして権利者との意思疎通を図って集中処理機構を進捗(しんちょく)させていくというふうな体制にあると,これは今日特に申し上げておきたいところです。
 というのは,今回,社内利用について促進ということがございましたが,現時点で我々は最善の促進策を行っているし,利用者もその促進策が行われていること,実現はされているかどうかは別にしても,促進策が行われていると,それは我々RROがやっているんだということについては一定の御理解を得ているというふうに思いますので,我々としましては集中処理機構として利用者と話し合いつつ進捗(しんちょく)させることが,立法よりもよいのではないかなということもございますが,実際に我々はまだ賛否についての結論を出しておりませんが,複製権センターとしては現時点でのこの進捗(しんちょく),事業概要を報告させていただきたいというふうに思います。
 多少時間が超過してしまいまして,済みません。以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは次に,「特定の版面」に対象を限定した権利について,意見発表の御希望がございました団体から,各団体5分程度で御意見の御説明をお願いいたします。
 初めに,一般社団法人日本書籍出版協会堀内委員,よろしくお願いいたします。

【堀内委員】 それでは,出版側が望んでいる出版権の範囲ということで,2枚のペーパーにまとめてございます。簡単に説明させていただきます。
 要望する制度の方向性でございますけれども,まず第1に,実効性のある侵害対策という観点から,多くの出版物,書籍や雑誌,電子出版物に設定可能な制度,そして2番目に侵害事例に対して実効性のある制度,3番目に多くの多様な出版物,そして大小様々な出版者から出版されているという現状を踏まえて,出版実務の中に無理なく組み込める制度,4番目に,著作権者と出版者との合意によって設定される制度でありますから,出版契約で通常合意される範囲内で設定可能な制度と,こういうことが大きな方向でございます。
 そして,この中でも特に典型的な侵害事例ということで,今まで何度か御報告させていただきましたけれども,紙の書籍,雑誌の版面をデッドコピーし,それをアップロードするということで多くの侵害が行われております。この雑誌の侵害について,有益な制度設計と,これを強く望みたいと思います。
 そして,最後の方ですが,第3の3で書いておりますけれども,中山提言の[3]でございます。この中山提言[3]につきましては,雑誌紙面のデッドコピーによるネット上での侵害に対して一定の効果が期待できるということで,この[3]を強く望みます。ただ,この中山提言の[3]につきましては,権利の対象を特定の版に限定した上で出版,電子出版とは言えない利用にも効力を拡大すると,こういう考え方で行きますと,広く企業内複製等にも効力が及ぶわけですけれども,先ほど瀬尾委員からも発表がありましたが,これらの現行許諾実務はJRRCやJCOPYといった複製権の集中管理団体によって行われております。中山提言[3]が出版とは言えない利用に範囲を拡大することは,現行の許諾実務に大きな影響を及ぼす可能性もありますけれども,出版界としては現行のシステムに影響を及ぼすような制度設計は望んでおりません。あくまでも,この侵害対策ということに一定の効果のある制度設計を望んでいるということでございます。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは続きまして,社団法人日本漫画家協会ちば委員,よろしくお願いいたします。

【ちば委員】 私は昔からちょっと気が小さいので,人の目線が結構気になるのですけれども,最近どうも出版関係者からの目線をひりひり感じるので,ちょっと一言弁明させてもらいます。
 出版者はこれまで漫画という文化を我々漫画家たちと二人三脚で育ててきたという経緯があります。ある意味,出版者の協力,特に優れた編集者の存在や尽力がなければ,これほど世界中から注目される漫画の文化にはならなかったと思うし,それらのことの感謝を漫画家たちは,全員ではないのですね。やっぱり出版者によって,あるいは編集者によってすごく才能のあった人が消えていってしまった,潰(つぶ)されてしまったということもあるので,恨んでいる人もいるのですけれども,でも基本的に我々漫画家たちは出版者と一緒にやってきた,その恩は感謝は忘れていません。
 ということですから,ここからがちょっと本題ですけれども,日本漫画家協会は自動的に発生する著作隣接権に代わる出版者の権利として,経団連から御提案いただいた「電子出版権の新設」とともに,いわゆる中山提言,つまり出版権の拡張という路線を支持する方向で検討しています。また,従来より問題点として挙げられてきた電子配信による海賊版については,我々もとても強い危機感を抱いており,早急に対策の必要を感じていることは,そこはもう出版者と共通しております。
 しかしながら,中山提言[3]にある「特約により,特定の版面」の複製については,漫画の場合,私たち漫画家が制作する「原稿」と「特定の版面」は区別することが非常に困難で,著作権そのものを構成する「原稿」における表現まで出版者の権利が拡張される点は,どう考えても同意できないところであります。
 「特約により」となってはいるものの,出版者・著作者双方が十分な理解がないまま業界慣習的に契約が締結されると,その条件が空文化するおそれがあり,特約の意味を持たない,なさないと思います。
 ただ,海賊版については週刊雑誌等複数の著作者から成る定期刊行物も侵害されており,これについては版面とは別の観点から出版者が主体的に対策できる方法を我々も考えてみますが,探っていくべきだと考えております。
 以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは続きまして,日本美術著作権連合あんびる委員,よろしくお願いいたします。

【あんびる委員】 ありがとうございます。日本美術著作権連合のあんびるでございます。まず初めに私から申し上げたいのは,私自身,絵本作家でございまして,絵本について少し述べさせていただきたいと思います。
 児童書の業界は一般書に比べまして大変狭い業界でございまして,出版者と作家たちは親しい関係の中で今までうまくやってまいりました。今後も子供たちの文化のために出版者とともに多様な作品を提供していきたいというふうに考えております。
 その上での話でございますが,絵本の特殊性について少し話させていただければと思います。絵本というのは,原画がそのままずばり版面になりますので,原画と版面の間にほとんど差がございません。文章を載せる部分などもあらかじめ空けて描いたり,あと,本の仕上がり寸法に合わせて描いたりいたしますので,原画自体が完成された作品というのではなくて,それが版面になって,本になって,初めて作品になるというものでございます。
 こういう絵本製作の特殊性と言いますか,絵本の成り立ちを御理解いただけますと,私たちが原画と版面を別のものとして考えることはできないということを分かっていただけるかと思います。絵本作家は,原画の権利は著作者,版面の権利は出版者と共有という考え方を受け入れるのは,この本の成り立ち方からすると,とても難しいというふうに考えております。
 ではあっても,編集者のアドバイスによって構成された面が大きい本とか,いろいろございますので,その程度や事情は1冊ずつ違ってくると思います。その点を考えますと,版面の権利を出版者と共有するかどうかということは,出版物単位の契約で定めていくのがいいのかなと思います。これを法律で決めるということは,向いていないのではないかというふうに考えます。
 次に書いてあります[2]の部分ですが,版面の権利の付与によって生じる権利の混乱と著作者の権利の縮小についての懸念について書かせていただきましたので,どうぞお読みください。
 最後に,海賊版について申し上げます。海賊版による侵害を防止したい気持ちは,著作者と出版者は全く同じだと感じております。ですけれども,この権利付与によって取締りの方法とか,効果にどう変化が現れるのかというのが,私たち著作者にとっては分かりづらい部分でございます。具体的にどうなるのか,是非お聞かせいただきたいと思っております。
 以上の結論としましては,海賊版対策だけを目的として付与するには,余りに大きい権利ではないかと感じておりまして,その点につきまして,著作者として不安を感じているということを申し上げたいと思います。でありましても,別の方法でもって解決策を一緒に考えていきたいなというふうに考えております。
 以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人日本写真著作権協会瀬尾委員,よろしくお願いします。

【瀬尾委員】 今度は写真著作権協会の立場でございまして,大変申し訳ございません。
 ただ,なぜこの意見書を出させていただいたかというと,複製権センターというのは,先ほど申し上げたように,中間処理機構としてこれについて賛否を述べる立場にないというふうなことも,そういう御意見もございました。
 しかし,写真としての意見は非常に明確ですので,それについては一言述べさせていただきたいと思って,今日お時間を頂きました。
 前の発表のときにもお話しさせていただきましたが,あのときには3については継続事項のような柔らかい言い方もあったのですが,今回,はっきり表明させていただきますが,この3番の立法については反対でございます。写真としてはこの立法について反対させていただくと。ただし,この中山提言のほかに含まれる出版権の電子化に及ぶ拡張その他につきまして,特にまた丸4につきまして,全く反対するものではございません。この[3]だけ特質的かつ異質というふうに受け取っているというふうなことでございます。ですので,この3がなくても提言の中で十分効果を発揮できるのではないかと考えております。
 また,3の中でなぜ駄目かということをもう1回なぞらえますけれども,先ほどの複製権センターに委託している著作者の立場として,著作者ですけれども著作者の権利を少しも削りたくない,著作者は権利を常に保持しなくてはいけないとかたくなに思っているわけではありません。それに対して社会的な意義とか,公的な効果が大きければ,著作者だってきちんとその権利について譲歩する余地はある。しかし今回,我々が考える中で,この大きな権利を付与するに当たって,それに対するもう片一方の重りのバランスが至らないのではないか,そちらの方とのバランスがとれていないのではないかと思っています。
 この3つがその理由なのですけれども,写真分野として特に言えるのは,やはり先ほどから漫画さん,児童美術さんと実は同じですけれども,写真集においてはほとんどの場合,版面はそのまま写真です。これについて権利付与するのはどういうことなのかというふうなことも,写真としての分野はございますけれども,そうは言っても,そのバランス論の中で決めていくべきだというふうに思っているのですが,この3番につきましてはその波及効果のマイナス分と,得られる効果についてのバランスがとれていないし,写真が受けるマイナス面を補うほどのプラスをこの3番によって出版さんも得られるとは思っていないということです。これは我々の意見ですので,ですから社会的にこの3番ということに関しては,我々が賛成をするというふうな方に傾かないということでございます。
 また逆に,非常にマイナスの影響が大きいという結論でございますので,これについては反対というふうなことで申し上げたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人日本印刷産業連合会山川委員,よろしくお願いいたします。

【山川委員】 それでは,日本印刷産業連合会から意見を申し上げます。
 今回「特定の版面」に対する権利の付与ですが,最初に結論としまして,法改正の目的との整合性がとれていないのではないかと考えておりますので,今回の提言の[3]については,今回の改正案から除外すべきというふうに考えております。
 最初に,法改正の目的との整合性なのですが,そもそも今回の小委員会につきましては,要するに海賊版への対応というのを主目的として行っているというふうに認識しておりますが,この[3]の提言につきましては,御説明からは企業内複製への対応という御説明ですので,そういった点であれば,これについては後にした方がよろしいのではないかなというふうに考えております。
 それで海賊版対策については,そもそも[1]のところで対応すべきところですので,[1]の出版権の中で海賊版に対応できるようにいろいろ議論していけばいいのではないかというふうに考えております。
 あと2番目に,今までの委員会でも若干出たかと思いますが,[3]が必要な理由として,出版物の一部だけが複製されたときに,出版権では対応できないのではないかといったような意見もあったかと思いますが,これについてはここに書かせていただいたように,判例がございまして,出版物の一部だけを複製したものについての判例ですが,これは出版者と著作権者,この両者が違法複製権を侵害した出版者を訴えたというものなのですが,具体的には被告の出版者が出した書籍,これは238ページあって,そのうちの8ページ分だけが原告の書籍を複製したというふうに認定された。一部分だけが複製されたのですが,そういった場合についても著作権者と出版権を持った出版者,両者に対して損害賠償は認められたというケースですので,そういった意味で一部分の複製についても訴えることができるといったような事例でございます。
 そういった意味で,今回の改正の方で電子出版についても出版権が広がった場合には,当然,電子出版等で一部分複製されたことについても今度の出版権で差止め等できるのではないかというふうに考えております。そういった意味で,[1]のところで対応できるのではないかというふうに考えております。
 最後に,版面という用語を用いられていますが,非常にこの用語自体ははっきりしないところがありまして,普通の書籍等であれば紙面そのものだというふうにとるのかもしれませんが,これが一方電子書籍の方については,表示画面が固定されないリフロー型と言いますか,画面サイズが変われば,それに応じて表示される形態が変わるといったようなこともありますので,何をもって版面と言うのかというような問題があるのではないかと思います。
 以上が私どもの意見でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,質疑応答と意見の交換を行いたいと存じます。ただいま御発表いただいた団体以外の団体で,意見発表等を御希望される団体がございましたら,この意見交換の中でそうした御意見を頂ければというふうに思います。
 意見交換に当たっては,先ほど資料1で事務局の説明がございましたけれども,その4.検討事項でございます。上の丸が「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の理由及びその必要性,これを前半として認識しておりますけれども,これをまず議論させていただければと思います。そしてその後,後半で「特定の版面」の対象というものについて議論を展開していければと,このように思っております。
 御質問・御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。
 栗田委員,どうぞ。

【栗田委員】 特定の版面,それから特定の版の捉(とら)え方について,確認の質問をさせていただきたいのですけれども,雑誌の一部のページなどが特定の版に当たるとすると,例えば新聞で言いますと,締切り時間によって刻々と版が変わったり,全国紙などの場合は都道府県ごとに地域版を作成したりしているものですから,新聞が対象になるかどうかの議論はちょっと置いておいて,こうしたいろいろな版,これは新聞に限るのですが,新聞の版も特定の版というふうな中に捉(とら)えていいものでしょうか。
 例えば,外部著作が掲載されているような場合は,出版権の設定の対象になる可能性があると思うのですけれども,これについて私のような理解でいいのかをちょっと確認させていただきたいと思います。

【土肥主査】 これはどなたに確認すればよろしいでしょうか。

【栗田委員】 できれば,金子先生に。

【土肥主査】 じゃあ,金子委員,お願いいたします。

【金子委員】 今の御質問の点ですが,基本的には著作者によって特定された版ということになります。新聞の例が対象になるかどうかは別としまして,仮に新聞の例について言えば,途中の版やそれぞれの地方においてそれぞれの紙面が異なるという場合については,その著作者との設定契約において特定された版が対象になるということであります。
 最終的には中途段階での版ではなくて,一般的には発行されたときの版によって特定されるということが多いでしょうし,特定の地域の版だけ対象にすればよいと思う場合には,その版だけということになりますし,全それぞれの地方面を全(すべ)て押さえたいということであれば,それによって特定可能ということになります。
 それは全(すべ)て著作権者と,その出版権の設定を受ける人の契約によって特定されるというものであります。

【土肥主査】 栗田委員,いかがでしょうか。

【栗田委員】 分かりました。新聞の場合は,厳密に言いますと,その新聞全体ではなくて1ページごとに版というふうな捉(とら)え方をするものですから,そうすると,朝刊で40ページ,それからいろいろな新聞社がありますので,膨大な版という,これは飽くまで特約に限るということですけれども,可能性として出版権が設定される可能性のある版が相当な量生まれてくるというふうに考えられると思います。
 私などはどうしても紙を前提として電子に置き換えて考えてしまうのですけれども,例えば雑誌や新聞以外に出版や電子出版とは言えない利用に該当するものとしては,具体的にどういったものを想定されていらっしゃるのでしょうか。その点についてもちょっと教えていただけないかと思います。

【金子委員】 それは,もとが出版,雑誌や新聞のような出版物から利用するものではない場合の利用対応として,どのようなものが想定されるかということでしょうか。
 それであれば,1つは学術書などの単行本についての企業内での複製などということが1つは想定されるということになります。

【土肥主査】 じゃあ,これでお願いします。

【瀬尾委員】 実は,これは複製権センターの話にも関(かか)わってきていて,その版ということについて,やはり非常に微妙に思ったのですが,ちょっとこれは金子先生にお伺いしたいのですけれども,電子書籍の場合は見る端末とか,それによって版というか,見え方は大きく変わっていくように普通は設定されているのですけれども,いわゆる見た目は随分変わってしまうかと思うのです。
 その場合に,その電子書籍における固定された著作者の許諾した版というのは,どういうものが版になるとお考えなのでしょうか。そこの部分をちょっとお伺いしたいと思っていました。

【土肥主査】 金子委員,お願いします。

【金子委員】 その点ですが,基本的には著作者の版と,著作権者と出版権の設定を受ける人の契約の内容によるということがまず1つと,あともう1つは,登録制度を整備する際にどのような形でそれを法的に特定されたものとして登録可能にするかということだろうと思います。
 どちらかというと,後者の方がより法的な問題としては重要ということになると思いますが,基本的に電子的なフォーマットについては見た目で特定するというよりは特定のファイル形式など,あるいは特定の電子フォーマットの形式に基づいて特定をするという形になるのではないかと思われます。
 ただ,この点はそもそもそのような版面による限定を,制度として導入すべきかどうかということが決まってから,論ずべき問題ではないかと思われます。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。

【栗田委員】 もう1点。
 先ほどの中山研究会案によりますと,複写利用などにも拡張化というような御指摘があったと思うのですけれども,例えばその複写利用の対象も特約に限るとはいえ,膨大な量になると思うのですけれども,企業内複製とか,イントラネットまで拡張した場合,やはり現在の集中処理機構で対応できるのか,ちょっと疑問に思えるところがありますし,混乱が生じかねないのではないかなという心配もするのですけれども,企業内複製とか,イントラネットまで拡張しなければならない理由を教えていただけないでしょうか。

【土肥主査】 では,お願いします。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 その点については,非常に本日の我々の提言に関する議論の点でも重要なところであると考えておりますが,今の御質問に関連して,我々の提言に関する[3]の部分について少し併せて,このような提言をした趣旨について,もう1度説明をさせていただきたいと思います。
 今の御質問の点も含みますが,少しそれ以外のことも含みます。

【土肥主査】 はい,是非お願いします。

【金子委員】 その点については,本日の我々の提言に関する議論の点でも重要なところであると考えておりますが,今の御質問に関連して,我々の提言に関する〔3〕の部分について少し併せて,このような提言をした趣旨について,もう1度説明をさせていただきたいと思います。今の御質問の点も含みますが,少しそれ以外のことも含みます。

【土肥主査】 はい,是非お願いします。

【金子委員】 提言の〔3〕については,これは基本的には2つの内容を含んでおります。1つは,特定の版面に対象を限定するということであり,もう1つは,複写利用など,出版とは言えない利用にも出版権の対象を拡大するものであるというものであります。
 後者の点が,今御質問を頂いた事項に関わる点でありますが,後者の点についてはそのような企業内複製などの利用についても出版権の設定を受けた者が利用許諾の窓口として行動可能なシステムというものが構築されることが望ましい,そのような利用についても出版権の設定を受けた人が利用許諾を可能とするということが望ましいと考えて提言をいたしました。そして〔4〕の登録制度の拡充と併せることにより,出版権が登録されることによって,利用許諾の窓口で,利用許諾の権限を有する者が誰(だれ)かということが公示され,そのことが利用許諾の促進,そのような企業内複製等についての利用の促進につながると考えて,このような提言をした次第であります。
 もちろん,先ほど複製権センターの御活動について説明がありましたように,現状の仕組みにおいてもそのような利用についての許諾の仕組みというのは様々な試みがなされており,それによる利用もされているところであります。他方で,特に著作者の団体等に加盟していない著作者などについては出版者に対してそのような権利を預けたいというニーズがあるのではないかと。特に我々のような学術論文の著者等についてはそのようなニーズもあるのではないかと考えて,このような〔3〕の提言の中に企業内複製等も含めた形に入れたわけであります。
 その際,複写利用など出版とは言えない利用について,出版権を拡大するということになりますと,場合によっては際限なくあらゆる著作物についての包括的な独占的ライセンスを創設するということになりかねないという点から,そのような利用については,この「特定の版面に対象を限定して」という制約が課さなければ出版物としての利用というものから外れてしまうのではないかと考えて,制限を課したというのが,その出版以外の利用に拡張したという点につき「特定の版面に対象を限定」という制限が付いていることの趣旨であります。
 他方で,「特定の版面に対象を限定して」という制限を設けた趣旨については,先に述べたとおり,もう1つ別の意味がございます。これは著作者が,例えば〔1〕の印刷や電子出版についての出版権を設定する際にも,特定の版面だけに限定をして出版権を設定できるというふうにした方が,著作者にとっての選択肢が広がるのではないかと,著作物のあらゆる版面での利用形態ではなくて,特定の版面だけの利用形態に限定してでも,出版又は電子出版について独占的な権利を設定できると,そういう選択肢もあった方がいいのではないかという趣旨が込められております。
 きょう議論されているのは,この2つの点について,それぞれの指摘があると思われます。今の栗田委員からの御質問の点は,最初に述べたこの出版以外の利用に及ぼした趣旨ということですが,それについては今のような説明ということになります。
 ただ,この点について,先ほど日本書籍出版協会の方からの意見として,現行のシステムに対する影響を及ぼす大きな制度設計は望まれないということであれば,もしこのような制度設計が現状において著作者と出版権者,出版者などとの関係において,すぐに有意義な効果をもたらすものではないということであるのであれば,そのような出版とは言えない利用に拡張するという点についての提言というものは,今回の議論においては法改正の選択肢から外すという選択もあるのではないかと思われます。
 我々自身としては,そのような利用について利用許諾のシステムが構築されると,その場合に出版者が窓口としての役割を果たすのではないかと,そして著作者がそれを望む場合には果たすべきであると考えて,このような提言をいたしました。しかし,そのようなことが現状の利用許諾のシステムに対して現時点では悪影響を及ぼすという懸念が強いということであれば,その点について今回は外して,我々の提言〔3〕の二つの趣旨のうち,特定の版面に限定して設定可能との選択肢を与えるとの点に絞って議論をするということもあるのではないかと思われます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 今,金子委員から,出版者が窓口としてそういう委託をするような可能性があるのではないか,それから創作者・著作者にそういう新しい別の選択肢を与える,そういうことにもなるのではないかということでおっしゃったと思いますが,これに関連する委員の方でそういうことについて,最初に大渕委員がおっしゃいますか。御意見ですか。

【大渕委員】 関連してであります。

【土肥主査】 じゃあ,お願いします。

【大渕委員】 この[3]は,今までなかなかどういうものか分からなかったのが,ようやく次第に分かりつつあるところかと思います。ただ,「特定の版面」とは何かということ自体は2番目にやるということのようなので,今は入りませんが,この「特定の版面」に対象を限定した権利の構成の理由及び必要性を考えるに当たっては,当然のことながら,この「特定の版面」に対象を限定した権利なるものが何かがある程度分からないと,そもそも必要性も理由も考えることができないと思います。この観点から,版面は別として,先ほどからお伺いしていますと,これは後から説明がある資料8を,絵が見やすいので少し今使いますが,これで出版権と特定の版面に対象を限定した権利というのをORで結ぶようなものとアドオンとがありますけれども,いずれにしても,先ほどお聞きしたら,出版権ではあるのだけれども特定の版面に絞り込むというような方向性と,それから出版権とはまた別に,出版権というのは著作物,コンテンツだけのもので版とは関係ないものですけれども,それと別に特定の版面に対象を限定した権利というようでもあります。絞り込む方は別として,別に立てるという場合でありましたら,そのような別のものとしてわざわざ特定の版面に限定したものを立てる必要性があるかという立法ニーズの検討の必要性は非常に高まってくるわけであります。この関係で,前提として最低限いくつかだけはお聞きする必要があると思います。まず,特定の版面の権利というのは版面を伴ったまま複製したものには及ぶけれども,崩したものには及ばないという意味で版面に限定したものでしょうか。普通であれば,別に版面を崩すかどうかなどにはかかわらず,元の著作物の内容が再生されれば複製になるのでしょうけれども,この「特定の版面に対象を限定した」というのは,版面をキープしたままのものだけを捕捉(ほそく)して,それ以外のものは捕捉(ほそく)しないというものなのかという点が1点目であります。
 次に,企業内複製というのは,出版では捉(とら)え切れないものも含めたいというのが先ほどあったのですが,現行の出版権であれば頒布の目的をもってということなのですが,企業内での,普通は頒布の目的なのでしょうけれども,特定少数のように頒布とはいえないようなものでも,複写だったら捕捉(ほそく)したいということまでも意味するのでしょうか。要するに,わざわざこのようなものを出版以外に立てるということと,かつ,それは特定の版面に限定であるということの2点について,それぞれ理由と必要性というのは,そもそも何なのか,というのが2点目であります。
 まず版面とは何かというのがまず一番お聞きしたいところではありますが,これは少し後回しにして,それ以外の,今お伺いした各点についてまずお伺いできればと思います。

【土肥主査】 じゃあ,金子委員,もう1回お願いします。

【金子委員】 今の点ですが,版面による限定という点はとりあえず後に回して説明をいたしますと,企業内複製についても,もちろん公衆への頒布を伴えば頒布の目的ということになって,条文上はそもそも現行の出版権の対象となる行為も,もしかしたらあるかもしれません。ただ,その場合にも,出版権のそもそもの成立趣旨からそれらのものを含むのかということは,また別に議論があり得るだろうと思われます。
 その上で,他方で企業内複製について,特に業務目的で特定の個人が使用するという行為については,これは頒布目的を含むものではないということにはなりますので,現行の出版権の対象とはならないであろうと思われます。そのような利用について,むしろ利用許諾の窓口を出版権者として明確にするというのが,我々の提言の〔3〕に関する1つの趣旨であったということになります。

【土肥主査】 各団体から本日いろいろ御意見いただいた中で,クリエーターの方については,ちば委員,あんびる委員のおっしゃったところで言われると,この新しい選択肢という観点から余り歓迎をされてはいない,そういう御意見だったと思いますし,出版協会ですが,そちらの書籍出版協会の方の御意見からいたしますと,これは一定の効果が期待できるということでございましたけれども,企業内複製を含む出版物の複製利用について,現在のシステムに影響を及ぼす制度設計は望まないと。一定の効果が期待できるというのは侵害対策という意味での効果というふうに承知してよろしゅうございますか。
 じゃあ,どうぞ,永江委員。

【永江委員】 これは特約によりということですから,飽くまで契約に基づいてということになりますね。堀内委員の御報告にもありましたように,堀内委員の御報告の3番目のところで,雑誌については契約実態簡易調査を6月12日に行ったところ,ほとんど出版権設定契約を行っているケースは皆無であったということですね。ということは,雑誌についてはこの3番目の特約と言いますか,権利が法律に盛り込まれたとしても,雑誌の海賊版対策にはこれは全く無力であるということですよね。

【堀内委員】 [3]がでしょうか。いや,逆に[3]は雑誌の侵害対策に非常に効果があると考えております。

【永江委員】 でも,契約の,契約に基づいて設定される権利であるならば,契約がない以上は効力を持たないわけですよね。

【堀内委員】 中山提言で言いますと[1]の出版権にあたる設定契約が,現行では雑誌については全然結ばれていないということなんです。

【永江委員】 結ばれていないわけですね。はい。

【堀内委員】 それで,例えばそれを結べばできるじゃないかと,現行制度でできるじゃないかというような議論もあるかと思うのですけれども,法律的な理論ではできるのかも知れませんが,実務的には大変難しいし,そして第1回だったかな,永江委員がおっしゃったように,雑誌に掲載したときに,その先のことまで決めたくないというような著者のいろいろな御意向もありますし。実際,実務的に大変難しいために,現実的に雑協の調査ではほとんどそういう契約は結んでいないということなので,中山提言の[3]があれば,そういう雑誌からの侵害,こういうものに一定の効果があるんじゃないかということで,[3]を望みますということです。ただ我々の目的は侵害対策ということなので,今現在こういう許諾のシステムができている企業内複製とか,そういうことまで及ぶことは望まないという,そういう話なのです。

【永江委員】 そこがよく分からないのですが,要するにこの[3]の効力が発揮されるためには,出版者と著作権者が契約を結び,なおかつこの特約を入れなければいけないわけですよね。それが大前提ですよね。
 でも現状では,雑誌については著作権者と出版者の間での契約が行われているということはほとんどないわけですよね。

【堀内委員】 だから,もし,この[3]が何らかの形で制度となれば,出版界としては雑誌掲載時に,例えば雑誌で連載するときに,著者の方と何らかの契約を結ぶということを考えております。

【永江委員】 契約を結ぶと。

【堀内委員】 そうです。

【永江委員】 しかし,それは現実的に可能ですか。例えば『週刊プレイボーイ』であれ,『週刊現代』であれ,毎号毎号関(かか)わっている著作者,著作権者って,数百人に及びますよね。で,毎週毎週それを契約書を交わすということがあり得るでしょうか。

【堀内委員】 我々はできると思っています。で,例えばそういう雑誌で単発の一号一号登場する著者もいますけれども,非常に海賊版で侵害が行われているのは割と連載物が多いのです。だから連載時にそういう著者も納得していただいて,我々と結んでおけば,我々が[3]でそういう違法な侵害に対応できるというように思いますし,実務的にもできると思います。

【土肥主査】 ちょっと瀬尾委員の意見を聞いてから,お願いします。

【瀬尾委員】 実際に侵害対策云々(うんぬん)ということは,実は私も経産省の方のクールジャパンの広報とか,違法対策をしているので,いろいろあるのですけれども,ちょっと今回,社内利用に対しての効果というふうなことでしたので,ちょっとそちらの方に話を戻させてもらってしまって,永江さん,いいですか。済みません。
 先ほどの版のお話の前に,事実云々(うんぬん)ということでいろいろなことをお伺いしたかったのですけれども,実は著作者にとってオプションを用意されたということを金子先生がおっしゃっていて,なるほどなと。ただ,現時点で著作者の中でそのオプションを使うということが,少なくとも団体の中では余り声が出てこないと。
 では,どういう著作者,先ほどちょっと論文という話をなさっていらっしゃったのですけれども,今,いわゆる集中処理には乗らなくて,更に浮いているものを回すんだという話をちらっとされたと思うのですが,具体的にはどういう著作物とどういう著作者の利用について,先ほどおっしゃられかけたのか,もう少し詳しくお聞かせいただきたいと思うのですけれども,いかがでしょうか。

【金子委員】 今の御質問の点ですが,1つ,余りこの例を出してもしようのない例を挙げますと,私のようなのが1人ということになります。私は特に権利者の団体に加盟しているわけでもなく,私の書いているような少ない雑誌の論文等も含め,法学系の学術論文などはその1つの対象となるのではないかと思っております。
 他方で,理系の学術論文などについては,そもそも出版者に対して著作権が譲渡されている例も多いだろうと思いますので,その場合にはそもそもこのような仕組みがなくても対応可能ということになるかもしれません。
 そのように,1つには団体等に加入しておらず,出版者が実質的にはそのような窓口のような機能を果たしているようなタイプの著作者にとっては,このような選択肢が1つ意味があるのではないかと考えております。

【土肥主査】 前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 金子委員から先ほどお話がありました[3]の意味には2つの側面があると。1つは,特定の版に限定した出版権の設定を可能にするという意味のものであると。もう1つは,出版とは言えない企業内複製とか,イントラネットにも,出版権の効力を及ぼすという側面のものという2つの側面があるということだと思うのですが,これはちょっと切り離して議論するべきではないかなと思います。
 後者の企業内複製・イントラネットに拡大すべきかどうかという点については,先ほど金子委員御自身からも各団体から今それが直ちに必要ではないという御意見が多いということであるならば,今回の審議会の議論の対象にしないという選択肢もあるのではないかというお話もありましたし,先ほど各ヒアリングをお聞きしても,企業内複製・イントラネットにこの出版権を及ぼすということは,少なくとも現時点ではちょっと適切ではないのではないかと思います。
 そうすると,残りは1の,この特定の版に限定した出版権の設定を可能にするということについて,議論をしていくべきではないかと思います。これについては,先ほど書籍出版協会様の方から,こういう特定の版を限定した出版権の設定を可能にすることによって,雑誌についてもそういう限定した範囲の出版権の設定が可能になり,それがひいては雑誌の侵害対策にもつながるというお話があったかと思いますし,また金子委員からも,これは著作者の立場から見ても,著作者の選択の範囲を広げると,そういう限定した出版権を設定することも可だし,丸ごと出版権の設定も可だし,それを選択することができるのは著作権者であるという意味で,著作権者の選択の範囲を広げるという側面もあるというお話がございましたので,これは著作権者,それから出版者双方にとってハッピーな,いいことではないかと思いますので,この1番目の企業内複製・イントラネットに出版権を広げるというのはちょっともう置いておいて,限定した出版権の設定を可とするということに議論を絞ってはどうかと思います。
 ただ,そこで,その次に各団体の御意見を伺いますと,特定の版ということに対しての問題が非常に大きいというお話がございましたし,それであるならば,特定の版に限定した出版権の設定というふうに版に着目するのではなくて,それは出版設定契約において当事者が,例えば雑誌に掲載する出版権だとか,あるいは更に言えば『週刊少年ジャンプ』に掲載する出版権だとか,そういった対象を限定した出版権を,設定契約によって対象を限定した出版権の設定を可能にするということで足りるのではないかと。それによって著作権者の選択肢も広がり,かつ出版者における侵害対策も行えるようになるのではないか。更に,それを設定契約に委(ゆだ)ねれば,特定の版は何ぞやという議論も特にする必要がなくなるのではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 先ほどまでは,版の議論に入れないのでなかなか言えなかったところが,今,前田委員に出していただいて,この論じなければいけない部分がおかげさまでようやく出てきたのではないかと思います。
 細かい版の話ではなくて,先ほどあったような限定というのはハードカバーに限定といったものであって,これはむしろ版というよりはいわば媒体のような感じではないかとも思います。この雑誌の場合など,版というようにいわれているのは,リフロー型などそもそも版がないというのを別として,まさしく原版のようなレイアウト的な版なので,ニーズとしてそのようなレイアウト的なものに限定してのというところなのでしょうか。
 前田委員が言われたようないわば媒体レベルでの限定であれば,おそらく現行法でもできるという議論もあり得るのではないかというあたりで随分話が違ってくるので,この点をきちんと整理する必要があるように思われます。版の細かい議論は別として,ニーズとしてあるというのはこのレイアウト的な版に限定してという話でもないのではないかという気がしておりましたが,この点については,混乱のないように,議論をうまくきちんと整理して進めていただければと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 前田委員,大渕委員から意見が出ているわけですけれども,今のような御意見をお聞きになって,金子委員,何かございますか。

【金子委員】 前田委員,大渕委員,ありがとうございました。
 今の点ですが,確かにそのような媒体による特定の方法というものもあるだろうと思います。その際には,我々がなぜ版面と言うか,版面という言葉を使うこと自体も,もしかしたら無用の議論の混乱を招いたかもしれませんが,版面あるいは版といったレイアウト的なものによって特定しようとした趣旨は,従来,隣接権に関する議論等において,その版面に関する議論というものもありましたので,そういったものの議論の蓄積も踏まえつつ,1つの限定の仕方としてそのような提言をしたということが挙げられます。
 媒体による特定ということも1つの方法としてはあり得ることでありまして,ただ,その媒体によって特定した場合に,具体的なその侵害の局面等を考えると,例えば雑誌のものから依拠して行った公衆送信が対象になる,雑誌からスキャンして単行本で出す行為をどう捉(とら)えるか,そういった行為をどう捉(とら)えていくのかという少し細かい点の問題があります。
 ただ,このあたりは,むしろその媒体による特定ということを認めた上で,そのような細かい問題についてどのように対応すべきかということで議論するべきだろうと思いますので,媒体による特定ということでも,もしそれが出版者や著作権者のニーズとしてそのような特定で十分ということであれば,それでもよいのではないかと思われます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】 今の議論で一気に版面の特定から媒体の特定でいいんじゃないかというふうに流れが行っていますけれども,本当にいいのでしょうかね。契約では単行本で出版することを設定して,それでこの版に特定しましたと言って,次の出版者に対しては全集で出すことを特定して,それでこれに特定しましたと。その次のC社には文庫本で出すことを特定して,そして出版権の設定をしましたと。これは,当事者がよければいいのかもしれませんが,問題はそういう契約が重複したときに,ちゃんと登録としてすみ分けができるのかということを安定的に作らないといけないというのが制度だと思います。それを法律家が考えるべきだと思います。
 これは,私はそこのところを当事者に任せればいいというのでは,物権の特定の範囲として混乱を起こすというふうに思います。もしそうであるならば,媒体というものをあらかじめ登録できる範囲を定めておかなければなりません。それは無理でしょう。やはり版面で特定した方がいいのではありませんか。

【土肥主査】 もう1回,金子委員,お願いします。

【金子委員】 意見がころころ変わっているようで申し訳ありませんが,松田委員のおっしゃるように,雑誌による特定とした場合に,先ほど私も申し上げましたが,どのようなことがその効力の範囲に及ぶのかと。雑誌に依拠した利用というものがその後の,ある特定の出版物,単行本とかに依拠してやったということが含まれるのか,その後の出版形態も委員のように雑誌から雑誌に移す,あるいは単行本として出す,全集として出すというようなその後の侵害の方の利用形態も媒体によって特定されるのかという問題は,後回しでもいいと言ったのですが,後回しではなくてちゃんと考えなければいけない問題かもしれません。
 そのような意味で,特に登録制度としての組合せで我々が版面による限定というのを申し上げた趣旨は,特にその書誌情報として蓄積されている出版物の特定のページの特定の版面,あるいは電子納本等がもしされていれば,それによるフォーマットの形式などによって特定可能ということで,そのような形の提言をしたわけであります。
 ただ,こちらもどこまでその権利が,その版による特定によって限定されたものの権利が及ぶのかという問題は,なお考えられるところであります。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 この今の意見の交換については,その登録の在り方のようなところも入っております。その,今現在登録の状況として,事務局からこの話,何かございますか。

【菊地著作権課課長補佐】 済みません。今手元に特に登録のデータがあるわけではないのですけれども,何か権利が重複した場合に,どういう調整方法があるのかという点で,その登録制度というもののお話も今,出てきたと思います。この登録制度につきましては,以前にお示ししました論点の中でも,権利の明確性のためにどういう方法が考えられるのかということでお示しさせていただいておりますので,また別途この小委員会の中で議論する時間を設けさせていただければと思っております。

【土肥主査】 分かりました。それでは,またその機会にということにいたしますけれども。
 本日議論すべきは,今回の著作権法の改正について閣法として出す以上は,この「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の理由,制度趣旨,こういった必要性,そういったことを含めたところを明確にする必要があるというふうに思うわけですけれども,いずれにしてもその企業内複製のようなことは考えないということで話が,意見が収れんしていっているのかなというふうに思います。
 更に,「特定の版面」というものに対象を限定した上での権利ということについて,多くはいわゆる出版権の中でという,そういう何か考えられないかということもまた出ているわけでありまして,堀内委員等もおっしゃっておられるように,要は侵害対策を十分実効的に行えるのであれば,それが一番大事であると,こういうふうなこともまた出ているわけでございますので,一応,仮止めではありますけれども,今の議論を1回事務局で受けて,それでまた次に行ければというふうに思います。
 本日の予定しております項目としては,もう1点あるのです。そのもう1点の方について事務局から説明を頂戴(ちょうだい)して,その後で更に議論を行えればというふうに思います。
 じゃあ,お願いします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは資料8に基づきまして,「電子書籍に対応した出版権」を整備した場合の構成というものについて御説明をさせていただきます。説明に入ります前に,この資料につきましては,これまで「電子書籍に対応した出版権」という言い方をこの小委員会の中ではさせていただいておりましたけれども,この「電子書籍に対応した出版権」を著作権法上どのように位置づけるのかということでございまして,その場合,どのような構成が考えられるのか,またそのことによってどのような権利の設定になってくるのかということを,幾つかの例を出しながら事務局で簡単な資料を作らせていただいたものでございます。
 まず,1.の「『電子書籍に対応した出版権』として採りうる構成」ということでございますけれども,これまでの御議論の中では大きく2つの構成について提言,御意見が出されていたと考えられるところでございます。
 まず,点線の枠囲みの中でございますが,構成の(ⅰ)といたしまして,現行の出版権を拡張し,現行の出版権の対象に電子書籍等を含めるという構成,そして構成の(ⅱ)といたしまして,現行出版権とは別に,電子書籍等を対象とした権利,ここでは経団連さんの提案をそのまま言葉として使わせていただいて,「電子出版権」という言葉を書かせていただいておりますが,このような権利を新たに創設するという構成が考えられるところでございます。
 そして,この構成(ⅰ)に関連して※1として記載しておりますけれども,この構成(ⅰ)につきましては,まさに御議論いただいておりますように,「特定の版面」に対象を限定した権利を設定するということが併せて提案されているところでございます。この構成の(ⅰ)で「特定の版面」についての権利を設定できるとした場合の出版権と「特定の版面」についての権利,この2つの権利の関係につきましては,「特定の版面」についての権利を設定するためには出版権の設定を前提とするというアドオン型というもの,それと,その前提にしない,すなわち出版権を設定していなくとも「特定の版面」についての権利を設定できるという選択型,この2つが考えられるところでございます。このアドオン型,選択型という用語につきましては,第2回の本小委員会の際に金子委員より補足説明を頂きました資料と表現をそろえているところでございます。
 そして,この下の図,簡単な図でございますが,この図は先ほど申し上げましたアドオン型と選択型というものを説明したものでございまして,繰り返しになりますけれども,上のアドオン型につきましては出版権の設定がまず前提となっており,その上で「特定の版面」に対象を限定した権利というものを設定することができるという構成でございます。
 また,下の選択型につきましては,出版権の設定を前提としておらず,「特定の版面」に係る権利のみを設定することができるという構成でございまして,これも念のために申し上げますと,出版権と「特定の版面」についての権利,この2つを両方設定することもできますけれども,「特定の版面」についての権利だけを設定してもよいということでございます。
 これらのアドオン型・選択型ということにつきましては,どのようなニーズ,どちらのことを指しているのかというのは,まだこの小委員会の中では明らかになっていないというふうに考えられるところでございます。
 そして※2のところでございますが,構成(ⅱ)の現行の出版権とは別に電子出版権を創設するという場合であっても,この現行の出版権の見直しを必要に応じて行うということを考えられるということを念のために記載をさせていただいております。
 次に,2.の権利の設定についてでございます。1.のところで説明をさせていただきました構成の(ⅰ)と(ⅱ)の考え得る権利の設定方法として幾つかの例を記載させていただきました。この資料に記載させていただいております例が全(すべ)てではないということを,あらかじめ御理解いただければと思います。
 それで,1つ目の例,例1でございます。構成(ⅰ)及び(ⅱ)に共通する例でございますが,著作権者Xが著作物Aについて,出版者Y1に対し,紙の書籍に係る出版権を設定し,出版者Y2に対し,電子書籍に係る出版権を設定した場合でございます。この場合につきましては,構成(ⅰ)・(ⅱ)のいずれの場合においても出版者Y1は紙の出版物についてしか権利を持っていませんので,ネット上における海賊版対策を行うことはできないのではないかということを書かせていただいております。
 2ページ目をお開きください。この2ページ目に記載をさせていただいております例は,いずれも構成(ⅰ)で,かつ「特定の版面」についての権利の設定を認める場合でございます。まず例2でございますが,これはアドオン型を前提とする例でございます。著作権者Xが著作物Aについて,出版者Y1に対し,紙の書籍に係る権利を設定し,その後,出版者Y2に対し,電子書籍に係る出版権,それと「特定の版面」に係る権利を設定した場合でございます。この場合には,Y2の設定した「特定の版面」がY1の版面と同一である場合において,Y2が対抗要件を具備すると,Y1は紙の出版ができなくなるのではないかということが考えられるところでございます。ここで対抗要件を具備というふうに書いてございますけれども,もう少し説明をいたしますと,先ほども少し話が出ましたように,例えば例2のように権利が重複して設定されたような場合に,例えば先に出版権の設定の登録をした者が第三者に対して権利を主張できるというようなことを「対抗要件を具備すると」という言葉で書かせていただいております。
 進みまして,例3と例4でございますが,この例3・例4は選択型を前提とする例でございます。まず例3でございますが,著作権者Xが著作物Aについて,出版者Y1に対し,紙の書籍に係る出版権を設定し,その後,出版者Y2に対し,「特定の版面」に係る権利を設定した場合でございます。この場合には,Y2の設定した「特定の版面」がY1の版面と同一である場合において,Y2が対抗要件を具備すると,Y1は紙の出版ができなくなるのではないかというふうに考えられます。
 最後に例4でございますが,著作権者Xが著作物Aについて,出版者Y1に対し,紙の書籍に係る出版権を設定し,出版者Y2に対し,電子書籍に係る出版権を設定し,その後,出版者Y3に対し,「特定の版面」に係る権利を設定した場合というものでございます。この場合には,Y3の設定した「特定の版面」がY1・Y2の版面と同一である場合において,このY3が対抗要件を具備すると,Y1は紙の出版,Y2は電子書籍の配信がそれぞれできなくなるのではないかということが考えられるということを記載させていただいております。
 資料8についての説明は以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。ただいま事務局から説明がございました資料8について,何か御質問がございましたら。河村委員,どうぞ。

【河村委員】 先ほどの日本書籍出版協会の委員の方,意見を報告された方に質問があります。資料3によく分からないところがありまして,とりあえず質問は,資料3で言わんとしていることは,今の資料8で言うところの選択型の場合のことをおっしゃっているという理解でよろしいのでしょうかということです。アドオン型ですと,資料3でおっしゃっているような目的は達せられないように思うのですが,そういう意味でよろしいですか。

【堀内委員】 先ほどの説明は,一応中山提言をベースにお話をしているのですが,ここの資料で言うと,出版権と特定版面と,選択型の方です。

【河村委員】 続けてよろしいですか。

【土肥主査】 はい,どうぞ。続けて。

【河村委員】 その上での意見なのですが,もし理解が足りないところがあるならば,御指摘いただきたいと思うのですが,資料3を読ませていただきますと,1については,雑誌には本来の電子出版の出版権を設定しましょうということは無理であり,3だけが欲しいとおっしゃっているように読めるのです。
 要するに侵害対策ということだけを雑誌でやれるようになりたい,それだけが目的のように読めて,私は疑問に思っております。また,伺っていますと,「特定の版面」と繰り返しおっしゃっていますが,出版協会さんが言われる「特定の版面」というのは,「特定の版面」ではなくて,版がばらばらになっても,とおっしゃっているように聞こえます。つまり,ある特定のというよりは,全体じゃなくてどの一部分になっても侵害のことを言いたい,言う権利があるというふうにしてほしいということのように聞こえます。
 資料7の日本印刷産業連合会さんが出されている中にあるように,一部の侵害への対応の方法が可能ということで,今のままでもできるということであれば,そもそも電子出版が盛んに行われていくように,消費者,利用者から見ていろいろな選択肢が広がって便利な世界になるようにということを目的に法律が作られるのであれば,今でもできることであったり,著作権者の方が望めばできるということであれば,そちらの方で対策するのが筋ではないかと思いますことと,きょうの発表で著作権者側の方がほぼ全員,[3]に反対なさっているということをあわせて考えますと,消費者としても[3]というのは必要ないのではないかというのが,私の意見です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 では,堀内委員,どうぞ。

【堀内委員】 きょうの議論が中山提言の[3]を中心に議論するということなので,そこを中心に出版側が希望することを御説明したのであって,中山提言の[1]は当然,我々も望んでいるところであり,理論的には[1]の出版権を雑誌でも設定すればできるのかもしれませんが,現状と実務的な観点から言えば大変難しいと言わざるをえない。[3]があれば,雑誌の侵害対策ということに非常に効果があるのではないかと。こういうことで[3]の必要性を中心にお話ししたということです。
 それと,「特定の版面」というのは,今まさにいろいろな議論をされているところですが,私たちが考えているのは,ここの資料にもありますし,今まで何回も御説明してきましたとおり,一番大きな例としては,雑誌に掲載されている紙面のデッドコピーと言うことで,これについて[3]があれば対応できるのではないかと考えて,お話をしているところですけれども,「特定の版面」についてはいろいろな御議論があるかと思います。
 それでよろしいですか。

【土肥主査】 よろしいですよね。はい,結構だと思います。
 では,松田委員,どうぞ。

【松田委員】 堀内委員が先ほど言われ,今も補充したところに対して,最初,永江委員が,そして今河村委員が発言したことは,同趣旨です。堀内委員の言われている[3]の効果というのは本当に上がるのですかという疑問から発しているわけです。私もそれについては疑問を持っていました。お二人の疑問と全く同じです。
 どうしてかというと,雑誌の出版は,明治この方,出版権設定契約ではなくて出版権許諾契約でやってきたわけです。契約がないわけではないのです。あるのですけれども,紙で契約を結ばないで,原稿料の支払だけでもう終わっていたわけです。それはどうしてかというと,1つの原稿は大抵何万とか,場合によっては何千円とかという原稿の対価で支払っていて,一々出版権の設定契約書などを作成することは実務上不可能だからです。
 ところが,堀内委員の話では,紙ベースで契約を結んでいなかった雑誌の記事の出版に関連しては,今度は[3]の契約書ならば作成できると言うわけです。設定できるというのです。出版の部分は許諾契約でもいいのだけれども,[3]部分,版面についてはこの設定契約を結べるんだと,こういうふうに言うわけです。
 私は,なぜそれだったら今まで結べなかったのだろうか,出版権設定契約を結べなかったのだろうかというふうに疑問に思います。結べますかという永江委員の発言に対して,連載物がありますから,それは紙ベースでできますと答えています。逆に言うと,連載物でなかったらできないということですね。やはり紙ベースでちゃんと出版権設定契約ができないということです。ということは,[3]の権利の設定も紙ベースではできないということです。
 にも関わらず,この権利の対象を特定の版に限定するという手法は有益な制度となって権利保護に資するんだということを説明するについては,やはり自己矛盾を含んでいて説得力がない。これはどうして[3]についてはきちんと設定ができて,それを受けた出版社がちゃんと権利行使をして,そして違法を排除できるんだという説明をするのならば,皆さんかなり賛成するんじゃないでしょうか。どうでしょうか。この説得力がどうしても欠けているのです。どうぞお願いいたします。

【土肥主査】 御指名ですので,よろしくお願いします。

【野間委員】 紙,雑誌でこれまでずっと出版権の設定契約を結んでこられなかったということについてですが。正直なところ,業界慣習というのが非常に大きいと思います。これまでの慣習のなかで結んでこなかったということについて,設定契約をしてこなかったということはあると思います。ここにある書籍協会からの資料の第3,1のところに,「現行出版権制度が,最初に発行される形態だけでなく,将来発行されるあらゆる形態の出版についてもその出版権限を包括的に出版者に付与するものである」という,その要素が結構大きいと思っておりまして,これは永江委員がおっしゃるとおり,1回雑誌に書いたら,ずっとそのままそこで出版権の設定契約を結んでしまったら,永遠に契約に拘束されてしまうという危惧(きぐ)を著作権者が持たれるんじゃないかということで,なかなか進まない,ということがあったかと思います。
 あともう1つ,雑誌という形態において継続出版義務ということがいろいろ出ていますけれども,それを果たすことができないのではないかというようなことも考えられるんじゃないかと思います。
 この3が認められれば,契約を結ぶ方向へいくのではないか,我々は契約を結ぼうというふうに思っていますけれども,誌面の全部,全(すべ)てを結ぶというのは無理だと思います。1つの雑誌に何百,もしかしたら何千の著作権者が関(かか)わっているケースもありますので,全(すべ)てにおいて結ぶのは無理だと思いますけれども,できるところから,多分今連載されているものであったりというところが一番やりやすいのだと思います。しかも侵害行為に遭いやすい雑誌や作品ということもありますので,まずはそういったところを踏まえてきちんと契約を結んで対応していくということを考えています。また,既に我々,私どもの会社ですけれども,『モーニング』という漫画誌がございますが,毎週,電子配信を紙と一緒にやっているのですけれども,そこではもう著者との契約を結んでおりますので,そういった対応を今進めておりますから,契約が進まない,意味をなさないということにはならないというふうに思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 はい,松田委員。

【松田委員】 であるならば,[3]じゃなくて[1]の出版権設定契約を結ばれればいいんじゃないですか。そうしたら完璧(かんぺき)に出版者は権利保護できますよ。

【野間委員】 それは実務上のところだと思うのですけれども,「将来発行されるあらゆる形態の出版についても」というところの問題になると思いますが,今実務的に単行本,特に文芸作品などは単行本で出版契約を結ぶ,文庫で結ぶ,また全集でも結ぶと,別々に結んでいる格好になっております。著者の方々の希望というのがそういう形を求めていらっしゃることが大きいと思いますけれども,本当にそこで最初のところで出版権の設定を雑誌掲載の段階でやっていいんですかということを,著者の方々のご意向を逆にお伺いしたいなと。永江先生。

【土肥主査】 いろいろ挙手があったんですけれども,今までまだ発言されていないのは,森田委員。

【森田主査代理】 いや,発言ということではありませんが,松田委員が[1]の出版権設定契約を結べばよいのではないかとおっしゃったのは,先ほど問題になった雑誌限りでというように媒体を限定した出版権の設定契約が現行制度の下でもできるというご趣旨なのかどうかということで,先ほどの金子委員のご説明で,「特定の版面」に対象を限定した権利の設定を認めることの1つの意味は,特定の媒体に限定した出版権の設定を可能にすることにあると言われたのは,現行法のもとではそのような出版権の設定はできないということを含んだものだとすると,この点について現行法に関する理解がずれているような気がしたので,その前提についてちょっと教えていただきたいと思ったのです。

【土肥主査】 質問,誰(だれ)に。

【森田主査代理】 松田委員に。

【土肥主査】 松田委員,今の森田委員の質問にお答えいただけますか。

【松田委員】 雑誌限りで出版権を設定するというのが,現行法上できるかという質問でいいですか。できないんじゃないでしょうか。少なくとも設定契約では無理だと思います。

【土肥主査】 今後,この新しい電子書籍に対応した出版権の制度ができていった場合,いわゆる出版権契約に関するいろいろなモデルというものが今から検討されるんじゃないかと思うんですけれども,そういった中で知恵を出すということは,松田委員,可能じゃないんですか。

【松田委員】 出版権設定契約のやり方に知恵を出せばいいんじゃないかということですね。

【土肥主査】 契約の中で。

【松田委員】 契約の中で。契約の成立じゃないんですか。

【土肥主査】 それも含まれるとは思いますけれども。

【松田委員】 いや,私は契約の成立のことについていささか反論したわけです。1はできなくて[3]はできるという出版権の契約が可能なるのはなぜかと,それを説明してくださいと言ったのです。

【土肥主査】 そうなんだけど,できるとおっしゃっているわけですよね。

【松田委員】 ただ私はできないと言っているんです。

【野間委員】 すでに一部やっておりますので。

【瀬尾委員】 ちょっとごめんなさい。
 非常にこのできる・できないの話もいろいろあるんですけれども,私の意見として,[3]反対写真という話をしましたけれども,ちょっと話が変わります。実は今の電子出版権を創設するのか,出版権の解釈自体を広げるのか,正直,私が中山提言に賛成で3番反対と言ったのは,出版権の意味を拡張するということに賛成をして,そして電子出版権創設に反対をしているというわけではなくて,ここら辺については最も効果的な方法でいいだろうと思うのですが,ただ,あの中で1つ言い忘れたことがあって,言うのですけれども,出版さんが今一生懸命言ってらっしゃったり,いろいろそういうことがあるのですが,海賊版対策をしたいという気持ちは,やはり私は著作者としては酌みたいんです。やはり,それは著作者としても必要だと思います。で,それについての工夫をどうしていくかということは法的にいろいろあるでしょうけれども,ただ今回の私はとにかく心情的にも実際の問題としても,電子の時代に海賊版対策を今考えたいとおっしゃっている出版者さんの意は酌んだ方向にしたいというのは,3番反対と言いながらも残っているというのを,著作者団体としては申し上げたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 村上委員,どうぞ。

【村上委員】 議論の仕方ですけれども,私は主査の言うとおり,契約でやることに不可能はないので,雑誌だろうと何だろうと契約で出版のどの部分にどういう権利を定めるというのは,これはどこの国でもやっている,アメリカでもやっている話なので,契約書を工夫してそういうことを当事者で合意の上で決めると,これは絶対にできないということはなく,どんな媒体であれ,どんな著作物であれ,それはできる話だろうと思います。
 ただ,ここで議論しているのは,そうではなくて,契約だけだと海賊版への対策はできないから,出版権,若しくは電子出版権という権利を保障して,それで差止め請求権を行使させるようにしようというのが,そもそもの,ここの議論の出発点だろうと思います。
 それで,差止め請求権も前回だとかなり狭い感じで捉(とら)えられていましたけれども,差止め請求権一般という意味では,私はもう少し広めに活用できる権利だと思っています。民事訴訟法では差止め請求権は,これは法律学者的な議論になりますけれども,給付の訴訟で,現在給付の訴訟と,それから将来給付の訴訟と分かれますけれども,いずれにも当たると解釈されている。というのは,現存する違法行為を差止めできるだけではなくて,一般的に反復継続される危険性があるとか,若しくは緊急の必要性がある場合には将来行われるものであっても差止め請求権は行使できる。これは一般的な差止め請求権の理解だろうと私は思っています。
 それから,差止め請求権者が行使できる場合には,本訴で延々やるものじゃなくて,仮処分でやるというのは,どの国でも同じことだろうと思います。そういう意味で,差止め請求権というのはもう少し広めに使える。
 だから,それを認めるためには,ある程度出版権を保障しなければそれが使えないから,出版権を与えようという議論をずっとしているわけだろうと思うわけで,そういう意味では,せっかく主査から特定の版面については議論も分かれているし,しかも著作権者の反対も結構多いのだから,もう1回後で議論しようという形で整理してもらったのを,もう1回ここの「特定の版面」のところだけに限ってまた議論を蒸し返していくというのは賢明ではないので,むしろストレートに議論を進めたほうが,つまり,ここに書いてある現行出版権を拡張して電子書籍を含めるべきか,それか,若しくは電子書籍を対象とした電子出版権というものを創設して,海賊版対策をやるべきかという,そこのところに先に絞って議論して,どうしても「特定の版面」の議論に入り込むと,そこは決着がついていないところをもう1回議論しているわけなので,決着がつかない話になるので,後で議論する話でいいだろうと思います。私は電子出版権として書籍のほかに新たな権利を認めたからといって,出版者にとって決してマイナスになるということではないと思うので,アメリカなんかの事例を見ても当然1つの契約書で両方のことをカバーする契約書でやるというのは当たり前の話だろうと思いますから,そういう努力は当然出版者としてはするのだろうと思いますし,実際にアメリカではしていると聞いています。
 ただし,著作者に別の者に電子出版権を与える権利,その余地は残すために,分けて電子出版権というのを設置した方が多分いいのではないかと思います。私はその辺から初めて,更に電子出版権を創るのなら,それを書籍の出版権と準じてどの程度の権利のものにするかとか,それに更に細かくする必要があるのかどうかという,それを議論する感じの話になると思います。個人的には電子出版権というのは,まだ取引慣行が必ずしも確立していない感じなので,私の専門分野で競争法で問題になる欧米の事件となっている事例を見ても,結局価格決定権をどうするかというので,アメリカですらエージェンシー・モデルとか,リセイラーモデルとか,いろいろな流通慣行が併存していて,まだ確定していないのが電子書籍の取引だろうと思うので,細かなことを決めるのは避けるべきだと思います。前回議論でもサブライセンスなんかの話をお互いそこで割り切って書くという,そういうことはなるべく避けてという大まかな形で,書籍の出版権に準じた形で法律構成していくべきかなと思います。そういう形で進めないと,もう1回ここで版面権の是非をめぐってやりますと,何か議論がいつまでたっても進まないような気がいたします。

【土肥主査】 ありがとうございます。
 いいですか。はい。

【森田主査代理】 この採りうる法的構成に関する議論ですが,きょうの前半の議論で明らかになったことは,「特定の版面」に対象を限定した権利の設定を特約で認めるというのは,出版権の設定とは別にそのような権利の設定を認めるかというだけではなくて,そもそも出版権の内容を「特定の版面」に限定して設定することをできるようにするかということ論点が,この議論の中には含まれているということであったかと思います。
 きょうの資料8のアドオン型・選択型を示す図を見ますと,「特定の版面」に対象を限定した権利と出版権というのは何か別個独立のもののように見えますけれども,それぞれの概念規定からいきますと,「特定の版面」に対象を限定した権利というのは,例えば複製権を想定しますと,「特定の版面」に限定して複製権の上に専用実施権を設定したのと同じようなものであり,他方で,出版権というのは,「特定の版面」という限定はないけれども,頒布目的という別の目的による制限が加わった形で複製権の上に専用実施権を設定したようなものであるとみることができるわけです。そうしますと,両者は内容的にはオーバーラップする部分があるということになるのではないかと思います。
 資料8の2ページ目にある3つの例で,「特定の版面」に限定した権利の設定を受けた者が対抗要件を備えると,出版権の設定を受けた者は出版ができなくなるというのは,両者の権利の内容がオーバーラップしていることを示すものであります。そうしますと,この図そのものがもうそのままでは維持できなくなっているのではないかというふうに思います。
 選択型の図のほうの「特定の版面」に対象を限定した権利というのは,「特定の版面」に限定はしますけれども,この左の出版権の内容もその一部に含む形になっていると思いますし,アドオン型の図のほうの「特定の版面」に対象を限定した権利というのは,「特定の版面」に限定した範囲で出版権の内容を拡張する部分のみを対象としたものになっていて,両者はその内容を異にするので,「特定の版面」に対象を限定した権利とその出版権との関係でその内容をもう1度整理をしないと,そのあたりの議論が混乱してしまうのではないかと思います。「特定の版面」に対象を限定した権利の設定を認めることの意義には,「特定の版面」に限定して出版権の設定を認めるという面と,出版に必要な範囲を超えて権利を設定するという面の双方があるので,この2つを区別して議論をする必要があるのではないかということです。
 この点で,前回申し上げました,出版権を設定する場合に,単一の者が紙媒体の書籍と電子書籍の双方を含んだ全ての出版権を有する場合には,それで海賊版対策も全部できると思いますが,複数の者が紙媒体の書籍と電子書籍のいずれかに限定された内容での出版権を有する場合には,そこで付与された出版権だけでは海賊版対策には十分対応できないというときに,その内容を拡張して権利を付与する必要がある場合が出てくるのではないかと思います。特約で「特定の版面」に対象を限定した権利の設定を認めるという議論の中には,このような場合に,海賊版対策を可能とするために出版権の内容を拡張するということも含まれているように思います。したがって,この「特定の版面」に対象を限定した権利という議論の中にも,異なるディメンションのものが幾つか含まれていますので,それらを仕分していかないと,議論の整理ができないのではないかという感じを持ちましたので,そのあたりの整理を事務局においてしていただくように,私としてはお願いしたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 先ほど村上委員の方からかなり本質的な点でのご指摘があったので,少しだけご説明しておいた方がいいと思います。契約だったら何でも自由に決められるではないかという話なのですが,これは前提としては別途,排他的な債権的な契約に基づいて差止めができるかというのは論点の1つですけれども,ここで議論しているのは,設定出版権という物権的な権利なので,契約で何でも決められるという性質のものではないものについての議論として行っています。前に松田委員が言われたように,任意規定だからある程度契約で変えていいとか,そういうレベルのものは別として,物権的権利だから枠はかちっとした固いものだという前提で来ています。
 それから,先ほど現行法で出版権が媒体ごとにできるかできないかというのは,おそらく余り本格的に議論がされていなくて,余り議論が詰められていないのが現状でありますし,ここでやっているのは立法論ですので,現行法後の今後の話であります。現行法ではおそらく私が見ているとオープンな感じであって,法律構成の点にもからんでどちらの議論もあり得ると思われます。このようなオープンな論点はこの出版権にたくさんあるわけですけれども,そこを今更現行法の解釈論的にぎりぎり詰めていくことにはさほどの意味はなく,現状は現状でオープンであるという認識の下で来るべき立法をどう考えていくのかということが重要であると思われます。そういうことで,ある程度はっきりしているところははっきりしているし,オープンなところはオープンだという認識の下で進めていかないと,立法論の議論は前に進まないのではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 あんびる委員,どうぞ。

【あんびる委員】 済みません。今もう出版書籍に対応した出版権という議題に移ろうとしているところで,大変申し訳ないと思うのですけれども,「特定の版面」の問題で,皆さん活発な議論の中で,これは媒体を指定していることを差しているのではないかとか,いろいろ御意見が出ているのを聞いていたのですけれども,私たち著作者としては,どの団体からも,そもそも原画や原稿というものと,版面というものが別のものであるのかどうか,そこに別の権利があるのかどうかということが問題というか,はっきり申し上げますと,著作者としては別に版面というものに原画と違う権利が宿ってくるというものではないのではないかということを意見書でもって申し上げたと思うのです。
 今この議論が総体的にいろいろな方向に進んでいくのは,もちろんいいことだと思いますし,否定はしないのですけれども,そもそもの問題として,原稿と版面というのがどういう関係にあって,版面について出版者が著作者と権利を享有共有できるものなのかどうかという問題もはらんでいるということを忘れずにお考えいただきたいと思います。
 ありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 金子委員,どうぞ。

【金子委員】 今まで幾つか出てきた点について,若干前の議論にも戻る部分もあるかもしれませんが,きょうの議論も踏まえた上で,私の立場から説明をしたいと思います。
 まず,先ほどの版面の限定についてですが,先ほどの議論において企業内複製などの方に拡張するという側面ではないと。これについては今回の議論では改正の対象としないということになり,むしろ今の段階で,我々の提言の中で〔3〕として議論されているのは,包括的に著作物についてあらゆる利用形態についての出版権,電子出版,出版について設定するというオプションのほかに,その選択のほかに,別のオプションとして,特定の版面,あるいは特定の媒体だけに利用を限定して,物権的な権利を設定することができると。そういう選択肢も用意すべきではないかというのが,今の議論における我々の提言の〔3〕の意味であります。
 その意味では,これは,〔1〕だけの制度設計に比べて,むしろ作者により多くの選択肢を与えるものであります。版面と原稿について,それぞれが別のものか,同じものかという点については,むしろそれは同じ著作物であるということを前提に,ただ,それについて包括的な出版権,電子出版権を創設すると,あらゆる利用形態に及び得るところを著作者が特定の版面,あるいは特定の媒体等に利用を限定したいと望む場合には,そのような限定も可能にすると,そういう選択肢を著作者に与えるものであります。
 他方で,写真などの例において,例えば版面による限定というものがそもそもその著作物と一対一対応のような関係になっていると,そのような場合については,その版面による限定ということを著作者が望むということは少ないだろうと思います。そのような場合については,そのような特約をつける意味はなく,著作者にとっては出版権を設定するか,しないかという選択肢があるということになります。
 他方で,著作者が版面による限定というものを望む場合には,そのように限定した形で物権的な権利を設定できるというふうにした方が,より,その権利が設定しやすいのではないかと思われます。そのような形で,雑誌などについても,その包括的な利用についての権利ではなくて,著作者が当該雑誌の版面,あるいは媒体等に利用を限定して受けられるという制度の方が,著作者・出版者にとってそのような本来望む関係に対応した権利の設定というのが可能となり,それが侵害対策等にも有効なのではないかというのが,書籍出版協会の委員の方々から示されている御意見ではないかと思います。
 ですので,基本的には〔3〕というのは著作者の権利を減らすものではなくて,著作者により多くの選択肢を与えると,そういう性質のものであるということを念頭に置いていただきたいと思います。
 また,先ほどご質問のあった,現行法でどうなるかという点については,以前の審議会で申し上げて,私自身は現行法の解釈で可能かと思いますが,それとは別に立法論として可能と,そのような選択は物権的な効力をもつものとして可能だということを明確にすべきだというのが,我々の提言の趣旨であります。
 また,侵害対策という面については,この出版権の権利内容以外に様々な制度設計があり得るだろうということも,それはあり得るだろうと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。どうぞ。

【吉村委員】 どこの段階でどういうふうに議論に入ったらいいかなということを含めて,なかなかきょうの議論の進め方は難しいと思って聞いておりました。
 時間もないので,詳細な議論は致しませんが,きょう,今後は企業内複製に関するところは検討事項から捨象するということが大体決まったというのは,よかったと思います。我々としましても海賊版対策をしっかり行い,特に電子出版のビジネスの発展ということに寄与できるような議論を早急に出すということが大事だと思っております。
 そういう中で,「特定の版面」という話はいろいろ言えばきりがないのですけれども,基本的には「版面」というものはうまく設定できないし,電子書籍の時代においてはことさらに難しいと思っています。仮にフィックスしたものが「特定の版面」として設定できたとしても,少しでもレイアウトが違ったものについては別の版面になるわけですから,そういうそれぞれの「特定の版面」に関する権利者,すなわち似て非なる版面の権利を持っている人がたくさん出てくるということもあり得るわけでございます。
 さらに,「選択型」を採用した場合,電子出版権を持っている人であっても,第三者対抗要件である登録をしなければ,特定の版面に関する権利者に勝てないということになります。そうすると,今,我々はサブライセンスについても検討していますが,その場合,当然,サブライセンスを受けてビジネスをする人は,電子出版権を持っている人に対して,第三者対抗要件を具備してくださいということになります。だとすれば今ほとんど使われていないと言われる登録制度を利用し,1件3万円の登録料を,全部の雑誌について払っていくことになりますが,書協さんはそれでいいのでしょうか。
 他にも,先ほどの雑誌の契約の話など,いろいろ問題があります。そうしたことをいろいろ考えると,本当に[3]を採ることが,書協さんが最初の制度の方向性というところで書いている「大小様々な出版者から出版されているという現状をふまえ,現行出版実務の中に無理なく組み込める制度であること」という考え方を具現化する制度なのかというのは,私には全く分からないというふうに考えております。
 かつ,いろいろな皆さんからも[3]については賛成の声はないので,ざっくり言えば,やはり本質的に問題があると言わざるを得ないのではないかと思います。
 細かい議論をすれば切りがありませんが,時間もないので,方向性としては[3]は望ましくないということだと私は理解しております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 金原委員,どうぞ。

【金原委員】 先ほど,松田委員からも発言があったとおり,[1]の出版権があれば全(すべ)ての海賊版にも対抗できるのだろうというふうに私は思います。しかし出版物,書籍も雑誌も様々な形態,様々な著作者の方々との話合いがあるわけで,必ずしも紙・電子両方について出版権の設定ができるという,そういう状況ではない。あるいは1つの著作物について複数の著作権が設定されるという,そういう状況が現実にあるわけですから,そこで[1]の出版権があれば海賊版に対抗できるということには必ずしもならない。それで妥協として出てきたのが,我々は[3]だと思っているわけです。
 [3]を特定の版面に限定して,この版面という言葉も必ずしもこだわっているわけではなくて,我々として考えていただきたいのは,紙媒体で出版されたものがスキャンされて,海賊版として電子で出回ってしまう,これを何とか止めたい。これができれば,必ずしも[3]にこだわるものでもないし,ほかの用語でもいいのかなと。それから出版権という用語でもなくてもいいのかもしれない。何らかの形で第三者がスキャンしたものが電子的に流通することに対して対抗できる何らかのものが必要だと。それ以上のことについては,先ほどから企業内複製の話も出ましたけれども,書籍出版協会としても必ずしもそこにこだわっているわけではないし,それをやってしまうと,日本複製権センターの管理業務にも影響を与えるし,それは我々の意図するところではないということについて,是非お酌み取りいただきたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。時間も残り少なくなっておりますけれども,御意見がありましたら,今お出しください。
 松田委員。

【松田委員】 私が[3]に反対しているかのような受けとめ方をされておりますが,決してそういうことはありません。書協に対する意見も,この権利実行ができるのであれば,[3]でできるのであれば,それは有意義だというふうに私は言っております。
 ただ,[3]の契約ができるんですかという質問をしているんです。それについては,私は正直言ってまだ疑心暗鬼でありますけれども,[3]の契約が雑誌についてできるというのであれば,それは従前の契約の成立と違う方法でするというふうに言わないと,説得できないんじゃないですか。そうすれば,それができるのであれば,雑誌社も電子出版で利用されてしまうものを差止めできるでしょうというのは,極めて納得できると思います。それであるなら,私はむしろ[3]に賛成したいと思っています。

【土肥主査】 金原委員,どうぞ。

【金原委員】 松田委員の御指摘はごもっともでありまして,書籍出版協会として提出して資料3の第1の3に,大小様々な出版物が発行されているわけですが,その出版実務の中に無理なく組み込める制度であるということが必要であろうということです。ですから契約がないと,これは特約で決めていくわけですから,何らかの契約は必要なのですが,現在の出版権設定契約のような形では私も機能しないだろうと思います。無理なく組み込める何か新たな方策を我々も考えなければならないと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか。はい,村上委員,どうぞ。

【村上委員】 今の議論を詰めていくと,結局は,例えば電子出版権ができた場合でも,モデル契約みたいなものをどう作るかというので,著作権団体と出版者がいろいろ詰めるという形で,そこのモデル契約とか,契約内容を,例えば今のものが不十分だとするならば,どういうふうに直して,どういうふうに決めていくかという問題に尽きるような感じがいたします。

【松田委員】 済みません。補充させてください。
 モデル契約は今の段階でも書協はちゃんと作っているのです。だけど,雑誌についてはそのモデル契約を結んでいないのです。だからどういう契約かというと,出版権設定契約は解釈上無理なんです。ライセンス契約として解釈されるのです。なのに[3]の制度ができたらば,そして書協がそれに対するモデル契約を作るでしょう。で,モデル契約を作っても,今の雑誌の契約形態からそれは無理でしょうと,私は言っているわけです。今だって,できるものを,[3]ができたら,モデル契約をみんな結ぶなんていうことを,私は考えられないと,こういうふうに言っているのであります。
 だから,どうやって契約を結ぶのかという書協の対策を聞いているわけです。制度を作ってこれが実施されないというのでは,制度は死んでしまいます。特に雑誌について[3]が求められている。書協の雑誌[3]対策を示してくださいと言っているのです。

【土肥主査】 じゃあ,前田委員。

【村上委員】 契約自由の原則というのは両方にあるので,それはある程度やむを得ない問題ではないのでしょうか。単純に契約自由の原則のもとで契約に任せるとか,若しくは取引慣行の成立を待ってから議論するという,そういう意味でよろしいんじゃないでしょうか。

【土肥主査】 いずれにしても,結局,全(すべ)ての委員がおっしゃっておられるわけですけれども,必要なことは,今紙で,雑誌で出ているもの,これをスキャンしてネットに上げられて,それをどうやって止めるかということが非常に重要なわけですね。
 で,その1つとして,例えばこの「特定の版面」についての権利という提案が示されましたし,問題の解決に十分利用できるのではないかという意見もございました。いずれにしても,この委員会において何が重要なことかというと,やはり現実に起きている侵害事例に対して実効性のある制度を作ると。そのために,もし出版権の中に「特定の版面」のようなものを選択肢として新たに入れることがいいのであれば,そういう選択肢もあるだろうし,あるいは別の方策も考えることができるのではないかと思います。いずれにしてもきょうの委員会の中で一応大きな方向性というのはできてきたのだというふうに思います。
 金子委員もおっしゃっておられるところというのは十分説得力のあるものだというふうに私も思いますので,つまり選択肢という,1つ新たに増やすことは決して当事者にとって不利なことではないという御主張も十分分かるわけであります。あとは当事者がどう利用するかという,そういうことではないかなと思います。
 いずれにいたしましても,きょうのところのペーパーの中で,資料8というのは村上委員もおっしゃったように重ねてという面はありましたが,事務局としても委員会の議論の進捗(しんちょく)がどちらに動くかということは,予測できないものですから,従来ある前提の経過を受けて,こういうものを用意したということでございます。
 あと,登録,対抗要件の問題というのは,やはりこの委員会においても一度議論はしておかなければならないことだと思いますので,事務局におかれましては,そういう法的な問題の整理,さらにはコストとして成立しないというのもやはり困ったことになるので,そういうようなことについて,何か事務局において提案ができるのであれば,是非伺いたいとも思っております。これは役所の枠を超えることでもあり,非常に難しいことかなと思いますが。
 本日,皆さんに熱心な御議論を頂いたわけでございますけれども,もう時間が何分来ております。そこで,お許しを得て本日はこのくらいにいたしたいと思っております。
 最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 本日は御議論ありがとうございました。
 次回の出版関連小委員会でございますが,7月29日(月)17:00から,本日と同じく東海大学校友会館にて開催をする予定でございます。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会出版関連小委員会第5回を終了させていただきます。本日は誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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