第10回国語分科会漢字小委員会・議事録

平成18年9月11日(月)

10:00~12:00

三菱ビル地下1階M1会議室

〔出席者〕

(委員)阿刀田分科会長,前田主査,林副主査,阿辻,市川,甲斐,金武,東倉,松村各委員(計9名)

(文部科学省・文化庁)平林国語課長,氏原主任国語調査官ほか関係官

〔配布資料〕

  • 1 第9回国語分科会漢字小委員会・議事録(案)
  • 2 第10回漢字小委員会における検討事項

〔参考資料〕

  • 1 漢字小委員会で検討すべき今期の論点(第6回漢字小委員会確認)
  • 2 第9回漢字小委員会における検討事項
  • 3 阿辻委員からの提出意見

〔参考配布〕

  • 1 芥川龍之介の「龍」について等

〔経過概要〕

  • 1 事務局から配布資料の確認があった。
  • 2 前回の議事録(案)を確認した。
  • 3 事務局から,参考配布の資料についての説明があった。
  • 4 事務局から,配布資料2について,参考資料と関連させた説明が行われた。説明に対する質疑応答の後,配布資料2及び参考資料1~3に基づき,配布資料2の「2 新たに検討すべき本日の論点」,「1(2) 前回の「本日の論点2」の内容」について意見交換を行った。
  • 5 次回の漢字小委員会は,10月24日(火)の10:00~12:00に,三菱ビル地下1階・M1会議室にて開催することが確認された。
  • 6 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。

○前田主査

 参考配布の資料については,特に御質問がないようですので,配布資料2の説明に関して,何か御質問があれば,お願いします。

○甲斐委員

 氏原主任国語調査官の説明の中で,大阪の「阪」,奈良の「奈」,岡山の「岡」がよく使われているというのは分かるのですね。例えば岡谷とか,「岡」はいろいろとある。人の姓にもある。それで問題は「鶴」ですけれども,「鶴」は何でこんなに頻度が高いのですかね。やはり地名でしょうか。

○前田主査

 地名でしょうね。「鶴」は常用漢字ではないので,教科書などで動物名として,この字を使うということは基本的にはないと思います。

○甲斐委員

 確かに出てこないですね。そうすると,地名ならこれは出てくるわけでしょうか。

○氏原主任国語調査官

 御参考までに申し上げますと,『漢字出現頻度数調査(2)』(文化庁国語課)の中で,「鶴」は1,135位に出てきて,出現回数が5,191回ですけれども,出現するジャンル別に見ていきますと,辞典類445回,単行本2,238回,月刊誌888回,それから古典類1,620回となっています。

○前田主査

 単行本に多く出てきますが,人名もあるかもしれませんね。

○氏原主任国語調査官

 そうですね。それから「鶴亀(つるかめ)」とか,そういう熟語として使われているケースもあると思います。ただ,おめでたい名前ということで,主査がおっしゃったように,やはり固有名詞が多いのだろうと思います。もちろん一般書籍では,動物名としても結構使われているだろうとは思いますが…。

○東倉委員

 質問ですけれども,配布資料2の「2 新たに検討すべき本日の論点」のところで,今の人名用漢字を常用漢字に移すと,人名用漢字をいじらなければいけなくなるという説明がありました。過去に人名用漢字から常用漢字になった例というのはないのですか。

○氏原主任国語調査官

 それはあります。

○東倉委員

 その時はいじったわけですね。

○氏原主任国語調査官

 はい,そうです。お手元に『国語審議会答申・建議集』という小さな,白い厚い冊子があると思います。この中に「表外漢字字体表」の答申が出ていまして,406ページを見ていただくと,参考として「人名用漢字の字体一覧」があります。昭和26年の時には,人名用漢字は92字でした。常用漢字表ができた時に,仙台の「仙」とか,さっき話題として申し上げた「龍」,括弧の中の方の古字というか,簡単な方の「竜」とかが入ったわけです。全部で7字常用漢字に入ったので,ここから,つまり92字から7字抜き出しているのですね。それから,51年の人名用漢字追加表のところにも,「悠々」の「悠」という字がもともと入っていたのですけれども,これが常用漢字になったので,やはり1字抜いているということで,このような形で動かしたということはあります。

○東倉委員

 そうすると,今までの人名用漢字が常用漢字になったということで,半自動的に人名用漢字から抜けるというような考え方もあるわけですね。

○氏原主任国語調査官

 はい,あります。ですから,今回もそういうふうになれば多分同じようなことになるだろうと思います。

○阿辻委員

 配布資料2の「1(2) 前回の「本日の論点2」の内容」の(2)のところです。私,前回加われませんでしたので議論を把握してないのですが,「名前を付ける場合の参考にしてもらうということ」というのを,この委員会で提案すること自体の当否は検討されたのでしょうか。つまり,「常識的な名前を付けなさいよ。」とか,「熟字訓的な読みはなるべく控えなさいよ。」とか,というようなことは,新常用漢字表を考える委員会の権限の中に入るのかという,素朴な疑問です。

○氏原主任国語調査官

 固有名詞についての基本的な考え方をまとめるというのは,文部科学大臣の諮問の中にもあるように,ここでやらなければいけないわけです。その考え方をまとめるときに,つまり固有名詞についての考え方をまとめるわけですから,固有名詞についてはこんなふうに考えていきましょうというのが幾つか並んでくるわけです。
 新たに名前を付ける場合の参考にしてもらうというときの大事な要素は,実は矢印で示した二つがあって,「新たに」というところに一つ重きがあります。もう既に付いているものについては,それを変えろとか,そんなことはとても考えられないので,これから付けるときには考えてくださいということです。二つ目の矢印の,「歴史上由緒のある地名を尊重していく」とか,既にあるものについては大事にしていこうということを前提とした上で,「これから付けていくときには」という,そういう姿勢が大事だろうということと,名前に関して,余りにも突拍子もない名前を付けていくということについては,やはり,どうかと思うということを,国語分科会としても提案していく必要があるのではないかという方向は既に確認されていたと思います。
 それで,こういう形でまとめまして,これについては前回の議論でも,aとbについてはやはりこういった辺りが考え方をまとめていくときのポイントになっていくだろうということで,この小委員会でも支持されていたということです。ただし,どのような言い方で表現するかについては慎重に考えていく必要があるだろうと思っています。

○前田主査

 そのほか何か御質問はございませんでしょうか,よろしいでしょうか。
 それでは,配布資料2についての質疑はこれで打ち切りまして,これから協議の方に入っていきたいと思います。
 本日は,先ほどの説明を受けまして,特に配付資料2に基づいて,まず「2 新たに検討すべき本日の論点」の議論から入り,次いで「1(2) 前回の「本日の論点2」の内容」の議論に入っていくことにしたいと思います。できれば本日の議論で固有名詞の扱いに対する漢字小委員会としての共通認識と申しますか,基本方針と言いますか,そういったものを固めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それで,協議として,「2 新たに検討すべき本日の論点」のA,B,Cについては密接に関連しておりますけれども,基本的にはAの議論から入って,「岡」とか「奈」とか「阪」とかなどを新常用漢字表(仮称)に入れる方向で考えるかどうかということを検討したいというふうに思います。

○阿刀田分科会長

 入れるとどうまずいことが起きますか。何か定義に反することでもありますか。

○前田主査

 入れるものと入れないものとの間の区別ということを,どう説明するかということがあると思います。入れる場合には,これは例外として入れるとすると,なぜ例外としたのかと言われる。その時に,例えば使用順位とかいろんなことを説明できるようにしていなければいけない。それから,この「岡」「奈」「阪」の三つを入れまして,あるいはそのほかのものを入れるというふうな場合に,どこからは入れるかというふうな判断の基準,このこともやはり議論していかなければいけないと思います。

○阿辻委員

 例えば,都道府県の名前だけというふうに網を掛けるというのでしょうか,都道府県だけと絞り込んだら,例えば埼京線というのは,固有名詞なのか一般名詞なのか,なかなか判断が付かないところがありますので,そうすると,埼玉の「埼」という字は都道府県名ということで拾えるわけです。後は市町村のどこまで広げていくかという問題。これは膨大なことになってきますので,例えば都道府県の名前に使うのでしたら「熊」とか「鹿」とか全部そこに包括できるわけですので,長崎の「崎」とか,例えば,そういう網の掛け方ということの当否をお考えになればどうかな,と思いますが…。

○甲斐委員

 私も参考資料2の2ページの1番を見て,配布資料2の「2 新たに検討すべき本日の論点」のAだけを見ると「岡」と「奈」と「阪」だけですから,これは大変楽だったろうと思います。ところが実際は,表看板はこの三つで,「これぐらいだったら入れていいじゃないか。」,「都道府県名の追加で。」ということになり,それをもしよしという方向で行くと,参考資料2の2ページの1番の(1)~(11),これがドドッと入ってくるわけですね。都道府県名だけは入れようということになると,下の方の「梨」「鹿」「熊」というところも入ってきます。これらは動植物名になります。そうすると,※1の「燕」とか「鶴」とかいうところがまた問題になってくる。「鹿」や「熊」を入れるのは都道府県名ということで入れたのだ,動物名ということではないということであれば,それは何か考えられると思うのです。
 けれども,何かなし崩しに次々と入れていくと,「新常用漢字表」の漢字がどんどんと増えていくなという,もっと別に入れないといけない,一般の使用で多い漢字もあると思うのですね。そちらの検討を今ちょっと置いて,固有名詞のことを考えているわけですから,どれぐらい増えていくのか気になるところです。それから逆に,現在の常用漢字表の漢字で削ろうというのは,たとえ1字であったとしても,莫大なエネルギーが必要だと思うのです。前のときもそうだったので,結局1字も削れなかったということになった。やはり日本社会は複雑で,いろいろと差し障りが出てきますから,削る方は難しい。そうすると我々のこの小委員会で,都道府県名に限ってというようなことで,そこの確認ができたら私は,この11字種であれば賛成するのですけれども,更に「燕」,「鶴」,「鵜」とか「鷹」とかというところまで入ってきて,順位がどうだというところまで行くと,これはまた御破算ということになるのではないかと思います。

○松村委員

 私も常用漢字の今度の字数がどの程度になるのかということが一つ問題かなと思うのです。それで,甲斐委員がおっしゃったことですが,私も同じように,大阪の「阪」,奈良の「奈」,岡山や静岡の「岡」の三つくらいなら,これは漢字力が割合落ちていると言われている今の小中学生でも書けます。そうすると,常用にして平易ということを考えれば,この程度は入らないと変じゃないかと実は思っていたのです。ただ,そうすると(1)から(11)まで,これをどこで線引きをするかというのはかなり難しいことになるでしょうから,全体をどうするかということを考えていくと,実際に常用漢字がどんどん増えていく方向になってしまい,この都道府県名が入るということになると,ちょっと考えてしまうなというところです。
 それから,下の動植物の名前については,「鶏」がこの常用漢字に入っているということでいうと,普通の一般生活の中でも,「鶏卵」であるとかあるいはことわざや何かも含めて,やはり日常生活の中で密着した言葉としては,常用漢字であることが妥当だなと思うのです。でも,それ以外のものについてまで入ってくるとなると,常用漢字の入れ物の方がどの程度になるのかということがあって,これだけの議論ではないような気がします。

○市川委員

 私もやはり動植物の名前を平仮名にするという,前に決められた基準は一体どこにあるのだろうなというのを,率直な疑問としてちょっと感じています。なぜ動植物の名前は平仮名にしたのかという経緯を御存じならば教えていただきたいと思います。
 それから,奈良の「奈」みたいなもの,これはよくよく考えると平仮名の「な」の元の字なんですよね。平仮名で使っている字も元を考えれば「奈」を使っているのですよね,ある意味では。そういう平仮名で使っているものでも駄目だというのは,ちょっとおかしいなと感じます。平仮名の元の漢字は,当然,常用漢字に入ってしかるべきではないのかなと私は思います。

○氏原主任国語調査官

 当用漢字表で,「動植物の名称は,かな書きにする。」としたのは,仮名で書いても,紛れることがなく差し支えないだろうという判断があったということと,もう一つは,当用漢字は1,850字なんですが,全体の漢字数をある程度のところで抑えたいということがあったわけです。なるべく漢字の数を減らしたい。そのときに,仮名で書いてもいいものは仮名で書くことにすれば,漢字の数をある程度抑えることができるだろうというような議論があって,動植物名については,仮名で差し支えないだろうという判断の下に決められたということです。ですから一番大きかったのは,全体の漢字数を減らすということだったと思います。

○市川委員

 その1,850字の根拠,その数字の根拠になったものは何なんですか。

○氏原主任国語調査官

 1,850という数字が最初から考えられていたわけではありません。最初に当用漢字表の字数を議論した時には,1,300ぐらいの漢字表を目指したのです。ですからもっと少ない数を考えていたわけです。具体的に申し上げますと,当時1,295字の「常用漢字表案」というのが実はできるわけです。これは,当用漢字表になるもう一つ前の段階なんです。それでなぜ1,300かというと,そのぐらいであれば漢字を覚える負担も非常に軽くて済むだろう。学校教育の中でやっていくわけですから,余りにもたくさんの漢字があると,難しいという議論があって,1,295の漢字表ができるわけですわけです。けれども,それでは余りにも少ないのではないか,現実の生活では,これではやっていけないだろうということで,必要な漢字を追加していくという形で,その常用漢字表案に追加された形が当用漢字表として認められるわけです。ですから,1,850というのは結果としてなったということで,当初はもっと少ないものを考えていたということです。

○阿辻委員

 これは参考資料2の2ページの,先ほどから話題になっています1ですが,「常用漢字表にない都道府県名漢字」は,この11で全部でしょうか。

○氏原主任国語調査官

 はい,全部です。

○氏原主任国語調査官

 はい,第1水準だと思います。

○阿辻委員

 そうですよね。実態はそういうことですね。

○金武委員

 以前にも申し上げたのですが,余り都道府県名を入れる,入れないということを先に考えていると,ちょっと議論が難しくなるものですから,まず出現順位,使用頻度と理解度,読み方が分かるかどうか,そういう調査をすることが,現在の常用漢字も含めて前提となっていると思うのです。そうして,使用頻度と理解度,読み方などを総合した順位表を作って,全体の常用漢字の数がどのくらいであるかという,ある程度の同意が得られればそこのところで線引きをして,その中にこの都道府県名が全部入っていれば,一応それは客観的な基準にはなると思います。
 それから,もし入らなかった場合,ほかとの関係でどうしても都道府県名だけ入れるのであれば,その時にその理由を考えればいい。
 そしてその常用漢字の定義にもかかわってくるのだけれども,常用漢字の定義が非常に使用頻度が高くて,だれでも意味が分かる,あるいは読めるというような定義であれば,例えば,大阪の「阪」のように熟語として,一般用語として使わなくても,一応常用平易ということで表に入れることは可能ではないかと思います。だから,その定義付け次第で,大阪の「阪」はもうほかに利用範囲がないから,これは常用漢字表に入れるのはおかしいという意見が強ければ,今はちょっと難しいにしても,固有名詞の表の方に入れざるを得ないことになる。固有名詞の表を別に作らないのであれば,頻度が高いこういう都道府県名のような字は常用漢字表の中に入れた方がいいだろうと思います。

○東倉委員

 都道府県名ということは常用漢字に新たに加えるという一つの理由にはなると思いますけれども,今,御意見が出たように,一つの理由だけじゃなくて,幾つか,その常用平易ということを駄目押ししておく意味でも,理解度,出現頻度,いろんな面からこういうものは結果的に入ってくるのだよという言い方が非常に納得を得られやすいだろうと思います。それは,常用漢字というものを今までの経緯でできるだけ数を少なく抑えようという,そういう姿勢があるわけで,そういうことから最小限これだけは入れるのが自然だという言い方を取った方がいいのではないか。
 さっき数の議論が出ましたけれども,増やして2,000を超えるとすごく増えたなという感じになるでしょうし,今1,900の半ばですから,それから多少増えてまだ2,000に届かない,大分間があるというところは,数字的にちょっと増えたかという心理的な感覚を持つのじゃないかというような気持ちがしますね。

○前田主査

 どうもこれだけで決めることはなかなか難しいということはかなりはっきりしているようですが,一つは今何人かの方からお話があったように,全体の常用漢字表の字数をどの程度にするかという辺りが,実はかなり問題の解決のためには考えておかなければいけない問題のようですね。これについては,むしろいろいろ議論が出て初めて増やすか減らすか,どの程度増やすか,というふうなことになってくるわけです。堂々巡りになってしまうわけですけれども,差し当たっては,ここで,例えばこの三つを入れるとか,あるいは県名を入れるとかというよりは,そういったものを入れることも考慮に入れて進めていきたいという程度の御了解なら,あるいは得られるかなという感じもするのですけれども,事務局としてはどんなものでしょうか。

○氏原主任国語調査官

 常用漢字表では,そもそも大阪の「阪」や,奈良の「奈」,岡山の「岡」を入れないという前提があるわけですね。つまり「これらの漢字は,固有名詞専用字だから入れない」という方針があったわけです。けれども,そこをもう少し柔軟に考えて,とにかく全体の漢字集合を作っていくときに,固有名詞専用字だから入れないということは取りあえず保留しておく。つまり,前田主査がおっしゃったように,その時にどんなものが入ってくるかを見て,それがたまたま岡山の「岡」や,大阪の「阪」であっても,それは排除しないという考え方で,進めていく方が実際的かもしれないですね。

○甲斐委員

 古い方の字数で言いますと,明治33年に小学校令が出た時は,当時の学校の漢字としては1,200が考えられて,その注には固有名詞は別とするというのがある。その固有名詞は別とするというのが,明治33年以降今までずっと続いているわけです。
 2番目に,大正12年に常用漢字表が公布されるわけですけれども,これはおっしゃるように1,900ちょっとだったのですね。この時も,固有名詞の漢字は別にするということでした。
 昭和6年に改訂があって,少し減るのですが,それでも当時の日本人はなかなか覚えられないものですから,さっき氏原主任国語調査官がおっしゃったように,昭和17年の標準漢字表では,三段構えにして,その中の常用漢字というのはわずか……。

○氏原主任国語調査官

 1,134字です。

○甲斐委員

 それぐらいで,その時に保科孝一主査が新聞に書いたのは,「将来はそれだけにしていくのだ。」ということでした。その下の準常用漢字と特別漢字というのはやめていくのだということを言って,ちょっと紛糾したわけです。そして戦後ですけれども,すぐに提案される常用漢字表案というのが,これが……。

○氏原主任国語調査官

 1,295字ですね。

○甲斐委員

 それぐらいですね。1,300なかった。しかしこれは新聞社の方なんかも,これじゃ使えないよということでした。ところが,朝日新聞社などは,できるだけ努力しようというようなやり取りが記録に残っていますけれども,結局その同じ年の12月に,当用漢字表という,「当座」という意味で1,850ができたというような形なんですね。したがって,これは私が思うのに,多分松村委員が賛成してくれると思うのですけれども,一方では教育を対象としていると思うのです,どれだけ教えられるか。それともう一つは,国語研究所にやはり調査してもらわなければいけないけれども,国民はどれくらいの漢字を読めて書けるかという,国民の言語生活力の問題がある。
 他方では,漢字の体系があるわけです,動植物名はどうするかとかいうような。そういうことで,2,000を超えるということは今までなかったわけで,私もできれば2,000を超えない形が印象としてはいいと思っているのですけれども,これが2,000をうんと超えたりしたら,教育界からかなり悲鳴が出るのじゃないかということを心配しています。

○金武委員

 前にも出たと思うのですけれども,教育用漢字というものはそんなに増やすわけには行かない。しかし,これだけ情報機器が発達していて漢字を目にする機会が多くなっているものですから,以前のようにできるだけ常用漢字の数を少なくした方がいいということも言い切れない。つまり,一般社会に常用されているものについては,少し枠を広げて,教育以外の常用漢字表というものを二段構えの形で考えたらどうか。これは先ほども言いましたように,まずは,使用頻度と理解度の調査の表があって,それで例えば,2,000以下のものについては教育漢字として,何か印を付けるなり別表にするなりして,それから下の部分をどのくらい増やすかということは,これからの議論なんですけれども,そういう二段構えの表というようなものは,考えられないかということは出ていましたね。

○甲斐委員

 それは三段ということですか。

○金武委員

 二段構えのような形です。

○甲斐委員

 今は,二段ですよね。

○金武委員

 ですから,常用漢字がもし2,000以上になれば増えるわけですけれども,今のいわゆる教育漢字のマークが付いている字と,分けた二段構えのような表にしておけば構わないだろうというのが私の意見です。

○甲斐委員

 もう一度いいですか。文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力について」では,常用漢字の大体を小学校段階で読めるようにということが出ています。したがって,その更に上に,準常用漢字とか,つまり先ほど申した昭和17年のように三段構えにして,それは教育の対象外で,読めるだけの漢字であるという形,これらは教育の場とは縁がない,義務はないという形ですと,200,300別にあっても反対はしません。
 しかし,今のように学年別漢字配当表が1,000ちょっとあって,それからそれを除い たものが更にほぼ1,000近くあって,その1,000近くあってというところを更に何百か増 やすということになると,もろに教育に関係してくるのです。

○阿辻委員

 数の問題というのは最終的に付いてくる話でありまして,そこから議論を始めるというのは私にはちょっと理解できないのです。かつて表外漢字字体表というのを作った時も,最終的に1,022という数になっただけの話で,スタートから1,000以上というような目標はなかったわけです。
 先ほど市川委員からの御質問がありました当用漢字が1,850というのも,しかるべき段取りを踏まえていって,最終的にまとまった結果が1,850というだけの話であって,現在の常用漢字1,945だって基本的にはそれと同じことだと思うのですね。
 今回,この仕事を進めていくに当たって,まずプリンシプル(principle)があって,そのプリンシプルが確定されて,しかるべきデータ処理と,例えば二段構えか三段構えかというような,原則が決まった結果,数が例えば,2,400になったって,それはそれで当然私は認められるということだという気がいたします。その2,000を超えると社会的な反響が大きいとか,というのは段取りを明確にして説明すればいいことであって,数の問題は枝葉の問題だという気がします。

○松村委員

 阿辻委員がおっしゃることはよく分かるのです。けれども,今現実に常用漢字が1,945あって,その中で,学校教育の教育というか,学習しなければならない漢字が決まっているわけです。そういう現実があって,国語科教育を中心にして漢字学習に取り組んでいるのです。その現実と余り懸け離れたものでは困るようなところがある のです。

○阿辻委員

 それは,もちろんそうです。

○松村委員

 だから確実に,例えば2,000字にしようとか,2,100字にしようとか,そういうことの議論はできないだろうけれども,入れ物を広げるだけ広げて,結果的に広がったらしようがないということではなく,ある程度の枠組みの議論は必要ではないかと思います。

○阿辻委員

 教育用漢字もそれ以外のものも引っくるめてということではなくて,先ほど金武委員がおっしゃったことに私も同感なんですが,ブロックを作っていくわけです。第1ブロックとして教育用漢字というのがあって,これはもう明らかに教育の中の最も重要なよりどころである。それ以外の部分として,情報機器の発達ということが出ていましたけれども,例えば手で書ける必要はないけれども,正しく読めればいいというもの。このごろ漢字を覚える苦労というのはかなり軽減されていて,例えば,栃木の「栃」という漢字を鹿児島県の子供たちは多分書けないだろうと思いますが,それは読めたらいいわけで,というふうに教育のための配慮はその一つのブロックとして確立する。そのこと自体はもちろん必要なことなんですが,引っくるめて新常用漢字という言葉を使いますが,新常用漢字全体が今の状況からスライドするというふうには行かないのではないかと私は思っております。

○前田主査

 この辺のところについては新常用漢字表はどういうふうなことを理念として出すかという辺りをもう一度最初に戻って議論していただく必要があるかと思います。

○金武委員

 常用漢字の定義というものを一応はっきりさせておく必要があると思いますね。それで,これがまず頻度が高いものと,それから読めること,それから意味が分かること,最後に書けることが来ると思うのですけれども,この全体がクリアされていれば,まあ常用漢字じゃないかという気がするのですけれども。
 そこで,今の定義でいけば,頻度と読みというものが一番上の方に来ると思いますね。そうすると,先ほども言ったように,多分都道府県名は自動的にその線の上に行くのではないかという気がするのです。

○前田主査

 ちょっと循環してしまいそうですから,この辺のところで,中途半端な形になりますけれども,今挙げましたような,例えば府県名というふうなものについては,固有名詞ではあるけれども,あるいは固有名詞であるかどうか問題になるものもあるけれども,常用漢字表に入れる可能性があって,そのことを頭に置いて,更に議論を進めるというふうな形で,具体的な,これは入れる,これは入れない,府県名は全部入れるとかというようなことはもちろん決められませんから,という形で今のところはよろしいのではないでしょうか。
 そして,実際問題として例えば全体の目安が何字になったときにこれも入れるとするとどうかというところで,もう一度議論していただくということでいかがでしょうか。ですから,この問題は常用漢字表というものはどういうものかということと,それから常用漢字表を決めるに当たっての手順,それは今,金武委員がおっしゃったようなことが非常に参考になるかと思います。

○甲斐委員

 今の件はそれで賛成です。
 それで,今,金武委員と阿辻委員から出ている新しい提案として,やはり現在の常用漢字表の漢字は読めて書ける,意味が分かるの三拍子が必要なんですが,読めて意味が分かる,その熟語の意味が分かるというような,書けなくてもよいというような漢字,そういう漢字の扱いというのが今度の新常用漢字表としては意見としてあるわけです。これは私も否定したくないのです。しかし,それは先ほど申したように教育外であるということです。だから,そのブロックということをさっき阿辻委員がおっしゃったのだけれども,現在は「2」になっているわけです。2ブロックというか,常用漢字表の中の「学年別配当漢字」という形になっている。その常用漢字表の外に更に一つブロックを積み重ねる,これは書けなくていいのだよと言う。ここには現在,「表外漢字字体表」がある。もう作られているわけですから,やはり検討した方がいいのじゃないかと思うのですが,いかがでしょうか。

○阿辻委員

 ついこの間,冥王(めいおう)星が話題になりまして,冥王星の「冥」は御承知のように表外字ですから,新聞各社の対応も割とまちまちだったのです。漢字だけで書いている社もありますし,ルビを付けているところもあったように思いますけれども,冥王星という言葉をぱっと一般国民が新聞で見たときに,この字を書けるかということは多分頭にはないのですね。それを読めるかということでありまして,書けということになると,手書きで書くときには辞書を引く必要もあるでしょうが,例えば,電子メールで送るときには「めいおうせい」で一発で変換されます。たまたま冥王星が,この間話題になりましたので,ああこの冥王星の「冥」という字は,冥王星の問題が冷え込んできたら,あの字をどれだけ使うだろうかと思いました。まあ「冥土(めいど)」ということぐらいしか使わないのかもしれませんけれども,これは一つの新しい時代の変化を表す事例かなというふうに思いました。

○東倉委員

 今まで何回か議論に出た「情報化時代」ということと,読み書きを分けるということは今の議論として,もう一度出たのですけれども,私は基本的にこの「情報化時代」を象徴する一つの漢字政策として,読めるだけのものということを何らかの格好で答申に入れるということを非常に強く推したいのです。しかし,先ほど教育の問題というところが触れられたのでちょっと質問も交えてお伺いすると,今の漢字教育,それは読めると書けるということは切り離していないわけですね。これからの教育においては,それを切り離していくという考えもあり得るのじゃないかと思うのですけれども,その点はいかがなんでしょうか。

○甲斐委員

 現在,常用漢字をすべて高校までに書けるようにしないといけないのですけれども,現実は書けていないと思うのです。ですから,1,945字の中の例えば1,600ぐらいは書けないといけない。後は読める方に回すというふうになると,教育はかなり軽減されると思います。それに,後何百か追加するというのを,第3ブロックとして立てていけば,そういう考えは可能だと思うのですけれども,ただこれは暴論かもしれません。教育界からどう言われるか…。

○松村委員

 今でも中学校3年生までで書けなければならない漢字というのは,小学校の6年間で出てくる学年別の配当漢字,これが縛りとしてあるのです。だから,卒業時に高等学校に進む上での入試問題,それがいつもこういう漢字の問題のときには我々は先に考えるのですけれども,入試問題としては1,006字というか,学年別配当漢字の中から出題されます。ただし,読みについては,卒業するまでに常用漢字の大体を読めるようにするということですから,今でもその辺が完全に一致しているということではもちろんないのです。前に小林一仁先生からかのお話があったと思うのですが,学年別の配当漢字というのは小学校の6年間の各学年に配当されていて,それ以外の漢字を常用漢字の範囲内で中学校で学んでいるわけですけれども,中学校でも学年別配当漢字を作ったらどうかという意見がここのところ強くなっている。私も,やはりその方向も必要なのかなということも考えにはあるのですけれども,実際に今も読み書きの形としては多少のずれと言いますか,それは許容されています。

○前田主査

 問題がだんだんと最初のところからずれてきまして,ここのところでは,先ほど申しましたように,固有名詞の中で専用の漢字であるからということで常用漢字表に入っていない漢字の扱いについて,これについては,先ほど私がまとめさせていただきましたので,そういった形でよろしいでしょうか。(委員会了承。)
 それで,その後のことになりますけれども,この情報機器の発達などに伴っていろんな問題が起きてきた。これは,もう今までにも議論されているところで,書けなくても読めて理解できる漢字というものを考える必要があるとかいうふうな問題は,既に多くの方からおっしゃっていただきましたが,そういったことに伴いましての問題については,今度の新常用漢字表がどうあるべきかということにかかわってきますので,また,別にそういった情報機器の発達などについての御意見をお伺いする機会を持ちたいというふうに思っておりますので,それを伺った上で更に考えていくということにしたいと思います。
 差し当たって今日は,その固有名詞の問題についてのある程度の目安を得ておきたいということでありますので,先ほどいろいろ貴重な御意見を頂きましたから,それらは記録もされておりますので,後にまた残して課題としていきたいと思います。それで,「1(2) 前回の「本日の論点2」の内容」ですけれども,具体的なことについての議論をしていきたいというふうに思います。この「1(2)」は,固有名詞用の漢字表を作るかどうかとか,そういったことなどとかかわっておりまして,これについてはいろいろ議論があったわけですが,そこのところから問題にしていきたいと思います。
 それで(1)としまして,地名と人名とを分けずに,固有名詞用の漢字表を新常用漢字表とは別に作成したらどうかというお考えが示されていたわけですが,これについては,なかなか難しいとか,いろいろ意見もありました。もう一度この点を確認しておきたいと思いますが,いかがでしょうか。これについては,金武委員が以前からおっしゃっていましたけれども…。

○金武委員

 完全な固有名詞用の漢字表というのは難しいということは同意されているわけなんですが,私が申し上げたのは,(2)に関係してくるような固有名詞における漢字使用の基本的な考え方をまとめたときに,結局,具体的な漢字を挙げて例示しないと分かりにくいわけですね。そういうものの参考になるようなサンプル的な表は可能ではないかという意見です。ですから,正式な表ではなくて,ある程度の数,50字か100字か,少なくていいと思いますけれども,典型的な固有名詞に使われる漢字について,こういう考え方であるということを示したサンプルというものは考えられないか。そういう意味で,固有名詞の漢字表というものを全く作らなくてもいいというふうにはならないのではないかという気がします。

○前田主査

 そうすると,新常用漢字表と別に固有名詞用の漢字表を作るというふうな形まで行かなくても,具体的な例などを例示する形は必要ではないかということですね。

○金武委員

 例示する形の小さな漢字表はあった方がいいのではないかということです。

○阿刀田分科会長

 それの目的は何ですか。

○金武委員

 固有名詞を説明するときに,基本的な考え方,例えば,ここにあるような名前についてはこういう読み方の範囲内の方がいいというようなことを書いた場合に,固有名詞の表の中で,こういう読みを示してある,この中から選ぶのが適切であるというような,そういう実用的なねらいが,新しく付ける地名とか,それから企業名等も含めまして,参考になるような実用的な表になるのではないか。そういう漢字表を目指したらいいかなという気がします。

○阿刀田分科会長

 つまり,今まである固有名詞については,これは関与しないということですよね。

○金武委員

 そう,それは仕方がない。

○阿刀田分科会長

 これから付けるときには大体この辺りのところを考えてほしいということで,これは人名にまで及ぶわけですか。

○金武委員

 そうですね。人名をそもそも制限しているということは,本来余り難しい字を人名には使ってほしくないというところから出発したと思うのです。ただ今回は余りにも人名用漢字が増えてしまって,しかも読み方も全く昔から無制限なものですから,いろいろ国語的な観点からいうと,もうほとんど無制限になってしまっている。「制限」というと言い方は悪いけれども,ある程度,目安というか基本を示して,固有名詞であってもこういう形で付ければ分かりやすいのではないかとか,あるいはこういうものは歴史上由緒のあるものであるからこうこうであるというような,まあ文章と表と一緒にして,分かりやすくしたものができればということです。

○阿辻委員

 そのおっしゃっているのは,読みを示すということですか。

○金武委員

 当然字種を示すわけですから…。

○阿辻委員

 人名用漢字の字種は固定していますよね。

○金武委員

 はい。ですから,人名用漢字ができた時に,この国語分科会で批判があったように,字体の標準が全くなくなってしまった。それで,それは国語分科会の役割であるということが議論の中でも出ていまして,今回の諮問の趣旨にもその辺が多少ありますので,それを考えると,今の人名用漢字の表の中から,複数の字体があって,人名にはどちらも使えるのだけれども,一般の文章としてどちらが基準であるか。例えば「遥」というのが二つになってしまった。一般の文章の中で「遥」を使うときには,国語的にはこれが基準であるということを示すような表ということです。

○阿辻委員

 それは勇気凛々(りんりん)の「凛」と「遥」と,1字種2字体って余りないですよね。

○金武委員

 いわゆる「表1」ですか。

○阿辻委員

 ええ,そうです。

○金武委員

 余りないですけれども,許容字体で考えますと…。

○阿辻委員

 ああ,あれは確かにそうですね。

○金武委員

 あれは一括して,要するに,常用漢字については常用漢字の字体が標準であるということを一言言ってもいいとは思うのですけれども。

○甲斐委員

 それは(2)の方の,さっき漢字の例として,50から100とおっしゃったのですけれども,(2)の考え方を出した中で,それに移行させることは難しいのですか。やはり,独立した漢字表の方がいいのですか。

○金武委員

 それは,今言いましたけれども,(2)の中で,当然何らかの見解を示すわけですよね。そのときに,具体例として表を付けたいという,そういうことです。

○甲斐委員

 (2)でいいわけですか。

○金武委員

 それは,(2)でいいのです。

○前田主査

 全体の流れとしては,(1)の線は考えない。それで(2)の中でどういうことを考えていくかというふうな話に進んでいっていると思います。
 (2)の方の,具体的に申しますと,「固有名詞用の漢字表を作成するのは困難であるので,固有名詞における漢字使用の基本的な考え方をまとめる。」その基本的な考え方は,新常用漢字表の前文あるいは附則事項などで示す。その附則事項といった辺りに,例えば表のようなものにするかどうか,ただ具体的な例を幾つか挙げるというふうな程度になるのか,これは,これからの問題になります。そして,そういったものを作る必要があるのか,あるいは作るとすれば,どういう形で示せばいいのかということについて今議論すればよろしいのかと思います。
 それで,基本的な考え方をまとめる場合の観点として,「新たに名前を付ける場合の参考にしてもらうということ」,これが先ほどの表は何のために作るのかというふうなことに関係してきます。これまで明示されてこなかった国語的な視点からの参考情報,名付けの考え方や使用漢字の問題,それから常識的な名前を勧めることや,熟字訓的な読みの扱い,固有名詞用の音訓を新常用漢字表の音訓欄に示すことは考えられないか,歴史上由緒のある地名を尊重していく考え方の明示などというふうなことが挙げられておりますが,この範囲内で御意見を頂ければと思います。

○金武委員

 現在の人名用漢字以外の字を国語分科会で決めても法律的に意味がありませんので,取りあえずは現在の人名用漢字表から名前にふさわしい字をピックアップして,それで推奨的な読みとか,そういうものを示すというのがいいのではないかと思います。

○松村委員

 意見というか,私も前回も前々回も出てないので,議事録を読んでいて思ったのですけれども,今名前を付ける現場って本当にすごいなと思うことが多いのですね。私たちが対象としている小中学生の名前で言うと,表意文字としての漢字よりも,音で読ませるというのがとても多くなっていて,国際社会で通用する名前にしたいということで,「ケント君」にしたり,「レオン君」が出てきたり「シモン君」が出てきたり,それを当て字で,もう万葉仮名みたいなものだと思うのですけれども,そういう名前が非常に多くなっているのですね。そういったものも,この中には入ってくるのでしょうか。

○金武委員

 私としては,例えば子供の名付け辞典とか名付け用の本がいろいろ出ていますよね。それを国語分科会できちんとした原則に基づいた形で表を作って,名付けの参考になれば一番いいのじゃないかと…。

○松村委員

 本当にそう思うのです。けれども,一目で覚えて,もうずっと忘れないでいるような名前などもあるわけなんです。実際に,そんな名前を見たこともあります。お母さんがバラの花が好きだから,「バラ」って付けるのならともかく,「ローズさん」になったりとか,もう本当に今の若い世代の人たちの名前の付け方って,私たちには理解できないような付け方が多いと思うのです。
 ですから私もこの,常識的なというのを,言っていいかどうか分からないのですが,やはりその一方では,子供の名付けの由来といいますか,その辺のところが漢字文化に親しむというか,それの入り口になるというところは身近でとても感じるのです。親が願いを込めて,知恵のある子に育てたいとか,広い心を持った子になってほしいとか,子供にストレートに親の思いが伝わるような漢字の使い方というところは,やはりどこかでそういう雰囲気を醸成するというか,それは必要だろうと思うんです。それが私はこの分科会の中で多少とも触れていただけると,意味のあることだと思うのです。その上で,この常識的な名前の推奨というようなところは,何らかの形で是非触れていただきたいというふうに思っています。

○金武委員

 今の親は,漢字の意味はほとんど無視してしまいます。ですから今回の人名用漢字のようにあれだけたくさんの難しい字も含めたものが入ってきますと,意味じゃなくて,眺めていて,感覚的に,あるいは自分の判断の読みで,本当にとんでもない名前が付けられる可能性があるので,そういう意味でも国語的な視点から,今の人名用漢字の中からこれだけは非常にいい意味も持っているし,意味も解説して,それで,読み方もこの範囲だったら社会的にも分かりやすいであろうというような表ができれば,市販の名付け辞典よりも,これが一番頼りになるというようなものになったらどうかなという気がするのですけれども…。

○林副主査

 私は今までの漢字政策の経緯が非常に気になりまして,この『国語審議会答申・建議集』その他,ちょっと初めから読ませていただいています。
 それで,人名用漢字に関して言いますと,常用漢字の答申の中では,明らかにこれは戸籍法等,民事行政との結び付きが強いから,今後は,人名用漢字別表の処置などを含めてその扱いを法務省にゆだねることとする,と明記してあるわけです。更に続けて,その際,常用漢字表の趣旨が十分参考にされることが望ましいというふうな注文と言いますか,希望も付けてある。
 私は,やはりこの部分は含んだ議論をし,これを含んだまとめ方をしないと,法務省に一度お任せしたものを,もう一度我々がこっちに引きずり戻して議論をするというふうなことになるので,そこはきちっと筋道を整理しながらやっていく必要があるのかなと思います。
 ただ,それと金武委員が言われたことが矛盾するかというと,それは決してそうではなくて,新しい漢字表を作れば,その漢字表との関係で,つまりこういうふうなことがこの審議会では望ましいというふうに考えるということは,積極的な,建設的な提言としてやってもいいと思うのです。
 ただ,その点に関しても,最終的にまとめるときには一度ちょっと法務省とすり合わせないと,やはりこれまでとうまくぴったり合わないということになるかもしれないと思っております。
 そういう点で,やはり私自身も人名用漢字は一応こういう形で法務省にお渡ししたということになっているとはいえ,昨今の名前の付け方を見ると,いろんな面で見直しをする必要も出てくるだろうというふうに思っていますから,それは,一つのまとまりとして議論すべきではないかなというふうに思います。

○甲斐委員

 昔ですけれども,まだ文化庁でない時代かもしれませんけれども,「国語シリーズ」というのが出ていた時代です。書名は覚えてないのですけれども,名付けについてどうあるべきだというのが1冊出ているのですね。それと同じような形で,ただ1冊にするのではなくて,ここの(2)にあるように,何らかの形で,常用漢字表の初めか後ろ,何か後ろの方が長くていいような気もしますけれども,とにかく法務省は人名用漢字をどう選んだかというのがあるのですけれども,どう付けるかというような,漢字の使用については,やはりこちらに責任があると思うのです。
 したがって,できるだけここのところで,常識的な名前の推奨というようなところを中心として,できたら名付けに使う音訓もどこかに出していただきたいと思うのです。例えば,順番の「順」に「子」を付けても,これはどう読むのですかというように,読めないのですね。というのは,回答が複数あるから,例えば「ジュンコ」と読んだら,いえ「ヨリコ」ですということになってしまうのです。それでできたら,「順」はもう「ジュン」と読むというような形になると,大変有り難いと思っています。

○林副主査

 今の甲斐委員のところは,少なくとも急所だと思っているのです。やはりこういうものは読み返してみますと,一貫して当用漢字の時から固有名詞は除外している。どうもその除外する理由というのは書いてありませんから,これは想像するしかないのですけれども,二つのうちの一つか,あるいはその両方であって,一つは,もう動植物名でも同じだと思います。「動植物名は仮名で書く」というような原則を立てたのは,やはり固有名詞は相手にし切れぬ,到底手に負えないというのが一方の理由でしょう。
 もう一つは,やはり固有名詞というのは単なる漢字使用ではなくて,一度名前を付けるとその人はもう一生使うわけですね。親の思いもそこに非常に入ってくるわけです。それは,親の思いが一生入ってくるわけです。そうすると,これは通常の漢字使用とは違う。むしろ「表現の自由」,そういうところにまで非常に深く入り込んだ,つまり,そういう文字としての性格もある。だから,常用漢字のような目的,あるいは当用漢字の目的からいってちょっと踏み込みにくいところであろうと考えるのが,もう一つ。
 恐らくその両方があいまって固有名詞というのはここから外されてきたという経緯があると思うのだけれども,もし固有名詞を何らかの形で,例えば県名もそうです,文字を入れる,入れないということを含めまして,表を作るなり,あるいは例示をするなりしても,そこの辺りのところをもう一度解きほぐしながらやっていく必要がある。そういう点でいうと,余りきつく縛ってしまって,「ジュンコ」と読んだら「ジュンコ」しか読まない,「ヨリコ」は駄目よということになると,今のような,根本的なところに抵触してくるものと思います。

○甲斐委員

 いや,縛るというよりも,推奨ということですから。

○林副主査

 推奨ならいいですかね。ただ漢字の使い方として,ただ書いて読むだけではなくて,人名というのは一生使う。親の思いも入り,自分もその名前についてやはりある思い入れを持つという可能性がありますから,実際に,書いたり読んだりするのとはちょっと違うというところは重視すべきだと思います。

○阿刀田分科会長

 今,名前の付け方について別なリーフレットみたいなものを作るということは,作るべきかなという気がするのです。本来的にそれも作った方がいいと思うのですが,この分科会で名前の付け方にまでは余り入ってはいけないのではないかなという気が,つまり片仮名と平仮名の使用は,これは認めているわけですね。それで,いろいろな変わった名前になろうと,これはもうどうしようもないわけです。片仮名を使っていい以上,そこから先,いろいろと出てこようと,それはもう望ましい名前の使い方という,別な立て方で本を作って意見を言うことはいいけれども,本来の漢字使用ということに関しては,こういう漢字を使うことが望ましい,それでこの漢字の読みは大体こういう読みがあるということで,「志」と「音」という字を書いて,「シ」と読めるのだし,「オン」と読めるのだから,それを重ねて「シオン」とする,あるいは意味を考えると,明らかに変な意味のものはともかくとして,本当に万葉時代のものみたいに音だけ借りてきたような表現でも,その音そのものがちゃんと読める音であるならば,組み合わせた結果の名前がおかしなものになったとしても,それはもう親の一種の判断であって,そこにまでは踏み込めないと思います。
 我々ができることは,大体このくらいの漢字でやってくださいよ,というところではないでしょうか。この漢字の読みは大体こんなところなんだから,「順」を「ヨリ」と読むくらいはあってもいいかなと思いますけれども,それを例えば「トモコ」などという,どこからこの読みを持ってきたのかほとんど分からない読みだってありますよね。それはやめてほしい。「順」と書いて「ジュン」が第一で,「ヨリ」くらいのところまではまあいいかもしれないけれども,それ以外はやめてくれというようなことまではここの範囲で言っていいけれども,そこから先は駄目でしょうね。やはり漢字の利用として言う以上は,ちょっとまずいのではないでしょうか。「望ましい名前の付け方」という別な,別冊を作らなければならないと思いますね。

○阿辻委員

 大体今おっしゃっていただいたことに重なるのですが,命名というのはこの少子化 の時代にやはり,親となった人間が最大の自分の感性を発揮できる機会なんですね。それに関する自由を一つの方向へ持っていくという行為自体は私は省庁のするべきことではないと思います。
 かつて法務省の審議会に,私と甲斐委員と金武委員と氏原主任国語調査官とが出席していましたけれども,あの時に「悪魔ちゃん事件」が話題になりました。その「悪魔」という名前を受理しなかったのは,あれは親の権利,親権の濫用ということであって,あれは「悪」も「魔」も常用漢字に入っていますから当然使える名前なんですが,その親の権利として子供の将来の幸福を願う名前とは思えないということで受理しなかったといういきさつを法務省から聞きまして,そういう親権の濫用みたいなことがあれば,それは歯止めが掛けられるのでしょうが,それ以外は,初めて生まれた子供に一生懸命考えて名前を付けるというのは,方向を絞り込むことではないだろうと私は思います。
 もう一つは,「ジュンコさん」,「ヨリコさん」の話ですが,たまたま私の学生の女性が二人,年を前後して女の子が生まれまして,太陽の「陽」という字と野菜の「菜」という字を書くのですが,一人は「ハルナちゃん」,一人は「ヒナちゃん」,全く同じ漢字で読み方が違うのですね。幸いに年賀状にはルビが付いていますので何とか読めたのですけれども,一つの方法としては自発的に自分の側からルビを付ける,読み方を示すという努力を,特に読み間違えられることの多い方は,自発的に読み方を示すということの推奨ぐらいはできるかなという気がします。
 戸籍の欄には読みという欄がないので,どのような漢字を書こうと全く勝手だということです。高橋和(タカ)子さんという作家は,昭和の「和」なんだそうですね。普通「カズコ」と呼ばれるのだけれども,和差積商の「和」で,足し算の答えだから,タカで,「タカコ」と読むのだということを御本人から伺ったことがあるのです。だから,あの方はペンネームとして,平仮名で「たか子」と書いていらっしゃいますけれども,御本名は昭和の「和」と,子供の「子」なんだそうです。
 そういう,自分の側から読みを明示するということぐらいは,学校の教師から言いますと,それはもう大変有り難い話だと思います。けれども,望ましい命名の方法というのを文化庁が決めたら,何か法務省にけんかを売っているような感じがありますので,私にとっては余り賛成できない話です。

○金武委員

 子に新たに名前を付ける場合の参考ということから,だんだん広がったみたいですが,私が言いたいのは,先ほど林副主査がおっしゃったように,文化庁から法務省に人名用漢字の権限が移った時に,常用漢字表の趣旨を参考にされることが望ましいというような付言があって,その後の人名用漢字は,1字種1字体の原則でずっと来ていましたので,矛盾しなかったわけです。
 ところが今回は,法務省はそういう常用漢字表の趣旨とほとんど無関係に,形としては1字種1字体の原則を守っていると言っているけれども,実際はもう守っていない。特にいわゆる常用漢字の旧字体というものをほとんど全部人名用漢字に入れてしまったような形になっていますので,そしてまた,字体の標準を示すことは法務省の権限ではなくて,それは文化庁の仕事であるということを言っているわけだから,それを受けて現在の人名用漢字についての文化庁と言いますか,国語分科会の見解を出すのはむしろ最低限必要ではないかということです。

○前田主査

 だんだん難しい問題になってきましたが,このことについては,人名用漢字を法務省で大幅に増やすことになって,それについて国語分科会でも議論したわけです。それでその時に,かなり反論のような形で出そうというふうな話も出たのですが,結局最終的にはそういう形にならなかったのですね。だから,その時の議論などは,これは記録にあると思いますから,ここでは繰り返しませんけれども,改めて申し入れるとすれば,漢字小委員会としては,ここでそういう話題になったということをむしろ上の会議の方に出して,そちらの方でやっていただくという形になるのではないでしょうか。
 それから,こちらの方でやれることというのは,この常用漢字表に何らかの文面を付けて,例えばなるべく易しい漢字を使って名前を付けるようにとか,易しい名前を付けてほしいとか,何か文面はちょっと分かりませんけれども,そういうふうな内容のことを付け加える,これは問題がないのじゃないかという感じもするのです。その辺のところの,どこまでできるかというところは,もうちょっと実際的な問題と併せて検討していただかないといけないのではないでしょうか。
 法務省の問題としては,今まで出ている中で,例えば戸籍簿には先ほどお話がありましたように,名前には漢字しか出さない。だからそれをどう読むかということは制限してないのですね。それで,こちらの方でそれを制限するようにというふうなことはちょっと言えないだろう。それから,本人が振り仮名を一般に付けて知らせるというようなことは,これは当然あってもいいわけですが,戸籍簿に振り仮名付きで出すとなると,これはいつでも正式の書類には振り仮名を付けた形でないと通らないということになって,非常に面倒なことになるということを伺いました。そういうふうに,そちらの方はそちらの方でいろんな問題がある。
 地名の方は,そういう点で言えば,もう少し法律でも取り上げるべきではないかとも思いますけれども,分かりやすいと言うか,もっと公共性が高いですから,だからなるべく易しい地名を,合併などして新地名ができる場合には付けてほしいとかいうふうなことは,これは何らかの形で言えるのではないかと思います。また,役所でもそういうような指導をしているということも,ちょっと伺いました。
 そういうふうなことも頭に置いて,こちらとして,どういうことならできるかという辺りをもうちょっと検討しなければいけないのではないかかというふうに思います。

○東倉委員

 今の議論で,人名,特に命名については,どういう言い方をしようが,控え目に望ましいと言おうが,何らかの差し支えが出てくる可能性はある。しかしながら,いわゆる常用漢字表という表という形に定めるだけではなくて,その使い方について何かサジェスチョンをしておきたい。その使い方というのは,いわゆる漢字というのをもっと大切にしたいという点です。漢字の理解度,読み書きの能力について言えば,漢字の理解度というのがどんどん低下してきていることに対して,この分科会では何か言うべきではないかと思います。
 そういう,漢字のことをもっとよく知ってこれを使いましょうというような表現の中で,それは常用漢字のみならず,固有名詞の人名,地名というところにもそういう考えが必要だということをサジェスチョンする,そういう言い方というのが一つあり得るかなというふうに思います。

○前田主査

 いかがでしょうか。そういうふうなことはこれまでの流れからいうとあってもいいかなと思うのですけれども。
 いずれにしても今日,確認しておきたいのは,前のところで申しましたように,新常用漢字表の中に直接固有名詞用の漢字を取り込むことは,これは一般用の漢字と固有名詞に用いられる漢字との性格の違いから難しい。ただしということで,先ほど申しましたように幾つかの字を加えるようなことは,検討していってもいいのではないか。
 したがって,この表としては,これまでどおり,新常用漢字表の適用範囲からは固有名詞は除外し,対象外とするというところはお認めいただいた,確認させていただいたということでよろしいでしょうか。(委員会了承)
 その上で,今いろいろ議論がありましたように,固有名詞の使い方,人名の付け方などについていろいろな問題があるので,何らかの意思表示をしようということでした。どういう形にするかはこれから議論していく。これは難しいかもしれませんけれども,何らかの表現でそういった意見を表明していきたいという辺りでいかがでしょうか。

○阿刀田分科会長

 サジェスチョンにはこの委員会の中でも,皆さんの意見に若干温度差があります ね。

○前田主査

 時間が残り少なくなってまいりましたが,そのほかに何かございましたら,お願いしたいのですが…。

○市川委員

 今日の議論とは直接関係あるわけではありませんけれども,私の情報が間違っていたら御指摘願いたいのですけれども,実はこの間,私の小学校のクラス会がありまして,その担任の先生が書道の先生なんです。ところがもう小学校で書道の授業がなくなったというふうに聞いたのですけれども,それは事実なんですか。

○甲斐委員

 いや,なくなっていません。

○市川委員

 なくなっていないのですか。

○松村委員

 ただ,「書道」という言い方はしません。「書写」と言っています。

○市川委員

 「書写」というのですか,そうですか。

○松村委員

 独立した教科・科目としてではなく,「国語科」の授業の中で「書写」の学習として行っています。

○市川委員

 ちゃんと筆で字を書くということですか。

○松村委員

 筆も鉛筆も,今はボールペンというか,ああいう使い方も含めて,「書写」と言っています。

○市川委員

 書道がなくなったというので,「えっ。」というふうに思ったのですけれども,それは失礼いたしました。「書写」と言うのですか,書を写すということ,そうですか。

○阿辻委員

 実際はどれぐらい行われているのですか。ほとんどほかの授業に振り替えられていると聞いていますけれども。

○松村委員

 中学校では,1年生は10分の1,2,3年生は10分の2でしたか。

○阿辻委員

 国語の授業時間数の10分の1,10分の2ということですか。

○松村委員

 ええ。それくらいだと思うのですが,実際に毎週やるのではなくて,ある期間にまとめてやるとか,12月にお正月の書き初めの前に毛筆についてやるとか,ただ時間的にはある程度,指定された時間の枠の中でやっています。

○甲斐委員

 学習指導要領の中で,年間に何年生は何時間はせよというような指定がありますので,ちゃんとやっていると思います。

○阿刀田分科会長

 これは大体「国語」の中に入れちゃうこと自体が問題らしいのですが,高等学校では美術の先生とか音楽の専門の先生はいるけれども,書道の専門の先生というのを置いている学校というのはほとんど…。

○甲斐委員

 高校の「書道」は,芸術科の中の一つになっていますね。

○阿刀田分科会長

 芸術科の中に「書道」というのがあるのだけれども,その書道の先生というのは大体国語の先生が代行していて,全然うまくない先生がやっていたりすることが間々あるという話を聞いたことがあります。書道を教えるのは,上手,下手の問題ではないだろうというような話も出たけれども…。

○甲斐委員

 上手な先生も,全国で言えば,その割合は高いと思います。

○市川委員

 「書道」という「道」を使わなくなって,「書写」という言い方に変わったというのはどういうことなのですか。

○甲斐委員

 高等学校は「書道」なんです。それで,小学校,中学校は大きく国語科の中に入っているということで,「書写」という言葉を使っているのです。しかし,普通は毛筆書道というような言い方をしますので,書道が消えているわけではないのです。

○前田主査

 書く字と読む字のことは,また別に触れる機会がありますので,その時に,いろいろお教えいただければと思います。

○阿辻委員

 次回の漢字小委員会に関してですが,この前日に国語分科会の総会がありますよね。例えば23日に漢字小委員会をやって24日に国語分科会だったら,その場で報告ができるというふうに思っていたのですが,それは,ずれていることは織り込み済みなんですね。つまり,今日の会議については23日に報告できますけれども,24日の会議の内容については,その次の国語分科会でということになるのですね。

○氏原主任国語調査官

 はい,阿辻委員の御指摘については承知した上での日程です。23日の国語分科会は,敬語小委員会から出されることになる「敬語の指針(案)」の検討が中心になります。この指針案は,11月上旬から一般公開するというような,そういう段階に入っていますので,それとの絡みで,この日に設定されたものです。
 それから,先ほど阿辻委員の方からも,今回の「常用漢字表」見直しのプリンシプルということが話題として出されました。今は,そういう議論とちょっと離れて,細かい議論に入ってきていますので,この辺でもともとの「情報化時代に対応した漢字政策の在り方」に立ち戻って,そもそも「情報化時代」をどのようにとらえるのかということとか,それから今回はどのような基本方針でやるのかとか,さらに「常用漢字表」という名前だけれども,常用されている大阪の「阪」とか,岡山の「岡」が入ってないのはどうなのだろうかといったこととか,こういう理念的な問題を一回整理する必要があるのではないかと思っています。前田主査,林副主査と御相談させていただいて,この辺りで,一度細かいところから大きなところに戻った方がいいのではないかというふうに考えておりますので,よろしくお願いいたします。

○前田主査

 それでは,本日の協議はこれで終わりにしたいと思います。

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