議事録

第3回国語分科会国語研究等小委員会・議事録(案)

平成23年10月31日(月)
10:00〜11:55
文化庁・特別会議室

〔出席者〕

(委員)
林主査,西原副主査,伊東,上野,尾﨑,東倉,砂川各委員(計7名)
(文部科学省・文化庁)
小松文化部長,舟橋国語課長,氏原主任国語調査官,小松課長補佐,鵜飼日本語専門官ほか関係官

〔配布資料〕

1-1
国立国語研究所における国語に関する調査研究等の実施状況について(移管前後の比較)
1-2
国立国語研究所における日本語教育に関する調査研究等の実施状況について(移管前後の比較)
2-1
国語に関する政策課題に対応する調査研究等の実施状況について
2-2
日本語教育に関する政策課題に対応する調査研究等の実施状況について
3
国語及び日本語教育政策への貢献について(人間文化研究機構国立国語研究所の組織・業務に関する調査・検証について〔報告〕及び(説明資料)抜粋)
4
日本語教育に関する調査研究等の推進体制
5
文化審議会国語分科会国語研究等小委員会における検討の観点について
6
文化審議会国語分科会国語研究等小委員会の審議スケジュール

〔参考資料〕

○ 独立行政法人国立国語研究所事業報告書(第2期中期目標期間)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 事務局から,10月24日に開催された「国語に関する学術研究の推進に関する作業部会(第3回)」の議論の概要について報告があった。
  3. 事務局から配布資料5の確認,及び配布資料1―1,1−2,2−1,2−2,3,4の説明があり,質疑応答の後,意見交換を行った。
  4. 事務局から配布資料6の説明があり,今後の審議スケジュールが確認された。また,同審議スケジュールに基づき,次回の国語研究等小委員会は,11月14日(月)10:00〜12:00に文化庁第2会議室において開催することが併せて確認された。
  5. 質疑応答及び意見交換における各委員の発言等は,次のとおりである。
○林主査
本日は,9月30日に開催されました,科学技術・学術審議会学術分科会の作業部会との合同会議において了承されました,本小委員会における検討の観点に基づきまして,国語に関する調査研究等の業務の在り方,及び当該業務を担う機関等の連携体制の在り方について,御審議いただきたいと思っております。
ただ今,舟橋国語課長から,配布資料1から4のうち特に1と2に重点を置いて御説明を頂きました。資料1は,国語及び日本語教育に関する調査研究等の実施状況を,移管の前後を比較してまとめていただいたものでございます。資料2は,同じくこの調査研究の実施状況につきまして,文化庁,国立国語研究所,その他大学等,全体として,どういう体制で,どういうふうなことが行われているかということをまとめていただいたものでございます。本日はこれらについて,今の御説明に基づきましていろいろ御意見を頂戴した上で,今後でございますが,次回は報告書の取りまとめに向けた審議を行うということを考えております。
まず,本日,最初に配布資料1−1と1−2に基づきまして,国立国語研究所における国語及び日本語教育に関する調査研究の実施状況及びその成果が,国の政策に適切に活用されているかという点,これは,本日の配布資料5「文化審議会国語分科会国語研究等小委員会における検討の観点について」の1の(1)に相当するものでございますが,こういう観点から最初に御意見を伺いたいと思います。なお事務局の御説明に関して,質問等がございましたら,御意見の中で確認という形で御発言いただければと思っております。
○尾﨑委員
審議に入る前にお伺いしたいんですけれども,科学技術・学術審議会学術分科会の作業部会とこの小委員会と二つの委員会があって,報告書は別々に出るのでしょうか。別々に出るのだろうと私は思っていますけれども,まずそのことが1点。それから,この小委員会でまとめた報告書は,どこに提出されるのでしょうか。多分,文化審議会の下にあるのですから,文化審議会に提出されるんだろうと勝手に思っているんですけれども,二つの報告書の関係と,この報告書はどこに出されるのかについてお伺いします。
こういうことをお尋ねするのは,実は,今回のこの小委員会が2007年12月の閣議決定からずっと続いている流れの中の一つの区切りだと私は理解しているからなんです。2007年12月の閣議決定の後,科学技術・学術審議会学術分科会でしたかで審議が行われていて,その審議の過程で,日本語教育については別のところでというようなお話合いがあって,確か中間報告が4月頃に出て,意見公募があって最終的に7月に取りまとめがなされて,その段階では,やはり日本語教育については,特に政策研究との関わりにおいて,新しい大学共同利用機関には移しにくいのだという御趣旨のことが書かれていて,結果的には,日本語教育については余り検討されないか,ほとんど検討されないまま新しい国語研究所の準備が進み,それから2009年1月の政府が出した法案でも,そのような内容であったと思います。そのことについて,いろいろな方がやはり心配をしていて,特に2009年2月の終わりから3月の初めにかけて,2週間ぐらいで,この法案は問題がありますという声を上げた方が,1万1,965人かな,ちょっと記憶は怪しいんですけれども,とにかく2週間で1万1,000人ぐらい集まった。そういうことがあって,今回のこの審議の前提になっている附則第15条があるわけで,しかもそれは附則14条を前提として成り立っているということがあります。ですから,こういった一連の動きに関わってきた者としては,いろいろな方がこのことについて関心も持っていらっしゃるし,心配もしているということですので,この小委員会がどのような報告をまとめるのか,それは誰が読むのかということの,確認をお願いしたいと思います。
○舟橋国語課長
報告書の取りまとめのスタイルについては,もちろん科学技術・学術審議会学術分科会との御相談も必要になりますけれども,事務的に今,考えておりますのは,全体の報告書としては1本という形になるのではないかということです。学術分科会と,それから国語分科会の連名によって,報告書としては1本になるのではないかと考えています。ただ,その部分としては,大学共同利用機関の観点からの検証についての章と言いますか,節と言いますか,その部分は学術分科会の作業部会でお取りまとめいただき,一方の国語政策や日本語教育政策の観点からの検証結果の部分については,この小委員会でお取りまとめいただくという形で,部分を分ける形で,分担してお取りまとめいただいて,全体は両分科会の連名という形でまとめさせていただくのではないか,と現状では考えております。これは委員の皆様の御指導によって,必要があれば訂正したいと思いますけれども,現状ではそう考えております。
あと,この成果物を誰に提出するかということですけれども,これは国語分科会としてお取りまとめいただいて,それをあとは世の中に広く御紹介させていただくということになろうかと思いますし,検証結果を踏まえ,必要な措置を検討していくことも必要でございますので,その際の前提にもさせていただくということになろうと思います。
国語分科会のまとめについては,関係機関に公表して,広く周知するということになります。国会での附帯決議を踏まえたことですので,必要な御報告等もしていくことになると考えております。
○尾﨑委員
ありがとうございました。
○伊東委員
尾﨑委員のことにちょっと付け加えての確認ですが,資料5の「3まとめ(今後講ずべき措置を含む)」ということがありますけれども,恐らく1と2については,配布資料1−1,1−2ということでいろいろと議論はできますが,この3に関して言うと,もう具体的な措置についての青写真を報告書の中に盛り込むことになるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
○林主査
これは,委員の皆様の御意見によると思いますが,方向としましては,この小委員会の報告に関します限り委員の方々の御意見を尊重した内容になるだろうと思います。ただ,事務局に御確認をした方がいいと思いますので…。
○舟橋国語課長
この検討の結果について,例えば,どういう組織にするかというような具体的な措置については,国における判断等も関わってくる部分があるかと思いますので,どういうふうに報告書にまとめていただくかは,御相談させていただく必要があるかと思います。けれども,検討の観点としては入っておりますので,委員の先生方の御意見は伺いたいと考えております。
○西原副主査
尾﨑委員と伊東委員が最後におっしゃったことに関連して,誰が,どうするのかということを確認しておく必要があるのではないかと,先週改めて思わされたことがあります。衆議院の文教委員会で中川大臣と,馳議員のやり取りがあって,馳議員の方から,今2年たったではないか,それで,あのことはどうしたんだという御質問があったのに対して,文部科学省からも,今検討中である,二つの委員会がそのことを検討しているというお答えがあった録画を見ておりました。そうすると,改めて,2年前の附帯決議に関連して,再検討するための資料としても出ていくのかなと思ったわけです。
○舟橋国語課長
それでよろしいと思います。
○林主査
ほかに何か御意見,あるいは御質問はございませんでしょうか。
○上野委員
ちょっとうまく,まだ頭がまとまっていないんですけれども,基本的には,これは2年間の新しい国語研究所がやってきた活動,それがその趣旨に沿っているかどうかを検証するというのが,まず第一の会だと私は理解しています。したがって,「今後講ずべき」というのは,飽くまでも一つの意見という形で,提案するとしたらあるということで,三つあるうちの1と2,そして「3まとめ」ではあるんですけれども,その「まとめ」と,括弧の中の「今後講ずべき措置を含む」,その「含む」の部分は,ちょっとまた別のことではないかと基本的には理解しています。もちろん今後講ずべき措置をいろいろ議論するというのは必要だと思うんですけれども,内容的にはやはり別のことではないかなと私は思って参加しているんです。それでよろしいでしょうかと言いますか,私はそういうつもりで来ております。
○舟橋国語課長
検討の観点の3番目を入れましたのは,法律の附則の中で,今後,検討結果に基づいて所要の措置を講ずるとありますので,その「所要の措置」についても,本小委員会の委員から御意見を頂く必要があると考えられることから,入れさせていただいております。確かに上野委員がおっしゃいますように,本小委員会においては,まずは1,2の観点に沿って,検証していただくというのが第一義かと思っております。その上で,「必要な措置」についても御意見は頂きたいと思っております。その結果について,具体的にどういう措置を講ずるかということについては,別途の判断が必要になってくることもあろうかと思いますので,どこまで,この観点3について,この報告書で取りまとめていただくのかということは,また御議論の状況も見ながら,御相談させていただくことが必要ではないかと現状では思っております。
○林主査
やはりこれからの議論のためには,今,この委員会が何をすべきかということを明確にしておく必要がございますので,引っくるめた言い方でちょっと申し上げますと,「独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律」,会議資料として既に御覧になっておられると思います。その末尾のところに,「移管後二年を目途として当該業務を担う組織及び当該業務の在り方について検討を加え,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」ということで,この委員会,これは学術分科会の作業部会も同様だと思いますけれども,ここに付託されておりますのは,この「検討を加え」の部分でございまして,「所要の措置を講ずる」主体は,この委員会自体ではないと理解をすべきではないかと思います。
そういうことですから,この在り方に検討を加える場合に,ここの小委員会におきましては,この検討の観点というのを既に御了承いただいておりますので,この観点から検討を加えていただく,その際に,措置等について御提言がありましたら,そういうものは,検討の観点について,配布資料5の「3まとめ」に相当する部分でございますが,皆様の御意見をまとめた結果として,こういうところに提言を盛り込むということは,御意見の内容によってはあり得ることではないかと思います。
○尾﨑委員
今の林主査の御意見,それから上野委員の御意見に,私は全く同感です。やはり,この小委員会自体は,この2年間に新しい国語研究所がどういうお仕事をなさったか,それともう一つは,附則第14条,それから附帯決議,この附帯決議というのを,どのくらい重要なものと理解するか,私は専門ではありませんので,分かりませんけれども,ただ,この附帯決議自体が,当時野党であった民主党が強く働き掛けて,もともと法案を出した与党の自民党と公明党の議員の方たちも,この問題は大事だということで,これは衆参両院,全会一致で出ている附帯決議ですから,一般的な附帯決議と呼ばれているものとはかなり意味合いが違うと私は理解していますので,附則及び附帯決議の趣旨が,どの程度新しい国語研の中で生かされているかということが焦点かと思います。新しい国語研究所も大変な御努力,御苦労をなさっているということも含めて,みんなでやはりフェアと言うか,中立的に,まずは検討した上で,そもそも移管したこと自体が本当に良かったのか,あるいは国語研究所に期待するだけでは無理だということを,できればこの小委員会でも一部は御議論があって,まとめに反映されるのかなというふうに私は思っています。そのような理解で会に出ていますので,上野委員と多分,私は同じかなと思っております。
○林主査
ここのところが共有化されておりませんと,議論が混乱をするおそれがありますので,この点に関して何か,御質問なり,御意見なりあったら伺います。(→挙手なし。)
御意見がないようでしたら,ここの小委員会ですべきことは,移管後2年を目途として行われる検討を,この小委員会が承認した検討の観点に基づいて行う,これが小委員会のミッションであるということで,それを前提にこれから話合いを進めたいと思います。
それでは具体的に,先ほどの配布資料1−1,それから配布資料1−2に関連いたしまして,実際に,その成果が国の政策に適切に活用されているかどうか,その辺りを中心に御意見を賜りたいと思います。
○西原副主査
非常に綿密に用意していただいて,とても参考になる資料をお出しいただいたと思うのですけれども,一つだけ,ちょっと疑問に思いました。この頃,研究立案等で言うところのエフォート値というものでございます。エフォート値,研究立案をするときに,例えば科学研究費の申請をするときに,一人の研究者の研究能力の目一杯を100%と考えたとして,それはどの程度,何%ぐらいをこの研究に費やすかというのをエフォート値と言っていると思うのですけれども,これだけ盛りだくさんの移管後の研究テーマと内容を,50名余の研究員及び所外の協力者でしていただくということでございます。その数が500人であるということでございましたけれども,そもそも研究者として内部にいらっしゃる50名余の方が,この研究テーマ,非常に盛りだくさんで,意欲的な研究テーマでございますけれども,それに対して,それぞれエフォート値としては,どのくらいを費やしていらっしゃるのかというようなことがイラストされると,それぞれの研究にどの程度のエネルギーが注がれているかということが分かるのではないかと思います。平面的にリストされますと,全て満遍なくやっておりますという資料になりますが。次回までで結構ですけれども,そのような資料も併せて御提出いただけると,検討する者としては助かると思います。
○舟橋国語課長
分かりました。国語研究所にも御相談しまして,回答させていただきたいと思います。これは,外部の方との共同研究で実施されておりますので,全ての研究を国語研究所の研究者が行っているということではないのではないかと思いますが,その点も含めて,よく御確認させていただいて,次回の会議に回答させていただくようにしたいと思います。
○林主査
実は本来は,そういうことは,前回の国語研究所のヒアリングの時にお聞きすべき内容だったのですが…。ただ前回1回だけですから,やはりこうやって事実関係が非常に詳しくなってくると,また新しい,そういうお聞きしたいことが出てくるということもございますので,それでは可能な範囲でそういった点に関しても確認していただいておくということにさせていただきたいと思います。
○尾﨑委員
今日の配布資料3についてです。済みません,配布資料1,2を飛ばす形になります。
配布資料3は,既に頂いている報告の抜粋ということなんですけれども,現在の国語研究所の社会への貢献ということで,○が二つ書かれていて,一つは「研究成果の還元」,もう一つは「政策への貢献」となっています。
「研究成果の還元」というのは,これはもう誰でもやらなければいけない,少なくとも税金をもらって研究をしている以上は,それを何らかの形で公開,還元するということは当然なので,もちろん国語研究所も立派にいろいろやっていらっしゃるということがよく分かります。問題は,その次の「政策への貢献」というところなのです。アンダーラインのところを見ていくと,2行目の「省庁からの委託事業の実施」というのがあって,先ほど国語課長から,配布資料の最後に,いろいろ調査研究をするときに三つの形があって,一つは委託だというお話がありました。それで,国語研究所も委託事業を受けていらっしゃるんですけれども,この文章では「研究者が主体性を持って」とある。「研究者が主体性を持って」やるのは当然かもしれませんけれども,国語研が主体性を持ってということはあるのか,ないのかということがちょっと気になったものですから,これもまた,後でお答えがいただければいいかと思います。国語研究所が,文化庁なり政府なりからの委託研究を受けるに当たって,どういうふうになるのかをお聞かせいただけたらと思います。
それから次に,危機的な言語・方言の実態調査研究を受け入れていらっしゃって,これはとても大事なお仕事だと思います。この文化庁からの委嘱を受けるに当たって,これはやはり国語研究所全体で受けると決めて,このお仕事に関わる教授や,准教授の方々は,先ほどの西原委員のお話のようなエフォート値というようなことも含めて当然検討されているのだと思いますけれども,その点はいかがかということです。
それから,最後に,日本語教育小委員会の「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的カリキュラム案」の作成の基盤となったということについてです。いろいろな研究をしていただいて,それを活用するというのは当然のことだと思うのですけれど,いわゆる学術研究と政策研究と呼ばれている,その違いが何なのか。何かはっきり分ったような,分からないような…。私の理解では,学術研究というのは,研究者あるいは研究機関が学術的な意義を考えて課題を設定するということだと思います。一般的に政策研究と呼ばれているのは,国なり行政機関が,行政上必要な施策,あるいは政策を作ったり,それがきちんと行われているかを検証するために必要な基礎的,基盤的な研究調査。ですから,出発点は社会的な必要性ということから出ている,これが分かりやすい区別だと思います。ところが,学術研究と呼ばれているものも,とても幅が広くて,自然科学だったら数学とか理論物理学というものから,もうちょっと環境問題とか航空工学とか,最近の原子,放射能の問題とか,いろいろな研究があって,研究課題を設定するときに,学術的な意味というのは絶対になければいけないんだけれども,同時に研究者も市民と言うか,国民と言うか,社会を構成している一員であるはずですから,何かの研究課題を設定して研究するときに,学術的な意味と同時に,それがどういう社会的な意味を持つかということについて説明ができなければいけないと私は思います。国語研究所で,例えば,多文化共生社会における日本語教育という大きなテーマでプロジェクトをお進めになっていらっしゃいますけれども,そういうような大きなプロジェクトの中で個別の研究課題を設定していくときに,もう少し社会寄りの学術研究というのを推進していただけるのであれば,その結果は,より日本語教育小委員会だけではなくて,いろいろな形で政策の立案などに生かされると思うのです。そのような意識で,当然国語研究所は努力をしてくださった,その結果が,今ここに出ていますので,引き続きそのような方向で研究課題の設定をしていただく,その場合に,国語研究所の中の先生だけではなくて,研究者コミュニティーがどういう問題意識を持っているかということも含めて御検討いただきたい。そのことを日本語教育に絡めて言えば,残念ながら,この2年間を見たときに,まだまだ工夫,私自身もその中の一人ですので,努力をしなければいけないなと感じております。
話を戻しますと,国立国語研究所でやってくださっている研究について,学術研究ではあるけれども,もう少し社会的ニーズというようなことにも,更に目配りをしていただけたら有り難い,そのことを附帯決議が求めているとはっきり書いてあると私は思います。
○林主査
ただ今の御発言は,多方面にわたる本質的と言うか,基本的な問題でございます。今の御意見は,この後,また議論を進めていく過程で,いろいろ具体的な提起として出てくることかなと思います。取りあえず本日は御報告いただいた配布資料1と2について,この検討の観点から御検証いただくというところが趣旨でございますので,時間も大分残りが少なくなってまいりましたので,そこの辺りに少し御発言を絞っていっていただければ,有り難いと思っております。
○舟橋国語課長
先ほど尾﨑委員から委託研究について,どういうふうに受けているかいう御質問がありました。後ほど,国語研にも確認させていただきますけれども,契約としては,人間文化研究機構と文化庁が契約をして,委託をしておりますので,それは組織として受けていただいているということになっております。それをどういうふうに意思決定しているかということについては,確認をさせていただきたいと思います。
○林主査
尾﨑委員の御発言の中にありました要確認事項,やはりこうやって議論している過程で出てくるものですから,必要に応じて御調査なり,お問合せなりをしていただいて,次回またそれについて,お話しいただければと思っております。
○西原副主査
尾﨑委員がおっしゃったことの本質と関連することかと思うのですけれども,大学共同利用機関としての国立国語研究所は,尾﨑委員のお言葉をそのまま借りて申し上げれば,サイエンティフィックリサーチを専らするところであるとなります。ただし,社会貢献ということも視野に入れ,かつ,国際的連携ということも視野に入れて,サイエンティフィックリサーチ(=科学的研究)をするという意味なので,例えば,配布資料1−1の一番右の「国語政策における活用」ということの末尾が,全部「検証に活用することが可能になる」という文言,あるいは「成果の活用が期待される」となっていることが,それを如実に表すのではないかと思うわけでございます。
この政策ということと,研究ということの在り方の違いと申しますか,それをこの小委員会としては,専ら政策を目指してほしいという観点から検討するのか,それとも国立国語研究所がアカデミックリサーチ(=学術的研究)として,社会貢献及び国際貢献をにらみながら立案してきたことが,結果としてあれこれの政策に活用することが可能になる,そこのところで,私どもの検証があるのかということが大きな問題なのではないかと思うのです。
○林主査
この末尾表現ですけれども,これはちょっと,こういう観点も併せて考えていただかないと,この表現に影響されて,議論の方向が,我々のミッションから外れていく危険性があるのではないかと思います。つまり「活用する」というのは,提供する方もありますし,それを使う方もございます。使う方は,ここでは今,検証の対象になっていないんですね。ですから,せっかくいいものを提供しても,それを使うべき人が十分使いこなさなければ,活用というのは十分行われないということになります。そういう相手のあることでございますので,こういう言い方しかできないというのが一つです。
それともう一つは,さっきの書き言葉コーパスのように,この8月に使えるようになったものもございます。これは期間が短い,そもそも2年という検証期間がもう非常に短うございます,最初の回に,澤川学術機関課長がおっしゃったように,2年ですからやはり限界があるんですね,そういう活用とか成果に関しては。そういうことも併せて評価しないといけないと思います。どうかその点を含んだ上で,御指摘を頂戴したいと思います。
この「可能だ」という表現に関しましては,どうしても,それを併せて御評価いただくべきことだと思います。
○西原副主査
そうですね。
それで,配布資料4の表ですが,先ほど尾﨑委員がおっしゃった委託研究を実施する,調査研究を委託するというときに国は自ら調査研究もするわけですね。その「国」というところが,言語及び言語の活用に関する政策立案をするところだとすれば,国が政策立案したことについて委託研究,調査研究が走るわけでございますね。それは,ここに「活用」として書かれるべきこととしては,直接にそれに応えたという意味付けになると思うんですね。
ところが,そうではなくて,国立国語研究所が自らのミッションとビジョンに基づいて判断して,研究をしていること,それが社会貢献だったり,国際貢献だったりするというようなことを目指してしていることが,たまたま国の政策にヒットして,それならば国語研究所の研究を活用しましょうということになるという,その2方向について,今,検討しているのか,それとも今,林主査がおっしゃったような,そういう方向を一方に見て,私どもは国語研究所の研究を検証しているのか,そこがちょっと私にははっきり理解できていないと思うのです。
○林主査
今の西原副主査のおっしゃったような視点を含むことは構わないと思いますし,そういう新しい,こういうところからの御提案が出るということはむしろ望ましいことだと考えます。この小委員会の仕事は,何度も申し上げますけれども,新国語研究所になったからと言って,これまでやってきたような,旧国語研究所が担ってきたような国語や日本語教育の研究及びその政策に関わるものが,移管後一緒に軽くなると言いますか,その重要な職務が適切に継承されないということがあるといけませんので,それでこの2年目を目途にしてそれがちゃんと行われているかどうかということを皆さんに御判断いただく,それが一番の中核です。
それをやるときに,科学技術・学術審議会学術分科会の作業部会,国語分科会の小委員会,それぞれ役割が違うと思いますので,この小委員会におきましては,これまで文化庁なんかが連携を取りながらやってきた国語や日本語教育に関する調査及びその政策に関わる部分につきまして,それがちゃんと新しい国語研究所でも適切に継承されているかどうかということを御判断いただく,それを基本にした上で,いろいろな御意見を頂くということになると思っております。それがこの小委員会の役割だと思っておりますので,そういう西原副主査のような,もっと大きい構想の前向きの御発言は,やはり大切なこととは思いますけれども,今申し上げました前提の上でということをお願いしたいと思います。
それでは配布資料1−1,1−2について,ほかに御意見がなければ,先ほども申し上げましたけれども,次回は取りまとめについてまたいろいろ御意見を伺います。配布資料1−1,1−2に関連する御意見は,これ以上お伺いできないということではございませんので,もしその後何か御意見がございましたら,次回にもお伺いできるということで,配布資料1−1と1−2に関しましては,一応この御報告,大筋において御了承いただいたということにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
特段,御意見がございませんようですので,配布資料1−1と1−2に関しましては,本日はここで切らせていただきまして,次に移りたいと思います。
配布資料2−1と2−2,これは政策課題に対応するところの調査研究が,文化庁及び国立国語研究所を含めて全体として適切に実施されているかどうか,これがこの小委員会の検討の観点の1(2)に相当する観点でございます,それからもう一つ,日本語教育に関する調査研究の推進体制,連携体制が適切なものになっているかどうか,これは,この小委員会の検討の観点の2の関係でございますが,先ほどの配布資料5と見比べながら,御覧いただきたいと思います。
配布資料5の1(2),それから2,この辺りと,配布資料2−1,2−2を御覧いただいて,何かこれに関して御意見があったら頂戴したいと思います。
○尾﨑委員
質問というよりも意見になってしまうかもしれません。
配布資料2−1の1ページ目に,東日本大震災に関して,方言の保存・継承に関する必要な施策についての「検討を実施」と書いてあるんです。このようなことは,私はとても大事だと思っています。文化庁がおやりなったこととして,「検討を実施」というふうになっているんですが,こういうのを私は初めて目にしたので,どんなふうかなと…,大変結構なことだと思いますが。
○舟橋国語課長
これは国語課におきまして,部内でどういうふうな対応が必要かということを,まず事務的に検討しているという段階でございます。特に何か審議会等の場で御意見を伺ったということではございません。適宜,東北大学に東北の方言について研究されている先生がいらっしゃいますので,そういった先生の御助言を頂きながら,また,準備調査について今年度委託させていただきながら,どういった対応が必要かということを検討しているということでございます。
○尾﨑委員
こういった事態のときに,新しい国語研究所は,学術研究機関であると同時に,何かこういうときに文化庁等と一緒になって,場合によったら国語の研究,日本語の研究,日本語教育,いろいろな人がいますから,どこかが音頭を取ってやってくださればいいかなと思っていました。
○舟橋国語課長
それは正にそのように,御説明が不十分で申し訳ありませんが,配布資料3というのがございますけれども,3枚めくっていただきまして3ページ目,「35ページ」と書いてあります。専門的な観点から国立国語研究所の研究者に助言をいただいております。この4)というところです。これは実際,国語研究所の,方言を研究されている研究者に御助言を頂いて委託研究の在り方などを検討しております。説明が足りませんで,申し訳ありません。
○尾﨑委員
この小委員会とは直接関係ないことなのですけれども,頂いた配布資料2−2を見ているうちに,どうしても目に付いてしまったものですから。
日本語教育がいろいろな分野で,いろいろな形で行われているということがずっと書かれていて,このことと国語研究所はどういう関係なんだろうと思いつつ見ていたんです。これは,恐らく国語研究所の問題ではなくて,これだけ広がりのある日本語教育の現状と将来についてどうするかということをどこで検討するんだろうなというふうに,私自身が思っています。この小委員会ではやるお仕事ではないんですけれども,恐らく,そうですよね,でも,この小委員会のまとめというところで,やはりそういうことにも触れられるといいのではないかと個人的には思っています。
○林主査
今の尾﨑委員の御発言は,この機関,研究機関その他の連携体制にかかわる非常に重要な御指摘だと思いますので,取りまとめのときにも御意見を承れればと思っております。
○伊東委員
配布資料2−2「(1)生活者に対する日本語教育の推進に必要な調査研究等」なんですけれども,ざっと見た感じですと,やはり現状把握と調査研究や,様々な必要とされるものの開発に終始しているように思いました。したがって,やはり,先ほどの配布資料1−2に戻りますけれども,やはりその調査や研究から見えてきた課題だとか問題点に対しての取組だとか,政策への助言とか提言というものが,今後盛り込まれていくことが重要かなと感じました。配布資料1−1の「2.国語に関する資料,情報の整備及び提供等に関する業務」の中では,外来語言い換え提案があったり,病院の言葉を分かりやすくする提案があったりということで,やはり国際社会における日本語の課題が,国語審議会等で審議されていて,その後どうするかということを,国語研究所ではこのような形で提案というふうに述べられているわけですね。日本語教育に関しても,もう一歩進んで調査研究から見えてきた課題だとかをもう少し取り上げた形で,何か提言に結び付くようなことが出てくるといいのではないかと思いました。
○林主査
ただ今の御意見も承って,次回以降の取りまとめに具体化させていただきたいと思っております。
○西原副主査
取りまとめの最後に関わることかと思うのですけれども,国語に関する政策課題,あるいは日本語教育に関する政策課題ということを考えますと,30年後,50年後の日本語の在り方ですとか,30年後,50年後の人口構成における外国出身者の割合を見て,それに対して,例えば少数派言語をどうするかとか,そういうことを政策的課題と考えますと,そういうようなビジョンというものがどこで作られるのかというようなことも含めて,国語研究所は,そこに関してどういうふうな政策的課題を自ら判断する,あるいは委託されて研究するということになるのかということも検討課題なのであろうと思うわけですが,何回か御指摘があるように,そこまでやるのは,この小委員会の所掌ではないとすれば,どこまでを,何を言えばこの小委員会が責任を果たすのかというこについて,改めて少し疑問を抱くところでございます。
○林主査
新しい国立国語研究所は,大学共同利用機関としての位置付けがございますので,やはりその性格というものを踏まえた上で,なさっていることを理解したり,あるいは提案があれば御提案をするというふうな,全体としてはそういう方向になると思います。ただ,国全体の,国レベルの政策立案を,どこが一体どうするのかというふうな話にまで発展してしまいますと,今,この時点の,この小委員会では,そこまでちょっと及ばないというところがありますので,それに関連するこの小委員会の見解として,何か後にくっ付けるというようなことは検討に値するとは思います。
○西原副主査
ですから,私どもが大学共同利用機関としての新国立国語研究所の在り方というものを十分に理解した上で,その限界もわきまえた上でどうあるべきなのかということを考えるというのが,この小委員会の所掌であって国会の附帯決議を何か末尾のところで捉えて,国の機関に戻すことも含めて再検討するなんていう宿題をもらったと考えないということでよろしいでしょうか。
○林主査
この小委員会の使命にはそこまでは含まれていないと,私は理解をいたしております。それぞれの委員のお考えの中にそういう視点が含まれることは,私は大変結構なことだと思いますけれども,ただ,私どもが求められている報告の中身というのは,飽くまでも,先ほど申し上げましたような,その範囲にとどまるものだと思っております。
○西原副主査
そういう理解でよろしいかという確認でございました。
○林主査
はい。
○上野委員
私も全く同じ理解でして,要するに,独立行政法人の旧国語研究所から,大学共同利用機関の新国語研究所に変わったわけですから,その中の任務として判断,評価,検証するというつもりで出てきております。
○尾﨑委員
皆さんの御議論には,もう全部賛成なんです。ただ,一番初めに申し上げたように経緯がありますから,この小委員会としての報告に加えて,一委員としての見解というようなことで加えていただくようなことは可能かどうか…。
○林主査
今ここで即座に…。
○尾﨑委員
御検討いただきたい。
○林主査
私からお答えするのはどうかと…。非常に難しい問題だと思いますが,その辺りはまとめ方の問題ですから,まとめ方をどういうふうにするかは,また次回まで少し,いろいろ考えさせていただきまして,ただ皆様の貴重な御見解につきましては,極力それが,この小委員会の使命と矛盾しない形において反映させていただきたいと思っております。
ほかにございますでしょうか。(→挙手なし。)
それでは,終了の時間が迫っております。先ほどの配布資料2−1,2−2につきましては,ここで取りまとめていただきました点については,こういう実態を御了承いただいたということにさせていただきたいと思います。
本日の議題に関しまして,特段,本日この場でという御意見がなければ,本日の予定はこれで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。
御説明のありました,次回の国語研究等小委員会,本小委員会でございますが,先ほど来申し上げておりますように,報告書の取りまとめに向けた審議の方に入ってまいりたいと思っておりますので,本日の議論を踏まえて,事務局の方で素案,本日の議論の取りまとめをお願いし,素案に相当するものを次回にはお示しいただきたいと考えております。それを基に,またいろいろな御意見が承れるものと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,本日のこの小委員会は,これにて閉会とさせていただきます。御多忙の中,本日はどうも御出席ありがとうございました。
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