議事録

第2回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成19年8月30日(木)
10:00〜12:00
都道府県会館 408会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,岩見,佐藤,中野,山田,甲斐各委員(計7名)
(文部科学省・文化庁)
町田国語課長,氏原主任国語調査官,西村日本語教育専門官,中野専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第1回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 日本語教育小委員会におけるヒアリングのテーマと対象者(案)
  3. インターカルト日本語学校からのヒアリング資料
    「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会(第2回)ヒアリング資料」
  4. 新宿区立しんじゅく多文化共生プラザからのヒアリング資料?
    「新宿区における日本語教室事業について 〜財団の視点から〜 」
  5. 新宿区立しんじゅく多文化共生プラザからのヒアリング資料?
    「報告書『平成18年度 両親のどちらか,または両方が外国人である児童・生徒の状況に関する調査』」

〔参考資料〕

  1. 日本語教育関係機関(改訂版)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)を確認した。なお,細かい文言修正等については,1週間以内に事務局まで連絡することとされた。
  3. 事務局から,配布資料1,2についての説明があった。
  4. 西原主査からヒアリングの説明者について紹介があり,それを受けて,説明者からも簡単な自己紹介があった。
  5. ヒアリング?
    加藤早苗氏(インターカルト日本語学校代表)から,対象別日本語教育の在り方についての意見発表があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  6. ヒアリング?
    柳田富美子氏(新宿区立しんじゅく多文化共生プラザ・多文化共生課長)から,対象別の日本語教育の在り方について意見発表があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  7. 上記5及び6の終了後,更に自由な意見交換を行った。
  8. 次回,第3回日本語教育小委員会は10月4日(木),第4回の日本語教育小委員会は11月1日(木)にそれぞれ開催されることが確認された。なお,次回は今回に続き,有識者ヒアリング及び意見交換を行う予定であること,また会場については事務局から改めて連絡することが併せて確認された。
  9. 意見発表及びその後の意見交換における意見の要旨は,次のとおりである。

(1)加藤早苗氏の説明と,その後の意見交換

インターカルト日本語学校の加藤と申します。このような場に日本語学校として参加させていただいたことは,大きな一歩だというふうに思っております。今日は,全国にある日本語学校を代表するつもりでも参りましたので,いろいろお話を聞かせていただくとともに,私からの話も聞いていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
私は,今の日本語教育機関としての日本語学校の現状と,これからどのように変わっていくのだろうかというところで,実際私たちが考えたり,動き出したりしている部分も含めて,お話をさせていただきたいと思います。
ポイントといたしますと,本当に学習者の目的が変わってきていること,それから学習者自体が変わってきていること,それに伴って学習内容も変えなければいけないし,実際に変わってきていること,そして,今度は,それを教える側の教師も変わらなければいけないといった,いろいろな問題が現在の日本語学校の中にあるということです。
まず,日本語学校とはどういうところかをちょっと簡単に,御存じの委員方もたくさんいらっしゃるかとは思うんですけれども,御説明したいと思います。資料の4ページ目,日本語教育機関の概況という表を御覧ください。これは,財団法人日本語教育振興協会が作った表です。私たちが一般に日本語学校と称しているのは,この財団法人日本語教育振興協会,通称「日振協」の認可の下にある学校のことです。実際には,認可外の学校もたくさんありますが,就学,留学ビザを取れる学校というのは,認可された387の学校に当たります。
現在,学生は3万人余り。そして,国別にはこのような形で推移しております。ざっと御覧いただいても分かるかと思うんですが,学生数は,平成3年のところ3万5,000人からスタートしていますが,8年のところで1万1,000人にまで減っております。そして,15年のところで4万2,000人に増えて,そして現在3万人というように,増減を繰り返しております。その原因は,一番究極的なところで言うと,ビザの発給される状況によってということになるんですが,いろいろな海外の経済政策や,災害なども含めて,そういった状況次第で学生数も,それから機関の数も変わってきているというのが日本語学校の現状であります。
そして,その下の出身国・地域別内訳というところの,一番上の中国の学生の増減がまさしく,この機関数,学生数の増減と合致しているんですね。中国の学生の数がどれだけいるかということが,イコール日本語学校の数であったり,学生数であったりというのが現状です。その次に,進学者の内訳というのが出ておりますけれども,今申しましたように,恐らく一般的に日本語学校といった場合は,中国の学生が多い進学の予備課程というイメージを持たれている方が非常に多いと聞きますし,現実にかなりの部分がそうであるかと思うんですが,ここにもありますように,このような形で,進学者が推移しておりまして,これもまさしく中国の学生数の推移と合致しています。以上,日振協認可の日本語学校をごくごく簡単にですけれども,概観という形で御紹介いたしました。
ここから現状というところに移りたいと思いますけれども,1枚目に戻ります。真ん中の所に書きましたが,私自身インターカルト日本語学校から参りましたので,インターカルトの例をもちまして,まず,ある日本語学校の例をお話ししたいと思います。
私たちの学校は,今申し上げましたような中国の学生が多い進学予備課程だけで成立している学校ではありません。ですので,進学希望者以外の学習者も入ってきやすい環境の事例ということで現状をお話ししたいと思います。
学校は東京の新宿区と杉並区にありまして,学生数は定員720人ですが,まだ10月生,その他が入ってきていない状態ですので,現在は600人ほどおります。学生の出身国・地域は,現在24か国であります。学生の割合から行きますと,韓国,台湾,香港,シンガポール,その辺りのアジア諸国が多く,中国は6%です。そして,そのほか欧米諸国等が続きます。設立は1977年で,今年がちょうど30年目になります。翌年に日本語教師の養成所も開設しております。
事業内容は,大きく分けますと,日本語を教えるという部分と日本語教師を養成するという部分になっております。組織は日本語学校とランゲージセンターと日本語教員養成研究所とに分かれております。日本語学校には,長期コース,短期コース,短期遊学コースとありますが,表の一番上の長期コース(1年〜2年),ここだけが,実は日振協の認可の部分です。ですので,事業内容を縦にずらっと並べましたけれども,実は日振協で管轄しているのは長期の就学ビザを取ってきている学生の部分だけというふうになります。
実際には,1週間からのキャンプコース,それからサマーコースなどに,学生が集まりました。今年は,80人ほどの学生がサマーコースだけのために学校に来ておりました。そのほか,プライベートレッスンやグループレッスン,それから教師派遣,コース受託ということでここに幾つか例を挙げましたが,企業や大使館,それから公的なプログラムの受注もいたしております。日本語教師養成に関しましては,全日制の養成コースと,教育実習を主にするコースがあります。また,教師派遣やコース受託としては,JICAの日系人教師を対象とした研修や,青年海外協力隊の派遣前の補完研修,それから一般企業になりますが,クラブツーリズムといった,そういう民間の日本語教師養成講座への教師派遣ということもしております。
具体的に,今,日振協管轄の長期コースを含めてどんな学生がいるかというと,現在在籍する学生をざっと調べてきたんですが,まず就学生,短期生がおります。それからワーキングホリデーの学生,大使館員,駐在員の家族,修道士の人,研修生,介護士,ITの技術者,国際結婚をした方の配偶者,それから,そのお子さん,そういったいろいろな方たちがいます。その中ではっきり言えるなと思うのは,簡単にニーズとか何かという言葉で言っていますけれども,本当に学習者の数だけいろいろな差があるなというのを実感しておりまして,対象者別の対応策の検討なども徐々にではありますが,学校の中でも進めているというのが現状です。
2ページ目を御覧ください。日本語学習者層の変遷ということをごくごく簡単にですけれども,まとめてみました。1977年を起点にしているのは,私たちの学校が開校した年だからです。日振協ができたのは平成元年ですので,実際はずっと後ということになります。そして,現在の2007年まで行きますが,縦に日振協のところで切っていただくと,中国の学生が,日振協のできる前に非常に多くなります。そのころ一般に上海事件というふうに呼ばれたりしておりますけれども,中国で,ビザ発給その他の問題で,上海日本領事館に対して非常に大きなデモが起きました。この事件を契機にして,外務省,法務省,文部省とで日振協を作りましょうということでできたという経緯がありました。私たちの学校及び日振協設立前からある学校は,実際には国籍も多様な学習者が在籍する語学学校だったんですね。私自身がこの仕事に携わるようになったのが1987年ぐらいなんですけれども,その時点で,私は,インターカルト日本語学校からスタートしておりますが,実際に私が最初に教えた上の方のクラスの学生というのは,15か国の学生が15人ほどいるというような学校でした。英語圏の学生もたくさんいましたが,ちょうど過渡期でしたので,入学したての学生は随分と中国の学生が多いというような状況からスタートしました。
実際,日振協ができた段階で,進学の,いわゆる学校教育の中の日本語学校というふうな位置付けに近くするためというか,そういうようなこともありまして,非常にこの辺りから進学予備課程というような意味合いが強くなって,それ以降にできた学校のほとんどは進学課程という名称でできております。私たちも時代の流れの中で,実際には進学が非常に多い時期もあり,そして,ここのところでより多様化へということで,先ほど申しましたように24か国,いろいろな国の学生が再び入ってきたというのは,実を言うと本当にここ数年のことです。ですので,2000年の時点では,本当に韓国,台湾,中国,香港,それくらいの学生,4か国ぐらいの学生しかおりませんでした。それを2000年の時に,国籍を増やそうということを学校の中でも,うたい文句にして今24か国。去年の夏はサマーコースで29か国までになりました。
間にビジネス研修と書きましたが,これはアジア経済危機前,韓国の大企業のビジネス研修を大量に受けたというようなことがありまして,これは私どもの学校の特徴かもしれませんが,基本的にはこのような形で学習者が変遷してきております。3番目の,今そして,これからの日本学校は,ということで,ここからは一日本語学校ではなくて,日振協全体の活動についてお話ししたいと思います。
現在,日振協では,ここに1から10まで,2ページの真ん中辺りの所に掲げましたけれども,日本語教育機関の水準向上のための研究会,研修会を行っております。黒い星印を付けたものが実際に教育内容について討議されているもので,そのほか事務職員向けのものなどがあります。例として幾つかかいつまんで申し上げますと,1番の日本語学校教育研究大会,これは2年続けて,今年の夏,この間終わりましたが,世界の潮流と日本語学校の未来ということを掲げて,日本の中の日本語学校ではなくて,世界の中の語学学校として,世界の人と競争できるような学校を作っていこう,ということをテーマに大会を開催しました。そのほか,右に米印を付けた所について下に書いていますけれども,2番目の日本語教育セミナーは,校長や,主任を中心とした参加者を対象とした日本語教育に関するセミナーですね。
それから,5番目が,そういったものをトップにも,経営者にも反映させようというもので,トップセミナーというもの。それから,9番目,教職員が対象ですけれども,専門能力をきっちり付けていかなければということで,そういった研修。そして,最後の10番目,外国人受入問題に関する講習会,ここが,最も今日のヒアリングとも関係してくるところかと思いますが,そういったものも,これは2年くらい前からですけれども,発足しております。
その下の多様化する学習者層の事例ということで,何をお話ししたらいいかなと考えたときに,去年の秋にありました2番目の日本語教育セミナーですが,日本語学校の校長や主任といった教育自体を専ら職務とする人たちが集まるセミナーで,多様化する学習者層というものがテーマに掲げられまして,そこの分科会で実際に声として出たものが記録としてまとまっているものがありましたので,そのまま抜粋してまいりました。
幾つか抜粋したものを羅列いたしましたけれども,大きく言いますと,一つ目の点の所で,学齢期の学生の増加ということで,実際に小さいお子さんが日本語学校に入ってきているという報告が,かなりありました。東京もそうですけれども,それよりももっと多いのは,愛知県や静岡県といった日系人が多くいるような所,つまり大きな工場がある所ですね。それから,東北地方,多分結婚されての問題とかもあるでしょう。それから,震災後の神戸とか,東京よりも地域の方たちから割と多く報告されました。
それから,二つ目の点の配偶者,それから宗教,家族滞在などの学生が進学コースの中にいる。実際本当にそれらの学生がとても増えているのだけれども,日振協というくくりの中にある日本語学校とすると,やはり進学というのが中心になっていて,その既にできたシステムの中に入ってきているので,どのように教育内容を変えていったらいいのか,どういうふうに教えていったらいいのかということを,それぞれの学校の中で考え,少しずつ改革を進めています。日振協でも勉強会を開いたりしていますけれども,問題としてはまだ現在解決していない,これからの問題として大きくある,ということが見えてきております。
3ページ目を開けていただきまして,その上のところ,字が切れておりますけれども,講師の資質が異なるのでという所,講師が不足している。つまり,一般の,いわゆる進学希望者者であれ,会話を中心とした日本語学習希望者であれ,その辺りの教師というのが実際これから求められる。特に,この生活者というのを考えた場合には,だれ一人として同じではないわけですから,その辺りをどのようにこれから養成していくかということも課題になります。その下に,幾つかイコールの記号を文章の後に付けたのは,その分科会でいろいろ出た意見です。それぞれがいろいろ工夫をしているのだけれども,ではどういうふうにしましょうかと,それぞれの分科会から課題が出され,これからそういったことをきっちり問題として取り上げて,解決策も考えていくということをやっていかなければならないということで,去年の秋の段階では終了しています。
最後の点二つの所ですが,まず上の方。地域からの外国人配偶者の子弟が一割を超えているというような学校もあります。100人の学校でしたら10人がいわゆる就学生ではなくて,日本語学校が,子供たちの学習の場になっているということ。それから,最後の所が,15〜6歳の連れ子の教育の問題とあります。日本語が上手になっただけでは仕方がないというのは,実際そこから感じたことだと思いますが,子供たちが求めているものというのは,いわゆるただの日本語だけではないだろう。そのほかのことというのは何があるのかということを私たちも考えていかなければならないだろうということです。
最後の外国人受入問題検討委員会,先ほど10番の所で,このヒアリングと非常に関係があるでしょうというふうに申し上げたところですけれども,実際に講習会というものを全国の日本語学校を対象に,隔月で行っていて,これまでに5回開きました。それは本当に北海道から九州,沖縄までそれぞれの学校から代表の方が来て,関係者からのお話を伺うんです。これまでは経産省,経団連,それからJITCO,AOTS,商工会議所の方たちにそれぞれ来ていただいて,今までの私たちが対象としていた学習者ではない状況についてのお話を聞いております。そして,第7回として,聞いたところによると,文化庁からのお話を伺いたいということで,お話を進めているというふうに聞いております。
今後,委員会で検討すべきこと,推進中のことでは,日本語学校に関する資料作成があります。集計途中だということなので,ここにはお出しできないんですけれども,これは既にアンケートを実施いたしました。実際に定住者,家族滞在,そのうちの子供の割合というようなものも出ておりますけれども,非常に多い数ですね。学校によっては,10%を超えるような形でいるという現状が数字として出ております。これは近く公表されると思いますので,改めて御提出できればと思っております。実際にそれにかかわっているという日本語学校が,延べですけれども,100校くらいあって,実際,全部で380校ですので,うち100校でいろいろな委託も受け,そういう場合に,教師を派遣するなど,かかわっている教師もたくさんいるというような結果が出ております。
ここに幾つか書きましたけれども,カリキュラムを作ったり,それから,教師を育成したりすること,そしてその次の4番目の点ですけれども,地域との連携を図るための交流推進ということで,今日御一緒に説明してくださる,本当に私たちはとても近いところにあるので,実際はもう既にかかわりがあるんですけれども,より地域と,それからいろいろなところと連携をして,いわゆる進学予備課程としての日本語学校ではなくて,私たちはとても幅広く柔軟にしていこうという姿勢で今おりますので,何とかいい形で,これから連携を進めていけたらというふうに思っております。

○西原主査
ありがとうございました。手短にというふうに申し上げたので,いろいろな内容を本当に手短にお話しくださいましたけれども,非常に多岐にわたったことでございます。まず御質問があればどうぞ。

○岩見委員
2ページ目の多様化する学習者層の事例に,学齢期の学生つまり外国人の親に連れてこられる学生が挙がっています。高校生,中卒の子供たちも実際これも進学コースの中で一緒に学んでいるんですか。あるいは,次に挙げられているような,選択性のコースを設定して対応していらっしゃるんですか,これへの対応というのはどうなっていますか。

○説明者(加藤)
これは私たちの学校のことではないので,具体的な,詳細については分からないんですけれども,聞いたところでは,地域の,愛知県の,学校の事例だったと思いますが。実際に学校の普通のクラスに入って,プラス,地域の教室に通いながら,というふうなことを聞いております。

○岩見委員
地域の教室と日本語学校と両方で,週1,2回は地域の教室で面倒を見てもらうけれども,毎日日本語学校でも勉強しているのでしょうか。

○説明者(加藤)
ゼロからやるのは日本語学校でやる。ですので,進学目的である年上の学生さんたちと一緒に勉強するというのは問題があるというふうに聞いております。

○西原主査
予備知識として,日本語学校が法務省等の関係で制約がありますよね。そこをちょっと御説明いただいた方が悩みがはっきりするんじゃないでしょうか,日振協の部分で…。

○説明者(加藤)
そうですね。私たちの本当に大きな基盤になっているのが日振協の部分ですが,法務省と文部科学省と,それから外務省のそれぞれが大きく力を入れていただいたために成立していますが,特に法務省の部分で,日本語学校の学生となれる人というのは,実は18歳以上の学生で,それで多くは進学目的ということになりますけれども,就学ビザというのを取って入国してくる人たちです。そこの部分が基盤としてあることが前提にある日本語学校なのですが,その地域に来た方たちは日本語の学校だからということで門戸をたたいてくださるんだと思うんですね。でも,実際上は学校のシステムが,そこの部分を絶対に外せずにありまして,今までの経緯を見ましても,日振協が成立して以来,ずっとそこを中心にやってきています。ここ数年のところですけれども,そこに新たに入ってこられた場合,受皿として,そこしかなかったというのが現実だと思います。ですので,ここまで増えたところで,あわてて,どういうふうにしたらいいかというふうに考えながら,現場の先生が一番大変だと思いますけれども,既にあるシステムの中でちょっと取り出したりとかということも含めてやっているというのが現状のようです。そういったことで,よろしいでしょうか。

○西原主査
既にある長期コースは少なくともその縛りを受けたところで,その上で,多様化に対応しなければならなくなっているということですね。

○説明者(加藤)
実際,小さい規模でやっている学校も多いので,そう簡単に別のクラスを作ってということが経営上難しいということもあると思います。

○岩見委員
3ページの入管に総合コースを提示したけれども,認められないとあります。認められないということは,ビザが下りないということと関連があるわけですが,でも,配偶者だとか,家族滞在であれば,別のビザがあるので,入管が認めなくても日本に入国できるし,現に生活していらっしゃる方がいます。そういう方のために独立したコースを独自にやろうと思えばできないことはないけれど,実際上,財政的に難しいということでしょうか。

○説明者(加藤)
私の学校では,割とやって…。

○岩見委員
財政的なことですとか,あるいは学生が集中して集まらないとか,別の理由で独立したコースができないというのが実態でしょうか。

○説明者(加藤)
今おっしゃった部分ですが,実はここに載せるかどうか迷った部分なんです。抜粋した関係で全部ここに載せたんですが,実際は入管,日振協に関係なくコースを作るのは全く問題ないんですね。ただ,多分何かの問題でこうなったんだと思いますが,おっしゃったように財政上の問題で,たった二人しかいない学生のためにコースを作るのか,クラスを作るのかという,その経営者側と実際上の教育の現場というところの,ジレンマも含めてこのようになっているかと思います。この意見は,先ほども申し上げましたように,いわゆる教育を専らとする校長や主任の会議で出たものですので,ある意味で,トップに対する不満のようなものも含めてこれが出ていて,日振協で,先ほども言いましたが,トップセミナーというのを行っているのは,そういった声をきちんと経営者にまで吸い上げて,経営者がいわゆる日本語学校業をやるのではなくて,日本語教育の教育機関であるという意識を持って学校を運営していこうというようなことも…。

○岩見委員
経営者の自覚とか,経営者の判断とか,それ次第で変わってくる可能性もあるだろうということでしょうか。

○説明者(加藤)
そうですね。実際にはとても小さい学校が多いですので,大変だろうと。

○山田委員
3ページの,今のことと関連するかもしれないんですけれども,真ん中よりちょっと上のポツのところに,連れ子の問題をお聞きしたんですけれども,その後に,人生を抱える65歳の人もいるというのはどういうことなのか,何か気になったので,これをちょっとお教えいただきたい。それと,もう一つ,聞き漏らしたのかもしれないんですが,日振協の認定校の100校が関係しているということをおっしゃったんですけれども,これは派遣なんかも含めてということだったんですが,JITCOの名前も挙がっていましたけれども,いわゆる技能実習制度の座学の枠というと50時間程度ということで,そういうことに協力しているという,そういうことですね。

○説明者(加藤)
はい。そういったものは全体としてというより,個々の学校によっていろいろなんですけれども,JITCOからの依頼で教師を派遣しているような場合や,先ほどの協力隊のようなものを含めて,それぞれがそれをしているという意味も含めてです。アンケートの結果で,100というのが出ておりましたので,先ほど100校と申し上げました。
もう一つの方の人生を抱えるというのは,これが議事録に出ているのは,私もちょっとはっきりしないんですが,非常に若いというか,15,6歳,もっと小さい子供から日本語ができないで日本に来てしまった65歳のような人まで,つまり,将来がある子供だけでなく,人生をどうしたらいいかという人までをも日本語学校という一学校が抱えなければならない現状もあるという意味合いで,これが記されていると思います。

○山田委員
そうですか。分かりました。ありがとうございます。

○中野委員
先ほど,2000年ぐらいから多様化がまた始まったというところで,自然にそうなったというよりも,学校の方針として,よりそれを進めたというように聞こえたんですけれども,それはどういうことですか。

○説明者(加藤)
一つには,多様化が世の中の流れであるというのも現実で,まずそこから申し上げますと,ちょうど2000年辺りのところで,ぐっと学生が増えてきていて,あの表を見てもお分かりになるかと思うんですが,その後,中国人を入管が閉めたということで,がくんと減ったんですね。中国人が減るということは,進学者が減るということで,そこにいろいろな日本の,いろいろな情勢で連れ子の方が増えたりとか,日系人が更に増えていったりとかというような現状があるというのが一つ。
それから,先ほど2000年と言ったのは,私のことで言いますと,ちょうど学校の代表の立場になったのが2000年で,その時に学校を変えようと思ったんですね。いろいろな道があると思うんですが,進学を専らとする学校もこれからも絶対必要だと思いますが,私たちの学校は,もともといわゆる語学学校からスタートしているので,スタンスとしてそのようにしようということで,より意識的にいろいろなところに場を求めて今まできたという意味です。

○杉戸副主査
資料の3ページの下,黒い四角,外国人受入問題検討委員会のこの項の一番下に書いてある今後の検討課題,推進中のこと,そこに例えば,カリキュラム構築,高度人材,それから,一番下にもカリキュラム作成というのがある。つまり,これは具体的に成果物を目指した活動だろうと思います。それには,非常にざっくばらんに言えば,人も必要だし,お金も必要だと…。そういうところがどういう体制で今進んでいるか,あるいはこれから進めなければいけないか,というその問題意識ですね。日振協参加の各学校,それぞれの御努力も一方であるだろうし,それから,不参加の学校相互の連携ということもあるだろうし,それをまとめる日振協という団体としての努力もあると思います。それぞれに人材なり財政的基盤なりが必要だと…。その辺りが今どういう問題を抱えているか,あるいはこれから先どういうふうに展開していくニーズを持っていらっしゃるかという,そういうことを,ちょっと大きな話かもしれませんが,伺いたい。
つまり,今日の参考資料1で,ここに日振協が出ているわけですけれども,その日振協以外でも同じような構造が,今言ったようなこと,例えばカリキュラムを開発する,あるいは教材を作る,指導者を養成するという,それぞれの事業としては人もお金も掛かる。それを,例えば日振協の場合,あるいは日振協不参加の学校の場合,どういう人とお金で今進んでいるかというようなことですね。

○説明者(加藤)
ぶっちゃけた話というところですけれども,本当に手弁当で成り立っているというのが一言で言うと現実かなというふうに思います。日本語学校の財政事情は全然豊かではないんですね。というのは就学生から取れる金額というのが決まっていて,基本的にはそれ掛ける定員の数しか収入がないわけです。だけれども,何とか日本語学校としてワンランク更に上がっていかなきゃということで,一学校を考えながらも日本語教育をという大きい目的のためにそれぞれが…,というのが現実です。ですので,本当にかなりの持ち出しでこういうことを,幾つかの学校が中心になっているというのが現実なんですね。
おっしゃったとおりに,これからどうかするかといったときに,カリキュラムという言葉が,ぽんぽんと2か所も出ていますけれども,そんな簡単にできるわけもなく,それもまた,日本語学校の教師たちが,現場を抱えながらお金を出して,中央に集まって話合いを重ねたからできるというものでもありません。しかしそれこそ,今回こういう場は本当に有り難いなというふうに思っていますが,カリキュラム開発のための一歩というのは,そこでの連携ではないでしょうか。生活者ということを中心に考えたら,本当に地域との連携,それから大学との連携,そのほかいろいろ文化庁と文部科学省と何々というようなところで,協力して作る一つのものでないと。日本語学校版とか,日振協版カリキュラムができても仕方ないというふうに思いますので,例えば,地域の日本語教育をどうしたらいいかという場合に,日本語学校として参画して共に作っていけるというような形ができればいいなと思っております。一番の問題は財政の問題で,やはりいい形で私たちも成り立っていきながら,何かを作っていけるようなシステム,そういったものが連携の下にできればいいと思っています。それは日振協もそのように言っている,考えているというふうに聞いております。

○杉戸副主査
各学校版ができてもしょうがないとおっしゃいましたか,日振協版だけでは物足りないとおっしゃいましたか。

○説明者(加藤)
物足りないのではなくて…。

○杉戸副主査
つまり,それを超えた枠組みで成果物が利用できるような,あるいは成果物の権利関係がきちんと保全されて,努力したところが報われるような,そういうことも含めてですけれども,そこも含めた利用,活用,あるいは共有の体制ですね。そういうものが,これは私,日振協の理解が足りないかもしれませんけれども,本来,日本語学校の連携体である日振協がそういう役割を果たす可能性を持っている,とここで思いながら御質問したわけですけれども。

○説明者(加藤)
日本語教育振興協会という名前が,決して日本語学校を代表する名前ではなくて,日本語教育を振興するものなので,そういった意味では,広い形で貢献というか,構築の中心になっていくべきでもあるし,なっていきたいなというふうには思っています。
ただ,先ほど日本語学校だけではと言ったのは,日本語教育全体を考えた場合に,学校とか地域とか大学とか,それが何かばらばらに動いているというのが実際いろいろな場に出ていても私自身が感じるところでもあって,世界の潮流ということを今掲げてやっていますが,ほかの国を見るとか,それから,ほかの国も含めて日本語教育というのが,その国の日本語教育ではなくて,本来,日本として一つでなければいけないんだろうなという思いを今とても強く持っているためにそのような言い方をしたんですが,日振協がいい形で動いていくためにも,いろいろな連携の組織というか,そういったシステムが作られていければ,より日本語教育振興の中心になっていけるんじゃないかというふうに思っております。

○西原主査
お二方のやり取りの中で,言葉としては出てこないけれども,ナショナル・カリキュラムというか,ナショナル・スタンダーズというか,そういうものの存在がちらほらするんじゃないのかなと思いますけれども,さて文化庁さんどうしますかという,そういうことなのではないでしょうか。
時間的には,そろそろ次の方のお話を伺わないといけない時間になってしまいました。話を切るのは心苦しいのですけれども,是非,しんじゅく多文化共生プラザのお話も伺いたいと思いますので,また意見交換の時に戻るということ,それから,今後ともこの委員会と日振協あるいは日本語学校との意見交換というか,つながりというか,そういうものも保っていくということで,加藤さんのお話を一応これで切らせていただきます。ありがとうございました。
では,続きまして,お待たせいたしました,しんじゅく多文化共生プラザの柳田さん,長尾さんから御説明をお願いいたします。

(2)柳田富美子氏の説明と,その後の意見交換

しんじゅく多文化共生プラザにおります,新宿文化国際交流財団多文化共生課長の柳田です。まず,お手元の資料の確認なんですが,資料4に,今から順を追って御説明したい内容がありまして,それの最後の7ページ目,8ページ目が更に資料1,資料2と書いてございますけれども,新宿区の国籍別外国人登録人口の表と,それから,最後のページ,学習者情報ということで,資料を付けてございます。また,資料5として,『平成18年度両親のどちらか,または両方が外国人である児童・生徒の状況に関する調査』,これは,後ほど説明の中で簡単に使わせていただきたいと思っております。
早速ですが,最初に,新宿区の外国人の傾向について,ごくごく簡単に触れたいと思います。新宿区の人口は,資料の初めにもありますように,2007年7月1日現在30万9,517人で,その内訳は日本人,これは住民登録人口ですが,27万8,181人,外国人登録人口3万1,336人となっております。外国人登録上の数字で言えば,人口の10.1%が外国人という状況です。およそ住民の10人に1人が外国人というのは,全国的に見ましても,外国人住民が非常に多い自治体と言えます。東京の中でも,もちろん一番多いです。
外国人住民に関する新宿区の特徴を一言で言いますと,多様性という言葉が当てはまるかと思います。国籍別で見ますと,外国人住民のうちの,先ほどの最後から2ページ目の表で見ていただいてもよろしいんですけれども,4分の3ぐらいが韓国・朝鮮,それから中国の人たちで,残りの4分の1ぐらいが世界各国およそ100以上ですね,毎回100か国以上,大体102,103から110か国ぐらいの国籍数で推移しております。来日目的や年齢層も様々で,留学,就学,家族滞在,結婚,仕事など多岐にわたっています。それから,仕事の種類も大変多様です。
このように,全国の縮図のような多様性を持つ新宿区の状況は今後外国人が増えていくであろうと言われます全国の地域社会にとって,何らかの一つのモデルケースになるのではないかと思っているところです。
資料1ページ目の真ん中ちょっと下ですけれども,新宿区に外国人が住みやすい理由というところから始めたいと思います。
外国人が多い理由,あるいは住みやすい理由としましては,新宿区内に早稲田大学があります。その他の大学もございますけれども,日本語学校も40ぐらいございます。それから専門学校,コンピューターですとか,イラストですとか,その他の専門学校も多い,そういったことから外国人の学生がおります。それから区内に東京韓国学校という,韓国人の駐在員の子弟が中心になっているような学校があります。新宿区と千代田区の区境にフランス学校がありまして,その周辺,新宿区側の市ヶ谷という地域に当たるんですが,フランス語圏,フランスですとか,それから,ルクセンブルグ,ベルギーなどの人たちの集住地区があります。もちろん駐在員もその辺に多く住んでいるということです。学校がありますと,どうしてもその近くに集住地区ができるという状況があります。
さらに学校に関して言いますと,外国人学校だけではなく,区立の小中学校の中には,全校児童の6割以上が,外国系の子供たちという小学校も現在ございます。外国人が多い理由として,歌舞伎町などの歓楽街や繁華街がありまして,そこで働く人々がその周辺に住むという傾向があります。資料の1ページ目の四角で囲っております大久保・百人町地区というのがそれに当たる所なんですが,大久保の方は,コリアタウンと言われるような状況で,韓国の人たちが多いです。それから,百人町の方は中国系の人たちが多いというような状況が既にございます。
それから,同じ新宿の中でも西新宿の高層ビル街には,外資系の企業もたくさん入っておりまして,そちらには駐在員の人たちが働いていますので,その人たちが区内に住んでいるというのもあります。また外国人の中に,もともと留学生として来ていて,その後,社会人になって起業して,日本でビジネスを始める人たちがいます。韓国は新宿の場合が多いんですけれども,店舗を構えたり,事務所を構えたりする人も多いです。
そのように既に外国人が多いという状況がありまして,そこに同胞がどんどん集まってくると言いますか,食材店ですとか,教会や,外国人の家探しを手伝ってくれる不動産屋ですとか,あるいは駐在員の場合ですと,家を一回借りますと,3年後,4年後,帰っていくときに,次に来る人のために同じ家が,あるいはマンションが社宅として受け継がれると言いますか,そういう傾向もあるようです。といった様々な理由で,外国人の住みやすい生活環境が新宿にはできているということが言えるかと思います。
また,これは日本人にも当てはまることですが,新宿はターミナルで様々な電車の路線が乗り入れていますので,外国人が行き来するには大変便利だということもあると思います。このような新宿で,私たちが日本語教室を始めた経緯を御紹介します。まず1ページの最後のところになりますけれども,前身が新宿区国際交流協会というのが1993年にできまして,私も,長尾も,その最初の時から仕事を始めました。翌年にはボランティアが教える日本語教室事業を始めまして,今年で14年目になりますが,以来ずっと日本語教室事業を続けております。
日本語教室事業を続けているということを前提に,先ほどの7ページ目のグラフを御覧ください。ちょっと文字が小さいですが,グラフの一番右が2006年になっています。一番下の1本の線,その下の一番多いところが韓国・朝鮮,下から2番目の白っぽいのが中国ということで,その上にフランス,更にその上にミャンマー,フィリピンといった形で,国籍別に見るとそういった人たちがどんどん増えているというのが分かると思うんですけれども,1980年,左から三つ目の線が1980年ですが,80年代以降,どんどん増えているというのがこれで御覧いただけるかと思います。現在,先ほども申し上げましたが,3万1,000人を超えるような状況になっております。
資料の最後のページに学習者情報というのを入れました。これは,うちでやっております日本語教室に来ていた,あるいは来ている主な学習者の層,あるいはうちの方で重点的に考えていた,あるいは特徴的な部分というのをここに挙げましたが,1994年に始めまして,現在2007年までにかなり変化が見られます。これも後で説明の中に入れていこうと思っております。
当初,日本語教室を始めました1994年というのは,場所が東京韓国学校という駐在員の子弟が多い学校のそばだったということもありまして,韓国の駐在員の奥さんたちが圧倒的多数でした。94年というのは,国際交流協会の私たちの仕事自体が,まだまだ地元に向いていなかったと言いますか,89年辺りに当時の自治省の後押しなどがありまして,友好都市提携ですとか,町おこし,村おこしのために,国際交流というのが進みまして,その延長線上にあった時代でもあります。ところが,実際に,国際交流協会ができましてふたを開けてみますと,地元でのいろいろな必要性と言いますか,外国人と日本人の共生もそうなんですが,外国人の支援のための様々なことが必要だということが見えてきました。その最たるものが日本語教室で,日本語を教えたい,教えるボランティア活動をしたいという人たちと,それから日本語を教えてほしいという声が両方からどんどんこちらに入ってきたんです。国際交流協会を作った途端に。当初は,それをマッチングするという形で日本語教室というのを始めたというのが実態です。
2ページ目に参りますが,【当初の日本語教室】のところですけれども,対象者としましては,経済的,時間的,精神的にもゆとりのある大変勉強熱心で,優秀な学習者が多かったです。これは韓国のお母さんたちに象徴されると思います。
それから,教室のイメージを持っていただくために一例として御紹介したいんですが,2ページ目の下の方から3ページ目にかけまして,参考としまして2004年度のクラス編成というのが付けてございます。これは,ほぼ94,5年辺りから2004年までこの形でやってきましたので,その一例として見ていただきたいと思います。期間は,始めた当時1年間でしたが,途中で減っていくということもあって,途中で2期制にしまして,半年間のコースに変更しました。それから,週2回の授業で,1回当たり2時間で行いました。授業はほとんどが午前中でした。途中,10年ほどの間に夜間クラスを作ったり,それから午後のクラスを作ったり,いろいろ模索したんですが,最終的に,一部の午後のクラスを残してほとんどが午前中のクラスに集約されました。形態としましては教室形式で,5段階のレベル分けによるクラス編制でした。毎年1期ごとに8クラスから12クラスを運営しておりました。1クラスの定員は10名から25名程度で,毎回クラス分けのためにプレースメントテストというものを実施しまして,日本語能力レベル別にクラス分けをしました。教科書は,『新日本語の基礎』を当初は使っておりました。『みんなの日本語』ができてからは,『みんなの日本語』に乗り換えまして,1998年ごろから使っておりました。
授業の方法は,講師と呼ばれるボランティアが主に授業を進めまして,チューターと呼ばれるボランティアが1名から3名各クラスについて講師のアシスタントを務めました。ボランティアの数は,講師とチューター合わせて50名から65名ぐらいで推移しております。学習者は毎回120名から180名くらいで推移しておりました。この日本語教室は大勢の学習者がいまして,いつも盛況でしたが,私たち主催者としては次第に問題意識を持つようになりました。それは,地元地域の様子とうちの日本語教室の様子にギャップがあるというところです。そのことが気になり始めたのです。3ページの上,2004年時点での問題点というところを御覧いただきたいんですが,ここの部分から次のページの真ん中辺りに,現在の基本的考え方という太い矢印があります。この太い矢印の手前までが,1ページ半にわたりまして,2004年当時に私が作りましたレポートから抜粋してきたものです。当時書いたものを,そのままここに載せました。ちょっと読み上げさせていただきたいと思います。
2004年の日本語教室開催当時,社会状況や日本語教室を取り巻く状況,学習者を含めてですが,急激に変化しているが,財団の日本語教室はずっと同じ体制でほとんど見直しをすることなく現在に至っており,組織が硬直化している。
1年に2回だけ受入れのテストを行い,新しい学習者を受け入れる。授業進行の妨げになるので,途中から新たに学習者を受け入れることはしない。教室授業,レベル分けがまずあるということで,できる人は残っていくんですが,授業に付いていけない人たちは落ちこぼれてやめていく傾向がある。残念ながら,地域社会での受皿・居場所を本当に必要としている人が集う場所とはなっていない。
教科書を学習することが中心の画一的授業で,日本語学校のような,加藤さんすみません,体制になっている。ボランティア活動であるが,「教える」ことに特化した活動になりつつあり,相互交流や相互理解,互助の役割を余り果たしていない。ボランティアさんたちが教えることに楽しみを見いだしてしまって,それが中心…。教科書を教えることが,この授業の中心なんだというふうに,そして,それが学習者の役に立っているという勘違いのようなものが全面的に広がっていました。それではまずいと2004年当時考えまして,今後に向けて何をしなきゃいけないかということを考えるために,財団でそのころ調査をしたんです。その結果を受けて,矢印の下になるんですが,新宿区内における日本語学習支援の充実の必要性を痛感し,それを推進することにしました。これはボランティアさんたちに提示した内容でもございます。
日々の生活に密着した語彙や内容を,まず学習できるような場所が必要,外国人にとってということです。単に日本語を教える場所ではなく,日本語学習を一つの手段として,外国人が地元地域への所属意識を持ち,地域コミュニティに参加・参画していくきっかけとすることが必要。地域の日本語教室は,日本人と外国人の双方が互いに対等な立場で知り合い,交流し,助け合う接点となる場所に本来なるべき。日本語の到達度は,それぞれの学習者によって様々であっていいはずで,画一的なものである必要はない。それぞれが自らの生活をより良くすることができ,満足できれば,それで,日本語教室の目的達成となるということを考えました。そして,更にその下ですが,ではどんな日本語教室を私たちは目指すのかというところで出したのが,日本語を学びたい外国人が住んでいる地域からできるだけ近い所,これは近所でという意味です。日本語教室に通えて,近所の人々とあいさつを交わしたり,接点を持てるようにしたりする。地域センターなどを利用して,外国人が地域の様々な行事,講座,学校のPTA活動などに参加したり,自国の文化や料理などを日本人に紹介したりするなど,これは発信するという意味ですけれども,活動ができるようになることを目指す,このようなことを打ち出しました。
ボランティアの皆さんとはけんけんがくがくであらしのような約1年半でした。議論に議論を重ねました。何でこれで駄目なんですかというのが皆さんの意見だったんですね。それで何のために私たちは日本語教室事業をやっているのかを一緒に考えてみませんかというところからスタートしまして,見直しを行いました。内規というのが設けてあるんですが,内規に掲げた目標はここに書いてあるとおりでございます。
何とか1年半かけて皆さんに納得してもらって,【今後の展開】という,更にその下にある矢印のところですけれども,こんなことをしていきたいねというようなのが,この部分ですが,日本語教室の地域展開を行う。これは,新宿区といいましても広いので,いろいろ地域の,さっきも言いましたが,西新宿ですとか,市ヶ谷の辺りですとか,大久保地区ですとか,かなり状況が違っております。外国人の住民人口も違いますし,特徴も違いますので,各地域で展開していく必要があると。
それから,ほかのボランティア団体を含めて,区内の,うちの日本語教室だけで完結できるなんていうのはとんでもない話で,区内で活動している様々な日本語ボランティアグループと連携して,外国人の人たちがどこかで日本語学習をできるきっかけ,場所ができればそれいでいいんじゃないかというふうに考えました。
新宿区日本語教室というのがうちの教室なんですが,当面8か所で11クラスを運用する。それから,入門・初級者対象であるということ。中級以上の,中・上級者につきましては,ほかの日本語グループですとか,あるいは日本語学校を勧めたりとか,ということです。それから,日本語ができない,言葉が分からないために地域社会に入っていけない人たちを最優先しようと。生活の日本語を重視する。それから,入室は可能な限り,1年を通して随時できるようにする。学習者が必要としていることを授業で取り上げ,画一的な授業は行わないこと。
こういうことを決めまして,これらが今の私たちの日本語教室の基本的な考えになっています。2005年から【現在の展開】のところをちょっと御覧いただきたいんですけれども,これが実際上なんですが,区内8か所で9クラスの体制を取っております。会場によって週1回又は週2回,これは会場の都合なんですけれども,がございます。
それから,教室授業ではなくて,小グループ,各施設の会場の中で小グループ制を取っております。入門・初級対象で,地域型への転向を行っていまして,できるだけ住んでいる家の近隣にあるクラスに参加できるような配慮をしております。それから,年間を通して空きがあれば随時入室を認めていまして,地域の情報ですとか,その近所の情報ですとか,生活ルール,災害時の対応に関することを授業の中に取り上げております。特定の教科書は定めないで,学習者のニーズに合ったものを使うというのを原則にしています。
このようなことをやっているんですが,新宿区日本語教室では子供対応はしておりません,できていないんです。赤ちゃんですとか,お子さんを連れて教室にやってきて,その辺で遊ばせてということが可能な教室についてはそれを認めておりますけれども,子供に日本語を教えるということはできていない,していないので,今,増えてきた子供への日本語学習支援ニーズをどうするか,どう対応していくかということで新たな取組も数年前から始めております。親子日本語教室というのを作りまして,区内の小学校の空き教室を利用させてもらって,外国人の親と子が共に学習できる場,そして,居場所を提供しています。託児付きです。また,区内で活動するボランティア日本語教室のグループや個人が新宿日本語ネットワークという緩やかなネットワーク,皆さんに集まってもらって組んでもらいまして,各種の無料講座,平仮名,片仮名を勉強するクラスとか,漢字を勉強するとか,日本の絵画をやろうとかというものを毎週しんじゅく多文化共生プラザで自主的にやってもらっています。
ちょっと時間がありませんので,さっといきたいと思います。
5ページを御覧いただきたいと思いますけれども,【現在の問題】というところです。私たちが,このようなある意味改革をしてきた結果なんですが,さらに,今,私たちが直面している問題は,この【現在の問題】のところに五つほど書いておきました。
日本語教室を実施するためには,会場と教える人と,内容,方針とかプログラム,それから教える人の育成とサポート,それらを賄うためのかなり大きな予算が必要になりますが,これらをすべて整えることは容易ではありません。私たちも,財団として会場を確保するのは無理だったんです。
2005年から新宿区直営の日本語教室という形にして,実際にはそれまでと何の変わりもないんですが,予算を区の方で付けてもらうことにしました。そうすると,区の教室ですから,会場も取りやすいということで,そんな苦渋の策もしてきました。ただ,全国的にこれから外国人が増えていく中で,これらのものをそろえるということは本当に必要なことなんですが,難しいだろうなというふうに思います。
それから,定住者が増えるにつれて,学習者の年齢層,在留目的,職業,国籍などの幅がどんどん広がっています。教室の時間帯・曜日・内容の要望も多様ですし,それから,そういった多様なニーズにどうこたえていくかなんですけれども,対応がなかなか追い付かない状況です。特に子供たちへの日本語,それから教科学習支援の必要性が深刻です。学校現場も大変困っています。私たちは,子供たちの問題について調査をしまして,今年3月に報告書をまとめたんですが,それが資料5の,皆さんのお手元にあるものなんですけれども,報告書の2ページに調査実施の概要がございます。これは,新宿区立小学校,中学校,全部で41校あるんですが,そのすべての学級担任364人を対象として,外国系の子供たちの実態について聞ききました。
そうしたところ,報告書の10ページを御覧いただけますでしょうか。区内の公立小中学校の全クラスの88.5%に当たる315人の学級担任が自分のクラスに外国系の子供がいると答えています。つまり新宿区のほとんどの学校のほとんどのクラスに,外国系の子供がいるのが現状ということが分かりました。
30ページを見ていただきますと,それらの学級担任のうち約半数がその子たちに関して困っていることがあると答えています。調査全体を通して,これはまたお持ち帰りいただいて御参考にしていただければと思うんですが,全体を通しまして日本語の理解が十分でないために,子供,教師,保護者が困っている深刻な状況がうかがえます。これを受けて,今いろいろな取組を始めたところなんですが,いずれにしましても,教育委員会との密接な連携が必要不可欠だというふうに考えております。
さて,日本語教室の方ですが,事業を始めた経緯から日本語教室事業の運営そのものをボランティアに依存していまして,それを前提に財団では予算立てや人的部分を設定しているのが実情です。しかし,専門知識やボランティア活動に割ける時間を主催者側,私たちの都合で安価に,しかも際限なくボランティアへ求めることには根本的に無理があると思っています。日本語教育活動に関するボランティアへのサポートが,全く足りません。多様化する日本語学習支援現場でのニーズを現場のボランティアスタッフは,じかに感じているんですが,それをどうやったらいいか,どう対応していったらいいかに大変困っています。それは,高度な専門知識や方法を持っていないということからだと思うんですけれども,私たち主催者側もそれにこたえ切れていなかったのかなと,これから何とかしなければいけないと,悩ましいところです。
今後に向けましては,5ページの最後のところになりますけれども,地域型日本語教室の運営方法を見直す必要があるかなと考えています。これは,大学あるいは日本語学校と専門機関との連携によるソフト面でのサポートと指導の必要性がある。どうしてもこれが必要ではないかと…。どういう形が望ましいのかはこれからの課題です。それから,国際結婚の妻,あるいはお母さんですけれども,うちのプラザにもいろいろな相談が持ち込まれます。御本人が来ることもありますが,そういった人たちが孤立しないで,地域社会に入っていくための日本語学習支援というのも必要だろうと思います。特に,アジアの女性は,母語での教育を十分に受けていない人も多いんですね。そういった人たちにどういうふうに日本語の支援をして,地域社会にうまく溶け込むようにしたらいいのかというのが大事だと思います。
それから,仕事に就くための日本語支援。これは,外国人がお客さんではなくて,あるいはお荷物ではなくて,日本社会で自立していくためには是非とも必要な部分です。仕事と住宅というのは本当に基本的なところです。
それから,外国人労働者のための日本語支援。これは,生活レベルを向上させるためには,日本語が分からないままで日本の社会にいては,いつまでたっても,より良い生活は望めませんので,地域で支援していくべきであると。
それから,子供たちへは,さっきも申し上げましたが,学校で日本語適応指導をしていますけれども,50時間,60時間,新宿区は大変手厚い方なんですが,それが終わった後も,十分ではないということで学校現場で悲鳴が上がっているということです。一方では,子供は教育を受ける権利がありますので,何とかそこをうまくやっていきたいなと。何らかの理由で日本に連れてこられた子供たちですが,これから育って,彼らが巣立つのは日本社会で,地域社会で生きていくこと,構成員になることを考えますと,問題が起こる前に対処しなければならないと思っております。それから,先ほども加藤さんの方から出ていましたが,進学問題,就職問題に関しても,何とか考えていかなければならない。うちにもそういった子供たちが多々相談に訪れています。
最後にボランティア活動に関してですが,地域の日本語教室においては,ボランティア活動を取り入れるということがやはり必要なことで,専門家だけでは駄目だと思っています。というのは,地域社会を構成している日本人の側が外国人住民と一緒に生きていくんだという啓発の意味も含めまして,ボランティア活動を取り入れる必要性や,重要性はとても大きいんですが,一方で,専門性ですとか,ノウハウですとか,方針ですとか,ボランティアだけではできないもっともっと大きな部分を,日本語学校ですとか,大学ですとか,いろいろな方々,専門家の方々のサポートを得てうまく作り上げていかなければいけないのかなというふうにも思っております。

○西原主査
ありがとうございました。ため息の出るような内容で,今のお話もいろいろと盛りだくさんのことでございましたけれども,まず質問がありましたらどうぞ。

○山田委員
今の最後のところで,【現在の問題】のところがあって,その中の黒丸の四つ目ですか,ボランティアに依存しているということの問題点が出ているんですけれども,学習者の方が日本語を自分は学んできて,日本語が上達して社会参加をうまくしていくんだという,こういうニーズがありました。それで,それに対して協会は理念としての,内規というのがさっき出ていましたけれども,これはもともともあった内規なわけですね。

○説明者(柳田)
2004年の時点で作り替えた後のものです。

○山田委員
そうですか。その作り替えた内規でいうと,そういうある意味での言語保障に当たるようなことをやるんだということは言っていない。逆にそこでない,どちらかと言うと地域を構成している人間たちが,共に地域づくりを考えていくための場にしていく。そういう方向になっているということだと思うんですけれども…。
そうすると,ニーズとしては,日本語の言語保障をしてもらいたいという,そういう人たちがいながらも,逆にボランティアに専門性を求めるということになるわけなんだろうと思うんです。それは,協会のある種の理念や,専門性のないボランティアでも参加することが可能だとしていることと,ちょっとギャップが出ていると思うんですが…。
まず一つお聞きしたいのは,例えば1−1クラスだと,入門の1というのは(火)(木)とあって,2時間ですね,13:00から15:00までやっているようですが,これは,同じ人が週2回来るということですか。

○説明者(柳田)
まず,ここの2004年のクラス編制というのは,今の地域型日本語教室にする前の元のもの,悪い例を示したんですね。悪い例というのか,古いのを見ていただこうと思ってあえて入れたんです。今やっています日本語教室,地域型で分散しているんですが,それも週1回,週2回,あるいはその間にクラスもあるんですけれども,週2回のクラスの場合は,例えば(火)(木)のクラスは,(火)(木)のボランティアさんが基本的に別の人でやっています。ただ,クラスとして運営をしていますので,連絡をしながらとかという形なんですが…。

○山田委員
それで学習している人は同じですか。

○説明者(柳田)
同じです。

○山田委員
週2回ということですね。

○説明者(柳田)
はい,そうです。

○山田委員
そうすると,週2回4時間勉強する機会が与えられる。私が,いつも考えるのは,ボランティアに取り組んでいるところの現場に,そういう言語保障というか,自分たちの日本語力を上げてこの社会に積極的に入っていくんだという,そういうニーズを持っている,日本語学校に求められるようなニーズを持っている人たちが多く来ているわけですけれども,それに対応するための専門性もさることながら,時間的なものも足りないということは考えられると思うんですが…。

○説明者(柳田)
それは感じています。週4時間ではとてもとても,1年やっても日本語が…。

○山田委員
『みんなの日本語』の全部は行かないぐらいな。

○説明者(柳田)
『みんなの日本語』は全然今やっていないんですけれども,それぞれの人たちのニーズに合わせて,何をやりたいかというのに合わせるようにはしているんですが,ただ週4時間あるいは週2時間では,とてもとても十分なものはできません。それから,さっきおっしゃいましたように,確かに学習者の方は言語保障のようなものを求めて,ここに行けば日本語が上手になれるんだと思ってくるんじゃないかなと思います。しかし,それぞれが持っていると思われる学習目標としての到達点にこたえられるような環境整備はうちでは整っておりません。
それが今の私たちのジレンマで,ボランティア活動にそれを求めるのは無理があるし,日本語教室の運営自体も見直しが必要だろうと。時間的なことですとか,いろいろなものも含めてのことです。

○山田委員
ということで,この理念を掲げ,変革というか,直して,それでそういう方向にシフトしたんじゃないかと私は思うんですけれども。そうであれば,別に悩む必要がなくて…。

○説明者(柳田)
すみません,時間的に入り組んだ書き方をしてしまったかもしれないんですが,もともとやっていた日本語教室があって,『みんなの日本語』を使って,教室形態でやっていたのが2004年までですよね。それを見直したのが2004年で,今2007年ですから,2年の経過があるんですね。今,2007年の時点で再度変えてきたものを,でも,これはボランティア対応だけでは限界だ,何とかしなきゃいけないという今の状況なんです。ですから,ここに掲げました内規の部分の古いものも,2004年時点で変更しなきゃいけなかったときに掲げたもので,今とはちょっとずれがあるんですけれども…。

○山田委員
そうすると,この2004年に掲げた,内規に掲げたものについては,これまでやってきたようにやれるんだけれども,言語保障に当たるようなそういう人たちのニーズに対応できないことの問題があるということをおっしゃったわけですね。

○説明者(柳田)
やはり学習者の対象が大変多様化しまして,それから,どんどん増える傾向にありますし,それにどう対応していくのかというのも一つの大きな課題ですね。ボランティアさんへのサポートも十分でない状況で,これからどうしていったらいいんだろうと。今の状況はまずいだろうというのははっきり分かっているんですけれども,さて,どう立て直すかというのはこれからです。

○山田委員
プランもないということですか。

○説明者(柳田)
はい。何とか専門家・専門機関とつなぎたいというのが大きなところなんですが…。

○西原主査
国としてというか,何かそのことに対応できるのは,例えば,調理師試験が数か国語で受けられるとか,運転免許の試験も内容さえできれば,あとは運転するとか,調理するとか,髪の毛を切るとかということに職業的な意味があるわけだから,そこの突破口のところが日本語でしか受けられないということ自体がおかしいんですね。おかしいというか,それは別の方向のことですけれども。1年間で,あのしち面倒くさい試験を日本語で突破しろというのは到底我々にだって,かなり難しいというか,この年で私はもう一回やろうとはとても思えない,そういうことでもあります。ほかに御質問は。

○杉戸副主査
3ページから4ページにかけてのゴシックになっている部分の質問です。
3ページの一番下に【めざす日本語教室】というのがありますが,これと次の4ページの(内規に掲げた目標)という,見直された新しい内規,その時点での内規ですね,その二つの,3ページのしっぽの部分と4ページの内規に掲げた目標,これの関係はどうなるんですか。この目指す日本語教室が,もう一段古いものなんでしょうか。

○説明者(柳田)
いえ,そうではないんです。【めざす日本語教室】のところに書いたのは,ボランティアの皆さんから,これからの財団の日本語教室としてあるべき姿というのは,具体的には,どういうことかということを聞かれたときに,できるだけ具体的なものとして書いたのが【めざす日本語教室】のところで…。

○杉戸副主査
2003年とか2004年のころに,その時点では新たにこう示したものと,そういうことなんですか。

○説明者(柳田)
そうですね。(内規に掲げた目標)のところも同じ時期のものなんですが,これは日本語教室の運営に当たりまして,この日本語教室はこういうビジョンを持ってやりましょうねという,もうちょっと概念的な部分にしたつもりなんですけれども…。

○杉戸副主査
分かりました。もう一つ,これはちょっと漠然としたお尋ねですが,御説明の中では,新宿区はまだいいと思うんですがという,そういう一言があったんですかね。どのところがそうなのか…。

○説明者(柳田)
日本語適応指導を小学校で50時間,それから中学校で60時間,40時間と50時間だったかな…。

○説明者(長尾)
幼稚園が40時間。

○説明者(柳田)
時間数が…。

○杉戸副主査
そういう状況について,そういう評価というか…。

○説明者(柳田)
というか,ほかの自治体と比べますと,時間数が多いんですね。もっともっとできないところもあるのに比べると,予算化されているという意味でそうなんですが,でも現実にはそれに対応し切れていないと…。

○杉戸副主査
その辺をちょっとこう…。

○西原主査
佐藤委員,具体的な何か平均のところがぱっと思い浮かびますか。

○佐藤委員
多分,40時間ぐらいじゃないかと。

○西原主査
平均的に。

○佐藤委員
そうですね。初期日本語指導として。

○西原主査
初期日本語指導40時間,あったところで40時間。ないところもあるわけですね。

○佐藤委員
はい。ないところはかなりありますね。

○西原主査
ないところの方が多かったりする。

○佐藤委員
はい,そうです。

○説明者(柳田)
新宿の場合は,幼稚園が40時間,小学校50時間,中学校が60時間までということなんですが,子供の状況に合わせて。それプラス必要があれば20時間更に付けることもできるというふうにはなっております。

○杉戸副主査
例えば,そういう段階の,初期の段階の40時間とか,50時間とか,そういうことに関しては相対的に,全体の中では新宿区はいい状況だというふうな評価があるということですか。もっといろいろな別の出来事というか,別のやらなきゃいけないことへの対応の状況として,新宿区がいい状況だという認識をお持ちなのかどうか。全国とか,あるいは都内23区のほかの区と比べたりして,相対的に,新宿区の今御説明いただいたこういう活動,あるいはその状況というのをどういうふうに私たちは受け止めたらいいのかということですね。いい方なのか,ましな方なのか,あるいは普通のレベルなのか。それは例えば,新宿区にほかの自治体あるいはほかの自治体関係のこういう業界などの方が見学とか何かいらっしゃった時のやり取りとか,そういう中で,新宿区の皆さんはどう受け止めていらっしゃるか。自分たちの地域の状況を日本全体の中で,どんなふうな位置として自己把握されているのかということをお伺いします。

○説明者(柳田)
いい,悪いで答えるのは非常に難しい質問だと思います。ただ,外国人登録人口が3万を超すという状況自体が,全国の中では,もしかしたら一番多いかもしれないんですが,そういう状況にあるわけです。住民の10人に1人ということは,もちろん10人に1人の1人にも施策は大切なことですが,残りの10人のうちの9人にとって,要は日本人の住民にとっても,例えば,安全・安心ですとか,いろいろな意味で地域のことを考えますと,外国人施策というのは,あるいは日本語教室事業というのは大切なことだというふうに考えています。
ですから,大変なんですが,10人に1人だから予算化されて,新宿区が積極的に外国人との共生を進めましょうというふうに持っていける理由付けにもなっていると…。新宿区よりも外国人が少ないところが全国でほとんどですので,そういったところで政策的に日本語教室にしろ,あるいは外国人相談窓口にしろ,その他の施策にしろ,取り上げること自体,予算化すること自体ができないんじゃないかというふうに思います。
もう一度新宿のことを考えますと,現実には実態に追い付いていないと個人的には考えています。もっともっと本当は必要なんだけれども,できることからやっていっているという,かなり深刻な状況と受け止めております。

○中野専門職
事務局から発言をさせていただきます。
今,副主査からあったのは,全国の国際交流協会が行う日本語教育支援において,今回来ていただいている,しんじゅく多文化共生プラザがどのぐらいの状況なのかという御質問だったと思うんですが,私が国語課に来て,全国の国際交流協会の方からお話を伺う中で感じることを少し御紹介したいと思います。しんじゅく多文化共生プラザの場合は,先ほどの御説明の中にもあったように,大学が近くにあるということもあって,大学教員との連携が進んでいるという点では,全くそういうところがないところもあることを考えればいい方だと思います。
さらに,学校との関係,具体的に言えば,新宿区にある大久保小学校との連携という点では非常に進んでいて,関係も良好だというふうに聞いております。全国の国際交流協会の中には,学校ですとか,それから大学とかとの連携がまだうまくいっていないところもありますし,そもそも近くにないというところもありますので,そういう意味では全国的に見ても,恵まれた環境にあり,進んだ活動がなされているように感じます。もちろん,日本語教育の専門家,いわゆるコーディネーターと呼ばれる方を国際交流協会の中に置いていたりとか,更に学校との連携を密にしているところもあるように聞いていますので,一概にいい,悪いということは申し上げられませんが,そういう点に注目しております。

○西原主査
私は,何よりも柳田さんがお話しくださったことの意識の高さに敬服しました。我々がこの小委員会の中でテーマとして取り上げていくべきような要点を既に意識として持っていらっしゃるということに非常に敬服をいたしました。個人的な感想ですけれども…。

○中野委員
実は,私も今同じことを申し上げたいと思ったんですけれども,私の今おります財団も新宿区にありまして,以前から大久保小学校とか早稲田とか,つながりはあるんですけれども,今回改めてお話を聞いて,大変敬服しました。2003年度に調査されて,恐らく柳田さん御自身のいろいろな経験も踏まえて,2004年から見直しをされて,見識も,それから,多分良心的な対応も非常にあって,そういうふうに見直されたからこそ,より多くの問題と直面することになり,いろいろと苦労されているんだろうなと思って,また別途どこかで,我々の財団も以前から地域に少し根ざしたいと考えてきましたので,お話をお伺いできたらいいなと思うんですけれども,一言お聞きしたい。
現在問題が山積していると思うんですが,優先度が最も高い問題は何だと思われますか。

○説明者(柳田)
日本語学習支援に関してですよね。

○中野委員
はい。

○説明者(柳田)
一つ挙げるのは難しいんですが,二つでもいいですか。

○中野委員
はい。

○西原主査
三つでもどうぞ。

○説明者(柳田)
一つは,現場のボランティアさんの中から何とかしてほしいと。熱意はたくさんお持ちなわけです。ボランティア活動を皆さん自らやろうという方なので。だけれども,活動を続けるためには,やはりどうしたらいいのか,対応の方法を示してほしいと。その手段を皆さんに提供しなきゃいけないので,それを具体的にどういう方法で,私たち運営主体としてやっていくか,というのが1点大きいところです。ちょっと補足しますと,教室が,もちろんボランティアさんも入って専門機関も入ってうまく運営していければ,学習者にとっても居心地も良くて,日本語も更に上達できる教室になるだろうという意味で,そういうことがあります。
それからもう一つは,年少者の問題なんですけれども,私たちのプラザにも問題,あるいは悩みの相談ですとかがたくさん年少者にかかわるものが持ち込まれます。それから,ボランティアさんからも間接的に入ってくるんですね。あるいは活動団体からも入ってきます。子供たちは日々大きくなっていくわけで,成長していく過程は止められないので,一日も早い対応をしなければならないんですが,まだ教育委員会との連携も始まったばかりで,取っ掛かりの状況で具体化されていないものですから,その辺急がなきゃいけないのかなと思っています。

○岩見委員
今の年少者の問題ですけれども,これは本当に深刻な問題だというふうに私もとらえています。私どもの協会が係っている条約難民のクラスにも中学生,高校生がいますけれども,学校で一定の語学指導を約40時間受けては来ていますが,それはもう本当に最低限生活するのに必要な入り口の言語学習で,子供にとってはやはり教科学習,進学というのが最大の目的で,それに必要な手当というのはほとんどできない状況です。この場合,学校の先生との連絡・連携がとても重要ということと,学校で,そういった日本語を第二言語とする子供たちも一緒に面倒を見るという体制が整っていかないと,これは永久に解決しないかなというふうに思っています。教員は教科内容が分かる専門家であることを前提として,外国人の子供に対して教科を学習するために知識の面と言語の発達と,両方を見ながら指導できるような体制が整わないと,子供は教科についていける状態に,日本語で教科指導を受けて進学できる態勢にはなかなかならないと思うんですね。
そういった中で,学校の教員も第二言語教育としての国語,日本語を見る,そういった研修というのがやはりまだまだ遅れているんじゃないかなというふうに思います。教材とかいろいろなものができても,それを使いこなす能力を備えた教員がいるとか,そして,ボランティアと連携する,そういうような体制が必要である。私はそう思っていますが,いかがでしょうか。

○西原主査
たまたま一昨日と昨日,東京女子大学で年少者のことをやったんですね。杉並区は,住民の意識が結構高い所で,受講してくださった方は大学院生が多かったので,公開講座といってもちょっと特殊ではあったんですけれども,一人の高齢の男性が来て,いや,こういう子供がいるなんて考えてもみなかったなとぽろりとおっしゃった。そういう事態がひとつあるなというふうに思いました。たまたまその前の日に,ホテルフロラシオン青山というところで,全国の日本語指導が必要な教員に対応するための研修が行われていたんですね。あれは,佐藤委員,どのくらい,もう十何年に…。

○佐藤委員
もう随分前になりますよね。

○西原主査
十年以上にはなりますよね。

○佐藤委員
西原主査が最初にかかわったぐらいからですから,いろいろな場所でやっています。私も冒頭でお話しさせていただいたんですけれども…。

○西原主査
年間だと200人ぐらいになりますか,その教員に対して日本語指導の指導というか,これは学校なので,専門にしている教員だけじゃない人たちに指導して,10年だから,2,000人ぐらいの教員にそういう研修をしてきて,そして,その人たちがそれぞれの県に帰ると伝達研修につながっているというシステムはあるんですよね。
佐藤委員,どうぞ,その後を…。

○佐藤委員
新宿区立大久保小学校,私,月2回ほどずつ行かせていただいているんですけれども,まず三つぐらいお話しさせていただきたいんですが,一つは,やはり学校現場が余りにも忙し過ぎるというのが一つありますね。
それから,その忙しさの中でこの子供たちの教育に対する関心といいますか,そういうものがごく一部の学校を除いては,極めて希薄であるということがありますね。つまり,基礎学力の問題が突然降ってわいて,いろいろな要因があるんだろうと思いますが,そういう状況の中で,先生が余りにも多忙過ぎる。そして,その先生の関心が必ずしもない。
もう一つは,やはり制度的に教免法とのかかわりの中で,日本語というものがどうしても関与できないんですね。国語というものはあるんですけれども。ですから,国語と日本語をどうするかという議論はここで多分なされなければいけないと思うんですけれども,そういう状況の中で一体どうしたらいいのかということが,例えば大久保小学校の場合には,やはり校長先生のある部分力量によるところが,かなり大きいんだろうというふうに思うんですね。そうすると,先生が変わられれば,またどういう状況になるか分からないという危うさが常につきまとうんですね。そうしますと,やはり制度的にこの辺のところをどうしていったらいいのかということを考える必要性があるんだろうと思います。教免法の関係で言うと,日本語を教員養成大学の中に明確に位置付けるということはなかなか難しい状況にあるんだろうと思うんです。ですから,その辺のところを一体どういうふうに私たちはこれから展望していったらいいのかということは真剣に考えないとかなり難しい問題があるような気がしますね,ここに関しては…。
ですから,個人的な努力ではもうどうしようもないような状況が,例えば,新宿区の先ほどの調査を拝見させていただいても,80数%の先生がこのような子供を抱えている。そういう状況の中で,制度的に何か考えていかないと,つまり国の施策として,言語政策として何かを考えていかないといけない状況が,今あるのではないかという感じがしますけれども…。

○西原主査
これは,言語政策といってもいろいろなレベルがありますでしょうけれども,学校教育のレベルで,それが必要であろうという,そういう御認識ということでしょうか。

○岩見委員
先日,国立国語研究所の発表で米国のマサチューセッツの高校生を対象とする英語教育スタンダードの調査報告がありましたが,英語を母国語とする学生,あるいは外国出身の子供にかかわらず,言語そのものを,あちらは英語の教育そのものを言語学習としてとらえて,ゼロレベルから母語話者として必要な能力に至るまでというような一貫したレベル設定を行い,教育を提供しているということでしたけれども,日本の国語教育において,国語を言語としてとらえ,日本人の子供の問題としても,きちっとした日本語,論理的な日本語を話せるとか。いろいろな段階,能力に応じた内容を設定して,外国人の子供にとっても効果的なシラバス作りを日本語力ゼロレベルから発展的に必要な日本語力というのをもう少し明快に提示していくようなことが有効じゃないかと思います。日本語とか国語とか区別しないで,日本の子供も含めた能力設定をしていく。

○西原主査
ナショナル・カリキュラムの形態ですね。

○岩見委員
そうです。

○西原主査
すみません。その議論はとても大切な議論なんですけれども,実は新宿区の御発表に関して,もしまだ何かありましたら御質問をしていただいて,その後に,このお三方も含めて今のような議論を時間の許す限り,というのは後10分しかないんですけれども,続けられたらよろしいかなと思います。

○佐藤委員
事実関係はまあいいとして,議論につながるようなことで,私,今日の発表を受けて,この柳田さんの発表を伺っていて考えなければいけないなと思ったことが一つあります。5ページの,【今後に向けて】の上の所なんですけれども,いわゆる地域日本語教育の中での専門性というのは一体どういうことなんだろうかということ。例えば高度な専門知識や方法を持っていなくてもいいのか。いわゆる日本語学校における日本語教師としての専門性とは違うのか,その辺りのところは一体どういうふうに考えていくのか。
ボランティアというのには依存できない。しかし,ある部分,ボランティアというものの持つ強みというのも多分あるような気もするんですね。日本語教育の強みというのは,逆に言えばナショナル・カリキュラムがないところの強みもあるような気がするんです。

○西原主査
そうです。

○佐藤委員
そうしますと,地域日本語教育における専門性というものを,一体私たちはどう考えていったらいいのか。その専門性というものが,もしも確定できるとすると,一体どういうことを教えていったらいいのかというところの内容とも絡んでくるんですけれども,柳田さんに伺いたいのは,もしもそういうものが何かイメージとしておありであれば,今までやってこられて,つまり地域に日本語を教えていくためのある種の専門性みたいなもの,日本語を教えるスキルとか,ある種の教材研究のレベルではない,そういうものももちろん必要,それをベースにしてプラスアルファの部分なのか,それとは,また違うものなのか,何かそのようなイメージがあれば,ちょっと伺いたいなと思ったんですけれども…。

○説明者(柳田)
御専門の委員を前に意見を言うのは大変恐縮ですけれども,地域型の日本語教室の場合に,先ほどもどこかでちょっと言ったんですが,目指す到達度が個々人で異なるんです。大学に入学するための日本語ではないし,そういう人もいるのかもしれませんけれども,お母さんは自分の子供が通う学校からのお手紙が読めればいいのかもしれませんし,子供は進学したいでしょうしとか,働いている人は仕事に関係のある日本語が分かればいいのかもしれないと思っているかもしれません。個々人によってその到達度が違うので,地域で教える場合に教える方が様々の引き出しを持っていて,学習者が必要としているものにうまくフィットしたものを提供していけるようなものが必要かなと。

○西原主査
加藤さん,いかがですか,そのことに関しては…。多様性ということでは日本語学校も同じ立場ですよね。

○説明者(加藤)
そうですね。私の話の中で,先ほどちょっと触れましたが,私たちが今いるところからシフトして一歩先へ行かなきゃといったところはまさしくそういうところです。後のところで是非手を挙げて言いたかったのが,本当に今回ここに来た意味というのは,最初にも大きい一歩と申し上げましたが,今ここで並んで話せたことがやはり本当に大きかったと思うんですね。というのは,本音の部分で公と公が一緒になれるかなと思ったという部分です。
ボランティアさんのことに関してちょっと。日ごろいろいろなところで,私たちも何かと,いわゆる学校に来る,交流会に来るボランティアさんのことではなくて,日本語教育をされているボランティアさんとの接点の中で,例えば日本語学校というふうに言うと,何か専門のようにやっているけれども,本当の現場を知っているのは私たちだというふうなおっしゃり方をする方も中にはいらっしゃいます。そうした場合に,どう組んでいったらいいんだろうかというのは非常に難しいなと思っていたんですね。
私たちには,格差を付けるという意味ではなくて,プロとしてやっているという意識もあり,専門家としてやっているわけで,本来,もっとそういう意味で入っていきたいのだけれども,専門家ぶってみたいな言い方をするとなんですけれども,そのような感じでない,本来の問題点というのが今見えた気がしたんです。そこに向けて,それぞれの立場,それぞれのできることということで,これは,公と公で同じテーブルで話ができるかなというふうに思ったことは非常に大きい点です。
ですので,おっしゃったような点から行くと,地域の日本語を今全部,カバーしているかといったら,それは決してそうではないと思います。ただ,基礎的な専門という部分を持って,そこからの発展を今していこうとしているところなので,いい形で一緒にやっていければいいなというふうに今とても思いました。

○西原主査
全世界の言語教育,何語の教育じゃなくて,言語教育の大きな問題は,レベル差にどう対応するかということだと思うんですね。日本の英語教育でも,私,英語についての会議に出ていますと,このごろ中学1年,2年,3年とだんだんに英語が嫌いになっていくというか,先生の言うことがだんだん分からなくなっていくという実態があります。それなのに,教員は教育の中身のことしか言わないぞという,何かそういう問題意識はもう既にある。けれども,常にマルチレベルですよね,語学の教育というのは…。個人差があるから,同時に始めて,同じ教科書使って,同じ先生が同じ時間だけやっていても,個人差は次の時間からもう生じちゃうわけですよね。
それを,言語に,教育に関係するものとしてどうしていくのかという問題というのは,何学校で教えているだれだれさんの話ではないわけですよね。そのレベルのことがやはりいろいろな人との間で論じられないといけないし,外国でほかの外国語の研修会なんかが開かれるときに,マルチレベルとかマルチパーパスに対応するための言語教育がどうあるかというのがメーンのトピックとして,それで3週間やったりしているということに,私たちは,やはりを思いを致し,学びをしなきゃいけないんですよね。元来,一人一人全然違うべき,そういうところで私たちが活動しているべきものが何か画一的にどこかで切られていくという現実も,どういうふうに語学の先生とか,語学関係者として対応するのかという問題は大きなところにあるんじゃないかな,それを御指摘いただいたというふうに考えますけれども。
実はあと5分なんですが,それで,では新宿区も離れて,インターカルト日本語学校も離れて,あと5分で何かこれは言っておきたい,又はこれは聞いておきたいということがおありでしたらどうぞ。

○山田委員
思いが一杯あって,ちょっと発言が多くなっちゃうんですが,一つ大きな問題は,ボランティアの教室にも来ないというか,来られない人たちとか,それから,学校教育の枠の外にある子供たちとか,そういう等しく社会参加するという意味では,みんな求められているものは同じにもかかわらず,自分たちが適切な対応を受けられないことで,疎外されちゃっているという人たちがいるんです。これも何か社会の,大きな意味での社会の問題で,何とかすべきだというふうに,この場で考えるべきことだというふうに皆さんの報告を伺っていて思いました。感想ですけれども…。

○西原主査
ほかに。お三方からでもこれだけは言って帰りたいということがあれば…。

○説明者(加藤)
先ほど言い掛けたことの本当にその続きになりますが,何とか政策の中に入れていっていただきたい。柳田さんがおっしゃっていたのと全く同じなんですけれども,日本の国としての政策の中に入っていかないと,個人レベルでは難しくて,本来の問題解決に至らない。その中で,日本語学校ということでいったら,本当にその中にきっちりと入っていきたいし,いけるというふうに思っているというところと…。

○西原主査
要望として出てきたこととしては,言語保障でしたか…。

○説明者(加藤)
はい。

○西原主査
言語保障ですとか,それから人権と言ってはおかしいですね。生活する権利というか,何かそういうようなことも含めて政策として,では言葉は,という,そこのところ…。

○説明者(加藤)
とてもよく聞く話ですが,例えば,名古屋の方ですと,そういった学校に行っていない子供たちが今たくさんいて,その子供たちがこれから成長するとどういう世の中になっていくかというのは,本当に社会問題になっているというふうにも聞きますので,そういったことも含めて政策ということになるんだろうとは思いますが…。

○西原主査
そうですね。そして,人手の足りない中小企業が青少年労働と知りながら,ストリートチルドレンを働かせてしまっていて,そのことが突然,何か思いも寄らないお小遣いをもらった子供が何をするかというようなことで,地域のほかの子供たちというか,日本生まれの日本育ちへの悪影響もあったりして,何か悪循環が始まりつつあるんじゃないかみたいな警告を発している人もいますよね。政策としてというのは,多分ここが今年度,あるいは来年度提言していくことの重要な中身の一つということになっていくのだとは思いますけれども,柳田さん,何か…。

○説明者(柳田)
年少者のことを最後に一言だけ言いたいんですが,今,具体的な予算額,数字として,はっきり言えないんですが,新宿区の教育委員会は日本語適応指導のために毎年二千数百万円,三千万円弱だったと思いますが,を使っているんです,適応指導だけのために。ただ,年々適応指導が必要な子供たちが増え続けていることを考えますと,予算を際限なく増やすことはできません。パンクしてしまいます。さっきも言いましたように,適応指導で学校現場がうまく回るようになっているかというと,現場では大変困っていると…。さっきも佐藤委員がおっしゃいましたが,それ以外のことで先生たちはすごく忙しいんですよ。その上に,一年を通して日本語が全然分からない子供たちが教室に入ってきてどう対応するのかというところで深刻な状況になっていると思います。ですから,自治体に適応指導を任せちゃって,あるいは教育委員会に任せちゃって何とかしてくださいというのは既に限界に来ていると思います。何とか政策的にそういった子供たちのことを制度的にうまく,予算付けのことも含めて,どういう仕組みにするのかということも含めて,国で対応していただければいいなと思います。

○西原主査
分間で国の対応を言えますか,佐藤委員。

○佐藤委員
この前ニュースを見ていたら,確認はまだしていないんですが,1,600人ぐらい外国人のために母語が分かる教員を各学校に配置するというニュース報道がありましたね。

○西原主査
全国ですね。4万校あるんですけれども。

○佐藤委員
ええ。それが確認できれば,多分そういう方策はある。ただ問題なのは,新宿区もそうだと思うんですけれども,更にそれにプラスして二つ。一つは地域によってかなり状況が違うというのがとても大きいと思うんですよね。例えば,愛知県や静岡県,群馬県の方に行きますと,日系ブラジル人が圧倒的に多い状況ですよね。そうすると,そういう状況の中で教育特区を申請して,いろいろな形でバイリンガル教員を配置しているとか,しかもいわゆる国よりも地方の固有性に応じて地方の中でいろいろな固有の政策を展開していかなきゃいけない時代になってきているというのが多分一つだと思うんですね。
それが一つと,それから,もう一つは,やはりどうしても今日,柳田さんの報告を伺うと,ものすごい課題が多いんです。一杯あって,その課題にどう対応するかということを今お考えなんですけれども,そのときに,連携とか協働という言葉は,はやりなんですけれども,しかし,現実にどう実現していくのか。例えば,恐らく交流協会の方は教育委員会とどうかかわっていくかということで,私たちは簡単にネットワークというんですけれども,その辺のところを今後どういうふうにして現実に具体化していくのかということを真剣に議論しなければいけない,難しさが出てきていると思うんですね。ですから,その辺のところを地域に応じたもの,そして現実に様々なネットワークを通しながら,それをどう具体化していくのかというところを少し議論しないと,それぞれがパンクしてしまうという感じがしますけれども。

○西原主査
教育委員会と交流協会の仲がいいところの方が少ないです,現実。

○岩見委員
ちょっと一言是非申し上げたいんですけれども,この間のニュースで伺いましたけれども,1,600人の母語の分かる人を配置するという,その発想自体が不十分かなと思うんですね。母語が分かるだけでは十分ではなくて,日本語をどう発達させていくかという,専門家をやはり備えるべきで,そこの発想がどうも欠けているような気がするんですね。日本語適応指導40時間の担当に,母語ができる人を当てるというところも中にはあると聞いております。そこにおいては,やはり先生が忙し過ぎるのか,翻訳とか通訳とかの役目だけしかそこではなされていないという現状がある。そもそもの発想が少し対処療法的で,外国人の子供の日本語力をどう高めるか,適応力をどう高めるかという発想になっていないんじゃないかというふうに思えますけれども。

○西原主査
実は,もう時間がちょっと過ぎていて,タイムキーパーとしてはちょっと心配なところなんですけれども,残念ではございますが,お三方の時間も縛るわけにはいかないので,今日はお話を伺い,意見も少し申し上げたというところで終えさせていただきたいと思います。対象別の日本語教育の在り方についてということで御意見をいろいろ伺ったのですけれども,当然予想できたことですが,もう少し大きなレベルのことにもつながっていくような議論がこれからできたらと思いますし,それから,それぞれが御満足いただけるような,こちらが報告書を今年度中に何かポイントを挙げるんですけれども,重点的な課題として拾っていけるかどうか,これはいろいろな制約の中で,私たちも動いていると思いますけれども,本日のお話が今年度あるいは来年度末にまとまっていくものに結び付いていくような努力を私たちもしたいと思います。
本日はお三方,ありがとうございました。それから,委員の皆様方も御協力ありがとうございました。それぞれ委員の方々もお忙しいとは存じますけれども,できる限り御出席いただきますように,それから,甲斐委員,今日はありがとうございました。では,これをもって今日の会議を終わらせていただきます。
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