議事録

第8回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成20年4月24日(木)
14:00〜16:00
文化庁第2会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,西原主査,杉戸副主査,岩見,尾﨑,加藤,佐藤,中神,中野,西澤,山田各委員(計10名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第7回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 多文化共生社会における日本語教育について
    (愛知県地域振興部(中神優委員,甲村洋子氏)からのヒアリング資料)
  3. 地域における日本語教育の体制整備に向けて:海外の事例から学ぶ
    (国立国語研究所(金田智子氏)からのヒアリング資料)
  4. 地域における日本語教育の体制整備に係る論点(案)

〔参考資料〕

  1. 国語分科会日本語教育小委員会における審議について(概要及び図)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)を確認した。なお,細かい文言修正等については,1週間以内に事務局まで連絡することとされた。
  3. 西原主査からヒアリングの説明者について紹介があり,それを受けて,説明者からも簡単な自己紹介があった。
  4. ヒアリング(1)
    中神委員,甲村洋子氏(愛知県地域振興部国際課多文化共生推進室主幹)から,地域日本語教育の在り方についての意見発表があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  5. ヒアリング(2)
    金田智子氏(国立国語研究所日本語教育基盤情報センター学習項目グループグループ長)から,地域における日本語教育の体制整備についての意見発表があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  6. 事務局から,配布資料4についての説明があった。
  7. 上記4,5及び6の終了後,更に自由な意見交換を行った。
  8. 次回,第8回日本語教育小委員会は5月26日(月)に旧文部省庁舎2階第1会議室で開催されることが確認された。
  9. ヒアリング発表及びその後の意見交換は,次のとおりである。

○西原主査

文化審議会国語分科会日本語小委員会は,これで第8回目になります。今年度2回目に なりますけれども,開催いたします。
今日は,ヒアリングを二組の方から行います。
説明者の方々でございますが,本委員会の中神委員に前回も御承諾いただきましたので,配布資料2と,それから別冊に頂いているものに基づいて御発表を頂くところでございます。今日は同じ愛知県から地域振興部国際課多文化共生推進室主幹という甲村洋子さんにおいでいただいておりますので,お二方で御発表いただくということで,第1のヒアリングをお願いしたいと思います。
そして,第2のヒアリングでございますが,国立国語研究所から日本語教育基盤情報センター学習項目グループ,グループ長の金田智子さんにお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○説明者(甲村)

愛知県多文化共生推進室主幹の甲村と申します。
愛知県は,日系の南米の方が非常に多く,ブラジルの方が全国一の7万6,000人ぐらいいらっしゃいます。多文化共生取組のリード県としてがんばってまいりたく,今日は実際に事務を担っておりますので,いろいろ今後の事業の参考にさせていただきたいということで出席させていただきました。よろしくお願いいたします。

○説明者(金田)

金田と申します。よろしくお願いいたします。
日本語教育の方で仕事をしております関係で,今,こちらにいらっしゃる委員の先生方, 担当の方には,以前何度か会ったことがございます。この委員会には何度かオブザーバー として参加させていただいておりました。今日は海外での国語教育の体制に関して,国立 国語研究所の方で調査しておりました点について御報告をさせていただければと思ってお ります。どうぞよろしくお願いいたします。

○西原主査

お三方には御多用のところを,しかもちょっと中途半端な時間に来ていただきまして,本当にありがとうございました。
今日ヒアリングを頂くのですけれども,このヒアリングは前期に取りまとめられて,皆さん方,委員の方にはもうお目通しいただいております「今後検討すべき日本語教育の課題」に基づきまして,地域における日本語教育の諸課題ということで,愛知県の事例,それから金田氏からは外国の事例を中心にヒアリングを頂き,そして委員の皆様方には具体的な対応方法ということで御検討いただくところでございます。7月までの前半部分では,主に地域における日本語教育の体制整備ということで検討していただきたいと考えております。この愛知県からは「地域における日本語教育の体制整備」という,正にそれそのもののテーマに関しまして,愛知県の体制整備の取組について,そして国語研究所からは海外における取組ということでヒアリングさせていただきます。
せっかく来ていただきましたのに時間が短くて恐縮なのですけれども,20分程度で御発表いただいて,その後10分程度,それぞれのヒアリング,お話の内容について質疑応答をさせていただきます。委員会の終わる予定の時間までは,お三方共に御在席くださると思いますので,その後もお三方を含めて,議論に加わっていただけたらというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
では,甲村さん,中神委員の方からよろしくお願いいたします。

(1)中神優委員,甲村洋子氏の説明と,その後の意見交換

○中神委員

今日,お手元に配らせていただきました多文化共生推進プランでございますが,これは実は私どもの方からお願いして,本日傍聴席にいらっしゃる明治大学の山脇先生に取りまとめをしていただいたものでございますので,改めまして御報告させていただきます。
多分書いていることは余り驚くようなことはないんですが,一応事実中心に書かせていただきましたので,よろしくお願いします。
まず,愛知県の現状でございます。1ページ,?を見ていただきたいと思います。
特に,愛知県の実情でございますが,今大体,全国に日系のブラジルの方が30万強いらっしゃいますが,その4分の1ぐらいが今愛知県にいらっしゃいます。あと,それ以外にペルーの日系の方もいらっしゃいますが,典型的に私ども県の中では,外国人問題といえばほとんど日系人の問題であるというふうに認識されております。これは地域によって大分違いがあると思います。
数字でございます。下の方を見ていただきますと,1985年,入管法が改正になる前でございますが,わずかブラジルの方は64名,ペルーは8名ということでございます。1990年以降それが激増いたしまして,今現在,2006年でございますが,ブラジルの方は8万人近く,それからペルーの方が8,000人近く,この間の推移は本当に数字で 如実に現れております。
?でございますが,これも一般的に言われていることでございますが,永住化・定住化する傾向が非常に強くなっております。特に日系の方の場合その傾向が顕著でございまして,お手元にお配りした冊子『あいち多文化共生推進プラン』でございますが,6ページを開いていただけますでしょうか。この左側のグラフでございますが,この中で一番傾斜度の右肩上がりのきついのはこの永住者でございます。見ていただきますと,2001年から2006年まで,この間,当初1万7,000人の方が4万8,000人ということで,いかに永住化の傾向が強く現れているかということが分かっていただけると思います。特にブラジルの方は,資料に戻りますが,2001年の6,550名から2006年には3.8倍ということで,しばらくはこの傾向が続くのかなと思っております。
それから,その中で当然全体の母数が多ございますので,児童生徒の日本語教育につきましても,日系の方の教育をどういうふうに進めていくかということが当然大きな課題となっています。数字で申し上げますと,今,全国の公立学校に在席していらっしゃいます日本語指導の必要な外国人児童生徒2万2,000人のうち,約18%が愛知の公立学校で学んでおります。これは飽くまでも今学んでいる人の中の日本語指導の必要な人ということでございますけれども,このうち約8割が日系人でございますので,これにつきましてもほとんど日本語教育は日系人の方の問題が主であるということがお分かりいただけると思います。
次,2ページをお願いいたします。
就学年齢の方は実数でございますが,よく不就学の関連で言われるんですけれども,細かい数字はなかなか分かりません。例えば下の数字を見ていただきますと,一応外国人の登録の数字でいきますと,小学校,中学校に就学される年齢の方が愛知県内で約1万4,000人いらっしゃるはずでございますが,実際に在席してみえるのが約1万人。内訳は公立の小学校,中学校中心に7,100人,それから外国人学校が幾つかございますので,2,900人,合計で1万人の方は一応把握しております。実は4,000人の方がこれは把握できておりません。これも時々新聞に載りますが,不就学なのか,あるいは転居をされても,今の登録制度では,転入の時には一応登録してあるんですけれども,転出が義務化されておりませんので,把握しようがないと。特に日系の方たちに限りませんが,外国の方はよりよい職場環境を求めてというか,賃金を求めて,どんどん移動されますので,恐らくそういうところでかなり転居してみえるんじゃないかなと言われています。
これは文科省の調査でも,確か転居等を含めて,未確認が2割ぐらいあったと伺っていますので,あるいはもっと多いのかもしれませんけれども,現時点ではちょっと実態は分かりません。ただ,数字としては1万4,000人のうちの4,000人ぐらいが未就学ないしは所在不明であるという,かなりゆゆしき実態がございます。
それで,そちらの?でございますが,そういった方々の日本語指導でございます。基本はもちろん加配教員の方による教育でございますが,ただこれも配置基準がございますので,御存じのとおり,一つの学校に外国人児童生徒が10名以上いないと加配教員を配置できません。今,愛知県の中の学校で学んでいる外国人児童生徒が約600校の中にいらっしゃいます。ただ,その中で,実際に加配教員を配置できるのは25%,約150校にとどまっております。これは学校の数でございまして,一応加配教員でカバーできる生徒の数は大体8割ぐらいをカバーしております。ただ,現実的には一人とか,二人,極めて少ない数の生徒さんがいらっしゃる学校がありまして,そういった方々の教育,恐らく現場では苦労されていらっしゃると思いますけれども,なかなかそこまでは正直カバーし切れないというのが現実でございます。
3番でございますが,実際に現場ではかなり加配教員の先生方,大変苦労して大きな成果を上げていらっしゃるわけですが,よく指摘されます4項目が下に書いてございます。
一つは,これは当然なんですけれども,一人でやるのはこれは限界がございまして,当然お一人の先生に5人,10人あるいは20人という生徒さんが付きますので,マンパワーの面で難しいということが1点。
それから,2点目でございますが,ポルトガル語,スペイン語,ほとんどの方が多分お話にならないというか,先生方自身御理解してみえませんので,なかなか教えるということでは難しい面があるのかなと思います。
それの関連で,日本語で当然日本語を教えるということになるわけでございますが,これも多分子供さんと大人の場合と効果は大分違ってくるんではないかと思います。私は別件で,企業で労働者の方に日本語を教える担当の方にお話を伺いましたら,たまたまこれは中国系の方だったんですけれども,実は最初は中国語の分かる方に日本語を教えてもらっていたんだけれども,その人が辞められて,その後に小学校の先生の経験のある日本語しか分からない方が先生になられて,結果,大人に対しては,この件に関しては,日本語で日本語を教えた方が結果的に効果的だったというようなことを聞いたことがございます。ただ,これはその1例だけでございますから,分かりませんけれども。少なくとも小学校,中学校については,やはり日本語だけで日本語を教えるというのはなかなか難しいところがあるようには聞いております。
それからもう一つ,取り出し教育ということでいろいろやっていらっしゃいますけれども,どうしても勉強時間が学校の授業時間に限られますので,学校が引けてから課外でなかなか更に勉強する機会がないということで,家に帰れば,当然例えばポルトガル語になりますし,場合によっては余り会話がないかもしれませんので,どうしても時間が足らないということを,よく聞きますけれども,小学校で何とか授業についていけても,中学校になると途端にということを聞きます。それがあって,中学校から高校に入る過程で,実は希望していらっしゃるんですけれども,高校進学を断念せざるを得ないというケースがかなりあるというふうに,実数はつかんでおりませんけれども,これは聞いております。
以上4点がよく指摘されております。
?はその流れでございますけれども,後で出てまいりますが,公立学校で加配教員の先生方が本当に苦労していらっしゃると思いますが,できれば課外授業を受けたいという声が大変多ございます。
3ページ目をお願いいたします。
実は2007年でございますが,日本語学習意向調査ということで,昨年度の前半に調査いたしまして,一応最初は日本語を学んでみえる外国人の児童生徒の親御さん全員,それから外国人学校で学んでみえる外国人の児童生徒さん,一応全員に調査いたしました。回答はもちろん100%とは行きませんけれども,結果といたしましては,できれば,安いお金であれば日本語教室に通わせたいという声が全体の61%,これは外国人学校だけに限れば8割以上の方がそういった回答をしていらっしゃいます。これはもちろん公立学校の教育で十分にやっていただいていると,それに対しては非常に評価しておみえになるんですが,そういった評価を前提としても,なおかつ更に通わせたいという声がございました。具体的に頻度でいきますと,平日なら週に二,三回,距離もございますので,歩いて30分程度のところにそういうところがあれば是非ということで,そういう声がございます。
?でございます。いきなり飛んで,非常に身もふたもない指摘でございますけれども,外国人児童生徒に対する教育という機会の確保でございます。結果的にこれは,本当に予算をいかに確保するかという問題ではないかと一方では思います。愛知県でございますけれども,19年度に加配教員が210名,一応16億円ということで,この20年度は40名増えまして,251名,金額でいきますと19億円ちょっとで,1年間で約3億円増えております。多分これは今後,更に増えていくことは間違いございませんので,恐らく全国で見ますと,これは相当な数になろうかと思います。こういった加配教員の方々の教育に加えて,さらに課外授業という声がありますけれども,なかなか公教育の中だけでおこたえするのは難しいという現実が一方でございます。
実は?でございますが,これは県内の一部の自治体ということで,よく私ども集住地域などで代表的なのは豊田市と豊橋市でございます。ここで集住地域T市と書いてあるのは,豊田市の例でございます。豊田市はご存じのとおりトヨタ自動車を抱えておりますので,当然外国人労働者がたくさんお見えになりまして,恐らく私どもの知る限りでは一番理想的な日本語教育をしていらっしゃるんじゃなかろうかと思います。その一つのケースでございますが,加配教員,先ほど御指摘させていただきましたように,一人では限界がございますので,豊田市の関係では,加配教員1名に加えまして,日本語指導員,これは通訳,ポルトガル語若しくはスペイン語の分かる方でございます。それからあと,外国人適応指導員という名称で,いろいろな,要は手の足らないところを補う方がお一人ございまして,やはり最低3人は要るんじゃないかというのが現場の先生方の声でございます。もちろんこれは教える生徒の数によるとは思いますけれども。
それから,もう一つ特徴的なことで,下のプレクラスでございます。編入前指導ということで,これは,特に小学校に編入される前に,下から2行目に書いてございますけれども,4か月間を一応のめどといたしまして,毎週日本語指導が10時間,文字指導が5時間,算数5時間,総合学習5時間間,計25時間のクラスでまず事前の勉強をして,日本の教育に慣れていただくということです。かなりこれは効果を上げていると聞いております。
実は,外国人の子供さんだけではなくて,それ以外にも,日本の子供と触れ合う機会を設けているということで,かなり生活をする上でも大きな成果を上げているんじゃなかろうかと思っております。
4ページでございます。
これはアフタースクールと書いてございますけれども,これを私ども実は,かなり外国人の保護者の方から要望がありますので,何とか事業化できないかなと思っておる内容でございます。豊田市にはNPO法人「子どもの国」というのがございまして,そちらに委託をいたしまして,保見団地という1万人近い方が住んでみえるところのほぼ半分が外国人というすごいところですけれども,そちらの中にあります学校が引けますと,小学校のお子さんが,皆さん一緒になって,このNPOの運営しております施設に行きます。そこで2時間とか,3時間,その日の勉強,宿題等々,いろんなことを教えてもらうという一応システム化されておりまして,こういったアフタースクールが非常に力を発揮しているようでございます。
先ほどのプレクラス,アフタースクール,それから各加配教員の方に,これは2名の方ということで,まず考えられる限りの最高の条件だと思います。こういったことをやっていても,実際に学校の先生にお伺いしますと,まだまだ足らないという声がしますので,理想的な教育というのはかなり難しいということを痛感いたします。これは御参考でございます。
7番で,一般論で,これも多分ご存じのことばかりでございますが,1番目には,学習言語の取得にはかなり時間を要すると。通常の会話が十分にこなせる方でも,なかなか授業についていけないと。繰り返しになりますけれども,特に中学校で一気に内容が難しくなりますと,ついていくのが難しいということを伺っています。
それから,これもよく言われますけれども,例えばポルトガル語も日本語も十分でない。
家に帰れば当然親御さんと例えばポルトガル語,スペイン語で話されると思うんですけれども,結果,どちらの言語も十分な時間が費やされないものですから,非常に中途半端だということも,聞いております。
一番最後は,これは不登校に至るケースでございますが,なかなか学校の授業についていけないということで不登校に至る。それだけならともかく,実際にはそこから非行に走ったり,よくあるケースらしいんですけれども,児童労働と書いてありますが,これは別に強制労働ではございません。学校に行かなくなってしまった子供さんのことを親御さんが心配して,自分たちが通っている工場なり,いろいろ会社に,悪いと知りながら子供をそこに預けているという,実際に働いているんですけれども,結構そういったケースも今見られるようになっておるようでございます。うちに一人でいますと非行に走りますので,それよりはまだ働かせた方がいいだろうと。もちろんこれは違法なことでございますけれども,そういったケースもあるということでございます。
以上が子供の教育でございまして,次が大人の教育でございます。これは大人の教育につきましては,余りデータがございませんので,客観的なことは申せませんけれども,実は私どもが去年メーカーを中心に100社ぐらいずっと聞き取り調査をいたしまして,企業の名前は申せませんけれども,いろいろ外国人労働者の方の日本語教育に対して意見をお伺いいたしました。一番感じましたことは,実は1990年に入管法の改正の時に,これから外国人が入ってくるということで,特に大手のメーカーでは日本語教育を,よし,これからやろうということで,かなり力んでいろいろ講座等を開設されたそうです。もちろん時間外でございますけれども。ところが,なかなか彼らの意欲というのでしょうか,要は時間外なものですから,何で時間外まで自分たちが勉強しなきゃならないのかという,余りインセンティブが働かないということで,残業手当をくれたら出てやってもいいよというような声が実はほとんどだったということを聞いております。今は分かりませんけれども,1990年代にかなり企業の方はやる気でおったようでございますけれども,なかなかそれが思ったようにいかないと。
それから,2番目でございますけれども,最近はいわゆる期間限定の期間工から正社員への登用ということを,特に自動車メーカーで進めております。それで試験も日本語でやりますので,日本語を勉強することにインセンティブが働くようになりましたけれども,そういった方々はまだ一部でございます。要は?にもございますけれども,日本語を学習するというインセンティブがなかなか働きにくいということが,特に大人の教育の場合,一番大きな問題ではなかろうかと思います。
5ページ目をお開きください
?は,先ほど申し上げたことでございますけれども,実際に私どもが思った以上に,中堅あるいは大手のメーカーというのは良心的なところがございます。しかし,日本語教育をやろうとしておったんですが,ざ折したというのが多ございました。
それから,?番でございますけれども,これはちょっと余分なことかもしれませんが,特に大人の教育の場合を含めて,できれば言葉の教育が明確な国全体の基本的な方針の下に,さらにそれを支援するような機関のようなものがあって実施した方がいいんじゃないかなと考えております。基本があって初めていろいろ応用問題が解けます。しかし,それが正直今はないんじゃないかなという気がいたします。これは私ども実は,今のところ御要望というか,お話しさせていただいているところでございます。
その下は,これは受け売りでございますけれども,2005年にドイツ移民法ができて,それからようやくというのでしょうか,かなりの時間を掛けられてドイツ語の教育をしていらっしゃるということでございますので,こういったことはいわゆる制度として取り組んでいかないとなかなか,子供さんはまだしも,大人の場合は非常に難しいんじゃないかなということを感じております。
6ページをお開きください。ここで愛知県の取組を若干御紹介させていただきたいと思います。
一応,三つございまして,一つは,多文化共生センターです。ここには,多文化ソーシャルワーカーというものがございます。一応多文化政策を今後進めていくための拠点ということで,昨年の4月でございますけれども,県の国際交流協会のところに多文化共生センターというものを設けました。そこに多文化ソーシャルワーカーという外国籍の方で日本語のできる方,しかも滞在期間が長くて,御自身いろいろな問題で悩まれた方にお願いしておるんです。そういった方々に集まっていただき,多文化ソーシャルワーカーの養成講座というものを今年で一応2年目になりますけれども,開きまして,いろいろな分野の勉強,もちろん従前の例はございませんけれども,労働の法規から,あるいは入管の関係とか,いろいろなことを勉強していただきまして,そういった方に多文化共生センターにいていただいて,いろいろな問題に対応していくということを今やっております。
特に,?の一番下に書かせていただきましたけれども,実は不就学の問題というのはなかなか学校から切り込むことが難しいところがあるようでございます。ほかに家庭内でのドメスティックバイオレンスなんかがきっかけとなって,その家を訪ねると,実はそこには 学校に行っていない子供がいるというようなことが分かるという例が結構ございまして,私ども多文化ソーシャルワーカーが個々の家にある程度関与することによって,不就学の子の拾い出しをしていきたいと思っております。
それから,?でございます。外国人労働者の適正雇用と日本社会への適応を促進するための憲章ということで,このプランの54ページをお開きいただきたいと思います。
私どもは,多文化共生を一応2本柱で考えております。1本は,今まで御説明申し上げました教育でございます。それから,もう1本が労働でございまして,外国人労働者の方もどちらかというと,コンプライアンス,適法な雇用ということを広めていきたいと思っております。けれども,なかなかそれだけ申し上げても,ある意味では当たり前のことで,聞いていただけませんので,54ページに書いてございます。真ん中に岐阜,愛知,三重,名古屋,それから協力団体ということで,経済団体が主でございますけれども,私どもの行政の方から経済団体にお声を掛けまして,コンプライアンスとそれから外国人労働者の永住化,定住化が進んでいるので,地域の構成員としてこれからしっかりと受け入れる体制を作っていきましょうということ,企業に対して呼び掛けるための企業憲章を一応作りました。実は,これは書いてあることはわずか6項目だけで,大したことはないんですけれども,これは作るまでに大変でございまして,前回ちょっとお話ししたかもしれませんけれども,そもそも3県1市という行政区域を越えて,しかも経済団体に賛成を頂くということでございまして,当初はこの企業憲章を何で行政が作るんだということでものすごく反発を頂いたんです。けれども,何とか1年半で大小100回ぐらい打合せをいたしまして,一応こんな形で発表するところまでこぎつけました。あとはいかにしてこれを守っていただくかということでございます。
ポイントは,読んでのとおり,一番最後の5番,6番でございますけれども,要は企業個々にお話ししてもなかなか効果がないものですから,特に私ども愛知県は大手のメーカーがございますので,大手のメーカーが関連の下請,孫請けの企業についても責任を持っ てくださいよということで,グループに対して呼び掛けをしていただきたいということで,これを発表したものでございます。実は思っていたより大分抵抗がございましたが,まあ何とか書いてあることは間違いないということでございましたので,今はその形で進めております。
次は最後のページでございます。
?でございます。これは日本語学習支援資金と呼ばれ,先ほど公教育の外で行われますアフタースクールでございます。これは,何とか行政,あと経済界,それからNPO,資金が要りますので,特に経済界の方に御寄附を頂きまして,緊急避難的な処置ということで,下線が引いてございますけれども,5年という時限を設けて公教育で勉強している子供に日本語をもう少し勉強させたいと考えている方に,これはNPOに受け入れていただく予定でおりますけれども,最小限の金額になりますけれども,授業料を支援しながら勉強する機会を設けていきたいと思っております。なぜ企業かということがあろうかと思いますけれども,なかなか今,公教育でどんどんお金を費やせばいいという時代ではないと思いますし,実は一方で,同じように勉強してみえる日本の子供さんの親御さんから見て,逆差別じゃないかという声も大分出ています。数多くはないんですけれども,私どもは時々地元の学区の寄り合いに呼ばれまして説明をさせられるんです。何でうちの地域にこんなに外国の方が多いのだとか,うちの子供の勉強が遅れているんじゃないかとか,何で外国の子ばかり面倒を見るんだと,相当そういう声が出ております。それはある意味ではやむを得ないところがありますけれども,学校だけでやることはやはり限界がございますので,学校の外で,しかも実際に外国の方を労働者として使われていらっしゃる企業の方の寄附を頂いてやりたいということで今進めております。実はこれは本来なら疾うの昔に始まっているところでございますけれども,これも御理解賜るのが大変でございまして,もう2年ずっと企業を回って説明してまいりまして,ようやく必要だなということを理解していただきまして,今いよいよお金を頂く段になったわけでございます。とにかく思いますけれども,なかなか多文化というのはいろいろ理解を,通念というのですかね,昔の公害と一緒でございまして,これをみんなで取り組まなきゃいかんという意識をまず持っていただくのが第一でございまして,実は私ども企業のCSR(企業の社会的責任)の部門に伺っているんですけれども,CSRでは,一般論としてはこういったものに対する寄附という重要性は分かるんだけれども,個々の企業は,直接雇用していないところが多いものですから,うちの企業からこれだけ貢献しましょうよという声がなかなか上がってこないんですよ。どっちかと言いますと,「多文化共生」というのは,光と陰で言いますと,陰じゃないんですけれども,ちょっとやや社会問題的なところがあるものです。いまいち皆さん積極的にというところはございません。そういった通念をできれば変えていきたいということもございます。それで私ども毎日行脚しておりまして,だんだんそういったことは理解をしていただけるようになりましたので,何とか今,私どもの目的としては,2年説得いたしましたので,今年度後半には何とかしたいなと思っております。そうしないといつまでたってもできません。子供はどんどん多くなりますので。
最後でございます。5年というのは,5年たてばきちっと国としての制度もできるであろうという私どもの希望もございまして5年としております。お金を出していただける企業から見ますと,いつまでも出してくれというのも困るので,例えば何年後にはこうなるという見通しを立てろと言われますので,「分かりました,5年ですから」ということで,今御説得をしておるところであります。

○西原主査

時間を区切ってしまって,大変申し訳ありませんでした。全体的なことをいろいろよく御説明いただいて,ありがとうございました。
今の御発表につきまして,御質問等,又はコメント等おありでしたらどうぞ。

○山田委員

加配教員のことについてなんですが,一つの学校に10人,外国の子供たちがいると一人教員が加配されるというのは文科省の加配ですか。

○中神委員

そうですね。

○山田委員

それ以外の,県とか,あるいは市町村による加配というのはありますか。

○説明者(甲村)

そうですね。文科省の方の最高基準が3人までなんですね。10人以上で一人,小学校でいくと31人以上で二人,それから50人以上で3人ということなんですけれども,愛知県の方でまた上乗せで41人以上,それから51人以上ということで,最高5人まで置ける基準を設けております。

○西原主査

そのことについて何か,かかわっていられると思うんですけれども…。

○佐藤委員

いや,それぞれ県によって違うんだと思うんです。
3ページのところで2点お尋ねします。この「語学相談員」という方の役割とその下の集住都市,豊田市の例だと思いますが,加配教員をサポートするスタッフの配置というもののそれぞれの予算処置といいますか,県費なのか,市費なのかという点。

○中神委員

上の「語学相談員」は県費でございまして,実は先ほどの御質問とも関連するんですが,特に集住都市の場合,市町村段階で県費の更に上乗せの形で,先生方を加配する形をとっておりまして,この語学相談員は全県で7名と少なく,アドバイザーでございます。各市町村を回りまして,市町村が今取り組んでみえる語学教育を専門的な立場からアドバイスするという方が一応この語学相談員ということにしております。

○説明者(甲村)

加配というのは通常の教員の定数配置でございますので,なかなかポルトガル語の分かる教員はいないということでございまして,必ずしも語学ができるわけではないものですから,語学相談員は語学の分かる者を相談員として雇っているんです。ただ,数が少ないものですから,そういう日本語指導が必要な子供の多い小学校を順次巡回して回っているというような状況で,語学が分かるものですので,親との連絡なんかもサポートしているというような状況でございます。

○佐藤委員

T市の場合には,加配教員と,T市が独自に手配した日本語指導員,外国人の日本語指導員で3人ですよね。そこにこの語学相談員が順次巡回指導で回ってくるということですか。

○中神委員

そうですね。豊田の場合はもうほとんど完ぺきにやっております。それ以外のところでなかなか財政的に潤沢でないところがたくさんございます。豊田は結局トヨタ自動車があるものですから,かなりそこからもお金も頂けておりますし。そういった企業献金もございますので,それを活用してやってみえると思いますけれども,ほかのところで,私の地元の豊橋もそうですけれども,必ずしも潤沢ではございませんので,まあその中で何とかやりくりしているという現状でございます。

○西原主査

ちょっと確認してよろしいですか。加配教員の給料というのは,これは国が県を通じて,国がサポートする……。

○中神委員

3分の1は県ですね。

○西原主査

県ですね。そうすると,県のお金と国のお金が加配教員ですね。それから,T市のように,市が独自で予算配置をして,そして相談員等を配置するということもございますね。県独自というのはあるんですか。

○説明者(甲村)

加配教員の上乗せ部分とそれから語学相談員ですね。

○西原主査

加配教員は県ですね。市じゃなく,県と,そういうことですね。
それで,私どもこの7月までにしなければならないことに関連して,まとめる立場として一番知りたいことといったら,これらおっしゃったことを企画するのは,中神委員を中心とする部署ということでございましょうかという点です。つまり企業に働き掛ける,毎日やったとか,100回以上やったとかおっしゃる。それから,子供のための基金をなさるというような,そういう愛知県独自のプログラムについて,これを企画し,そしてまとめ上げるというのは,中神委員のいらっしゃる部局が独自で現状の把握をなさり,それを独自で立案なさって推進なさるということでございましょうか。

○中神委員

前例が何もございませんし,法律もありませんから。

○西原主査

それで,それが例えば愛知県の予算と予算に反映されて,次年度に反映されていくというのは,どういうお仕事の連携になるのでしょうか。

○中神委員

例えば,先ほどの基金の例で申し上げますと,またちょっと金額は言えませんけれども,基金を何億か今私どもは作ろうと思っているんですが,それの基金を運営するには当然スタッフが要りますので,場所の提供とか,スタッフの実務的な経費を大体5年で2億ぐらいと踏んでおりまして,2億は県から出します。ただ,基金の本体は,これは何億かですけれども,これはもう企業から頂いてということで,これは大変なことです。本当は,個人的に申し上げますと,寄付でやるのはえらいことなんですよ。これは集めるのに本当に何回も行かなきゃいけないものですから。まず皆さん,お話を持っていきますと,「何でこんな話をうちに持ってきたんですか」というのがまず第一声ですね。そのうちに分かっていただいて,「そうですか,大変ですね,でもこれはどこそこのメーカーさんの話ですね」というのが一般的ですね。本当はそうじゃないんですけれども。だから,そういった意味で大変時間が掛かります。だから本当にまずこうした活動を通じて,多分変わってくると思うんですけれども,あと5年か10年すればいかにこの問題が深刻な重要な問題かということが分かっていただけると思うんですが,ちょっと正に今が過渡期かなという感じがします。

○西原主査

そもそもその2億円を県が出すということについては,やはり中神委員の部局が企画をなさり,それを県の財務部門に働き掛けて,その基金に,2億円を積むということですか。

○中神委員

この2億というのは基金ではなくて,いわゆる事務経費です。大体年間に4,000万ぐらい,人件費とそれからあと施設ですね。もろもろの実務的経費が大体4,000万ぐらいですから,本来は県の予算というのは5年も先は何にも言えないんですけれども,大体一般的に毎年4,000万かかれば,5年継続しますので2億ぐらいかかるだろうということです。そちらの実務的な経費は県の方で持ちますということです。

○西原主査

その県の経費を引き出すのも中神委員の属する部局。

○中神委員

全部私のところです。

○西原主査

この『あいち多文化共生推進プラン』を企画なさり,委嘱なさり,まとめられるのも中神委員のところの…。

○中神委員

そうです。だから企画立案すればするほど自分が苦しむという…。

○西原主査

それはよく分かるんですけれども,そういう部局でいらっしゃる。

○説明者(甲村)

それは,多文化共生推進室であり,それから状況としては,先ほど御説明した多文化共生センターの方を事務局にしたいと思いまして,こうした事業も含んだ人員配置をして,拠点的なセンターにしたいということで設置しております。ですから,そちらの方の人件費を含めて,広報とか,そうした事務費を含んだ経費ということでやっております。

○西原主査

そうですね。もう一つ,私ばかり聞いちゃって申し訳ありません。その税金の使い方について,パブリックオピニオンというものが先ほどちょっと,一方では風当たりの強い部分があるというふうにおっしゃっていましたけれども,そのこと,つまりパブリックオピニオンの調整というものも中神委員の所属する部局のお仕事というふうに考えてよろしいでしょうか。

○中神委員

そうですね。多分自治体では余りないんですけれども,一応私ども外国人関係の課題は,何でも受け取りますので,余り細かいことじゃなくて,苦情のようなものが多いものですから,ほとんどですね。それも一つですけれども,ただ,実際になかなか意見といいましても,外国人の方の御意見も含めて大きな流れになっていないんじゃないかなという気がします。一応私ども今,外国人県民会議というものを持っていまして,もう5年目に入りますけれども,これは正に愛知県に住んでいらっしゃる外国の方からの御意見を伺うんですけれども,伺った上で何とか施策に反映したいと思っております。しかし,非常に難しくなってきまして,例えば参政権の問題とか,特に税金を払っていただいていて,しかも参政権がないということがかなり問題になってきつつあります。本当に大変な問題を抱えておりまして,こうした問題が大きくなる前にいろいろ手を打っておきたいとは思っております。それも一応私どもが全部窓口でやります。

○加藤委員

今の関連で聞きますけれども,日本語指導員,加配教員,いろいろ役割を担う人たちが出てきましたけれども,その方たちの何か能力とか,資格とか,何か,要は日本語にかかわるということになるかと思うんですが,何か基準がありますか。

○中神委員

例えば,実際に校長先生に伺いますと,当たり前のことなんですけれども,要はやる気なんですよね。先生方も2通りに分かれるそうでして,何で私が外国人の子供を教えなきゃならんのかということで,そもそもやりたがらない方と,日本にいて外国の子に教えるなんて千載一遇の機会だという方と二つに分かれるということで,やはりそれが第一の資格みたいですね。そういったやる気のある方の場合は,それから自分で外国語を学んで,結構ものにしていくそうです。余り資格というか,試験みたいなことはやっていないと思うんです。中には本当にうつ病になる方もいるそうです,どうしようと悩んじゃって。親御さんの対応が,最近は日本人でも難しいですよね。日本の親とそれから向こうの親と両方からわんわんやられて,まいっちゃうということも本当にあるみたいです。

○説明者(甲村)

語学相談員は必ずしも教員免許があるというわけではなくて,語学の分かる者ということで,バイリンガルの方ですね。そういう方を採用しておりまして,ただ,今年度から愛知県の方でも語学の能力があり,しかも教員免許を持っていらっしゃる方を,通常の採用の中でそうした枠を設けて採用しています。まだ少なくて20名程度なんですけれども,採用の取組もちょっと教育委員会が始めているというような状況もございます。一般の教員採用と同じものなんですけれども,日本の若者たちを雇う時に,語学の能力を重視した特別枠のようなところを設けて,できるだけ語学が分かる人も多く採用していこうというような取組を進めているところです。

○西原主査

教員免許ですね。

○説明者(甲村)

そうです。

○西原主査

母国で教員であった方ではなく。

○説明者(甲村)

日本の教員免許ですね。はい。

○杉戸副主査

こういう基金とか,いろいろな活動に協力しようとする企業に向けてのインセンティブは何かあるんですか。

○中神委員

実はアプローチは二つございます。一つは,多分,今日お見えになりませんけれども,経団連さんが御提言されていらっしゃるんですけれども,日本の社会全体として,こういった外国人労働者並びにその家族の方は,ともかく重要な社会の構成員ということで。それに対して社会全体で何とかその面倒というか,支援をしていくべきだという提言はされています。実際に企業の工場等の現場で使っておみえになるところは,そういったところはそれなりの貢献を期待いたしますし,企業の中だけではなくて,外国人労働者は地元に帰れば一市民,県民でございますから,市民,県民としても十分にやっていけるように企業もバックアップすべきではないかという,多分そういった考えだと思います。
原因者負担でいきますと,実は私のところは使っていないという方が圧倒的に多ございまして,私どもが企業を回りまして,一番よく出てきますのは,いわゆる直接雇用というのでしょうかね,直接雇用しているところが余りないんですよね。よく聞かれると思うんですけれども,ほとんど派遣でいらっしゃいますので,うちは雇っていないよ,あれは全部派遣から借りているだけだよと。何か問題があったら派遣に言ってちょうだいという,そういう形が多いんですね。
原因者負担でいくか,あるいはもう一つ,それじゃなくて,社会的貢献をしてくれといくか。私どもがCSRの部門に行きますのは,これは社会的貢献ということで考えていただけませんかということで行くんですけれども,ある経済団体では,うちはCSRではとても説得できん,だから,これはもう原因者負担でいくと言われました。一方で,原因者負担でいくと,何かうちが悪いことをやっているみたいだということを言われることがあります。両方あると思うんですよね。原因者負担か,社会貢献か,あるいは両方かで。それで御納得いただくということになろうかと思いますけれども。

○杉戸副主査

今二つあるということですが,そのインセンティブの姿として,三つ目,四つ目というのはないのかなと思って…。

○中神委員

実は,大手のメーカーさんとしては恐らく社会的貢献という形で出していただきたいと思うんですけれども,ただ最初に切り込んでいく時に,うちは雇っていないよということで門前払いをくらっちゃいますので,そこら辺で現に雇っていらっしゃるところは,今の原因者負担ですね,そこで少しいって,話が少し進んだら,今度は社会的貢献でお願いするという形になるのかなという気はいたしますけれども。

○説明者(甲村)

そうですね,子供たちがこの地域の未来を担う貴重な人材ですということですね。現状で日本語も母国語も中途半端な子供たちが育っているということは,私どもの地域の大きなリスクになりかねないものですから,やはりみんなで地域全体の課題ということで,力を合わせて今取り組まなければ,近い将来,この地域の活性化が危ぶまれますよというような御説明もさせていただいているところです。

○中神委員

典型的に,必ずCSRのところに行きますと返ってきますのは,「これが環境問題だったらなあ」という反応です。環境問題対策であれば制度化されておりますので,予算額のけたが違うんです。何千万,場合によっては億というお金が出るらしいんです。日本語教育の課題はこれからですので,多分そのうちにそういうふうになってくると思うんです。本当にそういう意味ではこれから楽しみでございます。

○西原主査

ありがとうございます。
ちなみに,中神委員のその部局は人員構成はどうなっているんですか。

○中神委員

たまたま私のところは二つございまして,一つは国際課という昔からある,いわゆる国際交流主流のところでございまして,もう一つ,多文化共生推進室だけで7人でございます。

○西原主査

多文化共生推進室で7人。

○中神委員

あと国際課と含めて30名ぐらいですかね。

○西原主査

30名。

○中神委員

ただ,ほとんど今7名は,専属でやっています。ですから,実際訪問するときは人手が足りませんで,私も一緒になってやっております。

○西原主査

ありがとうございました。
では,またいろいろ伺うことがあるかと存じますけれども,続きまして,国立国語研究所の金田さんから御説明を伺いたいと思います。資料3に基づいてお話しくださるということで,よろしくお願いいたします。

(2)金田智子氏の説明と,その後の意見交換

○説明者(金田)

配布資料の方には,今日はオランダとアメリカに関しまして,主に外枠のこと,体制ですね,それから実際にその国の言葉を学習する必要のある人がどのようにその関係の情報などを入手するのかということ,そしてこのオランダとアメリカはそれぞれオランダ語教育,英語教育,いろいろ努力をしている国だと思うんですけれども,その教育の内容とか,方法に関しての見直し作業などがどのように行われているのかということをちょっとお話ししたいと思います。
それで,教育の内容に関して,あるいは今日はオランダに関してはテストのお話もするんですけれども,テストのシラバスなどに関しましては,今日実はお持ちしているので,今お回ししたいと思いますけれども,こちらの報告書(平成19年度成果普及セミナー報告書『生活者にとって必要な「ことば」を考える』国立国語研究所内部報告書(SL−SCG−07−01))の方にまとめてありますので,そちらを御覧いただければと思っております。
それでは,早速この二つの国の現状に関してお話をしたいと思います。
まず,オランダに関してなんですけれども,先ほど中神委員の方からドイツの話が少し出ました。オランダも実は市民統合プログラムというものを実施していました。これは1998年から行われていて,義務としてスタートしたわけですけれども,2007年以降は義務ではなくなったというような状況です。現在はその市民統合テストというものを受けて合格するということが,移民にとっては一つの義務としてあるということです。これはまだ非常に新しいものでして,昨年の1月1日に施行された新しい市民統合法に基づいています。この統合手続というものが義務化されているわけですけれども,これは大きく分けると市民統合テスト,市民統合プログラムから成り立っているというふうに言っていいかと思います。
オランダは,日本に比べますと,移民といいますか,外国人の労働者の受入れが早くから行われていました。1945年,終戦の時からかなりの数が移民としてやってきましたし,60年代も労働者が不足したということで,かなりの数の外国人労働者が流入しました。
その後,社会問題がいろいろとございまして,やはりオランダ語の学習ですとか,オランダ社会に関しての理解を進める必要があるということで,こういった市民統合法が生まれてきたわけですけれども,現在の統合法では,統合あるいは定着といった方がいいかもしれませんけれども,定着したと見なされる必要がありまして,そのためには市民統合テストに合格する必要があるということです。このテストを受験する前に統合プログラムを受講することは可能だということです。
この市民統合テストの合格というのは,その後,永住権を取得したい場合はその要件になるということです。
例えば,日本人がオランダにある程度の長さ,暮らそうという場合に,そのための試験というのはないわけなんですけれども,国によっては,オランダに住むためには仮居住の許可を受けるためのテストを受ける必要があります。そういった方々,そのテストに合格して入ってきた方々の場合は,入国後3年半以内に合格の必要があり,そのほかの人々は5年以内ということになっています。
この期限内に合格しなかった場合は,自治体から罰則を受けるということになっているんですけれども,実際はこの新しい法律が施行されてから3年半はたっておりませんので,現実的にどのようになっているのかというのは,これからの様子を見るしかないと思います。
この統合手続が義務付けられない人々というものもありまして,これはそこに書いてあるような方々です。今は既に義務ではなくなったわけですけれども,市民統合プログラムが実際どういうものであったかということを御紹介したいと思います。
これは,実際は今もまだ進行はしておりまして,どういうことかというと,2006年までに入国していた人たちというのは,これが義務なわけですね。それと同時に今から入国しようという人たちも,このプログラムを受けることは可能になりますので,現在も進行中のプログラムと言っていいと思います。
少し飛ばしながら話をしますけれども,対象,そして内容は,98年当時の移民法以前か以後に入国時期が分かれるわけですけれども,それによって旧移民,新移民ということで,教育の内容が変わっています。
その時の実施主体ですけれども,そこに挙げたような幾つかの省庁が協力をしているということです。
実際のプログラムの運営は,自治体所属の支援機関,NGO,民間団体が行うということです。
言語のコースに関しましては,内容の監修について教育文化科学省が行いまして,就労・所得センターというのがあるんですけれども,こちらが監督・調整を行う。そしてこのセンターから委託を受けた地域教育センターが実施をするということです。現在もこの地域教育センターが実施するというところは変わっておりません。
教育の担当者なんですが,資格を有する教師ということになっています。この教師以外にコーチという存在がありまして,これはその定められた教育内容がきちんと実施されているかどうかということをモニターする役割があるということでした。
そして,新移民─といっても,古い制度の下での新移民なんですけれども,この人たちを対象にしたプログラムの場合は,居住の登録,これは市役所に行くわけですけれども,その時に同時に就労所得センターに登録されるわけですね。そうすると,このセンターからいろいろな通知などが来まして,この統合のコースが開始されるということです。
実際にはオランダ語の学習,それからオランダ社会に関する学習は1年続くわけですけれども,1年後に評価を受けて,成績によってそれで終わり,あるいは再履修の必要があればもう一度勉強するということになっています。
この時間ですけれども,500時間から600時間ということで,ドイツもドイツ語の学習が600時間になっていますけれども,その数字はやはりこの辺りが根拠になっているのではないかと思います。
次に,2ページ目に行きますけれども,市民統合テスト,これが今義務になっているわけですけれども,この内容について簡単に御紹介します。
これはオランダ語とオランダ社会に関する知識の二本柱になっておりまして,この内容はオランダ語の達成目標,そしてもう一つはオランダ社会に関する知識の達成目標というリストがあるんですね。これに基づいています。それぞれの達成目標は,不可欠な生活場面というものを基礎にしています。開発過程に関しては4番目のところです。この二つの達成目標の開発過程なんですけれども,まず法務省が動いています。これを作った時はこういったことに関しての所管の中心省庁というのは法務省だったそうです。ただ現在は変わっていまして,国土計画・環境省というふうに訳していいのかなと思うんですけれども,要は英語ですと,Ministry of Housing, Spatial Planning and the Environmentというふうになっています。そちらの方に移ったということです。
そちらに移った理由というのを私もちょっと聞いたんですけれども,実はやはり集住するということが問題になっているとか,その結果,ある学校にある民族の人たちが固まってしまうというような傾向があるということで,なるべくそういうことを避けていきたいということがあったそうです。やはり環境の問題ですとか,ハウジングの問題が関係あるということで,そちらの省の方に移したという話でした。
この委員会なんですけれども,その目的は二つありました。一つは統合ですね。オランダ社会に統合していくために必要な言語レベルはどの程度のものかということを考える。もう一つは,試験内容の選定です。この試験内容に関しましては,既にこの委員会が発足した時点で三つの領域が定まっていたということでした。一つは市民生活,そして就労,子育てです。これは就労,子育てというのは,人によって必要性がない場合もありますので,実際に試験を受けるときには,この二つのうちのどちらかを選ぶということになっています。市民生活はだれもが受けなくてはいけない内容ということです。
委員会の構成なんですが,この3領域における様々なグループの代表が集まったということで,かなりの人数が集まったようです。例えば,その例のところに,私は「仕事」と書いてしまいましたけれども,これは就労と同じ意味です。就労の領域の場合に,雇用者,これも被雇用者と言った方がよかったですね。雇われている人々,そして雇用主,管理職,職業安定所の職員など,様々な人々が集まって議論をしたということです。この中で,既に定着をしているトルコ人の職員ですとか,あるいは労働団体の役員なども参加したということでした。
そして,その役割なんですけれども,この三つの領域のどんな場面で移民はコミュニケーションが必要なのかを議論したということです。そこから不可欠な生活場面というものを打ち出していったということですね。これと別に,実際の言語教育ですとか,試験の専門団体が協力をして作業部会を結成しています。そこに挙げたようなCITO,Bureau ICEですとか,ITTAといったような研究所が作業部会を結成して,言語使用に関することですとか,あるいは意識などに関する調査結果を踏まえて,委員会が示した不可欠な生活場面における言語行動を詳しく記述していったということです。
この一例は,今日お配りしました資料の最後のページをちょっと御覧いただけると分かるかと思うんですけれども,5ページ目のところですね。5ページ目に資料1と付けましたが,例えば必要不可欠な生活場面として,歯科医の場面というのが出てくるわけなんです。これもなかなか面白いのですが,テーマというものをまず決めていって,どういった目標が設定できるのか,そして歯科医の場面ではどういった行動が不可欠となるのかということをそこに書いてあるような形でリストアップしていったということです。これは作業部会がこういったものを作って,また委員会に戻して,委員会で検討して,また作業部会が加筆修正するというようなやり取りを行っていったということでした。最終的には法務省が最終編集を行ったということです。
また,2ページ目の方に戻りますけれども,このリストを作ることと並行して,言語レベルをどう設定するかということも検討されまして,これもその専門機関が行っていったわけですけれども,CEFR(ヨーロッパ共通言語教育参照枠)のいずれにするかを検討して決定しました。オランダの場合は,Aの2レベルになったということでして,このCEFRをご存じの方は多いかとは思うんですけれども,先ほどお配りしたこの紫の資料の中に,その28ページのところにこの共通参照枠というものがどういうものかというのが分かるように資料を載せておりますので,もし必要でしたらご覧ください。Aの2というのは基礎段階の二つ目のレベルというふうになっています。
ちなみに,ドイツの場合はBの1ですね。オランダよりも高い段階を求めています。
そして,この統合手続の流れとそのサポート体制なんですけれども,これは州とか,自治体によって多少異なりますけれども,大まかにはまず市役所での住民登録があり,途中で学習が進んで,最終的には試験を受けるということになっています。その学習に関してですけれども,先ほど少し市民登録プログラムの方でも触れましたけれども,基本的にはワンストップサービスになっていて,市役所に登録をすると自動的に自分の情報というものがほかの部署に流れていって,そこからいろいろな情報が自分のところに伝わってくるというふうになっています。ただこれは,新しく移民をした場合のことでして,既に暮らしているという人にはなかなかこういうことが届かないんですね。どうしても口コミにならざるを得ない点があるようでした。それと,あとは必ず全員が学習しなくてはいけないということではなくて,既にある程度のオランダ語ができるということが判定されましたら,学習しないでテストを受けるということも可能です。ただ,そういうケースは多分少なくて,やはり学習する必要がありますので,テストの受験が必要かどうかを判定してもらうと同時に,学習の相談機関ですとか,教育機関を紹介してもらえるということになっています。
ここで実は書かなかったんですけれども,やはりNGOの団体などが機能している場合が多くて,これはもちろんさっきも申しましたように,州によって,自治体によってかなりの差があるようですけれども,ある市の場合ですと,一つのNGOがありまして,そこは社会統合政策を強く支援しております。カウンセラーを二人つけるということで,一人は教育あるいは就労のコーチングを行うということですね。もう一人は,社会生活に関するいろいろな指導・助言を行うカウンセラーだということです。こういった方々が間に入って,いろいろな教育機会を得ることができたり,教育の機会を得ている間もいろいろなモニターをしてもらえるということになっています。
そして,その次なんですが,経費について少しまとめておきました。この市民統合テストは,実は余り安くないんですね。240ユーロ,1ユーロが今朝は確か164円だったと思うんですが,かなりのお金が掛かります。ただ,合格をすると,650ユーロの報償金を受けられる可能性が高いということなので,それだけの報償金を受けられれば,受験,そして受験に至る学習に掛かったお金は何とかもとが取れるというような状況になっています。
市民統合プログラムですけれども,これも義務ではなくなったので多少お金が掛かるわけですが,教材費程度で賄えるということです。ただ,そうは言っても,やはり経済的な援助を必要とする場合がありますので,そこにあるような形で様々な援助方法があるということです。
これは,要は受験者側,オランダ語を学習する側から見ての話なんですが,プログラムを運営する側から見ると,一人当たりどのぐらいお金が掛かるかということで,旧移民に対するプログラムの場合は,1年間6,000ユーロ掛かっていたということです。新移民の場合は7,000ユーロということで,かなりの経費は掛かるということです。
そして,この市民統合テストの結果の分析なんですけれども,オランダは非常に試験の開発,それからその検証ということを行う組織がきちんとしていまして,この市民統合テストに関しましても,一機関だけが検証するのではなくて,複数が行うというようなことが行われています。一つの機関が,例えば既に昨年から試験は実施されていますので,A2レベルにふさわしくない試験内容ではないかというようなことを分析結果としてまとめても,また別の機関がもう一回,本当にその分析が正しかったかというようなことを再評価するということです。
ここまでがオランダで,何かちょっと話が長くなってしまっていますが,次にアメリカの話をしたいと思います。
オランダとアメリカはかなり対照的なんですけれども,アメリカにはテストを受けねばならないというようなことですとか,プログラムが義務であるというような時代は今までにはありませんでした。それは現在も変わりません。ただ,成人に対するESLプログラム,英語の学習のプログラムというものは盛んに提供されています。これはかなり昔の1964年,そして1966年のそこに挙げましたような法律に基づいたものです。州政府が管轄する成人教育の一つとしてきちんと位置付けられているということで,そういう場を提供する必要があるし,その場を提供することに関して,きちんと州あるいは連邦から評価を受ける必要があるというふうになっています。
実際にプログラムの概要ですけれども,2番に進みます。
学習者,これは成人プログラムなので,16歳以上の方々になります。身分ですとか,学歴はかなり多様ということです。
プログラムの提供者ですが,州政府による運営の場合はコミュニティーカレッジですとか,アダルトスクールなどです。民間団体によるものもあります。NPO,NGOなどの機関がかなり多く存在しますし,民間の語学学校などでも行っています。中には教会などでも行われています。
教育の担当者なんですが,これは以前は資格を持たない教師がかなり多かったという事実があります。ただ,現在は,質の向上のための研修も盛んですし,アメリカの場合は何らかの教育を受ければその分給料も上がるというような構造がはっきりしているところですので,そういったところもありまして,コミュニティーカレッジなどで働くESLの先生でも,有資格の方々がかなり多いのではないかと思います。
指導の形態ですけれども,そこに挙げましたように,かなり自由に学習者の方も選べますし,形態も教師の裁量でいろいろなことが可能になるということがあります。
教育の内容はそこに挙げたようなものがいろいろとあるということで,ちょっとここは飛ばします。
この教育内容の開発過程なんですけれども,連邦教育省がまず動くわけですね。教育を管轄する州政府に教育内容の基準化を求めていくということで,州による教育スタンダードは,実際にその成人基礎教育を専門とする民間団体ですとか,研究機関によって,様々な支援の下で開発されるということです。その具体的な例をその下に挙げました。いずれも大規模調査などを基に,あるいは既にこれまで蓄積していますESLの教育の経験なども生かしながら,スタンダードを作っていくということが行われています。
そして,4ページ目の方に移りますけれども,そこには例として幾つか挙げたんですけれども,実際はもっとたくさん,どういったスタンダードがどのような機関で作られているのかということがあるんですけれども,そこにはごく限られたものだけを御紹介しておきました。連邦レベルのものもありますし,州レベルのものもあります。様々なタイプのものがあるということです。
5番目にいきます。学習機会を得るための手段はどういうものがあるかなんですが,アメリカの場合は,オランダと違いまして,かなり多様な方法で情報を入手することが可能です。地域の図書館に行けば必ずESL教室についての情報提供がなされるということですし,一つ便利なのは,Call 211というのがあって,211番に電話を掛けると,ESLプログラムに限らないわけですけれども,様々な社会サービスに関する情報が得られるということです。
そして,移民局が発行しているガイドブックがありまして,これも14か国語で作成されていると,ウェブ上でも入手可能ということです。
そして,非常に便利だなと思うんですけれども,識字ディレクトリというのがありまして,これは国立識字研究所,これが様々なスタンダードの開発過程にもかかわっていたり,実際のESLの教室運営にもかかわっているところですけれども,こちらが運営するデータベースがありまして,自分が何をしたいかという目的と自分の現在の住所を入力すると,その近所にある自分に合っているESLプログラムの情報が得られるということです。
そして,アダルトスクールとか,コミュニティーカレッジ,実際にESLプログラムを実施しているところでは,数か国語の説明書を作って公開しているということです。
最後に,また経費なんですけれども,受講者は移民向けクラスの場合は無料あるいは低額というふうになっています。例えばシアトルのコミュニティーカレッジの場合は,基礎のESLクラスは1学期,10週から12週ぐらい掛かるわけですけれども,それが25ドルということです。これは実際の時間数はそこに書かなかったんですけれども,週に1回,1こま2時間ということです。ですので,大体20時間あるいは24時間ぐらいですので,1時間1ドルぐらいで自己負担は済むということですね。
では,こういったコースの提供側は幾ら掛かるかなんですけれども,クラス授業の1時間で一人当たり10ドルの経費が掛かる。1レベル,これはそのページの上の方にNRSというのが書いてあるんですけれども,こちらの尺度というのがありまして,全部で6段階で,基礎,初歩から最上級の段階まで6レベルに分けられているわけですけれども,その一つのレベルを上がるためには,一人当たり1,100ドルの経費が必要であるという計算がなされています。
以上,主に体制的なことについてお話をいたしました。

○西原主査

日本の将来のことを考えるときに,またこの日本語教育小委員会が教育の内容等についてリコメンデーションを出す時に有用な情報をたくさん提供していただいたかと思いますけれども,今の御発表につきまして何か御質問等ございますでしょうか。

○山田委員

聞き漏らしたんじゃないかなと思うんですが,2ページのオランダの6の経費ほかのところで,丸があって,二つ目の丸で,市民統合プログラム受講と書いてあって,教材費程度ということで費用が発生するんだとあります。ただし,義務だったときはそうではなかったというふうに…。

○説明者(金田)

義務だったときは,そのプログラムを受講することにかかる,要はクラスに参加して,そこで使われる教材はすべて提供されるということだったんですね。前に市民統合プログラムが義務だった時期というのは,実は1998年以降,2006年までに入国した人がその義務の対象になる人たちなんです。ですから,その前に入国していた人たちは義務ではなかったので,その人たちが自分に適したプログラムを受講しようと思うと,自己負担というのが発生したということがあるんです。それは,その下に書きましたけれども,アマースフォート市の場合は自己負担150ユーロだったということです。これは現在も多分ほとんど変わらない金額で,その教材費負担をしていることになると思います。大体このぐらい掛かると思います。

○山田委員

それで,ドイツなんかのときは,義務のときは,生活費についても手当が出るというようなことを聞いたことがあるんですが,そちらは出ないんですか。

○説明者(金田)

そういうことはないです。ただ,その仕事に関していうと,ドイツの場合は短い期間にとにかくドイツ語の学習をして,あるいはドイツのオリエンテーションをしてということなんですけれども,オランダの場合はちょっと違っていて,働きながら勉強する。そのために1年あるいは2年掛かるんですね。その旧移民の場合ですと,特に2年ぐらい掛けて,週に1回とか,2回ずつ通ってというふうになっているので,プログラムを受けること自体には無料あるいはほとんど掛からないというような感じなんですけれども,生活そのものは自分で何とかしていくということになっています。

○山田委員

もう一つ関連なんですけれども,義務化でなくした理由というのは,一番大きな理由は何ですか。

○説明者(金田)

それは私は関係者に直接実は聞いていないんです。聞くべきだと思いつつ。ただ,いろいろな情報,この前後の新聞の記事ですとか,関係のものを読む限りでは,やはり経費が掛かり過ぎるということのようです。ニューヨークのあの事件があったりとか,あとは映画監督が殺されるというような事件があったり,移民に対する風当たりがかなり強くなって,そのころのアンケート調査などでも,「余り外国人と接したくない」と答える人たちが増えてしまったというような状況がありまして,オランダはただ外国人に限らず,社会保障がかなり充実しているわけなんです。けれども,やはりいろいろなことがあったということで,多少,それまでの寛容な方針からかなり義務,オランダに暮らすのであれば,この義務を果たさなければあなたの権利は行使できませんよというような強い姿勢の方に変わったのかなというふうに思います。ちょうどリタ・フェルドンクという非常に強い移民統合大臣がいたわけですけれども,彼女の時代で変わってはいるんですね。

○杉戸副主査

関連して,例えば1年とか2年を掛けて働きながらこういうプログラムを受講していくという,そういうことに対して,雇用主側あるいは周り近所の近隣のオランダネイティブというのでしょうか,そういう人たちの支持といいますか,サポートですね,そういうものは具体的に,例えば企業はそういうプログラムを受講する期間の人に対してはどうこうしなきゃいけないとか,あるいはそういう姿勢が強いとか,弱いとか,そういうような情報は何かあるんでしょうか。

○説明者(金田)

そうですね,ちょっとその情報は直接は入手はしていないので,そのままのお答えはできないかなと思います。

○杉戸副主査

例えば達成目標を作るときには雇用主とか,雇用主団体が参加した,協力が得られたと,そういう制度作りのところではサポートがあると見えるんです。その制度が運用されていくときの日常的な,あるいは生活感覚と言ったらいいでしょうか,そういうところでそういう機運が持続できるようなものとして醸成されているかというのは,逆に言うと,新移民だと7,000ユーロを年に公的な資金が投入される,そういったことに関して,税金を払う側からどういう評価が,彼らの批判なり,支持があるのかという,つまりその制度の外側もやはり体制作りを支える非常に大切なことだというのが最近私の頭を離れない問題意識なので,そういうことで質問をするんですけれども。

○説明者(金田)

まず,直接のお答えにはならないとは思うんですが,例えば先ほど中神委員の方からお話があったような,企業の方は日本語の教室を作ったけれども,なかなか意欲を持ってもらえない,例えば時間外労働に相当するんじゃないかというようなことで。オランダの場合,ヨーロッパの圏内の国の多くはそうだと思うんですけれども,日本と比べまして,1日の労働時間ですとか,週当たりの労働日数というものに違いがかなりあります。日本の場合は,やはり週5日,40時間というのが非常に強くあると思うんですけれども,ヨーロッパの国々の場合は,例えば16:00までで終わってしまうとか,週に4日しか働かないというようなことがありますので,逆にほかに使える時間というのがあるとは思うんです。ですから,オランダ語を学習することが仕事の妨げになるとかということは余り気にしないでも大丈夫なのかなということがあります。
そして,オランダ語を学習することは,実は強いインセンティブにもなっていて,もちろん永住許可を申請するためにはそれが必要だというのがありますけれども,オランダ語ができるようになればなるほど,次のステップに進めるような試験制度がありまして,それはこちらの先ほどの紫の冊子にまとめましたので,そちらを御覧いただければなというふうに思います。ですから,個人に関しては,非常にオランダ語学習の意欲をかきたてる要素というのは準備されていると思います。
あと,地域がどの程度理解しているかなんですが,この市民統合テストというのは,ちょっとこの中には詳しくは書きませんでしたが,それも紫の冊子には書いてあるんですけれども,大きく分けて2種類のテストがあって,一つは中央試験と呼ばれていて,ある時期にその試験のセンターに行って受験をするというものなんです。もう一つは,そのオランダ語の教育を受けながら自分の能力を保証するものを集めていって,最後に提出をして,同時に,多少,どのぐらいできるようになったか,その場でパフォーマンスの試験をするというものがあるわけですね。
学習しながら集めていくというものは具体的にどういうものかというと,自分が地域に住んでいますので,その地域で,例えばですけれども,子供が学校から配布物をもらってきて,それに親がサインをしなくちゃいけないというような場合に,読んで理解して何らかのサインもして提出するわけですけれども,それをそのままさっと書いてしまわずに,コピーを取って,確かにそういうものを読んでサインができましたというようなことの証拠を残しておくということですね。あと,例えば例として挙がっていたのは,車を購入して保険に入ったというような場合に,その保険会社の人とのやり取りが必要になるわけですけれども,その最後の段階で保険会社の人が文書を書いてくれる。それはこの人は確かに保険の契約をオランダ語で行いましたというような証拠を集めていく。
これを幾つ集めるのかという,そういう決まりもあるんです。ただ,どうしてそういう試験方法にしているかというと,やはり固まって住んでしまうとか,オランダのほかの人たちとの交流が進まないということが大きな問題であったので,その試験制度そのものをそういうふうにすることによって交流をもっと広げていく。オランダで生まれ育った人々が新しく入ってきた人たちに対して,この人はどういう状況であるのか,この人はオランダ語を確かに今勉強しているんだなというようなことですとか,その交流の機会を作っていくということで,多少地域の理解も深まっているのかなというふうには思います。

○西澤委員

資格を有する教員という,教育担当者のところに出てくるんですけれども,これは特別な移民のための教育資格みたいなのがあるんですか。それとも教員免許に近いようなものなんでしょうか。

○説明者(金田)

これは移民に対してということではないんですね。通常のやはりオランダ語の教育をするための資格を持っているということです。

○中神委員

先ほどの杉戸副主査の御指摘との関連ですけれども,ドイツの場合,600時間集中講義ということで,例えば1日何時間ずつか知りませんけれども,かなり掛かりますよね。ドイツの場合,その間の生活保障というのはだれがするんですかね。

○説明者(金田)

それは私も分かりません。ドイツの生活保障のことははっきりとは調査していないんです。

○中神委員

一番関心があったんですけれども,なかなか書いてある本がなくて,国が責任を持って生活を見るのか,あるいは雇用主になる方が見るのか,結構大きい問題だと思うんですよね,その間というのは。

○西原主査

オーストラリアの場合についてちょっと調べたことがあって,記憶が確かでないのですが,そういうふうにするときには,生活保護に当たるお金が出て,そして途中で退職してそのプログラムに参加する場合には,雇用主は再雇用する義務を負うというのを読んだことがあるんです。そのようなことがドイツにも規定があるんですか。

○説明者(金田)

あるかもしれないですね。私もちょっとドイツの方は十分にまだ調べていません。

○中神委員

きっと,すごいコストですよね,事業をするのに。人は使えないわ,金は払うわ。そうですか,分かりました。

○西原主査

そうですよね。ただ,本当に労働力が不足している国としての認識があれば,それは必要なコストということになるし,それから労働の質,悪質な労働でなく,上質な労働力を確保しようとすれば,払うべき必要経費というふうに考えられることではありますよね。ドイツはCEFRのスタンダードが高いんですよね。そのことはもしどなたかが情報を提供してくださるのであれば…。

○説明者(金田)

少なくともオランダに関しましては,今年もう少し情報を集めるのと,経費に関しては情報を集約する必要があるとは思っています。ドイツに関しましては,集中的に調査なさっている方々がいらっしゃいますので,そちらからもまた情報を得て,また御報告をと思います。

○西原主査

それでは,お二組の方の御発表を一応これで打ち切らせていただきます。その後にどういうふうに展開するかということなんですけれども,事務局の方から7月に向けてこの日本語教育小委員会が目標としては中間的な取りまとめをするということをこの間もお話ししたと思うんです。それに向けてどういうことを,これから7月の間に集中的に議論していかなければならないか,特に今回お二組の御発表を頂いたことに関連して,少し事務局の方のお考えを聞いてから議論を始めたいと思うんです。

○中野専門職

資料の4を御覧ください。A4版1枚ものの紙でございますが,こちらに書いておりますことは,前回,第7回の日本語教育小委員会で御出席いただきました委員の方々の自己紹介及びその体制の整備にかかわるそれぞれのお考えを,大ざっぱではございますが,まとめさせていただいたものです。大きく三つに分けられるかと思います。
一つは,日本語教育の政策的な位置付けということ,その理念や哲学といった部分についてにかかわる御発言というものが一つございました。
それから,前回会議で申し上げたとおり,事務局といたしましては,今期は正に具体的な施策につなげるということが目的でございますので,その中でもコーディネーターという業務についての議論を,前回の審議のまとめにもございますし,事務局でも夏までに取りまとめていきたいというようなこともありました。それを受けて,国内の日本語教育の体制整備といたしまして,御意見を多数頂いております。
それから,関連いたしまして,整備した体制をいかに維持していくかというようなところにかかわる御発言がございました。一つずつ少し詳しく見ていきたいと思います。
「1.日本語教育の政策的位置付け」です。まず,海外から国内まで日本語教育全体を考えた政策的な位置付けというものが必要であるということ。これは西澤委員からの御発言があったかと思いますが,このような御意見を頂いております。
また,日本社会への参画を促す日本語教育の在り方ということで,西原主査からの御発言がございました。関連いたしまして,受入れ側の日本人のコミュニケーション能力についての御意見が,井上委員,尾﨑委員からございました。
また,その他の外国人政策とのかかわりについて,井上委員,尾﨑委員,山田委員からお話が出ております。
「2.国内の日本語教育の体制整備」というところでございますけれども,まず「2−1.役割分担と連携」ということで御意見がございます。都道府県の担うべき役割というものについて,山田委員から御意見がございました。国であるとか,市町村であるとか, それぞれ担うべき役割というものがあるかと思いますが,前回の御発言の中では都道府県ということでお話がございました。
それから,関係機関といたしまして,日本語学校ですとか,大学,研究機関の担うべき役割について,加藤委員,西澤委員,尾﨑委員からそれぞれ御発言がありました。
「2−2.日本語教育コーディネート業務を担うべき人材及び機関とその役割」について,具体的にはプログラム自体を動かすコーディネーターというような存在について,また,その組織をつなぐという意味においてのコーディネーターと。コーディネーターの果たすべき役割について一つではないということで,井上委員,岩見委員からその果たすべき役割を明確にすべきではないかということで御意見を頂いております。
「2−3.大学等教育機関及び研究機関等に期待される地域における日本語教育の役 割」といたしまして,日本語学校等で生活者としての日本語教育が既に行われているというようなお話であるとか,また地域における大学の役割等も含めて西澤委員の方からお話がございました。
関連いたしまして,「3.整備された体制の維持」ということで,「生活者としての外国人に対する日本語教育についての情報発信の在り方」を,本日、杉戸副主査から現在の関心としてお話の御紹介がありましたが,日本語教育の関係者以外にいかにこの問題について考えていただけるかという,発信の在り方が問われているという発言がありました。と同時に,関係者への発信の在り方について,加藤委員の方から日本語学校で生活者としての外国人に対する教育に取り組んでいるところはあるけれども,まだそういうところに意識のない学校もあるというようなところで,積極的にそういう話はしていかなければならないだろうという趣旨の御発言がありました。
以上でございますが,この資料4につきましては,皆様方の御意見を事務局の方で取りまとめた形になっております。委員の皆様の意向と違うというようなところがあるかもしれませんが,是非御議論いただきまして,今後,7月に向けて取りまとめていくわけでございますので,ひとつ寄って立つべきところを,恐縮ではございますが,示させていただきました。

○西原主査

特にこのA4の紙ですと「2,国内の日本語教育の体制整備」ということに関して,喫緊のことは何かということがまずございます。中間まとめを特に文化庁国語課が来年度に行うべき事業への概算要求とつなげていくということで,この2番のところが集中的に議論される一番最初のテーマであろうかということを前回も半ば御同意いただいたのかと思うのですけれども,それにいたしましても,「1」で掲げられているようなこと,つまり大きなことというか,日本全体としてあるいは世界全体として,この問題にどう取り組んでいくかということはもちろん大切なことだとは存じます。けれども,特に「2」のことに関連して,何か御意見を頂ければというふうに事務局では考えていらっしゃると思います。
それに関連して,例えば今日ヒアリングで御発表くださった,特に中神委員,甲村さんの関係でいえば,資料4の「2−2 ?」が甲村さんの主たるお役目に当たろうかと思います。そして,?のところは中神委員がやっていらっしゃることなのかというような,そういう関係を非常に大ざっぱに切れば,そういうようなところにたどり着くのかというふうにも考えられるのではないかと思います。今日は1−1とか,2−1とか,2−2とか,限定はいたしませんけれども,今日の2組の御意見を聞いて,そのことも踏まえて何か特別に御意見がありましたら,残りもう30分もないのですけれども,活発な御意見を頂きたいと存じます。

○尾﨑委員

中神委員のお話を伺っていて,私は愛知県に住んでいて,多少の情報は持っていたんですけれども,こんなに御苦労をしていらっしゃって,こんないい仕事をしていらっしゃるんだと,改めて感動しました。
それで,今日のお話だと,どうしても子供のことが中心になっていて,やはり子供のことが先に来るのはとてもよく分かるんですけれども,同時に,この日本語教育小委員会としては,文化庁ということで,学校教育ではない成人のところにどうしてもウェイトが掛かる。具体的な答申の内容も成人に対する事柄になると思うんですけれども,中神委員もお仕事をなさっていらっしゃって,逆に国としてどういうような方向性なり,あるいはこの日本語教育小委員会としてどういうような提言,提案のようなものがあれば,県レベルで成人に対する日本語教育を進めるときにバックアップになるというか,追い風になるというか,行政,県のお立場で何かお考えのことがあれば教えていただきたい。

○中神委員

私ども問題意識としては極めて単純なんですけれども,先ほども若干御披露しましたように,要は特に子供ならまだ学校がありますのでいいんですけれども,親になってしまいますと,なかなか学習意欲というのがわかないと思うんです。どうしても勉強せざるを得ないインセンティブというのはとにかく作っていく必要があると思うんですが,なかなかそれは法律の後ろ盾がないと,やはり難しいかなという気がいたします。結果,日本語をしっかり学ぶことがいかに重要なことか,いかにそれによって自分の生活が改善されていくかというのが分かると思うんですけれども,なかなかやはりそこまでは…。勉強する時間があったらもっと働きたいというのが実際で,ほとんどがそういう声なんです。そういった人に日本語を勉強せざるを得ないインセンティブを与えることがいいかどうか分かりませんが,もし定住するということであれば,やはりそういうきっかけというのは,何か,法律でなくてもいいのかもしれませんけれども,作っていただきたいなという気はいたしますね。
これはこの日本語教育小委員会の枠を超えているのかもしれませんが,いつも話をしていまして,結局コアというんですかね,中核になるものが今ないものですから,結果,皆さんそれぞれの部署部署で,行政も含めて,それから企業の方,特にNPOの方,いろいろ困っている現状があります。それを一個一個改善していこうということでやってみえると思うんですけれども,最終的にこれが取りあえず標準なんだというものが多分ないと思うんですよね,方法論も含めて。だから,本当はできればそういったものを何か示していただければ,最低限でいいものですから,標準があって,それにさらに自治体なり,企業なりが更に加えていくんだという意欲がわいてくるという,ちょっと抽象論で申し訳ないんですけれども…。ただそうは言っても,たまたま調べたドイツの例でも,移民庁なるものができたのが2005年,本当にまだ最近ですよね。よほど試行錯誤されて,これではあかんということで,ようやく移民庁ができて,こういった600時間という膨大な時間を掛けてドイツ語を覚えさせるという結果になったものですから,なかなかそこまでは行かないのかもしれません。でもこのままいくと恐らく大問題になるというのは目に見えているものですから,同じ過ちを繰り返すことのないように,できればちょっと先手先手を取って,そういった制度的なもの,これはちょっと私にはできないものですから,でき得れば国のレベルで作っていただければいいなと思っております。

○西原主査

5ページに「国全体の基本方針が明確でなく,司令塔となるべき機関が存在しない」とおっしゃって,これはこれが欲しいなあということでいらっしゃるわけですね。

○尾﨑委員

そこにちょっと関連して,ずっと気になっているんですけれども,一つには日本で暮らしていく上での広い意味でのコミュニケーション能力を何らかの手段で測る。それがグレーディングされているというようなものがあると,非常に危険だという議論も当然あるんですけれども,そのことも承知の上でやはりいろいろな角度からそういうものを作るという基本方針は立てた方がいいと思うんですね。そういうものがあると,一つには,学習する側から見ての具体的な学習目標ができて,それから実際に学習を助けている側から見ても,今やっている中身がその目標にどう整合性があるかということのチェックもできるということだし,それから従業員のためにお金を出す企業としても,企業でお金を使ってどれだけ成果が上がったかという物差しがそれなりにあるというのは非常に大きな意味があると思うんです。ヨーロッパの,今日の金田さんの報告を伺っていても,そこら辺は非常にがっちりやっていますよね。それを我々がどうやってやるかというと,一体私たちはどういう体制が今あるのか。国・県なんかももうご存じのような状況になってきていますので,やはりこれは日本語教育に関しては,テストスケール,これはもうできるだけ英知を集めて作るという,ここをまずやらないと駄目じゃないかと…。

○西原主査

今の整理の仕方でいきますと,これは1−2のところに書くべきこと,体制をどうするかということになりますよね。ここがしっかり書かれないともちろんいけないということになりますし,テストの話は実は国際交流基金にも来ているんでしょう,日本語能力試験をそれに充てようという指令が…。

○西澤委員

その出入国管理に関連して日本語能力を,要するに専門能力を測るのは非常に難しい。したがって,それにかえて,日本語能力で何とか,要するに在留許可を延長するかしないかの判断,あるいは入国許可を出すかどうかということの判断の材料にしたいという考え方は来ていて,それを現行の国内外で行われている日本語能力試験とどういう関係に立つんだろうかという議論は,一応宿題としては出されている。少なくとも文科省と外務省という連携の中で現行の日本語能力試験は国の内外で実施されて,それをできるだけCEFRに近いような枠組みに基づいた,コミュニケーション能力を測る。そういうふうにできないかという取組をして,21年度から現行試験の複数回化を行い,22年度からは,できれば新しい枠組みに基づいた能力判定の仕組みに変えようということは今関係者の間で努力はされて,国・県の御指導も頂きながら,あるいはいろいろな学会の御協力も得ながらやっているところです。けれども,それが本当に今のドイツやオランダやアメリカのような,いわゆる移民政策という観点で本当に考えられているかどうか,あるいは日本における定住者に対する能力判定という基準になるのか,ならないのかというのは,これからやはりきちっと議論しなきゃいけない問題なんじゃないかなというふうに思うんです。

○西原主査

今のお話は,ですから二つの側面で問題,つまり司令塔がないところで各省の連携が進んで,それが事実化しつつあるという,そういう事態が起こっているところで,この日本語教育小委員会が一体それに対して何を言うかという問題が一つありますよね。
それからもう一つは,おっしゃるように,外務省,文科省の連携の中で,日本語能力試験に関する,一つのスタンダードが新たに生み出されている。そのスタンダードというものが,それこそオランダはダブルチェックされるようですけれども,それを良いというふうに考えていくのかということ。その具体的な利用の仕方というものについて,この枠組みの中でどういうふうな提言,それを積極的に支持する,又は別なものを提案するというようなこと,二つのレベルで考えられることだと思うんですけれども。

○岩見委員

今のことに関連していえば,オランダの場合でも,ドイツの場合でもそうですが,CEFRというのが一つのスタンダードであって,一般的な行動達成能力を求めている。それと移住のためのプログラムというのは,また細かくそれを基に書き加えていくわけですね。ですから,それをそのまま,スタンダードをそのまま使って,その基準にはしているけれども,生活者のため,移民のためということで,また新たに一つ,プログラムや段階的指導内容試験の項目というのを作るわけですよね。だから,そういう形で具体的に日本に生活する人のための評価というのは,別にといいますか,CEFRのスタンダードを参考にしつつ作られるべきものかなというふうに思っています。
例えば,そこにオランダの例でもありますように,オランダ語の達成目標と同時に,オランダ社会に対する知識であるとか,生活するためのいろいろな科目があるわけですね。ドイツの場合にも歴史ですとか,いろいろその国に関する知識の部分があるので,そういうことについても是非生活者であるからこそ必要な部分というのは,やはり特化されるべきかなというふうに一つは考えています。

○西原主査

そうしますと,先ほどのオランダの例ですと,各自治体からもテストというか,統合プログラムに対する企画について,代表者が出て行っていますよね。つまりそういうこともありましたよね。そういうような日本語のコミュニケーション能力を抽象的にとらえるのではなく,もう少し具体的な生活社会に照らして,いわゆる日本語統合テストのようなものがあるとすれば,そのことのプログラムは別途考えられるべきであろうという,そういう御提案ということですね。

○山田委員

ちょっとずれるかもしれないんですけれども。
そういう実際にテストを行うかどうかというのは,そのテストによって計られるどういう生活上のあるいは社会的な活動というのが期待されているか,いろいろ役割分担も含めてあると思うんです。本当に中神委員がおっしゃるように,ドイツも,オランダもテストの根拠となる法律があって,それは移民法という名前か違うのか分かりませんけれども,その法律で定めた何が必要かというのがあって,そのスケールができてくる。そういう順番になっていると思います。それからいろいろな施策というのは,法の下で行われるべきものなんですけれども,今まで外国人と日本人が一緒に住むという,そういう想定がなかったので,そのような法律は今ないわけですよね。かつ,私の記憶が正しければ,日本語教育能力検定試験という日本語教師になるためにある試験をやる,そのためにはそのためのシラバスがあってという,そういうのがあったわけです。それは文化庁国語課が作っている。その,検定試験の合格を認めるのはだれかというのが,昔は文部大臣だったと思いますけれども,それが日本語教育学会というふうに変わった。その変わる時の理由が,すべてのそういう資格試験というのは,これは法の下でなされるもの以外は,国の,この場合は文部科学省ですけれども,資格試験として実施して,資格を与えるということはしないんだというふうにしたというふうに記憶はしているんですね。ということであれば,我々がいろいろな施策をこれから考えて,そういうスケールも作ろうというようなことをやるかもしれないけれども,その大本に何らかの法的根拠というのはどうしても必要だと思うんです。

○西原主査

それはそうなんですよね。ただ,それは「1」のところで重要な課題として提言するべきことではあるんですけれども,それだけを,それを前提にするとして,その前提の上に実際に働く人たちはどういう人たちであるかということまでを範囲に御議論いただきたいというのが今回かなり切実なことになってきているかと思うんです。

○山田委員

そうですね,確かにその法律を作るということが義務教育においても,大人のための教育においても,日本人の理解を高めるとともに,とても大事なことなんです。けれども,今まで自治体でそれぞれ,中神委員のところをはじめ,いろいろやってきて,すごく大変な努力の中で,行ってきました。日本語教育小委員会の中で,やはり法律を作るということは,日本語の試験についての議論がなされるのであれば,専門的立場でなされるべきなのかなという印象を持つんです。しかし実態は今の御報告だけでは軽率に判断できないかもしれません。その辺のところは同時に進めつつ,法律を作り,予算も付けるという方向に持っていくための専門性を持った議論というのは同時に必要なことかというふうには思います。

○西原主査

前に私,外務省の審議会にいた時にも,外国人庁というものができるべきだみたいな意見がすごく強くあって,そういう何か法律で保護された所轄の政府機関ができて,そしてそれが今後の日本のあるべき姿というか,人材資源をどういうふうに考えるかということの中に,外から導入される人材資源というものについて,所轄の官庁があるべきだというようなことが議論されています。経団連のリコメンデーションの中にも,その大方針をという,そういうことがあるわけでございます。それはもちろんこの日本語教育小委員会としてもバックアップするというか,その方向に賛成するということは当然のこととして言わなければならないということなんですけれども,それがなければ何にもできないというふうになってしまうのもとても危険なことで,つまり法律ができない限り一歩も動けないのかということにならないようにしなければいけない。

○山田委員

両方進めないといけないんです。こっちだけやるんだけれども,これをやったけれども,ああ,駄目だったと,じゃ予算はもう付かなくなりました,終わりですというような,そういうある種の恒久的なことをやっていくべきことがその時その時に変わっていく。それは法律的裏付けがないからというふうにも考えられるので,両方を進めていくべきです。

○西原主査

そうですね。法的裏付けを作るためには,愛知県が苦労していらっしゃるように,やはりパブリックオピニオンがこれからの日本社会,我々がこれから住んでいく社会が居心地良いものであるために,外国の方々の貢献というか,一緒に暮らすということが不可欠なことなんだという意見が高まっていかないといけないという,杉戸副主査がおっしゃる働き掛けの部分というのが同時にないといけないということにもなりますね。

○佐藤委員

前回お休みしてしまって,第7回の議論の様子はよく分からないのですが,山田委員の意見に私も賛成です。オランダやアメリカが実施しているのは,明らかに移民政策ですよね。外国人政策じゃないです。移民としてどういう人間を期待しているのか,そのためにはどういう能力を求めるのかという議論ですね。そうすると,政策的な位置付けのところでは,縦割り的に,また対症療法的に行われてきた外国人政策ではなく,それらをどう統合していくのかという政策的な議論が必要になってくる。その中で,例えばどういう日本語教育の内容が必要なのかということで,何かテスト先にありきという議論になってしまうと,何かちょっと,どう議論をしていいのか分かりにくくなってくる。

○西原主査

そうですね。テスト先にありきというのは,たまたま西澤委員のいらっしゃるところで,既にそこのことは進みつつあって,21年度には実施されると聞いたので…。

○西澤委員

今の議論でいえば,移民という格好での受入れは実は日本政府は認めていないわけですね,今の日本国というのは。だけど,事実上移民に近い形で外国人がいろいろなところで定住して生活者として生きている。その人たちに対して日本語教育をどうするかというのが多分今の喫緊の課題で,それに対して,差し当たって何ができるのかという,制度的な枠組みのことはもちろんあるけれども,何ができて,何をしなきゃいけないか,それをどういう方向にいろいろな施策を展開していかなきゃいけないかということについて,御意見を申し上げるというのが多分委員会の役割なんだろうというふうに思います。ですから,正に西原主査がおっしゃったとおり,具体的にじゃ何ができるのと,今の非常にあいまいな移民という形で受け入れるわけじゃない。永住を前提にしないけれども,事実上そういう人たちがたくさん出てきちゃっている。そういう人たちと日本人とのコミュニケーションを確保して,そういう人たちと一緒に共生していくための仕組みとして,今できることは何かということを少し御提案するというのが我々の仕事なんじゃないかなというふうに思うんです。

○佐藤委員

今,中神委員からお話ししていただいたようなものが実はすごく大事なんです。実はそこの地域の中で生活するこの人たちにとって何が必要なのかという議論で,そうすると,この前のずっと前回の議論の中で言う「地域における日本語教育であるとか,日本語教育の専門性とか」,その辺のところはどこにここは入るのかというのがよく分からない。

○西原主査

もう一つ中の部分というふうに考えるのではないかと。参考資料のところですと,今後検討すべき課題ということの「2」の体制の整備というところに一応フォーカスをしていて,そのことの中で,つまり(1)と(2)ということを中間的にまとめたらどうなのかということが前回,喫緊,とにかくやってみましょうかということになり,金田さんがおっしゃってくださったような中身のもう一つの内容,つまりテストの話もそうかもしれませんし,どういう能力,又はどういう体制でどういうふうに日本語をというところは,もう一つ先に考えられるべき次の章というふうになるのかというふうに私は理解していたんですけれども,いかがでしょうか。
例えば,昨年度の課題で行きますと,日本語教育の専門性あるいは中身の話とそれから体制の整備の話が少し分けられて考えられていて,ここでは体制の整備の話で,今,佐藤委員がおっしゃったことは,内容の改善の方の(1)地域における日本語教育の専門性と内容の明確化というところに分類できるようなことなのかというふうに私は理解していたのですけれども。

○中野委員

私もこの間の委員会に出ていなかったのですけれども,テストというか,評価というか, ここまでできていないといけないというような話になるんですけれども,目標と評価というのは表裏一体ですが,いきなりテストというか,評価の面から行くのではなくて,外国人が日本の社会に参加できるようにしてあげるためにどういう日本語が必要かという,いわゆる目標の方から攻めていくことが大事だと思います。どういう目標を設定したらいいか,その目標を達成するためにはどういうバックアップが必要かという議論が先だと思います。つまり具体的には,国である種のスタンダードを作るようなことにもなると思うんですけれども,それは制度があるなしにかかわらずできるわけですね。だから,それがやがて制度の方が進んできた時に,評価に回るわけですね。それと学習目標と同に日本語教育の体制整備の目標を設立して,その目標を目指して,国は何をして,都道府県は何をしてということが考えやすくなると思います。

○西原主査

そうですね。それは多分,今のA4版の整理でいえば「1」の部分がそれを含むという大きな大きな政策的位置付けというか,その部分はあって,それはもちろん書かなければいけないことなので,今,委員の皆さんがおっしゃってくださったようなことが前提として「1」に書かれていて,かつ「2」の部分ということではないかと思うんですね。具体的には,多分中神委員や甲村さんのような人を全国的にどうやって存在を位置付けるかというか,たまたま愛知県で,こういう優れた人たちがいるので,たまたま愛知県はこういう検証までできているということではあるけれども,その中神委員の存在,甲村さんの存在というものは,全国的に養成されたり,位置付けられたりしている存在ではないですよね,今のところ。それを例えば体制の整備の人材育成というところで,今やっていらっしゃるようなお二方の位置及びお二方のお仕事を強く存在をサポートするというか,そういうことが多分「2」に書かれていることだと思うんですね。それを「2」のところに入れてよろしいでしょうかという,多分それが今日の一つの提言かなということです。これは何と申しますか,それがあったから,じゃ法律ができますかというと,それはそういうことには直接的にはならないけれども,中神委員,甲村さんの存在があることによって,なし得ることの延長線上にもしかしたら県の認識,関係者の認識,企業の認識というものが存在し得て,その結果,法律化ということにもつながっていくという方向もあり得るんじゃないかと思うんです。

○佐藤委員

確認ですけれども,つまり前回の中でいうと,1,2,3という内容の改善,体制の整備,連携・協力の推進という三つの柱があった中の体制の整備を中心にここでは議論するという…。

○西原主査

それはなぜかというと,この日本語教育小委員会の権限というか,その中で法律,省庁連合でどの省庁がかかわって,法律がどうできていくかというところにいきなり踏み込むということが,この日本語教育小委員会の主たる役割というふうにはならないのではないか。つまり文化審議会の一機関としての国語分科会日本語教育小委員会としては,むしろどういう人が働くかということにかかわって,何か始めるということが賢いやり方なのではないかというような考え方から,来年度,例えば一歩踏み出せるというための概算要求をするとすれば,この内容の整備というところから特に今回たまたま中神委員,甲村さんが来てくださいましたけれども,こういうような方々を作りましょうとか,作ってくださいというか,こういう方々が推進するべき体制というものをこちらが強く打ち出していくということがあるのではないかというところで,体制の整備というのが今回上がった。これは7月までの目標で,このことを書いていくのであって,8月以降には「1」,それから「3」,その先に法律があると思うんですけれども,ということを今年度末を目標に更に練っていきましょうということで,何か中が突出しちゃったようなんだけど,これだけをやるということではなく,まずここを概算要求につなげていきましょう,そのことがこの日本語教育小委員会としてできる一番身近なことではないかという理解であったと思うんです。

○佐藤委員

テストのことになったものですから,例えば今日の中神委員のお話を伺うと,地方としてはもう移民政策をとらざるを得ないと思うんですよ,定住し始めているわけですから。そうすると,地域日本語教育の中身というのは,実は今後の国の正にテストの問題であるとか,そういう問題とどうしても連動していかざるを得ない部分があるんですよね。

○佐藤委員

そこでちょっとこだわっただけであって,つまりそういう体制整備の中で内容というものがどうしてもここで不可欠にちょっとかかわってくるのではないかというふうに考えたわけです。今,西原主査がおっしゃったのはよく分かります。理解しました。

○西原主査

だから,そういうすぐれた見識とすぐれた実行力を持ったお二方みたいな人をどうやって日本が育てていくのかという,そういうことではないかと思うのです。
たまたま皆さんもうご存じのことかと思いますが,東京外国語大学が,先生もかかわっていらっしゃるけれども,多文化社会コーディネーター養成講座というものを既に立ち上げて,政策コース,学校教育コース,市民活動コースというのに分けて人材育成をなさる。何か8,000円とか払えばこの講座は受けられるらしいですね。その中の政策コースに当たるような,又は市民活動コースを併せて受けるような方が県の職員になってくださると,この政策を県レベルで推進することの一つのメリットというのが生まれるだろうということをまず提言したらどうなのかという,多分そこじゃないかと思うんですが,いかがでございましょうか。

○尾﨑委員

テストの話を持ち出したのは唐突だったかもしれないですけれども,具体的に今地域でボランティアの方たちが中心になっている活動自体の中身とか,質というのを国としてどういうふうにバックアップできるか。都道府県のレベルでどういうふうにバックアップできるか。具体的には市町村レベルでやっているわけですけれども,これを国,都道府県,市町村というところでどうやって連携していけるか,具体的な質のところにかかわる提案なり,質を良くするためにどうすればいいかということが私たちが提案すべき大きなポイントだと思うんです。その時に抽象的な議論をするよりも,テストというのは非常に分かりやすいので,テストをじゃだれがどういう権限で行うかということはちょっと横に置いておいても,少なくともある教室で3か月間勉強する時に,幾つか目標として,こういうのがあり得る,そのためにこんなことをやったらいいんじゃないかという具体的な提案をするところがきちっとやはりできていないわけですよね。ばらばらに行われている。そこをこの委員会としては,どうしたらいいかということを文化庁を通して政府に伝えるというようなイメージで一応私はテストと申し上げたので,じゃ一体テストの中身はどうやって作るかというときに,恐らくいろいろな方がかかわって議論していかなければいいものはできないと思うんです。そうすると,そういう議論をするような場をだれが呼びかけて,その組織なり,ネットワークなりがきちっと機能するための予算はどこが出すのかとか,そういうことをやはり議論していく必要があるなと思って。テストという言い方は唐突だったかもしれないんですけれども…。
実際にかかわってみて,企業の中でも日本語の教室を開きましょうという動きがだんだん出てきて,例えば豊田市の場合も,これは又聞きですけれども,豊田市の商工会議所の方で,傘下の企業に対して日本語教室を大いに開きましょうというふうに商工会議所が旗を振って動くと言っているんですけ。けれども,そういうところで具体的にどういうことをやればいいかというのは,みんな手探りですよね。その手探りでやっていることをばらばらの手探りじゃなくて,どうやって助け合って,一緒にやるような仕組みが作れるか,それは恐らく愛知県あたりのレベルで考えないと,国ではできないと思うんです。ただ,愛知県なり,群馬県なりのそういう県レベルあるいは市町村レベルでのそういう活動にかかわる必要経費を国がそれなりにバックアップするというようなことをやはりやっていただければ,何か一緒にやっている雰囲気になるんじゃないかと思うんです。中神委員にお伺いしたのは,国がどういうことをやってくれると,県,中神委員たちのお立場で動きやすくなるのかというようなことでお尋ねしていたんですけれども。

○西原主査

今,学会で,学芸会例えば具体的なカリキュラムというのを立てていますよね。それから,オランダが何をやっているかということを翻訳していただけば,例えば就労というレベルでどういう学習科目が立っているのか,それから市民生活というレベルでどういう学習項目が立っているのかということを見れば参考になりますよね。それから教育ということも,もちろん子育てということもとても大切な,次世代の市民をどうやって育てるかということになるわけですけれども,皆さんの御意見が返っていくのは,じゃ国はということになるんですけれども,そこはしっかりやはり「1」のところに書かなければいけない。政策的な位置付けというところに,スタンダードというものができて,それは国際交流基金がスタンダードを作っていってくださるという。それは一番大きなレベルでのスタンダードというのができつつあるというふうに考えるとして,その市民生活とか,そういうところのレベルのスタンダードというものを,「1−2」にこだわるんですけれども,この中身にみんな入っていく。書かれるところとしてはそこになっていくということになっていくんだろうと思うんです。
ただ,予算の話というのを「1−1」のところでどの程度書き切れるかという,国家のレベルでするべきことのリコメンデーションとして,「1−1」及び「1−3」というところの今の委員からこれは必要だとおっしゃった議論がどのぐらい書いていけるのかというのは,書かねばならぬということでは皆さん一致しているとは思うんですけれども,そこのところは是非入れましょう,書きましょうということになりますよね。ただ,それができないと「2」以下ができませんというふうにはちょっとならないので,「2」のところは概念的には少し分けていただかないといけないのではないかという,繰り返しになりますけれども,そこら辺はいかがでしょうか。

○山田委員

いわゆる概算要求をして,それで少しでも現状をまずは応急処置というか,こういう状況を改善していく,その根本的な改善というのはちょっと置いておいても,一番今必要なところというのを考えるのが7月までの話だと思うんです。それは2なんです。もちろん2の中心なんです。「国が」というふうに言ったんですが,「この場が」というふうに言い換えてもいいと思うんですが,コーディネーターという話が出ていますけれども,総合的なコーディネートをするという意味では,この場がすることが重要だと思うんですね。
それで,そのテストの開発とか,あるいは教える内容のプログラムの開発とか,それが必要だし,こういう観点が必要だしというのはここでやるべきですけれども,具体的にそれを実施していくというのは,それは日本語教育学会に委嘱するとか何かいろいろな方法があるわけで,その中心的コーディネートをやるということを考えて,それで当然2の部分のその中での一つの項目として応急処置,今やるべきことというのはあると思います。それと,それは応急処置なんだから,根本的にこういうことをすべきだというのも併せてここで考えておいて,その応急処置が根本的にやるべきことのどこに位置するかみたいなことも合意して,そこを進めていくというのは必要だと思うんです。
それで,そういう根本的なところも進めるときに,いろいろな形で問題が出たりいろいろあるんだけれども,本当に必要なのはこういうことだよねと言った時に,法律を作っていくというのがあるとすれば,それを作るというのは,今までこの国がやってきた方法だと思うんですね。だから,行政だから,できた法律に従って着々とそれを実務的にこなしていけばいいという,そういう話ではないからこの国はもってきたんだと思うので,ちょっと変な法律なんていうことを言いましたけれども,私の考えではそういう大きな部分を進めながら,今本当にやらなきゃいけない,応急処置でも何でもやらなきゃいけないのはこれだというふうな,両方やっていく必要があると思います。

○西原主査

まずコーディネーターありきというのは議論がちょっと逆なので,それは確かに,まずコーディネーターありきにならないように議論を進めていかなければいけないし,コーディネーターという名前でよろしいのかという。愛知県でソーシャルワーカーと言っていらっしゃるのは,社会福祉士とは国家資格なので,そのことではないんですよね。

○中神委員

違います。

○西原主査

違いますよね。ただ,そういうお仕事をソーシャルワーカーと言っていらっしゃるという意味で,社会福祉士というのは大学院レベルのコースを終わった上で受けるべき試験の結果,与えられる資格なのであす。社会福祉士というのは。それは訳せばソーシャルワーカーになるんですけれども,その職種のこととは違う。

○甲村氏

愛知県の方で養成講座を実施いたしまして,42時間のコースなんですけれども,外国人を取り巻く法制度とか,カウンセリングの技法を学んでいただいて,愛知県版の多文化ソーシャルワーカーというふうに位置付けています。

○西原主査

そういうことですね。そういうような方々も含めてそこで働く人々というのをどういうふうに今後養成していくべきかということを配布資料4「2−2」のところに多分入れている。そのためには,関係機関がもちろん協力してそのことにかかわっていかなければならない,都道府県の担うべき役割というものももちろん。先ほどしつこく質問しましたのは,県のイニシアチブで中神委員という方がいらっしゃれるという,そういうことですよね。例えば,今法律はないのに,中神委員が自主的にまた県の事業として,これだけのことができるということはやはり評価されるべきこと。

○中神委員

実は私のやっていますことは正に対症療法でして,まさに今そこにある危機というのですか,現にやらざるを得ないものですから,市町村でやっているんですけれども,ただ,私ども自治体がやっていることは,正直なところ,やはりどこまでいっても対症療法だと思うんですよ。本当はできれば,何か基本的なものがちゃんとあって,それを見ながらやるということはどうしても必要だと思います。ただ,それがなければできないわけじゃないんですけれども,さっきおっしゃったとおり,対症療法をやりながら最終的な法律や何かを作っていくということはあると思うんですよね。
いつも私が思い出すのは,例えば「今後,外国人労働者が増えていくでしょう」とは言うんですけれども,「増やしていきます」とは言えないものですから,例えば国として,多分移民だと思うんですけれども,移民がどうなるかという明確な方針というのはどこかで要るんじゃないかなということは感じます。

○西原主査

やはり経団連の2007年,2006年に出されたリコメンデーションなんか見ましても,結局外国人というか,外国からの労働力という部分を見据えなければ,今後の日本はあり得ないということについて,強く提言しているということがあります。それがどういう法律,どういう機関ということになっていくかということに関連しましては,まだ何か情勢はふつふつ高まっているけれども表面化していないときで,それが一気にどこへ集結していくのかということについては,希望的観測はあるけれども,何か必ずしも一致して,これで行こうということになっていない。ただ,それが時間の問題,あと5年たったら何かできているだろうというような,そういうことではあるような気が…。

○中神委員

ただ,その方向に向かって努力しないとこれは多分できないと思うんですよ。

○西原主査

そうですよね。だから,パブリックオピニオンというか,私はそういうことに向けての議員さんの勉強会があるのは知っています。しかし,議員立法になるのかどうなのかというのは,全然分からないんですけれども。

○杉戸副主査

実は,提案になるかどうかですけれども,私にとって中神委員の千手観音のような働き振りは,一言でコーディネーターとか,あるいは国際官という,そういうお名前でくくられるということが,そこをうまく,ちょっと失礼な言い方ですけれども,整理すると,ここに私は配布資料4の枠組みでいけば,「2−2」が核心的な我々の目標になるのではないかと思います。さらに「2−2」が非常に具体的なポイントだという,その前提で申しますと,日本語教育コーディネート業務,この構造をきちんと整理することがまず必要じゃないかと思います。いろいろなことをなさっていることは今日分かった─分かったというか,初めてですから,びっくりしつつ分かったんですが,そこには,何か分類とか,何かレベルの階層的な構造とか,そういったものがきっとあると思うんです。それが国,都道府県,市町村といったそういった階層にも対応しているかもしれないし,あるいはここにもうプログラム自体を動かし,組織をつなぐということがあるのかもしれない。これは内容とかかわる人間,組織ですね,つまりコーディネートする対象が二つもう既に分類されているわけですけれども,そういう整理をして,コーディネートとは何か,コーディネーターとは何かという角度で整理をして,そのうち今,応急処置として一番必要なものはどれか,それはこの日本語教育小委員会からの提言として,予算処置も含めた提言として,一番実効性のあるものはどれかといった,そういう整理がしやすくなる分類の枠組みというか,分類のリストですね,それがあると非常に有り難いという気がしました。その中の分類の枠としてテストとか,あるいはオランダのプログラムといった,そういう制度もコーディネーターのかかわる,あるいはコーディネーターの仕事を分類する枠組みとしてあるかもしれないと考えます。

○尾﨑委員

今,杉戸委員が指摘なさった「2−2」のところで,?と?と二つ分かれていて,中神委員が主におやりになっているのは?の方かなと思うんです。それで,愛知県の多文化共生推進室がおやりになっていることも,どちらかというと?の方で,実は生活者としての成人外国人に対する日本語教育ということについて,余り今日の御報告,私はよく理解できていなくて,多分そこの部分,具体的な成人のための日本語教育のプログラムを核としたコーディネーションの仕事というのは,やはりまだ不足している。愛知県の場合だと,そういうことにかかわっている人はかなりの数いるんですけれども,行政とそういうボランティア団体との連携みたいなものもまだ十分にはできていないと思うんです。ところが,それを仕事としている人がいないんですよね,現実問題として。ですから,例えば時限的に3年とか,5年なりの予算措置が行われ,日本語教育のプログラムをコーディネートするということをまず第一義の職務とするというようなポストが置かれ,そういう方がお仕事として3年なり5年の間に,さっきのテストでいえば具体的にどういうテストをするかということを大学等とか,研究機関の人たちとか,企業の人たちともかかわって,でも基本的には日本語のプログラムをどうするかという,そういう職務,そういう人をやはり国も自治体も,それからNPOなり,ボランティアも集まってやるような,そういう方向を是非提言していけたらいいなと私は思っていますけれども。

○西原主査

オランダの場合は何て呼ばれていたんでしたっけ,そういう人が。何でしたっけ。何か呼ばれていましたよね。職種がありましたよね。

○説明者(金田)

コーチ。

○西原主査

コーチが教育内容の実施状況についてモニターをする。

○説明者(金田)

そうですね。教育内容がそのテストの基になっているシラバスで定められていますので,それがちゃんと実施できているかどうかということをコーチが行ってモニターするということで,それが教師の指導方法の方にフィードバックされる場合もあるでしょうし,内容に関する問題点であれば,その内容をつかさどっている方にフィードバックが行われるというような感じのようです。

○西原主査

だから,コーチが存在するためにはその前提となるものがなくではならないわけなのでしょうけれども,そういう人がオランダの場合はいるということですね。

○説明者(金田)

そうですね。

○西原主査

大議論で,非常に有益な第一歩というか,方向が御意見の中で示されたと思うのですけれども,こういうことで,事務局としましては,今日の御議論をまた少しまとめて,次回には7月にまとめるべき内容についてもう一歩進めていただくということでよろしくお願いします。

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