議事録

第11回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成20年7月18日(金)
14:00〜16:00
文化庁第2会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,井上,岩見,尾﨑,加藤,佐藤,中神,中野,西澤,山田,内田各委員(計11名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第10回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 地域における日本語教育の体制整備について(案)

〔参考資料〕

  1. 日本語教育小委員会の今後の検討スケジュール(案)
  2. 国語分科会日本語教育小委員会における審議について(概要及び図)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 事務局から配布資料2についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
  4. 第39回の国語分科会総会は,予定どおり7月31日(木)の14:00から16:00まで霞が関ビル33階の東海大学校友会館阿蘇の間で開催することが確認された。また,次回,第12回日本語教育小委員会は,日程を調整の上,開催日を決定することが確認された。
  5. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
定刻になりましたので,今年度で言いますと第5回,昨年度も入れますと第11回になるかと思いますけれども,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会を始めさせていただきます。
「配布資料2」は今月7月31日の国語分科会総会に,この小委員会の今年度前半の審議経過として報告します。今年度が始まったときに,中間取りまとめ案として文書化することが計画の一部に入っていたと思いますが,それはしないことになりました。ですから,これは報告書としてとりまとめるのではなく,当日は経過説明をこのような箇条書に近いもので行い,説明します。これが,今年度に書かれる報告書の前半部分になる,そういう位置づけではありません。まだ流動的だろうということが先回の会議の合意事項でした。さらに今日は事務局で,前回とどこが変わったかということがはっきりした方が今日の議論の参考になるのではないかということから,見え消しの資料を委員にはお配りしています。
ただ,文言としてできるだけ委員の方々にとって31日の経過報告として適当なものであることが担保された方がよろしいと思いますので,そのような御意見を伺いたいと存じます。
あと1時間半という時間の制約がありますが,その半分ぐらいの時間で1ページ及び「(1)各機関の役割分担と連携」を,そして「(2)各機関の連携協力の在り方」のとこ ろを後半に検討する,そのくらいの時間配分でできたらと思っておりますので,どうぞ御協力をお願いいたします。
早速でございますけれども,「配布資料2」の表紙に当たる部分ですが,これはいかがでございましょうか。
これは主査である西原が,口頭で読むところの冒頭になろうかと思います。「参考資料2」にある昨年度に審議した概要を踏まえて,それをリマインダー【reminder】としてここに掲げ,かつ,今期,どういうことをするのかといったことが書いてあるということで,文言を御議論いただく必要はないと思います。
それでは,ページをめくっていただいて,(1)のところです。
委員の方々から頂いた御意見を事務局の方で,ほぼ忠実に反映したのですけれども,その結果,かえって少し分かりにくくなった部分もあるかと思います。いかがでございましょうか。
○岩見委員
前回の意見が反映されて,とても分かりやすくなっていると思います。
内容が具体化し,奨励の対象は学習者のみならず日本語教育の実施機関というところが明記されて,それはよいと思います。現状として,地域の日本語教育機関が生活者に対する日本語教育も行っておりますし,いろいろなノウハウも持っている。その機関によって様々ですけれども,国が決めた指針のもとに内容を担保して,そういうところで日常的に,経済的な理由で日本語学校へ行けない人たちを助けるとか,そういうことも含めて,学校に対する奨励金というようなことはかなり現実味を帯びて,いい方策ではないかと思います。
それに関連しまして,この間ちょっと見落としていたんですが,いろいろな協力機関の中に,日本語学校であるとか,社会人に対する日本語教育を行っている「日本語教育機関」という名称が出てこない。具体的には,三つ目の○に国が「日本語教育の標準的な内容・方法を地域で実践するためには,大学や研究機関の専門家,地域のボランティア等の関係者の協力を得て」とあります。この「等」に入るのかもしれませんが,ここにやはり一つ重要な役割として,各日本語教育機関の教育関係者というものを明記する必要があると思います。
○西原主査
そうしますと,「大学・研究機関・日本語教育実践者」ということでございましょうか。
○岩見委員
文言はお任せいたしますが,日本語教育機関というのは「大学や研究機関」という言葉だけではちょっと反映されていないと思いますので。
○西原主査
その三つをつないでよろしいですか。「大学・研究機関・日本語教育機関の専門家」。
○岩見委員
「・」は分かりにくいですかね。「,」でつなげてはどうでしょう。それはどちらか検討していただければ。
○西原主査
そのことに関しましては,いかがでしょうか。この「関係者」,つまり「指針を作る人」ということと,それを実践するためにはということの中に,日本語教育を実施する職種の人の名前がないということですが。
○山田委員
2行目の「大学や研究機関」と書いてあるところに,「大学や研究・教育機関」としてはどうでしょうか。
○西原主査
でも,大学は研究・教育機関なんですよね。
○井上委員
「教育機関」と言うと,普通は大学と専修学校的なイメージが強いですが,ここはやはり「日本語学校」とはっきり書かないと分からないのではないかと思います。実際に日本語学校が担っている役割は非常に大きくて,最近では日本語学校に通って大学に入り,さらにもう一度日本語学校に通い直す留学生が出始めています。それはなぜかと言うと,日本の企業に就職したいとか,日本にしばらく定住したいとか,そういう意欲ある人たちが日本語学校を使い始めているからです。そのような実態を考えると,「研究・教育機関」と言うと大学のイメージが強いので,「日本語学校」とはっきり書いた方がよろしいのではないかと思います。
○西原主査
それは日本語教育振興協会でもかなり議論されていることですよね。
○加藤委員
おっしゃるとおりで,「彼ら」と言うのと「日本語学校」と言うのとは違うんですよね。
○井上委員
経営ということだけではなくて,公への貢献という観点から,日本語学校が積極的に入ってきていただく必要があります。
○西原主査
ただ,地域貢献ということでは随分議論されていますよね。
○加藤委員
私たちの役割というのが実は公的に認められるという意識を持つためにも,世間からそのように見られるためにも,こういうところに出てくることは非常に重要かと思います。
○西原主査
「日本語学校」と言っていいんでしょうか。
○岩見委員
「日本語学校」というと,イメージとしては,日振協に登録している学校ですね。
近年,我が国は,言語・文化的背景の多様な住民が増加し,言語・文化の相互尊重を前提としつつも外国人の我が国における社会参加が促進されるよう,日本語の普及及び学習の促進を行うことが求められている。その際,我が国に暮らすすべての人が,健康かつ安全に生活し,地域住民との相互理解を果たし,自立して文化的な生活を送るために必要な日本語の教育が必要となっている。
社会人向けの教育機関には,そこに登録していない機関もたくさんあるわけですよね。
○加藤委員
「日本語学校」というのも通称で,正式には「日本語教育機関」です。
○西原主査
そうすると,「大学や研究機関及び日本語教育機関」として,「専門家」とは言わないでいいわけですね。
○加藤委員
そうですね。「専門家」というと研究者のようなイメージがありますし。
○岩見委員
ここは人でつながっていますので,「日本語教育機関の教育関係者」としてはどうでしょうか。
○西原主査
大学や研究機関の専門家,日本語教育機関の教育関係者。
○井上委員
「地域のボランティア等の関係者の協力を得て,」となっているのですけれども,「地域の関係機関等の協力を得て」の方がよいのではないですか。実際には,専門家も,あるいは日本語教育機関の経営者もいるでしょうが,むしろ機関の協力を得ることが非常に重要なのではないかと思います。
○西原主査
そうすると,「ボランティア等」を削って「大学や研究機関,日本語教育機関,地域の関係機関の協力を得て,」でよろしいでしょうか。
ほかは,いかがでございましょうか。今,[1]の話になっていますが。
○内田委員
先ほど岩見委員が言われたところで,「インセンティブ」を「奨励措置」としたことで非 常に具体的になったのはそのとおりだと思いますが,「何らかのインセンティブを示す必要がある。」という文を削ったために,この「動機付けとなる奨励措置を検討し,提示することが期待される」となりますとトーンダウン【tone down】して,必要かどうか分からず投げてしまう形になるのではないかと懸念されますので,「奨励措置を検討し,提示する必要がある。」と短くされた方が前のニュアンスが残るのではないでしょうか。
○尾﨑委員
賛成です。
○西原主査
これについては水面下でかなりホットな議論が進んでいるように察知しておりますが。
○日本語教育専門職
すみません,先ほどの御発言についてちょっとお伺いしたいんですけれども,「大学,研究機関及び日本語教育機関,地域の関係機関……」となったかと思うんですが,ボランティア団体のことを考えた場合,「機関・団体」というぐらいにしておいた方がよろしいのではないかと思うのですが。
○西原主査
そうすると,「関連団体」「関係団体」でもよろしいですね。「機関」と言わずに「団体」の方がよろしいかもしれませんね。
○山田委員
いいんじゃないですか。
○西原主査
「関係団体」でいいですか。労働組合も含めて。地域の労働者と連携する組合活動はありますよね。
○井上委員
はい。実際にそういう場で日本語教室が開かれている例がありますから。
○西原主査
私の地元もそうです。
では,今度は内田委員の御発言の内容ですが,[1]の一番最後は「動機付けとなる奨励措置を検討し,提示する必要がある。」でよろしいですか。
○国語課長
1ページの※にも書いてありますけれども,前提として,基本的に「国」は「文化庁」であるということを踏まえて,「国は,地域と連携してそれを担う人材を養成する必要がある」と言うところの「必要がある」とまで言うのかということなんですけれども……。
○西原主査
文化庁が言える範囲のことというか,この審議会が提言できる範囲の必要性を満たすものと考えれば,強い文言の方がよろしいということが,ここは当てはまると思うんですけれども。
つまり,「国」をとらえ直してしまうと,この「必要がある」は際限もなく広がっていきますよね。そこに対する御懸念だと思うんですけれども。
○山田委員
提示するのは,別にいいのではないですか。
○西澤委員
1ページに,わざわざ「文化庁のことですよ」と書いてあるわけですから。
○尾﨑委員
今の議論,私は理解できていないんです。
期待されるということであれば,文化庁のお立場としては問題がないけれども,「提示する必要がある」という表現になると,文化庁のお立場としてはやや難しい,そういう御趣旨でしょうか。
○国語課長
そういうつもりです。
○尾﨑委員
それで,「そのことは気にしなくてもよろしいのではないか」というのが西原主査の御発言の趣旨でしょうか。
○西原主査
気にしなくてもよろしいというか,検討,提示ということであれば「必要がある」という強い文言で締めくくっても,余り御懸念いただく必要はないのではないかと思ったというのが私の発言でした。
○尾﨑委員
私もそれに賛成したいと思っているのですけれども,この文章で「必要がある」という表現を入れてあることは,文化庁として「ここは気合を入れてやるぞ」という裏のストーリーがあると理解していいんでしょうか。むしろそこを伺いたかったんですが。
例えば「指導者の指導者」を国は養成する必要があると書いてある,この「必要がある」というのは,かなり本気でやっていただけるということでしょうか。
○西原主査
そうです。
○井上委員
前回,その話が出たときにも私は強く言ったんですが,せっかく内閣官房を中心に連絡会議みたいなものができて,そこに当然文部科学省,文化庁も参加されているんだとすれば,今,小委員会において,しかもこれは審議会の小委員会ですから,ある研究会の検討会ではありませんので,こういう,この段階では何になりますかね,報告書……
○西原主査
いや,これはまだ報告書でもないんですけれども。
○井上委員
こういう議論の方向ができていますということを,何か月かに一遍であれ,会議でお話ししていただければ,共感も得られるでしょう。最近では,一つのお役所だけではなくて,例えば経済産業省と文部科学省が協力して実施する事業が予算化されたりする実例もありますので,「それでは,やってみましょう」という話になるかもしれません。
それは相手が総務省になる可能性もあるだろうし,産業にかかわるものであれば経済産業省になるかもしれないけれども,そういう芽は,やはり残しておいた方がいいと思います。確かに文化庁だけでできないことは分かりますが,このようにはっきりと言った方がよいのではないでしょうか。私は「必要がある」でも弱いぐらいだと思います。
○西原主査
「提示する」。
○井上委員
ええ。それぐらいの感じでよろしいと思います。前回申し上げたのは,予算までイメージするかどうかということになると,それはちょっと時期尚早かなという感じがするのですけれども,何か芽を残しておいて報告をしておけば,将来につながるのではないかと思います。
○岩見委員
奨励というのは,いろいろな奨励があると思いますので,言葉として是非残してほしいとは思います。
○西原主査
この委員会の9月以降の予定が示されていますけれども,ここのお仕事の内容というのも,奨励措置を含むわけですよね。その奨励というのは,例えば市民生活に必要な最低限の学習項目リストかもしれないわけですよね。これを奨励措置の一つのステップと考えれば,それは一致するわけですよね。だから,奨励措置というのを,ただ予算をとってきて奨励費として付けてあげるといったことは,当面はできない。今,井上委員がおっしゃったように,そこまでは無理だろうというようなことを考えて,そういう御意見だったように思うんですけれども。
○内田委員
前は「期待される」続いて「必要がある」とありますので,かなり御決意があるというふうに読み取って,前のニュアンスがトーンダウンしませんかという発言でございました。
○山田委員
今,西原主査がおっしゃったことと関連するんですけれども,例えば,ある程度,時間的なことをやりくりしてでも学びたくなるようなカリキュラムとか内容とか,あるいはそういう人が時間的に工夫しやすくなるようなプログラムとか,そういうことも奨励措置に十分入ると思うので,この問題については,恐らく国のいろいろなサイドから検討されていると思うんですけれども,「日本語を学ぶ」ということについての奨励措置は何なのだということを言う立場としては,専門家が入っているこの小委員会が何らかの形で提示するのは当然のことであって,そこをやめてしまったら,外枠は決まるかもしれないけれども中に盛る内容が決まらない,そういうことになると思うので,このぐらいの文言は入れておいて,これは国語課の重要な役割と考えてもらってもいいのではないかと私は思うんですけれども。
それで,この前も予算措置のことには言及されたと思いますけれども,[1]の下から2番目の○に「以上のように,国は,生活者としての外国人に対する日本語教育が円滑に遂行 されるように,」の次に「適切な予算措置を講じるなど」とか何か,そういう言葉を入れた方がいいといったことがあったと思います。ただ,それも,予算を付けるけるか付けないかは文化庁が判断すべきものではないからということだったと思うんですが,次の都道府県の方には「財源の確保」というのがあるわけですから,こういうふうにしてしまうと,財源は都道府県で何とかしろというように読めてしまいます。
何か都道府県がやりたくなるような形にするためにも,「国も頑張る,私たちも頑張る」みたいなところで,やはり予算措置にかかわる文言を入れた方がいいのではないかと思うんですけれども。
「日本教育が円滑に遂行されるように,これを適切な予算措置を講じるなど,地域における日本語教育の体制の整備を支援する必要がある」というように,何か予算のことに触れておくことが大事だと私は思います。
○西原主査
少なくともコーディネーターの人材育成の予算はとろうとしているんですよね。
○国語課長
予算の具体的内容については,現在詰めているところでございますが,そういうつもりでやっております。
○西原主査
そのことは決意している,そういうことなんですけれども。その部分をここにももう一度書いた方がよいという御意見ですね。
○山田委員
ええ。見える形にした方が,さっきも言いましたけれども,都道府県,市町村がよりやる気になるためには必要なのではないかと思います。
○西原主査
その「国も財政的なことを考えるぞ」というのは,どの部分に入れたらよろしいでしょうね。ここに○が幾つかありますが。
○山田委員
下から二つ目はどうでしょうか。
○中神委員
実は後でお話ししようと思ったんですが,今,御指摘いただいたとおり,「[2]都道府県の担うべき役割」の方に「財源の確保」と載っていました。政策は本来,予算と表裏一体のものですから,政策があれば当然予算はありますので,書く必要もないのではないでしょうか。予算の裏づけがない政策なんてあり得ませんので。
それで,思ったんですけれども,今回,書かれました国であれ県であれ市町村であれ,人材の育成だって環境の整備に対する支援だって,これは全部お金が要る話だと思うんですよ。であれば,あえて都道府県のところに書いてあるからということではありませんけれども,財源のことを書く必要は余りないのではないか。もしあるとしたら,これから先,財源の確保をどうしていくのか,あるべき姿は何かということを別枠で議論する必要があると思うんです。
実は私ども,2年ぐらいずっと企業と議論しています。いわゆる外国人児童生徒の,通常の授業以外にアフタースクールを全県下の市町村に広げてやるということで,ようやく始めるめどが立ちまして,今年の10月から進めていくんですが,この予算は最終的に,事務的経費は一応県が持つことになっております。NPOさんに対する財源支援を全額税金でやるのは難しいだろうということで,基本的には企業さんの御寄附で賄おうということで,今,進めておるんですけれども,非常に難しさを感じています。
と言いますのは,日本の移民政策に係るといいますか,そんなに重要なことなら愛知県1県でやるのではなくて全国に広げてやっていく必要があるのではないかということと,今,特に景気が悪い時期なものですから,企業にしてみると,やはり警戒するんですよね。私ども,一応5年間でやろうとしておるんですが,必ず聞かれるのは「これ,5年間で終わりますね」「1回切りですね,次はないですね」それから「愛知県からこういう要請があ ったらほかの県はどうでしょうか。ありますか,ありませんか」と物すごく心配されるん ですよ。
一応私どもは,CSRというんですか,企業の社会的責任というか,行政が言う話では ないんですけれども,できればそういうことで御対応いただけませんかという話をするん です。それも当然,無制限にはできない。本来的には,やはりこれは税金でやるべき話で はないかということが付きまといますので,そういう意味で,この財源の確保というのは, 今回,私ども緊急避難で5年に限って企業の御協力を得てやるということで,何とか今, 了解を得ようとしております。しかし,本当は,やはり財源をどうするかということは政 策があれば当然出てきますので,この中でもし書くとしたら,国も県も市町村もそうです し,そうでないとしたら別枠でもうちょっと,外国人の日本語の学習支援についてどうい う形で財政を措置したらいいのか,一番望ましいのかということを議論すべきであるぐら いのことを問題提起していただくのが,よいと思います。ちょっと心配しますのは,今, 私どもがやっていることはこのとおりで構わないんですけれども,都道府県だけかどうか は分かりませんが,正直なところ半端になる可能性があるということです。
○西原主査
分かりました。書くなら全部に書く,書かないから全然書かない。
○中神委員
そう思います。
○西原主査
いかがでしょうか,山田委員。
○山田委員
議事録に残ると思うので,それで構いません。事業が行われるために予算付けは当然のことだと。
○西原主査
そうしますと,都道府県のところからも財政的基盤の整備─今度,修正されて「財源の確保」となったところは削除して,かつ,この報告書が最終的に書かれるときの最終章ぐらいのところに,その部分について夢物語でもいいから,つまり「文化庁が責任を持って」ではないような書き方で財源のことに触れる。そういうことが必要であろうと。
○中神委員
もし書くとしたらですね。
これで最終的に報告書をまとめられると思うんですが,例えば今,前提として,基本法のようなものが何もないですよね。正に対症療法でやっているものですから,そういった意味では分かるんですけれども,これ,もし移民の関係で基本法ができてくれば全く話が違ってまいりますので,これはあくまでも現状を前提とした上での提言なり御報告であると思います。そういった意味で,今回の報告は夢物語ではないと思いますけれども,極めて基本的なことであるので,今後,検討していく必要があるということを付記していただければ,今後の議論につながっていくのかなという気がいたします。
○佐藤委員
今,中神委員がおっしゃったことで,政策と財源が一体化するというのは当然の話であって,これに説得力を持たせていくためには,人材養成にかかわって,財源を確保してやるんだということは玉虫色にしないで明記すべきだろうと思います。
○西原主査
それは,そうですね。
○佐藤委員
そこは確認してよろしいんですね。
○西原主査
「配布資料2」の(1)[1]国の担うべき役割に「必要である」と書いてあることが幾つかございますよね。その三つ目の○に「指針として…必要がある。」とありますが,地域と連携して,地域の特性に応じて具体化する人材を養成する必要があるというところは,今,事業化に向けて頑張っているんですね。
○佐藤委員
つまり私が言いたいのは,財源うんぬんというのを全部消すということは,適当ではないんじゃないかということです。
○西原主査
いえ,「必要がある」と言っていることは,やるということですね。山田委員が,「配布資料2」(1)[1]の下から2番目の○の「日本語教育が円滑に遂行されるように,財源を確保する」というところに「財源確保の努力をするべきだ」と書くべきだとおっしゃったことについて,中神委員は,都道府県からそのことを削ると同時に,財源うんぬんについては別に1章設けて,例えば政策と表裏一体だということを書くというか,そういうようなこともあっていいのではないかという御意見だと思うんですけれども,佐藤委員,それでよろしいですか。
○佐藤委員
それが確認できれば結構です。
○西原主査
「政策と財源確保は,表裏一体ですよ」とこの報告書の今年度最後のところに書けるかどうかというのは,事務局はどうなんでしょう。
○佐藤委員
事務局の判断に任せます。
「配布資料2」(1)[1]の最後の○の奨励措置のところで言うと,一つは「国は」「期待される」という,この主語と述語の関係が果たして妥当なのかどうか。それと,今,西原主査がおっしゃった,奨励措置のところで日本語教育の目標とか標準的な内容,方法ということが,この3行を読む限りなかなかそこは読み取れなくて,もっと積極的に,何らかの奨励措置が必要になるんだということが読み取れるようにしては,いかがですか。
つまり,学習者の動機付けをしていくためにもうちょっと何か,この最後の「これには」という最後の文を読むと,もうちょっと何か手当をするとか,もうちょっと積極的なことを読み取れてしまうような気もするので,もしも西原主査がおっしゃったようなことを入れるとすれば,「これには」というところに具体的な何かを少し入れる必要があるのではないかという感想を持ちました。
○西原主査
ここは,恐らく今年度最後の報告書には,後半の議論及び作業を踏まえて,かなり具体のことがここには書けるのではないかなと思いますし,少なくともこの審議会の,この小委員会の成果物としては,この部分が具体化するのは後半の課題だと私は理解しております。
それで,その予告が読み取れると佐藤委員がおっしゃるのは非常にいいことで,「何するんだろうな」と思ってもらう。
○佐藤委員
いや,玉虫色にするのではなく,もうちょっと何か積極的に,「何かやってくれそうだな」という。
○西原主査
積極的に「何かやりますよ」と書いておくというのが,必要だということでしょうか。
○佐藤委員
そういうふうに読み取れますのでね。そうすると,その「必要だ」というのがいいのかどうかということをあわせて確認したかったのです。
○西原主査
そうですね,一番最後の「参考資料1」を見ていただくと,今後の検討スケジュールの案が示されています。このような内容で報告書ができ上がっていくだろうということではなかろうかと思いますけれども。
○加藤委員
内容と方法にしても人材の育成にしても,さっきの財源に戻るんですが,何をやるにもやはりお金が絶対に必要です。これは長く続くものなので,どこでどのような付記にするかというところは私には分からないので,それはもうお任せだと思うんですけれども,何か今,移民の問題,それから留学生30万人計画と,いろいろ国として取り組むべき課題が出てきているにもかかわらず,国はどう考えているのかがとても見えないと思うんですね。状況だけ示されて,こんなことが分かるとされても,結局,私たち現場の者は,その一番下でそのつけを負っている立場にあります。
財源というものは政策と表裏一体であるということを意識としてだけでも,まず持たせていただきたいと思います。私たちは同じ教育という中にあって,その責任を負っていくために,そこには財源がくっついているものであるという意識を持ちたいと思います。
○西原主査
皆さん方が感じていらっしゃる潮流を整理すると,どこが何をしようとしているのかは,国もまだ分かっていない部分が多くあるが,その分かっていない部分について,文化庁国語課が「こうであろう」と予測したことを書き込むことは,この委員会としてはできないと思うんですね。つまり,30万人留学生が来るんですということになったとして,では,どうなるというのは,そうなったときには責任官庁というか,責任の所掌がはっきりすることであると思うんですけれども,それは「そうなるでしょう」とだれかが言っているな,首相が言ったなみたいなところでは,財源をどうしますということは言えないですよね。
それらのことを国というふうに包括されてしまうととても整理ができないので,一応文化庁というところで今は考えよう,そこであれば,かなり具体的なことが書けるであろう。そして,コーディネーターというところから始めるのが文化庁の審議会の中で,この小委員会が,また国語課が責任を持って明言できることではないかと思うんです。
ですから,言いたいことはここにもいっぱいあると思うし,私個人も「なったらいいな」というリストはいっぱいあります。
今年度後半にも私は展開が変わってくると思うんですが,事務局としてはいかがでしょうか。
○日本語教育専門官
西原主査御指摘のとおり,まず客観状況が今からも着々と変わりますでしょうし,今期末,来年1月末を想定すると,どこまで書けるのか今の段階では不透明というのは,正におっしゃるとおりでございます。
○西原主査
そうですね,国がやることが不透明だというのが,委員の方々の焦燥感とともにひしひしと感じます。例えば,高らかなラッパはいつ吹かれるのか,だれが吹くのか。つまり国の進むべき多文化社会・日本というのがどうあるのかということについて,だれが,いつ,何と言ってくれるのか分からないままに暗中模索をしていると加藤委員がおっしゃったと思うんですけれども,そこのところが,「だからみんなで言おうよ,文化審議会も言おうよ」というお気持ちだと思います。
○井上委員
福田総理が留学生30万人計画に大変熱心なのです。ですから留学生向けの施策は文部科学省がやるでしょう。それから高度人材は,法務省中心の話になるかもしれませんが,これも進みます。
問題は日系人です。今年はブラジル移民100周年なので,日系人の問題が随分取り上げられましたが,非常に情緒的な取り上げられ方で,多分来年になったらフェードアウト【fade-out】していくだろうと思います。ここで議論している日本語教育の問題は必ずしも日系人の問題だけではないけれども,生活者という視点で考えると,その割合の高い日系人の問題を,かなり強い調子で言っておかないと,留学生や高度人材の方に政策資源が回されて,こちらに回ってこないのではないかと危惧します。
子弟の問題,要するに初等中等教育の問題は別途,文部科学省の方でやっていますので,教育の枠組みの中で何らかの対策がとられましょうが,生活者・日系人というくくりになると,どこの府省が取り組むのかという感じがします。
○西原主査
そうですね。生活者・日系人という場合に,日系人30万人,そして生活者125万人,その生活者の中には留学生もいれば,労働者もいる訳です。
○井上委員
そうですね,研修・技能実習生もいますし。
○西原主査
国際結婚の配偶者の一方という,日本人として暮らしているような外国人市民もいますよね。その多様性を踏まえているのだと思います。むしろ入ってくるべき人材も見越して「生活者」と言っていると私は理解しているので,来年になればトーンダウンというのは,私には,考えにくいことなんですけれども,でも,そういう予測が立つのであれば,そうかもしれません。
○井上委員
非常にうがった見方かもしれないけれども,今現在,若干高度人材の方に振れかけているんですね,政府の対応は。
○西原主査
それはそうだと思います。
○井上委員
明らかに留学生,高度人材に向いていますよ。間違いなく。
○西原主査
それは私も察知しております。だからこそ,地をはうようなところですけれども,この部分をだれかが言い始めていないといけないと思うわけで,それが国是というものと実は大きく関係しているという,そこのところですよね。高度人材,日本では経済優先ですべての政策が決まるわけですけれども,そこには,やはり文化審議会であればこそ,てこ入れというか,そういうことが必要なのではないかなと思うんですけれども。
それで,文化審議会国語分科会についての,例えばメディアの注目度なんですけれども,漢字小委員会のことはすぐに新聞に出ます。けれども,日本語教育小委員会のことは,だれか何かやっているなというような扱いになっている。でも,言い続けないといけないという宿命なのではないかと思うんですけれども,そのときに,井上委員としては,財源のこともきっちりと言って,少なくとも,ここの範囲を超えたことであっても提言したらいいのではないかということですよね。
○井上委員
最後は文化庁の判断だと思います。
総合政策の「イロハ」の「イ」はやはり日本語教育でしょう。しかし,留学生や高度人材の受け入れに関していま議論されていることは,総合政策というアプローチではなく,わが国の経済社会活性化に彼らの力をどう活かすかというアプローチです。先日,ある大学から留学生を前に英語で日本企業への就職について話をしてくれないかという依頼があったのですが,私は断りました。日本企業に就職するなら日本語ができなければどうしようもないのではないかという問題意識なのですが,極端なことを言えば,留学生や高度人材に日本語を覚えてもらう必要はなく,日本人が英語で彼らとコミュニケーションをとれるようにすべきだという意見も聞かれるところです。日本人,日本社会が国際化せよと言うことですね。
そうした意見を持っている人たちに,総合政策の「イロハ」の「イ」は日本語教育なのだということを理解してもらう。そこに政策資源,すなわち予算がつかないといけないということを,ここで書くのは当然ではないかと思うのです。
○内田委員
今までの議論を伺わせていただいて,確かに一昨日と昨日,産経と朝日から取材があって,漢字の政策をどうするのかインタビューを受けたんですけれども,おっしゃるとおりで,やはり日本語教育のところをもうちょっと訴えていかなければいけない。
留学生30万人計画は,予算措置はしないけれども,各大学で入れるようにという物すごい圧力がかかってきております。今までの議論を伺わせていただいて,政策と財源の獲得は一義的であると中神委員がおっしゃったんですが,やはりナイーブ【naive】な読者から見ますと,やはり「配布資料2」(1)[1]の下から二つ目の○につきましては,山田委員が言ってくださったように,これは主語が「国」なので,「国は,」そして「地域における日本語教育の体制の整備を支援する必要がある。」これが述語になっているわけで,この「体制の整備」の前にやはり中身を,当たり前のことかもしれませんが,「何らかの予算措 置を講ずるなど」という文言をここに入れて,「地域における日本語教育の体制の整備を支援する必要がある」という姿勢を明示していただいた方がよいのではないでしょうか。
これ,一義的に読めるかというと,そうではないのではないかという気がするものですから。
○西原主査
確かに予算措置は,少なくともコーディネーター研修については頑張っているわけですよね。そこのレベルのことであっても書くべきだ,そういうことになるかと思いますけれども。
○内田委員
それで,先ほど佐藤委員が,一番下の「これには,直接学習者に対するものと」と書いてあるところで,もう少し具体的にと言われたんですが,ここで修飾的に入れるよりも,その前のところを「提示する必要がある。」と端的に言い切っておけば,続けて「これには,」というのがあるので,その中身をちゃんと盛り込んでいくんだぞという姿勢が表れるのではないか。
やはり長くすることで全体のニュアンスがぼけてくるので,ここはむしろ端的に,必要があるという姿勢を明示された方がいいのではないか。
先ほど,これが文化庁の事務所掌の範囲に入るかどうか,いろいろとお迷いであるみたいなことは承ったのですけれども,やはりここは,西原主査のような視点からきっちりと言った方がいいのではないかと思います。
○西原主査
そうしますと,事務局の非常な御懸念を感じつつ,「配布資料2」(1)[1]の下から二つ目の○の国は,日本語教育を支援する必要があるというところに,何でしょう…
○内田委員
「何らかの予算措置を講ずるなど」。
○西原主査
「何らかの財源を模索するなど」。
○内田委員
「模索」は,ちょっと…。
○西原主査
「措置する」でもいいんですけれども,何かお金のことを一言,言いましょう。
「必要がある」の中身は,もしかしたら「カリキュラムをちゃんと提示する」かもしれません。そして3ページの財源の確保は,都道府県の方からは削除します。当たり前のことですが,お金がないと何もできないというのは,確かにそうなんですよね。本当にそうなんですよね。
○中野委員
「配布資料2」(1)[1]の四つ目の○の文言ですが,「日本語教室が開設されていなかったり,あるいは開設されていても内容がそぐわなかったりという状況を改善し,学習のニーズにこたえる学習者ニーズ」とありますが,後半の部分は,「学習者のニーズにそぐわなかったりする状況を改善し,学習者のニーズにこたえることができるよう」と言う方が理解しやすいかと思います。
それと確認ですけれども,「配布資料2」(1)[1]の最初の○と2番目の○にある,「日本語教育の目標とか内容・方法,あるいは能力の測定方法」というのは,報告書の前章の「内容の改善」のところで十分に述べられるわけですよね。この章の内容の中心は体制整備ですので,最初にある都道府県が担うべき役割と同じように,一番大事なものが一番最初に来た方が分かりやすいのではないかと思います。
○西原主査
ということは,下から2番目の○を一番上に持ってきなさいと。
○中野委員
私は,国の担うべき役割は,地域における日本語教育の体制整備の在り方を指針として示すとともに,日本語教育の体制整備を支援することにあると思います。つまり,指針を示し,支援をすることが国の一番大きな役割ということです。
○西原主査
一番最初の○では不十分だということですか。
○中野委員
不十分というよりも,まず一つは,体制整備の在り方を指針として示すということですね。それと同時に,その体制整備を支援することを冒頭で明記してはどうでしょうか。
○西原主査
下から2番目の○を1番目の○の前に出す。
○中野委員
はい,それが一番大きな目的ではないかと思います。全体の書き方としては,「以上のように」と,最後でまとめる書き方ではなく,一番最初に結論を出す書き方をとっているので,その方がよろしいかと存じますが。
○西原主査
そうすると,下から2番目の○を1番目に上げて,順序を変えましょう。いかがでしょうか。
順序を変えることについて,ほかの委員の方々はよろしいでしょうか。
分かりました。ちょっと時間的なことがございまして,市町村,都道府県については随分見え消しがあるんですけれども,中神委員,これについて何かおありでしょうか。3ページのあたりでございます。
○中神委員
特にございません。
○西原主査
市町村の方についても,よろしいですか。
○中神委員
この中で,例えば場合によっては県が市町村の,先ほどおっしゃったように逆もあるというような形で,いろいろバラエティ【variety】はあると思うんですが,多分ここに書かれていることは,このとおりだと思います。
○西原主査
それでは,今度は「配布資料2」(2)の連携の話に移らせていただきます。
3ページの書きぶり及び内容について,何か御意見はございますでしょうか。
ここに至って学校のことですとか,NPO,ボランティア団体とか具体的に,国及び都道府県,市町村が連携する相手が示されているわけですけれども。
○岩見委員
この連携の相手先としても,やはり日本語教育機関が明記された方がよろしいのかと思います。
○西原主査
どこの部分に入れたらよろしいでしょうか。
ここに「日本語学校」と入っているものを書きかえるということでしょうか,「配布資料2」(3)の2番目の○の。
○岩見委員
やはり「日本語学校」ではなく,先ほどと同じように「日本語教育機関」とした方がよろしいと思います。
それから,「配布資料2」(3)の2番目の○には入っていないですね。
○西原主査
「そこで,都道府県及び…」というところですね。
○岩見委員
ここも同様にしてはいかがでしょうか。
○西原主査
先ほどの「大学や研究機関の研究者,企業人,」というのと同じところの文言,つまり「大学や研究機関,日本語教育機関」。
○岩見委員
はい,入れたらいいと思います。
○西原主査
ここの「在住外国人等」というのは,是非入れるということで,この間御議論があったところだと思いますけれども。
○中神委員
「配布資料2」(3)の最初の○ですが,最後の行で「あくまでも指針であって,現場にそのまま適用できるものではない。」と。これは書き方によると思うんですけれども,「あくまでも指針であって,現場の状況に応じて必要な修正を加えるものとする。」としてはどうでしょうか。。余りにも自己否定ではないかという感じがしますので。
○西原主査
そうですね。私は,これは学校の指導要領のイメージで読んだんですけれども,つまり,中神委員のおっしゃったとおりでございます。
文言をもう一度おっしゃっていただけますか。
○中神委員
「現場の状況に応じて,必要な修正を加えるものとする」といったニュアンスで。
○西原主査
それでよろしいでしょうか。その方がよろしいですよね。
○中神委員
もう一つ,これはないものねだりなんですけれども,「配布資料2」(2)の四つ目の○で小学校,中学校等々と書いて,要は連携の形のイメージだと思うんですけれども……。よろしいですか。
実は前回の議事録を読ませていただきましたが,生活者としての外国人ということで,児童生徒も含めて議論するというふうになっていると思います。イメージとしてはこの連携の形でよく分かるんですけれども,多分,文化庁さんがこれからされようとしてみえる社会人を中心とした日本語教育というのは,非常に難しいというんでしょうか,むしろ小学校,中学校といった教育機関とは余り関係のない形でやっていかざるを得ないのではないかという気がするんです。
といいますのは,児童生徒の教育を少しでもバックアップするという話になりますと,学校というコアがございますから,その後に,例えばアフタースクールをやるとか,いろいろな手当ができると思うんですが,成人の教育中心の話というのは多分,既存の教育機関とは関係ないところでやられるような気がいたします。ですから,例として何かここに載せるのがよいかと…。
○西原主査
例というよりも,多種多様な日本語を必要とする人々の中の,子供の部分について言及しているということですよね。そうしますと,中神委員としましては,一般の大人を例としてというか,その連携のことを書いたらよろしいと。
○中神委員
と申しますのは,なかなか大人の教育となりますと,実際にどんな形でやられるかというと,余り標準的なモデルがなくて,これは例としてはまことに分かりやすくてイメージを作りやすいんです。もしあればこれに加えて「例えば,大人の教育の場合はこれこれこういった連携が」という,これは今すぐは難しいと思いますけれども,そのようなものが載せられたらいいかなと思います。
○西原主査
そうですね。この小委員会でヒアリングの対象になった昨年度の例を見ても,例えば,来ていただいた新宿区とか浜松市とか,そういうところにおいて既にいろいろな形の実践例がありますよね。
○中神委員
もしうまく載せていただければ,当然指針が出ればこれに対する具体的な適用に入ることができるわけですから,既に参考例があればそれも併せて載せていただければ,イメージがとらえやすいかなという気がいたしますので。
○西原主査
そういたしますと,どうしたらよろしいでしょうね。前年度は武蔵野市,新宿区,浜松市がヒアリングの対象になりましたよね。それぞれに「これは」というような実践例が示されてはいました。「私たちはこうやっています」というのは示されましたけれども,それはこの○の中に含まれていると考えて,これだけの書き方になっているのですよね。それをどういうふうに包み込んだら,この○として,つまり,今回のまとめとして適当なものなのでしょうか。
○中神委員
すみません,今回のまとめでは無理かもしれませんので,まだ今後,若干時間がございますので,もしそのような形で具体的な例をこの中にも反映できるようでしたら,どうでしょうかということで。
○西原主査
そうですね。
これは連携の話をしていますので,例えば,それぞれが連携という形をとっているわけですよね。新宿区の場合も武蔵野市の場合も「自分たちだけでやっているのではありません」ということであったかと思うのですけれども。
○岩見委員
実態は,多種多様な連携でありますので,それが「配布資料2」(2)の三つ目の○の「企業,その他関係団体とのネットワークを形成し,」というところに含まれるのかなと思いますけれども。
○西原主査
そうしますと,まず,「配布資料2」(2)五つ目の○は「市民社会に,」かもしれないし「日本社会に,」かもしれないけれども,市民社会に共同参画してくる新市民というか,何というか,そういう方々に対する日本語教育支援とする。そして三つ目の○「それぞれのレベルで地域における…」と続く。この「市町村は,」の後に何か一言「だれだれを対象にして」というのを入れておくとよいのではないでしょうか。
○山田委員
「成人に対する」と言うだけでいいのではないですか。
○西原主査
「成人に対する日本語支援に関して,それぞれのレベルで……」とすると,そこは大人です,その下は子供ですという話になりますでしょうか。
それと,連携の対象として,外国人団体というのをどこかで書く必要はないのでしょうか。
○岩見委員
そうですね,将来的に,外国人の団体が支援する側にも立っているという例もこの間も出ました。
○西原主査
そうですし,例えば藤沢市とか何かもそうですし,浜松市もそうなりつつあったり,そういうようなことがあります。
○岩見委員
このネットワーク自体の中に,それを明記することは賛成です。是非。
○山田委員
非常に賛成です。
○西原主査
川崎市などは,すごいですものね。
どこに入れたらよろしいですか。「NPO,ボランティア団体,企業,外国人団体及びその他関係団体」ですか。
ほかに4ページ,5ページでは。
○尾﨑委員
議論している「配布資料2」(2)の下から二つ目の○の「さらに,」というところで,一番最後の「一般市民の参加が必要不可欠である。」というこの「参加」は,一般市民が何に参加することが必要不可欠なのでしょうか。
○西原主査
日本語教育の促進ではないでしょうかね。
○尾﨑委員
ということは,具体的に何をイメージすればいいでしょうか。ボランティアになることでしょうか。この文章は「日本語教育の促進には,ボランティアや専門家のほかに,」と書いてあるんですが。
○西原主査
私は,ボランティアにもならない,ただ隣に住んでいる外国人に対してコミュニケーションをとろうという意識を持つと,そういうイメージで一般市民の参加なんだと思うんですね。
○尾﨑委員
でしたら「参加」ではなく,もうちょっと言葉があるかなと。
○西原主査
その言葉は何でしょう。
○尾﨑委員
「一般市民の多文化に対する理解の促進を図る」とか,何かそういう感じ。
○西原主査
「理解」ではなくて,私はコミュニケーションの方法を含めて,何でしょう…。
○山田委員
コミットメント【commitment】する。
○西原主査
コミットメントというか,何かそういうことだと思うんですが…。
○尾﨑委員
それでもいいと思います。
○西原主査
いい文言がよく分かりません。
○尾﨑委員
一般市民の参加と言われると,ちょっと。
○中野委員
多文化共生の社会をめざした日本語教育というのは一番大事なところですよね。それで「一般市民の参加が必要不可欠である」とい。うところを,少し強調できたらと思います。「一般市民が日本語教育に参加するとともに,外国人と相互理解を図る努力をする必要がある」としてはどうでしょうか。日本語教育の促進に一般市民がただ参加するだけではなく,日本語教育という場で日本人と外国人が交流していくという観点を入れたいです。一般市民に,まず外国人への日本語教育に関心を持ってもらうことが一つ。それと,いわゆる交流を図っていく,そういう努力を促す表現をここに入れたらどうかと思うのですけれども。
○西原主査
具体的には,どういう文言にしたらよろしいでしょうか。
○中野委員
「一般市民の参加が必要不可欠である。」をそのまま置いておいてよければ,その後に「国,都道府県及び市町村は,一般市民の日本語教育に対する関心,理解を喚起し,さらに外国人と一般市民との相互理解を図る努力をする必要がある。」という感じはどうでしょうか。
○西原主査
連携の話をしているので,やはり主語が「国,都道府県及び市町村」というのだと,ずっと上の方に行ってしまいますよね。
○中野委員
最終的には,市町村だと思います。
○西原主査
この連携の中で一般市民がどういう位置にあるかというと,連携の輪の中に入ることになると思うんですけれども,ということは,「連携」を主語にして一般市民にまで執行されるべきだ,そういうことであればいいんですよね,このチャプターは。
○中野委員
そうですね。そして連携を図ることに,だれが責任を持つのか。
○西原主査
責任は一般市民が持つんだと思うんですね,私は。市民が自覚して意識改革する,そういうことだと思うんですよね。
○中野委員
それが最終的な目標ではあります。
○西原主査
それは連携の中で行われると,この章のところはまとめていただきたいんですけれども。
○中野委員
連携の中に位置づけるわけですね。
○内田委員
お気持ちはよく分かるんですけれども,やはり○の中には一義,パンと伝わってくる方が訴える力があると思います。ですから,もし今のことを盛り込むとすると,この部分に続けるのではなくて,1つ○を加えて明確に「異文化に対する理解,交流を促進するよう」というように入れられるとよろしいかと思います。
やはり1つの○の中に幾つものことがありますと,どうしても焦点がぼけてきてしまうので,やはりちゃんと伝わるようにしていただきたい。趣旨はとてもよく分かりますけれども。
○西原主査
「配布資料2」(2)のところが何を目指しているかというと,文化庁が獲得してこようとしている予算につながるんですよね。ここはとても大切なところで,実は市民の参加うんぬんは重要なことなんだけれども,この文脈の中では,そこに力点が行き過ぎるのはちょっとまずいんです。
何につながってほしいかというと,地域の日本語教育で必要とされる機関及び人材とその役割を養成するためにコーディネーター研修をするので,そこに予算が必要だということ,そこなんですよね。その中で,一般市民の参加というのはどの位置で論ぜられるとよろしいでしょうか。
○内田委員
今のままで。「コミットメント」の方がよければそうですけれども,私はコミットメントの意味も「参加」で十分入ってくると思います。だから,このままの方がパンチは効くと思います。
○西原主査
中野委員は,いかがでしょうか。内田委員からの御発言を踏まえて,さっきのお知恵に加えることがございますか。
○中野委員
多文化共生の観点から一般市民が日本語教育の促進にどのようにかかわるか,短く言えるといいのですが。
○西原主査
そうですね。○の中で,「地域における日本語教育は,」ということなので,ここにはいろいろな人が入りましょうよということなんですね。そして,その連携の中で,一般市民というのはこれから大いに参画するべき人なんですよね。ただ,それは「だれがやらせるか」ではなくて,自らがやるわけですよ。
○山田委員
記憶が薄れてしまって,議事録も昔のものを読んできていないので分からないんですけれども,コーディネーターというところで,多文化コーディネーターというような機能もそこに入っていて,そのコーディネーターは,今,言っていた外国人に対する何らかの支援というようなことをどう調整していったらいいか,そういうところに力を発揮するだけでなくて,日本市民側の受容能力を高めていくという機能も,ある意味でコーディネーターが果たすべきだといったことは前に申し上げたつもりだったんですけれども……
○西原主査
そこのところは,この間,私個人が事務局の御説明を伺ったときに,それに加えてシステムコーディネーターとかプログラムコーディネーターといった区別もあったのですけれども,今回は,特にこれを予算化するようなところで,あえて具体化しないという方策をおとりになるということを伺いました。つまり,総合的に考えてコーディネーターの養成をする。そこで全部の機能が一人に集約される場合もあるし,1部署に集約される場合もあるし,そのこと自体は育ってくる人材が考えることでもあるといったことを考えると,あえて「どの種類の」とは言わないで「コーディネート機能」と考えたいということだったので,それで私は納得したんです。そこはよろしいですか,そのようなことだということで。
私はロビーも入ると思うんですね。政策に対するロビーもコーディネートだと思うんです。「では,それは何なの」というと,それはちょっと……。今,中神委員はロビーもやっていらっしゃいますよね。ロビー活動というのは,何というのか,議員さんの間を走り回ってという政策形成に関する活動なわけですよね。
○尾﨑委員
先ほどの一般市民の参加うんぬんのところですけれども,今回の文章は,あくまでも途中の経過報告ですので,この部分について,私は特に修正は求めません。ただ,これは非常に根本的なことなので,最終報告についてはもうちょっと中身を練った形でやっていただけるのであれば,差し当たり,今回については私はこれでいいかなと。中野委員からいい文言が出てきて,事務局がうまく取り込んでくだされば,それはもっとハッピーだということで,私はこれでいいと思います。
○尾﨑委員
もう一つ,「地域の指導者」という言葉があるんですが,この前にあったような記憶がないんです。ちょっと私も怪しいのですが,今回,「配布資料2」(1)の[1]国の担うべき役割のところで,下から三つ目の○です。ここに「地域の指導者」という言葉と「指導者の指導者」という言葉が出てきて,分かる人は分かるけれども,分からない人はこれをどう解釈するのかなということが…。
○西原主査
前の「指導者」は,日本語教育の指導者ですね。
○日本語教育専門職
ここは,新たに加えたものですので。
○尾﨑委員
「地域の指導者」というのは…。
○西原主査
「日本語指導者」と言った方がいいですか。
○内田委員
ええ。「日本語指導者に適切に指導助言できる…」。
○西原主査
「日本語支援者」は。
○尾﨑委員
ここら辺は用語が人によってずっと動いてきて,一時期は,こういう表現はどちらかというとふさわしくないだろうという議論もあって,模索してきていますので。
○西原主査
「指導者の指導者」というからには,最初は「指導者でないと困る」という。
○尾﨑委員
これはどう表現したらいいか私自身も整理がつかないんです。
○西原主査
そうなんですよね。私も言語教育に関係していて,どんどん持って回った言い方をするようになっていますよね。例えば「日本語母語話者」「日本語非母語話者」とか。そうすると,読む人は「それって一体何のこと」というのが来て,例えば「日本語支援者」という言い方を,「教師は支援者なのです,黒子なのです」みたいな言い方を業界ではみんな納得しているので「日本語支援者」というと「あ,そうなんだ,教える人も含んでいるんだな」と分かるんですけれども…。
○内田委員
素人には「支援者」は理解できませんよね。
○西原主査
そうですよね。だけれども,実は学校教育の中でも「指導者ではなく支援者であるべきだ」みたいな議論があって,共に育つみたいな議論があった上で「支援者」と言っている。
それを踏まえて,尾﨑委員,これはどうしたらいいでしょうか。
○内田委員
「日本語指導者」でよろしいのではないでしょうか。「日本語指導者に適切に指導,助言できる「指導者の指導者」…。
○尾﨑委員
そういう人を育てることは大賛成ですので,そのように,文字どおりに受け取って。それはそれで結構だと思います。
それから,「指導者の指導者」は国が養成する必要があると書かれていますので,ここら辺のことを,今,いろいろ御苦労いただいていると理解すればよろしいですか。
○西原主査
予算をとってこようとしているということですね。
この委員会で秋に作るカリキュラムリストの中で,それはコーディネーターが知るべき知識の一つというふうになるはずです。
ただし,今,「コーディネーター」にシステムコーディネーターもプログラムコーディネーターも含んでしまいましたので,システムの方は,例えば中神委員が指導者になって,彼が一体何をしているかを教えてくださるというような部分も含むと思うんですね。つまり,どこを押さえれば何が出てくるかみたいな,何というのか,行政官としての働き,そういうところも含むので,「指導者の指導者」ということだけではない部分もたくさん含まれると思うんですけれども。
○尾﨑委員
「地域の指導者」と言ったときに,実際にいろいろな活動をするときに直接参加して,外国の人と一緒にやるような人も含まれるし,プログラムをコーディネートするような人も含まれるし,非常に大きな概念を「地域の指導者」という言葉で表している,そういう理解ですね。
○西原主査
そうだと思いますけれども。
○日本語教育専門職
尾﨑委員から御発言があったように,やはり事務局の中でも「支援者」と呼ぶか「教師」と呼ぶか,「指導者」と呼ぶか,いろいろな文言が使われておりまして,検討した結果,日本語教育小委員会の立場としては「指導者」という言葉を使うと。
その中にはボランティアとしてかかわる人もいれば,いわゆるプロフェッショナルとしてかかわる日本語学校の先生等もありますので,そういうものを広く拾ったつもりでございます。
○中野委員
これを全部読んで,いわゆる日本語教育の内容・方法を地域で実践できる人材,「人材を養成する」と最初に出てくるんですね。その後,今度は「日本語教育を事業化し,推進できる人材」。いわゆる内容と事業化精神と二つ出てきまして…。
○西原主査
システムコーディネーターとプログラムコーディネーターと言わないために,こうなってしまう。
○中野委員
でも,それが最後に「地域の指導者」という言葉と「コーディネート機能を果たす人材」と,人をめぐって四つ出てきて,それがちょっと分かりにくくしているところかもしれないので,何か一つ統一した言葉の方が分かりやすいなと思うんですけれども。ともかく四つありますね,今。
○西原主査
また順序を変えますか。
○日本語教育専門職
前回の会議で尾﨑委員が,コーディネーターが指導者になることもあるといったことをおっしゃいました。事務局といたしましては,コーディネーターと指導者が必ず一つでなければいけないとは考えておりませんで,尾﨑委員が言うように,コーディネーターの中で指導者になる人もいるかもしれませんけれども,ここで言う指導者というのは,いわゆるコーディネーター,コーディネーション機能を果たす機関及び人材とは別に考えて使っております。
○西原主査
そうですね。これは「教師の教師」というような言い方とか,いろいろな言い方を過去にもされてきていると思います。ですから,そのことを踏まえないで読んでいる方と,そういうことを踏まえて読んでいらっしゃる方と,それから教育界の動向というか,そういうものを踏まえて読んでいらっしゃる方とは全然読み方が違うと思いますので,これが独り歩きすることへのおそれは,そういうところにあるのかなと思います。
専門用語を駆使して分かりにくくしてしまって,素人の方には何のことかよく理解できないということも避けたいところがございます。
この形で31日の国語分科会総会には出させていただきます。そして,これはそこで配布資料になる。委員の方々には,会議の席でこれが目に留まる形となるかと思いますけれども,そこまでのところで,今日の御議論を踏まえてさらに事務局に整理していただくということでよろしゅうございますでしょうか。
それでは,31日国語分科会総会で審議経過説明をさせていただけますけれども,その間に委員の方々とやりとりすることは,恐らく不可能かと思いますので,今日の御議論が最大限反映される形で配布資料を作成いたしますことを,事務局と西原主査に御一任いただけますでしょうか。
文化審議会の総会の場で今,あったような御議論,つまり「国」というのをもうちょっと言えとか,それは御自由に御発言いただいていいと思うんです。つまり,もうこれになってしまったから,これにかかわった委員はこれ以上何も言ってはいけないということはございません。もう少し大きな場になるというところで,今日の御議論を,もうちょっと根本的なことを話し合いましょうという御議論は,大いに展開していただいてよろしいのではないかと私は思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,定刻の少し前でございますけれども,第11回の日本語教育小委員会を閉じたいと思います。御協力どうもありがとうございました。

15:54閉会

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