議事録

第12回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成20年10月2日(木)
14:00〜16:00
旧文部省庁舎第1会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,井上,岩見,尾﨑,加藤,佐藤,中神,中野,西澤,山田各委員(計11名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第11回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 日本語教育小委員会の今後の検討スケジュール(案)
  3. 聞き取り調査の実施について(案)
  4. 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標(案)

〔参考資料〕

  1. 地域における日本語教育の体制整備について
  2. 「生活者としての外国人」に必要な日本語の位置付け(イメージ)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 事務局から配布資料2「日本語教育小委員会の今後の検討スケジュール(案)」についての説明があり,了承された。
  4. 事務局から配布資料3「聞き取り調査の実施について(案)」についての説明があり,資料で示した調査対象の聞き取りと豊田市と川崎市の情報を収集することが了承された。
  5. 事務局から配布資料4「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標(案)」及び参考資料2についての説明があり,日本語教育の目標に関して意見交換を行った。
  6. 次回の日本語教育小委員会は,10月27日(月)の10:00から12:00まで旧文部省庁舎2階第1会議室で開催することが確認された。
  7. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
今回は,今期の第6回文化審議会国語分科会日本語教育小委員会でございます。昨年度の発足当時からですと12回ということになります。
配布資料3「聞き取り調査の実施について(案)」でございますが,委員の方々は今期前半の話合いの中ではヒアリングをする,いろいろな方に来ていただいて,それぞれのところで行っていらっしゃる生活者に対する日本語教育の内容をお話しいただくということでございました。けれども,そのために1回時間を費やすことがいかにも難しい。そういうふうにしている時間が惜しかろうということになりましたので,それらの情報は事務局で独自に調査を行い,資料を用意させていただくということにしようということでございます。
○日本語教育専門職
今,西原主査から御説明いただきましたように,関係者を日本語教育小委員会にお呼びしてヒアリングをするというようなことを予定しておりましたが,事務局で調査を実施したいと考え,調査票を作成いたしました。それが配布資料3の別紙になります。こちらを用いまして,事前に調査対象となるところに送付し,御回答いただく,その後,さらに事務局が調査対象のところまで出掛けていって聞き取り調査を行う,それを次回日本語教育小委員会で報告したいと考えております。
調査対象といたしましては,こちら,配布資料3にございますが,五つほど挙げさせていただいております。こちらにつきましては,本日委員の皆様方に御意見を頂きまして,決定したいと考えております。標準的な内容について審議していただくに当たりまして,資料となるものをこの聞き取り調査において作成したいということが趣旨でございます。
○西原主査
ただ今御説明にありましたように,既に「生活者」としての側面をターゲットにした日本語教育を行っている機関があります。その教育内容,「どういうふうに」というhowよりは「何を」というwhatというところに注目して情報収集をするということを目的にして調査を行ってくださるということでございます。ヒアリングでなく事務局が聞き取りを行い,資料の用意をするということについて,御了承いただけますでしょうか。(了承される。)
次に調査対象でございます。配布資料3に五つ候補が挙がっておりますが,この生活者としての側面を持つ外国人に対して教育を行っているところというのは委員の方々たくさん御存知ではないかと思うのですけれども,それらを含めまして,御意見を賜りたく存じます。
○加藤委員
配布資料3の調査対象に日本語学校と書いてあるので,まず最初に発言をさせていただきます。日にちもないことですので,そんなに遠くないところというと,私が今思い浮かぶのは,新宿日本語学校です。そこで(土)(日)に日系人向けの教育というのをずっと行っているというのを知っています。カリキュラムも,実際にブラジルで教えた経験のあるものをもってテキストを作っているということも実際見聞きしていますので,いいんじゃないかと思います。ほかに知っているところとすると,これは学校自体がしているのではなく,その中にNPO法人が入ってということと聞いておりますが,文化外国語専門学校の中で最近始めたようなことを聞きました。 あとは,遠いですが,名古屋や大阪の日本語学校では実際に生活者のための日本語教育を実施しております。
○西原主査
山田委員も地域に深くかかわっていらっしゃいますけれども,ほかに対象とした方がよいところはありませんか。
○山田委員
最近こういう人が来ているという話は聞くんですけれども,それ用の対応をしっかりやっているというふうに聞いている所を,私は知らないんです。
○西原主査
川崎市では,いかがですか。
○山田委員
川崎のある日本語学校なんですけれども,以前は学齢を超えている高校進学希望の者も受け入れていたようなんですが,今はいわゆる就学生だけで入学定員を超えていて受け入れていないようです。「生活者としての外国人」の成人を対象にした川崎の日本語学校を,私は知りません。
○西澤委員
日本語学校全体の機関として日本語教育振興協会がありますので,一度そちらにそういうような特別な課程を設けてやっている所がないか御照会いただいた方がいいのではないでしょうか。多分最新情報はそちらで持っておられるんじゃないかと思います。
○西原主査
加藤委員は日本語教育振興協会の役員でいらっしゃるので,情報をお持ちかなと思ってお聞きしました。
ただ,日本語教育自体を日本語教育振興協会そのものがやっているのではなくて,傘下の団体,学校がやっているということでございます。国際交流基金では,いかがでしょうか。
○西澤委員
国際交流基金もいろいろなところでお手伝いはしていますけれども,直接「生活者としての外国人」に対して教育をするというようなことは,やっておりません。いろいろな教育機関等で日本語を教えていらっしゃる委員の方々との接触の中でいろいろな情報が入ってきますけれど,特に特定の機関がやっているよというようなことは聞いておりません。
○岩見委員
質問ですけれども,AOTS(海外技術者研修協会)は研修生事業ということでお願いをするのでしょうか。あるいは,国際交流基金でもやっていらっしゃる,介護,看護士,両方ということでございますか。
○西原主査
AOTSは技術研修に出る前の研修をやっているところが,生活者としての一般的なというところなんです。介護というのは,もしかしたら健康・安全にかかわる部分ということになるところなのかもしれません。
○尾﨑委員
豊田市には,豊田日本語学習支援システムというのがあって,ここは豊田市が責任を持って市の予算で動かしています。もともとはトヨタ自動車からの寄附金で,私の聞いている限りでは,1億円を地域の,豊田市在住の外国人のために使うという枠組みです。去年の10月から予備調査が始まって,今年の4月から実質的にプログラムが動いているんですけれども,初年度ですから,今のところ今年度を含めて5年計画で,豊田市に暮らしている日系ブラジル人の日本語のレベルアップを図るということで,企業の中に教室を新たに開いてもらうということ,もう一つはコミュニティの中で集住地域等に教室を開いてもらって,そこで行われる日本語教育を日本語教育の専門家がチームを組んでバックアップするということで進めています。今,専門家と言ったのは,名古屋大学の留学生センターの教員,それから大学院生,それから名古屋地域で実際に日本語を教えていらっしゃる方たちにお声を掛けて,多分,延べでいうと50人近くの人が何らかの形でかかわりを持っているんですけれども,そういうチームと,それから一般市民の方にもサポーターという形で協力者に入っていただいて,それから企業の従業員の方に,教室を開いている企業の従業員の方にもサポーターとして入っていただいて,動かしています。
目標として,日本語のレベルを一応決めています。ヨーロッパの枠組みを参照して,ゼロから始まって6までのレベルを設定していて,プロジェクトの人たちは要支援レベルと言っていて,それは周りの日本人がいろいろ工夫して助けてくれればコミュニケーションが成り立つような,そのレベルまで,ゼロから何とかレベル2まで持ち上げるという趣旨のプログラムを動かしています。コースデザインのチームとか,それから口答能力評価のチームとか,今七つぐらいチームがあって,それぞれやっていますし,それからeラーニングということで,ホームページを開いて,そこに学習素材も載せるように作業が始まっています。ですから,非常に具体的で,ただ手探り状態です。何かはっきりしたものが出るのではなくて,豊田市がどういうことを考えて,何をやろうとしているかというのは,ここでも情報として持っているのは参考になる,そんなふうに思います。
○山田委員
多文化共生センター東京というところでやっている活動は,学校関係といえば非常に注目されていると思います。
○西原主査
もう少し詳しく教えていただけますか。
○山田委員
中学校から高校へ行くときに,義務教育ではないので日本人の子供たちも試験を受けるわけですけれども,その試験を受ける力を付けていくための,中学レベルの生徒たちに対する支援と,それから中学校卒業の年齢は超えているんだけれども,その後学校につながりたいという人たちの支援を行っているところです。
○西原主査
今年の文化庁日本語教育大会の基調講演の発表の中に国際放送向けの映像が入っていましたね。
○杉戸副主査
内容,方法そのものについて議論するときに求める情報なのかと思いつつ申し上げます。配布資料3の別紙を見ると,コースを単位にして,具体的なコースでどういうことがどういう枠組みで行われているかということをヒアリングするということなんですが,これは非常に具体的な情報として必要だと思うんです。また,これらがもう一段抽象的な,どんな枠組みで構成されて企画されたコースなのかという,その枠組みについての情報を集めるようなことが必要ではないでしょうか。先ほど尾﨑委員の御発言を伺いながら思い付いたことなのですが,そういう一番抽象的というか,場合によっては理論的というか,コースをデザインするときの基本的な考え方がどんなふうに多様性を持っているかという情報が集められるといいと思うんです。
○西原主査
それは配布資料3の別紙の「1 学習目標」とは別にですか。
○杉戸副主査
目標も含まれると思うんです。その目標について,どういう項目を気にしながら,どういう事柄を気にしながらコースをデザインしたのかという,その基になるような枠組みということです。ついては,ちょっと回りくどいんですけれども,国立国語研究所で,「「生活者としての外国人」に対する日本語教育」という言葉ではないけれども,「生活者について考える」という日本語学習についてのことを,基本的なデータを収集するという段階も含めて進めています。
私の立場からすれば,そのことをいつ,御協力できるかということです。それを見ながらこういうコースの,非常に具体的な情報を検討するとか,整理するということが必要だろうと思っています。
当事者も今日傍聴に来ていますので,また研究所に戻って,今どういう情報が集まっていて,この情報収集と並行して次のこの日本語教育小委員会に提出,あるいは,次の次の日本語教育小委員会に提出できる情報としてあるのかということを,また戻って考えます。調査票を意識して今手持ちの情報が出せるところとして国語研究所があるとい うような気持ちがあります。
○西原主査
調査の対象となる機関,例えば難民事業本部は,教育に当たっての哲学に当たるところをそれぞれお持ちで,その調査対象のほかに,日本語教育学会などが,文化庁が実施している事業の委託先となって研究を進めてくださっているところです。一方で国立国語研究所は御自身のプロジェクトの中でそのことに取り組んでいらっしゃる。今度の調査対象となるこの機関と,それらの,既に先行している御研究とはどういうふうにかむことになるのでしょうか。
○杉戸副主査
非常に具体的な情報が次回出されるんですね。もうちょっと抽象化された枠組みとしてのいろいろタイプがあると思います。冒頭,事務局から生活者としての外国人に対する日本語教育の標準的な内容・方法の具体的なものではないけれども,骨子をまとめることが目標だというお話がありました。その骨子をまとめる上で具体的なものと理念等がぶつかり合う,その真ん中辺が骨子だろうと想像しながら,具体的なものも集めつつという,そういう関係ではないですか。
○西原主査
そういう御意見でございます。学会もそのことに取り組んでいらっしゃいますね。それぞれ,国立国語研究所日本語教育基盤情報センター学習項目グループ長の金田研究員には,以前この日本語教育小委員会に来ていただいて既にお話しいただいております。それから,学会の報告書についても,一部尾﨑委員にお話しいただいたことがございます。
○日本語教育専門職
実際に聞き取り調査に伺いまして,具体例を収集します。そして,次の会議に向けて骨子の部分,つまりカリキュラムの枠組みというものを検討していただくに当たって,事務局のたたき台のようなものを提出しなければならないのではないかというふうに考えているところです。たたき台を作るに当たって,金田研究員をはじめ,皆様に御助言いただきながら,また既に出ている報告書を参考にしながら準備したいと考えております。
また,御覧になっていただいている「参考資料2」につきましても,国語研究所をはじめ,様々な研究機関で研究されてきた生活日本語に係る資料を参考にしながら,作成しました。国語研究所の金田研究員からは特にいろいろ御助言いただいているところであります。
○西原主査
そうしますと,次回会議に向けた事務局の聞き取り調査というのは,この五つの調査対象を主として考えていただくということですね。
豊田市について,それから多文化共生センター東京について,この枠組みの調査票に分かる限りでお答えいただくようなことをお二方にお願いすることはできますか。
○尾﨑委員
結構です。お引き受けします。
○山田委員
私も自分自身で勘違いがあるといけないので,当事者に確かめながら回答したいと思います。
○西原主査
お書きくださるということですと7か所になりますが,その2か所は委員がやってくださることになります。
○尾﨑委員
お受けするんですけれども,この調査票に書き入れるということ自体が豊田市のプロジェクトには合わないので,トヨタのプロジェクトの骨子に当たるところを聞いてきて,まとめて報告します。もちろんこれに合いそうなことは書ければ書きますけれども,どちらかというと,細かなことよりももうちょっと大きな枠組みとか,システムとしてどうしようとしているかについて御報告します。ですから,今回とはちょっとずれると思うんですけれども,体制整備とか連携ということも含め,具体的に豊田市の場合はどういう連携が,企業,行政,既存のボランティア教室の間にあるかということも含め,できる範囲で御報告するということで御了承いただきたいと思います。
○西原主査
今回調査していただきたいのは,howの部分でなく,whatの部分が実際にどういう学習項目として展開しているかということで,そこに着目して今回は聞いていきたいということでございます。その情報もおありでしたら,何しているのところをできれば併せて御報告いただけるとよろしいと思うんです。金田研究員の資料も学会で御発表くださったようなものの中には「何の」ところが随分たくさん入っていますので,その中には,実はこの難民事業本部のものも,それからAOTSのものも,中国帰国者定着促進センターのものも入っていると思うんです。けれども,それらのものも,とにかく一番基本的なところに今回は注目せざるを得ない状況のタイミングなので,そのことをよろしくお願いしたいと思います。
ほかの委員の方々で,このタイミングで次回までに何か情報提供できるかもしれないという方は,いらっしゃるでしょうか。
○山田委員
川崎の市民館で,これはボランティアがやっていることなので,今の日本語学校とは違うんですけれども,教育委員会の生涯学習推進課というところで日本語教育も担当しています。それは識字の理念という,在日の歴史の中で作られてまた行政と市民とが共に生きるというテーマ,それを実現させるための学び合いです。今,ニューカマーの人たちの日本語学習にも反映し,識字の理念が反映された枠組みを,この前報告書も出たので,若干御紹介できると思います。
○西原主査
恐れ入りますが,そのカリキュラムのところまで,もしよろしければ情報提供いただければ幸いです。
○山田委員
カリキュラムというよりも,活動をどういうふうにして,連携をどう進めていこうとしているかみたいなことが冊子になっています。
○西原主査
今日御発言がない委員の方々で,もしこういうことを知っている。そのカリキュラムはこれだという情報がありましたら,恐れ入りますが,タイミングとしては20日過ぎごろまでに事務局にお知らせいただければ,次回の会議にそれが反映できるかと思いますので,よろしくお願いいたします。
では,事務局で今日上がった学校等につきましては調査対象にしていただくということで,よろしゅうございますか。
今度は調査事項なんですけれども,今,杉戸副主査からは,もうちょっと変えた方がいい,それから尾﨑委員からは,これでは入れようがないという話があったんですけれども,この枠組みについてはいかがでございますか。
○杉戸副主査
変えた方がいいという趣旨で言ったつもりではなく,この配布資料3の「3 教育内容」の,特に「(2)具体的な学習項目」,これがどんな枠組みで構成されているのかを,いろいろなレベルというか,言葉で説明される情報が集まるといいなという,そういうような意味です。
○西原主査
そこに「シラバスのタイプ」と書いてあるわけですけれども,これで分かっていただけるでしょうか。プロの人たち,現場にいる人たちはそれで分かるということになると思うんですが,「シラバスのタイプ」という情報を得てきて,そういう形でここに展開されたときに,どうでしょうか。もう少し別の文言がありますでしょうか。現場にいると「シラバスのタイプ」とあるだけで分かりますが。日本語教育小委員会のデータとして上がってくるときに「シラバスのタイプ」で大丈夫でしょうか。日本語教育関係者の方々以外の方はいかがでございましょうか。
○佐藤委員
学校関係だと「シラバス」というのは非常に分かりにくいですね。
「シラバス」というのは,具体的な授業細案みたいなもののことを言いますから。
○西原主査
時限がついて,何月何日に何をやるみたいにならないと…。
○佐藤委員
学校関係者は全く分からない。
普通は,「シラバス」というよりは教育内容ですから。例えば,教育課程の編成の原理 みたいなものを普通学校教育ではいいます。
○西原主査
それが学習目標になっているんじゃないでしょうか。
○佐藤委員
学習目標になりますね。そしてその具体的な教育内容をどう編成するかという話ですね。
○西原主査
そうすると,(1)の「シラバス」は学校用語ですとどうしたらよろしいんでしょうか。
○佐藤委員
例えば,教育内容だったら「学習単元」と言います。単元があって,具体的な単元の中に具体的な学習項目が出てくるわけです。ですから,日本語教育の世界で「シラバス」というのと,多分ちょっとイメージが違うと思います。
○西原主査
「シラバス」という言葉を使うとそういう誤解が生じる可能性があるということでしょうか。では,「単元」という案が一つ出てきましたが…。
○佐藤委員
これはまた学校の業界用語ですから,何がいいのか。先ほどの七つの調査対象で分かりやすいものが何なのかということの方がいいかもしれません。
○山田委員
「シラバスのタイプ」で私はいいと思います。ただ,その下に例とともに説明書きを付け加えて具体化したらいいと思うんです。
○岩見委員
難民に対する日本語教育を考えると,「シラバスのタイプは。」と言われて答えるならば,生活の中のいろいろな領域における行動達成シラバス,それを中心にしているとすると思います。現在,どうなっているのか確認いたしますが。
○西原主査
そういう答えになるかと思うんですが,それでよろしいでしょうか。
○日本語教育専門職
山田委員から御提案があったように,具体的にこちらで今考えられるものを並べ,簡単な説明を付けて提出したいと思います。
○西原主査
「シラバスのタイプ」を書いて選んでいただく。
その他は,記入欄を設けて,それぞれ命名をしていただくということで,よろしいでしょうか。
○中野委員
一つ,学校教育になってしまうんですけれども,同じような調査をしていて,委員の方々は年間の目標と,単元の目標と,各教科,授業の目標,それはちょっと違う感じで書きたいということで,私たちの場合はそこを三つに分けて学習目標を書くようにはしていいただいているんです。けれども,学習目標が一つしか欄がないので,そこはコース全体の目標を書くというふうに多分理解されるだろうと思うんです。それでよろしければいいんですけれども。
○西原主査
大目標,中目標,小目標というような感じですか。これは紙媒体で送るのでしょうか。それともメールで,伸縮自在という感じで送るのでしょうか。
○日本語教育専門職
メールが便利じゃないかなと思っております。
○西原主査
そうすると,「目標」のところは書きたければどんどん細分化して書いて,伸縮自在のカラムになっているということですか。
○中野委員
これは聞き取りなのでだれか行くわけですね。紙だけが行くわけではないので,説明しながらでいいとは思います。
当然入っていると思うんですけれども,国籍,属性も聞きますね。それは学習内容と,つながりがありますね。
○西原主査
帰国者か,日系人か,技術研修生かという,在留タイプがここに出ています。また,年齢層も出ていますが,ではなくて,そのほかに国籍を聞く必要があるとお考えですか。
○中野委員
母語なのか,国籍なのか,よく分からないんですが。
○西原主査
出身国・地域とか,そんな感じですか。それはいかがですか。詳しい情報があればあるだけよろしいわけですけれども,いかがでしょうか。難民の場合は国籍は結構限られていますね。
○岩見委員
大勢いるところと,一人,二人のところとありますけれども…。
○中野委員
海外でやる場合には,どういう部門かによって学習内容をかなり変えたりもするので,そういうのは関係ないわけですか。
○西原主査
日本で生活するということが一つの場面としてあるので,現状母語一つだけということはあり得ないですね。
○中野委員
文化のことを考えるからそうなるのかもしれません。
○西原主査
JFL【Japanese as a Foreign Language】ですとそうなると思うんです。これはJSL【Japanese as a Second language】なので。
○岩見委員
これは現状を書くのでしょうか。難民の場合には現在,認定された条約難民というのを対象にしているわけで,その都度認定された人の中から,希望者が申し込んできます。国籍は多少変わることはあるわけです。それから年齢ですが60歳という枠はありますけれども,それよりもう少し高齢の方は入っていないと思います。
○岩見委員
現状でしたら報告することは,可能です。
○中神委員
私,このテーマについては詳しくないんですけれども,例えばこれは教える側の経験とか,資格とか,そういうところは特に問題ないのですか。
○日本語教育専門職
この調査票を作るに当たって,今御質問があったような,だれが教えるのかとか,どう教えるのかというようなことも本来は,聞き取るべきと思います。しかし,生活者としての外国人に対する日本語教育の指針となるカリキュラムの枠組みは,実際に実施活用されるところを特定できず,よって方法というのは必ずしも一つに定められないだろうと考えました。ですから,ここでは特に教えられている中身,内容にフォーカスを当てていくことが適当なのではないかと思い,教授者についてはあえて質問項目から外しました。
○西原主査
どういうふうにしてという部分よりは,むしろ「何を」というところに今回はフォーカスを当てなければカリキュラムつまり学習項目リストというものを作ることは難しいと思うんです。
○中神委員
特に「生活者として」ですので,どちらかというと子供よりは親,成人に近いような方を対象にしてという,そういうイメージでよろしいんですか。
たまたま私ども前から申し上げておりました日本語の学習支援という,子供の教育の支援を今月から始めております。実は最初は全く予想外でしたのは,私どもの県の中に70ほどNPOで日本語を教えているところがございまして,ほとんど成人の方を対象にやってみえるものですから,最初私ども制度を作って資金的な援助さえすれば,当然子供の面倒を見ていただけると思っておりました。しかし意外なことに,子供と大人は全然違うので,そもそも子供に日本語を教える自信がないという方が圧倒的に多くて,方法論は持ってみえるのですけれども,必要な資質と経験というのが大きく異なるのかなと思いました。まことに素人っぽい意見でございますけれども,逆に相手によっては教える経験というのもかなり大きいのかなという気がいたしまして,御質問した次第でございます。
○西原主査
子供は佐藤委員の御説明を待たなければいけないんですけれども,育つわけですね。「育つ」という部分のところを入れないと日本語教育も考えてはいけないということだと思います。佐藤委員,いかがでございますか。
○佐藤委員
おっしゃるとおりです。その話はそうだと思います。この聞き取りから何をアウトプットとして期待するのか,基本的には目標と学習内容ですね。目標がどういう目標になっているかを調査することは,これでよろしいと思うんですが,一つだけ気になるのは,先ほど西原主査がおっしゃっていた,カリキュラムの枠組みみたいなもの,つまり,例えば場面シラバスであっても場面ごとに何かこういう内容を決めているわけで,それを構成する原理みたいなものが多分あるんだろうと思うんです。多分そこが非常にいろいろなもの,例えばこれを羅列するわけではなくて,仮にこれであったとしても,これをどういうようにしてつないでいくのかという,枠組みであるとか,視点がすごく大事になってくるのではないか。つまりそれを国として多分指針として示すということがすごく重要になるので,事務局が多分その辺のところを少し議論できるような形でこれを取りまとめていただくのであれば,あくまでも生のデータとして,きちんとこの目標と対象と内容を明確にできるだけ詳しく集積した方がいい。ただし,この調査対象を選びますとかなり限定された対象をやっているので,そこも併せながら,目標と,そして内容がどうリンクしているのかというところを,少し調べていただければよろしいと思います。この内容を詳しく,できるだけ詳しくできるような項目,逆に私は対象,成人の日本語というのはよく分かりませんけれども,これでうまく調べられるのかどうかということまで,それが議論されればよろしいんじゃないかなという感じがしますけれども。
一つは具体的な学習項目といったときに,それぞれの回答者が同じようなことをイメージ,例えば「シラバスのタイプ」というのは分かりました。教材も分かりますけれども,具体的な学習項目といったときに,それぞれの回答者が次元が違うものを回答するのではなくて,同じようなものを回答してもらわないといけないんですけれども,これはこれで大丈夫なんでしょうか。
○西原主査
これはアンケート調査ではなく,聞き取りに行きますので,もし御準備いただいているものが事務局の欲するようなものでなければ,多分その場で御修正いただく,違うものを取り出していただくというようなことをするわけですね。
○日本語教育専門職
一度御回答いただいて,それから,伺うというような計画です。
欲しいものと違ったら,更にお話を伺えればと思っています。
○西原主査
学習項目と言われた場合に,はっと思い浮かぶことが,聞かれる人によってきっと違いますね。
○佐藤委員
要するに,相手が分かればいいわけです。共通して答えられればいいので,それが今のような議論ですと分かるかという話になって,分からないんだったら例を挙げなければいけないしと思うわけです。
○西原主査
記入要領みたいなものがアンケートに付いてくることがあるんですけれども,その説明を付けますか。もう一枚紙を付けて,何を聞きたいのかというようなことを示す。記入要領をお付けになったらいかがでしょうか。欲しいものは何なのかをできる限り説明なさるために。
○尾﨑委員
二つあるんですけれども,一つはどういう形で学習成果を評価しているか,いわゆるテスト,評価のところは聞いてみるといいかなと思います。「こうやっています」と言っていても実際評価するときに何を評価しているのか,結構ずれる場合があるので,それは聞いてみたらどうかなと思います。
それから,具体的な学習項目というときに,一体我々が何をイメージしているかという,そのイメージで例を出すと,そのイメージに合わせてお答えになると思うんです。それを資料にして我々も議論をしていくと,「生活者としての外国人」というものが,実は難民であったり,帰国者であったりというような,既存の枠組みの中で何か話が小さくなってしまうとちょっと困るのかなと思います。調査をする人間が具体例を出せば出すほど,調査する方が既に枠を持っていますから,その枠に合わせて答えて終わってしまうと,今までやってきたことだったら調査しなくてももうあるのではないかと,ちょっとこう言い掛ける感じもあるわけです。だから,聞き取りにいらっしゃるので,いいかなとは思うんですけれども,そもそも具体的な学習項目と私が聞かれたら,はたと困るわけです。それで,そういえば文字はこういうのを教えていて,漢字はこんなので,文章としては到達レベルは新聞の易しい投書が読めるぐらいとか,何かそういうことを書き出すと膨大な量になり得る。既にそれぞれの機関がそういうものは多分シラバスの細かな項目としてお持ちかもしれません。
○西原主査
事務局としては,欲しいものとして,そういうことをイメージしていらっしゃいましたか。
○日本語教育専門職
「欲しいのはカリキュラム」と,一言で言ってしまえばそういうことになるわけですけれども,今,尾崎委員がおっしゃったように,例えば,読む,書く,話す,聞くということをどのような項目を立て実施するのかということを伺おうと思っています。
○加藤委員
私もそれに賛成です。
あとは,聞き取りのときに,カリキュラムでも目標でも,必ずその裏側に,なぜこれができたかという背景があるわけですね。例えば,こういう事例があるとか,こういう傾向があるからこうなったなどの。その辺のところを実際の声として,聞き取ってきていただければいいんじゃないかと思います。
○岩見委員
多分コースでやっているところと,新宿文化・国際交流財団などは地域に教室を抱えていて,ある一定の期間で,そのときの対象によって変えていたり,いろいろなケースがあると思うんです。
○西原主査
それから,10月11日,12日に日本語教育学会が山形で開かれます。そこでは,「日本語教育は,「生活者としての外国人」のために何ができるか」というシンポジウムが立ちます。山形は最上地区で,国際結婚の花嫁さんたちという人たちをずっと抱え続けて,国語研究所からも調査が入っていますね。そういうようなところにも,聞き取りには行かないけれども,何か紙を渡してみるというようなこともできますね。
○佐藤委員
今の議論でちょっと気になったのは,学習目標と言うときに,読み書きというスキルレベルの話なのか,それとも例えば健康・安全にかかわる,「健康に暮らし…」とかという目標到達を設定しているものなのか。
○西原主査
大目標として,なぜやっているか,何を達成しようとしてやっているかというようなことではないでしょうか。
○佐藤委員
それが「シラバス」ということで了解がとれる,つまり皆さんこの調査対象であれば,そういうことが大体合意できているということで了解してよろしいわけですか。ばらばらのものが出てくる可能性があるというのは非常に気になるんですけれども。
○西原主査
国勢調査ぐらいがんじがらめですと,何か考える余地もなく答えなければならないということになりますけれども,こういう広いことを聞かれると,その人の頭の中にあるものといろいろと考えられてきます。でも,事務局がやりとりをしつつ聞き取ってきてくださる調査なので,次回までには何か,こういうものは得られなかったという報告もあるかもしれませんけれども,そういうことで調査票が成り立つということでございます。よろしくお願いいたします。
今は山田委員と尾﨑委員にお願いしてしまいましたけれども,もしほかの委員の方々も,情報をお持ちでしたら是非御協力をお願いいたします。事務局の時間は限られております。委員の方々のお時間も当然限られていますけれども,もし御協力いただければ豊富なデータが得られるかと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最後に,このすごく漠然とした目標というのが配布資料4「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標(案)」に立っております。参考資料2も含めて,では,私たちが生活者としての外国人の学習項目リスト,又はカリキュラムの指針のようなものを立てるときに,この三つの目標,側面ということでよろしいかどうかということを次の段階で御議論いただきたいのですけれども,いかがでしょうか。
これは,これだけで終わるものでなく,恐らくこの中に書き込まれていく内容がたくさんあるということですけれども,この三つの側面ということで,生活者としての外国人にかかわる日本語教育の目標というものを考えてよろしいか,過不足がないかということです。
○佐藤委員
2番目の「文化的な生活」というのは,これはどういう意味ですか。
○日本語教育専門職
「文化的な生活」というのは,まず人が自立して生活していくに当たって,文化庁だ からというわけではないんですけれども,もちろん歌舞伎かぶきを見たり,映画を見たりというようなこともあろうかとは思いますが,公共サービスを利用し,行きたいところに公共交通機関を利用して行くといった,社会的な生活を送るという意味で「文化的な」というふうに書きました。
○佐藤委員
「社会参加」とどう違うんですか。
○西原主査
三つ目の○の中にその意味が,つまり「地域に住んで,日本人たちと交わりながら」というところは,「3」の側面というふうに考えていらっしゃるのではないのでしょうか。
○日本語教育専門職
三つ目の○に,ただ今,佐藤委員から御質問いただいた「社会参加」という文言を変えて,「一住民として生活するために必要な日本語」というふうにしております。
○杉戸副主査
今日の参考資料1の「地域における日本語教育の体制整備について」の中で,「国の担うべき役割」として,繰り返し「地域における日本語教育」ということ,文脈で「地域」という言葉が出てきている。それが今の配布資料4の三つ目の○に,「地域住民との」というふうに特定されてきています。そのことと,参考資料2の黄色,緑,オレンジの,その三つの並びの中の,黄色は「地域」ですね。この「地域」と,参考資料1の「地域」との関係が分からないということが言いたい。
ちょっともって回った言い方なんですけれども,つまり,私としては,参考資料2で言いますと,「学習にかかわる日本語」,「就労にかかわる日本語」の中にも,生活日本語があるというのが,赤の二重線で囲まれているところですね。そこも生活者としての日本語の中に入れるべきだということを言いたいんです。となると,この配布資料4の三つ目の○は狭い。「地域住民との相互理解を図りながら,一住民として生活するために」とだけあって,この図でいえば黄色の部分だけしか言っていないというふうに読める。
具体的に言えば,三つ目の○に追加するならば,例えば職場社会において職業人として生活するために必要な日本語,つまり,職業人として専門的な技能の関係の言葉とか,あるいは学習にかかわるのであれば,学校生活において,学生,生徒として学習するためのアカデミックな日本語,それは別だとしても,学校生活と呼んでいい,友達付き合いとか,生協の食堂での食事の場面とか,そういったものを支える生活場面もあるだろう,それも含めた生活の日本語を考えるべきだろうということです。そういう広がりがこの参考資料2の中には入っているんじゃないかと理解して,それも扱うのが生活者としての外国人に対する日本語教育の対象である方がいいと,私は思います。
○西原主査
○は四つ目があった方がよろしいということでしょうか。
○杉戸副主査
四つ目にするか,あるいは三つ目に統合して,ちょっと長くなりますけれども,「地域,職場,学校において,住民,職業人,学生・生徒として生活するために必要な」というふうにまとめてしまうという,そういうことです。
○西澤委員
配布資料2を見ると,要するに縦軸と横軸,横軸は生活場面というか,要するに領域を示していて,縦軸は先ほど佐藤委員がおっしゃったスキルのレベルみたいなことを多分イメージしているんじゃないかという感じがします。その中のあるところを赤の二重線で囲んで,スキルのレベルでいえばこの程度のところをこういう場面で使えるようにしましょう,というふうに見られるのですけれども,そのスキルレベルの話は全く今までの議論の中に出てこなくて,場面で何とか必要な日本語というところに全部隠されている。何が,どこまでが,本当に必要な日本語なのかという議論がされていないような気がするんですけれども。
○西原主査
オレンジ,緑,黄色という,ここのところは,恐らく,前期にヒアリングしたときに金田研究員がおっしゃってくださった,市民統合レベルの3側面というようなことが反映されていないかと思うんですけれども,いかがですか。
○日本語教育専門職
それも参考にしております。杉戸副主査から御指摘があった職場場面,それから学校と地域という,具体的な場面をイメージしたというよりは,生活という行動に必要な要素。働くとか,学ぶとか,広く生活するというようなことをイメージしました。そういう視点でとらえて,この図は作ったわけです。ですから,学習にかかわるというところが,必ずしも学校ではなくて,生涯学習を含めて広く学ぶ場という,場でいえば学ぶ場ということでイメージいたしました。飽くまでもこれはイメージですので,是非御指摘いただきたいとは思っています。
○西原主査
横に切ったという,そういうことが,この日本語教育小委員会が,例えば今期提案するためのスタンスというか,在り方というふうに提案されていると思うんです。
○尾﨑委員
まず,「日本語」という言葉を聞くと,どうしても言葉というふうに受け止めてしまうんですけれども,実は日本語を勉強してコミュニケーションができるという,コミュニケーション能力ということだと思うので,配布資料4の○の,最後のところに「必要な日本語コミュニケーション能力」,そこまで入れていただくと,スキルも当然含まれているんだというふうに普通は解釈ができると思うんです。
それから,私がこれを見ていて理解したのは,参考資料2も併せてですけれども,とにかく人間として最低限食べて,生きるという,ミニマムのところが確保されなければどうしようもないので,そういう意味で,かなり基本的な,人としての基礎的なところが健康・安全なのかなと思います。当然健康・安全といっても食べなければいけないから仕事ということもあるんですけれども,そういうことはあると認めた上で,なおかつ本当にミニマム,根っこというイメージで一つ目の○なのかな。二つ目の○は何とか食べられるんだけれども,今度はもうちょっと豊かな生活をしたいなというときに,旅行に行ったりとか,映画を見たりとか,いろいろなことがあります。それが二つ目の○なのかな。三つ目の○はもうちょっと社会の構成メンバーとして参加できるようなコミュニケーション能力というようなイメージで,一応私は三段階で,これはこれでいいのかなと思います。次にもうちょっと中身を細かく見ていくと,就労のための日本語とか,いろいろ出てくると思うんですけれども。標準的内容というときの「標準」というのがずっと頭の中で整理がつかないんですが,一番根っこのところだけ押さえていれば標準でありそうな気がするんだけれども,そこら辺をどういうふうに整理すればいいのか,ちょっと分かりません。私は,今のこの表,三つの項目を伺っていて,字句の面とか,多少議論はあるけれども,大ざっぱにはこんなものかなというのが感想です。
○岩見委員
配布資料4は基本的な考え方を書いておられるというふうに思いました。先ほど議論された「文化的な生活」というのも,それは人間らしい生活というか,豊かな生活ということだと思いますけれども,ここにおいて社会生活ということは外すことができない。3番目が社会,より社会との交流を深めるということですけれども,2番目は文化的な社会生活の方がいいのかなという気が少します。
それから,この全体的なに考え方,理念に対して,参考資料2は領域的なことを少し書き分ているようすが,違う目的で書いているのかなという印象を受けました。
もう一つは,先ほど山形のことをちょっと触れましたけれども,特に外国人の配偶者が多くいる地域があって,国際結婚の家庭の中で,家庭生活であるとか,子育てであるとか,オランダのケースなどでも一領域として取り扱っていましたけれども,その辺は領域に入れなくてよいのか。ここで健康とか安全ということにもちろんかかわってくるわけですが。
○西原主査
地域/市民生活に家庭も入れるという話ですか。
○岩見委員
そうですね。特に外国人のお嫁さんは,日本語で家庭生活を送っていくことが求められていて,出産,子育ては大きな出来事です。そこでの日本語が問題になっているというケースがありますので。家庭の中だけにとどまりませんけれども…。
○西原主査
「市民生活」というのは一体何なのか。
○岩見委員
地域や市民生活には家庭生活も含んでいるのでしょうか。含んでいると考えていいのか,市民生活とは少し違うかなと思います。その辺は最終的に大きな領域の中で細かく項目を出していくのかなと思いますけれども,出産とか子育ては落とさない方がいいかなというふうに思っています。
○西原主査
いかがでございましょうか。四つ目を作れという御意見は今のところないか。そして,三つの中で,もう少し内容を書き込んでいく段階でこういうものも入れていったらよいのではないかという御意見が出ているように思うのですけれども,いかがでしょうか。
○中野委員
「就労」というのは,先ほど尾﨑委員がおっしゃった,健康と安全とは,またちょっと違います。2点お尋ねしたいのです。一つ目として,参考資料2の図と配布資料4の分け方の違いはどういう意図があるのでしょうか。
もう一つは,先ほど社会参加の話が出たんですけれども,○の並ぶ前段についてです。 「外国人が地域で意思疎通を図り生活できるよう」というのがありますね。これは大き な目標としてあると思うんですけれども,これはむしろ3番目のレベルのような気がし て,むしろ社会参加とか,本当に大きな目標で,要するに外国人が自己実現もできて, 社会にも参加できる,そういう何か大きな目標が上の文章中にあって,下の○はそれを 支える目標みたいな方が分かりやすいのかなと思ったんです。
○日本語教育専門職
まず,後に御質問いただいたテーマというのは,事務局は,「社会参加」という言葉をもっと分かりやすく表現すると,「地域で意思疎通を図って生活する」ということなのかということで,このような形にいたしました。
それをまず実現するために,下の三つが日本語の能力として求められるのではないかとなった次第です。
参考資料2の図と,配布資料4の目標の関係でございますが,配布資料4で説明しているのは,生活日本語の生活者としての外国人に対する日本語教育の位置付けでありまして,参考資料2の中の赤の二重線でくくっているところになるわけですが,オレンジ,緑,黄色,それから真ん中にあります青もすべて含めているわけです。それを同時に表現していった場合に,このような能力というものが必要になってくるのではないかというふうに考えた次第です。ですから,○で説明したものは達成すべき内容で,絵で表現しているものは,生活場面の諸行動の領域でございます。
○中野委員
子育てというのは地域・市民生活の中に入るということですか。
○日本語教育専門職
そうです。
○加藤委員
「そもそも生活者とは」というところに,やはりいくかなと思うんですが,この図だと,上のくくられていないところは生活者ではないのかということにもなり,先ほどアンケートを取るというお話をした時に,留学生とかビジネスマンという言葉が入っていましたが,いわゆる生活者というのは,どんな立場であっても生活者であるわけだから,広くなるのだろうなというふうに再認識したんです。そうなると,わざわざここでくくる意味というのがどういうものだろうかと思ったのが一つです。
それから,こちらは今くくっている側なんですが,くくられる側というか,要は生活者という形の外国人の方たちが,要は何を求めてこの生活者としての外国人の日本語教育を受けるかといった場合に,余り究極の,「生きていくための」というところだけにしてしまわない方がいい。それはもちろん含めるのですが,学習者それぞれにそれぞれの立場があるわけで,私の経験だと,本当に学習するためのとか,ビジネスマンというところは割と近いところにあるんですが,進学等も含めて,そのために生活者として必要な日本語というのがある程度ある。分け方の問題はあると思いますけれども,細分化してというふうに先ほどお話ししていたような,中に具体的な項目が見えてきた方が,実際「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的な内容ができてきたときに,これを受ける側の人たちが非常に生活者としての外国人に対する日本語教育に近寄ってくる。誤解を受けないようにより細かい,説明があった方がいいんじゃないかと思います。
先ほどの「生活者」というとき,結局どこを差すのでしょうか。
○西原主査
あらゆる人の生活者としての側面です。だから,生活者としての側面を持たない人は日本人にもいないし,外国人にもいないという,そういう了解でよろしいのでしょうか。そうすると,根っこみたいなものですね。木でいえば根っこみたいなもので,咲かせる花とか,つけるべき実というのは,それぞれ違うわけだけれども,共通に根っことして持っているところは「生活者」でしょうという側面ですね。
○尾﨑委員
今の加藤委員のお話を聞いて,私も気になっていたんですけれども,この図を見たときに,横長に赤く囲ってあるところがありますね。「「生活者としての外国人」に必要な日本語」というと,実は全部必要なんだという議論になってしまう。多分本当にベースとして,どうしても,どなたでも確保してもらわなければならない最低線,ここの部分については実は公的にきちんと責任を持とう。そこから上の部分についてはいろいろな議論があると思うんだけれども,生きていく上では全部必要になり得る。人によって凸凹があるわけです。だから,それが地域特性とか,学習者特性とか,いろいろなことで決まっていくから,みんな必要なんだけれども,でも少なくともこの日本語教育小委員会で詰めようとしているのは基礎のところ,基礎は一体どこまでというような議論をしておかなければいけない,そういう理解でどうですか。そういうふうにこれを読もうと思います。
○西澤委員
ということは,「基礎的かつ共通的に必要とされる日本語」という感じなんですね。
○尾﨑委員
はい,そのような意味合いで,私は理解しています。
○西原主査
「必要な日本語」というからちょっとそっけないんでしょうか。
○杉戸副主査
今の尾﨑委員の御意見に賛成なんですが,それに至る検討の手順として考えなければいけないのは,先ほど西澤委員が,参考資料2で繰り返し出てくる「日本語」という言葉の背後に,スキルとか,そういったものが隠されていますねということをおっしゃったんですけれども,私もそのように思うんです。また,別の言葉でいえば,ここに書いてある,例えば黄色の「地域/市民生活にかかわる日本語」と書いてある「日本語」の部分を,例えば「場面」と置き換えてみる。あるいは言語機能と置き換えてみる。登場人物とか人間関係と置き換えてみるという,そういう検討が必要だろう。つまり,地域/市民生活にかかわる言語機能とは何か。あるいは,場面は何か。人間関係は何か。さらに言語表現は何か。あるいは言語レベル,日本語の段階制とか,レベルというのを付けてもいいと思うんです。つまり,全部ここに,参考資料2の中には「日本語」という言葉が6回出てくるんですけれども,6か所の日本語をすべてそれぞれ場面とか言語機能とか,そういうものに置き換えて,それを一つ一つ検討して,その総体がここでいわれている日本語,あるいは尾﨑委員が先ほどおっしゃった日本語コミュニケーション能力だというふうな,そういう枠組みで考えていくという,そういうプロセスがこの先必要だろうと思います。
○西原主査
そのプロセスに必要な資料を金田研究員は既にお示しくださっている。金田研究員が持っていらっしゃるデータはそのような構築のされ方をしていると思うんです。それを「日本語」と言ってしまうことの乱暴さというか,そこら辺のところが今御指摘のことだと思うんです。「日本語」でくくるというと,それぞれ国語学者であればあるイメージで,日本語教師であればまた違うイメージというふうになってしまうんです。だけれども,「日本語」ということ以外の文言というのが何でしょうか。
○中神委員
ちょっと違うかもしれませんが,実は目標があって内容というのは当然決まってくると思うんですけれども,今現在日本語教育というのは方法論がありますね。テキストもありますし,その内容というのは,こういった目標は多分あると思うんです。ただし,「生活者としての外国人」というのは比較的新しい概念なものですから,そういった概念に従って,目標を組み直しをしようとしているのか。そうではなくて,今まで実はこういった目標がなかったんだということで新たに目標を立てようとしているのか。そこら辺,私は素人なものですからよく分からないんですけれども,当然ほかの語学に置き換えても,到達すべきレベル,語彙ごいであれ,文法であれ,大体決まっていると思うんです。日本語も当然ないはずはないと思うんですけれども,外国人が学ぶ上で。あえてここで目標を立てること自体に異論はないんですが,なぜこういったものが今ここで議論されるのかという基本的なことがよく分からないのです。
○西原主査
実は,日本語教育の世界でこれは新しいことではないかと思うんです。「生活者としての外国人」ということを目標として存在してきた日本語教育というものが今までいろいろ行われてきたけれども,国として指針を示したり,そのことによって最低限を保障しようとしたり,それから,そのことを広く,あまねく知らしめるというための何かデータにしたりということは今までなかった。だから,委員の方々はすごく重要な側面を担っていらっしゃるという認識でございます。現実は先行しているので,よく御存知のように,あっちやこっちで対策はどんどん進んでいるわけです。私たちがここで言うことができるのは,待ってください,そのことは実は基本的にはこれなんじゃないですかということではないでしょうか。
○佐藤委員
先ほど文化的な生活というものを,質問したんですけれども,その背景を少しお話しします。今までの議論とかかわるんですが。ユネスコが設置した「21世紀教育国際委員会」が,『学習:秘められた宝』という本を出しました。学習するというのは四つのレベルがあるんだという話です。一つは知ることを学ぶ。二つ目はなすことを学ぶ。三つ目は共に生きることを学ぶ。四つ目は人間として生きることを学ぶと言っているんです。それは非常に参考になって,つまり,「知ることを学ぶ」というのは,ここでいえばまず健康かつ安全に生活するために必要な力をどう付けていくのかという,基礎,基本を知らなければいけないわけです。二つ目が,やはり自立していくということを学んでいかなければいけない。それは文化的なうんぬんの話ではないんです。きちんと自分で自立していかなければいけない。3番目の話というのは,一住民ではなくて地域住民として生活するために必要な力を学んでいかなければいけない,共に生きるということですから。四つ目に,より人間らしく生きるということ,初めてそれで,ここでいう文化的なという,つまり,レベルがあるんじゃないかということをユネスコは提案しているんです。
結局,日本語というのを一つの学習としてとらえていく,学習論としてとらえていくのであれば,その辺のところをきちんと仕分をした方がより分かりやすいのではないか。つまり自立するのと文化的な生活とがどうつながっていくのかということが非常に分かりにくかった。自立するというのは,それ自体が非常に大事な話なんです。つまり文化的なうんぬんというのは,また更にそれとちょっと違うレベルの話であるわけです。
それをくっつけ過ぎているというところに違和感を覚えているわけです。だから,これで言えば自立するということは二つ目になって,三つ目が一住民ではなくて,地域住民として共に生活するということが必要になってくる。つまり自立しているわけですから一住民ではないわけです。さらに,地域の中でより生活空間の広がりとか,対人関係,社会関係の広がりを持ちながら,より人間らしく,そこに初めて文化的なというところが出てくると,学習論としては非常に分かりやすいという話なんです。それがこれに合うのかどうか,私は分かりませんけれども,つまり先ほど質問させていただいた背景にはそういう話があるんです。
子供たちの例で言えば,例えば,私たち,生活者として外国籍の子供たちに必要な日本語ということを考えていけば,サバイバルな日本語は教えなければいけないです。トイレに行きたいとか,おなかが痛いという,これは安全の話です。二つ目の自立というのは正に学校生活を,自分である程度送れるようにしていくための日本語をどう与えていくのかということです。
あるいは行事がどうなっているのかとか,あるいは何を用意すればいいのかとか,例えば何時に行って,どうすればいいのかとか,そういう話なんです。それから,「共に」ということは,コミュニケーション言語ということで,どうかかわっていくのか,友達とかかわっていくために必要な日本語なんです。今度はより人間らしく,「より」ということは,学習者として学習に参加していくための力をどう与えていくのかという議論になってきます。その辺のところがはっきりとしなければならないのではないでしょうか。
○西原主査
4レベルあるでしょうというお話ですか。
○佐藤委員
私はそういうふうに,学校の話は理解しているわけです。そうすると,だからどこで何をやっているか。つまり,いろいろなところで,先ほど冒頭の質問で学校でやっているところはありませんかというと,学校はそういうことはもういっぱいやっているわけです。つまり,三つのレベルでそれぞれのカリキュラムがあり,シラバスがあり,各教育委員会では適応させるために実はいろいろなシラバスを作っているわけです。だから,問題提起として,一つは「自立して」ということと「文化的な生活」を付けることのよしあしというのと,三つ目の「一住民」というのがいいのかどうかというのと,四つ目の話がどういうふうに考えたらいいのかというところを申し上げたかったわけです。
○杉戸副主査
ついでに今の御意見に乗って言わせていただくと,先ほど私が発言したのは,今,佐藤委員がおっしゃった学校生活の中での局面が,この三つ目の今の案で「地域住民との…」,あるいは「一住民」としてという表現でカバーし切れているかどうかということが言いたかったということです。
四つ目はもっと次元の高いレベルです。
○西原主査
「より人間らしく」という,そこですか。
○杉戸副主査
三つ目は,先ほど長々しく言ったんですけれども,地域,職場,学校という,そういう広がりを,この参考資料2を踏まえる限りは意識しないと出てこないんじゃないかと思うんです。それをまとめれば,生活場面でとか,何かまとめればいいのかもしれませんが…。
○西原主査
佐藤委員の説得に応じますか。御異論がなければ四つにしますよという話になるんですけれども。
○日本語教育専門職
「自立した」という部分,ユネスコの二つ目の「自立した」というところが,私はまだ具体的につかめません。「文化的な生活」というのは非常に高いレベルにあるとおっしゃるのは,分かるような気がするんですが,「自立した生活」というと具体的にはどのようなことをイメージすればよいのでしょうか。
○佐藤委員
例えば映画館に行く前に,まず病院に行くための方法を教えましょう。また,職場の中で何をどういう習慣で行っているのかということを分かりましょうということです。
○日本語教育専門職
それは「知る」ではなくて,「自立」なんでしょうか。
○佐藤委員
知るというのはもうちょっと基礎的な,基本的に,一人の人間として生きるために何をしなければいけないのか,例えば福祉をどうすればいいのか,保険をどうすればいいのか,正に社会生活を送っていくための力をどう付けていくのかということです。
○西原主査
三つ目と四つ目を,ではどういう文言にすればよいでしょうか。
○西澤委員
四つ目を入れるとどこで線を引くのかというのがものすごく難しくなるのではないでしょうか。先ほど尾﨑委員のお話にあった,基礎的・共通的な事項というのと,より人間的なというのは,一体,どこまでが共通的で基礎的な文化的な欲求なのかというのが分かりにくい,また,それをここで決めるというのは相当無理があるんじゃないかという感じがするんです。
○西原主査
人間としての生活ですから,どこかで線を引くというのは非常に難しいことですね。私が今ここにいる時に,どこまでが根っこで,どこまでが花でしょうかというようなことは言えません。でもそこを,ここで提案するわけですから,上限というか,ここまでをということは,例えばその後ろに日本語教育をやりましょうという団体とかボランティアがいるわけなので,最低ここまではカリキュラムにしてくださいと,この日本語教育小委員会が言わなければならないわけです。それを佐藤委員のおっしゃったことを含めて,どのレベルまでというのは,聞き取り調査の結果を見ながら,線引きを決めなければいけないことではありますね。
○西澤委員
ですから,現状からどこまでというのはある程度線が引けるのかもしれませんけれども,これをやっている背後にある公としてどこまでサポートするのか,保障するのかという話になってくると,果たして,現状ここまでやっていますよ,大体みんなやっていますということは分かっても,そこまでの保障でいいんだというふうに結論をするのか,もっと低くてもいいんじゃないかという議論にするのか,いや,もっと高くなければいけないという議論をするのかというのは,難しい問題ですね。
○岩見委員
ただ,配布資料4の日本語教育の目標というのは,基礎的なところに限っていることではなくて,目標として生活者への教育というのはどういうことを考えなければいけないかというところであって,基本的にいろいろな生活者がいますけれども,言葉のハンディを持った方にとって何とか文化的な生活を送るとか,前から議論されています社会参加を促していくかということではないかと思うのです。
○西原主査
「社会参加」までは昨年度の議論の中でも書かれていましたね。
○岩見委員
そこに出ていましたので,それは目標としては掲げておいていいんじゃないかと思うんです。その次に国がどこまでやるかということは,これから議論することで,この線は最終的に基礎の基礎なのか,まだ決まったわけではないので,これは必ずしも基本と,目標の枠組みと赤い枠組みが一致しなくてもよろしいのではないでしょうか。
○西原主査
今の段階でどこが目標かということの上限を決めることはできない。いかがでございましょうか。
整理させていただきます。まず,側面として四つ掲げるということを修正提案とするということについては,いかがでございましょうか。
○岩見委員
四つ目の文言はどういうふうにしますか。
○西原主査
文言が問題ですね。事務局に任せてよろしいですか。例えば「自立して文化的な」ということを,佐藤委員の話では二つに分けましょうという話ですね。
○佐藤委員
お任せします。シンプルに,「自立して文化的な」というと,少し違和感を覚えます。つまり,生活者としてのというと,今いろいろな議論が出たように,果たしてどういうことなのかなというのはあります。
○西原主査
その修正提案に調査の結果がどういうふうに出てくるかをまず見ようよという話ですが,次回やっぱり三つに戻そうということになるかもしれないですけれども,では一応修正提案をここの合意とするということが一つです。
それから,イメージ図というのは,このまま修正なしでイメージ図というものを考え てよろしいでしょうか。
○岩見委員
これは「基礎」と書くならいいと思います。「「生活者としての外国人」に必要な日本語の基礎力」とすればいかがでしょうか。
○西原主査
又は「基礎的日本語」,「日本語の基礎」。
「日本語」ということに対して杉戸副主査からは御意見がありましたが,「日本語」と書いてしまっていいのでしょうか。
○杉戸副主査
目標としては「日本語」あるいは「日本語コミュニケーション」でいいんですけれども,それを検討する,あるいは分析して考えるときにということを「場面」と言いました。
○西原主査
配布資料4の図の「日本語」はこのままでよろしいのでしょうか。イメージ図としては大体こんなものでよろしいですか。
○中野委員
先ほど尾﨑委員がおっしゃったように,日本語コミュニケーション能力というか,ともかく日本語ができればここにある生活が安全にできるとか,文化的生活ができるとはとても思えないんです。だから,日本語と普通の人が聞くと言語という気持ちが出てきてしまうので,当然内容シラバス的に,内容が入ってくるのは何となく想像はできるんですけれども,この時点で「日本語」でいいのかということが気になります。
○西原主査
せめて「日本語コミュニケーション」というとか,いかがでしょうか。目標として日本語コミュニケーション,以下の日本語を習得させることを目標とするというところを書き換えますか。
○尾﨑委員
日本語を習得させるというと非常に狭いなという感じは受けるので,誤解されますね。
○西原主査
「以下の能力を」ですか。「以下の能力の習得を目標とする」と。
○尾﨑委員
それをサポートするということだと思うんです。
○中野委員
日本語教育の目標といったら,「日本語を使って健康かつ安全に生活できるようになる」という,それが目標ですね。生活できるようになる,でも,日本語を使ってという,そういう意味ですね。
○西原主査
そうすると,「以下の生活能力を達成する」というようなことですか。
○中野委員
目標としては,「日本語を使って健康かつ安全に生活ができる」。
○西原主査
ということですと,つまり,「以下の日本語を習得させる」という文言を変えなければならないですね。それはどう変えたらよろしいでしょうか。即決を迫るのはちょっと忍びないですけれども,何かいい知恵を下さい。
○中野委員
「日本語教育の目標を以下のとおりとする」というのでいかがでしょうか。
○西原主査
「外国人が地域で意思疎通を図り生活できるよう」,ここも修正した方がよろしいでしょうか。
○中野委員
今ここにある,「地域で意思疎通を図り生活できる」というのは3番目の○と同じことを言っていると私は思ったんです。ですから,上の文章ではもうちょっと大きなもの,社会参加とか,自己実現とか,何かそういう方がいいのかなと思ったんです。
三つ目の○とどこが違うのかなと思ったので申し上げました。
「日本語教育の目標」というタイトルなので,「以下のことを日本語教育の目標とする」ということなのかなと思います。
○西原主査
「以下このことを日本語教育の目標とする」,そして,「日本語を使って健康かつ安全に生活できる」というような言い方にする。
今御提案があったのは四つにするという話でした。ということで今日のところはよろしゅうございますか。そして,その内容が何なのかということは,調査結果を踏まえて,それから委員が御協力くださるような資料を踏まえて,次回に骨子及び内容についての報告を事務局からしていただく。そこは事務局はよろしいですか。
できる限りそのことを次回,27日なんですけれども,それまでにしていただくということで,次回その内容についてみんなでまた考えましょうということになりますが,そのことについていかがでございましょうか。
○尾﨑委員
最終的な報告の中にもし入れることが可能であれば,これまでの議論の中で,日本語コミュニケーション能力というときに,外国人の能力というんだけれども,実は相手によって全然違うという,非常に社会的,相対的なものだから,周りの日本人も変わっていく必要があるというところはどこかに入れておけるとよいのではないでしょうか。日本語教育というのをそこまで広げて考えるというのはなじまないかもしれないし,一般の人から見れば何かと思われるかもしれないですけれども。
○西原主査
でも,規制改革会議とか,日本経済団体連合会の報告とか,必ず言っているのは体制,対応策,日本側の対応ということですね。その部分について,この日本語教育という部分でそのことを具体化するという,そういうことでよろしいわけですね。
○尾﨑委員
少なくとも今期議論をしているのは,外国の人に対する日本語教育の目標とか内容ということで話を進めていますから。
ただ,報告書のかなり前の方でもいいと思うんですけれども,生活者としての外国人のための日本人に対するというような視点が一方にないとまずいですよというようなことは,是非入れたいなと思います。これまで議論してきていることです。
○西原主査
そこのところは大変なことだと私は思うんです。つまり,ずっとはっきりものを言わないできた日本人が,外国の人が分からないからといってはっきりものを言うようになるのか。
○尾﨑委員
そういうレベルもありますし,もっと日常的なレベルで,相手に通じるように配慮するときに,日本人同士でもそれはやっていることなんですけれども,
○西原主査
それに齟齬そごが生じていたりもしますね,ジェネレーションギャップとか。
○尾﨑委員
そこら辺のことも一方で考えていかないと,そうすると学校教育でも日本人の子供たちということも当然視野に入ってくるだろうから,そこら辺も含めてというのがあるといいと思います。
○西原主査
それは多分最後か最初に言及する,そういうことでございますか。
○尾﨑委員
はい。もう一点は,日本語とか,日本語コミュニケーションと言っているんですけれども,日本語を使って自立するとか,文化的な生活というときに,やはり言語以外の文化的なことというのは絶対落とせないと中野委員はずっと強調なさっている。それは,日本語コミュニケーションというと,私たち日本語教育屋は,やれシラバスがどうで,文法がどうで,発音だとどうしてもいってしまうんだけれども,本当は仮に100時間でどういう初期教育をするかというときの100時間の中には,日本の社会,文化的なことを,母語でもいいから知ってもらうというのも本来入っていていいはずだから,そこら辺もどこかに明記した方がいいなと思います。
○西原主査
私はよく言うんですけれども,例えば引っ越し文化が違いますでしょう。つまり,日本では引っ越して来た方があいさつをしに行くんだけれども,例えばアメリカでは引っ越して来られた方が来た人にまずあいさつに行くんです。そこら辺のところは非文化,非言語的なことなんだけれども,それをやらないと住むようになった人はずっと待っている。でも,日本人はだれも来ない。日本人の方はずっと待っている。「あの人,来ない」ということになってしまうんです。そこら辺のところは第一歩としてとても大切なことです。それは相互に学習すべき内容ですね。
では,その点は報告書を全体に考えるときにおっしゃっていただきます。よろしいでしょうか。もう議事録に載っていると思いますけれども,またおっしゃっていただきます。
ほかにあと15分ございますけれども,是非ここで議論をし残したこと,今回しなければならなかったことというのはありますでしょうか。
○佐藤委員
参考資料2の図にかかわって,「地域/市民生活にかかわる日本語」のところなんですけれども,特に市民生活にかかわるということで日本語教育の中でどう考えられているのか,分からないんです。学校教育の中で言いますと,最近新しく市民性教育というのが非常に重要視され始めているんです。どういうことかというと,多文化もいいけれども,生活者として定住し,定着していくためには,やはり共通の価値教育が必要だろうということがかなり大きな課題になっている。ヨーロッパのEUの場合には明らかに市民性教育というのは非常に大きなテーマになって,社会科の枠を越え始めているんです。そうすると,外国人に対して,つまり日本の社会の中で,私は同化しようと決して言っているわけではなくて,今の尾﨑委員のお話とかかわってくるんですけれども,新しい価値をどう作り上げていくのかというところ,これは非常に大きなレベルと同時に,共通の部分でも必要ではないかという気がするんです。
つまり,外国人の子供たちに対しても,どういうふうにして社会を作っていくのかという,いわゆる社会参加とか,政治参加とか,そういうような部分というのも実はものすごく強調され始めてきているわけなんです。それは従来の社会科の枠を越えて子供たちにも何かカリキュラム化しなければいけないんじゃないかという議論が今起こっている。それをこういう日本語教育あるいは生活者としての外国人と言ったときに,その側面をどう考えていくのか。配布資料4で言うと,一住民ではなくて地域住民として生活するというのは,多分そこを強調していくんだろうと思うんです。共にどういうふうにして,今,尾﨑委員がおっしゃった新しい価値を作り上げていくのか。そうすると,当然日本語の活動場面の中で,いろいろな場面を入れ込んでいかなければいけないというような議論になっていくと思うんです。そういう話というものが日本語の中で必要なのかどうかという,これから生活者としての日本語を,外国人にといったときに,その辺の議論というのをどうするのでしょうか。
○西原主査
それは内容を確定していくときにということではないでしょうか。つまり,具体的な内容が今あるわけではないので,先ほど西澤委員がおっしゃった,ここまでをというところの議論の中に,これは必要だというものを検討して頑張っていただくということだと思うんです。そのときに,どこの国や地域であれ,「市民というものは」という議論と,「日本に来たからには」という議論と,両方あると思うんです。
○佐藤委員
ですから,その辺のところをやはり入れ込む必要があるんじゃないかという,逆に言えば問題提起ということで。
あるいは地域生活と市民生活というもの,地域・市民生活と言った方が多分いいんだ ろうと思うんです。その中に入れ込んでいく必要性があるんじゃないかなということは 強く思います。
○西原主査
市民であるとは一体何なのかということは,本当に国によって,地域によって違いますし,それから,それぞれ生活者としての基本だとお考えになれば,私たちは今度内容ということに全部集約していかなければいけない。これは黄色のところの根っこですというふうにおっしゃっていただいたらよろしいんじゃないでしょうか。それに対して,そこまではと,例えば中神委員が地域のコーディネーターをしていらっしゃって,いや,そこまでは違うんじゃないかとおっしゃれば,それでまた議論がされていくという話だと思うんです。
今日のところを整理しますと,配布資料4と,日本語教育の目標について検討し,そこのところで,ユネスコの事例を踏まえては,という御提案があり,そうだねというようなことになりました。それから,それを決めるときに概念図として,参考資料2はここで大きく修正するのではないということにはなりました。この概念図が,人によって受け取られ方が随分違うと思うので,この横に走る生活者としての外国人に必要な日本語コミュニケーションというか,学習内容というところに集約されていくものについて,今回調査をしてくださることになりました。あるいは調査に協力するということで,既存のカリキュラムを,事務局で聞き取ってきてくださるということになりました。それを含めて,次回にはより具体的なことを提案していこう,今回,一番最初に日程が示されていますけれども,何回かしか会えないその中で,このことを今年度中にしていくことが必要でしょうということになりました。
○井上委員
来週(月)に日本経済団体連合会で会長,副会長会議という,経団連で一番権威のあるものが行われるんです。そこで日本型移民政策という問題提起をする提言が出ることになりました。余り直接リンクをさせるような書き方にはなっていないんですが,少子化・高齢化という社会的・経済的な意味合いを考えると,やはり外国人の受入れを在留資格上認めて,もちろん生活者として受け入れた外国人を支援するということです。
○西原主査
28番目の在留資格ということでしょうか。
○井上委員
そこはどういう形になるか分からないんですけれども,労働者の域を少し越えたものを打ち出そうと思っています。
○西原主査
カテゴリーとしては「移民」ですね。
○井上委員
カテゴリーとしては「移民」です。「移民」となると,正に統合政策というコンセプトをより明確にして,その中で,日本語はもちろんそうなんですが,市民としての認知ということです。そのために権利義務がどういう形になるのか,整理する必要が出てくると思うんです。ともかく日本経済団体連合会として初めて「移民」という言葉を使う提言を,来週の会長,副会長会議に掛けることになって,今日会長がいらっしゃっていたので会長にも御了解を得た。恐らく,10月の半ばぐらいには新聞紙上に出るんじゃないかと思うんです。そうなりますと,繰り返しになりますが,統合政策,必要な施策のコンセプトをより明確にした上で,それぞれの施策の具体的な中身を日本経済団体連合会としても提案していかなければいけない。しかも,それを政府の側にも御理解いただいて,今,行われている部分と,将来的にやっていただかなければいけない部分と分けていく作業をするということになります。
○西原主査
「移民」というカテゴリーが世の中に出ていくということですね。
○井上委員
そういうことです。それで,御存知のとおり,自民党の中川秀直議員が,1,000万人という非常に大きな規模の提案をされていて,一部月刊誌などにもそれが出たんです。少なくとも国は,高度人材の受入れが中心ではあるんですが,やはりこれから外国人の力を借りないとやっていけないという意識が非常に強くなっていますので,取りあえずはここにかかわる就労とか学習ですから,留学生とか高度人材になるのかもしれないんですけれども,こういったところの人たちがちゃんと定着するように,日本の社会とか,あるいは企業なり,大学なりが力を発揮できるようにするための部分,これをしっかりやらなければいけない。我々の責任もあるんじゃないかということです。
○西原主査
前の日本経済団体連合会の2004年の提案にもそこのところが書いてあるんですね。
○井上委員
そこは書いたんですけれども,ただ,それは自然体で受け入れた外国人をどう支援していくかという話です。これからは意図的に外国人の受入れを増やそうという方向に移ったときに,支援のレベルで,当然質も量も変わってきます。それを私どもも考えなければいけなくなってきたということです。
○西原主査
1,000万人という数字ですけれども,私はこの間必要があって,人口問題研究所が出した人口構成の予測図というのを見ておりましたけれども,2020年に生産年齢人口の16歳から64歳までが1,000万人減りますね。
○井上委員
そうです。
○西原主査
今は8,500万人のものが7,500万人になる。ということは,そのギャップを埋めるために1,000万人の空白ができるということにはなっている。
○井上委員
ただ,たしか中川議員のは2020年ではなくて2050年だったと思います。
○西原主査
人口問題研究所の予測では,2050年にはもっと減っています。
○井上委員
人口自体が9,000万人です。
○西原主査
そして,生産年齢人口が5,000万人を切っている。
○井上委員
人口ベースで数千万人と言っています。ですから,そういう意味では1,000万人というのはびっくりする数字ではあるんだけれども,人口減少のピッチからいうと当然の数字ではないかということです。ただ,人口に依存した経済活動とか社会活動でいいのかというアンチテーゼもあるので,そこはもう少し高いレベル,政治のレベルで議論していただかなければいけないと思います。
○加藤委員
先ほど尾﨑委員のお話を聞いているときに,30万人ということを引いて言おうと思ったことを今伺って,さらに強く思ったんですが,それだけ入ってくるときに,日本人の側のというところを大きく提言していかないと,システムも含めて,私たちの日本人としてこういうところからの提言を作っていけないと,ただ来ただけになってしまうように思います。
○西原主査
では,これで今年度の通算12回目の日本語教育小委員会を閉会させていただきます。御協力ありがとうございました。
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