議事録

第33回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成22年11月15日(月)
10:00 〜 12:00
旧文部省庁舎2階 第1会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,岩見,尾﨑,加藤,中野,西澤,山田各委員(計8名)
(文部科学省・文化庁)
舟橋国語課長,田中日本語教育専門官,仙田日本語教育専門職,山下日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第32回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 能力評価に関するヒアリングについて(案)
    (第32回国語分科会日本語教育小委員会・配布資料5)
  3. 具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)
  4. 具体的な日本語教育プログラム例(案)
  5. 活動方法の具体例(案)
  6. 教材例のコンセプトについて

〔参考資料〕

  1. 標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)
  2. 標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について(案)
  3. 日本語教育小委員会における検討内容の大枠とそのスケジュール(案)
  4. 教材例の例(教材例のコンセプト検討用)

〔机上配布資料〕

  1. 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」について事務局から説明があり,その後,西原主査から説明者について紹介があった。
  4. ヒアリング[1]
    村上京子氏(名古屋大学留学生センター教授)から「とよた日本語学習支援システム」における能力評価について説明があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  5. ヒアリング[2]
    安場淳子氏,小川珠子氏(財団法人中国残留孤児援護基金中国帰国者定着促進センター)から「財団法人中国残留孤児援護基金中国帰国者定着促進センター」における能力評価について説明があり,その後,委員との間で意見交換が行われた。
  6. 上記4及び5の終了後,更に自由な意見交換を行った。
  7. 事務局から配布資料3「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」,配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」,配布資料5「活動方法の具体例(案)」,配布資料6「教材例のコンセプトについて」の説明があり,その後,標準的なカリキュラム案の活用及び指導について及び教材例について意見交換が行われた。
  8. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
定刻にはまだ少し時間がありますが,委員の皆様,御発表の皆様はおそろいでいらっしゃいますので,ただ今から文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の通算33回目,今期の9回目の会議を開会させていただきます。お忙しいところ,皆様方には御出席くださいましてありがとうございます。
前回の日本語教育小委員会で,標準的なカリキュラム案の活用について検討を行ってまいりました。また,能力評価に関するヒアリングにつきましても,また教材例につきましても御意見を伺っております。その御意見を踏まえまして,11月9日に第20回日本語教育小委員会ワーキンググループを行いまして,標準的なカリキュラム案の活用について,それから教材例について作業を行っています。
そして,本日は標準的なカリキュラム案の活用についてだけでなく,教材例についても検討を行うのですが,その次の検討事項として,能力評価というのが参考資料3「日本語教育小委員会における検討内容の大枠とそのスケジュール(案)」に載っております。
標準的なカリキュラム案に基づくプログラムの評価ということでございますが,学習者の日本語能力の評価ということから検討いたします。検討の進め方としては,まずは「生活者としての外国人」に対して,既に能力評価を行っていらっしゃる団体,機関からヒアリングを行ってお話を伺い,その取りまとめを参考に本小委員会で更に検討を続けるということを前回の日本語教育小委員会でお認めいただきました。
本日は日本語能力評価に関するヒアリングの第1回目でございまして,とよた日本語学習支援システムからは村上京子氏,財団法人中国残留孤児援護基金中国帰国者定着促進センターからは安場淳子氏,小川珠子氏に来ていただいております。それぞれ能力評価についてお話を伺い,その後,時間が限られてはおりますけれども,標準的なカリキュラム案の活用,それから教材例について検討を行うということにしたいと存じます。
では,村上先生から御発表をよろしくお願いします。
村上京子氏からの説明とその後の意見交換
村上でございます。よろしくお願いいたします。発表資料については,配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の配布資料2−1[1][2]に全て載せていただいておりますので,スクリーンか配布資料かどちらか御覧くださいませ。
とよた日本語学習支援システムというのは,3年ほど前から豊田市の委託事業として請け負っております。
ここでは日本語がほとんどできない外国籍住民に対して,周囲の支援があれば日本語でコミュニケーションできるというレベルに達するまでの日本語学習を保障することにしております。そのために,学習成果を見えやすくすること,それから,内容は日常生活や就職に直結するようにするということによって,学習者が学習意欲が湧くシステムを作っていくということを目指しております。そのために,このシステムの一環として,豊田市内の様々な場で共通に認知されるような,外国籍住民の日本語によるコミュニケーション能力というものを判定するための基準と,その測定方法を開発いたしました。
配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の8ページ,上半分が全体システムの概略図なのですけれども,細かいことは今日はお話ししませんが,ここでプレイスメントテストなど,能力判定というのを柱として立てております。
配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の8ページ,9ページについて,この能力判定というのは,学習者の側としましては,自分の能力を把握するとともに,目標を確認し,学習への意欲を,それから学習したことの手応えを感じられるものにする,そして将来的には,就職などにも証明書として使えるようにしていきたいと思っております。また,支援をする者たちにとっては,ガイドラインに沿って配置―ガイドラインというのはまた御紹介しますけれども,とよた日本語学習支援システムのために作ったガイドラインで―これに沿って配置・活動していくための手掛かりとなり,学習者が移動したときにスムーズに日本語能力についての情報把握ができるようになることを狙っております。ざっと言いますと,この判定の目的は,行政や受入れ側が使える尺度を作るということと,学習者のインセンティブ(incentive)を創出するということが目的です。
9ページ下に移りますが,基本方針としてはこの五つを考えております。
一つは固定的な能力と言うよりも,やはりやり取りの中でもって,はっきり言ってほしいというふうに要求したりとか,それから,相手が配慮してくれることによって同じ能力でも伝わったり伝わらなかったりということがあるとかということで,動的で可変的な能力を把握する。それからコミュニケーション能力。それから日常生活の中で使う日本語。それから,できるだけ基準を具体化して分かりやすくする。学習者の気付きをやる気につなげるということです。
10ページ上ですが,相互の歩み寄りを通じて成り立つコミュニケーション能力を育てるということですが,これもやはり可変的な能力です。それから,伝わることを重視して,正確さということはそれほど問いません。それから,判定のタスク(task)というのは,日常必要とされる日本語を対象とします。それから,基準は何ができるかということを行動記述によって分かりやすく結果を伝えるとします。それから,最終的にやはり学習者の気付きをやる気につなげるようなものとする,そのために手応えを感じられるような評価を作るということを目的にして作られました。
10ページ下に移ります。これが,このシステムに関わる全ての人が持っているべき枠組みとして考えられている能力レベルです。レベル0からレベル6までの7段階を私どもは考えております。
レベル0というのは,「日本語の産出と理解がまったくできない」と書いてありますが,例えば,あいさつだけに限られるというような段階です。
それから,豊田で測定を行った際,以前に予備調査を行った結果,おおよそレベル0からレベル3までの学習者がほとんどで,レベル4以上という人はほとんどいませんでした。
11ページ上が技能別に,聞く,話す,読む,書くにそれぞれのレベルの,レベル0からレベル4までの能力記述ですが,まだ不十分ですけれども,これをまた細かくキャンドゥー(can-do)に落としてあります。
レベル1というのは基礎段階で,限られた単語の理解とか産出ができる。例えば,読むだと平仮名,片仮名で書かれた自分の名前とか国名とか,日常生活で非常に必要性の高い,ふだん接する機会のあるものであれば読めるというのがレベル1です。
さらに,要支援段階というのが,周囲の助けがあれば日常的にやり取りができるという段階で,私どもはこの2のレベルに全員を,市民の日本語を2のレベルにするということを目標にして活動しております。
この基準を作った,それから測定方法を作る際に参照した情報としましては,2007年に,豊田市の外国籍住民及びその住民と接触のある日本人を対象に行ったアンケート調査とインタビュー調査を行ったものがあります。800人ぐらいの対象者に配ったんですけれども,回収できたものは外国籍住民が247名,それから日本人が87名でした。
この結果をまとめまして,日本語でどんな場面で使う必要があるのか,それから,それが日本語でできるかどうかという能力,それから,そういうことができるようになる必要があるかどうかという希望や必要性について,日本人側とそれから外国籍住民と両側から調べました。この結果を報告書にまとめたのですが,その結果はとよた日本語学習支援システムの判定を作成する際に相当部分を資料として使いました。
もちろん,ヨーロッパのCEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ共通参照枠)の基準について,このアンケートを作る前から勉強会をしまして,土台にしております。それから,判定に関わる人間にOPI(oral proficiency interview)テスター(tester)が相当数いるものですから,OPIの判定基準も参考にしております。
12ページ上に移ります。おおよそなのですが,CEFRと比較しても,1対1で対応はできません。むしろ下の方のレベルはとよた判定基準の方が幅が広いというか,下に位置するんですけれども,A1レベルの上のほうのレベルが要支援段階に当たると考えております。
12ページ下が実際にテストをしている風景でございます。工場の中で筆記試験をしているところです。
13ページ上が―後でご紹介しますが―Can-do-statements(キャンドゥーステートメント)を記入しているところです。それぞれ母語でもって書いております。
13ページ下及び14ページ上が同じ食堂で1対1で口述試験を受けているところです。
14ページ下に移ります。判定試験ですが,以前は一本化していたんですけれども,現在は対象者判定試験とレベル判定試験に分けております。
15ページに移ります。初めに,対象者判定試験についてお話しさせていただきたいと思います。現在はこの対象者判定試験がほとんどですので,それを中心にお話しさせていただきます。
この対象者というのは支援対象者であり,日本語学習支援,つまり市からお金を出してこの教室に参加することができるかどうかという判定をするもので,このプレイスメントテスト(placement test)に当たります。この支援クラスに参加したいと希望している人は誰でも受けることができます。今はその教室でもって試験をしております。
16ページですが,誰が判定するかと言うと,この対象者判定のためにテスターを養成しておりまして,そのテスターが判定を致します。
判定は,先ほどのレベル,7段階のレベルの中のレベル0,レベル1,そしてレベル2以上という判定をします。つまり,レベル1とレベル0の学習者の人がこの支援教室に参加することができるということになります。レベル2以上の方は,場合によっては2以上のクラスを作っている工場とか地域もありますので,そこに入っていただいたり,他の教室を紹介したりしております。
対象者を判定するテスターの研修会は,現在は年に4回実施しております。定員は10名ということで,ここではこの判定の実施要項,マニュアルを解説し,また模擬試験を体験してもらって,2時間の講習を受けてもらいます。その講習の後,すぐにテスト会場に入ってもらい,初めは,例えば私の隣に座って1人,2人,一緒に補助的に手伝ってもらって様子を見てもらい,それから実際にテストを受けてもらうことになります。そのときには私がしばらく見ていて,後で何か指導が必要であったら指導するということで,即現場でテスターとして動いてもらっています。
これが募集のときには,チラシを配っているんですが,前回行ったのが10月16日で13:00から15:00までで,豊田市の国際交流協会の中で行いました。そのときのチラシでは定員10名でしたが,10名定員,満員になりました。
16ページ下について,対象としましては20歳以上で[1],[2]に該当する人ということで,本システムが運営する日本語教室に3回以上参加したことがある,またはそれ相当の経験がある―中には2回という方もいましたけれども―一応どういう教室を行っているのか分かっている方で,それで今後はテスターとして活動していきたいという希望がある方に―これは日本人の方,外国籍の方,特に問わずに―参加していただいています。前回の平成22年10月16日の回は,全員市民の方でした。工場で働いて一緒に,この教室に参加したことがあるというのは,学習パートナーと呼んでいるのですが,ボランティアでもって外国の方と接したことがあるという意味です。
17ページ上について,評価の方法には三つのブロックがありまして,1つはキャンドゥーステートメント(can-do-statements),30項目で,これはそれぞれ母語で書いて,反応してもらっています。現在は,ここに書かれているような10言語のバージョン(version)がございます。
それから,聞く・話すテストについて,インタビュー,ロールプレイ,絵を見て話すというようなタスクを通して測っております。読む・書くテストは判定シートがございまして,これも母語対応でもって,現在のところ10言語用意してあります。
17ページ下,キャンドゥーステートメントは,大きく,聞くこと,話すこと,やり取りすること,読むこと,書くことの5つのブロックでもって,4段階評価をしております。
例えば,18ページの上半分では,今は日本語で表示していますけれども,「まったくできない」から「簡単にできる」までの4段階で,例えば買い物のとき,物の値段や数を聞き取ることができる,簡単であれば4ですし,全くできなければ1ですし,自己評価をしてもらっています。
読み書き判定シートは選択肢の配点もあるのですが,かなり省略してありますけれども,問題文は全部母語になっておりまして,読むべき語彙などが日本語で書かれています。名前を書く,住所を書く,それから男女の性別を選ぶというものから,例えば風邪なので今日は仕事を休みますというようなメモを書くというようなことまで入っております。
それから,19ページ上のインタビュー・テストですけれども,これはどのくらい歩み寄ればコミュニケーションが成立するかということを大変重視しておりまして,普通の市民の普通のスピードでもって,「お国はどちらですか」と聞いた後,それが「え」とかと聞き返しがあれば繰り返すし,それが分からなければ「お国は」とか「国は」とか,「国はペルーですか」というように,段々と分かりやすい質問に下げていき,どの段階で反応があったか,それから反応があった場合どういうレベルで答えてくれたか,それから,実際に答えた後どういった受け答えをしたかということを測っております。それをずっとチェックをつけていくことによって,どのレベルでどの問題はパスしたかというようなことを,後で集計するようになっております。
それから,19ページ下の話すテストのもう一つのロールプレイ(role-play)というのは,インタビューではテスターが一方的に聞いて,それに対して答えてもらうということが中心なのですが,反対に受験者の方から質問してもらうということを狙って,「今から,あなたが私に質問してください,あなたと私は,今初めて会って,これから自己紹介を始めます。私たちが仲良くなるために,[1]名前とか[2]住んでいるところ,[3]家族,[4]好きなことなどについて質問しながら,自然な会話をしてください」というようなことが母語で書いてあります。学習者が理解したらそこからスタートをして,どんどん質問をしていってもらいます。そのときに,どういう質問がされたかということと同時に,こちらが答えたことに対してどういう受け答えがあったかということを,チェックリストで測るようになっています。
それから,20ページ上,「絵を見て話す」。どのぐらいの語彙とか表現があるのかを調べるために,これはシートを渡しまして,「この人は山田さんです,この人は昨日どんなことをして,何をしたのか話してください」という説明を求めます。人によっては「スーパー,家,御飯,携帯,テレビ」というような説明をする人もいれば,「仕事が終わってから買い物に行きました,買い物の後,家に帰って…」というように話をつなげて,詳しく説明してくれる学習者もいます。そして,時間をきちんと言えるかとか,電話番号だとか値段などがきちんと伝えられるかというようなことを判定いたします。
こういうタスクによって,聞くと話すの対象者判定では判定をしております。
20ページ下について,今まで,大した実施はしていないのですが,実績としまして2008年度,一昨年は11回,企業5社,団地2地域,それから緊急日本語講座で講座が終わった後の8団体から,どこのレベルまで達したか是非判定してほしいという要請を受けました。8団体,2回の実施もあったものですから,11回で215名の判定を致しました。その215名の判定をするために,随時テスターを養成しましたので,このときは12回のテスター研修を致しまして,21名のテスターを養成しました。
この判定の時には,レベル0からレベル4まで初めはしていたんですけれども…。すみません,先ほどレベル2までを実施していると言っていたのですが,この時期はこのレベル4まで能力判定を行っていました。緊急日本語講座で,短時間に大勢判定してほしいというような要請があったものですから,簡易判定2回と下に書いてあるのはそれなんですけれども,70名,64名という人たちを,この時間内に全部判定してほしいということがあったので,この時は急遽(きゅうきょ) 簡易判定を作って行ったり,それから,講座の間に模擬面接をしたりしました。21ページの上ですが,この時のいろいろな経験を基に,次の年,2009年に少し改定をしまして,対象者判定という形で,聞く,話すのブロックで判定をするのと,読む,書くで判定をするのというのに分けまして,昨年度は18回実施して判定者数201名を判定しました。
その結果,レベル0の人が話す,聞くでは2%,レベル1が29%,合わせて30%ぐらいの人が話す,聞くでもって対象者として判定されました。それから,読む,書くではレベル0が32%,レベル1が35%,3分の2の方が対象者というふうに判定されました。昨年は4回のテスター養成で30名のテスターが誕生しました。
21ページ下,今年度は,今のところ12回,157名の判定を行っています。テスター養成は3回,今のところやっていまして,27名が参加しております。
今年の157名について言いますと,会話のクラスに対象者として判定されました者が40%,それから読み書きクラスが32%です。これはなぜかと言いますと,読み書きも不十分だけれども,会話がまだゼロ,1レベルを脱していない方は,まず会話クラスに入っていただくということになりますので,会話クラスが40%,読み書きクラスが,実際には六十何%いるにもかかわらず,クラスに入ったのが32%。対象者外が28%ということになっております。
実はこの対象者外というふうに判定された方の中にも,もっと日本語を勉強したいという方もいるので,現在,このレベル2の方のための教室というのを開発しております。むしろ少しできるぐらいの学習者の方が熱心に,是非教室に入りたいということを言ってくるので,今は対象者外,つまり支援のお金では実施しないけれども,会社がお金を出せばやるとか,その団地でもって幾らかのお金を有料でもってやればどうかということについて今,模索しているところです。
具体的な技能別の割合が22ページ上です。これは157名の今のところの状況で,さすがに聞くでレベル2以下という人は少ないですけれども,話すだと30%以上がレベル1以下と判定されます。
22ページ下,受験者の国籍は,やはりブラジルの国籍の方が4分の3おります。その他に,中国,ペルー,タイ,台湾,ベトナム,その他というのはフィリピンとかインドネシアの学習者でした。
23ページ上,結果の活用としては,ある工場で25名の希望者がいたときに,11名のグラフ上で,丸の付いているところの人が対象者として判定されました。ここでもレベル2という方がかなり多く,この方たちが非常に熱心だったので,このレベル2の人たちを他のクラスとして作りました。それから,2008年のデータですみませんが,レベル4という方は通訳として活躍している方も是非受けたいというので,通訳の方に受けてもらったときにレベル4になりました。
23ページ下,この対象者となった一人一人の成績の,教室前と指導が終わった後,ブルーの棒グラフが始まる前で,えんじ色が終わった後の結果ですが,矢印のあるところがそれだけ伸びたということを示しています。特に教室が終わった後,ロールプレイのようなやり取りのところでぐっと伸びている学習者が多かったということです。
24ページ上,これが証明書として出しているものです。今は,日本語のページが上に出ていますけれども,この裏にそれぞれの母語でもって,結果とそのレベルがどういうことができるレベルなのかということを表示したものでございます。会社の方や誰かに見せるときに使うだろうということで,日本語も表示しています。今,ある会社では,このレベルを何とか給料―と言っても幾らでもないのですけれども,少しインセンティブを付けようということが検討されています。
それから,24ページ下,25ページ上のレベル判定ですが,これはまだいろいろ問題があるのですけれども,やはり教室には入れないけれども,自分のために是非判定してほしいという希望者がいるものですから,支援の教室とは独立してこういう判定を行おうと考えています。
今のところは,聴解テストとか読解テスト等は全部終わるのに2時間掛かってしまうので,これを何とかもう少し効率的にしたいと考えております。それから,判定者は対象者判定とは別に,レベル判定のテスターというのがおります。レベル0から4までの技能別の判定を行っております。
25ページ下,判定方法は一応,行うものは同じなんですが,少し中身が違って,聞くテストはインタビューではなくて,別の聴解テストを作っております。それから,話すテスト,例えばロールプレイもいろいろなタスクでレベル4まで測れるタスクというのが用意されています。絵を見て話すようなことも,4コマ漫画のようなものが入っております。それから,読み書きのテストについても,より高度なレベルを含んだテストが用意されております。ただ,時間が掛かることがネックで,それを何とかコンピュータ・テスティングにならないかということで,現在業者に依頼しているところです。
26ページ,今後の課題としましては,この対象者判定を更に普及していきたいと考えています。このレベルというのが豊田市の中でもっと分かりやすく伝えられないかということで,現在テスト風景をビデオに収めておりまして,その中から典型的なものをDVD化して配布するということを考えております。今,テストを受けてくださる方から同意書にサインを頂いて,その様子を今,ビデオ撮影をしているところです。それから,レベル判定テストを改善していくということで,特にコンピュータ・テスティングの導入,キャンドゥーステートメントに関しては,今年度中にウェブ上で公開できる予定でおります。
それから,対象者判定のテスターについては,かなり養成プログラムが確定してきたのですが,レベル判定のテスターを養成するのがかなり難しく,今後どうしようか悩んでおります。
それから,まだできていないのですが,更に上のレベル5,6の基準を確定することと,評価法システムをどう支援していくかということを考えております。
○西原主査
ありがとうございました。御質問,御確認項目等ございましたら,どうぞ。
○山田委員
目的のところで,学習支援対象者かどうかということについて,レベル2以上だと対象にならないということを伺ったのですけれが,学習したいからわざと自分でレベルを下げるという人はいないのですか。
○発表者(村上)
今のところは,レベル1と2と,15分ほどインタビューしますと,やはり分かってしまいます。非常に上のレベルならそういうことができるかと思うのですが,今のところ特にそういうことを感じたことはありません。もし,そういうことをしてまで入ってくださるなら,どうぞ来てくださいということで受け入れたいと思います。
○山田委員
それともう一ついいでしょうか。読む,書くの方の学習希望者が,自分のレベルがゼロ,あるいはレベル1であるにもかかわらず,学習希望者が少ないというのは,読み書きについてはふだんのニーズも,その人の生活していたり職場でだったり,そのニーズが低いということでしょうか。
○発表者(村上)
ニーズはとてもあると思います。最初の予備調査でも,読み書きのニーズは非常に高く,特に「薬の袋が読みたい」とか,そういうことは強く言われいます。実際には名前が書けない方,読めない方がかなりいます。ニーズはたくさんあり,割合は高いのですが,そういう方たちはまず会話のクラスに入ってもらいます。会話ができるようになってから読み書きを学習してもらうというように,教室受け入れの順序を私どもが勝手に考えたものでございます。
○岩見委員
基本方針の中で,3番の日常生活の中で使う日本語として,市民として生活する中で必要とされる日本語と,これは教育内容にも関係してくるかもしれませんが,何かその評価のところで,社会参加を促進できる能力であるとか,人間関係を構築する能力であるとか,そういうような観点での評価項目というのは入れているのでしょうか。方針として,この中身がどのようなカテゴリーになっているのでしょうか。
○発表者(村上)
教育内容と非常に関わるところなんですけれども…。タスクとしましては高いものを入れたつもりですが,ただ,教室内容のアチーブメント(achievement)の評価ではなく,プロフィシエンシー(proficiency)を測ろうということなので,非常に難しくて,個人にとって非常にニーズの高い項目というのは,他の人には要らない可能性があります。その共通項を選んでしまうと,共通項って誰にでも余り要らないものだったりするところが悩ましいところですが,ニーズ調査のときに非常に高くて,こういうことを測ってもらえば受験者も納得するだろうというような項目を考えました。ですから,あり得ない,遭遇することはないだろうという項目は入れないという方針で考えました。人間関係を構築するためにどういうタスクが必要なのかは分かりませんが,先ほどのロールプレイ等は,まず会って相手のことを知りたいだろう,どういうふうに話し始めて,どういうふうにやり取りをしながら,お互いの情報を交換していくのか,まず学習者の人たちは,人に質問する前に自分の自己紹介を始めたりしますので,そういうことがどのように進んでいき,相手のことをどう聞き出すのか,例えば家族とか趣味という言葉が分からなくても,それをうまく自分の例を挙げながら,「あなたはどうですか」ということが言えればいいということで測っております。
○西原主査
結果の御利用ですけれども,一つは学習者自身の,「もう少しやってみよう」という動機付けとおっしゃいましたね。それから,学習者が移動して違う日本語教室に行くときに,教師と言うか,支援者側が結果を見て「この学習者はこういうレベルだからこういうレベルの教室に入れる」ということと,もう一つは,インセンティブとして待遇がよくなるというようなことがあったと思いますが,それぞれこれを受けた方々は,それらのことを結果として享受しているのでしょうか。
○発表者(村上)
受けた方には結果をお伝えしてはいます。ただ,教室の最後の振り返りの授業の時にできるだけ活用しようというので,特にキャンドゥーステートメンツを最初に受けたものと,最後にやってみてどう変わったかということを比べています。なかなかレベルが,急に1の人が10回のコースでもって2になるというのは難しゅうございますけれども,具体的にこういう項目についてはこう変わったということには非常に役に立っているということです。
○杉戸副主査
判定に使われるタスクですとか,日本語を使って何ができるかという,その項目の中身に,豊田の地域性と言いましょうか,他の地域では余り問題にならないだろうけど,豊田ではこれが大切だから入れたというような,豊田に特化されたシステムという側面はどれぐらいあるのでしょうか。
あるいは,質問で出てくる地名を,豊田から例えば岡崎に替えたり,岐阜に替えたりすれば,そこでも使えるというような,汎用的な使い方のできるタスクや項目内容なのでしょうか?
○発表者(村上)
例えば,どこに住んでいますかというようなことをいろいろ聞いて行って,具体的に保見,岡崎みたいな例示のところは,実施する地域によって変えています。例えば,岐阜でもって是非やってほしいと,判定してほしいというような要求がありますと,その岐阜の地域名に変えたりとか,それから,研修生だと,まだ何時から何時まで働いているかというような時間が分からないというような方には,日本語の勉強は何時から何時というふうに変えたりというようにしています。同じ内容を聞く,目的は同じだけれども具体的なところが違うというように変えながら行っていますので,一応市民向けとしましてはどこでも使えるだろうと思います。ただ,これを大学等でやろうと思うと全く違うということはあると思います。例えば,先ほどの絵でも,あれは工場で働いている人の絵ですので…。
○西原主査
ありがとうございました。まだまだ御質問等たくさんあるかと思いますし,村上先生にはもしかしたら,明日辺りメールで質問が集中するというようなこともあるかと存じますけれども,どうぞよろしくお願いします。
○発表者(村上)
よろしくお願いいたします。
○西原主査
では,安場先生,小川先生の御発表に移らせていただきたいと思います。
安場淳子氏,小川珠子氏の説明と意見交換
中国帰国者定着促進センターの教務から参りました,安場と申します。よろしくお願いします。配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の27ページからの配布資料2−2[1]〜[6]に沿って始めさせていただきます。
まず,今,とよた日本語学習支援システムの話を伺っていて,基本的な方針やコミュニケーション観や,あと恐らく,コミュニケーションは共同作業であるということについて,その一番大事なところはかなり共通性があると思いながら伺っていました。
私どもが対象にしている帰国者(※中国からの帰国者だけでなく,サハリンからの帰国者も含まれるため,ここでは両者を含めて「帰国者」と呼ぶ。中国からの帰国者だけに限定される場合,「中国帰国者」とする。)の方で,あえて違うところがあるとすると,学習適性にかなり幅があるというところだと思います。後は中国帰国者の方は漢字圏であるということです。ですので,その辺りが恐らく影響してくると思いながら拝見しておりました。
まず,全体的なことを御説明したいと思います。中国帰国者定着促進センターでは,帰国者に対する公的な学習支援システムの中で評価を考えております。それと言うのは,当センターを出られた方は全国各地に定住されて,そこで一定期間学習をされた後,また続けて学習の機会を,一応通信教育なり再研修なりという形で設けておりますが,それらの方々は国費の帰国の方であって,厚生労働省が責任を持って行っております。それ以外に,後から残留孤児の方や婦人の方が呼び寄せられた,「呼び寄せ」と言われている方々が―その数倍,あるいは10倍とも言われていますが―いらっしゃいます。それらの方々は,今までは学習支援の機会が余り得られないまま,ただただ生活をしていたという形が長かったんですね。数年前から通信教育の課程を始めまして,そこは呼び寄せの方も参加していただくようになりましたので,中国帰国者の方々全てに対して学習の機会を提供していきたいということになりました。それに当たっては,やはり評価の水準を設定して次の目標につなげていただくということが必ず必要であるということで,システム化をここ数年の課題にしてまいりました。
その評価の枠組みとしましては,これは27ページ「(1)評価についての考え方」の「[2]評価(能力評価)全体の枠組み」になるのですが,六つの能力の領域を設定しております。
一つ目が「a 身近な生活行動力」,これは本当にサバイバルレベルのものから始まりますが,病院に行ったり,郵便局に行ったり,あとは地域社会に参加したり,もちろん仕事をしたり,いろんな行動力というので一つです。それから,それを支えるであろう「b 日本事情等の理解」,これは本当に知識です。日本の首都はどこだというようなレベルもありますし,日本人は物をもらったらお返しをすぐするとか,割り勘にするとか,どうしてそうするんだとか,そういう文化事情も含まれております。
それから,三つ目の「c 基礎的コミュニケーション力(聞く/話す力)」が,聞いたり話したりする力で,これが一番重要かと思っております。後ほどこれに関して,詳しく小川から御説明します。
そして,あと「d 聞く力」,「e 読む力」,「f 書く力」です。この聞く,読む,書くに関しては,先ほどの基礎的コミュニケーション力とは別に,一方的に放送を聞いたりとか,あと新聞を読んだりとか,それから,書くは本当に申込書の記入から始まって手紙を書くとか,そういった一人でやる力を想定しております。
それぞれに中長期的な学習継続の視点からの水準を考えております。と言うのは,恐らく中国帰国者の方に特有と思われるのは,特に孤児本人の方がもう高齢化していて,今更,日本語の取得はほぼ困難であるにもかかわらず,ルーツが日本だということで日本語の学習を必ずやりたいという方,とても動機付けが高い方が多いのです。ですので,そういった孤児本人の方々のニーズも受け止めなければいけないし,2世,3世の方は働きながら,子供を育てながら日本社会に入っていかなければならないというところで,ニーズはとても高いということがあります。しかし,学習適性がかなり困難な方が多いというアンバランスであることが特徴であると思っております。
そういう方々に対してどのように支援ができるかということで,次の「(2)目的」ですが,まずは所沢の中国帰国者定着促進センターについての話です。と言うのも,成田からの直行組で,永住帰国されて半年研修を受ける方々なのですけれども,その予備的集中研修において学習者の自律的な学習を促進するため,そして教授者のクラス運営を改善するため,そして所沢のカリキュラム全体を改善するために,評価をシステムに組み込んでおります。
学習者の自律的学習の促進というのは,中国帰国者定着促進センターを出られた後,学習機会が実は完全に全国で保障されているわけではないので,何とか生活の中でも日本語を学んで行けるということを分かっていただこうということ,あるいは自学の力を付けたい,例えば辞書など引いたことのない人もいるのですが,何とか引けるようになろうとか,生活の中でどうやって言葉を拾うか,そういうのをやってみようといったことも含まれてきます。
そして「[2]所沢修了後の帰国者/所沢を経ない呼寄せ家族を対象とする学習支援の現場において」ですが,所沢の中国帰国者センターを修了された方,あるいは所沢を経ない,先ほど申し上げた呼び寄せの家族の方を対象とする学習支援の現場というのがやはりございます。自立研修センターというのが,今はもう数が少なくなってしまいましたが,所沢修了後,8か月ないし1年,一応設けられております。その後は通信教育をいつでもどこでも受けられるシステムを作っておりますが,それらの方々の現場において,学習支援者や,あとその他様々な支援者の方に,帰国者の現在の力を把握していただいて,カリキュラムの作成と改善に役立てていただくために考えています。
中国帰国者本人にも,自律的学習促進のために資料として,修了のときにできれば―まだこれは半分しか実現していないのですが―ポートフォリオ(portfolio)形式で,今ここまでにできていることをチェックしてもらって,「これを持って定着地に行って続けて学習しましょう」ということをやろうとしつつあります。
そして,「[3]所沢と各地の支援者との連絡・連携を効果的なものとするため」ですが,所沢の中国帰国者定着促進センターと各地の支援者との連絡や連携を効果的にするために,この場合は所沢の中国帰国者定着促進センターの出身であると否とにかかわらず,帰国者の支援者の方と同じ枠組みで続けて支援していくということで,評価の枠組みを設定していこうとしております。
次に,まず重要と考えているうちの,先ほどの「(1)評価についての考え方」の「[2]評価(能力評価)全体の枠組み」の「a 身近な生活行動力」に関して,少し簡単に御説明したいと思います。実はここで言う生活行動力は,サバイバル(survival)レベルのことなので本当に大変重要なのですが,中国帰国者定着促進センターに皆さんがいらっしゃる間に,実習というのをやっています。バスに乗ったり,電車に乗ったり,実際に外に行って何かをして帰ってくるとか,徐々にステップアップ(step-up)する形で実習をします。まずはただバスに乗る,次は駅まで行ってくる,次はどこか乗り換えてみるというような感じでやっておりまして,それを学習者の方は自分の力として見ていらっしゃると思います。それぞれの単元というのが,例えば消費生活に関して,交通に関して,あとは地域での生活に関して,いろいろ所沢の中国帰国者定着促進センターでの6か月,できる範囲でいろいろ評価を―評定ですね―学習者の方に自己評定をしていただいています。
それが,配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の28ページに行きますが,これは測定というよりは,本当に評定なので「4.能力評価の方法について」ののところに記入したのですが,「4.能力評価の方法について」の「(2)評価規準」を御覧ください。右側の欄に「「身近な生活行動力の水準表」*4」と書かれていますのが,資料の一番最後,37ページに少し例をお付けしました。これは,交通と消費に関しての例でございます。これは,実はもっと続きがあるのですが,所沢の中国帰国者定着促進センターにいる間にイメージの湧く範囲のものに絞りました。本当は定住地での生活でもっといろんなことに遭遇するのですが,初めの6か月でイメージが湧く範囲にとどめております。
こういった形で,何度か実習を経て学習者の方に,今自分はどの辺りかというのを評価していただき,それで今後どうして行くかという目標設定をしていく参考にしていただいております。
学習者の方の評価と担任が見ている評価がずれることが往々にしてあります。自信満々で全部4と付けている人が,「いや,そんなにできないでしょう」ということもかなりありますし,その逆もあります。「もっとできるでしょう」と思うのに「2」や「1」にチェックを付けている人もいます。その辺りは定期的に学習相談の場を設けており,自己評価はとても大事なので,どうしてそう思っているのかということを,「他人が見る目はこうだよ」というのを伝えながら,次の目標に何となくすり合わせをしていく場というのを定期的に設けております。
次に,話が戻りますが,35ページに,「中国帰国者 身近な生活行動力 水準表 ver.1.2」とありますが,生活行動力に関して大体5段階の基準を設定しております。これも見ていただくと分かるとは思いますが,5というのが一番高く,本当に普通に,何の苦労もなく,行動場面で何かができるというレベルです。ただ,これが行動力の場合は,もちろん言葉も絶対必要なのですが,特に中国の方,漢字圏の方の場合は,非識字者ではない限り,漢字の表示が読めるので助かってしまっているのです。例えばどこかへ行くのに一言もしゃべれなくても,表示を見て漢字さえ分かれば,かなり複雑な行程でも行きたいところに行けてしまいます。ですので,これは必ずしも口頭の言語を言わなくてもよく,とにかく行動さえ達成できればいいということで,生活行動力に関しては,コミュニケーション力はもちろん絡みますが,ある程度独立させて判断しています。
学習者の方の場合も,中国の方は特に,口頭で言うのが苦手だけれども,見るのは得意という人が多いです。それはそれで本当に日常生活できているわけですから,そこはそれで評価するということで,ある程度分けています。もちろん,口頭でのやり取りと生活行動力が完全独立ではないですけれども…。
ということで,生活行動に関してはこのように評定しています。ロールプレイのような評価と言うか,測定と言うか,そういうことを行ったこともあるのですが,結局現実の生活行動というのは,相手の日本人の人がコミュニケーションの技術が高いかどうかや,親切かどうかや,あと中国人を嫌っていないかとか,様々な要素でも変わってきてしまうことがあります。ですので,ロールプレイで評価してはいけないなというのが最終的な結論です。外でいろいろ体験してきて自己評価してもらうという形と,あとはできる範囲で支援者が観察する,あるいは話を聞くというところに所沢の中国帰国者定着促進センターでは落ち着いております。
では,配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の27ページ,「2.能力測定の実施について」の「(1)評価についての考え方」の「c 基礎的コミュニケーション力(聞く/話す力)」に関して小川さんからお願いします。
○発表者(小川)
小川と申します。よろしくお願いします。先ほど説明しました,生活行動力の下支えにもなる基礎的コミュニケーション力について,配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の27ページに戻っていただきます。「2.能力測定の実施について」の下半分が左右二つに分かれております。左の方,こちらがその「c 基礎的コミュニケーション力(聞く/話す)」に関する話になりますので,そちらを御覧になりながらお聞きください。
この基礎的コミュニケーション力と言いますのは,先ほどの「身近な生活行動力」の下支えでもあり,こちらはその人間関係をいかに構築していくかという部分が一番重要であろうということで,そういう力を付けていくということを非常に重視しております。その部分を測定するための一つの案として,面接テストというものを中国帰国者定着促進センターで今現在実施しておりまして,それについて説明させていただきます。
所沢の中国帰国者定着促進センターでは,以前から,もう十数年前から来日して本当に研修が始まったすぐの時点と修了前の時点に日本語面接を実施してきました。その面接というのはどちらかと言いますと,中国帰国者定着促進センターでの研修を受けるに際し,コミュニケーション観を少し変えてもらうための面接でした。今回御紹介する面接と言いますのは,飽くまでも現在のコミュニケーション力の水準を測定するための面接で,少し前から実施しておりました面接とは少し目的が異なるものです。,「(3)実施時期及び実施に要する時間」の欄にありますように研修の中間時と修了時に実施しております。
中国帰国者定着促進センターに来る帰国者は,大体日本語を未習で来られる場合が多いので,面接については少し日本語を勉強して中間段階,来日してから3か月か4か月に入ったぐらいで一旦実施し,それから修了の前,2か月後ぐらいに実施するという形でしております。
所要時間は15分程度ということで,実際に面接のシートを見ていただきながらの方がイメージを持っていただきやすいかと思いますので,配布資料2「能力評価に関するヒアリングについて(案)」の29ページ―A3の見開きのものなのですけれども―「87期 外部用日本語面接シート」のようなものを使って実施しております。実施方法については直接実施ということで,現在所沢の中国帰国者センターの講師が直接学生に対して実施しておりますが,後で課題のところで少しお話ししますけれども,今後は地域にあります自立支援センターでも,これを実施し,テスターも養成しながら,各地で実施できるような方向に,今持っていきたいと考えております。
28ページの「3.能力測定の方法について」について「(1)測定者」は,テスターとしての研修を受けた日本語講師となっております。このテスター養成に関しては,今現在のところ,基本的に今所沢の中国帰国者定着促進センターの講師で,今までの日本語面接の経験がある者がやっております。実際にそういう経験のない方のテスター養成というのは,近々やる予定ですが,まだ蓄積がないので,結果,どのような形になるかは正確にはお話しできませんが,2時間程度として考えております。テスターマニュアルというものがありますので,それを読んでいただき,さらに各水準のビデオというのも作成しておりますので,この水準の学生だったらこんな具合に話ができるというものを見ていただいて,イメージを持ってもらい,それから,少し模擬で練習をした後,実際に面接をしていただきます。その後,実際に面接をした結果を受けて,少しフィードバック(feedback)をするというような流れで,テスター養成を考えております。
「(2)測定内容」に関しては,「(雑談,歓談場面での)日本人側・帰国者側双方の“協働”のもとに成り立つやり取りにおいて,発話の意図をどれだけ正確に伝え合えるかを測定する」と書いてあります。
先ほど安場も申しましたが,とよた日本語学習支援システムの方の御発表を聞きながら,通じるところが多いと思ったのですけれども,とにかく手助けが前提となっています。通常の日本人同士の会話であっても,お互いに会話というのは協働して成り立たせていくものであるということが,大前提としてあります。お互いに分からなければ言葉を変えてみる,それから,質問された内容が分からなければ聞き返すというようなことを自由にやりながら,やり取りをしていきます。その際のトピック(topic)というのは29ページ「87期 外部用日本語面接シート」に載せております。そのシートの流れに沿って話していくような形になります。
トピックというのは,基本的に初対面同士の会話であれば,このようなことを聞かれるであろうと想定されるものを取り上げておりまして,だんだん少しずつ難しくなっていくような形になっています。ですので,まだまだ日本語でのやり取りが大変な人に関しては,恐らくその1枚目の真ん中ぐらいで終わってしまうかもしれませんが,どれだけ助ければそれぞれのトピックが何とか成り立つのか,すごく助けても駄目なのかとか,そういうことを見ていくような形になっています。
それから28ページ「4.能力評価の方法について」について続けてお話しします。こちらは評価者に関しては,現時点ではやはり所沢の中国帰国者定着促進センターの日本語面接テストを開発した者ということで,所沢の中国帰国者定着促進センターでやっております。テストの実施については,所沢の中国帰国者定着促進センターで基本的にやっております。後は御徒町にあります東京の支援交流センターでも一部実施したのですが,いずれもその評価に関しては所沢の方で判定をするという形にしておりまして,その際の水準の表というのが,31ページ「中国帰国者 日本語能力水準「コミュニケーション力」水準表 ver.2.2」です。
テスターはこの水準表のどこに該当するかということを判定していく訳ですが,その際の評価基準がやはりなかなか難しく,先ほどコミュニケーションというのは動的なものであるということをお話しされていましたけれども,本当にそういう形で,お互いのやり取りの中で成立していくと捉えた場合,非常にそれが評価の難しさと表裏一体と言いますか,難しいところになります。しかし,何とか評価基準について,幾つか枠を考えて,現在使っております。それが33ページにあります「★「各水準のイメージ」:ver.2.2」という一覧表になります。ただ,これは飽くまでも判定の際の資料です。
一番左の欄に,我々がどういう点を見て判定しているかということの基準の枠が書いてあります。上から「話題の範囲」がどの程度なのか,それから「支援度」という言葉を勝手に作ったのですが,その「支援度/支援の内容」に関しても,実はその話題自体の選択も,もちろん支援度が関わってきますし,それから尋ね方をどの程度コントロールするか,それから,相手の意図をどう確認するかということに関しても,どれだけ支援的にそれをやれるかということも関わってきます。そういうものがありまして,それから,「やり取りの滑らかさ」,これはそこにあるような,結果的にどれぐらい往復すればそのトピックが,意思疎通が図られたかというようなこと―それは時間的なものに結構関連してくるのですけれども―そういうものを見ています。
それから,相手側の「発話のわかりやすさ」というところで,発音・語彙の正確さとか,意図伝達の正確さと書いているのですが,基本的に我々が重視しているのは,言語形式というよりは,どれだけ意図が伝達できたかということなので,例えば,言語形式が単語レベルなのか文レベルなのかとかいうことは,前半のような話題に関しては余り問いません。とにかく自分の言いたいことが伝えられて,それが聞き手に分かればよいということで判断しております。もちろん,内容がシートの後半部分に入ってきますと,もちろん文レベルでは済まないような話題も出てきますし,そういうところに来ますと,言語形式の問題というのはどうしても絡んできますが,とにかくその意図がどれだけ正確に伝達できるかというところを重視して判定しております。
28ページに戻りまして「4.能力評価の方法について」の「(3)評価方法」に関しては,そのインタビューの録音,録画データを見て,評価者間の協議により判定と書いています。大体三,四人で話をするのですが,プラスマイナスも付けておりますので,やはりどうしてもずれがあります。いかにずれが生じないようにできるかというところも,課題ですが,現在は複数の協議で判定しています。
最後に「5.能力評価の結果の活用について」と「6.その他」なのですが,評価の結果の活用に関しては,「(1)評価結果の活用表と活用方法」のところは,2回同じことが書いてあります。
ここは,まず大事なのは学習相談時の資料として活用します。これはとにかく本人の目標設定に使いたいということです。今後の学習の動機付けとしてこの結果を利用したいと考えております。そういう意味で,この面接テストに関しては,特にフィードバックを重視しておりまして,「あなたは取りあえず今の段階ではこういう水準ですよ」というのを返すときに,具体的に「こういうところがすごく分かりにくかった」という,細かい所見のようなものですね,それを学習者に返し,具体的に「こういうところを直すといい」というようなことを項目に分けて返すようにしております。
ただ,これはまだ人数が少ないのでできていることで,これが人数がだんだん増えてきた場合,どの程度フィードバックが丁寧にできるかというところもやはり課題ではあります。
それから,修了書類でその定着地の支援者に渡す連絡票ですね,そのデータとして活用しています。支援者間で情報を共有していただくために,今回のこの水準設定ということをしました。例えば,「3」というのが付いていれば,「この人の力はこのぐらいだ」というのが,帰国者の支援者間で共有できるような,一つの尺度として使えるようなことを目指し,今後,先ほど申しました支援交流センターなどでの使用を考えております。
28ページ,最後の「6.その他」のところなのですけれども,これも課題です。
最初に申しましたように,とにかく学習適性の幅が非常に広いです。2世,3世の場合,識字に問題がある人というのは少ないのですが,識字イコール学習適性と直結しているわけではなくて,いろんな要素がもちろんあるのですけれども,やはり中国帰国者の場合,例えば先ほど申しましたように,例えばロールプレイみたいなことも途中で考えたりしたのですが,その場面自体が非常に理解するのが大変である,または何かを説明させるようなタスクをしてもらおうとしたときに,それを理解してもらうところで恐らく引っ掛かってしまうであろうということを考えると,結局対面でやり取りする中で力を測っていくのが妥当ではないかということで,このような形に落ち着いております。
それから,データの収集がまだ100件前後と少ないので,今後更に収集していきたいということ,それから,実際に今後,現在のこの水準をどう上げていくかというようなことで,コースを開発したいと考えております。それを遠隔のコース,通信等でどのようにできるかというと,非常に課題もまた大きいのですが,そういうものに結び付けていきたいと考えております。
○西原主査
ありがとうございました。では,ただ今の御発表に関して御質問,御確認等ありましたらどうぞ。
○加藤委員
最初のところに書いてありますが,実施をされるのが研修中間時と修了時とおっしゃいました。ということはつまり,研修は同時に進行しているということですよね。言語形式はそれほど問わない,とにかくコミュニケーション能力が大事だということをおっしゃっていたのですが,その研修の内容,つまり想像するに,研修はやはり言語形式というところに重きが置かれるのではないかなと思うところと,実際にその目標とされているところとこの判定というのがどのように関連付けられているのでしょうか。特に修了したときというのが,研修内容と能力評価の内容と若干ずれるところがあるかと思うのですが,実際の研修内容とのリンクのされ方はどうでしょうか。
それからもう一つ,ニーズが少ないので切るとおっしゃったので,そのニーズと関連してなのですが,そのテストをされたことが実際にプラスと言うか,研修中に個々に対してどのように結果を還元されているかということについて聞きたいと思います。今日は能力評価というところですが,それが実際に行くところで,活用としてどうされているかというところを伺わせていただきたいです。
○発表者(小川)
研修内容としては,もちろんその言語の形式に関するプログラムというのもやっているのですが,中国帰国者定着促進センターの場合,言語の形式に関するプログラムと並行して,とにかく交流優先と言うのでしょうか,そういうプログラムがあります。それを同時にやっていく中で,今申しましたような力を付けていきたいと考えております。
ですので,それもやはり学習者の適性の幅ということが大きいと思いますが,もちろん要求,こちらが考えるような言語形式に関する知識も,割と問題なく吸収しながら,それを実際に使いながらコミュニケーションできるようになる学習者もおりますけれども,そこに引っ掛かってしまっていては交流自体,コミュニケーション自体がもうそこでストップしてしまうような学習者もおりますので,実際にその交流のプログラムに関しては,本当に内容をいかに伝えるかというところを重視したような授業をやっております。あと交流実習というのを中国帰国者定着促進センターで行っているのですが,その近隣のゲストを招いて交流をしてみようというのも,本当にまだ五十音の清音が終わったぐらいの段階で,一旦お客さんを呼んで話をしてみようということをしております。その場合,中国帰国者の場合,やはり筆談が非常にそれが大きなポイントになり,そういうものが中心になるのですが,いろいろな手段を使えばコミュニケーションができるんだということを実感してもらうようなプログラムと併せてやっています。
テストの効果は,なかなか目に見えて段階が上がるということ,例えば研修の中間段階で行い,修了段階で上がるというのは,やはりそう簡単には行かないんですけれども…。それでも,例えば本当にゼロから始めた学習者ですと,例えば「まず,疑問詞がとにかく聞き取れるようになろう」ということを,重点的に学習したりする中で,最初全然やり取りできなかった内容が,疑問詞には反応できるようになるといったことがあります。学習者自身に自分の中間時のビデオを見てもらい,さらに修了時に撮ったビデオも見てもらい,前回こうだったことがこうなっているというようなことを実感してもらうというようなことをやっております。
○尾﨑委員
二つに大きく分けて説明していただきましたが,最初の方,身近な生活行動力ということで,37ページに表がありましたが,こういうのは本人が付けて,それから先生方がそれを見て,食い違いがあったりなかったりするというお話ですよね。これを単元ごととか修了時ということで,だんだん活動の領域が広がっていくのですよね。
○発表者(安場)
そうです。単元の数が10個ぐらいになります。今はこの2例だけで,交通,消費,病院,子供の学校,職場というのは,実際には働いていないので,うちの中国帰国者センターでは面接を受けるところまでしかできないのですが…。
○尾﨑委員
お伺いしたかったのは,一般的にインタビューをするといった形で,日本語自体の話す力とか聞く力のテストは分かりやすいのですが,こういった行動能力というのは,普通はテストがとてもしにくいです。ですが,これが大事なのですよね。
それで,先ほどポートフォリオとおっしゃっいましたが,そういうこととの兼ね合いなのでしょうか。この部分を測るとはどうすればいいのかなと思って伺いました。
○発表者(安場)
おっしゃるとおりで,実際に測定するのは難しいです。ですが,実際に何度か外に出かけていく実習の中で,交通と消費に関しては本当に実習ができます。この6か月の中で買い物に実際行ってみてもらったり,売り場を探して買ってくるというタスクをあえて課したりとか,乗換えについて例えばルートも自分で検索して,切符を買って行って帰ってくるとかということはできますので,それは実際の実習がうまくいけばオーケーなのですが,でも実際の実習も本当にいろんな条件で,たまたまうまくいくときもあれば,たまたまうまくいかないときもあります。ですので,何回かやる中を通して,学習者の方自身が自分は何となくできるなと思っていただくという形を取っています。
他の交通,消費以外の単元に関しては,6か月の間はまだ寮生活なので体験をしていません。ですので,そこは架空のイメージになりますが,ただ,学習者の方は中国で生活してきた大人なので,一応何となく日本での生活のイメージが湧いて,「これならできるな」というイメージを持っていただければ,そこまではオーケーかなという感じです。
○尾﨑委員
自立研修センターに移られたときに,中国帰国者定着促進センターから報告という形で行きますよね。その行ったものと,今度は各地の自立研修センターの方がそれを見ながら何かやるとのことですが,そこのつながり具合とか,この報告がどのぐらい生きているのかとか,その辺りを教えていただけたらと思います。
○発表者(安場)
やっと最近つながり始めたというところがあります。厚生労働省の方針もあったのですが,私どもが定着地の支援に口出ししてはいけないという時代が長く,やっと最近一本化という形でつながるようになりました。
最近は,例えば定住地の各支援者の方と直接私どもがやり取りをして,このような資料をお渡しするという形で,今までもお渡しはしていたのですが,十分に活用していただけているかというのは,やっとここ二,三年そのようになりつつあったということなので,今後の課題です。
○岩見委員
全体の評価の領域を見ますと,このほかに聞く力,読む力,書く力というのがありますよね。その力についても,段階的に作って設定をしていらっしゃるということなんでしょうか。
○発表者(安場)
こちらに資料としてはお付けしなかったんですが,修了評価の学習連絡票の中に,書く,読む,聞く,あと,日本事情の理解ということで,同じように「1,2,3,4,5」というような設定をしております。これは本当に御想像が付くような一般的な,例えば数字が聞き取れるですとか,放送が聞き取れるとか,あと何が読めるとか,そういった形で段階別に,割と比較的テストがしやすいものですので,やっております。
○山田委員
直接関係があるかどうか分かりませんが、先ほど安場さんの方から,一番最初にコミュニケーションというのは共同作業だということと,それからロールプレイをやるんだけれども,ロールプレイの学習者に対して相手側になる人のコミュニケーション能力というので,大分学習者の日本語のコミュニケーションの受容と,それから送出の両方に影響してしまうので,問題があって辞めたということなんですが,逆に私は,日本語ネイティブ(native)の側の日本語学習者に対するコミュニケーション能力というのが非常に重要で,それこそ,基準の表があって,「こうすると相手とうまくいきます」というようなものが逆にテスターを養成するときなどに必要なのではないかと思います。まだ,社会でそういうこと余り考えていないと思うけれども,経験値としては,こっちは日々の学習者と接する中で得ているもの多いと思うので,それを何か見える形と言うか,それで見えて規範もできて,それがより精度が上がると言うか,そういうものを作るきっかけになると思います。お忙しいのは分かっているのですが,そういう試みをされると,今後日本全体で,外国から来ている人たちのコミュニケーション能力を考えなければならない時に役に立つのではないかと思います。
○西原主査
御提案としてお聞きしました。
○発表者(安場)
実は大風呂敷でそう考えていたのですが,余り風呂敷が大きいので,自分からは言えなくて…。
実は,コミュニケーションの面接票自体も,このように崩していけば日本の方も支援的になれるということの例としてお作りしています。少し厚かましいのですが,日本の受入れ側のコミュニケーション力アップ(up)も本当は狙いたいと考えています。実はいつも交流実習などでゲストに来てくださる方と話すのを聞いていますと,とても親切で支援的なのだけれども,技術がないので,言葉が伝わらないときに,「こう言えばいいだろうか」と言い換えるごとに,却ってどんどん分かりにくくなってしまうことがよくあるのです。ですので,本当におっしゃるとおりだと思います。
○杉戸副主査
ちょうど今の最後のところの御説明に関係するのですが,この29ページの「言語によるくずし」という日本語面接シートの見出しですね。今も説明の中で「くずし」と使われましたが,私は初めて聞く用語でした。山田委員の御質問に触発されて言うと,ここで例えば「お名前を教えていただけますか」という,それ以外の表現をどれくらいこの面接者,インタビュアーの方は準備すべきなのか,あるいはそのリストをどれくらい準備されているのか。それが結局今の最後のやり取りの,日本人の表現のバラエティの見取り図のようなものにつながっていくということですね。つまり「くずす」というその用語と,その姿勢が非常に新鮮だと思います。
○西原主査
これはプロービング(probing)の訳ですか。
○発表者(安場)
敢えて言うとそうかもしれません。所沢の中国帰国者定着促進センターだけで通じているもので…。形式をくずしていくという感じで…。
○発表者(小川)
テスターマニュアルにはそういう例を載せておいて,テスターをしてくださる方には,こういうふうに崩していけば分かりやすいということをやっております。
○杉戸副主査
一つの項目にその例はたくさんあるのでしょうか。
○発表者(安場)
はい,何例かございます。だんだん…,だんだんが,相手によってはその段階ではないかもしれませんが,いろいろなことをだんだんという形で…。
○西原主査
豊田ではそれは何とおっしゃっているんですか。
○発表者(村上)
質問レベルでやって,レベル1の質問とかレベル0の質問という形です。
○杉戸副主査
先ほどの「お国はどちらですか」から始まって,「お国は?国は?」とか,そういうレベルでしょうか。
○発表者(村上)
全部記述しまして,直接聞きながら,段々と下げて行って,どういう質問がどのレベルかというのを体得してもらうのがテスターのトレーニングです。
○杉戸副主査
くずしにも段階を持たせるというのが,重要なポイントかなと思いまして…。
○西原主査
とても絶妙な用語ですね。これも中国帰国者定着促進センターからは,実は協力者の方にも来ていただいておりますし,また今後とも,評価のことを考える段階で,いろいろとお聞かせいただくことが具体的にあるかもしれません。本日は大きな御発表を頂きました。村上先生も安場先生も小川先生もありがとうございました。
標準的なカリキュラム案のガイドブックにつきましては,12月に改めて,またこれを確定していく段階で御議論いただくことが多いかと存じます。本日は残り時間30分になりましたので,恐れ入りますが教材例ということで配布資料6「教材例のコンセプトについて」,それから参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」につきまして,御意見を頂ければと思います。
いつも日本語教育小委員会委員の方々には,突然どっと示して,「さて意見を言え」という展開になっていって非常にお気の毒ではあるのですけれども,これで固まるというよりは,こういうものをいろいろと検討しているという御報告になります。まだ非常にオープンな段階で何か御意見を賜れればと思いますが,いかがでしょうか。
配布資料6「教材例のコンセプトについて」,それから参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」につきましては,協力者の皆様方に,今までの日本語教育小委員会での議論の展開を御理解いただいた上で,こういう生活上の行為があった場合に,これを支援者と一緒に,何か教室活動を基礎として,生活上の行為ができるようにするということを目的に教室活動をする場合に,こんなようなものがあったら助けになるのではないかという御提案を頂いたのが,参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」の「[1]0502020 身を守る(地震発生時)」,「[2]3102070 私的な場面で自己紹介をする」,「[3]4701100電話を掛ける」ということになります。例えばこんなのは要らないのではとか,こういうのがいいのではとかいうようなことでも結構でございますので,または教材例の大枠について配布資料6「教材例のコンセプトについて」の「2 教材例の大枠(※新規項目)」の「(1)名称の案」から「(6)作業期間」のことでも結構です。
○尾﨑委員
よく分かっていないので,気楽に言いますが,まず頂いている配布資料3「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」,配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」,配布資料5「活動方法の具体例(案)」について,もう既にこれだけのものができていて,これはガイドブックと称するものの中に入るんですよね。
○西原主査
そうです。まずこれがありまして,これの使い方ということでガイドブックというものが,これを料理するためにはこういうことをしてくださいというのがここになります。
○尾﨑委員
配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」の7ページですが,だんだん具体的に下りてきますよね。ですから,6ページのところだと,具体的に,こういうことがあって,例えば「隣人に分からないことについて質問する」ということについては7ページで,こんなふうにやったらいいんですよね,ということが書かれていますが,これは具体的ですね。
○西原主査
こういうことを現場で,例えば○○市△△町で教室を開設する場合には,こういう手順でプログラムに落としていってくださいよということですね。
○尾﨑委員
この,一応7ページを見たのではまだ具体性がないので,更に具体的にというので,例えば参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」のようなものが出てきているということでしょうか。
○西原主査
そうです。
○尾﨑委員
配布資料6「教材例のコンセプトについて」の「2 教材例の大枠(※新規項目)」の「(3)各シートの構成について」の一番最後に「・上記[1]〜[4]を含み,教室活動の流れに沿ったものとする。」というのがあり,参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」を拝見すると,「[1]0502020 身を守る(地震発生時)」というテーマだったら,ここに出ているのは授業の流れに沿っているということですよね。
○西原主査
そうとは限りません。つまりそこに,例えば配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」に書かれているようなことを展開するために必要なのは,教材として必要なのはこれこれこれを含むであろうということです。だから,必ずしも参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」の順序と同じではありません。
○尾﨑委員
配布資料6「教材例のコンセプトについて」の「2 教材例の大枠(※新規項目)」の「(3)各シートの構成について」のシートというのは…。
○西原主査
教材集となっていますので,例えば身を守るということになったとき,先ほどのような,この人だったらばこういうふうなことになるであろうということを配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」の結果を踏まえて,それを各地域で作るときに,こういうようなものが学習シート,活動シートとしてあるであろうということでございます。配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例」のページ7,ページ13,ページ14,ページ21を使うとすれば…。順序はまだ分からないですけれども,こういうものが用意されていると現場は非常に助かるであろうというのを,ここでシートと言っております。
○尾﨑委員
そういうシートの中に入れ込む項目が,写真とかイラストとか,単語のリストとかキーフレーズとか入るということで,さらに,教室活動の流れに沿ったものとするというのが書かれているのですけれども,それはどう考えればよいでしょうか。どういうイメージになるのかが浮かばないのです。
○西原主査
実は机上配布資料「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」にも,流れに沿って教室活動を行うとこうなりますよというのが出ており,例えば99ページの「Ⅴ 標準的なカリキュラム案の活用例(実践例)」から始まるところでは,こうしてみたらどうでしょうかという提案がなされていて,配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」で示されていることは,そことも矛盾しない形になっております。ただ,配布資料4では「Aさん」,「Bさん」,「Cさん」について具体的にプログラムに落としていくときのということは,ここではまだ想定されていません。
○尾﨑委員
ですから,こちらはそこが具体的に三つのケースとして出てきますよね。
○西原主査
そうですね,Aさんグループだけ,Bさんグループだけというふうにはならないでしょうから,実際にはもうちょっと複雑なプログラム化というものが必要になるだろうということは想定されております。今ここで参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」にしているのは,AさんもBさんもCさんもいるだろうということを想定したときに,こういうようなものが教材集としてあれば,この中から選んでいくということができるであろうというものを教材集と呼ぶことになりましょうか。ですから,もちろん最初から最後までやっていただくといいということではありますけれども,先ほどの所沢の中国帰国者定着促進センターの場合に,漢字が読める人のためにはここのところは要らないよねというようなことが,現場では実際には起こるわけですよね。それから,先ほどの研修のCさんの場合ですけれども,まだ働き始めてない,またはもう働いているという段階で,どういう学習が組まれるかによって,このシートは要るか要らないかというようなことが決まっていくことになると思います。
○尾﨑委員
そういうことというのは,具体的にそういうプログラムを作る現場の人たちがお考えになることなんだけれども,そのお考えになるときに考慮したらお役に立つんじゃないかというものが,ある程度具体的に提供されていると,そういう意味ですよね。
○西原主査
この例えは佐藤委員が以前の日本語教育小委員会でおっしゃいましたが,例えば小学校のカリキュラムの中で,ある単元については,どこにもあり得ないようなものが組まれているけれども,実際に教育現場では我が町とか,そういうように展開していくようなものになりますよね。そうすると,ここで恐らく用意されるものというのは,かなり抽象度の高い可能性があるけれども,これらのものがその中に含まれるというものをお示しするということなのではないかと私は理解しています。
このシートというのは,実際に現場で,それこそ豊田市を美濃加茂市に言いかえるというようなことは当然やっていただくことを前提としているという理解です。
教材集と呼ぶということになった理由は,例えば素材集と呼ぶこともできたかもしれません。それから,テキスト,教科書的なものと呼ぶこともできたかもしれません。しかし,頭からずっとこれをやっていってくださいとしてしまうと,地域の事情に即さない可能性がありますし,素材だけとしてしまって,1から100ページまではイラストです,150ページまでは語彙です,としてしまうよりは,もう少し,このことをするための,この展開例というものが見えてきた方が現場のお役に立つのではないかと考えています。そういった判断があって教材集という名前になってきたのです。
ただ,これで確定ではありません。実際に身を守るとか,私的な場面で自己紹介をする,電話を掛けるといったことについて,協力者の方々が,私どものそういった説明を聞いた上で,こういうようなものが含まれていれば現場は助かるのではないかとそれぞれお考えいただいたものを,参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」に展開しています。これはですから,先ほど事務局からも御説明がありましたように,身を守る的なものにするか,私的な場面で自己紹介的なものにするか,電話を掛ける的なものにするかというチョイスではないということです。
○山田委員
まだ具体例を示しているわけではなくて,具体例を考えるための素材の提供であって,内容そのものの案もできていないので,順番ということも考えられない状況なのではないかと思います。
○西原主査
はい。ただ,やはり標準的なカリキュラム案をお示しし,この中に書かれている生活上の行為をできるようになるということが,標準的なカリキュラムの内容になりますと言い,かつ,今度はガイドブックの中で,それを現場に落としていくためにはこれこれこれの作業をしてくださいという形でガイドブックができるわけですね。
そうすると,その作業の行き先というのは,教材集を見ていただけばお役に立つでしょうというのが第3段階になります。そして,本日ヒアリングについて御発表いただいた評価というのは,第4段階と言うか,こちらの用意するものとしては四つ目の指標ということになります。いろいろと並行して進めている作業のうちの三つ目の成果ということになって,教材集と仮称のものが出ていかねばならないわけです。しかも,期間は今年度末ということになります。というのは,文化審議会の予定,日本語教育小委員会の区切りとしては少し違うのですけれども,年度末を締切と考えて,3月頃までにはこの教材集のアイデアが固まっていくというのが好ましいのではないかと思っております。評価については,来年の6月ないし7月辺りで指標ができていくのが良いのではないかということです。
○杉戸副主査
尾﨑委員の御意見に関係するものとして,参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」で見ますと,10ページが教室活動の流れに沿ったものとするということに関係する記述が,一つ例として示されています。この10ページの「教室活動の展開」とゴシックで書かれた,この項目ですね。そこに1から4まで,ウォームアップから始まった流れが一応示されていると思います。この流れに沿って使うべき材料と言うか素材が,次の11ページからずっと示されています。そういう構造の例が一つ示されているわけですね。
配布資料6「教材例のコンセプトについて」の「2 教材例の大枠(※新規項目)」の「(3)各シートの構成について」に先ほどの上記[1]から[4]を含む教室活動の流れに沿ったものとするというのをどう理解するかによって,この教室活動の流れをそのままページを追って順番に構成するという仕立て方もあるのだろうと思います。一方で,別の考え方としては,素材はこの11ページからのように示しておいて,それをこんな順番で使ったらどうでしょうかと提案をすることもあると思います。10ページのこの展開の示し方のような,言わば説明的な示し方もあり得るだろうということです。飽くまでもこの段階の議論の資料としてはそのように理解して利用すべきかなと思っていました。
どちらがよろしいでしょうか。例えば,この11ページの場面のイメージ,クラスで自己紹介の写真またはイラストを1ページに置き,そして12ページの世界地図をその次の2ページに置くといったようにページの仕立て方をもう一つの教室活動の一つの具体例として,かっちりその流れをページ構成にまで反映させてしまうというやり方もあるかもしれません。
○西原主査
それは教科書のイメージに近くなりますね。
○杉戸副主査
そうですね。それがいいのか,それともこういう,10ページのような1から4という,そういう項目で流れる,そういう展開の例がありますという,説明的な示し方もあり得ると思います。
それに対して,この参考資料4「教材例の例(教材例のコンセプト検討用)」の「[1]0502020 身を守る」という,3ページから始まる例は,いわばその素材的なものが示されているだけ,あるいは23ページからの電話を掛けるも,やはりそこで使うワークシートと言いましょうか,それだけが示されています。そういう例が,本日のところは示されているということですね。
ですから,この配布資料6「教材例のコンセプトについて」の教室活動の流れに沿ったものとするという方針をこの先どう具体化すべきかというところは,まだ検討の課題であると思います。
○中野委員
私の理解が正しいかどうかの確認をしていいでしょうか。まず,ここのコンセプトのところで書かれているように,標準的なカリキュラム案で活用例が示されており,それから配布資料4「具体的な日本語教育プログラム例(案)」でも展開例,これは両方,今提示があるわけですよね。ただ,少し微妙に書き方が違うけれども,同じものとしてまず考えていいわけですよね。そうすると,両方合わせると今,11例あるということになりますね。
その11例の活用例なり展開例,これを一つ一つ,そのシートなども素材や言語材料の中に入れて,一つ見えるようにしようということですよね。
そのときに,使う側から見ると,活用例と展開例と何か違う場所に,しかも微妙に違う形にあるよりも,いっそのこと一緒にしてしまった方が見やすいと思います。カリキュラム案はそのままにしておいたとしても,せっかくあるこの活用例を,こっちのガイドブックの展開例と一緒にして,まず見えるように統一して置いておいた方が分かりやすいと思いました。
今度はその11例に対して,今の御提案は,写真,イラスト,言葉,キーフレーズ,ワークシートを付けるということですよね。それは元に返れば,標準的なカリキュラム案で提案されている,いわゆる指標ですね,指標を実現するための文法語彙,これが例示されているわけですが,これをもっと丁寧に,文法例がここで言うキーフレーズ,語彙というのが言葉のリストということで,ここにある表を更に多く提示するということをしていることになると思うのです。
○西原主査
結局,これが基になりますので。ここで大枠示されている,この左から右へというものを具体化していくという作業ですよね。ガイドブックも結局それの中間的な,ガイドブックもそれをどうするかというノウハウになると思います。
○中野委員
それで言葉のリストとキーフレーズは,これをより丁寧にということでいいと思うんですけども,写真,イラストというのは,今度活用例,あるいは展開例にくっ付いてくる素材として位置付けられると思うのです。
○西原主査
ここにも実は場面,状況というのがあるのですが…。ですから,結局これが可視化するということになるのではないでしょうか。
○中野委員
可視化するということですよね。それで,そういう流れがあるのではないかと思うのです。
そうすると,最終的には活用例なり展開例と言われる,ある種の一つの流れですかね,活動の流れを提示するものが一つあるのと,それを実際に教室で使うときに,学習者が直接触れる何か,それがワークシートなりいろいろなシートなりになると思うのですが,その二つが出来上がっていくことになると思います。
それで,私が一番見たいのは,この先生方にとっては,これをどのように最終的に授業の中で展開していくかということについて,結局,パーツは見えるけれどもその全体の流れで,しかも生活上の行為という,今までに余り慣れていない目標を達成するための授業のやり方とか,そこが多分一番欲しいものなのではないかと思います。
私が重要だと思ったのが,先ほど西原主査がおっしゃったこのコンセプト検討用の10ページに掲げられている,教室活動の展開です。これが11例,非常に詳しく書かれていると,「ああ,こういうふうにやるんだ」と分かります。しかし,今,展開例とか活用例にあるのは,ポイントしか書いていないので,授業の導入とか,あるいはディスカッションをどうするかとかという細部が見えないので,これだけでは授業はなかなかやりにくいと思うのです。ですので,何か導入があって,そのときにこういう写真なり素材を使って導入するとか,イラストを使ってまず導入しましょうとか,それが丁寧に書かれたものがあるといいと思いました。
○西原主査
丁寧にというのは,この10ページのように書かれているということでしょうか。フローチャートというのもあると思うんですけど。
○中野委員
そうですね。よく授業の流れという…。
○西原主査
流れ図ですね,ありますよね。
○中野委員
そういう,掲げられているイラストや写真がどこで使われ,シートがどこで使われ,しかも使うときにどういう留意点があるとか,なるべく学習者参加型にしたいとか,いろいろとありますよね。それを実現させる授業というのはこういうことを想定しているみたいなものが見えるといいと思うので,そういう方向に行くという理解でよろしいのでしょうか。
○西原主査
可視化するということが,どういうものをイメージするかというところが,実はまだ固定していないわけですけれども,こういう可視化の仕方もあるわけですね。見開き1ページが今日の30分なら1時間となっていて,いろんなところから矢印が飛んでくる,これは例えば何ページを見ると,これを使うんですよ,これを使いたければ何ページを見るんですよということで,これが付いていて後ろに素材が付いているということになるのかと思います。中野委員の御意見はそういうことでしょうか。
○中野委員
だから一つは,本当に先生のために作られたものがあって,そして実際の授業で学習者が使うものがセットされているみたいな,そういうイメージですか。
○西原主査
いえ,そういう御指示,そういうものがあったらいいという御提案でしょうか。
○岩見委員
いつもこの教材例集を話し合うときに,誰のためのものかというのが,なかなか結論が出ていないのですよね。学習者のためのものなのか,支援者のためのものなのか。今おっしゃった御提案は両方だと思います。かなり教室の展開例を細かく書くということは,支援者の側のための資料であって,それが学習者の方にあるということは,多少邪魔になるというところもありますよね。ですから,最終的にどんな教材集のイメージ,独立するものなのか,このガイドブックに付けるものなのかということでも違うと思いますし,その辺りがまだ固定されていないのではないでしょうか。
○西原主査
今,11例とおっしゃったのは,こことここを取って11例になるわけですけれども,同時にここでは30単位という提案をしていて,それが基礎の基礎のカリキュラムですと言っているわけですよね。そうすると,11例で済ませてしまうのか,それとも30単位を具体化するのかというところは,まだ決まっておりません。
○尾﨑委員
30単位分というのをやるというのはとてつもない話で,私は日本語教育小委員会でやる仕事ではないと思っています。これは別にプロジェクトを立て,30単位というのでどこかがやってくださらないと難しいのではないでしょうか。行く行く公的な日本語教育というようなときに,少なくとも来て,最初にこれだけはやるというものを作るという意味では,どこかでだれかがやらなければいけませんが…。
○西原主査
それは網羅的にお願いしますとここには言っているんですね。
○尾﨑委員
でも,この日本語教育小委員会ではそれは無理だということが,もう配布資料6「教材例のコンセプトについて」の2ページにあるように議論されているわけですから,30単位の基になるひな形を提示するというぐらいの了解だと私は思っています。
それから,岩見委員がおっしゃった誰のためというのは,当然最終的に使う外国の方にもプラスしなければならないのだけど,一番大きいのは,指導者と書かれている,その指導者というのも実は…。
○西原主査
コーディネーターとかカリキュラムライター(curriculum writer)ですね。
○尾﨑委員
いや,全国に多少はいるのでしょうけど,教室でもって,カリキュラムライターとかコーディネーターが今現に存在していないわけですよ。そうすると,これをぽんと出したときに,実際には国際交流協会とか自治体の方が,日本語教育の専門的な人と御一緒になって作るのですが,最終的にこれをずっと回していく人というのは,もしかすると余り日本語教育を御存じない方かもしれません。そういった方が学習しつつ進んでいかなければならないから,そういう意味では中野委員がおっしゃったような,非常に具体的にある単元,あるテーマを具体的に90分でやるんだったら例えばこうというようなことで,かなり懇切なもので,具体的にコピーしたらこれを教室で配れるというものが入っているというようなものが幾つかあれば,私たちはこの標準的カリキュラム案の次のステップは提示できたことになると思います。
○西原主査
最低そこはやらなくてはいけないことというふうにお考えいただいていると考えてよろしいでしょうか。
つまり,少なくとも11例という枠が示されていて,そこが最終的に,その一つが与えられたら,どうしましょうというようなところまで行くということで,それは役に立つものと少なくともなる,出発点になるだろうということでよろしいでしょうか。日本語教育小委員会ワーキンググループとしては,少なくともそこを固めていくということを,次の作業の目安とするということにして。ただ,それが意外とすぐできてしまうものであれば,プラスアルファができていく可能性というのはあるかもしれないと思います。
では,そこまでを,少なくとも尾崎委員から御提案いただいたということを宿題として,日本語教育小委員会ワーキンググループは,また協力者の方々と一緒にもう少し作業を続けてまいります。
いよいよガイドブックの方は大詰めになってきましたので,12月はかなり具体的な固めに入るということになるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
ページの先頭に移動