電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第6回)議事録

1.日時
平成23年3月24日(火)  17:00〜19:00
2.場所
文部科学省旧庁舎6階第2講堂
3.議事
  1. (1)デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方について
  2. (2)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,金原優,里中満智子,渋谷達紀,杉本重雄,瀬尾太一,田中久徳,常世田良,別所直哉,前田哲男

17:03 開会

【渋谷座長】
それでは,ただいまから「電子書籍の利用と流通の円滑化に関する検討会議」第6回の会議を開催したいと思います。
本日はいろいろ御多忙な中,また大変な状況の中,御出席いただきまして,大変ありがとうございます。
まず,事務的なことから申しますが,本日の会議の公開につきましては予定されている議事内容を参照しますと,非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいております。
特に異議はございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴していただくことにいたします。
これから配付資料の確認という段取りなんですが,長官がお見えになっております。昨今の状況に照らして,何か考えなくてはいけないことがあるかと思います。そういった事柄について長官,お言葉をいただければと思います。
【近藤文化庁長官】
近藤でございます。本日は大変皆様お忙しい中,またお寒い中,そしてこういう日本全体が大きな困難に立ち向かっている中で,御出席を賜りまして誠にありがとうございます。
皆様方の職場,あるいはプライベートな部分,あるいはご親戚(しんせき)とかで影響を受けられた方がないことを祈っております。もし,何らかの影響があった,あるいは被害にあわれた方,お近くにいらっしゃるのであれば心から御悼辞を申し上げます。
文化庁としましては,もちろん官邸とか災害対策本部に応援の人を出すことに加えて,今後の復興に文化・芸術といったところで,いろいろ役割が果たせるということで,心のケアを中心に今準備しているところでございます。まだ,行方不明の方々が大勢いらっしゃる中で,そういった方々の御心情も考えながら,やるべきことをやるべきタイミングでできるように準備をしているところでございます。
そういうことで,著作権の関連でも何らかの対応ということが必要になるかもしれませんが,いずれにしましてもこの種のルーティンの会議は大変大事でございます。幾つかの会合等はキャンセル,延期もございましたけれども,こういったものは粛々と進めていきたいと思っておりますので,今後とも御指導のほどをよろしくお願いをいたします。
とりあえず冒頭一言ご挨拶(あいさつ)を申し上げます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,本日の会議を開始したいと思います。
まず,事務局から配付資料の確認とそれから説明をお願いいたします。
【鈴木著作権課長補佐】
 それでは,配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第に続きまして,資料1は本検討会議における前回までの議論等についての整理メモでございます。そして,資料2は本検討会議における主な意見のポイント,そして参考資料1としまして,実際のネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する検討事項。そして,参考資料の2が第1回から第5回の意見概要の案。そして,参考資料3としまして,本検討会議の構成員名簿となっております。過不足等がございましたら,事務局に申しつけていただければと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,議事に入りますけれども,本日はこの議事次第にもありますように,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方につきまして,前回までの議論の整理と確認を行いたいと思います。
まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【鈴木著作権課長補佐】
それでは,前回までの議論の整理と確認を行っていただくということで,それにつきましては資料1に基づいて進めていただければと思っております。資料1の内容について,概略を説明させていただきます。
この資料1は,前回,そして前々回におきまして検討事項として整理させていただいた事項について各構成員から出されました意見を整理させていただいたものでございます。
まず,国会図書館が担うべき役割についての検討事項[1]としましては,国会図書館からの送信サービスについて,でございます。これにつきましてですが,送信サービスの実施については以下の3点について概(おおむ)ね意見の一致が見られたという形で整理をさせていただいております。
1つ目としましては,国会図書館が保有しますデジタルデータを一定の条件下により送信することにより,広く国民が電子アーカイブを利用できるように環境を整えること。そして,送信サービスの実施に当たっては,権利者,出版者の利益を不当に害さないことに留意して行うこと。さらには,関係者の合意を踏まえ,可能な範囲から早急にサービスを実施することなど,戦略的な取組が重要であること。が概(おおむ)ね意見の一致が見られたという形で整理をさせていただいております。
そして,送信サービスの具体的な在り方につきましては,送信範囲について異なる2つのパターンが示されておりました。
1つ目としましては,地域の公立図書館,大学図書館等まで送信を行うということ。そして,もう一つのパターンが3ページに書いておりますけれども,各家庭の端末まで送信を行うということです。1つ目のパターン,公立図書館,大学図書館等までの送信を行うということにつきましての概要といたしましては,まず公共サービスが介入するサービス範囲は抑制的であるべき。抑制的なサービスであれば,権利制限の導入もありえるのではないかという御意見があったところです。
そして,その送信されたデータの利用方法については,閲覧のみとし,プリントアウトを認めない。1つの出版物に対する複数者の同時閲覧は認めない。などの制限を課すことが適当である。
そして制限されたサービスであっても,送信サービスに前向きな権利者がいることなどを考慮すれば関係者が合意しやすい範囲から送信サービスを行うべきである。そして,2ページ目に移りますけれども,更に相当期間重版されていないなど,市場における入手が困難な出版物の提供が実現されるべきである。
そして,出版物を閲覧できるということにつきましては,当該出版物や関連する内容を持つ出版物等の購入意欲を喚起することにもつながる。そして,プリントアウトや,同時閲覧の制限をするのであれば,権利者などへの利益を不当に害することは少なく,無償提供が適当ではないか。
出版市場の競合関係等の問題が生じた場合には,いつでも利用許諾を撤回することなどが可能となるようにするべきであるということが提案として出されております。その提案に対する御意見といたしましては,過去の出版物につきましては権利者の所在が不明確な場合が多いということもありますので,不明権利者の捜索も行い得る集中的な管理機構を整備し,権利を一括して管理し,許諾を出すということが必要ではないか。
公共機関等の調査研究報告書のように広く一般的に活用されるべきものを優先的に対象とするということ。さらには,仮に有料であったあったとしても複数者による同時閲覧を認めた方がよいのではないかといった御意見もございました。また,公立図書館までデータが送信されることにより,情報の地域間格差の解消が見込まれる。
そして,また別の意見といたしましては,一口に図書館と言いましても,公立図書館だけではなく,一般社団などが設立した図書館まで様々な種類が存在するというところから,送信サービスの対象を全(すべ)ての図書館までとすることは不適切な面があるのではないかという御意見。
また,出版者,権利者の利益を不当に害する可能性は低く,関係者の協議が速やかに進み,早期サービスの提供が実現する可能性が高いのではないかという御意見。
また,公立図書館においては,何らかの負担を負うことも適当ではないか。さらには障害者に対するアクセスビリティにも留意することが重要といった御意見がこの提案にも関連して出されたところでございます。
そして,送信サービスのもう一つのパターンといたしまして,各家庭等までの送信を行うということ。3ページ以降でございますけれども,この提案の概要といたしましては,国民全(すべ)てが便利に利用できることが重要であり,サービス内容を抑制的にする必要はないという御意見です。そして,これにつきましては権利者と出版者が相談の上,許諾条件を取り決め,各家庭の端末に対して有料で送信を行うべき。そして,サービスの対価として一定程度の料金を徴収するということであれば,それを権利者,出版者に適切に分配することが重要であり,そのためには権利者,出版者とが協力して,集中的な権利処理機構を作ることが重要であるということがこの提案の概要でございます。
この提案に対する意見といたしましては,国会図書館が実施すべきサービスとして適切であるかどうかについての検討が必要ではないかという御意見。さらには,電子出版市場との競合関係をどのように調整するべきかが課題であるということ。さらには,このような提案ということになりますと,関係者間において長期間にわたる協議を行う必要性があると思われ,実施までに時間がかかることが懸念されるという御意見。そして,1番目の提案と同様に障害者に対するアクセスビリティにも留意することが重要という御意見が出されたということで整理をさせていただきました。
続きまして,検討事項[2]で,国会図書館の蔵書を対象とした検索サービスについてでございます。
検索サービスの実施につきましては,3ページ目の一番下のところで,[1],[2]と書いてありますけれども,国会図書館の蔵書の検索サービスを充実させることの重要性に鑑(かんが)みまして,検索のためにデジタル資料をテキスト化すること。さらには,通常の出版市場,電子出版市場に対して,その形成,発展を阻害しないこと。権利者,出版者の利益を不当に害さないことを留意して行うこと。この2点については,概(おおむ)ね意見の一致が見られたという形で整理をさせていただいております。
そして,4ページのところでございますけれども,テキスト化の方法や検索結果の表示などについてです。
テキスト化の方法についてですけれども,国会図書館はその蔵書資料のデジタル化につきましては,関係者との協議により当面は画像ファイルでデジタル化を進めるということで合意を得ているということからもテキスト化自体はあくまでも検索のためのものであるべきという御意見,更にも検索サービスについては,書誌事項の検索,キーワード検索など様々なものがあるわけですれども,本文検索が選択肢として追加されることについては非常に重要であるということ。
そして,テキスト化につきましては,OCRでの処理については90%を超える精度が確保でき,一定程度の検索に耐えられるものとなっているということですから,当面OCRを用いたテキスト化に対する合意が重要ではないかということです。また,完成度を高めるためには膨大な予算が必要となってくるという御意見がございました。テキストファイル化の作業については,校正のためのボランティアなどを導入すれば短期間で行うことが可能であり,そのような対応についての合意形成が重要ではないかといった御意見。更に,障害者福祉の観点から読み上げソフト等を用いたサービスの提供に当たってのテキスト化が必要である。このような御意見が出されたところでございます。
もう一つのポイントとなります検索結果の表示についてです。
本文検索サービスを早期に実現するということであれば,スニペット表示は必ずしも必要ではなく,書名などの書誌事項の表示で十分ではないか。さらには,検索された言葉を含む1行程度の表示であれば,著作権が働かない。自由に利用できる場合が多いと考えられるのではないか。しかし,辞書類,辞典類や俳句などのように,1行程度の表示でも本文全体の利用目的を達してしまうというものもあるわけですので,検索結果の表示方法を工夫することが重要ではないか。このような御意見が出されたというところでございます。
続きまして,5ページを御覧いただきたいと思います。
検討事項の3,デジタル化資料の民間等への提供についてでございます。
この検討事項につきましては,前回特に集中的な検討は行っていただいてないところですけれども,以下のように考えてはどうかということで,この部分につきましては,事務局側からの提案という形になっております。
提供の促進については,国民の「知のアクセス」のさらなる確保のためには,国会図書館のデジタル化資料の提供の促進は重要なことであり,権利者の許諾を前提に民間事業者等への提供は促進されるべきであると考えられます。そして,提供のための環境整備についてでございますが,民間事業者等への提供に当たっては,利用者側において個別に許諾を得ることは効率的ではないことから集中的な権利処理システムの構築により簡易迅速な方法により許諾を得ることが可能な方法の導入が必要であると考えられます。
集中的な権利処理システムの在り方については,本検討会議の2番目の検討課題として権利処理の在り方についてという事項がございますので,その部分において別途検討を進めてはどうかということでございます。
最後に,Ⅱとしまして,公立図書館等の役割についてです。公立図書館等の役割については以下の御意見が出されたところです。
既に大学図書館では,出版社などが提供する電子配信サービスにおける利用契約を結んでの利用者への無償提供というもの,これはいわゆる電子ジャーナルなどが典型的な例かと思いますが,そのようなことが行われておりますので,公共図書館においてもこれと同様の仕組みも今後導入されるべきであるという御意見が出されたところです。
そして,次のポイントとしましては,純文学や学術にかかる入門書のように公立図書館等が実際に購入することで買い支えられている出版物が存在します。そして,国会図書館からの送信サービスは公立図書館がこうした出版物の購入を見合わせ,読者に人気のあるベストセラー本ばかりを購入することにもつながる可能性があり,こうした「複本」問題の顕在化のような事態を避けるために蔵書として購入する出版物の選別の在り方などの事項について,公の機関によるチェックを実施することが重要である。このような意見が出されたところでございます。
以上が,図書館と公共サービスの在り方に関する検討事項につきまして,前回,前々回で御意見を頂いたものを整理させていただいた内容となっております。本日は,この資料を基に,意見交換をしていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
本日のこの議論の進め方でありますけれども,この資料1は御覧のとおり時計数字のⅠ,国会図書館が担うべき役割についてという項目と最後のページの時計数字のⅡ,この2つに大分けされております。そして,時計数字Ⅰの方が,検討事項[1],[2],[3]というふうに分かれているわけであります。できれば,この順番にいろいろ御意見をちょうだいしたいと思います。順番にということで,お願いしたいと思います。
本日は,この問題全体について各委員の御意見とか要望を出していただくというよりは,これまでの会議でこういう骨組みがだんだんでき上がってきておりますので,この骨組みに追加すべき意見であるとか,あるいはここで今一度確認しておきたいという事柄についての御発言をお願いできたらと考えております。
もちろんこの線路から外れる意見,どうしても述べたいということであれば,それはおっしゃっていただいて一向に差し支えないことでありますけれども,一応事務局が希望している方針というのは,私が今御紹介したようなことになっております。
それでは,まず,この時計数字のⅠ,国会図書館が担うべき役割についての,検討事項[1]国会図書館からの送信サービスについて,ここから皆様方の御発言をお願いいたしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
【糸賀構成員】
これまでの議論については,かなりうまく整理していただいたとは思います。今,座長の方からも御指摘があったこの1の方なんですけれども,この中では国会図書館からの送信サービスの具体的な在り方について,2つのパターンが示されております。
この会議の前回だったかにも私は申し上げましたけれども,この2つのパターンの中ではやはりまず1番の国会図書館から公立図書館や大学図書館までの送信を行うということを優先した方がいいと思います。それはなぜかと言うと,このちょうど整理された資料1のまず最初のところの1の送信サービスの実施の[3]のところにありますように関係者の合意を踏まえて,可能な範囲からこれを早急に実施するべきだろうと思います。
これはやはりスピード感が求められる話でして,せっかく国会図書館が127億の税金を使ってデジタル化されたものが,国民に広く平等にアクセスできない環境というのを数年続けておくのは,大変まずいし,国税の無駄遣いというふうにもなると思います。そういう意味では,合意形成がしやすい範囲からとにかく始めるということが重要だろうと思います。
そういう意味で,この整理されたメモの3ページのところに,仮にですよ,2つのパターンのうちの国会図書館から各家庭の端末まで,これは確かに自宅からもアクセスできれば確かに便利だとは思いますが,これをやるとなると確かに一定のお金を取るということも考えられる。それから,特にこの3ページの[2]の提案に対する意見のウにありますように適切な対価の還元の仕方などを解決すべき課題が多くて,私はどうしても時間がかかる話だと思います。
ここにもアンダーラインがありますように,実施までに相当な時間がかかる。その間,使えないというのはやはり私は不合理だろうと思います。そういう意味では,地域の図書館,あるいは大学図書館でその館内で見ることができる。それから,その場でプリントアウトもやはりこれは控えるべきだと。冒頭にあったように,抑制的な範囲で,これは民間の市場である程度やり取りしている財に対して,公共が介入するわけですから,その範囲は抑制的,限定的であるべきだろうと思います。
そういう意味ではまずは図書館の中で見られるようにしていくのが適切だろうと思います。各家庭で見られるようになるようにするには,明らかに次のステージですから,ステージが違いますから,次のステージに移るための検討は別途進めて,まずは合意形成がしやすい範囲で進めていくべきだろうと思います。
そのときに,ちょっとこれは確認でもあるし,たしかこの場でも発言したことがここに反映されてないので,申し上げるんですが,同時アクセスの問題なんですけれども,この資料1で言いますと,1ページの2,国会図書館からの送信サービスの在り方の(1)の[1],提案の概要のイのところに,どういうやり方でやるかが書かれております。館内での閲覧のみとする。それから,プリントアウトを認めない。その次,1つの出版物に対する複数者の同時閲覧は認めない。と書かれているんですけれども,これはもともと国会図書館の蔵書を相互貸借というやり方で,国内の図書館に現物を貸すときでも,仮に国会図書館に複数の,いわゆる複本,同じ出版物が2冊,3冊あれば,それは当然2か所,3か所に貸すことができるわけなので,これは複本の数に応じて同時アクセスは私は認められるべきだと思います。1点しかなければ同然1人しか見られませんが,同じ本が3冊,これは当然同じ出版物といっても初版なのか,第2版なのか,あるいは刷りが違うということもございます。そういう意味では,国会図書館の所蔵状況に応じて,同時アクセスはやはり認めていいと私は思います。
そうしないとこれまでの相互貸借にかわって,ネットワークを通じて瞬時に送るということのメリットがそうしたために失われる点もあることになりますので,現物貸借の場合とそこの点は同じでいいのではないかと思います。
それから,もう1点,これは2ページの[2],提案対する意見等のアからずっとクまで挙がっていますが,この中のエに関係するんですけれども,こういうふうに地域の公立図書館や大学図書館までデータを送信すると基本的には国民が等しく国会図書館の蔵書にアクセスできる。国民が形成してきた知の財産にアクセスできるわけで,ここにも国民の知のアクセスの向上,情報の地域間格差の解消が見込まれる。と書いてありまして,これはそのとおりだと思います。
実は,図書館がまだない自治体があるわけです。地方自治体の中には公立図書館を持ってない自治体がございます。例えば,千葉県の富津市というのはいまだに市立図書館がないわけです。県庁所在地の中で山口県山口市,あるいは長崎県長崎市は市立図書館ができたのは本当にごく最近です。この10年ぐらいの間に山口市立図書館,長崎市立図書館ができたぐらいで,それ以前はなかったんです。
だから,これをやるのであれば,一方で図書館未設置自治体の解消,図書館がそれぞれの自治体にあって初めてこの構想というか,このパターンは生きてくるわけなので,その点を一方で補っておかなければやはり図書館のない自治体の方はいつまでたってもアクセスできないということになります。その辺の配慮もこの問題点として明記しておくべきではないかと思いました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
書かれていることの補足とそれから書かれていないことも1つ。
【糸賀構成員】
2つのパターンのうちの最初のパターンに賛成です。最初のパターンの方を支持するということです。
【金原構成員】
今の糸賀先生の御意見にほとんど賛成でありまして,国会図書館が各家庭の端末まで送信するというのは,まだよく見えないところが我々出版社としてはありますので,ここは慎重に考えていただきたいと思うんですが,送信先が公共図書館ということであれば,比較的当事者の合意が得られやすい範囲だと思います。
私もこの送信できる範囲というのは,限定的,抑制的に考えておりまして,それはほとんど国会図書館にしかない資料の範囲ではないかと思っております。それ以外のもの,つまり通常のルートで入手できるものであるとするならば,それはやはり公共図書館は購入すべきものではないだろうか。ということになりますと国会図書館が公共図書館に送信できるというのは,この資料の1の2ページ目の一番上にエとありますが,市場における入手が困難な出版物,こういうものであれば,公共図書館に送信しても通常の私どもの出版社,あるいは著作者の利用を妨げないものであろうと思いますから,こういうところについては合意形成が比較的しやすい,そうなりますと複数のアクセスがあってもいいのではないか。それから,場合によってはプリントアウトもいいのではないか。
要するに,市場に流通してないものをプリントアウトは認めないといっては,全く入手の可能性を閉じてしまうということになりますので,複数者の閲覧もプリントアウトも可能になるのではないかと思います。
逆に言いますと,やはり市場で入手できるものについては,有償とか無償とかの問題ではなく,2人が同時に閲覧というそういう問題でもなく,プリントアウトを認めるかどうかという問題でもなく,やはり公共図書館に対してですら,この送信の対象から外すべきではないかというふうに思います。
そうなりますとこの2ページ目のエとオは矛盾していることでありまして,エを対象とするならば,このオというのは,当該出版物や関係する内容を持つ出版物等の購入意欲を喚起することにならない。入手できないですから,需要を喚起することすら,需要を喚起するかもしれませんけれども購入が不可能なわけですから,このエとオというのは,矛盾しているのではないかなというふうに思います。
これは様々な意見をまとめたので,矛盾していることも入っているということは承知しておりますが,どちらを取るかと言えば,私はエを取るのではないかというふうに思います。
それから,同じページの[2]の提案に対する意見のところですが,仮にこれを許諾ベースで進めるとすると,これは許諾ベースではなくて,私は抑制的なところなので,場合によっては権利制限でもいいのかなと思っていますが,権利者の所在が不明な場合,仮に管理団体,
管理機構がそれを探そうと思ってもやはり不明なのでこれは処理ができないのではないかと思います。こういうものについて,このお金をどうするのかということも含めて,考えると,これはあまり現実的なことではないのではないかという気がいたします。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
前回になかった新しい御意見であったように伺いました。
【瀬尾構成員】
大分まとまってきて前に進んだという印象を受けております。
最初に時計数字のⅠとⅡ,国会図書館が担うべき役割,それから公共図書館が担うべき役割という整理をされていますが,是非この前段階として図書館の社会における役割の変化ということをきちんと定義づけていただきたいと私は思います。
ただ単に本を集積してやるということではなくて,社会的な情報センターとして機能させていくという将来が見えてきている,又は単に本を蓄積して,常にその知を一般の方たちに供給するだけではない部分が多分出てくるのではないかと思います。そういうふうなことを前提に動いた上で,国会図書館を中心とした知の情報センターのシステムがあるからこういうことが起きる。ただ単に本を流通させるだけ以上の大きな目的があるだろうと思います。
後で震災のことについて,ということで今日,臨時の議題として出てきておりますけれども,そういう場合においても,情報をきちんとくまなく伝えられる中心地がない場合,例えば先ほど図書館がない地域があるとおっしゃいましたけれども,それはシステムとして情報センターのシステムが欠落しているという意味であって,そこの地域が本が足りないとか,本が読めないだけではない大きな欠点であるということは,このシステム自体の位置づけをはっきりしないとわからないし,市区町村の行政さんたちにしても,そういう意味づけがなければ,予算を割き難い,そういう現実があるのではないかと思います。
ですので,このⅠ,Ⅱの前には明らかにこれからの未来の図書館ということについての前ぶりがなければ,なかなか説得力を持ち得ないのではないかということがまず1つです。それは書きぶりとこれまでの議論のまとめ方について,また私の意見を加えて,それがまた1つ大きく問われるところです。
そして,今回,今までたくさん出てきている中で,これは個別な番号で申し上げませんけれども,先ほどのお話からも出ていますように,幾つかのレイヤーがあります。例えば,システムにしても公共図書館まで届けるシステムなのか,個人まで届けるシステムかというのは大きく違いがありますし,意味も目的も違うであろうと思います。単なる延長線上にあるものではないと思われます。
これに対してきちんと区別して議論することが必要だろうと思いますし,対象物に関しても入手不能であるものを電子で回すという意味と,そこにある全(すべ)ての書籍を電子で回すということの意味は,全然違う,これも2つの大きなレイヤーだと思います。
つまり一番大きく言えば,全(すべ)ての著作物を全(すべ)ての個人まで届けるという非常に拡大されたものがあるでしょうけれども,最も限定的で考えれば,入手不能なものを公共図書館まで届けるというふうなことが考えられます。それについてきちんと段階を踏んで組合せを考えていかないと,何となくずるずるシステムを作って流すということでは多分弊害が起きると考えております。
もう一つ,今回の図書館というシステムにやはり並列するシステムとして,集中処理機構というのが幾つか出てきております。私は前からこの集中処理機構というのは絶対に必要であろうというふうなことを申し上げてまいりました。これによって,これも2つのレイヤーがあって,1つは不明なもの。許諾が得難い不明なものに対して処理をすることが1つのレイヤーです。その次に,有料配信なり何なりをしていくレイヤー。この2つのレイヤーに分かれていくような集中処理もあるでしょう。
それともう一つ全く違う機能として,検索があると思います。これは,付随する機能ではなくて独自に機能されるものだと思います。
つまりこういういろいろな切り口があるものをちゃんと分けて,そして図書館の未来をきちんと見つめて,そして図書館があることによって,今まで以上の大きな地域に対する貢献とその地域の発展みたいなことができるような,そんなシステムに対しての提言ができるように組んでいただきたいと思います。ただ単に図書館が便利になって,国会図書館がデジタル化したから,みんなで見られるようにしましょうというだけでは,多分説得力もないし,私はあまり意味がないと思います。それは市場と単に競合するだけだし,今後の電子書籍の市場形成に対してマイナスですらあるかもしれない。
だから,もっと図書館というものを根本的に組み直して,発展させるという全体構成とそれをステップバイステップでやっていくレイヤーを切り口とするような書きぶり,そういうことを盛り込んでいただければ,内容的にはここに書かれていることは私はほとんどの部分で同意できます。ただ,このままだとその点が曖昧(あいまい)になってしまうし,効果は見えなくなるような感じがするので,あえて全体について申し上げました。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【常世田構成員】
基本的に,瀬尾委員の御意見に賛成であります。
公共図書館の新しい位置づけということについては,ここ10年ぐらい図書館界でも文部科学省の担当のセクションでも,あるいは各種の委員会でも新しい公共図書館の増ということについては,かなりはっきりしてきているということがございます。ですから,一番近いところでは近々に公表される望ましい基準という中にも単なる娯楽だけではなくて,産業の振興ですとか,高齢者社会に対する対応ですとか,そういう社会を支えて,日本を豊かにしていくというような図書館の役割はかなり明確になってきているので,その辺のところから必要な概念を引っ張ってきて明示するということについて,私は賛成であります。
それにプラスして言えば,司書という専門職,特に著作権に詳しい専門職が図書館に配置されるというのは非常に重要であるということも強調すべきであるというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【大渕構成員】
この会議は今まで授業等の日程に重なったためにあまり出席できておりません関係で,あまり意見を表明する機会がなかったので,少し感想めいたことをお話しできればと思っております。
これは今議論しております論点,資料1の1ページの一番初めにある[1]と書いてあるここのところがやはり何と言ってもこの問題についての原点,出発点だと思います。これは言わずもがなのことでありますけれども,せっかくの知のアクセスを確保するということで,広く国民がこのようなせっかくの知の集積を利用できるような環境を整える。これについては,恐らく誰(だれ)も異論はないところであり,あとはこれをどうやって実現していくかという具体的な方法論の点で幾つか対立点があるだけではないかと思います。けれども,これは先ほどどなたかもおっしゃっていましたけれども,せっかくのこれだけの知が活用できないというのは,非常に我が国にとっていろいろな面で非常に大きなマイナスでありますので,議論はもちろん重要で,いろいろと図書館の役割論なども含めて,いろいろ時代によって変化する点について十分に議論していく必要はあるかと思いますけれども,それと同時にやはりこういう大目標をできる限り早期に実現していかなければならないので,議論だけして何も進まないということだけは避けて,やはり合意が形成できて,できるところから始めていくという,現実的に可能なアプローチを着々と進めていくということでしかスピード感のある解はないと思います。そのような現実的なアプローチをとっていくと,先ほどいろいろ出ていたようなニーズに応じて,各論的なところのきめの細かな議論が進んでいくと思います。
その関係で,2つのアプローチがあるということで,国会図書館からの送信サービスを地域の公立図書館や大学図書館までのレベルにするのか,それとも各家庭の端末まで行うかということにつきましては,それは現実的アプローチでまず取り組めるところからという観点からすれば,まずは,図書館から図書館までというところを中核的に現実的なアプローチとして考えるべきではないかと思っております。これによって,いわば国会図書館を中心とした全国の公立図書館等全体を有機的に組み込んだような形の大きな良いシステムができ上がって,これこそ,[1]にあるような知のアクセスを確保するための非常に大きな前進になってくると思います。そこで,まず,ここのところを現実的に,これは進めるとなったらいろいろと細かな各論的な問題も出てくるかとは思いますが,まずは,ここのところを一歩踏み出さない限りは各論的なところも進まないと思いますので,まずはここの基本的な点を前進させることが重要だと思います。
【渋谷座長】
関連しますか。
【糸賀構成員】
今,何人かの方が言われたことで,私の方からも一部補足させていただきたいと思います。
今,大渕委員が言われるように,この知のアクセスを確保する,これについてはどなたも異論はないところだと思います。ただ,この知の所有権とか財産権というのが,個人であったり,私的財であるわけですね。この一方で,知のアクセスの仕組みを作ろうとするところを官がやったり,公のところでやる。その公が実施するところでどれだけ個人の私的財産,あるいは著作権で言えば,知的な所有権,それをどういうふうにバランスを図るかというところがなかなか悩ましい問題だと思います。
つまり実際には書店を含めて,出版社も民間企業です。こういったものが一定の市場を形成して,それぞれが経済活動を行っている。そこにどれだけ公的なものが介入できて,この知のアクセスの仕組みを国全体で作り上げるか,そこの私的財とそれから公共財のバランスをどう図るのかというところが,これはなかなか悩ましいところだろうと思います。
そこで,先ほど瀬尾さんが言われたように,図書館の新しい在り方,これはもう先ほど常世田委員からもありましたように,ここ10数年,図書館の世界でもさんざん議論が積み重ねられてきたところです。公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準というのが文部科学省の方で,これは文部大臣告示になっております。
一昨年の法改正でこれを私立の図書館も含めて,図書館の成長及び運営上望ましい基準を定めようということで,作業を進めてまいりました。それが近々,これもやはり大臣告示されると思いますけれども,その中で,明確にこれからの図書館のビジョンというものが打ち出されます。それ以前にも協力者会議の報告として,これからの図書館像というのを既にまとめられておりまして,これが今各地の図書館でいわばお手本のようにしてそれに沿った図書館サービスの改善ということが行われてきております。
ですから,ビジネス支援だとか,あるいは医療情報提供ということも言われていますし,まさに今回の大震災に伴う復興支援も図書館で何ができるのかということが,今,盛んにメーリングリスト上で議論されております。そういうところからこれからの地域の中での図書館の果たす役割というものもだんだんと理屈だけ,あるいは絵に描いた餅(もち)だけではなくて,実践が行われていくだろうと思います。そのときに,今回の図書館のデジタル化されたものをどういうふうに国民にアクセスできるような環境を整えていくのか。それが当然そういう新しい図書館の動きを後押しすることになると思います。
先ほど,金原委員が言われた,例えばプリントアウトしてもいいのではないかという御指摘で,これは大変有り難い言葉だったと思います。ただ,私が心配するのは,それをやった場合に,当然,プリントアウトはお金を取るわけです。これがもともとの31条の図書館資料の複製と同じようにとらえられるのか,つまり国会図書館から例えば被災地の宮城県の図書館にこれを仮に送った場合に,そこでのプリントアウトということになります。これが著作権法31条の複製に当たるかどうかの解釈,それから,そのときにこれは一般にお金を取るわけですが,そのお金が1枚10円か20円を払ったときに,そのお金については,権利者はこれを放棄するということであれば,これは話が早いと思います。そこでお金が払われているから,その1円なりでもいいから権利者に配分せよという話になってくると,なかなか話がややっこしくなる。どうやって配分すればいいのか。その権利者をどう特定するのか。あるいはどこか団体に配分すればいいのかという話がまた次に出てくる。
そういう話をしている間に,どんどん時間がたってしまうのは,私はちょっともったいないのではないかと思います。だから,できる範囲では差し当たりコピーはその場では我慢しましょう。どうしても必要であれば,これは国会図書館に依頼すれば,これはメールで依頼してもいいわけですが,国会図書館でプリントしたものを数日遅れてそこに届くということは今でもできているわけです。そのシステムがあるから,それで我慢しましょう。それがスピーディで早い方がよければ金原委員が御指摘になるとおり,その場でもプリントアウトできたら,私もそれは当然便利だと思いますが,あとはそのときのお金のやり取りについては,権利者については別に求めないということであれば,これは話が早いと思います。
先ほど申し上げましたように,こういうふうなことについては,結局は個人の所有権,財産とそれから公共でやる責任,そこのバランスを図ることが必要なので,公共が入る分に関しては,極力抑制的,限定的,そこからまずは話を始めましょうというか,実施を始めしまう。その後に,私的なものについての経済的な権利に応じた配分のやり方については,別途考えていく必要があるので,それは時間がかかるので,今のやり方,私が最初のパターンを支持したわけですけれども,そのやり方をやる傍ら,どうやったら各家庭まで配分できるのか。あるいはいかにプリントアウトをして,そのお金をどういうふうに配分するかについては,次のステージとして考えていきましょう。こういう提案であります。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
議事の中断になるのですけれども,笹木副大臣が見えておられます。お忙しい中を駆けつけてくださったもので,一同感謝しております。何かご発言がありましたら,お願いします。
【笹木文部科学副大臣】
御苦労さまでございます。少しだけでも皆さんの議論を聞かせていただきたいと思って,今日は,しばらくの間ですが,お邪魔します。本当にありがとうございます。
【渋谷座長】
それでは,議事を再開いたします。
杉本先生,御発言を。
【杉本構成員】
ちょっと過去2回ほど欠席いたしまして,失礼いたしました。
先ほど,瀬尾構成員がおっしゃったことに関連して,非常に大事なポイントだと思うんですけれども,やはりデジタルのコピーが公共図書館の現場で見られるときに,図書館の側(がわ)としてデジタルなものがそこで見られるから,こういう新しいサービスができるようになりますよということもやはり併せて考えていかないといけないだろうと思います。
ですから,例えば公共図書館のところに行って,ターミナルを使って,国会図書館のOPACを使って,そうするとこのページが見られますよと放っておかれると多分誰(だれ)も何も使わない。ですから,そこでの新しいサービスがあるんだから,その新しいサービスを使った新しい付加価値をそこでまた作り出していかないことには,本当の意味での価値は出てこないだろうと思います。そういったことも含めて,この担うべき役割ということを考えていくべきであろうと思います。
それと金原構成員のおっしゃる市場にというお話だったんですけれども,私は,2回ほどいなかったので,その間にお話があったかもしれないんですけれども,市場というものの範囲です。ですから,例えば古書の市場までというふうに含まれてくると,非常にファジーな部分で,難しいところが出てくるかなと思います。その1点が非常に気になった部分です。
【金原構成員】
市場でというのは,私は古書の市場までは考えておりません。これは国会図書館から公共図書館,あるいは大学図書館への送信ですから,普通の通常のルートで入手できるというものであるなら,先ほど申し上げましたけれども,大学図書館なり公共図書館は購入して利用者に提供すべきではないかというふうに思いますので,古書までは考えておりません。
ただし,今,出版界も取り組んでおりますけれども,仮に国会図書館しかない出版物であったとしても出版社,あるいは著作者が電子的な方法を含めて別な方法で,市中に提供しているという状況があるならば,これは入手できると判断すべきですし,今後もう絶版になったようなものであっても,できるだけ我々出版社というものは市中に提供すべき立場にあると思いますので,そういう努力を我々は重ねていかなければならないと思っています。特に,冊子体のものがなくなったようなものについては,電子的な方法でもいいから,利用者の要請があるならば,市中に提供するという努力を惜しむべきではない。それも含めて,市中で入手できるという範囲に含めるべきではないかと思います。
【瀬尾構成員】
今,権利関係のバランスをもってやりやすいところからスピード感をもってやるという話で,私もそれは同感です。その範囲からすれば,先ほどからお話が出ている公共図書館までの間に入手不可能なものを提供していくというのが一番典型的かつ部分であると思います。
それともう一つ,やはり権利関係というのは常に出てくると思います。でも,そのときに権利対権利のバランスをとるという考え方を私はとらない。それは創造のサイクルという循環を考えて,そのサイクル自体を怖さないようなこと,1つずつの権利のプラスマイナスを言ったら,みんな自分の権利が大事ですから,要するに自分で欲しいところをどんどん言ってしまうけれども,例えば,出版社がこれまで担ってきたような文化的な役割がたくさんある。出版社が根こそぎ倒れてしまう,小さいところも含めて,それは創造サイクルを壊すことになると思います。それはもし権利関係で,強いところがそこを押さえこんでしまったとしても,そういう草の根を枯らすようなことではなくて考えていかなければいけないだろうと思います。ですから,日本的な創造サイクルは何か,どうやってものが今回っているかという部分に基本的に立ち戻って,これは整理していくべきかなというふうに思っています。
あともう一つは,最初の前ふりで図書館の役割について,情報センターとしての役割とか,先ほど常世田構成員からも出るとおっしゃった。ただ,今日は,いろいろな省庁の皆さんがいらっしゃるんですけれども,私が考えているのはもうちょっと実は広がっていて,例えばそれは総務省さんであったり,経産省さんであったり,そういう皆さんの中でインフラ,電力やそういうものと同じようなインフラとしての図書館にまで私は実はなるべきかなというふうに思っています。
だから,単純に文部科学省管轄である,そういうふうな知財の管理だけではなくて,いまや情報というのは財でありますし,生きていくための必要な水やそういうものと一緒だというための拠点になる部分が今はないので,図書館をそういう情報のインフラにしていき,各省庁さんの中で,最初に復興するのは水道であり,電気であり,情報である,その情報はどこなのかと言えば,図書館。それは図書館と呼んでいいのかどうかわかりませんけれども,そういうふうであるようなもっと抜本的な部分まで踏み込んでいただきたいというのが,私の申し上げた部分で,そこまでここで言えるかどうかわかりませんけれども,やはり何らかのそういうふうなことをしていかないと,地域格差とかいろいろなものが埋まらない,そこまで埋め込めば,各地域でもそこがないなんていうことはあり得ない。
実際,そういうものを作り上げるには時間がかかりますから,当然,手の届くところから始めますけれども,でもそれぐらいのきちんとしたビジョンを持って,今回のことをやらないと,なかなかお金もかかっていることですから,つかないのかなというふうに思います。
それともう一つ,今のような情報のインフラとして図書館を見たときに,やはり都市の在り方みたいな部分まで本来であれば,進んでいく,つまり情報がどういうふうに年寄りから子供まで伝わっていき,その情報による経済格差が出ないのかということまで考えていくべきだろうと思いますけれども,それは実際に図書館というよりはもっと違ったレイヤーの話なのかなと思いますけれども。私としてはそういうことが必要であろうと思って,申し上げました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【田中構成員】
国会図書館の田中です。国会図書館の制度の在り方ということで,いろいろ貴重な御意見を頂いてありがとうございます。
基本的に皆様,委員の先生方がおっしゃることももっともだなと思います。一番公共サービスということのベーシックなところで合意し得る範囲,ここはどう考えても公共的な知のアクセスをするための合意し得るというところのまず最小限,公共の範囲というところで,合意し得る範囲について,まず早急にできれば法的な制度も含めた対応を何とか図っていただけないか。繰り返しで恐縮ですけれども,国会図書館法の21条では,全国の図書館を通じて図書館の総合対策によって全国の公共図書館を通じて,国会図書館の資料を利用することができるという仕組みが法的にも整備されているものがある,ところが,デジタル化をしたことによって,そこがうまく機能しなくなってしまっている,機能不全になっているというのが実態として生じていますので,従来最低限認められていた公共サービスの範囲というところまでは,まず早急に何らかの制度的な対応を図っていかないと,逆にお金を使ってデジタル化をして,逆に不便になりましたということではやはり全く説明がつかないということですので,そこは時間をというよりもそこまで急がなければいけない。その先,このデジタルによって,公共サービス等民間の市場との新しいやり方は簡単に見えてこないところについては,やはり時間をかけて,どういう形で戦略的,あるいはもっと連携して発展していくような形が,どのように作れるのかというところはもう少し時間をかけて整備するということで,私たちもそのような形をとれないかなと思うんです。ここで,市場入手できる,できないという辺りのところは,やはり議論し出すと細かいところでいろいろ出てくるのかなというふうに思うんですけれども,まず現在の図書館の相互貸借というところでは,市場でまず在庫切れになっている状態であれば,少なくともそこが図書館の相互貸借の範囲にはなりますので,民間で今現に売り出されていない状態であれば,もうそこは配信が少なくとも可能だというぐらいのところで御理解を頂いて,公共で使う中で制限つきで見られるというところまでをまず第一段階,そこは皆様で合意し得る公共サービスの範囲であるというところを至急手当していただいて,その次を時間をかけて議論していく,というふうなことでございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
どうぞ。
【糸賀構成員】
やはり瀬尾構成員に触発されて,私からの議論をしたいと思うんですが,今回の会議で,正面きって図書館のこれからの在り方について,どこまで書けるのかというのは正直言って私もよくわかりません。ただ,図書館が単なる教育機関,特に社会教育機関だけに留(とど)まらない。いまやこの民主主義社会を成立させる基盤の一つである。つまり知識や情報が自由に流通していて,いわば国民,あるいは選挙民と言ってもいいですけれども,この人たちは必要な情報や知識にアクセスできて,それでこれからの日本の在り方を決めることができる。これがいわば地方分権,地域主権というものの基本的な考え方ですから,その基盤の1つではあると思います。
今,ちょうど副大臣がいらしたので,私は図書館というのはいわば情報公開というものと二本柱で民主主義を支える1つの仕組みだと思います。情報公開というのは,政府が持っている情報を必要な人に対していつも開示するというのが情報公開の大きな柱だと思います。
一方で,我が国の情報公開法を見ますと,その第1章の第1条で,そこで情報を定義しています。情報公開法の中でどういうものを情報とさせるか。そこにわざわざ白書,書籍,新聞,官報,これは除くとされているわけです。それはなぜかと言えば,官報や白書や書籍,新聞は図書館で見られるからです。情報公開法は,そういうふうにもともと政府が持っている情報と国民がこれからの社会を判断するための手掛かりとしての情報や知識をきちんと区別して条文として書いていて,情報公開法が持つのはそのうち行政府が持っている文章であって情報である。
一方,公刊,パブリッシュされた新聞,雑誌,あるいは官報,政府の出している白書,こういったものはそこから除くとしているのは,それは図書館が責任をもって提供するからだと。そういう意味で,図書館というのは単に読書の場だけではなくて,これからの社会全体,国全体の在り方を国民が決めていくときの1つの有力なツールなんです。それだけに国会図書館しかないようなもの,あるいは市場でなかなか入手できないようなものも地方に住んでいる国民がそれを見たいと思ったときに,見られるような仕組みというのを図書館を通じて作るということは,極め意味のあることだろうと思います。
それだけに今回のデジタル化されたものを瞬時にどこに住んでいても見られるような仕組みをまず作りましょう。そこから先,私的な財産である著作権を初めとしたような知的所有権の恩恵にあずかるやり方はどうやって作っていくのかをまず次のステージで考えましょうというのが私の考え方です。
先ほど,金原委員が今日のこの資料1の2ページのところのエとオは一見確かに相容(い)れないと言いますか矛盾するんです。ですけれども,私はこれはある意味では整合性がとれていると思います。と言いますのは,市場における入手困難というのは,ここにありますように絶版品切れであっても,今の日本の委託販売,そして再版性の仕組みの中では,どこかの書店にはまだ売れ残って残っているかもしれません。でも,通常図書館が今言った再版制度のもので,当初の価格で,そしてそれを通常の出版流通ルートの中で購入することが難しくなっている。そもそもどこの書店にあるのかは出版社に聞いてもよくわからない。
そういうものについては,やはりこれは図書館が例えば国会図書館の蔵書から送信して提供できるようにする。そのことによって,直ちに購入意欲というよりは,私は前にも申し上げましたけれども,そういうものの復刻,あるいは重版の要求というものが出てくるだろうと思います。つまり現物をコンピューターの画面で見たときに,これはやはり図書館に欲しい,現物を実際に読みたいという要求が日本の各地から出てくるはずです。
これはGoogleの例を見ていてもそうなんです。実際にデジタル化された部分が多ければ多いほど,その本に対する需要は伸びてくるわけです。そういう仕組みが国会図書館のデジタル化を国内の図書館で送信できるようにすることで実現すると,直ちに購入とは言いません,復刻,つまり絶版,品切れのものについて,デジタル復刻,あるいは再版,そういったものの要求が出てきて,今度それは図書館は実際にお金を出して買うだろう。場合によっては,個人で必要な方は,個人でお金を出して買うだろう。そういう意味で購入意欲の喚起につながるというように思います。
そういう意味では,個人の財産と公共的な財産のバランスというのは,私はうまく図っていけるようになるのではないかと考えています。もちろん私が言ったとおりに理論的にきれいに行くわけではありませんけれども,そういう方向は1つの方向性として十分実現できる方向性だろうと私は考えています。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【常世田構成員】
瀬尾委員と糸賀委員で図書館の新しいイメージの議論をしていただいているんですが,やはりちょっと抽象度が高い。恐らく今の議論を聞いていただいている方もわかっているようで,そこで言われている図書館の貸出ている本のイメージというのはやはり小説とか娯楽とか,せいぜい社会教育系なのかな,人文系かなという気がします。少し具体的な例をお話しして,少しその辺のイメージを修正していただけたらと思います。
要するに,私たちが今,新しい図書館のサービスをやっているものはどういうものかと言いますと,例えば自社ビルの屋上にネオンサイン灯を作らなければいけないけれども,そのときの積算の資料がないかとか。子供がアトピーになってしまって,どういう病院に連れていけばいいのか。あるいは,エチオピアから豆を輸入したいんだけれども,どういう問題があるのか。ラーメン屋を開きたいんだけれども,どういうことに気をつければいいのか。実はこういうことについて,図書館は情報を提供しているということなんです。そういうものについて,具体的な役に立つ情報を我々は提供していく,それによって日本の社会,わかりやすく言えば,今の日本の閉塞(へいそく)状態を打破して,この不況を更に何とかしていくということも可能なのではないかということです。実際に,中小企業庁と公共図書館の間ではかなり今連携が進んでいて,中小企業を支援するような資料を図書館でかなり中小企業庁から頂いて提供するようなことがもう始まっています。
消費者庁にも実はお話に行ったことがあるんですが,例えば最近ニュースで見れば,リコール情報が十分市民に提供できていない。7%ぐらいしか届いていないという話もあります。これは図書館にリコール情報を置けば,ネットを見られない高齢者の方も図書館に行けば,過去のリコール情報が全部チェックできる。そういうことを私たちは具体的なイメージを考えています。
例えば,国立がんセンターで,がん情報を公共図書館に提供しましょうということを連携してやっていたりします。ですから,先ほど瀬尾さんがおっしゃったように,文部科学省だけではなくて,いろいろな省庁の分野で国民に対して情報を流したいんだけれども,うまく流れていない。例えば,法テラスなんかもそうです。法情報を提供したいけれども,これは今,法テラスと公共図書館で役割分担して,法情報を提供したらどうかという話も出ているんですけれども,そういう可能性はたくさんあります。
例えば,アメリカの図書館に行くと,自殺をしようとしているような人の絵が描いてあるポスターがあって,「その前に図書館へ」と書いてあるわけです。自殺しそうになったら,図書館に来てくれと。自殺を止められる情報が世の中にきっとある。我々はそれを探し出してあなたに提供しましょうという話です。
具体的に,鳥取県立図書館では失業して,非常に精神的に不安定になった人に対して,立ち直るためにどういう情報を提供すればいいかというフローを作って,そして再就職するまでの間の必要な情報の本を集めたコーナーを作ったんです。そうしましたら,早速,電話がかかってきて,知り合いの人間が失業して,いつ自殺してもおかしくないような状態の人間がいて,たまたまその人がその棚から何冊か本を持っていって,その知り合いに貸したら,見事に立ち直って,再就職までいったということで,お礼の電話がかかってきた。
今,お話したような具体的なこういうイメージが新しい図書館像だということです。それだからこそ今お話ししているような国会図書館にないような情報を公共図書館に提供する必要があるというような道になるのかなというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【瀬尾構成員】
今,常世田構成員がおっしゃったようなもう現実的にその認識というのはやはり足りないと私も思います。そこまできているのであれば,それをもっと加速させていって,そしてきちんと電子的に本を扱っていけるようにしていくことで,比較的方向性ははっきりしている。だだ,私も不勉強ながら,そういうことは認知していないし,社会一般にあまり認知されていない部分があると思います。
だからやはりそれは1つの方向を持ってきちんと公にしていく,知らしめるということが,やはり大事だろうと思いますし,そういうふうなことが知れ渡れば,もっと利用が違ってくるでしょうけれども,私はそういうふうなことをインフラとして考えると実は地域行政とか,国から行政単位でもっと認知していただいて,予算や何かでもきちんとしていかないと,結局お金がなくてできないことがたくさんある。司書がいないとか。そういうふうなことが起きてしまっているわけですから,だから一般に認知させるまえにきちんとそれが実現できる予算的な裏付けをとれるような認知の仕方をまずどうやってやるかということを是非考えいただきたいというふうに思います。やはり志があってもお金がないし,予算がないとできない。
私が聞いた噂(うわさ)では,ある種の選挙で文化を言ったら落ちる。福祉を言わないと落ちると言って,嘆いていた方がいらっしゃったという話を聞いたりすると,やはり何か違うかなと。図書館はちょっと違う位置にいなければいけないのかなというふうに思いますので,何かそういうふうなことも,認知の方法自体も考えていかなければいけないのかなと思いました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
先ほどの田中委員の御発言を伺っていて,気づいたのですが,国会図書館から見るとこれはあれですか,送信サービスですけれども,何か電子化された相互貸借のようなとらえ方になるわけでしょうか。もしそうだとしますと,紙本の相互貸借よりも不便になりますね。先ほども御発言にありましたように,市場における入手困難性という要件がかかってきたり,それからプリントアウトは認めないとなっていますので,その辺りはどういうふうにお考えですか。
【田中構成員】
現在,国会図書館から本の貸出しを受けたいということを登録していただいた公共図書館,大学図書館に対して,国会図書館を貸し出していますが,それは館内だけで見ていただく。それから,複写というのは,今まではできなかったんですが,今は権利者団体とのガイドラインを作りまして,一応複写は限定的にできるんですが,それは更に借り受けたものを基本的には見ていただくだけなんですけれども,31条という権利制限のコピーができる範囲の中で,一部分コピーをすることはできるというようなことは今可能にはなっているんですけれども,それは確かにあります。
あと貸出しの要件なんですけれども,基本的には市場では入手ができないものというところで,一応その範囲ということにはなっております。若干,少し年月がたっているというもので高額なもので,まだ売っているけれども,高額なので入手できないとか,そういう部分がありますけれども,基本はどんな本でも貸しているということではないです。
【渋谷座長】
これは,国会図書館から見る世界だけでは全(すべ)てを覆ってないわけで,公立図書館から見て,紙本の相互貸借よりも電子化された相互貸借の方が自分たちに不便になるぞという認識がおありなのかどうか。つまり黙っておりますとこういう線でまとまってしまいます。その辺りはいかがでしょうか。ちょっと心配なんですが。
【糸賀構成員】
座長が心配されているのはよくわかるんですけれども,もともと現物の貸借の場合でも図書館の中だけでしか見られません。それから,コピーをとりたい場合には,国会図書館に依頼すれば,国会図書館のコピーしたものを郵送でもらうことができます。でも,今回のデジタル化はまずすぐに利用者が見たいと言ったときに,すぐその場で見られるわけです。
例えば,北海道にいる人が見たいといって,今の現物貸借ですと郵送してもらうのに数日かかります。だけれども今回は瞬時にそれが見られます。館内でしか見られいということは従来の現物貸借の場合と同じです。コピーが欲しいというのも従来の場合と同じです。その場でプリントアウトが取れないというだけです。だから,従来に比べれば私は格段に利用者へのサービスはよくなると思います。
【渋谷座長】
そうですか。それでしたらいいんですけれども,ちょっと心配で。
【常世田構成員】
まず,2つあると思います。1つは,入手困難なものということで言えば,残念なことながら,今,国会図書館には入手可能なものも相互貸借の依頼が行ったりしていまして,これを私たち図書館界で昔から言っていることなんですが,それによって国会図書館は忙しくなってしまっているので,本当に入手困難なものしか国家には要求すべきではないというのが,基本的には図書館界全体の認識としてありますので,これは問題ないと思います。今回,合意形成できているものについては,入手が可能かどうかとチェックしてから利用するということについて,私は問題ないと思っています。
それから,コピーの問題については,座長に心配していただいたように,せっかく権利者の御理解を頂いて,ガイドラインができて,コピーが可能になったということなんですけれども,それは糸賀委員が言っているように,従来は国会図書館は借りた本をその場でコピーできるようになったんですが,今回は,本が届くまでの時間,タイムラグがやはり1週間ぐらいかかりますので,現物の場合は,ですから電子的にピュッときて,そこで確認をして国会図書館に従来の仕組みどおりに正式にコピー依頼をして2,3日かかって届いても,現状と変わらないかなという辺りで,何とか利用者からクレームがつかないレベルで現場として対応できるのではないかというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【糸賀構成員】
国会で,現物貸借をやった場合に,その本が国会に戻ってくるのにどれくらいかかっていますか。
【田中構成員】
1か月の貸出期間なので,1か月間,その本が離れてしまうと,来館された方も利用できない。そういう問題が生じます。
【糸賀構成員】
ところが,今回のデジタル送信にした場合には,例えば稚内の利用者が見たいといったときに,その人がそこで2時間を見たら,その後,全国の利用者がまたすぐ見られる可能性がある。現物が行っちゃった場合には,今,おっしゃるように1か月間,ほかの人たちが利用できないんですけれども,デジタル送信でやれば,そこの利用が終わった時点ですぐにほかの全国の利用者は閲覧ができるということになります。
【渋谷座長】
私も不便になるばかりだと言っておりませんで,もちろん便利になるんですけれども,プラスマイナスしてみてどうなのかなと,その認識がおありかどうかということを確認したかっただけです。
【瀬尾構成員】
私が国会図書館さんのデジタル化の協議会にも参加させていただいている中で,今回のデジタル化ですごく私は魅力的だったのは,壊れてしまいそうな非常に貴重なものというのは貸出しが今まではできなかったんです。でも,それをデジタル化することによって見られるわけですよね。実は,国会図書館さんの壊れそうなような古いものの方が私なんか非常に興味があるし,それはそこにしかないわけですから,見たいものは重要になるんだけれども,それはそこに行かないと見られなかった,というのが日本各地の中で見られるというのは,デジタル化の,これはあまり公になってないけれども,すごく大きなメリットだと思います。つまり今まで出られなかった無数の一番重要な部分がアクセスできるようになるというのは,これはもっと声を大にして,すごくよくなったんだよ,と実は言ってほしいなと思うし,私自身は非常に魅力を感じたところですので,そういう大きなメリットも私はデジタル化によってあると思っています。
【渋谷座長】
ありがとうございます。
時間が大分たってしまいましたが,私まで発言するからこうなるのでありまして,申し訳ないことだと思いますが,次は検討事項[2]の検索サービスです。このペーパーによりますと,検索のためのテキスト化をすることについて概(おおむ)ね意見の一致が見られたと言いながら,次のテキスト化の方法,4ページでは当面OCRを用いたテキスト化とあるから,大分方法が限定されているという形になっています。
こういう報告で,内容をまとめようかという,こういう話になっておりますが,この点について,いかがでしょうか。
【田中構成員】
4ページ目の方法についてというところを考えますと,画像だけを作っているという状態です。それで,繰り返しで恐縮ですけれども,そこからOCR処理をして,一応文字に起こすというところまではほとんどお金がかかりませんけれども,それを完全な利用できるようなテキストデータに整備するというのは,非常にお金がかかるものであるということです。
そういうところからしますと,まず画像からOCR処理をして,検索ができる程度の若干間違いがあってもいいというようなところを検索にのみ用いる。その上で,更に必要なものについて,例えば最後に出ておりますオというところに出ていますような視覚障害者の方に提供する等の目的の場合には,きちんと校正してテキストデータとして整備する。そういったやり方で進めるということは合意をいただけるというのであれば,私たちとしても現実的なお金のかからないやり方というのを組み立てることはある程度できるかなと考えます。
【杉本構成員】
このテキスト化という話は,当然(2)検索結果のところにつながりますけれども,こういう検索サービスを提供できる機関は国会図書館だけに限られるのか,あるいは国立国会図書館がAPIに対して,ほかのところがある種,付加価値サービスをすることを認められるのか。そこが国民にわかりづらいかなと思いました。
そこは当然よりよいサービスをということをする前にはできるだけフレキシブルがいいはずなので,当然テキスト化したデータを公開するというのは,それはあり得ないと思いますけれども,もともとのサービスの人間だけが使えるというふうにすると,非常に限定的な利用しかありませんので,ですから,例えばそれぞれの公共図書館において,それぞれ図書館に応じたサービスを作ろうとすると,いわゆるAPIを介した利用が認められないとかなり苦しいことになってくるんです。ですから,そうしたことも含めて,検索機能を提供できるようにとらえておいていただく方がいいだろうと私自身は思います。
【瀬尾構成員】
ちょっと話は戻りますけれども,糸賀構成員からできるところから始めましょうという話があって,これは私も同意なんですけれども,そのできる範囲の中で,最もやりやすくてかつ効果が絶大なのが,この検索サービスだと思います。これは,もう一つの基準で,できることというものの中に公でなければできないことというのがあると思います。
例えば,これから電子書籍の市場が形成されつつありますし,それに関しては非常なスピードで形成されていくだろうと思います。そういうふうなところとバッティングしたり,意味がなくなってしまうような部分というのは,今の段階で手をつけるべきではないと私は思っています。
ですから,先ほどの創造のサイクルとか,いろいろな部分の中で,危ないところというのは今やるべきではないと逆に公の抑制になってしまう可能性があると思っていますけれども,ただ今の検索に関して,これは公でしかできないし,例えば先ほどのようなシステマティックに国会図書館のデータを公共図書館まで送るとか,そういう公でしかできなくて,かつ手が届くものというふうに考えていくと,私はこの公共検索サービスというのは,非常に大きな効果があると思っていますので,それでしかもネット上で,これは一般家庭から検索できるということで私は考えています。
ただ,この検索データ自体を更に利用していくということに関しては,これは難しいのかなと思いますけれども,一般の家庭からネットの中で検索して,全文テキストの90%というと,実はかなり怪しいものがありますけれども,その程度であっても,これを早急に家庭から検索できるようにすることは,最も公という必然性ということもあって,効果が大きいことだなと思っていますので,イメージとしてはそういうことまでは現時点で可能なのかなというふうに思っていますし,したらいいのではないかなというふうに思っています。
【金原構成員】
この検索は先ほどまでの話のコンテンツの配信とは違いますから,一見,権利者,出版社,著作者に影響がないように見えるんですが,実はこの検索制度というものは,既に市場で様々なレベル,というのは出版サイドで行っているものもありますし,流通のレベルで検索,アマゾンを含めて,特に新しいものについてももうほとんど完璧(かんぺき)な検索制度ができ上がっているわけです。これは当然のことですが,官ではなくて民でやりまして,これはどうしてそういう検索制度を作っているかというと,これは出版物の販売に結び付けようという努力をしているからにほかならないわけでありまして,これとの整合性を考えるべきだろうというふうに思います。
これはもし検索を図書館を含めたところで,官で行うということになると,必ずしも民間がやっている検索,つまりそれを販売に結びつけようというところのプラスになるならばいいんですけれども,それの障害になると,官による民業の圧迫になる危険性も考えられるのではないかなというふうに思いますので,先ほどの出版物のコンテンツそのものの配信もさることながら,この検索というものも,その範囲を限定的に考えないと,出版物の発行と流通に影響が出てくるのではないかと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【糸賀構成員】
ちょっと議論が錯綜(さくそう)してきたんですけれども,このテキストデータで検索できるというのは,さっきデジタル化されたものについてですよね。そうすると,これが直ちに先ほどの金原委員御自身が指摘したように,これが直ちに変えるものを検索できるかどうかはまた別問題ではないですか。私がさっき言ったのは,検索した人は,仮に瀬尾委員が言われるように,自宅で検索した人は,まずは現物を見たいと思うでしょう。あるいは図書館に行って,画面の中だけでもいいから,その本全体を見たいと思います。それでもってそれで終わる人と,これはやはり買いたい,だけどもどうもこれは絶版品切れだったら,出版社さんにこれは是非復刻してくださいとか,重版してくださいという要望が出てきて,それで買うかどうかの意思決定をするんだろうと思います。
だからこの時点は,検索した時点では購入と結びつかない。それはそもそも市場に出回っているものが検索できるわけではないから。普通の本について最新のものを国会図書館が収集したものが,直ちにテキスト化されるわけではないですから。それについては,やはり検索したときに,いわゆる著者,署名,出版社程度しかそこは出てこないだろうと思います。デジタル化したものについて,その裏側にテキストデータがあるので,こういう検索が可能になっている話だと思います。
だからと言って直ちに購入には結びつかなくて,間接的にすぐに市場で出回ってないけれども,是非こういうものは復刻してほしい,デジタル復刻の要望というのは,いろいろな国民がその出版物を目にすれば,私は今よりも顕在化してくるだろうと思います。そういう意味で,やや間接的ではあるけれども,購入意欲の刺激にはなると思います。だけれども,直ちにこの検索結果からこれを買おうというふうな,Googleの検索のように,あるいはアマゾンの検索のようにはそれはならない,もともとそういう本がデジタル化されているわけではないから,という構造だと思います。
この話は,私はむしろ次の,デジタル化使用を民間に提供するかどうか。だからこういうふうなものを民間に提供して,民間がそれで販売と結び付くようなシステム,仕組みを作り上げていくという可能性は,それはあると思います。これは次の民間にそれをどういうふうな形で提供するかという話と結びついて来ると思います。 
【渋谷座長】
結びつけて,もっとお話があれば……。
【糸賀構成員】
私ちょっとそこは,どういう条件で,これは税金を使って,国会図書館がやったものだから,これを民間に渡すについては,当然私は有料で渡すことになると思います。その価格設定や条件まで考えなければいけないので,すぐに私はいいアイデアは浮かびません。これはどう考えたって,無料で民間に,「はい,どうぞお使いください」と渡せるもではないので,その条件というのはなかなか,そう簡単には私は申し上げられないと思います。
【渋谷座長】
検討事項[3]に触れていただいたのですけれども,これは5ページ,点線で囲ってあることで,ほかと区別してあるのですが,これは事務局からの提案ということでしょうか。
【鈴木著作権課長補佐】
検討事項[3]につきましては,この会議の場で,具体的な議論をまだ行っていなかったということもありますので,これを考える視点としては,このような方向で考えられるのではないかということで,事務局から提案と言いますか,整理をさせていただいたものをここに掲載させていただいております。
【渋谷座長】
そういう位置づけになっておりますので,そのおつもりで御意見を賜ればと思います。
【田中構成員】
まず,検索の部分なんですけれども,ここで議論していただいているお話は,基本的に古いものについて画像でデジタル化を進めている部分について,それを検索可能にするという枠組みでしております。一方で,混乱させてはいけないんですけれども,オンライン,いわゆる電子書籍について納本制度を今後検討していくという話が一方であります。その中では,今,電子書籍として配信されているものも国会図書館のシステムに収蔵されて,それが保存されるとともにある範囲で利用ができるということになると思います。それは初めから検索可能な形のデータですので,そこを含めた全文検索というのをやるのかどうかという話は当然あるとは思います。商業サービスとの関係として。
それから,今,[3]のところのお話なんですけれども,1つ,デジタルではない,紙のもので,納本制度で国会図書館にある資料で入手困難なものを基に復刻,複製をして,民間で販売したいという場合には,作成部数掛ける売上高の3%を国庫に入れていただくというルールで,それは今復刻,複製のために国会図書館の収蔵物を使って,もちろん権利的な許諾を頂くということが前提なんですけれども,それは仕組みとして現在,紙のものについては,復刻,複製ルールというのがあります。
このデジタル化したものについても,前回,話がちょっとそこまで行かなかったんですけれども,例えば,今回の大規模なデジタル化では雑誌については,2000年まで,雑誌記事索引採録タイトル,かなり大きな雑誌,タイトルがデジタル化が今回かなり進みます。その部分について,幾つかの出版社の方からはそれを基にビジネスに使いたいというお話も現に頂きました。ただ,そのときに,雑誌の場合には,全(すべ)ての権利処理が今のままですと,国会図書館では権利処理をしていただかないと,その国会図書館のデータ自体を使えないという問題があります。
ただ,国会図書館にある雑誌というのは,納本制度ということなんですが,実際には出版社の皆様が寄贈していただいて,国会図書館の蔵書になっています。それが発行元の方がその自分の手元にも揃(そろ)ってないというときに,国会図書館のデジタルデータを版元さんもそれを商業的に使えない。それを個別に権利処理をしていたのでは,雑誌のものをデジタルで,民間で利用するというのもかなりハードルが高くなって,採算に合わなくなってしまうということがあります。その辺は,ここにもありますような,例えば集中的な権利処理システム,あるいは手元でまず権利処理をするためにも,そのデジタルデータとして国会図書館が作ったデータを発行者の方が,例えば優先的に何らかのビジネスに使うということを考えるというような,そういうこともあるのかなというふうに思います。雑誌のようなものは,出版社さんと国会図書館というところの仕組みの中で,そういうコレクションを作ってきているわけなので,最終的にそれで売上げを上げるということでは国に対してバランスをとって,お金をある程度入れていただくということがあるのかもしれませんけれども,その辺は,今後の検討課題としてあるお話だと思います。
【前田構成員】
国会図書館から公立図書館,大学図書館への送信サービスにつきましては,相当期間重版されてない,市場において入手困難なものに限るべきだと思います。入手困難かどうかについては,電子出版されているのだったら,それは入手困難とは言えないという整理でいいと思います。
つまり,1つ売れれば権利者にチャリンとお金が入るという状況にあるものは,送信サービスの対象にすべきではないと思います。それに対して,検索サービスの方については,国会図書館でデジタル化されているものが対象になるということではあると思いますが,この検索サービスについては電子出版で現に提供されているものであったとしても,検索サービスの範囲であれば行ってもいいのではないかと思います。その点で検索サービスと送信サービスでは違いがあるのではないか。
ただ,前回も議論がありましたけれども,今回のペーパーの4ページ目の一番下のウのところですが,この辞書類,辞典類,又は俳句などのように,1行程度の表示でも本文利用の目的を達してしまうものについての配慮は必要だと思いますが,この配慮がなされている限りにおいては,検索サービスについては,電子出版等で提供されているものであってもいいと思います。
更に,申し上げますと,私の意見としては,国会図書館からの送信サービス,先ほどの入手困難になっているものという条件を満たし,かつプリントアウトも認めない,それから同時閲覧も認めないという厳しい制限の下においては,送信サービスについて,権利者の許諾を得る必要はないと思いますし,それから検索サービスについても許諾を得る必要はないと思います。
検討事項の[3]のデジタル化資料の民間等への提供については,これは権利者の許諾を得ることが必要であり,その許諾を得るシステムとして集中権利処理システム等が必要になってくるだろうと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【瀬尾構成員】
今のデジタルで提供されている,納本されたりしているものとそれから入手不可能であるというレイヤーのものと先ほど申し上げましたけれども,ちょっと大きく基本的な立ち位置が違うと思います。全(すべ)てをやるというのと入手不可能なものをやるというのは,かなり大きなステップアップの必要があるのではないかと思います。
デジタルで提供されているものは比較的いつでも検索の対象に技術的にはしやすいと思うんですけれども,しやすいからと言って,それを一緒くたに議論してしまうのは私はちょっと今の時期では尚早かなという気がします。とりあえず今,国会図書館でデジタル化をして,入手不能であって,送信できるようなものというのがあるわけですから,それをとりあえずまず全文検索にする。その制度も上げるようにしていくところが,多分スピード感からいったら現実的なのかなというふうに思います。
とりあえずできるものを全(すべ)て全文検索できるというのは,私は全文検索は比較的賛成派なんですけれども,多分調整に時間がかかるから,それまで入れてしまうと時間がかかってしまうような気がするんです。もっと早急に全文検索については,先ほど金原構成員がおっしゃったような部分とバッティングしない部分に関して,早急に実施する方が,スピード感重視で範囲を多少限定してもスピード感があった方が,私はこれについてはいいように思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
今の御発言ですけれども,デジタル化資料を検索のためにテキスト化する,こういうふうに3ページに書いてありますが,それでよろしいですね。
【瀬尾構成員】
結構です。ただ,今,お話の中であったのは,デジタルのまま統合されたり,持っている資料についても全(すべ)て検索の対象にするというお話のようにもちょっと取れましたので,そうではなくあくまでここに書かれている範囲をまずやるということがスピードとして大事かなというふうに申し上げたんです。
【糸賀構成員】
先ほど,私はちょっと誤解していました。電子納本ということは,少なくとも前に発言したときにちょっと考えていませんでした。電子納本されたものについても当然ここで言う検索の対象になって,全文検索ができるようになる。それについては,瀬尾委員は,家庭からでも,ホームページ上で検索をして,その検索が表示されるということで差し支えないだろう。そうしますと,むしろその部分については,著作性は持たない。だから,仮に図書館で検索した場合でも,その検索結果をプリントアウトすることについても問題ないわけです。そう考えればですね。その辺をちょっと確認したいと思います。
それから,さっきの国会図書館からの送信の場合には,例えば同時アクセスも制限するということでした。この検索についてもひょっとしたら,滅多(めった)に起こらないと思いますけれども,同じものを検索する。何か所かです。何人かです。それも全然問題ない。つまりそれぞれ著作性を持たないものが表示されるわけだから,その点については差し支えない。つまりプリントアウトしてもいいし,それから同時アクセスという表現がいいのかどうか。同時検索も全然これは問題ない。そういう理解でよろしいですか。そうすると大分,前のものと話が違うし,それからそれはデジタル化,もともと1964年までのものをデジタル化するという話でした。その話とデジタル納本されている。電子納本されているものは,もともと話が違うんだということをこの会議の冒頭でも,でもこの検索に関しては,どちらも同じ対象になる。そして,さっきの全国の図書館に送信する場合と,条件はプリントアウトとか同時アクセスの点で異なる。こういう理解でよろしいでしょうか。
【瀬尾構成員】
私が申し上げたのは,検索が同時にできるし,結果に関して著作権を持たない。また,持たないようなものを対象にするということはわかります。ただし,先ほど申し上げたのは,電子納本されたようなものは,これは含めないということを申し上げています。つまり,昔のものをデジタル化した部分に関して,まずテキスト化して,新しく入れたものに関しては,入れられるけれども,それは別の意味を持ってしまうので,新しいものは範囲に含めない方がいいだろうというふうに私は申し上げました。
それは,新しく電子化されたり,今のものが全部入ってくるわけですよね。そうすると金原構成員が言われたようなバッティングが起こり得るので,その議論を待っていたら,多分遅くなってしまうから,私は現時点ではそうではないようにした方がいいというふうに申し上げた,ということです。
【糸賀構成員】
その理想はよくわかりました。基本的には,公立図書館ないし国会図書館がやることなので,民業を圧迫しないというのが大前提です。まして民間でこれを売ろうとしている。市場を広げようとしているときに,わざわざ税金を使ってその民業を阻害する必要は全然ないと思います。そういう意味では,電子納本をされたものについて,事情が違うので,議論をもう少しきちんとしなければいけない,それを避ける意味で,まずはできるところからやろうという趣旨でしたら,私も賛成です。
わかりました。ありがとうございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【杉本構成員】
実際の利用ということを考えますと,国会図書館が提供するサービスというのは,基本的に国会図書館の蔵書の検索になると思います。ですから,一般市場にある電子書籍の検索はそもそも使い勝手が違うであろうと思います。ですから,同じ土俵で考える必要は基本的にないんだと思っています。ですから,逆に言うと,書籍一般を含んでいる検索を先にした上で,それがひょっとして国会図書館にもあるかなという使い方はなされるのではないかなと,これはあくまでも予想ですから。こうだというふうに言い切ることはできないですけれども,役割の違いというのはサービスとしてあると思います。
【渋谷座長】
それでは,時計数字のⅡの公立図書館等の役割について,というところが残っていますが,これは,アとイがあります。アをやると,これは大分お金がかかるような感じがしますが,こういう方向が打ち出されているということです。いかがでしょうか。
【常世田構成員】
これは,国会図書館の今回のデジタルアイズというのとは一線を画して,いわゆるこれから提供されるような電子的なコンテンツを公共図書館が購入をして,利用者に提供するというビジネスモデルだと思います。
これももうアメリカや韓国では,アメリカなどでは20年ぐらい前から,いわゆる電子書籍なり,データベースなり,あるいは電子ジャーナルなりを公共図書館でも権利者にライセンスフィーを図書館が予算の中から払って,そして利用者が無料で使うというビジネスモデルはもう成立しておりますので,これは日本でも当然同様のビジネスモデルが成立すべきだというふうに私は思っておりますし,図書館界でもこれはかなり前から御提案申し上げているところで,ちゃんとお金は払います。もちろん適切な金額をお願いしたいとは思いますけれども,問題がないことだろうというふうに思っております。
【糸賀構成員】
これに関しては,基本的には常世田委員が言われるように,公立図書館もそういうやり方で買っていくべきだと思うんですが,私が心配するのは,むしろ大学図書館の電子雑誌もそうですが,特定の取次ぎだとか,特定の出版社がタイトルを固定してしまって囲い込んでしまう。ある雑誌を買おうと思ったら,要らない雑誌も含めて買わなければいけない。ある特定の取次ぎと契約をしないとその雑誌が入ってこない。というような出版社や取次ぎによる囲い込みは避けていただきたいと思います。そうしないと,あるひと固まりを必ず買わなければいけないというような購入の仕方になって,1点,1点の自由な選別ができない。そういうやり方になっては困ると思います。基本的には,公共図書館も一定の対価を払った上で,それは提供していくべきだろうと思います。
それから,今度はイの方なんですけれども,イの方で,最後の方に蔵書として購入していく出版物の選別の在り方について公の機関によるチェックを実施することが重要だという指摘がありますが,これはちょっとやはり難しいと私は思います。これは,図書館におきましても,知的自由度の問題でして,個々の図書館が司書の考え方でその図書館の特性,立地条件にあった選書というのをやっておりますので,それを外部からチェックするということは知的自由の侵害というふうに当たります。これは日本図書館協会が図書館の自由の宣言を持っておりまして,この選書,図書館の資料の収集の仕方,あるいは提供の仕方については図書館が自立的に決定するものであって,外部からの介入をうけるもではないというふうに,これは日本だけではありません。広くヨーロッパやアメリカ,世界の図書館でそういう原則が認められておりますので,こういう他(ほか)の機関からのこれは公に限らず,私であれ公であれ,そういうチェックというのは,私はするべきではないと思います。
【渋谷座長】
今の御意見についてですか。別の御意見ですか。
今の御意見,大事かもしれません。取りまとめの段階で……。
【鈴木著作権課長補佐】
今の糸賀委員の御指摘の件なんですけれども,この購入する出版物の選別の在り方,これはその在り方自体をチェックするという意味ではなくて,その前の行にありますように,人気のあるベストセラー本ばかりを購入するようなことがないように,というところまでかかってくると御理解いただければと思いますし,前回,出された意見としましても,そういうことは懸念されているという動きもあったかと思いますので,そういうことで単に人気のあるものだけではなくて,前段にもありますような学術書ですとか,そういった書籍なども買う,そういう全体的な図書館のあるべき姿と言いますか,そういったこと。選出の考え方という例示をしておりますけれども,そういうことについてチェックするというか,そういうことが重要ではないかという趣旨でここはまとめさせていただいているところです。
【糸賀構成員】
極端に言えば,ベストセラー本ばかりを買っている図書館の判断でうちはそういうのに力を入れるんだと言われたら,私はそれまでだと思います。それは例えば国の基準もありますし,図書館界の意見として,これから図書館はそういうのでは困るよというふうな自主的な判断,自主的な図書館の在り方の転換,それを図るのは構いませんけれども,それに対して,ほかの機関があれこれ口出しをして,チェックして,ここの蔵書はこれではいけないとかいうことはやはりそれは適切ではないと思います。
だから,ベストセラー本ばかり買うという確信犯的と言っていいかどうかわかりませんが,そういう図書館があったとしてもそれはどうしようもないと思います。私は決してそれは望ましいと思いません。それをほかの機関があれこれ言って,その蔵書,収集の在り方について介入するのは適切ではないと思います。
【渋谷座長】
その御趣旨,特に異論はないようにも思うのですが,これは表現をもう少し何か工夫されたらどうですか。
【鈴木著作権課長補佐】
前回の会議の中で出されました意見,構成員からの意見として書いているというところですので,また表現ぶりとかそこはまた再度整理させていただきたいと思いますが,ここに書かれています位置づけとしてはそういうものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
【渋谷座長】
次回ありますから,そのときにできばえをじっくりと……。
【里中構成員】
今の問題に関しましては,公立図書館との役割についてというところで,つまり先ほどから話されているように,手に入る本は国会図書館に頼らずに自分のところで手に入れるというようなことを公共図書館の役割として掲げておけば問題はなくなるのではないかと思います。純文学や学術書がたとえニーズが少なくてもきちんと入れる。そうでないと国会図書館に頼ろうとしても,市場で手に入る本だから,デジタルデータの配信はできませんよって言われちゃうわけです。前提として,手に入らない本,入りにくい本,絶版になったものという前提をちゃんと打ち出しておけば,ここの心配は小さくなるのかなと思います。
ただ,心配なのは,今純文学や学術書でもそんな何年も発行形態が保たれるのではなく,さっさと市場から消えちゃうんです。学術書はどうせ必要な人はこれぐらいしかいないだろうという部数しかもともと発行されないので,しばらく待てば市場から消えてします。それを理由として公共の図書館が国会図書館に貸してくださいとお願いするという図式が固定するのはちょっと心配な気がいたします。ですから,公立図書館はやはり率先してこういう必要かくべからざる本なんだけれども全体的なニーズが低いものに積極的に購入するという姿勢を持っていただければいいんですが,背に腹は代えられない。金がないとできないということもあると思います。
ですから,将来的な話ですが,やはり受益者負担で何らかで有償ということで各公立図書館が勇気と努力で存続していこうという道も必要かと思いますが,今,ややっこしいことを言うと,まとまるものもまとまらないので,これぐらいにしておきます。
あと,すみません,1つ,確かめたかったんですけれども,複本とありますよね,同じ本がたくさんあるということです。その同一の出版物という表現もあるわけです。出版物となりますと,出版物というのはこの本1冊について,これは出版物ですから,著作物とは違うわけで,版を重ねて修正が加わると1版,1版,これは別の出版物と法的には見なされると思っているんですが,それに間違いはないでしょうか。
だとすると,同一出版物は同時にこの前提として同時刻というか,同時間帯に同時閲覧は認めないとなっていても,複本でもいいじゃないかというお話がありましたけれども,その場合の複本とおっしゃったのは全く同一内容の出版物を指していらっしゃるのか。じゃあ,2版,3版重ねて,修正が加わったものは同一出版物ではないわけですよね。出版物としては別の出版物ですよね。ほぼ同一の著作物ではあっても,出版物ではないわけですよね。となりますと,2版,3版を重ねたり,修正が加わったものは同時に閲覧できるというわけですが,検索するときもそうなんですけれども,同一タイトルであっても,版が違う場合はそれと認識できるような表示の仕方をしておかなければいけないということになります。
やはり手間もかかって大変だと思いますが,そこがちゃんと押さえられていると混乱は来さないと思います。ちょっと心配で質問してみました。どなたが答えてくださったのか,うんうんとうなづいてくださっているので,大丈夫かなと思いますが,はい,確認です。
【渋谷座長】
反映されると思いますから。
【田中構成員】
国会図書館の場合,版が違えばもう別の書誌として別の形になります。ただ,同じ本でも刷りを重ねて若干微調整とか誤植が直ったり,それは基本的には同じもの,刷りの違いは同じと見なして,版が変わったときに,別の本として扱うというやり方をしています。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,そろそろ会を閉じなければいけない時刻でございます。それでは,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。
【鈴木著作権課長補佐】
では,長時間の御議論ありがとうございました。
次回の本検討会議の開催につきましては,日程を調整させていただきまして,決まり次第連絡をさせていただきたいと思っております。
なお,次回の検討会議におきましては,本日の御意見を踏まえまして,図書館と公共サービスの在り方に関する事項につきましての中間的なとりまとめのための議論をさせていただければと考えております。事務局からは以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,これで第6回の会議を終わらせていただきます。
本日は,大変な状況の中で,大変ありがとうございました。

19:25 閉会

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