フィルムセンターの在り方に関する検討会(第2回)議事要旨

1. 日時 平成16年3月10日(水)14:00〜16:00

2. 場所 東京国立近代美術館フィルムセンター内会議室(6階)

3. 出席者
(協力者) 横川座長,岡田,河原畑,迫本,関口,髙村,西村,松本各委員
 
(オブザーバー) 高野悦子 東京国立近代美術館フィルムセンター名誉館長
辻村哲夫 独立行政法人国立美術館理事長,東京国立近代美術館長
 
(文化庁) 寺脇文化部長,木曽文化財部長,西阪芸術文化課長,湯山美術学芸課長,冨岡美術学芸課美術館・歴史博物館室長,佐伯芸術文化調査官 外


4.概要
事務局,フィルムセンターより資料の説明が行われ,その後,委員から以下のような議論が行われた。
フィルムアーカイブについて,主要各国を比較すると,そもそも常勤の職員が少ないと感じる。平成16年度はフィルムセンターに約4億の予算がついたが,予算がついたことよりも,まずはフィルムセンターの機能を充実することが大事ではないか。
また,フィルムセンターの機能を分けて考えていくと同時に,組織自体がどうあるべきかについても平行して考えていく必要があるのではないか。
映画フィルムの保存については,過去に製作された映画フィルムの収集・保存をどうするかということと,これから製作される映画フィルムの収集・保存をどうしていくかの2つの問題がある。
これまでに製作された作品の収集率は大変低いが,その実態について,フィルムセンターは現在どこまで情報をつかんでいるのか。
映画フィルムについては,残存する映画フィルムも含めて基本的な調査・データベース化を行い,きちんと整理をする必要があるのではないか。
映画フィルムの保存を行うためには,単年度で予算を考えるのではなく,国として長期的視野を持って別個に予算を計上するほうがいいのではないか。
平成16年度にフィルムセンターに対して4億の予算がついたということだが,フィルムセンターで行われる基本的な仕事ができる環境を整えるために予算がいくら必要なのかということを話し合う必要がある。
残存フィルム調査の一つの手段として,全国に展開しているフィルムコミッションと連携する方法もあるのではないか。
フィルムセンターの今後の在り方については,CNC(フランス国立映画センター)のように映画機能全般を担うか,特に収集・保存としての役割を担うかの2つがあるが,今は保存・普及等アーカイブ的なことを前向きにやる方向で議論を進めていってはどうか。 国立国会図書館法では,DVDやビデオも集めることとなっているが,今後のフィルム等の収集の在り方として,国立国会図書館は電子的な著作物のようなものを集め,映画フィルムはフィルムセンターで集めていくという方法で考えてはどうか。
映画振興に関する懇談会の提言では,フィルムセンターが国の映画専門機関として,内外の窓口としての仕事ができる機能を有することが考えられていたはずであり,現段階でアーカイブに限定して議論を進めていくとなると,提言の中で掲げられていたフィルムセンターのその他の機能についてはどうなるのか。
日本映画の後継者をどのようにして育てていくかについては,過去に撮影所が行ってきたことをフィルムセンターが担っていくためには,どのような組織でどういう形で取組んでいくのかを検討する必要がある。
製作支援については,どこまでフィルムセンターでやるべきなのかという問題もあるので,今後議論していく必要がある。
国立国会図書館法にある映画フィルム納入の規定について,議論すると同時に,海外の映画フィルムを保存する法律がどのようにできているのかについても議論する必要がある。
仮に法改正を行い,映画フィルムの法定納入義務が課された場合,過去の映画フィルムについても適用されていくのかという疑問があるが,それについては専門家の方々の意見を聞いてみたい。
映画振興に関する懇談会の提言に掲げられている機能のうち,人材育成,製作支援については,必ずしも映画製作者の人材育成にだけ焦点を合わせる必要はないのではないか。例えば上映のプロやフィルムを収集して保存するプロなども含めて考えていいのではないか。また,製作支援についても,必ず映画の制作費を補助することだけを製作支援と言うわけではなく,フィルムセンターに即したことでいうと,過去に撮影された日本映画をアーカイブ化したものを使用できるシステムを構築し,他の映画撮影に活用していくことも考えられるのではないか。
散在する映画フィルムを調査し,収集していくことは必要だが,組織的に展開できるのか等,具体的な方法論についても検討する必要がある。
学校の先生方に,映画を素材として様々な催し物を開催することで,学校,加えてコミュニティにも浸透していくのではないか。
現在,文化庁と芸術文化振興基金から制作助成を受けている団体に対し,制作したフィルムを必ず一本はフィルムセンターに納入すべきなどの規程を設けて欲しい。
委員から出された意見を反映させることも大切なことだが,フィルムセンターで働いている方々の現状,問題点を把握し,どのような形であればフィルムセンターで運営していくことができるかについても考える必要がある。
映画フィルムの収集・保存に関しては,物理的に言えば予算,人数の問題が現実として起こってくるのではないか。
また,現在保存を進めている映画フィルムについては,上の世代にとっては非常になじみの深いものであったりするが,その下の世代には断絶と言えるほど伝わっていない。映画のタイトルすら知らない下の世代にどうやって伝えていくことができるかについても,検討会の中で議論して欲しい。
映画フィルムの保存が現状でうまくいっているのであれば,特に納入義務ということを法定しなくても,フィルムセンターに納入していくようなシステムも考えられるのではないか。
全ての映画フィルムを保存していくのは困難である。何らかの基準として,今のフィルムセンターの基準でいくのか,この前の提言にある基準でいくのか等,議論があるところだが,ある程度国の資産として納入し,収集・保存されるのにふさわしいものから優先的に収集・保存していく方がいいのではないか。
近年,製作委員会形式の映画が増えてきており,数年経つとその後の映画フィルムの管理がどうなっているか追求できないというケースがある。
映画フィルムの納入義務づけについては,きちんとした形で運用されるのであれば,国の予算や保存可能な規模を考慮した上で行ってもいいのではないか。
フィルムセンターのアーカイブ機能を充実させ,例えば国立の映画映像美術館のようにしていくという考え方もあるが,そうすると,映画振興に関する懇談会の提言の中にあるその他の機能をどうするかという問題がある。次回の検討会までに委員の方々にお考えいただきたい。
法律で映画フィルムの納入を義務づけることは難しく,加えて,予算や事務処理能力の問題も出てくる。保存を実際にどのような形で行っていくかについては,次回議論をしてみてはどうか。
最終的にはフィルムセンターが独立してきちんとした形になるということを念頭の上で,映画フィルムの収集・保存が基本的なことになると思うので,まずはここをしっかりと議論していただくことで,自ずから道は開けてくるのではないか。

5.今後の日程
事務局より,次回検討会については,4月21日(水)を開催予定とするとの説明があり,閉会した。

以上

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