フィルムセンターの在り方に関する検討会(第4回)議事要旨

1. 日時 平成16年5月19日(水)14:00〜16:00

2. 場所 東京国立近代美術館フィルムセンター内会議室(6階)

3. 出席者
(協力者) 横川座長,岡田,迫本,関口,髙村,松本各委員
 
(オブザーバー) 高野悦子 東京国立近代美術館フィルムセンター名誉館長
辻村哲夫 独立行政法人国立美術館理事長,東京国立近代美術館長
 
(文化庁) 寺脇文化部長,西阪芸術文化課長,下坂美術学芸課長,佐伯芸術文化調査官 外


4.概要
収集・保存以外の機能の在り方を,(1)普及・上映機能について,(2)人材育成機能について,(3)製作支援機能の在り方について,(4)全般についての4つの事項に区切って,委員間で以下のような議論が行われた。
((1)普及・上映機能について)
フィルムセンターの限られた人数で収集・保存以外の機能を担うことを考えると,優秀映画鑑賞推進事業などの事業を,なるべく外部の団体に委託し,収集・保存機能に力を入れることが合理的。しかし,フィルムセンターが事業のクオリティを管理する必要があり,その手段としてコンペティションを行い,そこから委託団体を選択することも考えられる。
新しい事業を始める時にはやはり予算が必要。外部委託も考えられるが,まずは予算がきちんと確保されているかを踏まえる必要がある。
フィルムセンターの改革の前提で,予算や組織の在り方がしっかりしていないと,実際に改革を行えるかは疑問。今のフィルムセンターの事務能力では新たな機能を付すことは困難。
「映画振興に関する懇談会」でも述べたとおり,これまで疎かにしてきた観客側の人材育成も重要である。
マーケットのメカニズムにのる部分については民間が,それ以外の部分については国が支援していくことが望ましい。特に民間ではフィルムの収集・保存が困難であるため,フィルムセンターで収集・保存機能を担ってもらい,普及・上映についても,良い映画を色んな場所で鑑賞できるように取組んで欲しい。
また,フィルムセンターで収支事業を行い,それに国の予算も加える形で採算の合う程度で運営することができれば,これまで以上に幅広に普及活動に取組むことができる。特にフィルムセンターに足を運ぶことのできない地方の方々に対し,広く上映できるようにすべき。
映画鑑賞機会の提供が大都市に偏重している。過去に文化施設等が作られた時期があったが,現在ではその施設を活用しているところもあれば,衰退しているところもある。
地方公共団体に働きかけて,これら文化施設を活用して,先生方や子ども達,父兄の方々に安い料金で映画を鑑賞する機会を提供することはできないか。
財団法人国際文化交流推進協議会が行っている,公共上映等の普及活動の支援をフィルムセンターにも共同作業で行っていただきたい。
普及・上映については,使用許諾の管理等,著作権の問題がある。著作権がどのようになっており,映画フィルムがどこにあるのか,それらの情報を集めてフィルムセンターを窓口とする仕組みを構築して欲しい。
昨年から財団法人国際文化交流推進協議会が「映画上映専門家養成講座」を行っているが,製作された映画作品を上映する機会がなかなかないため,フィルムセンターでフォローして欲しい。また,アーキビストの専門家を養成する講座を設け,行政支援の一環として,基礎的知識を持つ人材に資格を与えるなどの制度を設けて欲しい。
地方公共団体によっては,公立文化施設で映画を上映することに消極的な自治体もあるが,今後上映を可能にしていくためにも,積極的に協力を働きかけていく必要がある。
公立文化施設で映画上映を行うことは重要なことであるが,誰に鑑賞してもらうのかを考慮した上で上映プログラムを作成すべき。
地方の子どもたちに,映画を鑑賞していただく機会や,そもそも上映していることを知らないという現状を改善し,もっと鑑賞できる機会を設けていくべき。
しかし,フィルムセンターがどこまで普及・上映の機能を担うかについては役割を分担すべきであり,映画鑑賞の事業を中長期的に民間がやるのか,NPOがやるのか,もしくはフィルムセンターに人員をつけて「普及推進部」のようなものを設けてやるのかについては,これから議論する必要がある。
「優秀映画鑑賞推進事業」と「夏休み子ども映画館事業」はフィルムセンターにとって重要な事業。
観客を育成するためにも,映画の普及・上映は重要である。
((2)人材育成機能について)
現在学生インターンシップ制度を設け,撮影現場で学生を受け入れ,職能団体を中心とした人材養成の試みがなされているが,問題は,観客をいかに育てるかである。
教育課程の中に「映像」を体系的に学ぶ場を設け,興味・関心を醸成することで,観客のレベルアップ等,広い意味での将来的な人材育成につなげる必要がある。
また,プロを志した人達にきちんとした教育をするための仕組み作りという課題があり,文部科学省も含め,今後検討して欲しい。
どの映画を上映するかという観点が大切であり,その役割を担うキュレーターの養成が重要。また,そうした人材が地方でも活用できるよう,例えば,学校の教師などを対象とした講座を設けることはできないか。
また,日本映画が意識的に継承されていないので,これらをカバーするためにも,映画の上映や人材育成は重要である。
美術館等のキュレーターの方々や,公立文化施設の設置管理者などの人材育成も重要。
人材育成については,映画界を挙げて重要な課題であるが,フィルムセンターが担う機能は,まず収集・保存であり,それに関連して,スペースや映写施設の活用による人材育成を行っていくべきである。
小学校,中学校を問わず,先生方が子どもたちに「映画とは何か」ということを教育過程の中で教える必要がある。先生方が映画に触れる機会を提供する場として,地域で開催されている映画祭に参加していただけるような仕組み作りも必要。
フィルムセンターの機能としては,収集・保存と優秀映画鑑賞推進事業のような普及・上映を主体とすべきであり,人材育成まで担うとなると,少し手を広げすぎではないか。
フィルムセンターにおいて人材育成をやりたい気持ちはあるが,事務能力的にも難しいという現実があるため,人材育成を行っている団体などとフィルムセンターが協力して取組んでいく必要がある。
((3)製作支援機能の在り方について)
フィルムセンターの機軸は収集・保存であり,これに関連して普及・上映機能を果たすこととなるため,製作支援機能についても,人材育成と同じような位置付けになる。その中でフィルムセンターで製作支援機能を果たすとなれば,海外に出品される映画作品に対する支援や,字幕作成などである。
加えて,映画に関する様々な情報を提供することは各製作者に資するものであり,こうした機能を充実していくことにより,実質的に製作支援機能を充実していくことができるのではないか。
新人監督が製作した作品を,フィルムセンターを使って上映して欲しい。必ずしも良い作品とは限らないが,人の目に触れ,評価される場を設けることは必要である。
各映画会社では,過去に製作された映画作品のデジタルマスター化が行われており,これをフィルムセンターと協力してやっていけないか。
デジタルマスター化については,国の財産である映画を有効活用するという意味でも,是非検討していただきたい。
若い人材の映画作品を上映することは重要。また,映画に関する情報を一般の方々に伝達することで,製作支援につながる。
過去に製作された映画作品を上映することは重要だが,その際映画史における研究やドキュメンタリー制作にかかわる関係者などに,特に積極的に情報提供していくとともに,そうした関係者の取組を一般向けに紹介していくといった活動を展開していくべきである。
((4)全般について)
デジタルマスターとは別に,現在フィルムセンターで収蔵されている作品をDVD化して,学生の学習のための手段に利用するなど,有効に活用していくべき。
保存されていて流通していない映画作品については,映画を対象として研究を行う人々が自由に閲覧できるような仕組みがあってもいいのではないか。
「映画の広場」がフィルムセンター内にあることが,依然として一般に広まっていないという状況を改善していくべきである。

5.今後の日程
次回は,6月9日(水)に開催することとなった。

以上

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