議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第8回)

平成23年9月16日

【大川芸術文化課課長補佐】  それでは会議を始めさせていただきたいと思います。 本日はお忙しいところ集まっていただきまして,どうもありがとうございます。
 開会に先立ちまして,資料の確認をさせていただきます。

<資料1,資料2,参考資料1,参考資料2を確認>

【田村座長】  それではただいまより第8回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催したいと思います。委員の皆様におかれましては,御多忙のところ御出席いただきありがとうございました。
 さて,前回は論点の整理を確認した上で今後の検討に向けた方針について議論し,あわせて検討事項を御議論いただきました。本日は,前回出されました意見を踏まえまして,前回の検討事項を事務局において改めて整理してもらいました。また,事務局の方において地方公共団体のヒアリングを行ったとのことでございますので,その報告を初めにお願いしたいと思います。その後,地方公共団体のヒアリングの結果などを踏まえながら,検討事項について更に議論を深めてまいりたいと思います。それでは事務局から説明をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】
 

<資料の説明>

【田村座長】  ありがとうございました。このように地方公共団体の実情や認識が様々であるというのはおわかりいただけたと思うんですが,多分こういう調査というのは初めてだったのではないかという気がいたします。文化施設の方に対する調査というのは結構今までも公文協もしておりましたが,行政側にこういった調査をしていただいたのはとても,私ども携わっている立場から言いますと,刺激していただいてとても助かりますし現実を御理解いただけたのではないかなという気がいたします。こういう現状の中で,地域の実情に応じた地方公共団体の考え方を生かせる劇場・音楽堂等の在り方ということを検討しなければならないんだなと思います。
 今御説明いただきましたヒアリングに関して何か御意見がございましたらお願いしたいと思いますが,いかがでございましょうか。

【三好委員】  質問をしてよろしいですか。
 資料1の「11.法的基盤の必要性」の総論部分に,「国が,…振興を図る上で法令上整備することについては一定の理解をするが,劇場や音楽堂として位置づけられない既存の多くの文化施設において芸術文化振興予算が結果的として削減されるのではないかという強い懸念がある」とありますが,これは国から来るお金が減るという意味なのか,それとも,その地方公共団体において予算が減らされてしまうという意味なのか,教えていただきたいと思います。
 また,「12.その他国への要望」のところで,やっぱりその一つとして子供への鑑賞機会の拡大ということについて,行政あるいは特に文化施設の立場から言うと,かなりやっぱり力を入れていきたいということが根本的にあるんだと思うんですけれども,「地方の施設を活用し,次代の担い手のために芸術鑑賞の機会を拡大してもらいたい」というのは,これについてもう少し具体的に国に対して何をしてほしいという御意見だったのかが,もしわかれば教えていただきたいと思います。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい,失礼します。最初の御指摘につきましては,前提として,劇場を認定する制度のようなものがあった場合ということだと思うんですが,1つは国からの助成が減ってしまうんではないかという懸念です。それから,さらにはその地方自治体においても「劇場とはこういう位置づけのものであるから,当該地方自治体の劇場は該当しない」という理解がなされるという懸念があるというような,両方の意味です。
それから,「12.その他国への要望」の子供への鑑賞機会の拡大の項目でございますが,今,文化庁でも子供への舞台芸術の推進活動をやっておりますが,これを拡充してもらいたいというスタンスで御意見を頂いております。
 以上でございます。

【田村座長】  地方公共団体の行政の方が文化庁に対して拡充してほしいということですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。

【三好委員】  逆に言うと,そこの団体では拡充できない事情というのが何かあるんですか。この教育委員会の中で何か考えればできそうな気がするんだけど,そこまでは触れられてないわけですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  そこまでは触れていません。

【三好委員】  わかりました。

【田村座長】  でも実際問題として,教育委員会と劇場が連携して取組を行っているというところもありましたよね。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。「7.舞台芸術活動の推進に向けた工夫について」に,芸術監督の方がアウトリーチ活動,特に子供に対するアウトリーチ活動が大切だということで,率先して活動を教育委員会と行っているという報告がございました。

【田村座長】  ほかにはいかがでしょうか。

【片山委員】  感想的なことになるのですけれども,全体的な傾向としては,やはり,余り法律によってありようを縛られたくないというのが全体的な御意見だったのかなと思います。ただ,その一方で,その劇場・音楽堂を初めとした文化施設の設置の目的や意義に関しては何らかの規定といいますか法的な根拠があると,自治体の中で予算をとったりするときに助けになる,という御意見は,希望としてはあるのかなと感じました。ただ,これについては,既に積極的にやっている自治体については文化芸術振興基本法があれば十分ということで必要性を感じないところもあるのだろうと思いますけれども,大多数の自治体においては,劇場・音楽堂等が果たす役割の重要性みたいなものは,文化芸術振興基本法だけでなく,別途,それを根拠づけるようなものがあると支えになるという,そんな御意見だったのかなと読み取ったところです。

【田村座長】  太下委員,何か。

【太下委員】  1点お伺いしたい点があります。4ページの「5.指定管理者における人材について」で「芸術監督の配置に当たり,財団の職員とする場合が多い」と書かれています。確かに一般的には財団の職員となっているケースが多いと思うのですけども,ここでは「地方公共団体の非常勤職員」という位置づけになっていると書かれています。この場合,指定管理者制度との兼ね合いはどうなっているのかなという点が気になりました。もしこのケースで指定管理者制度を導入されていれば,想像するに指定管理者は芸術監督を抱えずに提案して,採択された後に改めて芸術監督と何らかの調整やマッチングが行われるという複雑なプロセスを経るのかな,というふうに思ったものですから,もしわかればという範囲でお教えいただければと思います。

【大川芸術文化課課長補佐】  ここの地方公共団体の経緯から言うと,指定管理をする前に芸術監督が配置されていて,それを前提に指定管理が行われているという状況のようでございます。館の趣旨に合致するというようなところを指定管理で選んだという順番になっているというふうに御理解いただければと思います。

【太下委員】  わかりました。

【田村座長】  根木先生,何か御意見等はございますか。

【根木先生】  特にありませんが,この回答者は,担当者レベルではなくて,文化担当課なり担当部の組織としての意思という理解でよろしいですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。対応いただいた方は,基本的に地方自治体の文化担当課長さん,文化担当課長補佐さん等でございます。

【田村座長】  すみません,「12.その他国への要望事項」に,「都道府県の文化ホール間の連携について情報提供願いたい」とか国に何をしてほしいというのは色んなところで書かれていますけれど,御自分たちでそれを積極的にやろうと思っているというような発言はないのでございましょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  それは,指定管理者制度の運用についてでしょうか。

【田村座長】  それだけではないんですけど,連携について情報提供を願いたいとか必要な研修を国で実施してもらいたいという,「何かしてほしい」という御意見が多いんでございますので,御自分たちでそれを積極的にやろうと思っているというような発言はないのでございますか。

【大川芸術文化課課長補佐】 ここには,今まで出てきた主な御意見を載せさせていただいておりますが,ここで指摘をされていない自治体において,例えば他(ほか)の施設との交流をさせることによってそのキャリアアップを図るというようなことをしておりますので,そういうところではしっかりと,他(ほか)の館の情報をとってきているんだろうということが考えられます。ですので,積極的にうちはこういうふうにやっています,情報をとって今動いていますという明快な御回答を頂いたところはありませんが,実際には,そういった取組の中でしっかりとやられているものだというふうに認識をしております。

【田村座長】  片山委員。

【片山委員】  今回18の自治体の調査をされたということなのですが,最近,自治体の中ではクリエイティブシティ,創造都市の考え方のもとでの文化政策を総合政策的に展開しているところも多くみられます。そういった中では地域の劇団とか楽団を営利及び非営利の産業としてとらえて,それらを振興していくという政策も出てくると思います。そうしたときに文化施設というのは鑑賞者のため,住民のための施設ということだけはなくて,産業を育てるための生産関連インフラとしても位置づけられてくるかと思うのですが,今回の18団体の中で,そういう地元の営利及び非営利の文化芸術産業を振興する,育成するという役割というのをおっしゃった自治体というのは,ありましたでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  そうですね。文化発信拠点,文化芸術拠点という言い方,また,まちづくりのために拠点となる施設であるという表現でお答えになったというのが正直なところです。文化担当者ですから,「経済」という感じではおっしゃってはいませんでしたけれども,確かに一部の,実は,ある程度わかってしまうので申し上げにくいですが,余り施設を置いてないところがむしろそういう考えをお持ちで,いろいろな今あるソフトをいろいろな場所で提供して,まちづくり,地域を活性化させていきたいというような考えをお持ちのところはございました。いずれにせよ,一つの機能として経済的な発展にもつながるものというのは関係者の中で認識はあるものというふうに推測しています。

【片山委員】 ありがとうございます。

【田村座長】 それではちょっと時間が押してますので,次にまいりたいと思います。前回,本検討会で出されました意見を踏まえまして,前回の検討事項を事務局において再度整理していただきました。この修正された検討事項(案)について議論を深めていきたいと思います。
 まず,事務局から御説明をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】

<資料2について説明>

【田村座長】  ありがとうございました。それでは,御意見をいただければと存じます。

【片山委員】  2点ほど気づいたことを申し上げたいと思います。「5.(7)国の支援の在り方」の「[3]劇場,音楽堂等の機能を十分に発揮するために求められる能力を育成するための人材育成の取組に係る支援」という部分についてですが,育成だけではなく,リクルーティングであったり,次の職場を探してあげるということも検討の項目として盛り込んでいただければと思います。特に自治体財団の中だけでずっとキャリアを形成していくということになると,どうしても閉鎖的になってしまいますから,次のステップの職場を探せるようにする,また,そういう人を採用したい団体に人を紹介できるようにしていくということが大切かと思います。これは厚労省の所管の仕事になってくるので,なかなか記載するのは難しい点かとは思いますが,求められる支援という観点では大事な点かと思いますので,実際にそれを最終的に法に盛り込めるかどうかは別として,検討の項目としては入れておいていただけたらなと思ったところです。
 それから,「1.劇場,音楽堂等の制度的な在り方に関する検討を行うに当たって」を見て気になったのですが,上から4番目の項目で,外国との比較に関する記述があります。ここでは,ヨーロッパのことだけが参照されているのですが,アメリカの場合ですと施設が実演団体を持っているというケースはないわけですけれども,民間の実演団体が官民の所有する施設を比較的長期にわたって継続的に拠点として利用することができているという事例もありますので,それも併記しておく方が日本の今後の姿を考える上では参考になるのではないかと思います。実際,日本の場合もフランチャイズについては,既に取組が行われていますので,何も施設側が自主制作を行うだけが創造拠点になることではないということかと思います。バランスをとる上でもアメリカのことを記載しておくと良いと思います。

【田村座長】  ありがとうございます。

【太下委員】  取りまとめ御苦労さまでした。非常に今までの議論とか経緯を踏まえて慎重に書いていただいているので,内容については基本的に異論はないのですけれども,逆に,あまりに慎重にお書きになっているが故に,文化庁さんとして何を今後なされたいのかという点が見えにくくなっているきらいはあるかなというふうに思っております。
 こういうふうにペーパーに書けるかどうかは別にしまして,劇場・音楽堂の望ましい未来型みたいなものが幾つか提示できればいいのかなと思いました。御案内のとおり,この議論の中では「劇場,音楽堂等」としてかなり広く対象を考えております。例えば,実際は貸し館中心だけれども,コミュニティ振興に力を入れている,今後も教育普及をやっていくという劇場があったとします。その場合,専門人材として,いわゆる美術館などにおけるエデュケーターやインタープリターのような職種,あるいは地域と文化とをつなぐような専門職が必要になってくるかもしれませんね。ただし,そのような人材を自治体だけで手当するのは人材確保や資金の面で非常に難しいと思います。このようなケースでは,そういった専門人材の確保を国が側面から支援できないか,という考え方があるかもしれません。逆に非常に特化した方向としては,地域の中核的な劇場・音楽堂という考え方もあり得るかなと思います。この中核的な劇場・音楽堂は,ここで制作した作品を地域に巡回するという意味だけではなくて,例えば地域におけるアーツカウンシル的な機能を担うという考え方もあり得るのではないかと思っています。
 先ほど片山委員がおっしゃっていました人材の流動化といいますか,キャリアアップの拠点として,このアーツ・カウンシルが人材センター的な役割を果たすのかもしれませんし,今後,地域の文化振興のファンドというものが設置されるのであれば,それを受けて,その地域内でどういうふうに使っていくかということを,地域のアーツカウンシルとして担っていく,まさにプログラムオフィサー等を配置するという役割もあり得るかもしれません。
 今並行してアーツカウンシルの在り方について,文化庁でも御議論されていると思いますけれども,現状では音楽と舞踊について試行的に導入されていて,対象とする団体数がそんなに多くなく,比較的やりやすい分野で御検討されていると思いますが,演劇ですと団体数が非常に多うございますし,地域によっても独特の状況がありますので,恐らく今御検討されている音楽とか舞踊と同じようなやり方ですと評価・検証はかなり難しいのではないかと考えています。特に演劇分野については,地域の既存的な施設,すなわち劇場・音楽堂とタイアップしていくということも一つの在り方かと思っています。先ほど御紹介いただいた自治体のヒアリングのまとめの中で,舞台芸術の振興を担う者が集まる拠点として劇場・音楽堂は必要である,という御意見もありますので,公演が見られる場としての劇場・音楽堂だけでなく,そこに専門人材が集まる場としての劇場・音楽堂というものを地域の一つの中核的な拠点として位置づけるという方向性もあるのではないかと,こういうふうに感じた次第です。
 先ほど申し上げたとおり,文化庁さんとして今後地域の公的な,また民間も含んだ劇場,音楽堂等がこういうふうに進んでいけばいいのではないかという未来型みたいなことを提示してもいいのではないかと思います。

【田村座長】  ありがとうございました。

【三好委員】  非常によくまとめていただいてかなり問題点が見えてきたわけですけれども,もやもやしているところがありまして,太下委員もおっしゃいましたように,国に求められていることが何なのかということがいま一つはっきり明確に出てきてないなという感じが非常にしています。これまでも申し上げたように,公立を例とするならば,公立の文化施設がここ20年ぐらいずっと整備をされて,10年前に文化芸術振興基本法ができました。こういう状況の中で,今の段階で何を考えるべきかというと,アンケート結果にもあるように,現実に公立の文化施設,あるいは民間の文化施設というのは,いろんな活動をしている。でも,その中でもうまくいっている部分,うまくいってない部分,いろんなことが出てきています。少なくともそういう状況の中でやはり国としての姿勢というのをもうちょっと明確に,やっぱり出す必要があるんだろうと思います。個別に書かれていることはそれぞれ非常にある程度ポイントを押さえて書いていただいているんですが,結局,書かれていることがお互いにどう関連しているかの部分がよく見えてないというのがどうも,そのもやもやしている原因ではないかということです。
 例えばこの3ページの「4.検討の方向性について」とありますけれども,「3.検討対象とする施設について」では,国として,例えばそういう拠点が必要であるという認識をしながら,「5.個別の検討事項について」以降は,例えば国,地方が設置する施設についての個々の話になってきてしまっています。拠点が必要であるとするならばそこをどうやって国として考えていくのかというあたりがやっぱり必要なのではないかということです。
ここから先は個人的見解ですが,もう少し具体的に申し上げますと,例えば基本方針として,少なくとも3つぐらい要るのではないかと思います。1つは今申し上げた,国としてやっぱり文化芸術を振興していく上で拠点というものが必要であるということ。それから2つ目には,といって,今,国立劇場や新国立劇場,国立劇場おきなわ等の施設がありますが,これら以外の施設を国がどんどんつくっていくかというと,多分そういう状況にはないと思います。であるならば逆に公立とか民間の施設を,国の立場としてもっと中核的なものとして活用することが重要ではないかと思います。活用という言葉がいいかわかりませんが,国として,それらの施設がもっと育ってほしいという意思表示をするということは,やっぱり重要ではないかと思います。3つ目には,ただ単に意思表示だけではなくて,公立とか民間の施設が育っていけるだけの基盤の整備ということをやっぱり考えていかなきゃいけないと思います。基盤の整備によって,そういう施設が活動を充実させていける。そういう方向性というのをやっぱりきちんと方針として出していくというのが,まず必要ではないかと思います。
 その上で,例えばこういうことが法律で書けないかという御提案が3つあります。それは具体的に言うと,文化芸術振興基本法の25条と27条をより具体化するものとして新しく法律に書けないかという御提案です。1つは今言った,優れた文化芸術の創造発信を行うための施設の機能。施設そのものではなくて,要するに施設の機能というところに着目したような法律の書き方ができないかというのが1つ。
 それから2つ目は,国は自ら設置者となるだけではなくて,例えば,協定のようなものが国と地方自治体,あるいは国と民間との間で協定を結ぶことができないかということです。協定を結ぶことができるということを例えば法律に書けないか。地方分権改革の中で国と地方は対等だという言い方を今していますが,国と地方との間で何かの協定のようなものを結ぶことができるということが法律に書けないかと。3つ目には,国は協定の相手方となる設置者に対して人的,物的,経済的な支援を行うということについて,具体的にそれをやるべき内容,相手方,手段というものをもう少し明確にした方がいいのではないかと思います。ここだと漠然と支援とだけ書かれているので,だれに対する支援なのかもいま一つよくわからないということになってしまうのではないかという懸念がありますので,例えば協定という言葉を法律に書くことによって,国以外の設置者との間で協力し合う関係というものをつくっていけないかと思います。その場合に,例えば実際のアンケートにあったように,例えば国にのっとられてしまうんではないかという御懸念も当然あるでしょうから,例えば1年のうちのある日はそういう協定に基づく使い方をするけれども,それ以外の日は自由に使っていいですよ,要するに地元の住民のために自由に使っていただいて結構ですよという使い方もできるのではないかと思います。ですから,そこの施設ということではなくて,施設の機能というところに着目するということについて,非常に私は賛同したいというふうに思っています。
 やや唐突かもしれませんけれども,今申し上げたような形でもう少し具体化していく方が私はいいのではないかというふうに考えております。

【田村座長】  文化庁として,法整備をするんだったら,どこかに特化すべきだということでしょうか。

【三好委員】  そういう意味での特化というのではなくて,要するに国としてやるべき部分について特化するということです。ですから,例えばさっきの人的配置とかそういうことについて必要があれば,それはもちろん書いていいと思うんですよ。別にそのことを否定しているわけではないんですけど,それだけではちょっと全体像がうまく見えてこないなという,そういう意味です。

【田村座長】  一方に,全国津々浦々,文化環境が豊かになるように国が取り組むべきではないかというような御意見というのも多分あったと思うんでございますけれどいかがですか。

【三好委員】  それはまさに今の文化振興基本法に書かれていることなので,そこのことを別に否定するつもりは全くないです。

【田村座長】  根木先生,いかがですか。

【根木委員】  三好委員の今のお考えと,私も似たことを少し考えていたのですが,例えば「5.(7)国の支援の在り方」で,相手方と手段がややあいまいな感じがしております。(7)の[1],[3],[4],[5]は,劇場,音楽堂もかかわってくるのでしょうが,劇場,音楽度とは関係ないところでの支援ということもあり得るわけです。つまり,劇場,音楽堂とは少し離れるような感じがします。劇場,音楽堂等を拠点とする文化芸術の振興法,ということであれば全部入れてもいいのでしょうが。
 それから,太下委員がおっしゃったアーツカウンシル的なものまで入れるとなると,範囲が広がり過ぎ,拡散し過ぎて収拾がつかなくなるのではないかという感じがします。
 また,三好委員がおっしゃった拠点ということに関してですが,国と設置者が契約を結ぶという仕組みは,ある意味では活用できるのではないかと思われます。一方的に国が地方に対してこうしなさいということではなく,お互い対等な立場における契約関係として,国と自治体との間でそのような協定ないし契約を結ぶ方式があり得るのではなかろうか。といいますのが,給付行政の基本はやはり契約関係です。それは国と自治体との間の協定といってもいいでしょう。いずれにしても,十分に活用する余地があるのではなかろうか。また,法律に書くのではなく事実上の関係としてできることもあり得るかと思います。法律事項とすべきかどうかはわかりませんが,一度検討してしかるべきではないかという感じがします。
 それから,芸術団体との関係ですが,フランチャイズのほかに共同制作ということもあるでしょうし,人材育成や教育普及ということについても連携の余地があるのではなかろうかと思います。
 なお,片山委員がおっしゃったように,劇場と芸術団体との関係は,アメリカとヨーロッパとでは少し事情が違うと思います。欧州の場合は一般的にホールとカンパニーが一緒でしょうが,アメリカの場合はそれが分かれているように思われます。日本は,その意味でアメリカ型に近い形で連携が図られるのではなかろうか。それにならう必要はないでしょうが,欧州型だけではなくてアメリカ型も,一応考慮の中に入れておくことが必要ではないかという感じがします。

【田村座長】  ありがとうございました。
 1つだけちょっと発言させていただきたいんですが。文化施設に働くアートマネジメントの専門人材という意味では,本質的には私は同じだと思いますんです。要するに,演劇だけの,音楽だけの,なっているところが一番の問題ではないかというふうに思うので,余り分野によって異なるということを強調されるのはいかがなるものかなと,思います。
 要するに総合的に振興が図られるということによって最終的に本当に舞台芸術を高めていくものになるのではないかという気がいたします。私どもの施設でも多目的な取組を行っています。専門の施設が望ましくて,多目的がよくないと言われることの方が多いんでございますけれど,特に地方では施設がたくさんあるわけではないわけですから,複合的なものが取り上げられていくということが最終的にどの分野の芸術活動にも影響するのではないかなと思います。どれか一つのジャンルだけやっててよくなるというものではないと思います。
 実際問題,静岡では演劇の劇団を持った施設を持っております。でも,それだけでは地域の文化環境が豊かでないということだけでははっきりと申し上げられます。例えばこの調査の中にもあったと思うんですけれど,杉並区の座・高円寺は,いわゆる公演のため,創造するための貸し館のための専用ホールと阿波(あわ)踊りのための専用ホールを持つというやり方をしていらっしゃいます。工夫をすることによってあんなに小さい施設でもそういうことはできるわけです。特に地方の施設は多目的かつ複合的であるということがすごく大事です。最終的に日本の文化芸術の質を高めていくためには,それが私は必要ではないかというふうに思っていますので,余り「異なる分野によって」ということを強調されるというのはいかがなものかなというふうに思います。
 もう一つ,専門人材の資格制度を設けるというのはなじみにくいというお話で,私も,すぐにはそれはなかなかなじみにくいというのは理解できるんですけれど,将来的にはやっぱり考えていくべきことかなと思います。例えば芸術分野でも音楽と美術に教育機関がきちんとあって振興されているものと,ダンスや演劇に教育機関がきちんとないというところの弊害というのはやはりあるわけで,そこは視野に入れながら,検討する必要はあるかなと思っています。
 やっぱり最終的には文化施設であれ図書館であれ,質がやはり一番大切だと思いますので,そのためにはどういう人材が必要かということを,広い目を持った専門人材というのが必要だというのが,実際携わっている立場では,そう思います。
 ほかに先生方。

【片山委員】  よろしいですか。「6.指定管理者制度について」について,[1]「…コスト削減といった財政上の効率性だけを考慮せず,質の高い事業内容を提供できる指定管理者を選定するよう…」と書いてあるのですが,質の高い事業をやるというのは手段であって,設置の目的をきちんと達成することができる事業者を選ぶということが大事だと思います。やはり仕様書の段階で設置の目的があいまいな形で指定管理者を選んでいる自治体が非常に多いという現状を考えますと,きちんと,設置の目的を達成できる指定管理者を選定するという形に書いておいた方がよいのではないかと思いました。

【田村座長】  ありがとうございました。先生方,他(ほか)に意見はよろしゅうございますか。

【根木委員】  先ほどの専門人材の話ですが,創造型の劇場の場合は企画制作といった中核的な機能を持った人材が必要でしょうし,鑑賞型の場合も,全体を見極めるプロデュース型の専門人材が必要になると思います。また,住民参加型の場合だと,全体のプロデュースもするが,コーディネートといったことも必要と思います。それは,地域連携とか,広報,営業,観客の育成など,いろいろな要素が混在して入っていることが背景にあります。そういった意味で,施設の種別によっても,求められる人材の資質,能力は微妙に違うという感じがします。
 また,分野ごとでも,オペラの制作と演劇の制作,あるいは舞踊の制作とでは,かなり異なってくるのではなかろうかと思います。
 そういった人材をどのように位置付けるかは,現に現場で活動している方々との関係上難しいとは思いますが,何らかの形で配慮していただければ大変有り難いと思います。
 なお,「5.(6)文化行政及び劇場,音楽堂等に配置される人材の育成」のところで,文化行政に携わる職員についても書かれていますが,ここまで範囲が広げられるのかどうかも検討していただければと思います。

【田村座長】  ありがとうございました。近藤長官,いかがでしょうか。

【近藤長官】  今回で8回目になりますか,全部出たわけではありませんけれども,いろいろな御意見がかなり集約できたと思いますが,なかなか明確でぴりっとした結論になりにくいような気がちょっといたしております。どういうふうにやったら一番効率よく,かつ東京中心ではなくて,地方が活性化していく形で日本全体の文化芸術のレベルが上げられるか。これは,劇場,音楽堂等だけの話ではないのかもしれません。地方主権とか地方分権と言われ続けて何年にもなりますが,なかなか実現していない。いろんな理由があると思いますし,もちろんメディア的に見れば中央が権力を放したがらないとか,地方分権と言われても,できる地方とすぐできない地方があるとかいろいろな理由があると思いますが,文化芸術以外の分野でどのようなペースで分権化が進んでいくのかということともやっぱり関連してくるような気もするので,なかなかその辺の全体の見極めがつかないと,具体的にどういうことは申し上げることは難しいですが,機能に注目するという先ほどのお話は非常に大事な点かなとも思います。
 震災もあって,ちょっと集中的な業務がこの数か月できなかったかもしれませんけれども,引き続き各関係者の声を聞きながら,どうすれば本来の目的が達せられるか,どこまで国が指示をしていくのか,法律という形で制度をつくっていくのか,どこまで財政的な支援という形で事実上の高いレベルのものを奨励していく形にするのがいいのかとか,いろいろな方法を検討してまいります。これまでの議論を一部拝聴していてなかなか,クリアーカットな,かつ法律になじむ結論に導くのは余り簡単ではないなという印象はあります。ただ,これまでの中で本当に問題点というか随分絞られてきて,ポイントはほとんど明確になったと思います。あとは最終的にどの点を拾って明確な結論の方向に導いていくかということになるかと思いますが,私自身引き続き勉強したいと思います。

【田村座長】  ありがとうございました。
 では時間になりましたので,本日出されました意見を踏まえて,事務局におきまして再度整理していただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは今後の日程について,事務局より御案内をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】  失礼します。現在,皆様の御予定,調整させていただいておりますので,おってまた御連絡させていただきたいというふうに考えております。よろしくお願いします。

【田村座長】  本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

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