議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第11回)

平成24年1月13日

【大川芸術文化課課長補佐】  それでは会議を始めさせていただきたいと思います。
 会議に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただければと思います。お手元の資料,まず1枚目に議事次第を置かせていただいております。
 それから,資料1といたしまして,劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関するまとめ(案)ということで,両面ですが,19ページにわたるものをお配りしております。
 それから,参考資料といたしまして,本検討会の委員名簿をお配りさせていただいております。
 以上でございます。

【田村座長】  それでは,ただいまより第11回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催いたしたいと思います。委員の皆様におかれましては,御多忙のところ御出席,ありがとうございます。
 初めに,このたび文部科学省及び文化庁における人事異動がおありになって,新しく着任された方がいらっしゃいますので,一言ごあいさつをいただければと存じます。

<文化庁出席者紹介>

【田村座長】  よろしくお願いいたします。
 さて,本日は,今までの本検討会でなされてきた検討を踏まえまして,検討会としての取りまとめをまとめたいと思っております。
 皆様のお手元には,前回の検討会において出された意見や,その後,各委員から提出された意見などを踏まえまして,事務局において修正したまとめ(案)がございますので,御確認いただければと存じます。
 それでは,主な修正箇所について事務局から説明をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】  失礼いたします。早速でございますが,お手元の資料1をごらんいただければと思います。座長からも御指摘いただきましたが,修正点についてまず御説明をさせていただきたいと思います。
 形式ですが,まず,題名につきまして今回,中間まとめとしていたものをまとめとして,本検討会のまとめとさせていただきたいと思います。
 それから,おめくりいただきまして,目次を入れさせていただいております。
 それから,まとめとしての体裁ということもありまして,「はじめに」ということで,本検討会を設置した趣旨,それから,検討の状況,今回まとめた内容ということで,概要を「はじめに」という形で追加させていただいております。「本まとめでは」ということで,最後の段落でございますが,劇場,音楽堂等について,法的基盤の内容として考えられる事項とともに,劇場,音楽堂等の運営に当たって留意すべき事項等を整理したという位置づけにさせていただいております。
 それから,おめくりいただきまして,2ページ目でございます。前回,現状,課題,ここは記載をしておったところですが,本ページの2ページ,下3つのマルでございます。それから,一部注釈でございますが,昨年の6月27日に論点の整理をしていると思いますが,そのときに確認をしていただいたデータを追加しつつ,修正をさせていただいております。
 主に申し上げますと,予算の削減ということに絡みまして,地方公共団体の芸術文化経費というものの減少の状況,それから,そのうちの文化施設経費に係る額の推移ということで,前回示させていただいているものを入れさせていただいております。
 それから,指定管理者制度についての状況ということで,これは公文協さんの方で調べられた調査結果についてですが,大体の状況を踏まえられるデータを入れさせていただいております。
 注釈には,文化施設の調査というものに様々なものがございますが,1つございますのは,社会教育調査の方で文化施設についての調査を行っておりますので,そこの言葉は文化会館という言葉を使っておりますが,座席数が300席以上のところを該当させている調査ですので,全部を網羅しているかというと,若干疑義がございますけれども,目安として入れさせていただいております。
 それから,次のページにいきたいと思います。課題ということで,ここも前回までの課題を整理させていただいています。表記の仕方として,本検討会で出された課題という表記ぶりに1番目のマルをさせていただいております。それの具体的な内容をポツで示しておりますが,具体的には3つ目以降を補足しております。1つは,劇場,音楽堂等と文化芸術団体との連携,それから,劇場,音楽堂等に配置される職員に求められる資質,役割というところについて,多様性を示すとともに,人材養成について課題がある点を示しております。
 その次のポツは,観客数の減少,それから,観客の高齢化,固定化という指摘があり,潜在的な観客の開拓,すそ野の拡大といったものについて御指摘があったので,記載をさせていただいております。
 その次のポツにつきましては,劇場,音楽堂,特に地方公共団体が設置する劇場,音楽堂等ということで,専門性を有した人材を配置している劇場等が少ないという点,それから,公演に係る業務ではなくて,施設管理に係る業務になっている場合もあるといった点が指摘をされておりましたので,記載をしております。
 最後に,指定管理者についての指摘を追加しております。こちらにつきましても,昨年の6月27日の論点の整理で示された内容を本まとめに関係するところを記載しております。
 続きまして,次ページにまいります。文化芸術の役割等につきましては,皆様の御意見等も踏まえながら,若干の修正をしております。例えば,最初の1行目,「人々に感動を与え」とかいう細かい修正ですので,細かくは申し上げませんが,前回お示しした趣旨のもと,若干の修正をしております。
 それから,(2)の方の劇場,音楽堂の機能等というところの最初のマルでございますが,前回,この最初の段落につきましては,年齢や性別,障害の有無にかかわらずというところについて御意見がございました。皆様の御意見を集約した結果,「年齢や性別,障害の有無,個人が置かれている状況等にかかわらず,心豊かな国民生活を実現するとともに」という記載にさせていただいております。
 続きまして,このページの一番下のマル,「こうした機能を有する」ということで,事業について具体例を挙げているところですけれども,次ページのところとも関係してくるんですが,前回,検討対象という項目を入れておりました。ただ,まとめに当たっては,この検討対象というものは整理として要らないのではないかという御意見もあり,当時は,この検討会では,例えば民間事業者を対象にすべきかどうかということで,どこまでの範囲にするかということを検討事項として挙げておりましたが,最後のまとめとしては,いろいろなところに集約をさせていただきました。
 そのうち,劇場,音楽堂において行われる主な事業というもので,その検討課題に示していたところから,残しておくべきものは各関係部署に残すという中の1つとして,この事業というものをここに入れさせていただいております。
 次のページ,5ページも含めて以上であります。
 次に,4.法的基盤の内容として考えられる事項というところでございます。まず初めに,このページの一番下になりますが,「地方公共団体の責務は」で始まるところで,委員から御意見を頂いた点,1つは,「国際交流を含め」ということで,地方においても単にその地域内にとどまらず,広い視野を持ってという御指摘もございまして,こういう修正をさせていただいております。
 それから,次のページにまいりたいと思いますが,国・地方の役割の最後のマル,この7ページの一番上のマルになりますけれども,地域格差について書いた段落でございました。当初は,国の責務とさせていただいたところでございますが,具体的に検討しまして,こういうものは国と地方と両方の力を合わせて是正していくものだと整理をさせていただいて,「国と地方公共団体とが協力して,こうした状況を改善し」ということで,若干の修正をさせていただいております。
 それから,マル2,民間事業者の役割ということで,初めに1つ目のマルを追加しております。「民間事業者による活動を通じて,音楽,舞踊,演劇……」というところでございますが,これも先ほどちょっと申し上げました,検討課題の中で書いていたところでございますが,そこで必要な要素としてこの箇所に入れさせていただいております。
 それから,次のマル3の劇場,音楽堂等と文化芸術団体等との連携のところでございますが,最初のマルにつきまして,第2段落,「また,」から始まるところですけれども,「また,劇場,音楽堂等と大学との間では」ということで,前回,大学との実態について触れていませんでしたが,今回,触れさせていただいております。これは,次の段落で大学との連携も触れておりますので,そのバランスから追加をさせていただきました。
 以上でございます。
 次のページへまいります。8ページでございます。マル4,表題から変わっておりますが,国及び地方公共団体による措置ということで,様々な関係団体,関係省庁からも御意見を頂き,この点につきましては,国と地方公共団体がそれぞれで対応していく必要があるだろうということで,国及び地方公共団体による措置と修正をさせていただいております。
 それから,単なる財政上の措置だけではなくて,必要な情報提供,助言というものも含まれることから,こうしたものも明記をし,こういった題名にしております。この内容につきましては,申し上げますと,「国及び地方公共団体は,」ということで,主語を変更するとともに,「着実に実施するため,」の後ですが,「必要な情報の提供,助言」を加えさせていただいております。
 それから,次の基本的施策のマル1,我が国の文化芸術の水準を高めるトップレベルの活動の支援等の箇所でございます。ここにつきましては,第2段落でございますけれども,「また,」ということで,「国は,国立劇場,新国立劇場等において企画制作された公演や舞台技術に係るノウハウ等が地域の劇場,音楽堂等に提供されるよう努める必要がある。」ということで,三好委員から御指摘があった,いろいろなトップレベル等々に関する国の役割という中での今後の在り方というものをもうちょっと書けないかということで,ここに表記をさせていただいております。
 それから,マル2でございます。地域における文化芸術活動の活性化という点でございますが,これにつきましても,当初は国がやるべきこととして書きましたけれども,まさに地域における文化芸術活動の活性化というものは,地域自身もやらなければいけないということで,2行目から3行目にかけてになりますが,「国及び地方公共団体は,」ということで修正をさせていただいております。
 それから,若干飛びまして,10ページでございます。これは5の劇場,音楽堂等の運営に係る留意事項等のところでございます。初めの(1)劇場,音楽堂等に係る専門的な能力を有する人材の確保のところですが,ここに示している2つ目のマルで,様々な専門的な能力というものを示しております。この順番につきまして委員から御意見を頂きましたので,修正をさせていただきました。
 1つ目が事業の企画制作等に係る能力,それから,2つ目が舞台設備等に係る技術力,3つ目に運営に係る能力ということで,こういう順番にさせていただいております。
 それから,次のマルでございますが,「専門的な人材の配置に当たっては,」ということで,前回,2つの事項,要素を示しておりましたが,委員の御指摘を踏まえ,この段落は「劇場,音楽堂等の利用目的や主たる事業,施設に備えられた機能等によって必要となる人材が異なる場合があること等に十分留意する必要があり」と修正をさせていただいております。
 それから,このページの最後のマルでございますが,追加をしたところがございます。「劇場,音楽堂等は,施設の設置目的等を踏まえ,」からの後ですが,「個々の劇場,音楽堂等において求める人材を明確にするとともに,採用形態を工夫することにより,必要な人材の確保に努め,これら人材の能力が発揮できるようにしていくことが重要である。」という表記の仕方をさせていただいております。
 次のページへまいります。次のページにおける主な修正といたしましては,前回,指定管理者の評価について,もうちょっと広い対象なのではないかということで御指摘いただきました。精査していただいて,(3)劇場,音楽堂等における事業の評価ということで,独立行政法人及び地方公共団体が設置する劇場,音楽堂等というものをまず対象とすると。そのうち,「特に,」ということで,指定管理者が行う事業の評価ということで,2段落追加をさせていただいております。
 それから,次の(4)指定管理者制度の運用というところですが,この最初のマルでございますけれども,指定管理者制度の趣旨というものを明確に示す必要があるだろうということで,追加をさせていただいております。
 具体的には,民間事業者が有するノウハウを活用することにより,住民サービスの質の向上を図っていくことで,施設の設置目的を効果的に達成するために設けられたものということを書いてございます。
 それから,次の12ページにまいりますが,一番上のマルでございますけれども,前回,この検討会でも御指摘いただきましたが,1行目,「地方公共団体においては,本制度を活用した様々な取組がなされている中,」ということで,前回は,いい取組をしているということも明確にしておったんですが,前回の検討会での御意見を頂きまして,中立的な書きぶりに修正をさせていただきました。
 それから,このページの真ん中ぐらいになりますけれども,指定管理者の選定に係るところでございます。1つ目のマルの(1)を修正させていただいております。「指定管理を行う施設の設置目的を達成するため,必要な財源を確保するとともに,劇場,音楽堂等の機能を十分に活用し,質の高い事業内容が展開できる指定管理者を選定するよう意識を更に高めること」ということで,ちゃんと予算を確保する旨を明確にさせていただきました。
 最後,13ページでございますけれども,指定管理者の姿勢という最後のマルでございますが,途中,委員の御指摘を踏まえまして,当初は,2行目から3行目にかけてですが,「文化芸術の水準を向上させる事業に不断に挑戦するとともに」と明記していたところを「地域の活性化に資する事業」というものを追加させていただいております。
 その他,細かい文言の修正,それから,用語の使い分け等で整理をさせていただいておりますが,その辺は省略をいたします。
 以上でございます。

【田村座長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局から説明していただきました本まとめ(案)について,最終的な御意見をいただければと存じます。まず,はじめにと,2と,3と4と5と,その順番でちょっと伺いたいと思います。
 「はじめに」のところで何か御意見がございますでしょうか。
 私が言うのは何でございますが,「これらの内容が広く社会に認知され,」という言葉が入っておりますけれども,これは,まだ認知されていないために,あえて記載したという趣旨ですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  このまとめをしたことをもって,更にこれを認知させていくということです。

【田村座長】  はい。ありがとうございました。
 それでは,2番目の劇場,音楽堂に係る現状及び課題というところで何かございますでしょうか。
 「現状」というところに,「専門的な職員を配置しているものが想定される。」という記載がございますね。でも,現実には,多くの施設は専門的人材が存在していないと思いますがその点が触れられていないなという気はちょっといたしましたんですがいかがでしょう。

【大川芸術文化課課長補佐】  その点については,「課題」の方に整理をさせていただいたんですが,下から2つ目の項目に,「専門性を有した人材を配置されている劇場,音楽堂等が少ない。」という記載をしまして,指摘があったことを明記させていただいております。

【田村座長】  ほかに先生方はよろしゅうございますか。では,次の3の基本的な考え方。これもよろしゅうございますか。
 では,4番目の法的基盤の内容として考えられる事項について御意見はございますか。

【片山委員】  書いてあることについては,これまで議論してきたことを非常に丁寧にまとめていただいたと考えておりますけれども,この検討会の一番の目的は,法的な整備をしていくということにありますので,このまとめで書かれている内容が具体的にどういう法整備につながるのかということが,我々も含めて多くの人の関心事項だと思います。自治体とか国がすべきことを記述した法律というのももちろんあり得るわけですけれども,例えば,具体的に動きのある部分では,「指針を作る」ということは今までなかったことではないでしょうか。たくさんの項目が列挙されているので,このまとめでは,これまで必要だと言われていたことを確認したような形かもしれませんが,これを発表するときには,これまで必要だと言われていたことを確認したような形の部分と,実際に法的基盤によって何かが新たに動く部分を明確にするような形で提示していくことが必要だなと思ったところです。
 私としては,指針の中に,劇場・音楽堂に専門的人材が配置されるとしていることと,そして,非常に重要な問題として,指定管理者制度の運用に関して適切な在り方を示すといった内容が含まれる点が重要になってくるのかなと認識しているところです。報告書を出した後の公開の仕方についていろいろ工夫していただけたらと思った次第です。

【田村座長】  他(ほか)の先生方はよろしゅうございますか。
 では,「5.劇場,音楽堂等の運営に係る留意事項等~より良い運営を目指して~」というところについて,御意見はございますか。

【三好委員】  今の片山先生の御指摘とも若干関係するんですけれども,4番までは法的基盤として考えられる事項について記載されていますが,5番は運営に係る事項として,法的基盤の内容として考えられる事項以外について書かれています。ですから,この5番自体がどういう位置づけになるのかというのは,少しどこかで説明をされる方がいいかなという気はいたしました。
 全体のまとめという中には,この5番も我々が議論した中で非常に重要な事項であることは間違いないんですけれども,4番までの法的基盤として考えられる事項というところと5番との関係というのが,この文章だけではなかなか読みにくいと思います。もしかすると,次の法案化の話のときの議論かもしれませんけれども,もし,法案が出るとなれば,その時点で,この辺の取扱いをきちっと決めていただけると,せっかくの議論が生きていくと思いますので,是非お願いしたいと思っています。

【田村座長】  「1.はじめに」のところに書くという方法もあると思います。

【三好委員】  そうですね。場合によっては,「1.はじめに」のところにちょっと,いわゆる狭い意味での法的基盤として盛り込む事項とあわせて,こういうことも検討したんだということを一言触れておいていただけると,より明確になるかもしれないですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  御指摘いただいた点は,非常に重要な点だと我々も認識をしております。「はじめに」のところには,まさに今,三好委員から御指摘いただいたように,最後の段落ですが,法的基盤の内容として考えられる事項と,留意すべき事項ということで整理をしましたということを明記しております。この留意事項としたところについてどうするかということについては,我々でもしっかり考えて,何らかの明確な形というものをつくっていきたいと思います。

【田村座長】  何かほかに先生方はおありではいらっしゃいませんでしょうか。福原参与,よろしゅうございますか。

【福原参与】  これだけ細かく検討していますから,特にありません。

【田村座長】  太下先生,どうぞ。

【太下委員】  まずは取りまとめにあたり,事務局の皆さん御苦労さまでした。非常に色いろな議論が出ましたけれども,それをうまくまとめていただけたのではないかと思っています。
 委員として参加した立場で,自分なりに総括といいますか,議論できたことをまとめてみたいと思います。1つは,先ほども片山委員,三好委員からも御意見が出ましたけれども,この劇場・音楽堂というものが単なる箱ではなくて機能だということです。ハードではなくてソフトなのだということをきっちり再確認できて,特に,その中で人材育成の問題に議論をフォーカスできたというのは,大きな成果だったのではないかと思っております。
 また,2点目としては,その機能というときに,狭い意味での文化芸術の振興ということではなくて,広く地域活性化ですとか,社会的包摂機能等も含めた大きな社会的機能というものをこの劇場・音楽堂が担っているということも確認できたことが成果であったかと思っております。
 また,3点目として,そういった議論の過程で,この検討会自体はずっと東京で開催したわけですけれども,事務局の皆さんのきめ細かな地方のヒアリングも通じて,特に地方における創造的な場,創造的な拠点の在り方というものを議論の中に盛り込めたということも大きな成果だったと思います。個人的には,今申し上げた3つほどの成果があったのではないかなと認識しております。
 そういった意味では,今後法律も是非できていただきたいと思いますし,その後に,どういう政策を文化庁さんとして展開していただけるのかというところで,是非今後の取組にも期待したいと思っております。
 今の議論の中では明確には出ていなかったかもしれませんけれども,改めて振り返ると,各自治体も財政が厳しい中で予算を削減しており,地方の劇場・音楽堂も非常に苦しい運営を強いられているわけですけれども,そういった中で,今回の劇場・音楽堂の制度的な在り方の検討の動きが出てきました。そういう現実の中で,文化予算を増やすということは自治体にとってはなか余り現実的な話ではないと考えておりまして,そうなると,各劇場・音楽堂がある程度の自助努力をしていかなくてはいけないと思います。例えば,ファンドレイジングをしていくことや,従来以上に魅力的な会員制度をつくって,きちんとした安定収入を得ることや,このまとめの中でも触れられていますけれども,新たな観客創造をしていくことなど,従来は必要とは考えていながらも,なかなか取り組めていなかったことを本格的にやっていかざるを得ないのだろうと思っています。そのためにもやはり人材の問題が出てきます。本来は当然,各劇場・音楽堂でそういう人材を養成,育成していくということなので,それに対して文化庁としても,どういうものが側面から支援できるのかという養成のプログラムに関する検討が必要だと思います。ただ,そう入っても,当面の間は,すぐに人は育たないわけですから,そういう専門人材を派遣する制度についても今後は当面の措置として必要なのではないか,と今まで議論はし切れなかった部分について考えております。是非これをまとめて終わりということではなくて,このまとめが逆にスタートになるような形で,今まで以上の取組をしていただければと思っております。
 以上です。

【田村座長】  ありがとうございました。
 今,太下委員からはこれからの展開に関する御意見を頂きましたが,まとめ(案)に対する御意見でなくても,今後,様々な具体策を文化庁においては考えていかなければならないと思いますので,各委員の皆様方が寄せる期待などございましたら,この際御発言いただければと存じます。

【三好委員】  本当に今太下委員がおっしゃったように,今まで色んな場で,それぞれに議論はされていたことではあるんですが,それを文化庁という立場において議論をし,かつ,それを非常に丁寧にまとめていただいたということは,非常に有り難いと思います。この今回のまとめというのが,先ほどの座長の御指摘ですけれども,ある意味では,これからが1つの議論の出発点かもしれないので,そういう意味では非常によくまとめていただいたと思っております。
 その上で,せっかくの機会ですので,3つほどお願いをしておきたいと思います。1つは,この中にも国の責務,あるいは,施策という形で具体的に書いていただいたところですけれども,国として文化芸術の振興のために今までの基本法にプラスをして,せっかく法的基盤ということで議論をさせていただいたので,是非それがきちっと位置づけがされるような方向で更に御尽力いただければ,我々としてもやった甲斐(かい)があると思っております。
 というのは,文化庁自身がこの内容に沿ってやっていただくことは,これは言うまでもないことなんですが,やっぱり文化庁だけじゃなくて,文部科学省全体,あるいは,政府全体として例えば財政当局も含めて,ちゃんと理解をしていただくためには,法的な形というのは非常に重要なことだと思いますし,そういうところに法律にするということの意味があると思います。是非国としての姿勢をより明確に国民にわかるような形で示していただければと思っております。
 あわせて,独立行政法人とか,そういう国の関係機関もございますので,そういうところもこの内容に沿って今後,事業などを展開していただければと大いに期待をしていますので,その辺のことを国全体として広く皆さんに御理解をいただけるように,更に御尽力いただければというのがまず1点目です。
 それから,2点目としましては,今回,地方自治体あるいは民間の関係者の方々からもいろいろヒアリングをしていただいたことで,かなり劇場・音楽堂の実態もわかってきたし,逆に,そのヒアリングの結果として感じたこととしては,それぞれ地域特性とか,設置した当時の経緯を経て様々な劇場・音楽堂が存在しているのですけれども,その中でもこのまとめに掲げられているように,きちっと押さえるべきところは押さえた上で,それぞれの運営をやっていただくということはやはり重要だろうと思いました。特に,単に施設があるから,それをだれでも勝手に使ってくれればいいんだというだけではなくて,設置者あるいは施設の運営者が,よりよいものをそこに提供していくというための色んな工夫や,人材の確保ということが当然必要になっていきます。それは,民間とそれから特に自治体の皆さんにもよくこのことを理解してもらいたいと思っています。それは施設側だけじゃなくて,設置者である自治体の行政の方にもよく理解をしてもらうということが必要だと思います。
 例えば,この内容を通知とか通達になると,また,押しつけるのかという話になってしまうので,ここに書かれているような内容は,別に国が押しつけるということではなくて,自治体としても自ら考えていただく必要があるんだという受けとめ方をしてもらえるようなことをお願いできればなと思います。
 例えば,このまとめの内容を少しわかりやすく,知事さんとか市町村長さんにもその内容がわかっていただけるように,失礼ですけれども,近藤文化庁長官のお名前で知事なり市長さんにお手紙を出していただくとか,そういう形で自治体のトップの方にも是非働きかけていただければ,内容が生きていくと思っておりますので,ちょっと失礼な言い方をしましたが,御検討いただければと考えております。
 それから,3つ目としましては,国と自治体の関係をこの中で是非明確にしていただきたかったということです。それは別に国と地方でどっちが偉いのかとか,どっちが質が高いのかという問題ではなくて,それぞれが違っているというその成り立ちの違いを自覚した上で,お互いに必要な協力をしていくというのが,国と自治体との関係だろうと思っています。そういう意味では,それぞれが自分たちでやれることは当然,自分たちでやるし,自分たちの方がよりよいと思えば,別にあえて国に協力を求める必要はないでしょうけれども,自分たちが足りないと思えば国に求めていく。あるいは,国がやったことを地方の皆さんにも,こういうものがありますよということを積極的に紹介なり提供していただくという,そういうことを是非これを機会にお願いしたい。よく言う連携と協力ということですが,具体的な事業であったり,そういう連携・協力関係が築けるようなシステムづくりを御検討いただければというのが希望でございます。是非これを生かしていただくために,更にお力をお出しいただければ有り難いなと思っています。
 以上です。

【田村座長】  ありがとうございます。

 それでは,根木先生,何かございますか。

【根木委員】  これまで11回の間に,難しいところを文化庁でよくまとめていただいたと感じております。
 先ほどから留意事項の話も出ておりますが,法律レベルの事柄とは別に,留意事項に関しても,省令,告示,あるいは,運用指針といった形でできる限り明文化し,具体化される方向で考えていただければ,地方公共団体でもより具体的に理解できるのではなかろうかと思います。劇場の側(がわ)でも,指針などがあれば,より運営の明確化に資することになると思います。今後,法律と省令その他のレベルで全体をどう構成するかということを考えていただければと思います。

【田村座長】  片山先生,どうぞ。

【片山委員】  この留意事項のところに至る報告書全体の構造をきちんと明確化することが重要だと思います。そのときに,6ページの法的基盤の内容のところの一番最初に書いてあることがやはり非常に重要です。検討会の最初は,地方自治体が設置した施設においても,例えばこういう人材を配置すべきだとか,法律で枠をはめようとするような議論があったかと思います。しかし,いろいろ議論していくうちに,そうではなくて,それぞれの設置者の主体性が重要だという流れになってきて取りまとめになったかと思います。
 それで結局,ああしろこうしろということを規定するのではなくて,基本的施策のマル3のところに指針をつくるということを書いて,そして,その中に留意事項及び参考になる事項等を書いて,それが次の第5章のところにあるという構造になっているという理解をしております。ですので,自治体はこうすべきだとか,民間劇場はこうすべきだということを法で規定してしまうことは,それぞれの主体性を重視する観点からできないということをきちんと認識した上で,だけれども,勝手にやりなさいではなくて,指針はつくるのですと。その指針をつくるに当たっては,こういう考え方が中心になるだろうということを整理した,という構造がこの報告書であると認識しております。その辺を示しつつ,あと具体的なアクションとしては,根木先生がおっしゃったような形で,その指針というものが具体的にどういうものになるのかという次の議論に進んでいっていただければと思った次第です。

【田村座長】  福原参与,どうぞ。

【福原参与】  細かいことについては,委員の皆さん,これまでも言ってきたし,今も今後の問題について触れているとおりなんですよね。その中で,先ほど太下委員から,外部資金の導入という話がありましたでしょう。今まで外部資金の導入が必要というかけ声はあったのですが,どう導入するのかということについては,例えばセミナー等が一切ないんですよね。だれかがお金をくださいと頼みに行けばお金が出るかというと,そんな簡単なものではないんです。お金をもらう,もらわないの関係だけではなくて,地域とのつながりをつけるということがとても重要なことなんですね。地域とのつながりがあるから,お金を出していただけるわけですよ。そういうことを体系的に教えていただける方って,日本にはいないんですよね。大学でそういうことがあんまりないから,文化庁あたりで少しそういう世界を広めるような動きをされるということが可能じゃないかと思うので,これは将来の問題として是非考えていただきたいことだと思っています。

【田村座長】  ありがとうございました。

 では,私からもお願いを1つさせていただきます。これは当初から申し上げておりましたことなんですが,劇場,音楽堂等という言葉について,やはりもうちょっと全国の文化施設が網羅されるように,すべてというわけではございませんけれども,積極的に意図のあるところが入るような言葉に,是非検討をお願いしたいと思います。この劇場,音楽堂等という言葉によって非常に文化施設のうち対象が狭いものになってしまうので,是非文化施設というものが地域にとって何なのかという視点に立った言葉に変えていただけたら,大変有り難いなと思っております。
 それと,先ほど先生方からありましたように,是非法の成立に向けて積極的にしていただければと思います。12月7日に,文化芸術振興基本法成立10周年ということで,音楽議員連盟の皆様がそろったシンポジウムがございました。そのときに各議員の先生方が,この法整備を積極的になさりたいという発言をされておりました。法整備に結びつくことができましたら大変うれしく思います。
 それともう一つ,今回,自治体に対してのヒアリングをしていただいております。実際問題,地方におりますと,文化芸術への理解というのがなかなか難しいのです。例えば可児市の行政の方のような意識をお持ちの方が全国にいらっしゃれば,随分変わるのではないかと思っております。ですから,ほかの省庁と同じように,毎年,必ず自治体行政に対して働きかけていただくということがもっと積極的にあったら,もう少し変わっていくのではないかなと,これは実際に携わっていて正直に思うところでございますので,よろしくお願いしたいと思います。
 もう一つ,これは細かいことでございますけれども,私も地方の立場として,東京と同じことをすると,費用は3倍かかりますよということをよく申し上げています。それが地方との格差を生んでいるんですが,これは現実でございます。と同時に,大変申し訳ないんですけれども,私は芸術団体がもう少し意識を地方に対して向けていただいて,地方での仕事に対する姿勢というものを考えていただきたいと思います。それは,どなたも地方で経験なさった方は,地方にいらしたら手を抜かれるということはよく言われることでございます。そういう意味で御指導をお願いできたら大変うれしく思います。
 ありがとうございました。それでは,本案でまとめたいと思いますが,よろしゅうございますか。
 何かありましたら,また,お諮りするようにいたしますし,お話を承るようにしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,本日,本検討会のまとめを取りまとめさせていただきます。今まで委員の皆様方には,取りまとめに向け御協力を頂きまして,本当にありがとうございました。また本日,ここにはいらっしゃいませんけれども,ヒアリングをいたしました関係団体の皆様,地方公共団体の皆様方に対して御協力に心から感謝の意を表したいと思います。
 最後に,近藤長官からお言葉をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【近藤長官】  おくればせながら,明けましておめでとうございます。
 田村座長,それから,福原参与,そして,委員の皆様方,過去11回にわたって,この劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会,大変貴重な御意見を頂きまことにありがとうございました。そして,きょう無事に取りまとめというものができました。これをベースに,劇場・音楽堂が,本来の目的である,すぐれた文化芸術の創造・発信等に係る機能を十分に発揮できるように,地方も含めた劇場・音楽堂をそういう目的が達せられるように,お考えいただきました。今後このまとめを受けてどういう形でその段取りを進めていくか,これは御案内のように,日本という社会はいろいろな根回しとか,色んな方々のメンツとか立場とかを尊重して慎重に進めなければいけない点もございますので,その辺の段取りについては,私ども,是非前向きに,かつなるべくスムーズに本来の目的が達せられるように努力をしたいと思います。
 それから,この検討会は劇場・音楽堂に限った検討会ではございましたが,実は,ここでいろいろ御提言を頂いたことは,文化芸術一般にも言えることでございまして,ここで言われていることが広く自治体と国民と企業とメディア等の主要な団体・個人が広く認識をしていただくということが,今後,文化芸術を日本の国力にしていき,地方の活性化につなげていく上で非常に大事だろうと思います。日本の文化芸術にかかわっておられる団体や個人,そして,それを鑑賞し,それを力のもとにする国民の方々がもっと意識を高めて,文化芸術が持つ潜在力というものをもっと発揮するようなことにも役立つのではないかと思います。そういう意味では,この取りまとめは,単にここですぐにファイルしてしまっておくのではなくて,今後,文化庁からの発信の中にもいろいろ使わせていただいて,より広く,そしてまた,先生方もそれぞれの持ち場で,あるいは,それぞれお持ちのネットワークの中で,ここに書かれてあることの重要性について発信をしていただければと思います。
 新年で若干スタッフの陣容が変わりましたし,きょうは大臣もかわってしまいましたけれども,文化庁の中では河村新次長は,前にも芸術文化課の経験もございますし,大木部長は政策課長から,そして,山﨑政策課長は芸術文化課長から,そして,芸術文化課長・舟橋課長は国語課長からということで,中での異動でございますので,時々血液と同じで循環が必要ですが,なるべく文化行政に精通した人を活用すると,かつ,ジェンダーバランスも維持するということで,河村次長にも来てもらいましたが,そういう役所のいいところでもあり,悪いところでもありますが,人がくるくるかわるということのマイナス面をなるべく小さくして,プラス面を最大にしていきたいと思います。そういうことで,本件についても前向きに進めていきたいと思いますし,これをスタートとして,ここに書かれている精神を文化芸術全体について,文化庁がこれから行っていくいろいろな政策の中に更に反映をさせていただくということにしたいと思います。
 それから,自治体についても随分お話が出ましたが,私も今まで32の都府県を回って,その都度,首長さんとか,芸術団体,劇場の方々と話をしてきましたが,かなり地方では文化芸術の重要性を認識し,これから地域を活性化していくには文化芸術を柱にしなきゃいけないと思っている方,そして,既にそれを実行しておられる方々も出始めております。ここの一,二年でしょうか,創造都市ネットワークですとか,いろいろな仕組みを使いながら,地方でもそういう認識が高まっていると思います。地方の自治体と地方をベースにした芸術団体,芸術家,あるいは施設や市民,そういった方々の,文化芸術をもっと使うことが,日本の強みや自分の地元の強みを生かし,伝統や歴史を生かす一番必要なものだという意識が高まりつつあると思います。そういった動きに,今回のこの劇場・音楽堂の制度の改善という動きがつながるように,是非努力をしていきたいと思いますが,いかんせん陣容,人員も予算も限られている文化庁だけでできることでは到底ございませんので,是非先生方,そして,先生方のお弟子さん方のお力も引き続きいただきたいと思っております。
 福原参与が言われた外部資金の導入,これも今の政府原案では,文化庁の予算は4.2%増ということで,ほかの役所に比べれば伸び率は大きくなりつつございます。これがともかく成立してほしいと思いますが,幾ら伸ばしてもやはり限界がございます。どうやって民間からの,あるいは,外国からでもいいと思います,資金を導入して,活用していくかということは,大きな課題だと思います。
 先日,半年ぐらい前に,イギリスの文化スポーツ大臣と話をしたときには,イギリスも財政難もあって,どうやっていわゆる外部資金を導入するかを非常に真剣に考えて,いろいろアイデアを持っておられるやに聞きました。そこで彼が言っておられたのは,culture of givingとculture of receivingということです。つまり,文化芸術活動に自分のお金を寄附するカルチャー,メンタリティーをつくっていくと同時に,どうやってうまくお金があるところから自分のところに持ってくるかというculture of receivingと,いかに自分をアピールし外部資金を導入していくかをもっと考えなきゃいかんということを大臣は言っておられましたので,私もそのとおりだと思います。
 国も自治体も,芸術団体も,そして,それに寄附をする企業とか個人それぞれがそういう意識をもっと持っていただくということが大事だろうと思います。だれか1人が,どこか1つの組織が頑張れば解決する問題ではないと思います。そういうことで,引き続きあらゆる階層の,あらゆる分野の方々に訴え続けて,文化芸術の力をもっと国の力にしていく。特に地方の再活性化の力にしていくということに最大の努力をしていきたいと思っておりますので,引き続きの御指導をよろしくお願いいたします。
 本当に11回,長い間,ありがとうございました。

【田村座長】  ありがとうございました。
 それでは,閉会にいたしたいと思います。今まで本当に長い間,ありがとうございました。お疲れさまでございました。

【大川芸術文化課課長補佐】  ありがとうございました。

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