議事要旨

国立文化施設等に関する検討会(第4回) 議事要旨

1.出席者

(委員)

福原座長,竹内座長代理,上原委員,織田委員,町田委員,宮島委員,水嶋委員,山下委員,吉本委員

(独立行政法人)

加茂川国立近代美術館東京国立近代美術館館長,遠藤国立文化財機構理事,崎谷日本芸術文化振興会理事,折原国立科学博物館理事

(事務局)

吉田文化庁次長,関文化財部長,伊藤大臣官房審議官,大木文化庁政策課長,塩見社会教育課長,滝波文化庁政策課企画調整官,高比良文化庁政策課独立行政法人支援室長,岩佐社会教育課企画官

2.議事内容

 開会後,事務局から資料説明があり,その後,次のとおり意見交換が行われた。

(1)市場化テスト,指定管理者制度

【福原座長】

 市場化テストと指定管理者制度はどうなるか。

【大木政策課長】

 文化審議会文化政策部会で第3次文化芸術振興基本方針の策定に向けた議論が進行しており,その中で指定管理者制度が公私立の文化施設において大変問題だと問題提起されている。指定管理者制度は包括的な市場化テストのような話で,国立の場合は市場化テストの言葉が使われるが,公立の場合は指定管理者制度で,地方自治法に根拠を置いた制度である。市場化テストの運用が国立文化施設等には無理があるという論点はあるかもしれない。

【竹内座長代理】

 隙を見せるとすぐぶり返すので,今までの流れからすると危ない。

【高比良独法支援室長】

 市場化テストをより拡充するよう言われているが,官民競争入札の導入状況が施設にとってどうなのか検証中であり,検証が終わった段階で,メリットがあれば拡充もあろうが,なければ拡充は難しい。

【大木政策課長】

 各法人からここが問題だというなら本検討会の検討対象とするオプションはあるが,心配なければ意味がない。ぶり返す心配があれば歯止めをした方が良い。

(2)基本認識

【藤国立文化財機構理事】

 「ミッションの達成自体が危うくなっている」のとおり危機感を持っている。「国の顔」の話をしたが,良い顔だけでなくて顔が悪いときにこの国はこんなものかという意味でも「国の顔」。「世界に自信を持って公開・公演できる水準の展示や公演を実現すべき」とプラスで書いてあるが,現状では先人が営々と築いてきた水準の展示や公演が実現できないという危機感を抱いており,それを基本的認識に反映して欲しい。ミッションの達成については,量的には説明しにくいが,質的にはこれまでの水準が維持できなくなりつつある。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 冒頭に,国の劇場,博物館,美術館は,日本の文化的な存在感をはっきり内外に示し,伝承,発展させる中核的機関であって,その活動により我が国の文化をすべての国民が誇りに思うために国が作っていることを記述すべき。ミッション達成の危機を冒頭と後に2回述べる構成にしたら力強い。意義,使命を初めに訴えていきたい。

【上原委員】

 そもそも論として,何のために国立文化施設は作られているかまず謳う。国の過去の歴史の蓄積,現在の蓄積をして,近未来につなげるということを書くことが必要。

【織田委員】

 そもそも国立文化施設等は何を行い,何のために存在しているかを基本的特性の1番目に明記されるべき。4番目の「国の文化施策等の下」の部分と,9ページの2つ目の○「国民のアイデンティティ」「国の誇り」「国の顔」を盛り込んだ表現を頭の部分に持ってくるべき。

【宮田委員】

 基本認識の中に問題点が入るのはおかしいので,今後整理すべき。

【福原座長】

 2ページの最後の行「展示・公演には高度に専門的な収集・保管,調査研究」とあるが,プログラム,上演企画のようなものも必要ではないか。

【織田委員】

 後ろで日本芸術文化振興会について別途記述があるが,国立劇場や新国立劇場が行っている公演に必要な専門家や人材育成について後ほど盛り込みたい。

【水嶋委員】

 「国の顔」を出すべき。世の中が縮小傾向になって,全て予算削減の大前提から議論している。国としてやるべきことがあって然るべき。ナショナルセンター機能は国しかできないことで,正々堂々と反論すべき。それがメッセージだと思う。

【吉本委員】

 2ページの一番下「収集・保管,調査研究」だけでなく,「企画・制作」とか入れても良いのでは。

【折原国立科学博物館理事】

 「はじめに」の部分のなお書きは,科博は別物だが共通性があるからと付け加えのような感じがある。科博の国の顔としての存在意義は,まさしく他の国立文化施設と同じなので削除を。

【福原座長】

 予算の削減最初にありきについては,国民年金や医療保険は削減すべきかという根本問題と同じレベル。ナショナルセンターとしての「国の顔」で,国内外的に大変重要な国の位置付けを決めるものを,予算が足りないから削るのはあり得ない話ではないか。

【水嶋委員】

 文化の創造・継承は,1年,3年,5年単位ではない。最後の9ページに「国家百年の計」とあるが,大きなビジョンを示し,百年単位でものを見ることがメッセージにつながる。

【町田委員】

 明治以降,文化に潤沢に予算が振られておらず,今は縮小予算と言いつつ,そもそも絶対的に不足していたことが出発点。次の100年をどう日本として形作っていくかの一番重要なものとして文化があることを謳うべき。

【山下委員】

 「国の顔」「国の誇り」の背景に,国際社会の中で日本はどう生きていくのかも併せてあるので,「国の顔」「国の誇り」としてが入っていた方が良い。

【宮田委員】

 全部大事だと船は沈没するので,大きな旗,方向性を持ちたい。施設の運営や施設によって学ばれたことの次世代に対する期待感が百年の計になっていく。その論法を整理し,だから予算が要るという捉え方をする必要。

【加茂川国立美術館東近美館長】

 独法制度の導入に関する改善点の最後の○「業務の効率化,経費削減等によって一定の成果があった」は,これまでの議論と逆方向。例えば美術品購入費については増やし,結果として運営費交付金が増えてもおかしくないので,誤解を招く表現ではないか。

【上原委員】

 基本認識の(1)で,元々文化予算が少ないだけでなく人材,職員数も少ないことを現状認識として共通に持つ必要。書出しが肯定的になっているが,そういう問題点があることを指摘する必要。

【竹内座長代理】

 改めて問題になるのはそもそも論が不足した結果で,もう一回そもそも論から始めないと駄目。独法化で息つく暇もなくすぐ目標を立て,評価が始まった。

【織田委員】

 文化は聖域で,人類にとって遺産,宝。例えば600年前の能,400年前の歌舞伎,文楽を含めて,ステージアーツとしてこれだけのものを今日に残している国はどこにもない。これは人類にとって大事な財産,人類の顔であり,日本人がそれを継承する役割を担わざるを得ない。近松の物が今残されているのは日本だけの文化,日本文明。風土とともに日本の文明を我々は預かり,継承しているという認識がぜひ必要。

【町田委員】

 次の世紀に向かって文化をきちんと聖域に位置付けることを明確に出すことが大事。これから聖域の位置付けの中で伝承され,継承されていく。その辺をうまく発信できれば良い。

(3)見直しの方向

【上原委員】

 現在検討中の「国立研究開発機関(仮称)制度」と独法制度の違いは。

【滝波企画調整官】

 「参考資料集」11番「国立研究開発機関(仮称)制度の創設に向けて」のとおり,国立研究開発機関(仮称)制度が検討されているが,これは独法制度とは別の制度として構築するもの。独法は,定型的な業務を効果的,効率的に行わせることが主眼だが,研究開発の成果の最大化にはなじまない,研究開発を担う法人は,研究開発の特性を踏まえたグローバル基準のマネジメントが必要である,等の点を考え併せ,新しい法人制度として国立研究開発機関(仮称)制度を創設しようとしている。国立研究開発機関(仮称)通則法を作り,その下に個別法をぶら下げるスキームと聞いている。

【岩佐社会教育課企画官】

 研究開発法人には,例えば宇宙航空研究開発機構,原子力機構,学術振興会,科学技術振興機構などがあり,科学博物館も含まれるが,今の三十幾つの法人が新しい国立研究開発機関(仮称)にそのまま移行するわけではない。現状では研究開発法人でありながら独法でもある。それを独法から離脱して新たな法人に移る中で絞り込みが行われつつある。

【上原委員】

 国立研究開発機関(仮称)と独法の比較表を見ると,文化関係は似ている。文化関係は国立研究開発機関(仮称)と同じような性格を持つと思う。新しい制度ができるなら相応しいが,実務的な実現可能性を考えるとどうか。

【町田委員】

 新しい制度を目指す場合どういう制度を作るかは事務局にお任せするか。改善で満たされるか新しい制度とどちらが良いかは我々は比較できない。国立研究開発機関(仮称)は研究の要素は大いにあるが,国立文化施設のお客様目線や発信などは研究機関と違って,整合性をもって1つの制度の中に組み入れるには,制度設計に相当知恵を絞らなければいけない。現時点で我々が改善よりこちらが良いと言い切れるか疑問。

【吉本委員】

 現行の独法制度で,運営費交付金はこれ以上減らさない,毎年1%人件費を削っているのは止める,目的別積立金も本来の目的に沿って運用できるようにするなど,独法制度で問題になっていることで改善しなければいけないことを明確に出す。それをやりつつ,より相応しい法人形態についても研究・検討すると,ステップを分けて考えた方が良い。

【町田委員】

 新しい制度の場合に満たすべき要件を盛り込むことは,この検討会で十分出せる範囲だ。

【吉本委員】

 今の独法制度で改善すべき点を,例えば「早急に見直すべき5項目」のように明確に書いた方が,論点がより分かるか。

【福原座長】

 見直しの方向について,今の独法制度の問題点を解決するための条件を盛り込み,それができない場合は違う法人形態を考えてもらいたい。

【宮島委員】

 独法の枠内で改善できるか疑問。国立研究開発機関(仮称)は研究開発の目的があるが,こちらも文化の目的があり,それに適した法人形態,組織形態を考えた方が良い。提言した後どうなるか分からない。独法のままでは文化関係は厳しいと懸念している。独法の枠内だと文化施設等だけでなく一定のやり方,横並びで考えられ,元の木阿弥。国立研究開発機関(仮称)のやり方があるが,これと同じ組織にする訳ではない。

【福原座長】

 本検討会の総意として,絶対に必要な条件,それができない場合に別のものを考えるとの留保を付け,本論点整理が1年2年と生きている間に次の段階を考えていくのはどうか。

【吉田文化庁次長】

 通則独法制度の改善でできる範囲もあろうが,横並び処理の傾向が強い中では限界。事業仕分けで指摘された機動的な美術品収集等は,国の投資は増やさず頑張れとなっている。それを果たし,日本の美術館,博物館,劇場をより充実させていくためには,通則独法に留まっていては限界。同制度の運用で一定の改善を図れるかもしれないが,現状からすると難しい部分があり,それを突破するには新しい法人制度について今後検討を深めていくべき。そのため基本的な方向に出ている視点を整理し,アピールする必要がある。先行部隊として国立研究開発機関(仮称)について具体化の準備が進められている。科学技術関係と文化施設関係で対象は違うが,不定型,予測不可能,長期性,専門性など共通する性格もあり,文化関係についても新しい法人類型は説得力を増す。そこに向けて,ありうべき姿として提言することは意味がある。

【竹内座長代理】

 見直しの具体的なものや絶対譲れないものを挙げ,それを実現するには今の通則法の枠組みで出来るか否か,具体的に改善の方向を出した上でどういう法人にするか検討すべき。今の法律に従うか枠を飛び出すかは,最後に検討すべき。本日の資料は評価委員会等を通じて出てきた問題点をうまくまとめてある。法人側が見直しの方向で欠けている点など現場の視点があった方が早く方向が出る。これが仮に実現すれば,今までの矛盾や苦しみが解決する方向は出ている。

【藤国立文化財機構理事】

 6ページ1つ目の○について。目的積立金の見直しは一つの方法だが,通則独法でいくことを前提に書かれており改める必要。これ以外の方法もある。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 6ページ[2]ガバナンスについて。芸文振には評議員会があり,重要事項を審議いただいている。

【藤国立文化財機構理事】

 評議員会があるのは学術振興会と芸文振のみ。

【加茂川国立美術館東近美館長】

 評議員会を制度・法律事項として位置付けるのか。国立美術館の場合には法人としての運営委員会と館ごとの評議員会があり,法人裁量の範囲内で運営され,問題もなく評価の重複もなく成果も上がっている。美術館側から言うと,外部の方々に熱心に参加,協力頂ける環境が整っており,実のある運用ができている。

【上原委員】

 現在,各館が独自に実施している実態に即して評議員会,運営委員会を設けているという現状を尊重するべきであり,法定すべきでない。各館の評議員会と法人の運営委員会は重複していないか。新国立劇場は財団のため評議員と理事会,さらに芸文振もあり,評価が屋上屋になっているので,整理した方が良い。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 新国立劇場と国立劇場おきなわは,取り扱っているものの特性等を考慮し,民間等から支援を受けるような柔軟な形にすべきということが設立当初から考えられ,我が国の文化の振興のための根幹の事業であるので法律上の責任は芸文振が持ち,財団が自立的,主体的に包括的な運営を行っている。ただ,財団制度と独法制度ということで,両方で評議員会があるなど多少は複雑な面もあるが,分担連携を合理的に行っている。設置形態は文化庁で考えることだが,今後とも適切に対応しなければならない。

【上原委員】

 美術館は5館で一つの独立行政法人があるが,持株会社,事業本部制ではその上に新たな法人制度を創設するのか。

【宮島委員】

 持株会社については,事業はそれぞれ今までどおり美術館や博物館を運営し,ホールディングスは全体計画を立て,管理部隊を集め内部監査やコンプライアンス,モニタリングを行うなど全体を見る。各法人の事業内容が違うため各々別途あるが,その上で管理部分や財政基盤強化は全体での対応が可能になる。一つ一つは独立しているが,共通部分だけホールディングスでやるやり方もある。

【宮島委員】

 4つそれぞれに違う船であり,本検討会の到達点に護送船団方式で行くのか,各問題点を出し旗を揚げ新しい船を作って到達点へ行くのか。評議員会の有無,目的積立金の運用など各問題点は違っている。例えば国大協は,目的積立金に関して最後に使い切るなど全員一致でやったが,本検討会がどこへいくか議論が必要。なお,12月21日に東京藝大に長官及び全国の芸術系大学学長を招き,「豊かな感性,強い日本へ」について議論する。

【福原座長】

 ホールディングカンパニーは会計上の意味はあるが,運営が二重になっている。私が館長を務める東京都写真美術館は東京都歴史文化財団が管理しているが,そこから戦略目標は示されず,毎月入館者数や経費を報告しているが,指導は特にない。また,寄附を様々な会社にお願いしているが,東京都歴史文化財団では寄附が集まらず,館長がお願いしないと集まらない。

【宮島委員】

 今のやり方では財政面等で苦しいので,今の独法の良いところは残しつつ,新たなより良い方法を検討していくのが良い。上の組織に無責任なところがあれば,そうならないようしていきたい。

【織田委員】

 運営費交付金の一律カットが行われればやるべきことができなくなる,評価の方法や評価が生かされないなど,4法人に共通する問題点は赤裸々に出てきている。文言が多すぎるので,そもそも論,4法人共通の問題点を整理し,各法人独自の問題点も挙げていくべき。10年もやってきて問題が露呈しており,独立行政法人通則法ではもう賄えなくなっている。次にどういう組織を考えなければならないか,ベターな対応ができるかへ問題は移行していく。

【福原座長】

 素案が書きすぎとの指摘だが,各委員の発言を全部入れており,次回第4回まで議論を続けたいが,第5回,第6回にもう一遍書き直すと,当初予定より開催回数が1回増える可能性がある。

【加茂川国立美術館東近美館長】

 独法制度前提で改善案を考えるか,新法人制度を考えるかに共通するが,政府の行政刷新会議で,独法制度見直しの議論がどこまで進んでいるか,次回までに事務局から情報提供して欲しい。初めは独法は全廃して地方と民間に移管するか国に戻す議論だったが,今は独法制度の抜本的見直しに変わってきて独法制度が残るような話もある。国立研究開発機関(仮称)が抜けた後の独法制度は,文化関係まで抜けていったら維持できるのか。

【町田委員】

 独法の限界がどこなのか。例えば目的積立金制度は手直しできるのかどうかがないと,新しい制度に踏み込むかどうか見えない。4~5項目に関して可能かどうかあった方が良い。新しい制度になることで,管理・間接部門が業務圧縮でき,余裕のできた経費を他へ回すことができるのか,文化予算を取ってくるのは今の制度の手直しでは限界で,新しい制度で資金を持込めるようにした方が抜本的に変わるのかどうか,我々が判断できる材料が欲しい。

(4)今後の日程

 座長より,次回は本日の続きを行うこと,検討会の開催は当初予定から1回追加になる旨説明があった。
 最後に,事務局から次回日程(11月25日(木)10:00,文部科学省東館3F1会議室)を案内し,閉会した。

(以上)

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