議事要旨

国立文化施設等に関する検討会(第6回) 議事要旨

1.出席者

(委員)

福原座長,竹内座長代理,上原委員,織田委員,町田委員,水嶋委員,宮島委員,山下委員,吉本委員

(独立行政法人)

加茂川国立近代美術館東京国立近代美術館館長,遠藤国立文化財機構理事,崎谷日本芸術文化振興会理事,折原国立科学博物館理事

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,田中政策評価審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,伊藤大臣官房審議官,大木文化庁政策課長,塩見社会教育課長,滝波文化庁政策課企画調整官,高比良文化庁政策課独立行政法人支援室長,岩佐社会教育課企画官

2.議事内容

開会後,事務局から資料説明があり,その後,以下のとおり意見交換が行われた。

(1)基本認識等

【上原委員】

 論点整理の提示の仕方として,コンパクトにまとめた緊急提言と簡潔版を作る方法はあるか。

【福原座長】

 レジュメ又は要点を最初又は最後に付けることは可能。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 表現の仕方,誤解を生まないよう書き方を工夫した方が良い。1頁(1)国立文化施設等の使命の3つ目の○は,地域文化が多様であることが日本文化の特色であることが分かるように記述すべき。2頁基本的特性[1]は,例えば「人類が長い歴史の間に作り上げ,育ててきた文化や科学」でどうか。3頁「独立行政法人制度について」3つ目の○「4法人のうち3法人」の限定は,誤解のないよう削除願いたい。

【水嶋委員】

 基本的特性[1]で「科学技術」を「科学」にするのでなく「自然科学」等に置換えるべき。また,「社会教育の振興」を使命として入れるなど,全体的にもう少し教育について記述した方が良い。科博については自然史に関する中核的研究機関としての記述が強く出ているが,「国民の科学リテラシーの向上に寄与する」等の記述を入れるべき。

【山下委員】

 1頁「使命」は,3つ目の○,1つ目の○,2つ目の○の順に記述すれば整理しやすい。

【遠藤国立文化財機構理事】

 「文化に関する価値」は重要なキーワードだが,熟していない。より良い言葉を考えたいが,各委員にも検討頂きたい。

【吉本委員】

 メッセージを強くするため言い切りにすべき。例えば,2頁1行目「(予算が)諸外国に比して貧弱」を「極めて貧弱」に,同頁2つ目の○「一人一人にとって大切なもの」を「不可欠なもの」又は「かけがえのないもの」に,「予算の拡充」を「予算の大幅な拡充」に,基本的特性[6]「遂行することが困難」を「遂行できない」に,それぞれ改める。
 基本的特性[4]「人気に左右される」は,入場者数が少なくても芸術的文化的価値がある展示・公演は国立機関として確実に実施する必要がある旨に表現を工夫する余地がある。
 3頁(1)「国の負担を増やさない形での事業の充実」は不可能であり,「このことは国の文化的基盤,ひいては国益を損ねる危険性があり当検討会は反対する」といったメッセージを本検討会として出してはどうか。

【上原委員】

 「国の負担を増やさない」には脱力感,無力感が生じるので,その点は強調して頂きたい。

【福原座長】

 1頁。大英博物館,ルーブル美術館,スミソニアン機構に加え,中国国家大劇院を入れるならオペラ座も必要。故宮博物館もあり,並びを検討すべき。
 基本的特性[4]について,収蔵品の貸出先や俳優の出演先などは数年前から決まるが,契約前に調査が必要で,展示や公演まで数年間かかることをうまく説得できるか。
 3頁「特にYS-11」は,YSだけが問題ではないと考える。

【折原国立科学博物館理事】

 「特にYS-11」の表現については,事実関係の部分であり,行政刷新会議で使用されたそのままを使っているもの。

【遠藤国立文化財機構理事

 4頁最後の○。国民の鑑賞機会の確保の観点から見直しが求められるのは,そもそも特別展が独立採算であることであり,適切な表現を考えたい。

【福原座長】

 大半をマスコミが負担しているのが問題で,「現状では」等を加えてはどうか。

【吉本委員】

 1頁,「国立文化施設」の3法人について,脚注で施設名称を具体的に記述した方が一般に分かるのではないか。

【上原委員】

 基本的特性[4]の「不測の支出」は「緊急の支出」に改める。

【織田委員】

 諸外国の国立文化施設等については,拠って立つ基礎が各組織で違い,諸外国の例も一概ではないため,具体的名称は挙げない方が良い。

【福原座長】

 英国では2001年以来,国立の美術館・博物館を入場料無料にした。

【吉本委員】

 英国では,すべての国民が美術品等を鑑賞できる権利があるのに入場料を取るのはいかがかという背景から,国立の美術館・博物館の入場料を無料化し,入場者数が10年間で1.5倍ぐらいに増えた。当初は子供,高齢者,障害者のみ無料で,ブレア政権の2001年から全て無料になった。反面,コストは国が負担する形になり,制度の工夫をしたが予算は増えていると思う。サッチャー政権はバリュー・フォー・マネーで,小泉政権時代と似たような改革が行われたが,ブレア政権になって揺戻しがあり,文化政策は拡充された。

【町田委員】

 英国では特別展は無料でない点を指摘しておきたい。大英博物館は財政的な問題から,外部の経営者の発想を入れて立て直そうとしている。また,海外に巡回展を出し,寄附とは別にギャランティーなど外部からお金を導入している。ルーブル美術館も中東に新たなセンターを作り,そこへの貸出しでお金を取っている。日本の美術館・博物館がそういう形で切換えられるかは難しい。

(2)見直しの方向

【水嶋委員】

 5頁2つ目の○「新たな法人制度の創設も視野に入れ」は「創設を視野に入れ」とすべき。

【宮島委員】

 7頁3つ目の○で,文化審議会は国の文化政策を審議・決定する機関であり,それが評価する機関となると自己評価となって第三者評価でなくなるので,審議会の文言を外すか,第三者が明確に伝わるように表現すべき。

【織田委員】

 5頁最後の○。芸文振の事業は,生きた人間による文化の創造と継承である点が他と大きく違うため,国立科学博物館と同じ性格で扱うのはどうか。芸術家による伝統芸能や現代舞台芸術の生きた文化の継承・発展を担う組織が芸文振であると記述した上で,自然科学に関する中核的研究機関である国立科学博物館の個別事情について記述した方が良い。

【吉本委員】

 今の点は,美術館・文化財機構から見た個別の事情で,殊更書くのは違和感がある。国立文化施設等4法人を広く対象として検討する際,それぞれの特性も踏まえるというニュアンスにしてはどうか。

【織田委員】

 人間の所業,舞台芸術を見せることが芸文振の特殊性・特色・主要業務である点は触れたい。

【関文化財部長】

 本検討会では4法人について検討しており,個々の法人の特殊性を強調するより全体についてご議論頂ければ有難い。

【上原委員】

 4法人を1つの通則法で括ろうとしている中で,差を強調するより共通性を強調したらどうか。個別法のときにこの問題が出てくる。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 5頁最後の○。芸文振は最後に個別事項で取り上げているので,「その際」以下はなくて良い。

(3)留意事項

【宮島委員】

 10頁,寄附税制について。個人は年末調整等の手続の煩雑さの問題とあるが,寄附税制の場合,確定申告で行うので修正願いたいが,確定申告は複雑なものではない。所得控除から税額控除,多額の生前寄附をした場合の所得控除,繰越欠損,翌年以降に繰越せる制度など具体的に入れても良い。

【福原座長】

 申告の必要がない人が,僅かな税制控除があるために申告しなければならなくなる。

【宮島委員】

 確定申告は面倒でなく,確定申告する人を増やしたい。寄附してくれないという日本の文化があり,優遇税制で税額控除をすれば税金を払わずに寄附できるというニュアンスを与えるのは良いのか。一度多額に寄附した場合でも税額控除の対象になるなど,できるだけ寄附を増やす方向を出すべき。日本は年末調整制度を設けたためこういう議論が出てくるが,本来は確定申告が原則。

【町田委員】

 細かい税制に踏込まなくても,寄附文化(あるいは寄附意識)の醸成を図り,税額控除の展開などより使い勝手のよい仕組み作りを進めることを記述すれば良い。4法人が揃ってアピールしたり,マスコミ等と組んでアピールするキャンペーンが必要。当事者意識を持って醸し出していくことが重要。

【福原座長】

 細かい税制に関する記述は省略した方が良い。

【上原委員】

 11頁,新国立劇場と国立劇場おきなわが財団運営の形を取った経緯如何。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 これらの劇場については,有識者の検討会議において財団を作って芸文振から委託する形が適当とされたのを受け,文化庁など政府レベルで決めたもの。
 新国立劇場に関しては,昭和30年代に小宮豊隆委員長の会議が,国立劇場の創設について2回報告・答申を出した際,歌舞伎等の劇場,能楽堂の創設など伝統芸能の保存と振興とともにオペラ劇場や現代劇の劇場の創設など西欧由来の舞台芸術の振興と普及について提言している。昭和41年に伝統芸能の保存と振興を目的として国立劇場が創設され特殊法人として運営されている中,現代舞台芸術の振興と普及のための第二国立劇場の検討が始まった。舞台芸術としては共通だが,取り扱うものの性格が違うことを考慮する必要があった。例えば,現代舞台芸術は世界各国から出演者や演出家を呼ばねばならず,オペラ等は創造的に行わなくてはいけない。伝統芸能は文化財保護法に基づいて指定等がなされているものを継承し,後継者の養成を行いながら発展する。職員の人件費,養成研修,調査等の経費,管理費等が国の補助金で措置されているならば,国立劇場の公演事業は,出演料,舞台経費,宣伝費等は入場料と貸劇場収入で賄える。新国立劇場はそれでは足りず,国や民間から大幅に支援を受けなければならないので,経済界と協力して寄附金を集めるには,芸文振直轄より財団の方が柔軟に動ける。また,芸文振に新国立劇場を加えた場合には特殊法人が肥大化するという背景もあった。そのような議論の上で,財団に運営委託することとし,そのために財団が作られた。
 国立劇場おきなわは,伝統芸能の保存と振興という任務の中で新しい劇場ができた。琉球王府の下で発展した芸能を中心に取り扱うため,地元の人材と応援が必要。このため,沖縄県と沖縄の財界等が協力して財団を作り,そこが運営する形にした。
 芸文振が全体として目標を策定し評価も受けているが,両劇場については実質上自立的に運営を任せ,新国立劇場は10年以上,国立劇場おきなわは5年以上経ち,定着していると考えている。

【山下委員】

 8頁,収蔵品の充実の5つ目の○について,文化庁が法人に出資したり長期貸与するのか,法人が借入れするのか。(→借入れでなく現物)

【吉本委員】

 11頁,その他の2つ目の○は,舞台が危険を伴う施設で安全管理を適切にしないといけない趣旨だと思うので,表現を工夫した方が良い。

【崎谷日本芸術文化振興会理事】

 11頁の上。芸文振の大事な機能に芸術文化振興基金があり,21年前の基金創設時,法人名称を「日本芸術文化振興会」と変更し,英語名称も「Japan Arts Council」となった。「日本版アーツカウンシル(仮称)」は文化審議会文化政策部会審議経過報告からの引用で,試行的に導入することとされている。芸術文化振興基金においてはアーツカウンシルとして頑張ろうとしているが非常に貧弱。文化庁補助金も取り扱うようになったが人件費改革の中で対応せざるを得ず,職員が増強できない。舞台芸術支援が多いので,芸文振プロパー職員が入って専門性を高める努力をしている。将来的に基金の体制と機能を充実強化し,名実ともに日本の中核的な芸術文化活動の支援機関となるよう提言していただければ良い。今は組織が小さく芸文振として一緒にやっているが,基金は自立性を持たねばらない機能であり,場合によっては将来的にアーツカウンシルが芸文振から飛び出ても良いぐらい。

(4)その他

【加茂川国立美術館東近美館長】

 本検討会の報告書を実現するには,パワー,応援団が不可欠。「留意事項」か「おわりに」に,国民世論の支持が要るとか,行政や我々法人に各関係団体の応援を取り付けるよう努力を求めるコメントがあっても良い。行政刷新会議との関係で「適切に反映されることを期待する」では弱い。難しさを認識しているが故に応援団が不可欠との認識を明らかにし,世論形成,国民の支持が不可欠であることをテークノートする必要がある。
 国立大学法人は長期の準備期間を経て新しい制度ができたが,仮に国立文化施設4法人で同じようなものを作ろうすれば,準備段階にもない現状と言わざるを得ない。研究開発法人は省庁横断で政治も後ろに付いており仕掛けが全く違う。応援団が不可欠との認識を示すことが大事であり,今の国会情勢を考えると,前政権の作った制度を見直す法律案の成立は難しいと思う。新しい制度を創設する法律案について与野党の賛成を得るには相当のエネルギーが必要と認識していることを表明した方が良い。
 行政刷新会議の表現が「独法の撤廃」から「大幅見直し」,「見直し」に変わってきており,独法制度が残る中で,4法人の特性をどう特例として実現していくかに向かっていくことを意識しながら,制度設計,制度運用を考えていることを示すことが大切。

【福原座長】

 今朝の毎日新聞22面の記事に,竹森俊平慶應大学教授が演劇等の収支は合わないので,責任を持って応援しなくてはいけないと書かれているが,芸団協などが経済学者に呼び掛けた面があるのではないか。記事内容は,1930年代にボーモル,ボーエンが提示した内容を現代的に書いたものだが,その意味で施設や諸団体の応援を求めていく態度はぜひ必要。
 現行制度の非合理な点は,そのまま受入れられるかは別として,主張はしておくべき。法律改正が難しくても,どういう方法で切抜けることができるか,次の知恵として用意しておく必要。

【竹内座長代理】

 「国の負担を増やさない」については,現段階でこれが出て,その下で今一歩を進めようとしており,ちゃんと受けて,次のステップとして今後の方向を考えていく。初めから勇ましくすると説得性がなくなるので,これを踏まえてから次に行くという勢いを示した方が良い。

【吉本委員】

 「国の負担を増やさない」に対する意見については,誤解を招かないような表現を考えて欲しい。また,「国の顔」に関連して,国立文化施設を充実させることは国益に繋がる,今の制度のまま改革を続けると国益を損ねる危険性があるなど,冒頭で書いてはどうか。

【町田委員】

 「国の負担を増やさない」では,現状の問題点で改善できる部分は限定的になり,難しくて大変。今後の課題として,引き続き考えていく必要がある。表現は気を付けながら,一貫して主張すべきは主張していくべき。

【上原委員】

 最終回の課題として,国の顔,国の力となる文化が危機的な状況にあり,課題を金,人,組織の在り方など3~4つにまとめ,アピールする形をとるのが良い。最後に世論の支持,国民の支持などを書いておく。

【織田委員】

 今日の段階でも,法人の形・組織をどうするかはほとんど出ていない。次の最終の取りまとめのときに出すのかそこで議論するのか。

【大木政策課長】

 文化関係施設をまとめた通則法を作るとすれば,この場は通則法レベルで止めるべき。通則法ができた際に,個別法をどう設計するか,どういう形でその制度を作っていくかが次の課題になる。

【福原座長】

 今回の検討会は検討の範囲を限った方が良いが,問題が積残しになっていることについて共通認識を持つことは必要。
 次回最終回までに本日の意見を基に文章整理し,竹内座長代理とも相談し,最終案を示したい。レジュメのようなものも事務局で考え,次回提案して欲しい。

【遠藤国立文化財機構理事】

 全体を通じて文化財研究所に関する言及がない。同研究所は国との関係で親和性が高く,国からの要請を受けて動く要素が強い。論点整理が4法人の共通性を書いていく趣旨とは合わないが,単語も出ていないのはどうか後で事務局と相談したい。

【福原座長】

 文化財研究所については,大きな組織に一括りになり,やりにくさが出ているのではないか。

【関文化財部長】

 9頁(5)法人のガバナンスと国の関与の2つ目の○で,自主性,独立性の部分と国の政策と密接に関連する部分の両方があることを言及している。

【水嶋委員】

 参考資料5は,2月に行ったルーブル美術館,オルセー美術館についての調査概要を表したもの。3~数年を見通した契約をしている。英国には「アームズレングスの法則」がある。国は一定の法人に対して一定の距離を保つというもの。現地でヒアリングすると,博物館・美術館の自主性を尊重しており,自由かつ大胆に企画ができる環境が整っている印象。日本は国からの指導が強いが,「アームズレングスの法則」や複数年契約などで独立性を保つことが必要。地方分権の流れもあるが,国は日本の「国の顔」を前面に出して良い。外国人がフランスに行けば必ずルーブル美術館を見に行くもので,日本でも外国人や国民が東博,京博,奈博に行く政策を大胆にすべきと思う。ルーブル,オルセーでは契約関係も,実績値を基に向こう3年間契約をするようなざっくりした契約になっている。評価制度などを通じて法人の自立性・独立性を高める環境を整備することが日本の役割だと思う。

(5)今後の日程

事務局より,次回の日程(12月15日(水)16:00,16F特別会議室)を案内し,閉会した。

(以上)

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