議事要旨

新国立劇場及び国立劇場おきなわの運営の在り方に関する検討会
(第4回)議事要旨

1.日時

平成23年6月22日(水)10:30~12:00

2.場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3.出席者

(委員)

渡邉座長,田村座長代理,伊藤委員,大城委員,樫谷委員,田中委員,西川委員,牧委員,吉本委員

(文化庁)

吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,大木文化庁政策課長,山﨑芸術文化課長,湊屋伝統文化課長,高比良文化庁政策課独立行政法人支援室長,滝波文化庁政策課企画調整官,牛尾大臣官房総務課行政改革推進室長

(オブザーバー)

白石内閣官房行政改革推進室内閣参事官,崎谷日本芸術文化振興会理事,韮澤新国立劇場運営財団常務理事,宜保国立劇場おきなわ運営財団常務理事

4.議事内容

(1)開会及び論点整理案(結論以外)に関する意見交換

 渡邉座長による開会に引き続き,事務局から資料に基づき,前回の主な意見及び論点整理(案)の主な修正点について説明があり,その後次の意見交換が行われた。

【伊藤委員】

 10頁の新国立劇場の業務改善に関する意見中,芸術監督の部分で,総監督の問題について全く触れられていないのは気になる。難しいのであれば難しいという形で,今後の検討に向けて触れるべきではないか。
 16頁の国立劇場等を振興会直営とする考え方で,「保存・振興を目的としている性格上,公共性が高く」とあるが,新国立劇場も公共性はあり,文化財保護だけが公共的であるとのニュアンスは気になる。

【吉本委員】

 11頁,国立劇場おきなわの場合,県からの派遣職員が定期的に交代することが課題であり,それを解決すべきだが,例えば都道府県立劇場等でも設置団体からの出向を基本的に引き上げて,プロパーの職員が運営するような形態が増えてきているので,国立劇場おきなわの場合,ここに書かれていることを進めるよう検討して欲しい。

【渡邉座長】

 国立劇場おきなわの職員について,専門性を高めるため長く在職する必要があるが,県からの派遣が3年間でローテーションせざるを得ないことが最大の障害で,その背景には退職金支給に関わる規定があると。

【崎谷理事】

 沖縄県から国立劇場おきなわへの交流職員は,5年間は退職手当が通算され,3年とは決まっていない。国から独立行政法人への交流も同様で,5年以内に戻れば通算されるので,一旦退職金をもらうことにはならない。11頁におきなわ財団職員の採用をより重視していくことが記載されており,そのように考えたら良いが,その場合は財団で退職手当を用意しなければならないこととなる。県が採用し芸能に精通した職員が何度でも財団に来て,財団の職員として育てることも大事で,そのこともその前に記述されている。

【吉本委員】

 私も,ここに書いてあることをぜひ進めて欲しい,と申し上げたつもりだ。

【西川委員】

 理事長と芸術監督の関係については,分野が4部門あり,責任の所在を明らかにするためそれぞれ分けたらどうかと言っている。運営上の責任と芸術性の責任を分け,芸術監督のやりたいラインアップを強化し,その中で責任の所在をはっきりさせていく。総監督については置くと責任の所在が分かりにくくなるので,ここに書き込む必要はないと思う。

【渡邉座長】

 財団寄附行為に総監督に関する規定があるが置いていない理由は,人材を得るのが大変だと。総監督を置くことを見直すべきということか。置くと規定しながら置いていないが,どちらが良いのか。総監督に代わる機能を担っているのは,理事か,理事会か,理事長かをはっきりさせるべきかもしれない。

【韮澤理事】

 総監督に関する規定はあるが実際は置いていないのは,総監督が果たすべき役割,各部門の芸術監督との関係,総監督と理事長との関係が十分詰められていないことに加え,果たして適任者がいるかという問題がある。本件は芸術界の中でデリケートな問題であり,大きな議論を呼ぶ可能性もあるので,扱いについては考えさせて欲しい。

【渡邉座長】

 総監督に人材が得られなくて選べないのか,むしろ総監督を置かない方が良いのかは,本質的に異なる。この問題についてはガバナンスが適切でなければ運営委託に関する明快な信頼性を勝ち得ないので,財団において方向性を出して頂くようお願いしたい。

【伊藤委員】

 私は総監督を置くようにとの意見ではないが,2,3年以内に新公益法人制度に変わるので,その段階までに考え方を整理して欲しい。「総監督」では混乱するので,「インテンダント」なり違った考え方もある。新公益法人制度により理事会の構成も変わってくるので,芸術的な責任を持つ理事という考え方もあり得るのかどうか,検討をお願いしたい。

【牧委員】

 外国でもオペラ中心で,バレエが予備のような劇場などは総監督を置いているところが多く,バレエもオペラも演劇も五分五分でやっているところには昔は総監督があったが,だんだんなくなり,理事長と直結のように変わって,今はジャンルの多いところには総監督を置いていないことがある。

【渡邉座長】

 総監督と芸術監督との関係が明確になるよう財団として総監督をどうするか。総監督を置かない場合,芸術監督の責任はより大きくなる。総監督があれば重複になるかも知れないが,管理の点でそういう機能があり,財団がガバナンスの問題として今後の方向性を出すことを前提に了解頂けるか。

【田村座長代理】

 いわゆる総監督,総支配人はあった方が良いと最初から言っている。その役割を理事長でも常務理事でも良いが,誰が担うかはっきりさせることが大切。新国立劇場の組織図で芸術監督が脇に出ているが,どの程度の実権を持っているのか。芸術監督の下に制作部が置かれていないのは問題で,組み入れられればはっきりする。

【渡邉座長】

 例えば劇場総支配人というと,マネジメントが広い。運営体制の検討とは別に,総監督や芸術監督の在り方,規定をどう変えるか,生かすとすればどういう役割か,現に選任されていないことの説明をどうするか。
 なお,公共性の記述に関する指摘については,伝統文化だけにあるのではなく,新国立劇場も公共性があり,読み方の問題に注意して欲しい。

【高比良独立行政法人支援室長】

 芸術総監督について補足したい。寄附行為第27条で芸術総監督1名及び芸術副監督若干名を置くことができるとされ,置かなければならないという義務規定ではなく,現状規定に反しているわけではない。

【樫谷委員】

 資料1の15頁,別表2左側「財団運営委託(A)」の収支構造によると,新国財団の繰越金が2億円あり,それにより収支とんとんになっている。繰越金は埋蔵金と同じで永久にあるわけではない。創意工夫はあって良いが,少なくともこの2億円の増収を図るか支出を抑えなければならない。芸術監督の問題も含めてやっていけるかどうか,財団としてどう考えるか。寄附や委託費の増額が望めない段階で,どういう形でこの2億円をカバーできると考えているのか,この程度の改革で果たしてできるのか。

【韮澤理事】

 これは一番大きな問題と認識している。一時期経済状況が良く,寄附金が多く集まり入場料収入も上がって10数億円まで行ったが,だんだん切り崩し,現在繰越金は約7億円余。昨年度も2億円の繰越金を使い,今年度も使う見込み。オペラ等は約3年前から準備・契約し,今後2,3年はいわゆる赤字財政であり,何とかしなければならない。
 公演回数の充実や青少年向け,地方公演の充実について多くの要請が出ており,制作費を可能な限りカットし,入場料収入や寄附金を何とか増やす。一方で国からの委託費は昨年5%,一昨年は3%カット。このカットを少しでも減らして欲しい。これらを通じて繰越金の使用額を少しでも減らしたい。

【樫谷委員】

 財団において,収支構造の見直しを併せて進めて欲しい。

【渡邉座長】

 今まで繰越金を毎年2億円ずつ使ってきたのか。

【韮澤理事】

 最近のことで,逆に残していた時期もある。残高はこの3月末で7億円余。23年度も2億円使う予定であり,来年3月末には5億円余となる。

【渡邉座長】

 国からの委託費増加は簡単には行かないから,このままではじり貧になる。自立を考えるには繰越金を使わず収支とんとんになる状況を追求しなくてはいけない。収支比較表は,振興会直営となったら,繰越金は財団のもので使えなくなって2億円がマイナスになり,計5億5,000万赤字となるというもの。

【西川委員】

 11頁の新国立劇場の研修に関連し,人材育成が新国立劇場の主な役割とすれば,財政が厳しい折,全体の経費を落とすのと同レベルで研修経費も落としていくと,人材育成の役割が担えなくなる危険性がある。研修所の財政の確保についても書き込む必要はないが検討頂きたい。

【韮澤理事】

 研修については公演費とは別に国からの運営委託費を中心に賄っている。

【渡邉座長】

 人材育成は一律に減らすことがないようにと。それが財団運営の良いところでもあり,財団運営だからフレキシブルなプライオリティーを考えた運営ができ,それを長所にしていかないといけない。自主性が得られるが,それだけ説明責任も大きい。

【田村座長代理】

 国立劇場おきなわをどうするという理念を財団としてはっきりさせ,そのために必要なことを国にも県に対してもはっきり言うことが大切。一方で,県立の劇場を作る動きも出ていると伺っており,財団として存在価値があるようにすることが大切。

【宜保理事】

 私で5人目の財団常務理事である。これまで常務が2年で代わり,組織や業務内容の理解に精一杯だった。私は今年で4年目になるが,組織を強くするため日本芸術文化振興会とも話して,職員が3年で転勤するのではなく2年の余裕もある。振興会と協議の上,専門家をもう一回劇場で採用することも含め,今年から精力的に取り組んでいる。これまで人事に十分配慮できない点があったが,今は組織強化に努力している。

【渡邉座長】

 5頁「なお,これらの間の関係や役割分担は,財団の内部組織に関わる事柄であって,劇場の運営体制とは直接関係ないと考えられる」とあるが,今の柔軟な組織と役割分担の体制の方が創造性の追求と責任を果たす上で良いと考えられ,あえて書く必要があるかどうか。
 13頁の検討の視点の2つ目「運営の効率化,組織のスリム化といった視点に偏ることなく」とあるが,本検討会としては「運営の効率化,組織のスリム化」は当然追求すべきものであり,言葉遣いを考慮願いたい。

(2)論点整理案(結論部分)に関する意見交換

【伊藤委員】

 20頁【B】「一方,財団の場合,民間企業から多数の非常勤役員が法人運営に参画し責任を負っている」については,新公益法人制度への移行により今のように非常勤理事を企業から多く招くことが難しくなるため,この文章は2,3年後には言えなくなるのではないか。
 今回【A】でまとめることは了承したい。何らか独立行政法人改革に関する要望を入れて欲しいとしていたが,結論に取り入れられたことは感謝する。ただ,現行の財団運営委託で得られる最大のメリットが企業等からの寄附金であるように見える。財団運営のメリットは,独立性,専門性が生かせる,繰越金等が使えるフレキシビリティーがあること等もあり,寄附金だけに焦点を当てるのはいかがなものか。もう少し丁寧に書いて欲しい。
 併せて議事録に残したいこととして,今後の芸文振の改革の望ましい方向に関する個人的意見を述べたい。現在の芸文振ができた歴史的いきさつがあり,国立劇場に基金ができたとき,両方合わせた特殊法人となり,現在の独立行政法人に至っている。経緯や背景は分かるが,無理のある一体化ではなかったか。
 別の検討会で,基金に関してPDCAサイクルを確立し効率良い支援をするための検討がなされ,パブリックコメントも行われた。アーツカウンシルに向けての改革が徐々に進んでいく。そうした性格を持つ団体が,一方で国立劇場を運営するのはおかしな話で,基金と国立劇場は分けるべきではないか。それが可能になったとき,新しい国立劇場の独立行政法人が一つの機構となり,新国立劇場や国立劇場おきなわ等々を傘下に置く形態も可能ではないか。その際,フレキシブルな運営ができる仕組みを当然考えなくてはいけない。そのために例えば国立大学法人制度のような仕組みが検討に値し,それにより専門性や自律性を担保できる仕組みがある程度可能ではないか。
 例えば東日本大震災に伴う東北地方の復興計画が今後進んでいく。場合により東北地域に国立劇場の第4番目ができることも検討されて良いのではないか。当面は不可能と思うが,そのときに機構のような仕組みがないとそうした発展がないのではないか。その意味でも,芸文振の基金部と国立劇場の分離の方向で検討願いたいことを個人的意見として議事録に残し,今後の検討をお願いしたい。

【渡邉座長】

 私も国立大学の法人化に携わったが,国立大学はお金が欲しいが学問の自由も欲しいという格闘だった。法人化するとお金はどこまで国立大学に来るかという問題もあった。

【吉本委員】

 21頁,結論最初の○で「公演事業について国からの支援をほとんど受けることなく…円滑に実施している」とあるが,実際は委託費として人件費や施設管理費等にお金が出ており,誤解のないよう記述の工夫が必要。
 結論最後の○の文章が長くて読みづらい。ここには独立行政法人制度を見直す項目と,基金の創設や企業からの寄附など独立行政法人制度にはないことの両方がある。例えば,独立行政法人制度の見直し検討の結果,運営費交付金及び目的積立金制度の運用改善,ガバナンス云々と独立行政法人制度の大幅な改革が図られた場合には,その状況を十分に踏まえた上で運営体制について検討すべきである。さらにその場合,企業等からの寄附金や創造性の追求,柔軟な運営など現行の財団運営で得られているメリットが減殺されない仕組み,さらには官民からの資金を原資とする基金等の創設も踏まえて検討すべきである,と分けて記述した方が良いと思う。
 伊藤委員の発言に私も賛成で,アーツカウンシルの機能が強化されれば劇場運営の法人と一緒であるのは違和感があるので,独立行政法人制度の改革等を含む抜本的な見直しについて,先々検討して欲しい。

【渡邉座長】

 「公演事業」については,公演事業の直接経費については入場収入や寄附金によって賄われているが,建物やいろいろな間接費用は国から受けている。誤解のないよう表現を工夫して欲しい。
 独立行政法人制度の見直しに関する記述をどうするか。

【滝波企画調整官】

 ご指示のような形で修正したい。

【渡邉座長】

 結論だけ読む人がいる。最後の独立行政法人改革の文章が長いが,本検討会ではこれを主に検討してきたのではなく,それ以前のことを検討してきた。結論だけで今の運営方式が良いと分かるような整理と独立行政法人改革の書き方の工夫をして欲しい。

【樫谷委員】

 公演事業については先ほどの趣旨に沿って修正願いたい。もう一点,事業はうまくいっているように見えるが,財務構造を見ると厳しいので,一層の収入の確保と事業の効率化に努める必要があることを結論にも書いて欲しい。

【渡邉座長】

 運営委託費が継続的に削減され,事業の運営は厳しくなってきている。現行の運営体制を支持するが,運営の水準はより高めるようにとの条件が付いていると,結論を読めば分かるように工夫したい。

【田村座長代理】

 「両財団は,運営委託費が継続的に削減される中で」とあるが,それを了承していると誤解される感じがする。国として国立劇場,新国立劇場をどうするかという視点が必要ではないか。国として書く際は,その辺も配慮して欲しい。

【渡邉座長】

 それは国民の理解や国民の支持が必要。今の財政状況下でも文化事業は日本の将来を担う中核だという書き方にして欲しい。そのために財団や振興会が努力している姿を国民に見てもらう必要。結論としてこういうことで整理をさせていただきたい。
 国立劇場おきなわで,県が主体でやっていけるのかという意見もあったが,沖縄県から要望があるように聞いているので,ご紹介願いたい。

【宜保理事】

 財団の理事長は副知事であり,本検討会の討論の結果は逐次報告しているので,副知事から県知事にも話があったようだ。我々としては現在まである程度順調に進んでいると考えており,近日中に県知事から文部科学大臣あてに現状の委託方式でお願いしたいという要望書が提出されると聞いている。

【渡邉座長】

 それだけに県が,県民の参加を含めて,財団運営に関して本検討会から出された種々の要望を叶えるようお願いしたいと,機会があったらお伝え頂きたい。

(3)論点整理〔概要〕案に関する意見交換

【吉本委員】

 論点整理〔概要〕は,結論を一番上に書き,審議した結果,ここに書かれていることが結論と分かるようにした方が良い。
 同様に,資料1最後の結論部分も,最初に結論を書き,その結論を導いた理由,背景,留意事項があり,さらに将来的な独立行政法人改革があるとした方が,分かりやすくなると思う。

【渡邉座長】

 論点整理では,「3.運営体制に関する検討」の中で「(4)結論」としているが,「4.結論」と独立した方が良い。そういう考え方で概要も作る。なお,財務内容に関して「二重構造ではない」とあるが,「二重構造とは言えない」とすべき。

(4)閉 会

 渡邉座長から,委員への感謝の言葉とともに,本検討会はこれをもって区切りとすること,気になる点があれば明日23日中に事務局に一報頂きたいこと,最終的なまとめは座長に一任頂き,事務局と相談の上,まとまったところで公表することについて説明があった。
 最後に,吉田文化庁次長から閉会挨拶があり,閉会した。

(以上)

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