国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第1回)
議事録

1. 日時

平成21年7月2日(木) 15:00~17:00

2. 場所

旧文部省庁舎 講堂(6階)

3.議題

  1. (1)座長等の選任
  2. (2)検討課題について
  3. (3)その他

4. 出席者

(委員)

石原委員,植松委員,神村委員,さいとう委員,里中委員,土佐委員,中谷委員,浜野委員,林委員,古川委員,水口委員,森山委員,山口(布川委員代理)

(オブザーバー)

阿部氏,岡島氏,甲野氏

(事務局)

青木文化庁長官,高塩文化庁次長,清木文化部長,清水芸術文化課長,村上経済産業省文化情報関連産業課長

(欠席委員)

安藤委員

(欠席オブザーバー)

石川氏

○清水芸術文化課長

 それでは,お時間となりましたので,ただいまから国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会を開催いたします。
 本日は,ご多忙のところご出席いただきまして,まことにありがとうございます。私は文化庁の芸術文化課長の清水と申します。本日,初めての会合ということでございますので,座長の選任まで議事を進めさせていただきたいと思います。本会議は公開で実施をすることとしておりますけれども,カメラ撮りにつきましては長官のごあいさつまでということでお願いをしたいと思っております。
 それでは,まず設立準備委員会の委員の先生方をご紹介させていただきます。

 〈各委員の紹介〉

○清水芸術文化課長

 続きまして,本日の会議に出席の文化庁の関係者をご紹介させていただきます。

 〈文化庁事務局の紹介〉

 では,初めに青木長官からごあいさつを申し上げます。

○青木文化庁長官

 このたびは国立メディア芸術総合センター(仮称)でございますが,設立準備委員会の委員を大変お忙しい中,お引き受けくださいましてまことにありがとうございます。また,本日もご出席くださいましてまことにありがとうございます。
 メディア芸術は,現在の科学技術と芸術が融合するテクノアートを初め,アニメ,漫画,ゲーム,映像作品など多くのものを含んだ新しい内容でございます。これらすべて我が国が世界とリンクをする,世界じゅうの方々から子ども,大人を問わず,ぜひ日本に行ってこれを見たい。そういう声が寄せられているわけでございます。しかしながら,日本にはこれまでそういった期待にこたえる文化拠点がございませんでした。我が国のソフトパワーを高めるため,我が国の文化を強力に海外に発信するため,そして我が国の将来を担う重要産業であるコンテンツ産業を振興し,我が国の成長力の強化を図るため,メディア芸術については展示を初め,収集・保存,人材育成,調査・研究等を総合的に行う拠点が必要でございます。
 本件に関しましては,昨年8月からメディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会においてご議論をいただきましたが,これを踏まえ,国立メディア芸術総合センターの設立が補正予算に盛り込まれたところでございます。以来,本センターに関しましては賛成意見とともに,さまざまなご懸念が寄せられてきましたことはご案内のとおりでございます。これらのご懸念を払拭し,国民の皆様にご理解いただくためには,我が国のメディア芸術の発展に真に貢献する拠点とすること,この点に尽きるわけでございます。
 国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会は,このための重要な根幹部分を担っていただくものでございます。すなわち,それぞれのご見識,ご経験に基づく活発な議論をいただき,事業内容,施設内容,規模,管理運営方法などを盛り込んだ基本計画の策定をお願いしたいと考えております。委員の皆様におかれましては,これまでの経験や各分野の現状等を踏まえ,センターが我が国のメディア芸術の発信拠点としてふさわしいものとなるよう,活発に議論していただくことを期待しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 2つほどつけ加えますと,私個人の意見ですが,これはいろんな国内でも大変期待があるほか,いろんなご意見がある施設でございますが,これに国際的に大変反響を呼んで,日本が何をつくるんだということが日本のメディア芸術に対する高い世界の評価と,それから,それに基づく,数百万,数千万のファンの期待といったものが日本国内だけじゃなく世界じゅうにあるわけでございまして,それにこたえるという使命をこの計画は担っていると考えます。
 もう一つは建物でございますが,これはいろんな考え方がございますけれども,現在の一つの大きな趨勢として世界のトップ建築家が,建築アーチストがデザインをつくった美術館,博物館というものが日本の建築家も含めて世界じゅうにございますけれども,建物は単なる箱物ではなく,それ自体が芸術であり,それ自体を鑑賞する,鑑賞に行くということも今,大きな動きになっているわけでございます。もちろん,内容の充実は当然でございますけれども,その点で例えば磯崎新さんとか,安藤忠雄さんが今度ベネチアで歴史遺産のようなそういう建物を改築されて現代美術館に仕立てられて大きな評判を得ていますが,そういう方々も海外で仕事をされています。このメディアセンターがどういう形になるかわかりませんが,安藤さんがおやりになったような改築計画,改修というようなことも含めて,やはり建築は単なる建物ではなくて,それ自体が大きな芸術作品であるという認識を私は強く持ちたいと考えています。
 どうもありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

○清水芸術文化課長

 それでは,カメラの方はそろそろ退席をお願いしたいと思っております。
 それでは,ここで本委員会の座長をお選びいただきたいと思います。座長については事務局からの提案でございますけれども,昨年からメディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会の座長を務めていただいておりました浜野委員に,引き続き本会議につきましても座長をお願いするという事務局からの提案でございますけれども,いかがでしょうか。(拍手)

 【浜野委員が座長に選任】

 それでは,ご異議ないようでございますので,浜野委員が座長に選任されました。浜野委員,大変恐縮なんですが,座長席のほうにお移りいただきたいと思います。
 それでは,今後の議事進行は浜野座長にお願いしたいと思います。
 それから,議事に先立ちまして座長代理につきまして,座長の指名ということでお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○浜野座長

 それでは,私としましては昨年に引き続き古川委員にお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。

 【古川委員が座長代理に選任】

 ありがとうございます。それでは,古川先生,こちらのほうにお願いいたします。
 本日の進行でございますけれども,まず,事務局から配付資料についてご説明いただきまして,その後,参考としてメディア芸術祭の映像をごらんいただき,それから第1回の委員会でございますので,各委員の皆様方による討議とさせていただきたいと思います。
 それは,よろしくお願いします。

○清水芸術文化課長

 それでは,事務局から資料の確認と説明をさせていただきたいと思います。

 〈配布資料について説明〉

○浜野座長

 ありがとうございました。それではメディア芸術祭の映像を準備しているのでごらんください。

 (約5分間のビデオ上映)

○浜野座長

 それでは,資料6をごらんください。自由討議なんですが,議題ごとに検討したいと思いますので,まず,最初の事業内容,ついで施設で,管理運営というような順番で討議を行いたいと思いますが,私のほうから指名させていただきたいと思いますが,前回の委員会のメンバーはある程度,重要発言をかなりやったものですから,今回から参加していただいた委員の方々に,全体のことでもいいですし,できれば事業内容についてご発言をいただきたいと思います。
 里中先生からお願いできますでしょうか。

○里中委員

 私は今回からの参加でこの中で言うのも何ですが,最初のマスコミ発表を見たときはよくつかめなくて,世間で言われているいろいろな反対意見というのは皆さんもっともだと思いました。思いましたが,それはそれとして何をするかということがはっきりしていないから反対という方もいらして,それももっともなんですけれども,事業内容からずれるかもしれませんが,最初に思うところを少し述べさせていただきますと,最初に何をするかがはっきりと100%決まっていないからこそみんなでいろんな意見を言って,すばらしいものにしていけるという期待を持っております。
 これまで国の施設といいますと,知らない間に予算が決まって,知らない間にでき上がって,後から知るということが多かったのですが,補正予算で案が出た途端,みんなが注目するということは,皆さん,きっといろいろな意見をお持ちだと思いますので,どうか今後,この事業に関しましてお願いではありますが,この委員会なりのホームページを立ち上げて,そこに本当にまずは納税者の皆さんからの意見,アイデアというものを募るという形でご意見をいただくというのはとても参考になると思いますので,ぜひ,そういう開かれた企画にしていただけたらうれしいと思います。
 事業内容なんですけれども,展示・上映,収集・保存,調査研究,人材育成・普及啓発,情報収集・提供,他機関との連携とありますが,他機関につきましては既に民間,行政を問わず,いろいろな機関がありますが,国立でこのようなものはないということが重要なポイントだと思っておりますので,国立だからといって威張るのではなく,既存の施設とうまく連携をとって,分かち合うことができる情報をデジタルで分かち合えるということをしていけたらいいなと思います。
 たまたま他の機関があるので,既存の設備でいいじゃないか,国立なんかつくる必要はないじゃないかと言われる意見もありますが,国立のものでこういうものはなかったということのほうが不思議だと思っております。国立だからこそ半永久的に存続すると。地方の行政はどんなに頑張っても大阪の児童文学館のように経済的事情から悲しい運命をたどる,すばらしい施設がありますので,そういうことにならないような施設があってこそ,これからの若い方たちの作品発表の支えにもなるのではないかなと思います。
 漫画,アニメ,CGアート,ゲーム,映画・映像とかなり幅広いんですけれども,各分野の方々から展示でいいのか,あるいは発信でいいのか,上映でいいのか,デジタル配信がいいのか,いろんな形があると思いますので,きょう,せっかくこの事業内容について展示・上映,収集・保存,いろいろ分けていただいているんですが,きっと分野によって違うと思います。
 漫画に関しましてはこれまで実は過去10年間にわたり,古い時代の漫画,それが二度と読めなくなっておりますので,デジタルアーカイブ化を目指していろいろ努力してまいりました。そういう企画といいますか,漫画家の皆さんにご協力いただいて,そういうデジタルアーカイブ化について,しかもきちんと著作権料が発生するような形で,今後,していきたいと思っておりました。
 日本の漫画の黎明期と言われるすばらしい時代の名作というのがほとんど今,振り返られることなく埋もれてしまっている。本もぼろぼろになっていく。原稿もぼろぼろになっていくということで,私もちょっと個人的で申しわけないんですけれども,そういう作品を何とかしたいという一心で漫画家の方たちにお願いして,特に古い劣化した原稿のデジタル化のテスト版を進めてきました。そういうのも本当は箱があれば,原稿をお預かりすることができるんですが,お預かりする場所がありません。
 デジタル化のテスト版,本当にテスト版です。年間100万ぐらいの予算でやっているテスト版づくりなんですが,その中で大ベテランの過去の巨匠たちのご遺族から出た声は,デジタルアーカイブ化もいいけれども,この原稿を何とか預かっていただけないかという声が多く寄せられました。調査しますとかなりひどい状態で,大巨匠ですらそうなんですから,そうじゃなかった一作しか世に出さなかった人とか,若くして消えてしまった人たちの作品ってどうなるんだろうかと危惧を感じておりました。それで,でき得る限り速やかに早い期間にすべての作品のデジタルアーカイブ化をしたいし,また,原稿保存,持っていき場に困っている人,あるいは個人では温度管理,湿度管理ができない人が将来のデジタル化のために預ける場所が欲しいとおっしゃっていることについて,こたえたいなと思ってきました。
 漫画に関しましては,漫画原稿そのものを展示するというよりも,作品全体を見ていただくことのほうが重要だと思っております。ですから,漫画に関しては展示の仕方は漫画原稿を見ていただくというより,テストケースとしてこんなにひどい現状ですというのを見ていただいてもいいんですけれども,むしろ作品全体の保存,ただ,漫画に関連したサブの文化,漫画のサブカルチャーでそれでいいんですけれども,それのサブ文化というのもいっぱいあります。その中から生まれてきた日本独自の例えばフィギュアとか,そういうのも文化に今なりつつあります,世界から注目を浴びて。そういう時代性のある作品と関連した商品とのいろんな研究により,ある時代が見えてくるということもありますので,そういう企画展の場合は漫画作品とか原稿とかも展示したいなと思っております。
 その収集・保存はスペースが必要ですし,また,取り込み,修復その他にやはり人材が必要ですので,そういう若い方たちの雇用といってしまうほど雇用が発生すればいいんですけれども,そういうことも可能かなと思っております。調査・研究についてもそうです。この分野が好きな方で,なおかつデジタル技術をお持ちの方で若い方,学校ではこういうことを習っても将来の使い道がないという方が多いですから,そういう方に研究員として入っていただく。
 人材育成につきましては今は特にアニメーションなど,漫画もそうですけれども,若い人たちの作品の発表の場は少なくなってきているんですね。これはちょっと別なテーマになりますが,どうしてアニメ業界の収入が低いかという原因の一つに,違法コピーの問題が大きいと思われます。違法コピーを防ぐことによって本来見込める経済効果がちゃんと見込める。それと海外から日本のアニメを買い付けたいといっても,これまでアニメ配給会社の自助努力によって売り込みをやってきたわけです。漫画もそうです。映画もきっとそうだと思います。それにこちらから発信して海外に売り込みをかける施設がぜひ必要だと思っておりますので,そういう機能を持っていただきたい。
 そこで,人材育成につながるような若手の作品発表の場ができればいいし,また,今のデジタル技術と配信技術により,即売り込みがかけられるということもありますので,そういう商業面からでも,これまでにない施設にできればいいなと感じておりますので,ぜひその辺,積極的に考えていただければうれしいかなと思っています。
 情報収集はまたこれもこういう時代ですので,いろいろとネットを通じてお客様やあるいは足を運べないけれども,デジタル画面でのぞきたいという方からも情報を得られます。漫画に関していえば,一度,発信しますと,この作品のラストシーンの巻を持っている方はいませんかとか,この作者は今どこにいるかご存じありませんかとか,そういうことを広く呼びかけることができますので,著作権処理についてもクリアになる部分が多いかなと思っております。
 ということで,事業内容につきましては,今後,みんなでアイデアを出し合って商業ベースに乗る,入場料収入だけに頼るのではない積極的な事業展開をオープンの形でやっていけたら素敵だなと思っております。国立とはいえ,運営は民間委託するということですので,これまでにあった数々の美術館や博物館ができなかったことをメディアベースの発想を生かしてやっていけたらと思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。
 では,神村委員,よろしくお願いします。

○神村委員

 私は商業アニメーションのアニメーターとしての立場からです。事業内容はどれも美術館としては重要な内容だと思いますが,アニメーターの立場からは保存と人材育成というところを特に重要視しています。保存については貴重な資料がアニメーションでもどんどん失われていますし,それを保存する場所がもうない状態です。ですから,それについてはぜひお願いしたいのと,それから人材育成について,こちらについてはアニメーション業界,商業アニメーション業界全体が元気になるような事業をお願いしたいと思っています。ですので,私たちアニメーターともう一つ業界団体として動画協会というところがありますけれども,そこと共同で人材育成機能の事業案について提言いたしております。
 以上です。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。それでは,関連で山口委員,よろしくお願いします。

○山口委員(布川委員代理)

 代理出席をいたしました動画協会の山口でございます。今,世論が非常にアゲンストの風が吹いているのを非常に遺憾に思っております。いろいろマスコミ等は福祉予算の削減と国立漫画喫茶,アニメの殿堂というような非常に情緒的な対立概念を持ち出して,例えば母子加算が廃止になったと,不要不急の漫画喫茶が必要なのかというような議論になってくるのは,非常に危険な世論操作だと思っております。それというのも私どもは人材育成事業を経産省の支援によりまして行っておりますが,現在,日本の国公立の4年制の大学でアニメーションとか漫画の専門の学科が1校もないんですよ。
 これは驚くべきことで,世界の各国,例えばお隣の中国と韓国は政治体制も違いますけれども,多くの大学でアニメのカリキュラムを組んでおります。本来ならば日本のアニメーションの中心が首都圏にあることから,そこへ行けば何でも勉強できるという環境が必要ではないか。それから日本の留学生がアメリカに勉強に行くと,何でアメリカに勉強に来るんだと,日本が本場じゃないかということを言われるそうであります。また,東南アジア諸国へ参りますと,日本に留学したいんだけれども,学費が非常に高い,生活費も高い,行けない,おまけに安い国公立の大学がないではないか。どうしてないんですかというようなことを言われます。
 そういった立場から,この構想は大変いいんですが,残念ながら,厳しい反対の世論が盛り上がっております。福祉問題は政治課題としてやればいいんですが,政争の具に使われているキライがありまして,アニメにとって非常にゆゆしい問題だと思っております。これは私個人の考えなんですが,ここでこのような理由でこの案がつぶれてしまうと永久に実現しないのではないかと危惧される。したがって今しっかりと視点を定めて,産学官がこのセンターを中心に世界に発信していくと,そういう確たる方針を立てて推し進めるべきであるというふうに思っております。
 非常に厳しい状況でありますが,何とか世論の支持が得られないとうまく運営できないと思っております。そのためのどういう案があり得るのかというのを私どもも大変注目しておりますし,アニメと漫画に対する偏見というのが今一気に噴き出している時期だと思います。アニメ,ゲーム,漫画というのは三悪だとおっしゃった人がおりまして,一生懸命に子どもが勉強しているかと思ってお茶を持ってお母さんが行くと,また,漫画を見ていた,また,アニメを見ていた,また,ゲームを見ていた,困ったものだというのが潜在意識的にあって,国公立の大学でカリキュラムをやるようになったら,おれはもう大学をやめるという有名な大学の先生がおっしゃっていたそうです。だからこそ国公立の大学に,私は個人的にも働きかけております。しかし,意はあっても予算がないなどなかなか壁は厚い。
 首都圏の国公立の大学にカリキュラムを設けていただければ,我々は業界として全面的にインターンシップの環境の提供とか,必要な資料の提供等ができると思っておりますので,これはちょっと本議題と外れるかと思うんですが,この構想には日本が今最も遅れている人材育成というテーマを含んだコンセプトを付加してほしいと考えています。今まで勢いで企業が作品創りをやってきて,たまたま運良く世界のナンバーワンになれているんですが,これからは目的意識的に人材育成をしないと,やがて日本は中国,韓国等の下請になってしまうぐらいに危険なんだということを申し上げたいと思います。
 以上であります。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。それでは,土佐委員,よろしくお願いします。

○土佐委員

 明和電機代表取締役社長の土佐信道です。筑波大学の現代美術のコースを出まして,現在,この機械を使ったパフォーマンスを世界中でやっております。現在,作業服をなぜ着ているのかということで不審に思われている方もいらっしゃると思うんですが,現在,所属は吉本興業に所属しておりまして活動しております。
 その経験からすると,今回の世の中の騒ぎなんですが,やっぱりアニメ,漫画というのは僕が思うに言葉は悪いんですが,やっぱり低級文化という面があると思います。でも,海外に行くと,例えばフランス美術館に行くと日本ではすごくアングラな漫画が当たり前に売られていたりして,高級文化として扱われていたりする。その漫画界が今持っている低級から高級までのレンジがとても広いので,議論をどこでするかというところの立ち位置で,意見が本当にぐちゃぐちゃになってしまうというのがまず問題だなと思っているんです。
 ただ,この状況はよく言われるように浮世絵と全く一緒の状況で過去にもありました。でも,せっぱ詰まった問題として浮世絵の時代は文化が幾らヨーロッパに流れていっても,鎖国をしていて自給自足で日本は食ってきていたので問題はなかったのですが,現在はそういうわけにはいかなくて,国際競争の中でクリエーターがものをつくって食っていくという中で,それが流れてしまうとやっぱり問題だなと思います。
 そういうことを考えると,やっぱりライブラリーとしての機能としてのメディア芸術センターというのも必要だと思いますが,一方で,ショールームとしてのメディア芸術センターも必要だと思います。日本にはこういう商品があるんだよ,こんなにすごいのがあるんだよということを海外の人が見て納得いくようなショールームとしての箱と,それから未来の人たちがライブラリーとして活用できるようなものとしての箱と,2つの方法がないとだめだと思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。
 では,森山委員,よろしくお願いします。

○森山委員

 東京都現代美術館の森山と申します。今回の機会を得て,日本で初めての複合的な文化施設である,そして拠点でもある総合センターの設立に携わらせていただいて,本当にうれしく思っております。といいますのも,このような総合的なセンターの概念自体は本当に皆さんご存じのとおり,昨日や今日に始まったものではなく,1970年代には第1回のメディア芸術の功労賞の受賞者でありますメディアアーティスト,山口勝弘先生がイマジナリュウムという名前で,現在ここで構想されているような,箱物ではない,発信する拠点にもなり得る,いろんなモジュールが複合的に存在していて,世界各地にもサテライト的に存在しており,人々がいつでも情報を取り出せる,アーカイブもあって展示もあってというような概念を発表なさっております。
 土佐さんや私自身もこういった戦後のメディアアート第1世代に学んだ世代でありますが,今のここの規模ほどではないですけれども,約20年前にも東京都が映像文化施設をつくろうとしまして,現在の東京都写真美術館になりますが,このような検討がなされたのを覚えております。その後,写真の総合的な美術館ということになりましたが,その中に映像メディア部門というのを設けて,領域としてのカテゴリーは写真よりも映像メディアのほうが大きいわけなんですけれども,その中で50本を超えるメディアアートの展示,それからエンターテイメントを含むコレクション,それからワークショップを50本以上やってまいりました。
 2001年にこの領域を振興する法律が成立し,2002年には小中高の美術の時間の中でこの領域が義務教育化され,それ以降に,各大学でこのようなコースがたくさん設置されました。海外でもアルスエレクトロニカやシーグラフといった主要フェスティバルや展示の審査員や議長を務めさせていただきましたが,たくさんの日本の若い人々が漫画やアニメーション,ゲームの領域も含めてファインアートであるメディアアートの領域だけでなく,高く評価されてきたのをつぶさに見てまいりました。
 そして,メディア芸術祭を誘致することができて,東京都写真美術館の中で第10回まで,最初は割と規模も小さくスタートした展示でしたけれども,最終的には,第10回には10日間で約6万人というマンモス展示に成長するというのを見てまいりました。ですので,もうそろそろこの領域を総合的に見て箱物でない拠点を設けて世界に発信をすると,学問としても体系化づけ,文化と経済の二律背反,二項対立みたいな構造を脱する,そういう時期に来ているというふうに思います。
 世の中で報道されている,この領域やこの施設への誤解は非常に問題だと思っておりまして,逆にこの機会をよい機会だととらえて,メディア芸術という言葉や,それがカバーする非常に広い極めて日本的な表現力を持っている強い領域,経済とも両立することができる領域というのをきちんと普及し,そしてこの施設の設立に貢献することができたらと思っております。千載一遇のチャンスだと思います。
 人々が世論にもっと求めているいろんな支援というのは,この施設の設立の中に盛り込めると思っていますし,拡充していけるような計画を立てるということが幾らでも可能だと思いますので,全体に関してはまず拠点,いろんなやり方があると思うんですが,よりどころであり,この領域のへそであり,梁山泊であり,トキワ荘であり,牙城,アジト,ハブ,何と呼んでもいいんですけれども,そのようなものをとにかく成立させる。そして,この後,事業内容とか施設内容とか,管理運営について各ディスカッションがあると思うんですけれども,私や私の周りにいる人たちがこの領域に携わってきて積み重ねてきた失敗も成功もたくさんのケーススタディーというのがありますので,できる限り提供したいと,おのおののディスカッションについては具体的に提案していきたいと思っています。
 2004年に文科省さんから予算をいただいて『先端的科学技術をメディア芸術へと文化的価値を高めるための施策提言』という調査を行い,メディア芸術総合センターのようなものを設立させる必要があるということを政策提案として提案いたしました。こちらに報告書もありますが,本日,皆さんのお手元にお配りいただいている資料に,不肖森山がいたしましたドイツにあるZKMという施設,オーストリアのアルスエレクトロニカという施設,世界の中でのこの領域の施設がどのようにこの領域を扱ってきたかというのを数字の面も含めて,私が海外の例としてレポートしたものが配付してございます。
 これは非常に海外での成功例,具体的な経済的な効果や育成も含めて複合的な施設として成り立っている例,アートとテクノロジーとソサエティーというのが見事に成立している例ですが,ここに非常に日本固有のエンターテイメントがタイアップだけでなく,どちらが欠けても成り立たない両輪として成立している領域という独自性を加えることで,どこの国にもない唯一の独自性のある領域を今後も打ち出していけるというふうに確信しております。今後のディスカッションの中で今の世論に対してどのように本来の目的を理解していただいて発信をするか,それからいろんな方からのいろんな提案を受け入れていって拡充していく,スケーラブルな,フレキシブルな施設としての拠点をどう設置させていくかということにご協力できたらというふうに思っております。

○浜野座長

 それでは,水口さん。

○水口委員

 水口と申します。きょう初めての出席になります。僕は20年間ぐらいゲームのクリエーティブを続けてきました。最近は音楽系のゲームをつくることが多いんですけれども,それに合わせて音楽とか映像のクリエーティブも始めています。
 仕事柄,やはり海外に行くことが多うございまして,この話を興味遊山に聞きながら,一生懸命キャッチアップしようとしているんですけれども,まず一つやっぱり非常に強く思いますのは,日本の要するにバリューといいますか,日本の文化的な価値,バリューですね,これは非常にやっぱり海外からの目は非常に高く評価されていると思います。そういう意味では,日本の中にいるときに感じる温度と海外から見たときの温度というのはちょっと差があるような気がしています。そういう意味では非常に可能性があるといいますか,日本のカルチャーというか,全般的なカルチャーを日本の底力というか,誇りといいますか,それを日本のエネルギーに変えていくことというのは,総論で言うと非常にすばらしいことだなと感じています。
 あと,先ほど,里中委員のほうからも,いかにアーカイブしていくかという話がありましたけれども,実はデジタルの世界でもこの危機感が非常に高まっておりまして,例えばゲームが生まれて数十年たつわけですけれども,初期のころの名作をプレーする方法がないとか,つまり,昔のフォーマットのフロッピーディスク,あるいはいろんなフォーマットのメディアがありましたけれども,それを再生する,あるいは手に触れるフォーマット,プラットホームが既になくなってきているという話もあります。
 そういう中で,いかにこれからそういうものをうまく整備していくとか,集めていくかというのも課題になると思いますが,先ほど里中委員のほうから出ました本当に日本国民全体から例えばこういうものがありますと,これをぜひ寄贈したいとかいう話があれば,非常にこれは助けになるのではないかと思って聞いておりました。そういう意味では,今,こういうものを立ち上げてネットワークでいろいろつなぎながら,うまくリンケージしていくというのは非常にいいアイデアだと思います。
 安藤委員からのメモにちょっと目を通しているときに同感したことなんですが,このようなものをつくる場合,箱をつくってできましたというだけでは恐らくうまくいかないだろうなと。やっぱり運営力というのが非常に試されるのではないかと思います。恐らくこの施設は日本の国内だけではなくて海外からのお客様,日本の文化に非常に興味を持っている方々にとっても非常に興味の的になると思います。
 よく私のほうでいろんな方を海外からお連れしますが,そのときにやっぱり出るのが日本の文化的なものに触れる場所とか,そういう施設が本当に少ないと。渋谷に行って,新宿に行って,原宿に行って,秋葉原に行って,要するに町単位では回るけれども,何かやっぱりそういう施設が欲しいなということは前からよく耳にしていました。そういう意味では内外の皆さんがこれは非常におもしろいなと,今,日本では,あるいは東京では何をやっているのかと,そういうことを常に気にされるような我々自体がある意味,モードのつくり手になっていけるようなことをやっていく場合,この発信力,運営力というのは非常に試されると思います。そういう意味ではキュレーションとか,そういう発想というのも非常に深く重要に考えたほうがいいなと思って聞いておりました。
 総合的にまだ決まりませんけれども,もしかすると2016年にオリンピックがあるかもしれないとか,先ほど言った海外からの目というのが非常に高まっているとか,最近は仕事でフランスに行くことがよくあるんですけれども,フランスに行くと我々のような仕事の人間がリスペクトされる度合いというのは非常に今高いんですね。これは結構前からそうなんですけれども,ゲームというものはフランスにおいて10番目のアートだというふうに言われているそうです。そうやってどんどん新しいもの,古いものから新しいものがどんどん登場してきたときに,それを非常にポジティブな側面をクリエーティブとかアートの側面を見て,その先に何があるのかとか,そういうことをやる原動力というのは日本にも非常に強くあってほしいなと願います。
 そんな感じあります。

○浜野座長

 ありがとうございました。
 ちょっと余談なんですけれども,黒沢監督がよくおっしゃっていて,海外へ行くとVIPとして扱われるが日本に戻るとそのようには扱われないといつも言われていました。同じことがまだまだ繰り返されているということですね。
 では,植松委員,よろしくお願いします。

○植松委員

 私は今回,初めて参加させていただいているということでありまして,私の専門でいくとすると,検討課題の2のところの施設ということでございます。施設は基本的には1の事業内容を展開するための器ということでございますので,しばらくの間は皆様各委員がどういう事業内容を展開されたいというふうにお考えになるかというところをお聞きするというのがマウンティングポジションかなというふうに思っております。
 施設という意味で言えば,こういう部分は先ほどありましたようにライブラリーとショールームということでございますが,プレゼンテーションの仕方と変化が急速でありますので,高いフレキシビリティーといいますか,そういうものを備えた施設が必要だろうということで,長官がおっしゃったように単に箱物ではない,存在意義があって役に立つ施設というものをどう考えていくかというのが,これからの課題ではないかなというふうに思います。
 ただ,1点,今までの21年4月の報告などでもちょっと危惧する点は,自己収入で運営を賄うという記述がございますが,事業内容としての調査研究であるとか,人材育成というふうなところ,あるいは私の担当するといいますか,ちょっと専門である施設管理という意味からも,自己収入だけでは到底できないだろうということで,事業内容の中にもう少し例えば収益性の高い活動を加えるとか,そういうふうにしないと,あるいは委員からありましたように国からの何らかの経常的な支援というものがないと,依然としてつらいのではないかということを危惧いたします。
 以上です。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 それでは,ほかの委員の方々からもご発言はないでしょうか。
 では,石原委員,よろしくお願いします。

○石原委員

 株式会社ポケモンの石原と申します。実はきょう欠席の予定だったんですけれども,というのは,来年の映画のシナリオ打ち合わせでいつも紛糾するものですから,3時間ぐらい,ちょっときょうは無理だなと思ったので,一応,意見書のほうをファクスさせていただいていたんですが,それを後でちょっと読み上げさせていただきます。
 最初,これまでの検討会にも参加させていただいておりまして,もともと私はメディア芸術総合センター,完全に決まった名前ではありませんけれども,意外と反対しておりまして,というのは,メディア芸術という言葉自体が非常にわかりにくくて偉そうな感じがすると。それで,恐らく自分の母親とかおいっ子とかにうまく説明できないというふうなこともあって,もっと写真とか漫画とかアニメとかゲームとかを並べ立てたほうがわかりやすいんじゃないかという話をして,実は反対していた経緯があるんですけれども,それはもう取り下げます。
 といいますのは,これだけマスコミの皆さんが我々がメディアコストを使うことなく,メディア芸術総合センターという名前を日本じゅうで宣伝していただいて,それによってメディア芸術総合センターという中身は何かわからなくても,一応,メディア芸術という名前は恐らく日本でかなりの人が知るということになったと思いますので,恐らくちゃんと宣伝すれば数億円分の媒体費用がかかったものが非常に安くできたんじゃないかと思います。
 あとは同時に,それだけに非常に緊張感といいますか,プレッシャーも感じておりまして,つまり,やっぱり2011年竣工の暁には,2年前に騒がれたメディア芸術綜合センターができましたというふうに,また,メディアに報じていただけると。そのときにまた宣伝になると,それもすばらしいことだと思うんですけれども,逆に言うと,そこで内容がいまいちだと大いにたたかれるというふうな事態というのが今なのではないかなというふうに私は認識しています。
 そうしてみると,これまで検討会である意味,地味に検討していた事態と,今は大きく変わっていて,つまり,これは恐らく文化庁が行うプロジェクトの中で最も世の中の興味関心が最大である,いわゆる顔のようなプロジェクトと言っていいんじゃないかと思います。ですので,ぜひ文化庁の皆さんが,これを一発,よし気合いを入れてやってやろうと,あるいはこれぞ自分のライフワークだと思って積極的に取り組んでいただける方がいるかいないかで,このプロジェクトの成否というのは大きく変わってくるというふうに思います。
 逆に,失敗したらえらいことになるぞと。責任が大きいだろうなと。何か民間に丸投げして責任回避できないかなというふうなイメージでとらえるようなことがあったら,多分,うまくいくものもうまくいかないと思いますし,我々外部がどんなにいろいろ提案したり,頑張ってもうまくいかないなというふうに感じております。
 きょう,こちらに来るに当たって少し勉強しようと思いまして,類型的な施設として余り適切かどうかわからないですけれども,京橋のフィルムセンターとそれから六本木ヒルズの森美術館を見てきました。何で森美術館かといいますと,今,ちょうど「万華鏡の視覚」という展覧会をやっていまして,ちょっと古いライトアートあるいはキネティックアート,あるいはネオンアートと言われた領域のプレゼンテーションがしっかり行われていて,ちょうどメディア芸術祭のときの展示のような,あれもすばらしい展示だと思うんですけれども,ああいう形でちゃんと民間の中で現代美術をしっかりプレゼンテーションしていると,メディア芸術をしっかりわかりやすく展示しようと努力しているということでした。
 フィルムセンターのほうは商業映画以前の歴史とか,あるいはドキュメンタリー映画のおもしろさとか,そういったことをまさに感じることができたんですけれども,一方で,やっぱりもう少し場として活性化するような何らかがないかなというふうなこともちょっと感じました。
 私は毎年,今,開催されています文化庁メディア芸術祭というものを機軸としたカテゴリーの考え方,あるいは展示の仕方,あるいはイベントやシンポジウムの開催,あるいは功労者からの作品の収集や提供を受けるといったものをもっと積極的に行っていくということが軸になっているんじゃないかと思います。
 このたびの予算をむしろもっと大きくメディア芸術祭のほうに振り分けるという考え方ができないんだろうかと思いました。例えば大賞賞金は1,000万とか2,000万にするとか,あるいは大賞受賞者は特別研究員としてある期間,ずっとここで仕事ができるとか,ワークショップを続けられるとか,そういうような使い方ができないかと。一方で,やっぱり箱というものは独立した建造物ではなくて,むしろ既存の同系施設との合体といいますか,合築というほうが僕は賛成です。特にメディア芸術とか現代美術に力を入れている先ほどの森美術館のようなところとの民間機関との協力とかいったものは,継続的かつ効果的な運営が可能になるんじゃないかというふうに思っています。ですので,きょう,施設内容・規模というのは次の協議内容かもしれません。
 そして,資料の予算で見ると,どうしてすべての箱の建物と土地だけですべての数字が埋まってしまうのかなと,むしろ半分ぐらいはさっき言ったような要するに中身を集め,つくり,シンポジウムやワークショップや研究会を運営するような,あるいは優秀なアーチストを育成するような,そういうコストに使ってこそ,メディア芸術総合センターというものができるんじゃないかと思います。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 ほかに,さいとう先生,いかがですか。

○さいとう委員

 去年からずっと審議に加わらせていただいて,私もまさかこんな大騒ぎになると思わなかったので,非常にテレビとかメディアをイライラしながら見ていまして,どうしてちゃんと説明してくれないんだろう,何でこんなでたらめなことが世間に喧伝されているのか,非常に悲しいなというか,そういう思いでは見ていたのですが,でも,1カ月ぐらいたちますと落ち着いてきまして,本当に皆さんがおっしゃったようにかなり宣伝になったというところもありますし,みんなが本腰を入れて恥ずかしくないものをつくるということに心を合わせてくだされば,それでいいのではないかというふうに思っています。
 計画が発表されて私が危惧したことは,今年の末には着工予定というのに最初,非常にびっくりしまして,もっとちゃんと審議しなくてはいけないんじゃないかということをすごく心配していたんですけれども,いろんな多分事情があってこういうことになっているんだと思いますので,むしろこういう短期間ですばらしいものを仕上げるというのは何か日本人の遺伝子の中にすごくあるものであって,漫画の世界なんかでは特にそうなんですけれども,こんな短期間でできるはずがないというのを,毎回,毎回,みんながスタッフと一緒に限界までやってクリアして,また次もやるということを続けていますので,私はアニメにもかかわりましたけれども,アニメのスタッフも物すごい頑張りようで,それで体を壊してしまう方もいっぱいいるんですけれども,それでも非常に水準の高いものを仕上げて,それが世界にアピールしてきたゆえんだと思いますので,何とか短期間であるということもメリットにしていただいて,皆さんで本気を出していただきたいというふうに思っています。
 あと,こういうことをやる場合には,リーダーというのがとても必要だと思いますので,例えば外国なんかだと舞台監督というか,芸術監督みたいな方が必ずいらっしゃって,その方のもとでこういう方針でやりますということで物事を仕上げていきますので,何かそういうようなリーダーになってくださる方がいて,強力に推し進めていただきたいなというふうには今思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 ほかにございませんか。林委員,では,よろしくお願いします。

○林委員

 ぴあ総研の林です。私も検討会で前からずっとかかわらせていただいて,いろんな前向きの議論をしたにもかかわらず,報道とか世間の声からは問題の方ばかり出て来ている。背景には国の予算が箱だけについたということで,何となくまた箱物行政じゃないかみたいな見られ方をされたり,それからせっかくいろんな目的を持っているプロジェクトであるにもかかわらず,ほとんど何のためにつくられるのかというメッセージが伝わらないまま,漫画喫茶みたいな言葉だけが横行したり,それから運営の部分でも民間に委託するという部分が強調される余り,何か箱はつくるけれども後は民間にお任せみたいなぐあいにイメージがいってしまったり,映画というものがフィルムセンターがあることによって連動とは言うものの,映画のポジションというものがあいまいになってしまったり,そういったことが乗じて,いろんな反対あるいは誤解というものが生じたのではないかと思います。
 こういった箱の問題,目的の問題,それから運営論の問題,映画の位置づけの問題,れから走りながら検討していくべきテーマだと思いますし,誤解がないような物事の進め方はきちっと議論すれば,あるいはそういうものがきちっとオープンにされていけば,特に問題はないかと思います。今日から設立準備委員会という形になりましたので,事業内容とか,施設内容・規模ということについて論じたいという文化庁さんからのお話ではありますけれども,とても多岐にわたっているので,ちょっと焦点を絞らせてもらいます。
 私はやはりこのテーマというのは日本という国の今というか,民族というか,日本人あるいは日本という国家が持っている文化遺産である映画,漫画,アニメ,ゲーム,メディアアートといったものが,それこそ50年とか100年後にどのようにきちっと保存され,それが後世に継承されていくかということを考えた施設として,こういう機能が必要だということが,まず私は一番大切だと思っております。
 そういう意味では,アーカイブという機能が重要で,それがあればその他の目的である,そこから日本の文化を海外発信することもできますし,また,外国人の方々が来られたときにそういったものをお見せすることもできますし,また,人材育成という観点からいっても,そういう温故知新的なといいますか,過去のものが新しい才能に受け継がれていくというようなことにもなっていきますし,もちろん鑑賞,閲覧ということに関しても自由にできるようになると思います。
 ただ,今の日本が持っているものを,まだみんな文化遺産というか,資産だと思っていないと思うんですね。現実,漫画やアニメはビジネスとして流通しているわけですから,何となく消費社会の中において楽しまれているものぐらいにしか思われていないところがあると思うんですが,映画で明らかなように,映画の世界では100年という歴史の中で,日本だけでも今フィルムセンターに約6万本,国際アーカイブ連盟全体では200万本もの作品が,放っておけばなくなっていたかもしれないものが,アーカイブという目的を持つセンター機能によって,それがちゃんと資産として維持されて,そして100年後の人が過去の映画を見ることができる。そのことがまさに国や民族というものの持つ,遺産,資産というものが後世に伝えられていくことになるのではないかというぐあいに思うわけです。
 映画はそうやってある部分,進んでいるわけですが,それと同じようにやはり今の漫画やアニメにも早く手を打っていかないと,里中先生のお話にもあるように,そういったものがやっぱり雲散霧消していくようなことにもなりかねないというような危機感から考えていく必要があるのではないかと思います。
 そうやって考えた場合に,アーカイブの機能というものについては実はお金が要ると思うんですね。ところが,なかなか今回の補正予算の117億というのは建物,土地ということになってしまっているので,私はこの予算についてとやかく言う立場ではありませんが,本来であれば,まず最初の目的はアーカイブだともし決めるのであれば,アーカイブをするために,今,日本のアニメ,漫画,メディアアート,ゲームあるいは映画にどれだけの予算が必要なのか,つまり,どれだけの量を集めるためにどれだけの予算が必要なのかということについてまず論じられ,それについての予算がきちっとどこかで取られていくということがないと,まさに箱だけみたいな議論になってしまうのではないかというぐあいに思う部分があります。
 加えて,こういった国の予算117億でメディア芸術センターをつくるにしても,そこから先の運営に関して,本当に人材育成をしていこうとか,あるいはアニメの制作現場の大変さみたいなことに代表されるように環境整備をしていこうとか,いろいろテーマを実現化しようとするときには,やはりそれについての運営予算というのがきちっとバックグラウンドでないと,民間の委託によって本当に賄えるのであればいいんですが,そうでない場合に,だれがそれについて運営の責任を持っていくのか。少なくとも国立というからには,国立というのは国が立てるということなんですが,同時に国が運営するということにもつながるわけで,それに関して今後,どのように運営予算についてのバックグラウンドがきちっと整備されていくのかということを考えていく必要性があるのではないかと思います。
 そのためには運営の部分について,きょう,経済産業省の村上さんがお見えになっていますけれども,日本のコンテンツ産業とかソフトパワー産業という,アニメや漫画,ゲームといったようなカテゴリーは文化遺産であると同時に,日本の今最も力を入れるべき観光産業あるいはコンテンツ産業というものとリンクするわけですから,毎回申し上げていますように,文化庁だけではなくて,経済産業省あるいは観光庁といったようなところの行政の横の連携によって,例えば予算の部分についても,その辺の連携から何か生み出してくるというようなことがあってもいいのではないかなと思ったりもします。
 加えて,きょう安藤先生が映画の代表ということでお休みなので,安藤先生もご意見を出されていますけれども,映画に関しては,「おくりびと」や「つみきのいえ」がアカデミー賞をとったということもフックになっていることから言えるように,日本が誇るすばらしい資産であり,フィルムセンターというのは国の唯一の映画専門機関として存在しています。
 このフィルムセンターと,それから,今回,こうやってメディア芸術総合センターといったときのメディア芸術という定義は,最初にまず,映画なんですよね。つまり,映画,漫画,アニメ,メディアアートというぐあいになっているわけで,別にそれが一番という意味じゃなくて,映画とも連動するとはいうものの,映画をどのようにポジショニングさせていくべきなのかということがやっぱり必要なのではないかと思っています。フィルムセンターについても,私が申し上げていますように独立化の問題も含めて,その位置づけをはっきりさせていく必要性があるのではないかと思います。
 私はアーカイブというものを100年後の日本のために今の文化をどう残すかという観点から予算がとられ,箱ができ,そしてそこにアーカイブされたものをいろんなところに発信する,あるいは見てもらうということになっていくのではないか。そもそも,今,ホワット,「何が」が重要であって,ハウの部分「いかに」というのはまだそこから先の話で,例えば2番のスペースの問題とかもありますけれども,こういうスペースとか見せ方とかは,例えば今の日本でいえばジブリ美術館とか,あるいはキッザニア東京とか,それから北海道の旭山動物園とか,金沢の21世紀美術館とか,つまり見せるだけではなくて,触るとか,体験するとか,参加するとか,動態展示するとか,そういう新しい方法論というのは幾らでも日本人というのはすばらしいのを持っているわけですから,そういったものを駆使することはその後の作業としてやっていけばいいことだとも思います。まず,何をすることが先決で,そこにどのようにお金をかけ,そして,それを形づくっていくのかということをもう少し議論しておく必要性があるのではないかいうぐあいに感じております。
 以上です。

○浜野座長

 ありがとうございました。
 集中と選択が必要だということで,これまでお声が上がっていたのは芸術祭を中心に核としていろんなことをやろうということと,アーカイブをやろうということと,人材育成と,3つが,私の認識が間違っていたらご指摘いただきたいと思うんですが,それはぜひともやったほうがいいだろうというお話があったと思います。
 それでは,中谷さん,お願いします。

○中谷委員

 NHKの解説委員をしております中谷と申します。私も検討委員から引き続き設立準備委員ということで,せっかく立ち上がったこのようなムーブメントですから,ぜひ成功のために努力してまいりたいと思います。努力するに当たって非常に心配,懸念される部分も私の中にありまして,とりあえず一番の問題はスケジュールだと思います。さまざま委員の先生からも各分野における課題などを出されていますけれども,共通課題は当然あるんですが,それぞれの分野で本当に課題というのはばらばらなわけですね。そのばらばらな課題をいろいろこれから少ない時間に詰めていかなければいけない。私は解説委員と同時にデジタルスタジアムというメディア芸術関連の若いクリエーターを育成支援する番組をやっておりまして,年間展示もしていますし,上映会もしていますし,さまざまな活動をしているんですが,そのような小さい活動でさえもとても大変な準備をしていくわけですね。
 準備委員の皆さんのお話を聞いていますと,このまま話し合いを続けますとセンターの中に6つのパートができて,同じ課題を6つのパートがばらばらに抱えて考えていかなければいけないような状態になってしまうんじゃないかという懸念があります。それを統合して一つの問題として展開するためには,相当大変な議論や準備が必要だろうと。それを考えると,このような検討委員会の場ってすごく大事な場だと思うんですけれども,順番に発言していっていくようでは,これから先の成功につなげる準備はなかなか難しいのかなというふうに私は考えていまして,ぜひ我々準備委員が当然これから大変だろうなというふうには思うんですが,さらにどうやって準備を進めていくのかという方法を考えていかないと,とてもじゃないですけれども,10月の企画立案採決・決定という状況に,時間切れで突入してしまうのかもしれないですけれども,それでは世間が懸念しているような問題を解決することはできないんじゃないかというふうに思っていまして,ぜひこれからどういうふうに検討準備していくのかということを考えていきたいなというふうに思っています。

○浜野座長

 では,古川先生。

○古川委員

 古川です。多分,私はこの中で相当一番年が上のほうなんだと思うんですが,周りにそれこそ手塚さん以前の漫画家から,昔の本当に新聞とかのメディアの漫画家だった世代の人たちから,それから今,学校で少し教えたりしているものですから,アニメーションを一人でつくっている若い学生までいろんな世代がいるんですが,こんなことがあってから,いろんな人たちが,お前たちは何をやっているんだみたいに,随分,みんながいて何を検討しているんだという話をよく聞きまして,そうじゃないと,せっかく今僕らが考えていることがちゃんと世の中に出ていっていないんだということをとてもみんなに説明しながら,ここまでやってきたんですが,やっぱり本当に国や文化,アニメーションとか漫画とかメディアアートとかを文化としてちゃんと支援するつもりがあるなら,きちんと時間をかけてさっきから皆さんがおっしゃっているように,でき上がった後のことをどうやって支援していただくのかというところを,ちゃんともうちょっと計画が表に出てきてほしいかなという気がやっぱりしています。
 何かきっと箱物とよく言われているようなことにならないために,人材育成だったり,これから運営のことをやっぱりきちんとした形で準備委員会もやっていかなければいけないんだと思いますし,今,中谷委員がおっしゃったように,こうやって一人ずつしゃべっていて,時間が来て次の回とやっていても,多分,何も先にいかないような気がしますし,いろんな人の中で,僕らも余り大勢の中でしゃべるのは苦手ですから,例えばもうちょっと自分たちに近いアニメーションならアニメーションで少しやってみるとか,何かやりながら斬新なアイデアを出していく方向にいかないと,何か時間が来て,はい,終わりました,次,集まりましたみたいなことが繰り返されるんじゃないかなという危惧はしております。
 アニメーションに関してちょっと先ほどの補足をさせてもらいますと,僕らはまた別に動画協会とアニメーターの方の会と別にJAA,日本アニメーション協会というのをずっとやっておりまして,基本的には個人的なアニメーション作家の団体なんですが,手塚さんの時代から1970年代からずっとやっていまして,現在,160人ぐらいやっぱり会員がいまして,例えば大学でアニメーションをつくったり,その後,大学院でつくって作品を発表したり,アニメーターとして仕事しながら自分の作品もつくっている,「つみきのいえ」なんかもどちらかというとそういうところから出てきた作品なんですが,そういうアニメーションの作家群というのがすごくいまして,本当にみんなどうやって食っているかといいますと,最近でしたらミュージックビデオであるとか,NHKの子ども番組のちょっとしたアニメーションとかみんなやりながら,でも,結構やっぱり作家性が強いというか,個人が多いものですから,それなりにみんな一人ずつ生活しながら食っているんですけれども,その人たちこそ本当に集まる場所が必要だし,もうちょっとちゃんと支援できないかなということもよく思っていますし,例えば自分のブログにも書いたんですけれども,もし1人300万でも助成してあげて年間10本,短編がそういう人たちの中から集まってくるだけで,随分,日本のアニメーション事情はもっともっと変わると思いますし,何かそんなこともずっと考えております。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。  先生がおっしゃるとおり,中谷さんもおっしゃったとおり,作業の手順のやり方についても言いっ放しじゃなくて,考えていることが生産的にたまっていくこともちょっと考えつつやりたいと思います。
 それで,私が最近気になったことがあります。毎年発表されているBBCとメリーランド大学が行っている国のプレゼンスがあります。いつも日本の国の影響力が外に出ていくことは,20数カ国で好意的に受け取られ,1番でした。しかし今年初めて日本人に対してもインタビュー調査をやったのですが順位が4番か5番に下がったんです。それはなぜかというと,日本人が自国の影響力が出ていくことをネガティブに考えている日本人が多いからですね。他の国で自国の影響力が外へ出ていくことを80%ぐらいの方が好ましいと思っているのに,日本人というのは自国の影響力が他国に及ぶことをネガティブに考える人が4割で,ポジティブに考える人が4割で,20何カ国の平均よりも低いんですよね。
 その結果は日本人は日本のプレゼンスなんてないほうがいいと思っている人が多いという結果で,情報発信などしない方がいいということになります。実は影響力というのに文化力という認識が欠けているから,そういう結果になったのではないかと思っています。文化への配慮が欠けていたから。
 ですから,水口さんがおっしゃったように海外に出ると,全然国のプレゼンスが国内にいるのと海外に行ったのと状況が違う。それは本当,黒沢監督がおっしゃったとおり,日本国内ではクリエーターは扱われ方がよくないと。そういうことをずっとおっしゃっているわけですが,そういったところでやっぱり一つの柱になるんじゃないかというふうに私はすごく思います。
 それと,もう一つはやっぱりここで扱っているのは商品でもあり,芸術でもあり,表現でもあるので,やはりそういったものでビジネスにしている人は文化財とするということは公共財にすることなので,やっぱりちょっと利害が対立するところがあるんですね。経済的価値だけで勝負したいという,こういうところの予算が要るということは公共財にしてしまうので,とられるという,国民に共通の財にするわけですから,そうじゃない形を,やっぱり新しい形をここで示してビジネスができるとか,新しい文化の産業化のシンボルと私個人ではしたいと思うんです。芸術の商業化というのは,森山さんがおっしゃったように,やっぱり文化と経済が一体となって新しいモデルを示すセンターにしたいという強い願いがあって,それで,何かそういう形で展開をしたいと希望しております。
 それで,経済産業省の村上さんがおいでになっているので,一言,経済面からこういったセンターのあり方についてご意見,個人的な意見でも結構ですので,お聞かせ願いないでしょうか。

○村上文化情報関連産業課長

 きょうは勉強させていただきに参りました。皆さんの話を聞いていると,やっぱり世間の単純な箱物批判のご意見と現代的アート,それをどう評価するかは別にして,それを核にしたある種の広い意味での国家としてのブランド戦略というものの間に多分真実があって,そこのどこに落ち着くのかということについて,こういう形で検討ができるというのは,もっとみんな前向きにとらえたらいいじゃないかと,こういうことではほぼ一致をしているのかなという印象を受けました。
 私ども自身の予算品目ではないので,できることに限界がある面がありますけれども,その指針については我々も賛成ですし,産業という面から見てもコンテンツ産業にかかわらず,むしろものづくり産業やほかのサービス業でも,僕はよく研究開発に100億を使う余裕があるのだったら,今や2億でも3億でもいいから文化力に投資をしてもらって,自分の企業ブランドや企業をどう見せるかというところにもっと日本の企業も金を使うべきじゃないかと。広告費を切ってばかりいないでちょっとは考えてよと,こういう議論をよくしていますので,そういった流れともどこかで符合するような議論が出ればおもしろいんじゃないかと思っています。
 ちょっと具体的な提案をできる立場にきょうはいないのであれですけれども,そういうような流れの中でご協力できることは経産省としてもご協力をしたいということで,今回,お呼びいただいています。
 以上です。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 それで,ちょっと時間があれなので,事業内容だけじゃなくて全般的なお話になってしまいましたが,でも,植松先生の専門のところにいかないまま終わるとまずいので,下のほうで先生のちょっとご意見を,先ほどのご意見だけじゃなくて何か。
 高塩次長,どうぞ。

○高塩文化庁次長

 事務方でございますけれども,確かに先生方からご懸念が出ている今後の運営,それから今回の予算の話がございましたけれども,資料5というのは先ほど清水課長が説明しましたけれども,ごらんいただきたいんですけれども,確かに今言われていますように補正予算の内容を示しており,これは施設整備補助金117億円でございますが,補正予算というのは21年度の第一次補正で,これは一回限りのものなのでございます。従来,こういった施設をつくる際には年次計画で毎年補正予算で土地・建物の実施設計の費用をとって,例えば六本木の国立美術館というのは350億かかっておりますけれども,調査研究から数えて約20年かかってあの施設をつくってきたわけです。
 今回,経費対策,成長力戦略で施設整備費補助金117億円という,いわゆる施設関係の予算を一気にとったということでございます。
 それで,ご懸念の確かに今回の報告書にもございますように,今後の運営については2011年度,平成23年度完成を目指すということですけれども,運営費は実際に今,それ以降なわけでございます。当然,準備のお金というのはございますけれども,そのために資料5の下に文化庁の21年度本予算の日本映画・映像振興プラン,映画がまだ中心でございますけれども,5番にございますようにメディア芸術振興プログラム5億4,000万というのがございます。
 この予算は,来年度予算に向けて私どもは大幅に拡充をしたいというふうに思っておりまして,具体的に今回の補正予算のときのある意味では条件になっておりますけれども,基幹的な経費,いわゆる管理運営の維持の基本的な経費についてはいわゆる自己収入,そこにお任せした民間の団体で賄いますけれども,本日,お話が出ておりますようないわゆる人材育成のための経費,それから,当然,基幹的な恐らく開催になりますメディア芸術祭を含む国との共催による大きな展示のために経費,また,当然に調査研究のためのさまざまなそれぞれの分野の経費,それからアーカイブのお話も出ましたけれども,寄贈なり,寄託という面も多いと思いますけれども,そういった経費については文化庁としても当然,そういう形で2011年度以降,文化庁本予算を今年度からも充実したいと思っておりますけれども,しっかりととって,このセンターのほうにわかりやすく言いますと委託をしていきたいと,こういうふうに考えておりまして,全く国が運営に1銭も出さないと,そういうつもりではなくて,事業主の一つとして考えていくということは当然に考えているわけでございまして,国会のご答弁でも原則として基幹的な維持管理にかかる経費についてはいわゆる自己収入,これは入場料,それから,ここにございますように施設のブースを貸す,これは恒常的に貸す部分もあるかもしれませんし,これからのご議論でございますけれども,当然,企画展示場というものをつくりますと,センターだけの主催ではなくていわゆるスペースを貸すということもございますので,そこには当然収入も出る。
 また,各企業からも協賛金や寄附金なども一部期待をできれば,そういうものをしたいということでございまして,運営についてもどういった施設をつくっていくかということと関連しますけれども,一切,箱といいますか,予算をつくって,何もしないという面では全然ございませんで,その辺はまた来年度以降といいますか,2011年度のそこから要る予算でございますので,まだ約束はできないわけですけれども,メディア芸術関係の予算については2011年度に向けて2010年度予算がこれから8月末に要求しますけれども,私どもはそこをぜひ充実して要求をしたいというふうに考えておりますので,一言,申し添えたいと思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 予算のご説明をいただきましたが,私の個人的な意見ですけれども,できるだけこういうのがなくても自活できるようなやっぱりキャラクターデザインとか,アメリカ映画協会が大学院大学を持って世界じゅうから人を集めて,施設に持っていますからね,専門家の先生方が教えて,それでかなりの教育費を,実は利潤を上げているんですよね。
 こういう設備でいろんな施設設備があれば,先ほど山口さんがおっしゃったように,日本でアニメーションを学びたい子っていっぱいいるわけだから,それで専門家の方もいらっしゃるからね,海外の方を受け入れて教育機関として,それは制度的にどうなのかよくわかりませんが,いろんなやり方があるので,それは管理運営でやっていきたいと思いますが,それと個別のことを言っていると時間がないので,先ほど古川先生がおっしゃったように,そういうアイデアを言いっ放しじゃなくて,どこか何か,本当,書いていただくのも恐縮なんですが,やっぱりどこかで収集して整理してやるのをちょっと相談して進めたいと思うんですけれども,先生方にご依頼をして,それをご関係の機関で意見を集約していただいて上げていただいて,入れ子にしてざっとリストアップして,それでたたき台をまずつくってやらないと,その場,その場で思いついて言うのはちょっともったいないと思うので,それを私のほうで事務局のほうと相談して,申しわけないんですが,お願いを多分することになるのでよろしくお願いします。
 あと,五,六分ですけれども,言い足りないとか,つけ加えたいことがあれば,ぜひ,今日は全般的なことということでご意見はないでしょうか。中谷委員,どうぞ。

○中谷委員

 事業内容について,先ほど古川委員のほうから出た支援という言葉なんですけれども,4番目に人材育成・普及啓発というのがありますが,育成と支援とは全然違う意味なんですね。育成は学校でできますし,昨今,メディア芸術系の学校・学部がふえていますのでいいんですけれども,支援センターといいますか,支援するシステムをこういう中に入れていかないと,いろんな問題に対応していかないんじゃないかというふうに思いまして,ぜひ項目として人材育成・支援を入れていただけないかというふうに思います。

○浜野座長

 石原さんもご指摘になっていた,例えば東京芸術大学は学生の作品を買い上げますよね。国立大学で何でああいうことができるんですかね。だから,メディア芸術祭で賞をとった作品を買い上げて,個人的な意見ですよ,上げたら,何で芸大でできるんだろうなと思って,何かちょっとそういうのを調べていただけないですかね。何かいろいろ収集保存というのでみんな供出しろというのは,若い作家にはかわいそうだと思うので,必要経費ぐらいはね,出して。
 ほかに何かございますか。
 森山さん,どうぞ。

○森山委員

 先ほどの予算のお話で,オープン後もメンテナンス予算というか,運営資金がゼロではない,できるだけのことはすると言っていただいたので非常に心強く聞いたんですけれども,といいますのも,今までの20世紀型の美術館がたくさんできてきている中では,非常に自主財源を確保するというのが難しかったわけです。補助金がゼロではないというのもさることながら,各項目について次回以降,どのような自主財源を得て展開していって,こういう新しい運営の仕方でこの領域独自にできることがお金につながる,そして教育とか支援とか,開発につながるというようなことで提案していけるかと思うんですが,一つの提案として事業内容の3番に調査研究と書いてあるんですけれども,そこに「開発」という言葉が加えられないかというふうに思います。
 展示手法ついては,非常にインタラクティブ技術とか,ユビキタス技術とか,日本が非常に得意なところです。例えば漫画の本の展示をどのように展示するか,やっぱりネット上に漫画のページが出ているだけでは本当に漫画の作品を楽しんだこと,ああいう体験や追体験ができないので,サイトスペシフィックな展示を見にやってくるというのが必要なんですけれども,資料を保存しつつ,うまくきちっとした展示をするにはどうしたらいいか。そういうことは工学系の人々が今,実は力を注いで開発していたりします。
 先ほど省庁を超えて連携することも可能だというふうな方向のお話をいただいたので,ぜひこの施設の設立については「クラウドソーシング」という手法がありますけれども,いろんな場所の連携だけではなくて,技術の連携や開発したものをここで売っていいんだというようなスキームの構造改革といいますか,そういうことも認めていただけたらと思いますので,3番のところに「開発」というのもつけ加えていただきたいということと,税制なんかももし検討いただけるのであれば,既存の施設を利用してサテライト施設をつくるとか,既存のコレクションを温故知新的なものを展開していくために,寄贈していただいた場合は税制を優遇するとか,育成とか支援につながりますけれども,アニメーションやこの領域の制作をしている人たちの税制を考えるとかというようなことが可能になるとと思います。そういったことも含めた総合的な,調査研究だけではなくて,開発,お金につながるような支援につながる部分の機能も検討いただけたらと思います。

○浜野座長

 やはり各委員に書いていただいたほうがいいですね,メモでもね。そうしましょう。やっぱり今,ここでわっと出してもあれなんで,ちょっと相談して,森山さん,一番よく書いてくださいね,ご経験が多いので。
 それで,オブザーバーの方,お三人の方,何かありますか。時間がもうほとんどないんですけれども,手短にあれば一言ずつでも何か。

○阿部氏

 CG-ARTS協会の阿部と申します。今回,傍聴席にいるマスコミの皆さんに申し上げたいのですが,冒頭にご覧いただいた,メディア芸術祭の受賞作品展の映像は,決してアニメの展覧会でもないし,漫画の展覧会でもないということがご理解いただけたのではないでしょうか。今回,メディア芸術センターというのはメディア芸術祭を軸にしながら考えていく部分もあると思います。それで,アニメやマンガの殿堂としての要素はあるかもしれないけれども,決してアニメの殿堂だけではないということは今回,ごらんいただいてご理解いただけたでしょうか。
 それと,今回,参考資料2のほうで海外のメディア芸術関連ミュージアムという資料を入れております。ちょっとこの資料をつくるのをお手伝いしたんですけれども,アメリカ,イギリス,イタリア,世界中のメディア芸術関連のセンターを一応調べて入れました。世界でしっかり調べますと,これだけ多くのセンターがあります。メディアアートの領域があったりとか,アニメ,漫画の領域もあったり,いろいろです。土佐さんがおっしゃられたように,タイプとしてはアーカイブ型とショールーム型の2つに分類できると思います。
 いずれにせよ,世界中にこれだけ存在し得るということは,多分,それぞれの国で重要だと思っているのでしょう。それは経済的価値を生み出すという部分もありますし,あと,その国が国であるためには,やはり自分たちの文化をきっちりと残す,発信するということをやっていかなければいけないということで,多分,世界中でこういうふうな動きがあるのだと思います。ですので,日本においてもこのメディア芸術という領域においてしっかりと議論をし,いいものをつくっていくことが必要ではないかなと思います。
 以上です。

○浜野座長

 岡島さん。

○岡島氏

 林委員がおっしゃったとおり,この事業内容の中で最も大切なものは何かということを長期的に考えれば,恐らく収集・保存であろうと思います。しかし,収集・保存は本当に難しいものだということも申し上げたいと思います。フィルムセンターの39年間の歴史の中で私どもが一番苦労してきたのは,世界で最もたくさん映画がつくられている国で,世界で最も少ない職員数のフィルムアーカイブが運営されてきたという,そういう歴史の事実がございまして,この苦闘と申しますか,大変さというものが映画以外の各分野について,今後,同じように大きく我々の肩におりてくるのだとすると,そこのところを十分に議論し,準備する必要があるのではないかと思っております。
 お寺でなぜ長くものが残ったかといえば,そこには恒常的にお金が集まるシステムがあって,なおかつ,それを見せるについてはお寺の側に選択権がある。つまりご開帳にせよ,何にせよ,見せる権利,イニシアチブがお寺側にある。そしてお寺には集金をするシステムがある。さらには,英語でものを大切にすることをreligious  careと言いますけれども,まさに宗教的な尊敬,敬意があってものが保存されているということでございまして,長期的に長く保存するためには,そういう日本がお寺なんかで長く文化財を保存してきたのと同じようなことを考えておく必要があるのではないか。そうではないと,デジタルファイルは10年ぐらいもつかもしれませんけれども,もとになったものは残らないというアメリカなどで盛んに心配されるようになってきたデジタルファイルを長期保存することの困難さ,いわゆる「デジタルジレンマ」と呼ばれるようなことが今後起きてくるのではないか。そこのところを大変心配しております。

○浜野座長

 では,甲野さん。

○甲野氏

 独立行政法人国立美術館の立場で,オブザーバーとして加わらせていただいているんですけれども,このメディア芸術総合センターについては日本のメディア芸術の振興だけではなくて,ソフトパワーというような言葉もありましたけれども,外交,それから産業振興,観光という形で,国政全般にわたって大変意義のあるものというふうに認識をしておりまして,そのような施設の建設から設置,それを私どもが引き受けさせていただくというのは大変光栄なことであるというふうに思っております。文化庁ともよくこれから準備・連携をしながら,一生懸命進めていきたいというふうに思っているところであります。
 しかしながら,やはり現実に引き受ける立場として考えますと,やっぱり心配なこともあるわけでございまして,やはり何度も議論でもありましたけれども,管理運営についてでございます。基本的なところを自己収入で賄うということでございますけれども,やはりそこのところがきちんとした手当てがなければ,管理自体を外部の団体に委託するというふうにありますけれども,委託しているという団体も,どこも手を挙げなくなるというようなことにもなってしまいかねませんし,十分でなければせっかくやろうとしていることもできないというような状況になるかと思います。
 文化庁のほうでも先ほどご説明をしていただきましたけれども,さまざまなことをお考えでいることは大変心強く思う次第でございますし,また,4月の報告書の中には,ほかにも刊行物や関連商品の販売,施設も貸し出し,さまざまな点,企業の協賛ということも,うたわれておりますけれども,その運営のシステムについて文化庁のほうでよく検討していただいて,何とかうまく回るような形で計画を立てていただければ,大変ありがたいと思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 時間がちょっと超過してしまいましたが,先ほど何回か私のほうから提案させていただいたメモについては,事務局と調整しますが,各委員に提案を出していただき,それ整理をして,たたき台をもとに議論したいと思いますので,その場合,ご依頼がいったときはよろしくお願いいたします。
 それでは,本日の討議はこれにて終了したいと思いますが,今後の日程につきまして事務局からご説明をお願いいたします。

○清水芸術文化課長



 〈配布資料の説明〉

○浜野座長

 それでは,これにて閉会とさせていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。

17:03 閉会

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