国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第5回)
議事録

1. 日時

平成21年8月6日(木) 13:00~15:00

2. 場所

文部科学省3F1 特別会議室(3階)

3.議題

  1. (1)基本計画に盛り込むべき事項について
  2. (2)その他

4. 出席者

(委員)

植松委員,さいとう委員,里中委員,土佐委員,中谷委員,布川委員,浜野委員,林委員,古川委員,水口委員

(オブザーバー)

阿部氏,石川氏,岡島氏,甲野氏

(事務局)

玉井文化庁長官,合田文化庁次長,戸渡長官官房審議官,清木文化部長, 清水芸術文化課長, 外務省文化交流課, 経済産業省文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課), 観光庁国際交流推進課

(欠席委員)

安藤委員,石原委員,神村委員,森山委員

13:00 開会

○浜野座長

 ただいまから国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第5回)を開催いたします。
 本日はご多忙のところご出席いただきましてまことにありがとうございます。
 なお,カメラの頭撮りは配付資料の確認までとさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 会議に先立ちまして,事務局から配付資料の確認,説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

○清水芸術文化課長



 〈配付資料の確認・説明〉

 それでは,カメラの方はここまでということでよろしくお願いしたいと思います。

○浜野座長

 前回は資料2の「基本計画策定に向けて」を検討いただきまして,その後,委員の意見を受けまして,一部修正し,7月24日に事務局より報道発表したところであります。前回の設立準備委員会以降,一部の委員の方々にもご協力いただきまして,基本計画策定に向けて検討を行いました。この準備委員会では,基本計画を策定することが目的ですので,各委員の皆様方のご意見,お知恵を拝借しながらつくってまいりたいと考えております。
 それでは,資料3の「基本計画に盛り込むべきこと」を基に,時間を区切りながら,前半はセンターの意義,趣旨,目的,事業内容などについて時間をとりまして,後半は施設内容,規模,管理運営などについて議論したいと思います。特にワーキンググループに参加されなかった先生,ぜひ忌憚のないご意見をいただきたいと思います。
 では,趣旨,目的の部分から議論を進めていきたいと思いますが,きょう欠席されております森山委員から,「基本計画に盛り込むべき事項(案)等について」というメモが出ておりまして,1番目はご欠席の理由を書かれているんですが,(1)で指導要領とか海外の動きに連動したような内容の書きぶりにしたらどうかということで,特に○の部分を見ていただきますと,資料3の趣旨,目的の※印のところが,森山委員のご意見を基にメディアアートについてまだ理解が十分ではないので,ここに定義を入れたらいいのではないかということで,森山委員のご意見を基に追加した文章があります。
 さらに,森山委員はそれにちょっと修正が加わっていて,「主に複製芸術時代以降の」とか,映画の後に,この委員会の前の委員会ではかなり突っ込んで議論した写真の問題とか,先端技術を使った領域ですね,上に書かれた「e-teck」といった,そういうものも盛り込んでほしいというご意見がございました。
 これは中谷委員もご意見があると思うので,お聞きしますが,1つだけ,私も意見があります。ファインアートとしてのメディアアートやアニメーションというのと,エンターテインメントとしてのアニメ,マンガ,ゲームと分けていますが,江戸時代,浮世絵というのは多分エンターテインメントだったわけだけれども,今はみんな芸術といいます。ですから,評価軸というのは,あまり入れないほうがいいんじゃないかと思います。
 ファインアートとエンターテインメントに分けて書くというのは,私は違和感があります。もうちょっと違う書き方のほうがいのではないかというような気がします。アニメーションだってアートアニメーションというのがあって,ファインアートだという方もおられる。その点も含めて,中谷さんのご専門なので,ご意見をお伺いして……。

○中谷委員

 基本的には,浜野先生おっしゃるような感じだと思うんですが,私は提案のところで一度書かせていただいたんですけど,余りにもメディアアートとメディア芸術が海外的な視点から見ても紛らわしい部分がありまして。メディア芸術というのは日本独自な領域というふうに定義しますと,「日本」を前につけて「日本メディア芸術」という分野にしていったほうが,より海外的な視点から見てもわかりやすいのではないかというふうに思った次第なんですが。

○浜野座長

 具体的にはどの文章かご指摘いただけます?

○中谷委員

 「メディア芸術とは」という,メディア芸術ありきでまずきてますよね。ですから,この「メディア芸術」という言葉の前に「日本」をつけて「日本メディア芸術」とすれば,より日本の独自性が出ていながら,なおかつ,メディアアートとの差異が図れるのではないかという考え方で提案をさせていただいたわけです。

○浜野座長

 よくわかります。メディアアートは国際的な概念ですからね。じゃ,国際的なものですが,ここでもカバーしてという書きぶりでもいいわけですか。

○中谷委員

 そうですね。

○浜野座長

 ファインアートとエンターテインメントが分かれる点についてはいかがですか。

○中谷委員

 そうですね,ここは難しい問題なんですけど,ここで定義できるものなのかなという気はするんですけど。
 どうですかね,土佐さん。

○土佐委員

 海外の人を混乱させない点では分けたほうが,ファインアートの歴史というのがあって,その中から出てきたメディアアートもあるので混乱はしないと僕は思うんですが。ただそれは過去における芸術の位置づけであって,これから日本の中でこういうメディア芸術,メディアアート,メディアアートというのは進化するものなので,それがエンターテインメントも含んでいく,これから未来に向かってそうなっていくというのであればメディア,一緒くたにして「メディアアーツ」と言い切ってこれから進むというのはあると思います。海外の人は多分今現在は混乱すると思います。

○浜野座長

 いかがですか。

○古川座長代理

 アニメーションでいいますと,特に最近「アートアニメーション」とかいいますが,その「アートアニメーション」という言葉はそんなに外国にある言葉ではなくて,むしろ日本独特の言い方で,アニメーションは,「アニメーション」という言葉があって,中に日本の勢いのあるアニメーションをいうときに,「ジャパンアニメーション」と言ってみたり「アニメ」と言ってみたり。それでアニメーションとなっていれば全体は含まれている
と思うんですけどもね。だから,これはきっと森山さんはこうしたほうがわかりやすいかなと思って,言葉を選ばれたのかなと思うんですが。

○浜野座長

 アニメーションを実際につくっていらっしゃる古川先生からして,こういう区分でも違和感ないですか。エンターテインメント性について。

○古川座長代理

 そうですね。まあ確かにちょっと。わかりやすいのかもしれないけども……。

○阿部氏

 よろしいでしょうか。

○浜野座長

 どうぞ。

○阿部氏

 ここで「エンターテインメント性も」というふうに,「も」をつけていらっしゃって,多分,森山さんの意図としては,アート的な側面もあるけれども,エンターテインメント性もという,付加されている意味に私はとったんですけれども。

○浜野座長

 土佐さんのメディアアートはエンターテインメント性がないのかというとおかしい。私は評価の基準が入ってしまうような文章はこういうのに不向きであると思いますが。

○さいとう委員

 すみません,ちょっと初歩的な質問で申しわけないんですけれども,ファインアートというのはそもそもどういう定義なのか,私,よくわからないので,どなたか説明していただきたいんですけれども。

○浜野座長

 そういうこともあるので抜いといたほうがいいんじゃないかってことも……。
 でも,参考までに土佐さんお願いします……。

○土佐委員

 いわゆる現代美術ですね。20世紀に新しく登場してきた社会のシステムとか,それから階級,市民層に支持されて出てきた芸術の中で出てきた現代美術という領域の中で,特にメディアが,ここで言っているのは,その中でもプラス新しいテクノロジー,20世紀というのは新しいテクノロジーがどんどん出てきたので,それをモチーフとして,技術として使う芸術というのが出てきていて,それが脈々とメディアアートにつながっているんですね。海外だとその視点というのはすごく明確にあるんです。
 欧米だとそういう芸術の視点というのはあるんですが,日本はそれが渾然一体となって,明和電機もそうですけれども,人を楽しませるエンターテインメントの部分と芸術が混ざり合ってしまって,ファインアートのところが,なかなか切り分けができないんですか,明和電機が海外に行ったときには,必ず「おまえはエンターテインメントなのかアートなのか」と聞かれるんですよ。そういうふうに社会性とか批判性も含んだアートの分野なので,余りにもおもしろくやっていると,「何なんだ」と言われることがあって。ただ,その軸がだんだん変わってきているというのは確かで,おもしろいメディアアートとか,おもしろいファインアートもあっていいんじゃないかというのがあって,日本発でそういう流れもきているので,これからそれがどうなるかというのはわからないです。
 だから,その中間地点にあるのでどっちつかずではあるんですが,一つ明確にあるのは,ファインアートとエンターテインメントとしてのメディア芸術は社会が全く違うということなんですね。だから,文化庁メディア芸術祭でいつも思うのは,やっぱりそこのマーケットがすごく違って,お金のもうかり方が,メディアアートはそんなにもうかっていないけど,アニメ,マンガ,ゲームはすごくもうかっているという,市場が違うのも一つあるのかなとも思いました。

○浜野座長

 中谷委員と土佐委員の意見を組み込んで,欧米ではファインアートとエンターテインメントを分けていますが,そういう了解で重なりあったところが得意であるということを短い文章にしたらどうですかね。そしたら日本の特徴も出て,メディア芸術がこういうのをカバーしているという言い方に書き直してやると,それは日本独自であると,エンターテインメントもファインアートもどちらの境界もダブって共存しているというのは珍しいし。

○土佐委員

 それは明確に提言しておいたほうがいいですね。

○浜野座長

 そうしましょう。むしろそこがおもしろいんだから,日本は。
 ちょっと今は文章が浮かばないけれども,そういう概念で中谷さん,どうですか。

○中谷委員

 多分今やらないとこれは絶対できないと思いますから,これを好機としてやられることがいいですね。

○浜野座長

 じゃ,森山さんのこの文章は,先ほどの私がいろいろと言いましたけれども,それを短くまとめて書き直すということにしましょう。もちろん森山委員の了解を得るようにします。
 もう1つ,センターの名称として「ブランドとして」という,これを書き込んでくださいということでしたが,これは関連の意見もあると思いますので,一緒に議論をしましょう。
 ワーキンググループには参加されなかった林委員から自由にご指摘とかいただけますでしょうか。

○林委員

 はい。ワーキングの皆様,ご苦労さまでした。非常にうまく整理していただいて。私はそのまとめのときにも少しご意見を出させていただいたんですが,今の定義のところですね。1ページの「メディアアートとは」というところの話なんですが,その上に,「メディア芸術とは,メディアアート,アニメーション,マンガ,ゲーム,映画等を包含する芸術表現である」という定義が書かれています。一方,資料2の「基本計画の策定に向けて」というペラ1枚の資料にも同じように,1番の最初に「メディア芸術とは」という定義が書かれているんですが,ここでは「「メディア芸術」とは,映画,マンガ,アニメ,ゲーム,メディアアート等を包含する,我が国独自の芸術表現である」ということで,表現が違っているわけですね。
 恐らくこれは勝手に私が推定しますに,この間割とアニメとかマンガばかりが前面に出てきているので,少しメディアアートとかいわゆる芸術性の高いほうの,あるいは,ファインアートと呼ばれるようなものを前に持ってくることによって,全体のバランスを図るみたいなことも考慮されているのかなと思ったりするんですけれども,ただメディア芸術とは何かということをこの間ずっと言ってきている中では,この「基本計画策定に向けて」のほうにあります「映画,マンガ,アニメ,ゲーム,メディアアート等を包含する芸術表現である」というぐあいに言ってきていたような気がするので,この順番というのは大したことではありませんけれども,どちらかに統一して表現されたほうがいいのではないかなというぐあいに思います。
 私はずっと日本のメディア芸術というのは映画,マンガ,アニメというぐあいに頭の中に刷り込まれていたものですから,やっぱり映画が最初にくるのが自然なのではないかなと。国立メディア芸術センターが,映画に関してはあくまでもフィルムセンターとの連携ということであるということはわかってはいますが,ここでは「メディア芸術」という定義のことを言っているので,その定義で言えば統一しておいたほうがいいのではないかなと。
 それから,今,浜野先生おっしゃった話も,「基本計画の策定に向けて」の中では「我が国独自の」という言葉が入っているんですね。ここでいわばさっきの中谷さんの言われるような「日本メディア芸術ではありませんが」ということの表現にもつながるわけなので,この「我が国独自の」というところは「日本の」と言い換えてもいいんですけれども,はずさないほうがいいのではと思います。
 それから,きょう初めて拝見しました今の森山さんのところのまとめなんですが,この※印のところは,最初のセンテンスはメディアアートの説明をしていると思うんです。「メディアアートとは,メディアを用いて双方向性,参加体験性を特徴として表現される芸術表現である」ということが,メディアアートとは何かということがわかりづらいので説明を加えられたんだと思うんですが。
 その下のさっきから議論になっているファインアートとエンターテインメントの話ですね,これはメディア芸術の定義を言っているんじゃないかと見受けられるんですね。というのは,ファインアートとしての何々とエンターテインメント性を有する何々を含めて総合芸術としてのメディア芸術というんだということで,またここでそのメディア芸術の定義が繰り返されているようにも思えるので,そこの部分に関しては,重複して,「メディア芸術とは」ということが語られているような気がするので,さっき浜野先生がおっしゃったように1つにまとめてうまく表現するというぐあいに持っていかれてはどうかなと。
 それから,これもワーキングのほうにご意見申し上げたんですが,「基本計画に向けて」の中ではなかなか表現しづらい部分だろうとは思うんですが,ページでいきますと。そうか,浜野さん,管理とか運営の部分は後半でしたですかね?

○浜野座長

 そうです。

○林委員

 前半の部分だけであれば,申し上げたい意見はそれだけです。また後半の部分は後ほどということで。

○浜野座長

 メディア芸術の定義のところで,その順番について大いに議論したのですが,1点,資料2と資料3で明確に違うのは,「アニメ」と言わないで「アニメーション」にしようということになりました。アニメというと日本の商用アニメーションを指すので,それだけではなくて,芸術的なアニメーションとかも含めるのでということで。
 それともう1つは,並び順をメディア芸術祭の準拠しようということで,最初,アート部門というのがあるので,それにしようかということでやったりして,苦心の策なんが。
 林委員は,映画の後,写真を入れるのはどうですかね。

○林委員

 写真に関しては,森山さんのご指摘もあるように,「写真あるいは先端技術を用いた新領域」というのも,メディア芸術の定義としては入れておくべきなんじゃないかなと。ただ,それをメディア芸術総合センターがどこまで写真とかを扱うかはこれまた別途の話だと思いますけれども,定義としては含まれているべきだとは感じます。

○浜野座長

 はい。それで,中谷委員もよく言われた「技術を使った表現」ということで,先端技術を使った新領域という,そういう表現でいいんですかね。もうちょっとカッコいい言い方,カッコいいというか何か……。

○浜野座長

 はい。それで,中谷委員も指摘されている「技術を使った表現」ということで,先端技術を使った新領域という表現でいいのでしょうか。

○浜野座長

 ああ,そうですか。じゃ,一応この映画の後に写真と,森山委員が使われた「先端技術を用いた新領域」というのを加えて定義としようということと,※の定義については文章を再考する必要があるということがありました。布川さんは1回は出ていただいて,ご意見いかがでしょうか。

○布川委員

 そうですね,最近の現象とすれば結構過去の漫画家さんの方々が美術館で個展をやったりとか,そういう面ではさっき浜野先生がおっしゃったように,浮世絵が当時芸術性として高かったのだろうかと言われれば,それは恐らく娯楽の一環として浮世絵が広まっていって,それが後々芸術性を高めていったというところのランクまでいったんでしょうけれども,我々ずっとエンターテインメントの仕事をしていますと,芸術というところの壁というのはどこまでの領域が入ったら芸術と呼べるんだろうとかというところの定義はすごく難しいという部分もあるんですけどもね。
 先ほど土佐さんのほうから「ファインアート」という言葉も初めて知識として持ち得たんですけれども,基本はどういうところに。メディアセンターに行ったときに,まさしくそういった面ではエンターテインメント性という部分だけで見に行けば,ある部分においてそこでは芸術性は何も感じないかもしれませんけれども,やっぱりそういう面ではアニメーションは,我々みたいなエンターテインメントの作品をつくっているのと同じように,古川さんなんかはそういったどちらかというとファインアートの世界に近いようなアニメーションをつくっているわけですから,そういう二面性がやはり日本にもあるんだということの位置づけは大事かなと思うんですけどね。
 一度,ウィーンの美術館でたまたま日本のコミックだけを扱った美術展があって,参考のために見に行ったことがあったんですけども。参考というか,別な用件でウィーンに行ったんですけども,そのときに見たんですけども。その展示場を見たときにはまさしく……。まあ,これは展示の仕方もあるんでね,見せ方の問題もあると思うんですけど,非常にその部屋に入ったときは日本のそういったコミックという素材を使ったアートという感じはすごく感じましたけれどね。

○浜野座長

 ご意見,それでよろしいですか。

○布川委員

 はい。

○浜野座長

 じゃ,中谷さん,お願いいたします。

○中谷委員

 ワーキンググループの方々のご苦労がしのばれるまとめになっていると思います。私,最初に拝見したときに思ったのは,これまでにないメディア芸術総合センターにするために,今回の提案の肝はハブだったり,メディア芸術が多岐にわたっているために,どういう形で連携をしていくか,その辺が一番大事なような気がしたんですね。私も提案を考えるときその辺を一番ポイントに置いて提案をさせていただいたつもりなんですが。
 ですから,基本計画に盛り込む内容はこの程度でいいと思うんですが,どういうふうに連携するんだ,どういうようなハブなんだということをもう少し,ぱっと見たときに独自性が出るような,ただハコモノじゃないよ,ネットワークをすることによって機能をちゃんと充実化していくんだよというようなイメージが伝わるような表記の仕方はないのかなというふうに拝見したんですか,難しいですか。

○浜野座長

 もちろんこれを基に合築でも丸々建てるにしても,それの基本的な部分をやるんだけれども,もう一方で国民に対するメッセージもあるから,重要であれば盛り込んでおかないと……。

○中谷委員

 内容は入っているんですけど,見え方が。これだと普通の総合センターな感じがするんですよね。新しいこの時代にハコモノではないイメージを進めていくためには,この連携とかハブということをもう少し前面に出していくようなつくり方をしたほうがいいのではないかなという気がするんですが。

○浜野座長

 ちょっと今すぐには皆さんも思い浮かばないと思うので。了解しました。それがこのセンターのイメージの肝になるという中谷さんのご指摘,了解しました。
 土佐さんはいかがでしょうか。

○土佐委員

 アーカイブの部分がまず記述がすごく少なくて,多分メディアアート,いわゆるファインアートとしてのメディアアートから,マンガ,アニメまですべてを収蔵するというのは,すごく大変なシステムが要るのではないかと思って,収蔵スペース,それにどういうふうに対応するのかということがもう少しあってもいいのかなというのが一つ思いました。
 それから,工房スペースのところで,自分も専門なのでここで一つ気になったのは,メディアアートは本当に壊れやすいものですし,それから,過去のものも修復しなければならない,展示するにはそういうものが必ず必要なので,修復用のスペースがこれに1つ追加で必要だと思いました。逆に言えば,各クリエーターが製作のために活用できる工房というのは,本当につくろうと思うとかなりの規模になってしまうので,そこはちょっと別な組織になるぐらいのものなので,これはなくてもいいのかなと。それよりも,ICCとかもそうですが,バックヤードにいくといろんな工具が散乱していて修理に追われているという状況なので,そういうスペースが要るのではないかと思いました。
 以上です。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。
 修復は言葉では入っているんですけど,具体的な修復のスペースとか,特別に要るということですか。

○土佐委員

 そうですね。機械工具を置くので,空調の設備も必要ですし,それから,特殊な電源,200ボルトで動く機械なんかもあったりするので,そういうものを入れるのであれば,ちょっと特別な空間が要りますね。科学未来館にもあるんですが,そういう空間が必要だと思いました。

○浜野座長

 そういったものが工房よりウエートが上だということですね。

○土佐委員

 それは僕の判断なんですが。人が交流するサロンとしての場はあってもいいんですが,その人たちがものを本当につくるということになるとスペースが要るので。そして,選ばれた人しかそこでつくれないとなるよりは,通常その工房というのは修理,修繕,それから,展示のためのものをつくるという,工房としてつくっておいて,特別にそこを利用できるというふうに考えたほうがいいんじゃないかと思いました。

○浜野座長

 ここでは例えばマンガの原画がかなり劣化したのを修復するとか,フィルムも劣化したフィルムを,大金がかかりますが,努力してデジタイズするとか,そういうのは修復の共用スペースで一緒にできるんですか。

○土佐委員

 僕は分けたほうがいいと思いますね。すごくちりもほこりも出る,音も出るという,そういうスペースになってしまうので,クリーンルームとガンガン修理ができるスペースはやっぱり分けたほうがいいと思います。

○古川座長代理

 でも,これは相当スペースをとりそうですね。

○浜野座長

 修復が重要で,保存するだけだと意味ないので。完動したものを見ることができるようにするため,修復は重要だと思ったので入れたんですけれども,不十分なのですね。それはもうちょっと重みづけが明確になるように考えて……。
 どうも貴重な意見ありがとうございました。
 じゃ,さいとう先生,いかがですか。

○さいとう委員

 今この意義とか目的の辺ですよね。私も読ませていただいて,かなりいろんなことが盛り込まれていて,とても私的にはわかったんですけれども,一般の方が読む場合に,このセンターのことが問題になったときに,なぜ今これが今の段階で必要なのかということが,一般の人はかなり疑問に思った部分だと思うんですね。本来はこういう美術館のようなものは今必要だからやるとか,そういうこととはちょっと関係はないと思うんですけれども,こういう立場に置かれてしまった以上,今なぜ必要かというところをかなり強調して書いていただいたほうがいいかなというふうには思いました。
 例えば,1ページ目の一番最後のあたりの「関連情報の集約・発信を行う施設がないため,我が国のメディア芸術の国内外への発信が不十分である」というところの「発信」というのが,私はいつもよくわからないという印象を受けてしまうので。これがあることによって何がなされるのかということがちょっと具体的に何か例としてあるとわかりやすいということと,2ページ目の人材育成の強化というのが(4)のところにあるんですけれども,これもアニメーターなどが非常にお金がないとかいうことが話題になっているので,人材育成の強化ということもそれに,もちろん具体的にどういうふうにするかということは,今の段階で私たちには言えない部分もあるとは思うんですけれども,もうちょっと説明が入るといいなというのは,これは希望ですけれども,そこは思いました。
 あと,それと同じような理由で,2ページ目の下のほうの「メディア芸術に関する様々な支援対策をより効果的に推進する」ということに関しても,今,具体的に言うのは難しいとは思うんですけれども,わかりやすさとしては少し何か例が入ってくるといいかなというふうには思いました。この目的とか趣旨に関しては,私が感じたところはそういうような部分です。
 以上です。

○浜野座長

 これ,最後の文章化したときに盛り込むべき事柄が抜け落ちてないかというので項目立てしているので,多分,これは私の個人的意見ですけど,「はじめに」とかというのは量的に大きくなるでしょう。先生のご指摘をを配慮して,なぜ今本当に必要なのかということがわかる書きぶりに。今は項目立てしていますから,これを基に文章にしていきますので。そのときにはご指摘の点をぜひ反映できるようにしたと思います。
 それでは,ワーキンググループでも議論していただいて,このように整理したので,里中先生,いかがですか。

○里中委員

 いろいろ考え過ぎるとあいまいになったりする部分はあると思うので,本当に難しいなとは思いました。ちょっと先ほどから気になった,前から気になっているんですけれども,こういうときに日本独自のものであると言いながら,外来語を使ってしまう,外国語を使ってしか表現できないというのがすごくもどかしい感じがするんですね。実際にじゃファインアートってなんだと言われて,説明されないとわからないということもありますし,メディアアート自体も,私たちはもういろいろ聞いてわかっているつもりで,やっぱり一般的な言葉としてこなれてないと思うんですよ。「我が国独自の表現だ」というならば,本来,日本語としてしかるべき言葉があっていいんですけれども,それがなかったのでわかりづらくなっていると思います。
 ですから,この「我が国の独自性」を強調するために,本来海外でははっきりとファインアートとメディアアートと分かれているにもかかわらず,日本では古来から,大体垣根のないのが日本の表現文化だということもありますので,融通がきいて,境界線があいまいだという,すべてにおいてそうだと思うんですね。特に身分制度なんかもそうで,西欧社会において芸術とはある程度以上の階級の方たちだけが楽しむものであり,だからこそパトロンとして成り立ったわけなんですけれども,でも日本人にとっては,だれもが感性によって理解しうる,それがすべてエンターテインメントであり芸術でもあったわけですよね。ですから,そういう社会のあり方の独自性というのも,今振り返ってみるとかなり重要な我が国の文化,芸術,表現芸術の発展に影響してきたんだなと,改めて感じました。
 ですから,この後のほうでどうせ出てくるとは思うんですけれども,メディア芸術総合センターの愛称なんですが,本当にいい言葉が出てくればいいんですけど,日本語で。何かないですかね。さっきから一生懸命そこで堂々めぐり,頭の中しちゃっているんですけど。そうすると,結構すっきりとする部分が出てくるかと思います。だから,例に挙げて,大衆の中からエンターテインメントであり商品であったものが現象になった過程というのは割と近い過去,浮世絵なんて近い過去ですよね。ですから,そういうふうに。
 アニメーションだって,アニメーションというもので日本のテレビアニメをアニメと,どうして海外の人がアニメーションとアニメって分けるかというと,やっぱりつくり方の重点の置き方が違うからなんですよね。アニメーションという技術を利用して,テレビシリーズにおけるアニメのようなああいう領域をものにしてしまうわけで。それはよその世界の人から見ると別のものだと。アートアニメーションとテレビアニメは別のものだから,きっともともと発想が別だったんでしょうね。でも,日本人はアニメーションという形式を利用して,アートアニメもつくれば,テレビシリーズアニメもつくっちゃうわけですよね。
 だから,この独自性をうまく表現できれば,我が国独自の全部を引っくるめた,垣根のすごく低い,渾然一体となった領域であるということがうまく表現できればいいなと思っております。と言いながらだれか考えてくださいといって投げちゃって。何かないか考えますけれども,ちょっとそういうところでいろんなところが引っかかっちゃっているのかなと思いました。ですから,いきなりここの資料2にあるように「我が国独自の芸術表現である」と言っても,これだ読んだ人はそんなことないだろうと。映画もマンガもアニメーションもゲームもメディアアートも海外にもあるじゃないかと言われてしまいそうなんですよね。ですから,ここで何が我が国独自かというのをもう一歩踏み込んで,ああ,そうなんだと思われるような書き方を,こちらの資料3のほうとかにも反映できれば,もっと理解が深まるかなと思いました。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。
 中谷さんのご意見とも重なるところです。やっぱり「我が国」と言っているんだから,そこのところのそれを明確しておかないと,誤解も生むし。
 それに,愛称も,普通のやり方をするとすぐ英語の名称を書いて頭文字だけにして,そうなるとちょっと「我が国独自」と反しますね。

○里中委員

 よろしいですか。例えば,愛称として「我が国が生んだエンターテイナーであり芸術である」というような,例えば北斎とか,あのあたりの名称を借りてきてつけるというのが窮余の策かなと思うんですけれども。

○浜野座長

 そうですよね,人の名前を冠するミュージアムっていっぱいあります。

○古川座長代理

 いいですか,関連で。ちょうど今スイスのロカルノという場所で,ロカルノ映画祭という国際映画祭がいつもあるんですけど,ことしは日本のアニメーションの大特集で,長編から短編からいろんなものをやるんですが。プログラムなんかを送られてきたのを見たら,全体をマンガ,ローマ字で「MANGA IMPACT」というタイトルになっていて,その中にアートインパクトだとか,ドリームインパクト,パワーインパクトとかいろいろ分けて,ジャンル分けをして,手塚さんの特集をやったりいろいろやっているんですね。だからおもしろいなと思って,今伺っていてちょっと関連で思い出したんですけど。

○浜野座長

 ベルリン映画祭でも,初めてコンペ部門でアニメーションが選ばれたのは宮崎作品ですね。それから,ロカルノ映画祭でもアニメーションがコンペ部門に細田監督の『サマーウォーズ』が選ばれて。映画史を改革してゆくのは日本のアニメーションが多い。初めて米アカデミー賞で長編アニメーション部門ができたときに最初の外国人の受賞者は宮崎監督でした。
 「我が国独自」というのはインパクトがある,特に表現ではインパクトと功績があるので何かうまいこと,先生おっしゃるようにこの中に反映できたら,そういう人たちに報いることができると思うんですけど。
 植松先生,いかがですか。

○植松委員

 この委員会の最初のころにも話題になっていたようにこの領域は産業としての価値といいます実績もあるので,設置の背景のところで,もう少しその部分を強調した方がよろしいのではと思います。

○浜野座長

 何ページですか。

○植松委員

 1ページの半分から2ページにかけてのところですね。

○浜野座長

 3行目。古川先生,さらに何かありますか。

○古川座長代理

 先ほどから皆さんおっしゃっているこれは,今,箇条書きで項目で見ているからどうしてもそういうふうに見えているんだと思うんですけれども,これを先ほど中谷委員がおっしゃったハブのこととか,いろいろ今まで議論してきた,今つくらなきゃいけないという特徴をしつこいぐらいに書いてもらって,ただのハコモノじゃないというのを強調できればいいんじゃないかと思いますけど。

○浜野座長

 じゃ,阿部さん,いかがですか。

○阿部氏

 まず,やはり設立準備委員会は,ワーキンググループのときよりも議論が重たい感じになりますね。今回の会議においては,準備委員会の先生方と議論をするということもありますけれども,後ろにいらっしゃる,傍聴席にいらっしゃる方々やマスコミのみなさんに対して,我々はこういったものを考えましたということをプレゼンテーションするような場でもあると思うので,そういった観点で少しお話させていただきます。
 まず,具体的にもっともっと書こうと思えば書けるという話はワーキンググループの中でも出ていました。でも,これから公募をかけて案を募るわけですから,あまり具体的に書き過ぎるとそのアイデアの幅を狭めてしまうことになりかねません,これは基本計画書ですから,本当に重要な基本的な要素にとどめようというところであったかと思います。なので,マスコミの皆さんがこれをごらんになられると,少し具体的要素に欠けるとおっしゃられるかもしれないけれども,あえて自由な発想をもっともっと盛り込んでもらうためにこれにとどめているというふうには考えていただきたいなと思っています。
 特に今まで議論の中で,何のためにどういう役割を担うセンターなのかといったところが見えにくかったと思いますが,そのあたりは3ページの役割と方向性とかいったところにもかなり具体的に5つの役割と6つの方向性ということで入りました。これは以前の設立準備委員会では出てこなかった要素だと思います。それと,事業内容についても,まだ箇条書きなので少しわかりにくいかもしれませんけれども,要素としては重要なところをかなり盛り込めたと思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 石川さん,何かございますか。

○石川氏

 盛り込むべきことが大変たくさんある中で,うまくこのようにまとめていただいたと思います。中谷さんからもお話ありましたように,どうやって連携をとっていくのかということ,連携して何ができるのかというところが見えてくるともっといいのかなという気がいたします。今それぞれの分野でいろいろご希望があって,それを盛り込んでいくというところはいいんでしょうけれども,それが何を産み出せるのかというところは大変難しいことかと思いますが,その点が目標としてでも入るといいのかなというふうに感じました。

○浜野座長

 じゃ,岡島さん,いかがですか。

○岡島氏

 一番大切だと私が思うのは,この基本計画の最初に,メディア芸術とは何かということについて,だれからも批判をされない完璧な定義をまず行うことだろうと思います。その完璧な定義と私が申しますのは,法律でうたわれているメディア芸術に関する文章よりも大きな定義,つまり,法律のあの文言が私は個人的には,前にも申しましたけれども,あまり気に入らないところがございまして,例えば,繰り返しになりますが,映画は入っているけれども,写真は除外されている。
 それから,テレビやラジオという非常に重要なメディアがあいまいな定義しかされていないと。それから,メディアに芸術がつくと事は極めて複雑になるのでありまして,新聞だってメディアなわけですから,しかし新聞はメディア芸術とは言わないわけで,この言葉の難しさというのは,メディアと芸術が組み合わされているというところにもあろうかと思います。ですから,浜野座長が中心になって,だれからも批判されないメディア芸術の定義を書き,そして,その中に例えば法律ではこういうふうに述べられているよという引用をしてもいい。
 その上で,しかし写真だってメディア芸術だし,テレビやラジオだって芸術ではないとは言えないわけですから,それはメディア芸術と。しかしながら,私たちは今これを核にしてセンターをつくるんだと,そういう論理の順番をつけていくべきではないかと思っております。それから,法律上では映画が頭にきているわけです,最初に述べられているわけですけれども,法律よりも大きなメディア芸術に関する完璧な定義が行われれば,そのことはあまり問題にならないのではないかと思います。
 それから,日本固有,独自の表現ということについて言えば,今の話と関係しますけれども,映画もテレビもラジオも新聞も,アニメーションだって何だって,すべて日本の固有のものではないわけですから,そこのところは文化愛国主義をうまく使いながら,しかしながら,事実と離れたことは書くわけにはいかないわけですから,「日本の得意な分野である」という表現を使ったりしていく必要があるのではないかと思います。
 それから,愛称やブランドの力を持った言葉という点につきましては,本当に慎重に考える必要があろうかと思います。例えば,任天堂というのは非常に頭のいい戦略をとったと思います。つまり,任天堂という言葉を全然変えないで,子どもたちにゲームを与える。そうすると,アメリカ人の子どもたちやヨーロッパ人の子どもたちは成長して,小さいときに覚えた任天堂という日本語をそのまま覚えるということになりますから,何か下手に英語のアブリビエーション,アクロニムで言葉をつくるみたいなことは多少恥ずかしいんじゃないかという点は,浜野先生がおっしゃったのと同じでございます。
 そのくらいでしょうか。

○浜野座長

 どうもありがとうございます。
 甲野さん,お願いします。

○甲野氏

 盛り込むべき事項という形で,それぞれの事業内容について大変詳細にいろんな事業が書かれているわけでございますけれども,これらを拝見いたしますと,やはりこのセンターに対する関係者の方々の期待といいますか,それが大変大きいものだなということを改めて認識をさせていただく次第でございます。独立行政法人国立美術館としては,こうした期待を寄せられているセンターを具体的に建物を建ち上げて,また具体的に運営をしていくということであるわけでございますので,今後この手続が進展をしていくに当たりましては,文化庁の方々と連携をとることはもちろんですけれども,関係の方々ともよく連携をとりながら,具体化していくということが必要になってくるなと思った次第でございます。
 以上です。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 一応前半部分につきましては,岡島さんに指摘された,優れた定義はできないとは思いますが,大きく修正ないし補足をするのは,定義の部分で写真とか,森山委員がおっしゃった「先端技術を用いた新領域」を加えるということと,その定義から,岡島さんが指摘されたように,育てたり,出自は海外のものも多いわけですから,「我が国独自」というところで,中谷さんとか里中先生が指摘されたような,日本のアートとか商用とか分けないで,境界線のところで育ててきたというところなんかを強調しながら,日本が得意な部分に力点に置くということを,※印の文章を直す形で入れたいというところが,2点目で考えられます。
 3点目は,さいとう先生もおっしゃった,文章化するときになぜこのセンターが今必要なのかということが,もうちょっと読み取れるようにして,それと連携について,中谷委員のおっしゃったそういったことも前面に出てくるようにして書くという,3つの大きな補足なり修正を加えて前半部分は文章化したいと思っております。細かい点はもちろん先生方のご指摘をできるだけ反映して,またつくり直して見ていただきたいと思います。
 ワーキンググループでもかなり時間をとって議論を重ねた,後半の部分にまいりたいと思います。施設内容とか規模とか,特に管理運営というのは非常に難しい問題がいっぱいあるので,これについてはもう既に林委員からご意見があるというような雰囲気だったので,ぜひ忌憚のない意見を言ってください。

○林委員

 今回のまとめは「基本計画に盛り込むべき事項」ということで,これ自体が基本計画ではないということかと思うんですが,基本計画というものがどうやってつくられていくかということを考えますと,今回は基本計画をつくっていくに当たって盛り込むべき事項,つまり与件はこういうことであるということを整理しているものだと思うんですね。私が勝手に考えていますのは,ここから先はもともと予定されていた8月以降の事業プランも含めた民間からの公募によるプロポーザルを受けるというプロセスにつながっていって,そういう公募を受けた結果として,基本計画ができ上がると考えてよろしいんでしょうか。

○浜野座長

 じゃ,事務局お願いします。

○清水芸術文化課長

 手順でございますが,この設立準備委員会におきまして,今回盛り込むべき事項を検討いただき,またいろいろご意見を伺った上で,この委員会で基本計画をつくっていただくというのをまず考えております。そして,その基本計画を基にその後,公募の手続に入っていくという考え方でございます。基本計画などに沿って民間からさらに工夫を加えた形で企画を応募していただいて,それを踏まえてその中から優れた企画を選んでいくということでございますので,公募の前に基本計画をつくるという考え方でございます。

○林委員

 わかりました。そうしますと,完成させていこうとする基本計画の中で十分考えなければいけないことが2つあると思います。1点目は,基本計画ができた時点で,それを国民の方々にオープンにするということを考えますと,国民の皆さんに対して誤解のないような内容になっていなければいけない。あるいは,コンセンサスを得られるような,世論形成ができるような中身でなければいけないだろうというぐあいに思いますが,そこの部分については大分整理がされてきていますし,なぜ今なのかということをもう少し加えていくとかなりいいものになるんじゃないかと思います。
 もう1つのポイントは,基本計画を基にして民間からの公募を受けるとすれば,民間の提案をする側が提案するために必要な与件が含まれていなければいけないのではないかというぐあいに思うわけです。一方で,以前に申し上げましたが,細かく書き過ぎるといろんな制約ができてしまって,柔軟な提案ができることを逆に阻害してはまずいということでいいますと,今回のこのまとめ方についても,このぐらいのレベルでとどめるべきだと思います。
 ただ,与件として抜けていることがあると思っていますのは,1つはお金の話がどこにも出てないというか。7ページ目の管理運営のところで,原則として自己収入により運営費を確保する,あるいは,入場料収入ほかの収入を得る,それから,企業協賛,寄付を積極的に受け入れるとは出ています。これはいずれも間違ってはいないと思いますが,ただ,確か設立準備委員会の中でも結構この話が議論として出てきたと思うんですが,この国立メディア芸術センターについては,完全に民間の収入確保だけで運営されていけるのかどうかという問題です。何かしら国からの運営費の負担ということも含めて,その組み立てを考えるべきではないかというご意見も結構出ていたのでないかなというぐあいに思っています。
 民間が提案する場合に,みずからが民間の中で完結する形で事業収支を考えていこうとすると,本当に事業収支がとれるような計画が出せるのかどうかの難しさがあります。この基本計画の中で国からの運営費についても,私は意見としてこういう表現をしたんですが,「原則として自己収入により運営費を確保」というのはいいとして,「ただし,国からの運営費についても今後メディア芸術振興予算全体の中で検討していく。」というような一文が入らないんだろうかという要望です。
 これについては,以前に高塩前次長のほうから「そういったことも単に民間に全部任せるだけじゃなくて検討していくべきことなんだ」というご発言もありましたし,そういったポイントが必要なのではないかなと思います。ただ,一方で予算の話になると,単に一省庁の問題だけではなくて,財務省のかかわりが出てくるとかいろんなことがありますので,こうした計画に入れるのは難しい部分なのかなと思いつつも,民間に対しては何か予算のことを言っておいてあげる必要はあるんじゃないかと。別に国が運営費を約束するということじゃなくて,そういうことも検討していくんだということを入れられないかどうかということを一つは思いました。
 それからもう1つ,お金の話で言いますと,今度は初期費用のことがあります。今のはランニングコスト,運営費の話ですが,初期費用の補正予算117億円に関しても結構意見があったと思うんです。と言いますのは,もともと補正予算は建物・土地に関する費用と言われていますが,しかし,「基本計画の策定に向けて」でもあったように,ソフトを重視するということがポイントの一つです。
 それからもう1つは,建物についても柔軟な形態を検討するということが出ているわけです。そうしますと,補正予算117億円についても,そういった建物の建設形態を柔軟に検討するとか,あるいはソフトの充実を重視するんだということで考えるとすれば,必ずしも117億円を土地・建物に限定するという使い方ではない提案を受けられるのかどうかということなんですね。つまり,土地・建物限定としてしまったら,そういう提案しか出てきません。そうじゃなくて,ここまでは許容範囲の中で提案ができるということによって,提案する側の前提が随分変わってくるんじゃないかなと。そのあたりのことをどのように発信していくのかということについて,明確にしておいたほうがいいのではないかなと思います。どちらもお金のことなんですが,運営費と初期費用のことについて,何かしら与件を明示できないものかどうかというのが,私が一番気になっているポイントです。
 それから,最後に細かい話ですけれども,次の公募のステップ等を考えたときに,もう1つ必要だと思うのはスケジュールですね。補正予算ということで平成23年度中に完成というようなお話が当初からありますが,つまりそれは平成24年3月までにメディア芸術総合センターがオープンするということを前提として考えなければいけない話なのかなと思いつつも,実際には非常に期間が短いということもあって,スケジュールについてもある程度流動的に提案する側が考えることができるのかどうかみたいなことも,与件として提示しておく必要性があると思っていて,そこら辺が抜けているというか,なぜ入ってないのかということも含めて,少し検討いただけないかなと思っています。

○浜野座長

 重要なご指摘,ありがとうございました。
 会議では,我々に対しては予算面で考慮していただけるという説明はあって,議事録には残っていても,ここには反映されてない。それは今,林委員がおっしゃったような書きぶりで,ほかの予算も考慮はしているニュアンスを残すということは可能なんでしょうか。

○清水芸術文化課長

 それでは,経費,予算の関係でちょっと事務的なところで説明をさせていただきたいと思います。
 まず1点目の管理運営の経費のところでございますが,7ページの下からでございますが,「原則として自己収入により運営費確保」というところにつきましては,将来にわたるところでもありますので,「原則として自己収入により運営費確保」といったことをまず掲げているところでございまして,文化庁ももちろんメディア芸術祭など,そういった事業を実施してきておりますし,メディア芸術の振興の予算の確保をしてきている。
 このセンターの運営にそれもかかわるということにつきましては,次の8ページの上から2つ目の○でございますが,センター自身が自己収入の確保に努めるといったことを述べた上で,「メディア芸術祭,人材育成,収集・保存,調査研究等に関しては,文化庁等の委託事業を積極的に受け入れ。」といった形でもって,メディア芸術の振興に係る文化庁等国の役割といったものに関して,この部分で書いているというところでございます。
 それから,もう1点,「おわりに」の(6)のところでございますが,8ページの一番下でございます。メディア芸術の振興に関する様々な取組み,センターができればそれですべて解決するわけではないということで,ソフトの充実というお話がございましたけれども,政策に関する支援とか,一般的な人材育成,その他に関して国が取り組んでいく必要があるといったご議論がございましたので,ここに盛り込んだところでございます。
 それからもう1つ,予算の仕組みとして1点ご説明をさせていただきますと,補正予算につきましては,117億円ということでございますけれども,これについては施設整備費補助金という形で出てきているところでございますので,現在の予算の形ではそれはその他の,例えば政策の支援とか,人材育成に関するソフトの事業とかいったところにそのままでは使うことはできないところでございますので,これは毎年度毎年度の国の予算の編成などにおいてそういった予算を獲得していくなり,今回の補正予算とは違う形の対応が必要になるかと思いますので,その部分,ほかの用途に使えるという形ではないというところはご理解を頂ければと思います。
 それから,あとこの基本計画と今後の執行の関係で言いますと,この設立準備委員会では基本計画,このセンターのあるべき姿を考えていただきたいと思っておりまして,その後その基本計画を基に公募の手続に入っていくというところがございますので,公募等の内容につきましては,この中に直接盛り込むのではなくて,ここではセンターのあるべき姿を書いていただいて,それに基づいて予算の執行等については文化庁,また,独立行政法人国立美術館が対応していくというような分担を考えているところでございます。
 以上でございます。

○浜野座長

 林委員の最後の質問の今後のスケジュールについてはいかがでしょう。いつまでにつくらなければいけないというのは柔軟にはできないということですか。

○清水芸術文化課長

 予算的に現在計上されている補正予算の執行という点ですと,予算の制度といたしましては,21年度の予算で計上されておりますが,施設整備の予算ですと,一般的に明許繰越といった形で1年間予算の執行を繰り越すことができる制度がございまして,また様々な事情でどうしても工事等が遅れる場合にもう1年繰り越すといったような制度もございますので,制度上でいいますと,最大限21年度の補正予算に計上されているものの執行は,22年度,23年度まで執行できるという形になっているところでございます。これはもちろん実際にはできる早く執行していかなければいけないわけでありますけれども,制度的にいえば23年度末までに執行しなければならないというところでございます。

○浜野座長

 林さん,よろしいですか。

○林委員

 そうすると,補正予算の件に関しては,逆にどういうカテゴリーが補正予算の施設整備費という中に入るのか,どういうカテゴリーであれば施設整備費と言えるものなのか。例えばソフトの充実ということでいうと,初期費用という中には施設を整備する費用ということで保存・収集するための費用も当初かかってくるものがあると思うんですね。そういうことでいいますと,土地・建物的なことはわかるんですが,それ以外にどこまでが施設整備費のカテゴリーとして許されるものなのかどうかというのはいかがなんでしょうか。

○清水芸術文化課長

 現在,補正予算に計上されている施設整備費といたしましては,施設に関する経費と土地でございますけれども,施設の部分につきましては,建物の建設費以外に設備の部分ですね。当初,ある程度施設と一体的にオープン時に必要な設備を整備するものまでは入っているところでございますが,その後の運営費とか事業費といったものはこの中には入っていないところでございます。

○林委員

 今,清水さんに説明していただいたようなことを何らかの形で,公募のときの段落かもしれませんが,文言化しておいたらどうかなとも思いました。ありがとうございます。

○清水芸術文化課長

 そういった点を公募の際に明確にすべきといったご意見で,わかったところでございますけれども,事務的な考え方といたしましては,この基本計画をつくりまして,また公募のときに公募要領といった形で,いついつまでに,またこういった条件でといった形でやるところがございますので,基本計画と,それにプラスしての公募要領といったものがございますので,そういう手続面,詳細な予算の執行上かかわるものについては要領のほうで対応していただくことになるのかなと思いますけれども,その部分配慮していきたいと思っております。

○浜野座長

 中谷さん,いかがですか。

○中谷委員

 建物の件なんですけど,施設内容としまして,ここに少なくとも1万m2必要というふうに書いてありますが,どうしても1つのところに固まって1万m2というイメージがすぐしてしまうんですが,ミュージアム機能とアーカイブ機能とを考えたときに,どうしても中心にあるのはミュージアム機能がメインになるかなというふうに思うんですね。これはどういうような検討がされたかちょっとわからないですけど,アーカイブ機能に関しては,浜野先生が前におっしゃっていたような1カ所にしないと危険というようなイメージで計画されているんですか。

○浜野座長

 場所,どこだったかな。これは大いに議論して,何も都心にある必要はなく,アクセスのしやすいところで。分散についても,民間の提案の余地を残しておく必要がある。分散させれば利便性は下がるものの,土地の確保とか,収集し始めたらふえていくから。都心でスペースを広げることは難しいし,都心にある必要ない。今後,拡張についても考えてみたいという文章も入れたんですけど……。

○中谷委員

 書かなくていいと。

○浜野座長

 ええ。

○中谷委員

 例えば,今,上映ホールっていう案がありますよね。これって,展示機能においてはメディア芸術ってシアターってすごく大事な要素ですよね。それが日本を代表するセンターのシアターが300席でいいのかというと,これだったらないほうがいいんじゃないかと,分散してほかのところに持っていったほうがいいのかなって。協力でほかのところでこういう機能を持ったほうがいいのかなと思うと同時に,大小2つぐらいの上映ホールが必要なのかなとというふうに思うんです。そういうものに,センターの中に中心に据えてアーカイブに関してはちょっと離れたところにしっかりと分散配置していくような考え方をもっと出したほうがいいのかなという気はしたんですけど。

○浜野座長

 1カ所だけじゃなくても可能なのか。我々はそれでもいいのではないかと思いますが,何か方針があれば教えていただけますか。

○清木文化部長

 それはいろんな提案があると思います。幅広くいろんな提案を受けて,その中から最も適正なものを選ぶということになると思いますので,最初から1カ所じゃないといけませんよ,あるいは,これは分散したほうがいいですよということは,あえてこの基本計画の中で述べないほうがいいんじゃないかと。

○中谷委員

 私はそこを言っているのではなくて,見え方の話なんですね。ですから,1カ所に1万m2がドンと出ているような見え方をせずに,もっとちゃんと分散するような部分もわかるような感じで書かれたほうがいいのと,こういうシアターにしても,こうやって300席程度と書かれちゃうと,これだけっていう感じがどうしてもしてしまいますので。あくまで表面的な見え方の,基本計画に盛り込むべき事項としての表記として質問させていただいた次第です。

○浜野座長

 上映ホールについては確か古川先生からもご意見があって,座席数をもう少し増やすということだったと思うんです。300という具体的な数字を書き込むのではないほうがいいですね。いろんな可能性があるということがわかるように文章化して,あまり我々のほうから明確にこうしろというのではなくて,多様なアイディアが受けられる文章に直すようにします。
 じゃ,土佐さん,いかがですか。

○土佐委員

 この資料を国民がぱっと見たときに,すごく引いて考えたときに,林委員がおっしゃるようにお財布の話がないというのは,またそこで意見を言われてしまうのかなと思ったんですけれども,117億円というお金が今お聞きすると施設整備費であると。じゃ,このメディア芸術に一番大事なソフトの購入費とか集めるお金はどこから持ってくるのっていう話がぱんと見えてこないというのは,そこでまた問題があるなと思いました。
 それからこれはネットで調べた数字なので確かではないんですが,例えば東京都現代美術館の建築費が415億円というふうにぱっと聞いたときに,あれであの規模ならば,じゃ国立メディア芸術センターは117億円といったらこのぐらいだなというイメージを,国民の人も数字を見たらイメージできてしまうので。そんな中で一体何をつくるのって聞かれたときに,広くこういうことをするんですよというよりは,もう少し一点突破型のアイデアというか,ハブ的要素が連携をとったセンターなんですよとか,そういうもう一言,一点突破型のアイデアが見えてくるのを提示したほうがいいのではないかと思いました。
 以上です。

○浜野座長

 前半で言い忘れましたが,連携を強調するということで,最初は連携機関名を羅列しました。そすうると何で我々のところは載ってないんだということになる可能性が新たに出てくるので,具体名は削りました。具体的な連携先は見えづらくはなっています。

○土佐委員

 そのモデル図のようなものが提示できればいいのかなと思ったんですけどね。AとかBでもいいので,その全体のシステムのモデルみたいなものが。こういうものをつくるときって,こういうものをつくりたいという意思で条件を決定していく部分と,お金とかスケジュールという具体的なところで決まってしまう。やりたいことはあるけれども,お金がないからできないということもありますので,その規模が。僕はこれを見たときにもう少しあってもいいのかなと,お財布の話があってもいいのかなと思いました。

○浜野座長

 民間委託なので,その方々の主体性も大事にしないといけないし,お金がないから選択と集中が必要ですが,悩ましいところです。何もかもここでやるのではなくて,ハブ的な機能を持つというのは皆さんの共通の意識みたいなので,それは見えるようにしたいと思います。
 さいとう先生,いかがですか。

○さいとう委員

 非常に盛りだくさんの内容なのですが,よく読めばわかるのですが,ここが日本のメディア芸術の拠点として非常に有効な施設であるということがちょっとまだわかりにくい感じはしますけれども。あと,ネットで情報発信をするというふうにもあるんですが,ネットを通じて世界ともっとつながるとかいうところもちょっと強調しておいていただけると,より拠点感が強まるかなという気はしました。そんなところです。
 あと,私が気になっていたのは,マンガ喫茶という言われ方をしてしまったので,マンガ喫茶はないですよということを断っておいたほうがいいのかなというふうにはちょっと思いました。今のところそれは計画としてはないですよね。

○浜野座長

 ええ,それはないです。

○さいとう委員

 以上です。

○浜野座長

 まあ否定的なことはあえて……。
 じゃ,里中先生。

○里中委員

 いろいろ表現が難しくて,世間に出すときにマンガ喫茶ではありませんと言ったら,民主党に文句つけるみたいになって確かあそこの代表が「国営マンガ喫茶ですか」とおっしゃったのかなと思いますけれども。こういうのは言っちゃうと,もし仮にカフェができて,そこに参考の資料として見ていただける漫画本が1冊でも置いてあったら,「やっぱりマンガ喫茶じゃないか」と言われそうな気もして。本当にどうしてこんなことを気にしなきゃいけないのか悲しいんですけれども。
 先ほどのハブ機能をちょっと強調するというところなんですけれども,案の1ページ目の設置の背景の一番下の段なんですけれども,ここを何行かに分けて,「メディア芸術のすべての分野の作品を体系的に常設展示,また,関連情報の集約・発信を行う施設がこれまでなかった」と言っちゃったり,それにつなげて,「また,国内の関連施設の連携を1カ所に集める施設もなかった」というように入れて,だからこそハブ機能,だから,ハブ機能を持ったこういう施設はこれまでなかったんだから,必要だよと。集約と発信の拠点が必要であるという,ちょっと長くなるんですけれども,ここに入れると割とわかりやすいのかなと思いました。
 それと,設置の背景に,ちょっと嫌らしい言い方なんですけれども,近隣諸国のあり方をもうちょっと,金額まで入れちゃうとか。下品ですかね,やっぱり。韓国は2兆円注ぎ込んでいるとか,そういうのって下品ですかね。下品ですね。

○浜野座長

 予算的裏付けが向こうはあるのにこっちはないとか。

○里中委員

 はい。だから,本来はそれぐらい必要なんだと,117億円でやろうとしているんだからすごいでしょみたいな。

○浜野座長

 フランスは映画だけで毎年数百億円の支援があるではないか,という話ですね。

○里中委員

 はい。だから,文化予算というのはそもそも我が国はすくないんですよ,もともと。本当に少ないと思います。大体国の形をどう見せるかというビジョンがないからこうなっちゃうんだと思うんですね。いろいろ予算があると,すぐわかりやすいところにばあっといっちゃって,結局は広く薄くとなって効果があまり出ないっていう,そういう面も否めないと思います。ですから,文化予算というのは少なく抑えられてきたので,117億円というとすごい大金と思われがちなんですけれども,全然大金じゃないんですよね。そういうことを言うと傲慢だとまた言われますけれども。
 大体が文化庁がどうしていつまでも文化庁なのか,この辺に国の文化行政のあり方の貧しさがあると思います。いつまでたっても省にならずに,ねえ。と思いますけれども。まあ,ここでこんなことを言っても仕方がないんですけれども,傍聴していらっしゃるマスコミの方がいらしたら,ぜひその辺を頭に入れておいていただければとてもうれしいなと思って,余計なことを言ってしまいました。

○浜野座長

 これが委員会の名前で出るのなら,そういうことも書けるんだけど,文化庁として出るなら,これまで文化予算が少なかったと言うと,政権批判になりますね。それでもいいのだけど。この報告書の作成主体はどこでしたか。

○清水芸術文化課長

 基本計画の作成主体としては,委員会の名前でまとめていただこうと思っております。が,基本的にはセンターの基本計画というところですので,直接それ以外について触れるという形にはなろうかと思いますが。

○浜野座長

 でも,さっきおっしゃったような1ページ目の2のところをもうちょっと,施設もないし,個別にあったとしても連携もとれてないとか,海外と比較して強調して。

○里中委員

 下品になるとまずいから。

○浜野座長

 布川さんはいかがですか。

○布川委員

 そうですね。感想を言っちゃいけないんですけれども,国立というのは難しいんですね。そういうふうに思いました。海外にもいろんな美術館があるし,我々からすると海外のこういう有名な美術館にはこういうのがあるというのは日本から見るといろいろなものがあるんだろうけれども,海外から見て日本のそういうふうな美術館が知名度としてあるんだろうかと考えるときにどうなんですか,ちょっとその辺はあまり言えませんけどね。この施設はそういうふうになる可能性があるじゃないですか,海外から見たらね。だから,そういういろんな意味での考え方をもうちょっとできないのかなというもどかしさをすごい感じますし。
 それと,最初,実はこちらの文化庁さんの資料を見たときに,予算が117億円というのはハコ代という,まさしく建物と土地の値段がぼんと目に飛び込んだんでね。あの印象というのはどうしても,これはハコモノだよなという印象は免れないんじゃないかという気がするんで,117億という一つの金の大きさ,低さというのは別にして,我々の委員会から提案するということは,建物じゃないんだと,設備,ソフトというものに対してシフトしていくんだというような意見,考え方を前面に押し出したほうがいいんじゃないかと思っているんですけどね。そういうふうでなければ結果的に,建物を見に来る人っていませんから,やはり中身を見に来るという人が多いわけでね,その中どういうものがあるかないかによって,このセンターの意味づけが随分違うんじゃないかなという気がします。
 そういう意見です。

○浜野座長

 前の委員会で紹介しましたが,シアトルにロックンロールのミュージアムがあります。フランク・ゲリーがつくった。すばらしい建物です。それは私は見に行きました。高額な建物だけつくっているわけですから,それは根性要りますよね。そこまでやれば建物も見に来るけど,この額ではシンボルとなるような建物にはならないですね。日本に優れた建築家が大勢いらっしゃるので,力を奮うチャンスがあると思うんですけど。そんなことを言うとまた批判されるのでしょうが。
 植松先生,いかがですか。

○植松委員

 施設内容についてはこのまとめ方でよろしいのでは思います。

○浜野座長

 じゃ,古川先生,いかがですか。

○古川座長代理

 やっぱりあれですね,もうちょっと具体的に,一番最後の表の施設内容を見たら,こういうハコができるんですねと,これを出して民間にプレゼンテーションしたら,「じゃ,これでイメージを考えましょう」ということだと思うんですね。ですから,再三再四みんなで言っているような,本当にこれは連携をとっていく施設のハブ的なものをここにまず作っていくということがちゃんとわかるようにもうちょっと具体的に,名前とか省きましたけども,さっきどなたかがおっしゃったように,例えば表なり何なりでもうちょっと具体的に,マンガは京都にこういうものがあるんだとか書いていって,具体的にこういう連携をとろうとしているんだというところまで,このセンターのイメージがしっかり出るように,補足の,この基本計画とは別の紙でも何でもいいですから,あったほうが姿勢が伝わるんじゃないかなという気がします。

○里中委員

 私は,個別に各地方の連携がとれるであろう施設の名前を出すことには,どちらかというと消極的なんですよ。あそこを出してここを出さないということが出てくるのと同時に,相手方に断りもせず載せるところがあってはまずいと。連携をとるといっても,向こうは向こうでとりたがっている連携と,こちらがとりたがっている連携とがずれが生じる場合がありますので。しかも,こうしている間にも新しい施設がどこかにできているかもしれませんし,こうしている間につぶれる施設があるかもしれないので,広く網羅的に各地の関連施設とやったほうが無難かなと思っております。
 書いちゃうと,必ずそこと連携をとらなければ後々言い訳ができないよう気がして,文字に残すというのはとても怖いので,ああいって書かれていたのにうちと何も手を結ばないじゃないかと言われたりするとまたまずいので,やっぱりぼかしておいたほうがいいかなと思いましたが,いかがでしょうか。

○古川座長代理

 おっしゃることもよくわかりますが,二,三のというか,代表的な,例えばマンガだったらあそことかで,前もって何らかの連携がとれるというところが当然出てくると僕としては思っていて,その代表的な,代表的なと言ったらおかしいんですけど,可能性のあるところはちゃんと書いておくというか,ちゃんとそういう図式もつくってできるにようにして発表できたほうがいいんじゃないか思うんですけども,いかがですかね。

○里中委員

 例えば話に出ました京都のマンガミュージアムなんですけれども,あそこが,このことが話題になったときにマスコミの方もこのようなものとして取材に行って紹介されたんですけれども,実際は新刊本がいっぱい置いてあって,廊下で入場者が見ているわけなんですね。マンガ喫茶,喫茶の提供はありませんので,違うんですけれども。もちろんあそこはとても頑張ってらして,すばらしく楽しい設備で,私どももいろんなことで協力してやっておりますけれども,一部の人からは新刊本は置かないでほしいと。
 つまり,国立マンガ図書館になっちゃうという一部の最初の反応と言いますか,感想ですね。それを強調する結果になるんじゃないかと恐れているんですよ。マンガ図書館ではないのだと。マンガを研究したり,いろんなことで展示したりはするけれども,いわゆるマンガ図書館としてのセンターではないのだということを伝えたいんですが,あそこが例として挙げられると,実際はかなりなスペース,廊下いっぱいになって,廊下全面が本棚で,マンガ本がいっぱい置いてあるんですね。休日となると通れないぐらい子どもたちが座り込んでそこで読んでいるわけです。それがいかがなものかという意見もあったりしますので。
 あの印象でここが見られると,かえってマンガ図書館とかマンガ喫茶という言葉を裏打ちするようなことにならないかなと思ってます。もちろん,京都マンガミュージアム自身は京都市と精華大学がやっていて,本当にすばらしいんですよね。とても有効な施設だと思いますし,海外からのお客さんが京都に来てあそこにまず行きたいって,お客さんがいっぱいらして活気を帯びているんですけれども,そういう面もありまして,特定のところを挙げると,そこのイメージに引きずられるかなと。
 マスコミで取り上げられたときに,すみません,ちょっと繰り返しになりますが,内部が映されて,来ているお客さんの感想がテレビで流れるわけですね。お客さんは楽しいですよ,一たん入っちゃったら一日中でも何十冊でもそこで見られるわけですから。ですが,ある意味,民業圧迫という,出版社にとってはできれば図書館で本を読んでいただくにはそれなりの展示権とか閲覧権とかを著作権法上有効に行使したいというのが本音なんですけれども,今の図書館法ではそれができないわけですよね。
 だから,もしこんなのができてマンガ図書館になっちゃったら,版元としては余計困っちゃうということもありますし,著作者たちも困るといいますか,新刊本は勘弁してほしいという人もいっぱい出てくると思いますので。そういうこともありまして,特定のところを挙げるといろいろと。今は一例ですけれども,いろんなことがあるので,さわらないほうがいいかなと思った次第です。これはあくまで私の感想ですので,どこかをはっきり挙げることによってイメージがつくりやすいということでしたら,万遍なくいろんなタイプの施設をある程度以上挙げたほうがいいなと思っておりますが。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 具体的名称を挙げるんだったら,各ジャンルに複数ずつとか,土佐さんがおっしゃったように,模式図でA,Bというのでイメージ図をかいて誤解がないようにするとか。考えてみたいと思います。
 阿部さん,いかがですか。

○阿部氏

 まず連携についてなんですけれども,どこと連携するかということよりも,連携する内容こそが重要だと思います。既にマンガにおいても,いろんなジャンルにおいて先行されている既存のいろんなミュージアムがあるわけですから,そういったところに対してメディア芸術センターは後発になるわけなので,既存のミュージアムがどういったことをされていて,どういったものを収集し,どういったものを保存し,どういったものを展示し,どういったことを研究されているかということをきっちりと調べた上で,具体的にどういった連携を図っていくのかということを考えていかなければいけないのではないでしょうか。どこと連携するかではなくて,何を連携するかということを明確にしていきましょう。
 また,京都国際マンガミュージアムのことがよくお話に出てきますけれども,最近出た本で,『マンガとミュージアムが出会うとき』という本が出ておりました。マンガという大衆文化をミュージアムとしてどう扱っていくかということを書かれていた本なんですけれども,京都国際マンガミュージアムにしても,図書館の機能と収集・保存,研究という機能があって,よくテレビとかマスコミで報道されるのは図書館の部分がメインで,収集・保存とかされているところはあまり報道されないのでちょっと誤解されるところもあります。そういったところをきっちりと調べて,うまくメディア芸術センターができることというのを明確にし,連携を図っていければいいんじゃないかなというふうに思います。

○浜野座長

 石川さん,いかがですか。

○石川氏

 ちょっと初めに戻ってしまうかもしれませんが,先ほど岡島さんがおっしゃっていたように,メディア芸術というのは何であるかというところをはっきりするということとともに,この文章の中でセンターで扱うメディア芸術の分野はいろいろありますけども,これは何なのか,どこまで最低扱うべきなのかというところの提言ができたほうがいいのかなと思います。一番初めのところに出ているものだけで具体的にいいのであれば,そういうことを書いたほうがいいでしょうし,メディア芸術という枠を拡大解釈するといろんなものがどんどん入ってきてしまうと思いますので,それを果てしなく扱うということになると,とてもじゃないですけど,お金が幾らあっても足りないということになると思いますので,今回のこのセンターの当初のところではどこまでを最低扱うべきかというところが入っていたほうがいいのではないかなと思います。
 それと,先ほどこの提案どこに出すのかというようなお話がありましたけれども,委員会が文化庁あてにこういう形でつくってはいかがかということでの文書を出すということになるのかと理解しておりますが,外部に運営を委託するという形になっていますけれども,建物をつくるという事業が一つあって,あと運営するという事業がありますけれども,この辺がどういう形で分かれてやっていくのかというところがちょっとわかりにくいと思います。それをつくるというところから運営までの責任までというところまで一体としてできることなのか。それとも,それをどこがやるのかというのはなかなか難しい,簡単に受けられるところがあるとは思えませんが,文化庁が責任を持って建物をつくって,運営を委託していくということなのか,その辺がちょっとわかりにくいなという感じがします。
 それと,自己収入による運営確保というところ,7ページの下のほうに「入場料金のほかにスペースの貸出し,グッズ販売,公開講座・研修など」とありますけれども,この辺の営業努力をどんどんしていいよというところがもっと明確になったほうがいいのなと。それが本当にいいのかどうかですね。例えばエンターテインメント性の高いメディア芸術というところもあるわけで,そういったところが民間で使いたいというところがあれば,どんどん宣伝だとかそういったことに使っていいのかどうかというようなこと。そういうことがないと,自己収入で運営していくというのはなかなか難しいのかなというような気もいたします。その辺がどこまで許されるのかというところも,公共の施設だということで,こういうことには使ってはいけませんという縛りが割と出てきてしまう場合が多いように思うんですけども,その辺の縛りをできるだけ緩くして運営しやすくしていくというものが必要なんじゃないかなと思います。ただ,民業圧迫にならないということは考えなければいけないとは思いますけれども。そういうところが表現できたらいいのかなというふうに思いました。
 以上です。

○浜野座長

 ありがとうございます。
 岡島さん,お願いします。

○岡島氏

 メディア芸術とは何かがあいまいさを排する形できちんと定義できて,そのメディア芸術の中でメディア芸術センターは何を扱うかということが書かれ,その次に書かれなければならないのが,一番重要なポイントは運営の仕方だというふうに思いますけれども,そのときに入れる幾つかの文言として,「長期的な国の事業である」というような文言が入っていたほうがいいのではないかと思います。これは私の私見ですけれども。もちろん困難さは十分承知しておりますが,長期的な国の取り組む事業であるとするならば,長期的に安定した雇用をきちんと生み出す必要があるし,その雇用ができないならば,それを代替するきちんとした予算措置がとられないと,やはり仕事はできないというふうな印象を持っております。委員会が主語になってこの文章が書かれるのだとするならば,そのことはやはり書いておいたほうがよいのではないかと,特に長期的に考えるとそう思います。
 それからもう1つ,こういう文言はどうかと思うのは,「流出」,「売買」といったような言葉を書くという方向性もあろうかと思います。例えば,アメリカの美術館というのは,国立,公立という形になっているのが割合少なくて,お金持ちの寄付によって成り立っているところが多いわけですが,景気の不況の煽りを受けて今アメリカの美術館などでたくさんの絵が売買されているというような事実があるわけで,そういうことがここでは国の事業ですからあってはならないのではないかと。
 それの先にあるのは流出ということですけれども,多くの先生方がメディア芸術は日本の非常に誇るべき固有のものだというふうにおっしゃっている。それはそうだと私も思いますけども,だとするならば,国の事業である以上,海外流出ということがあってはならないわけでございまして,例えばある重要なマンガ,重要なメディア芸術をフランスの美術館に保存してくれますと依頼しますと,恐らくフランスは喜んで保存してくれると思います。
 一つの理由は,フランスには非常に潤沢な文化予算があって,次々に新しい分野を開拓することによって,現在ある雇用を将来的にも確保できるという,そういうからくりがあるわけですから,彼らは日本の新しいポピュラーな芸術といっていいんでしょうか,そういうものを保存してくださいと頼まれれば,喜んでこれを保存することになると思います。そして,彼らは百年後にそれが大変な宝になったり観光資源になったりすることを十分に知っているから,歴史の中で知っているからなんですね。ですから,効率を考えても海外の美術館に頼んだほうがいいよということは大変恥ずかしいことではないかということだと,私は個人的に思っております。ですから,流出,売買といったようなことを,もちろんネガティブな意味で文言の中に入れるという手があるのかもしれません。

○浜野座長

 はい,重要なご指摘,ありがとうございます。
 じゃ,甲野さん,お願いします。

○甲野氏

 収入の確保方策のところで,メディア芸術祭などの文化庁等の委託事業,これを明示していただいた点につきましては,大変ありがたく思う次第でございます。しかしながら,委託されない事業が基幹的な事業でございまして,そこのところを一生懸命に運営する側が取り組まなければいけないわけでございますが,それはとにかく運営する側が全力でもってそれに当たらなければなりません。しかしながら,それが円滑に進むためには,私は関係の方々の支援ですとか,事実上のサポート,ここに盛り込むべき事項ではないのかもしれませんが,そういったものが必要ではないかというふうに思っております。
 例えば,会議室やギャラリー,それから,ホールなどの貸出しということを行うわけでございますが,積極的に関係の各機関,あるいは業界の方々,あるいは企業の方々にそれをお使いいただくというようなことが必要になってくるかもしれませんし,また,入館者の収入を上げるためには展示の内容が魅力的なものであることが必要ですけれども,そのためには出品される作品ですとか,貴重な資料があるわけでございますけれども,その出品に当たりましては,関係の業界や企業,あるいは,作家の方々に特段の配慮をいただくという点も必要になってくるかもしれません。また,展示政策にはお金がかかりますけれども,そこのところに協賛をいただくですとか,そういった面も必要になってくるかもしれません。いずれにいたしましても,活動全体につきまして,関係の方々全般のサポートが円滑に運営される上で必要ではないかなと思っている次第でございます。
 何か要望のような話になってしまいましたけれども,その点発言させていただきました。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 委員会名で出るということなので,後半も遠慮なく言ってさい。林委員が繰り返しおっしゃっている運営費を,かわかりやすい形で支援できるようなニュアンスが残るように表現できたらと思います。
 それと関連で,117億円の予算が施設設備だけに限定されていますが,委員会として中身,ソフトウエアが重要なので,そういう配慮か必要だということを表現できたらいいなと思ってます。
 3番目としては,建物が目的ではなく,日本文化の向上ですから,既ににある施設とか機能を分散的に連携して束ねる機能を担い,連携をわかりやすく表現したいと思います。国内だけではなくて海外の拠点にもなるように,連携のイメージをつくれたらと思います。
 里中先生おっしゃったように,浮世絵の二の舞の流出,売買を繰り返さないようにすることも書き込みましょう。
 時間がきてしまって。まだご指摘の点あると思いますが,ご指摘の内容を踏まえまして,文章化までたどりつくかどうかわからないのですが,反映したいと思います。ご発言がまだ十分でない場合は,私なり事務局にご連絡いただければ,できるだけ盛り込むようにいたしたいと思いますので。もう一度,箇条書きにするか文章化してお渡しするか,整理してお知らせしたいと思います。
 事務局から何か連絡事項ございますでしょうか。

○清水芸術文化課長

 それでは,本日いただきました意見等,また追加意見がございましたら,それも反映させて整理をしていきたいと思っております。
 次回の委員会の開催日につきましては,そういった作業,ご連絡等もございますので,追って調整をした上でご連絡させていただければと思っております。どうかよろしくお願いいたします。

○浜野座長

 長官,何か一言,ごあいさつございますでしょうか。

○玉井文化庁長官

 大変いい意見をたくさんいただきまして,ありがとうございました。公共政策としての文化,そして,その中でも従来型のものに加えた新たなメディア芸術ということを一生懸命,メディア芸術祭を繰り返しながら続けてきているわけでございます。そういう中で,やはり拠点が必要だというのは前からのご議論でございますので,メディア芸術を振興するという大きな中で,拠点整備の必要性,それは決してこの拠点だけはなくて,メディア芸術を全体に振興するためには施設整備だけではない,さらにいろんなことも必要だと,こういった方向でご議論が進んでいること,大変ありがたく思っておりますので,積極的に受けとめさせていただきたいと思っております。

○浜野座長

 それでは,これにて閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

14:59 閉会

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