資料 1

資料 1

古墳壁画保存活用検討会(第1回)議事要旨

1.日時
平成20年6月25日(水)13:30〜16:00
2.場所
三田共用会議所第4特別会議室
3.出席者
(検討会委員)
藤本座長,三輪副座長,有賀,足立,石﨑,猪熊,梶谷,河上,川野邊,木下,久保田,高麗,肥塚,里中,関,田辺,西藤,藤野,松村,三村,毛利,山下の各委員
(文化庁)
高塩文化庁次長,大西文化財部長,苅谷文化財鑑査官,山﨑古墳壁画室長,内藤記念物課長,建石古墳壁画対策調査官 ほか関係官
4.概要
  1. (1)文化庁あいさつ

    高塩文化庁次長からあいさつを行った。

  2. (2)委員及び事務局出席者紹介

    委員及び事務局出席者の紹介を行った。

  3. (3)議事
    (1)座長及び副座長の選出
    委員の互選により,藤本委員が座長に選出され,藤本座長から三輪委員が副座長に指名された。
    (2)議事の取扱いについて
    古墳壁画保存活用検討会の議事の取扱いについて事務局から説明が行われ,原案どおり,原則,議事を公開する旨が了承された。
    (3)高松塚古墳壁画の保存対策について
    事務局より,高松塚古墳壁画保存管理の経緯と現状について説明が行われた。
    (4)キトラ古墳壁画の保存対策について
    事務局より,キトラ古墳壁画保存管理の経緯と現状について説明が行われた。
    (5)国宝高松塚古墳壁画修理作業室の一般公開について・キトラ古墳壁画の特別公開について
    事務局より,平成20年5月に実施された「国宝高松塚古墳壁画修理作業室の一般公開」及び「キトラ古墳壁画の特別公開」について報告が行われた。
    (6)高松塚古墳及びキトラ古墳の保存活用に関する今後の課題
    事務局より,高松塚古墳及びキトラ古墳の保存活用に関する今後の課題について説明が行われ,以下の質疑応答が行われた。

河上委員:キトラ古墳壁画の剥ぎ取りは,全面の剥ぎ取りを行う方針となっている。これまでに作業を終えた部分は全体の何割程度で,今後どの位の作業期間が必要なのか。

川野邊委員:作業的には絵のある部分もない部分も扱いは同じである。絵がないからといって作業が楽になるわけではない。剥ぎ取った面積から言えば,今後4,5年は作業期間が必要ではないか。現場の感覚としては,本当に全面を剥ぎ取る必要があるのかと感じている。

河上委員:全面剥ぎ取りに問題があれば,再度議論をすればよい。床の漆喰は剥ぎ取らずにそのままにしておけばよいと思う。

田辺委員:絵のない漆喰の状態は絵のある漆喰と比較してどうなのか。

川野邊委員:絵のあるなしに関わらず非常に「バラバラ」な状態である。石室内は剥ぎ取り期間中,生物劣化が着々と進み,漆喰の状態も日々変化している。最終的にどういう形で再構成するのかに関わってくるが,剥ぎ取る精度のレベルはそろそろ具体的に議論しなければならない。

木下委員:剥ぎ取りを行った際,石の側にどの程度漆喰を残しているのか,その辺りの状況を教えてほしい。

川野邊委員:剥ぎ取り方法にもよるが,ヘラで行った場合,石と漆喰の間をとっている。ダイヤモンドワイヤソーやバンドソーで行った場合,一層漆喰が残っている状態である。およそ,0.1ミリメートル〜0.5ミリメートル以下程度の状況で剥ぎ取れている。

肥塚委員:キトラ古墳壁画のレプリカを作成してはどうか。写真や映像では壁画の質感は残らない。剥ぎ取る前の状態のレプリカか剥ぎ取った後のものかは議論はあるが,出来るだけ早い時期に行った方がよい。

猪熊委員:高松塚古墳壁画は,発見後の早い時期に文化庁による模写が行われた。それが現在,発見当初の状況を知る重要なデータとなっている。キトラ古墳壁画も何らかの方法で保存処理をされる前に模写をすればよい。

山﨑室長:大変貴重な意見である。ただ,模写を行う場合,どの時点の壁画で行うのかという点も重要であり,その辺りのことも検討いただき,考え方を示してもらえば,予算措置等を考えたいと思う。

肥塚委員:一般的に出土遺物については,非常に重要なものは,発掘調査時にレプリカを作成し,また,保存修理終了時にもレプリカを作成し,物の損傷状態,色調の変化を確認することを市町村に指導している。理想をいえば,キトラ古墳壁画も出来るだけ早い段階のものを一つとり,修理が完了した段階でレプリカをとることが適当ではないか。

西藤委員:高松塚古墳壁画の修理は今後どの程度期間をかけて実施するのか。また,修理はどのレベルまで行うのか,そのことをいつまでに決めるのか。

山﨑室長:高松塚古墳壁画の修理は約10年程度かかると言われている。恒久保存方針では,修理後,現地に戻すことになっているが,戻す際の具体的な方法,或いは現実的に実施できるのかといった疑問の声もあるので,今後のその辺りのことも議論を深めて結論を出す必要がある。また,それによって修理内容も変わる。一方,この検討会とは別に高松塚古墳壁画の劣化原因の調査検討会があり,そこで得られたデータ等を整理し,この検討会に反映させた上で,将来の保存活用の在り方ということを検討していただきたい。

毛利委員:高松塚古墳壁画の劣化原因の究明はどのくらいの期間をかけて行うのか。

山﨑室長:事務局としてはおおむね2年以内を目途に劣化原因のとりまとめをお願いしたいと考えている。

肥塚委員:石材を戻すか戻さないかの問題は,劣化原因究明の結果のほかに,修理過程における石の状態も考慮すべきものであり,慎重に議論を行うべきである。

西藤委員:現在,高松塚古墳の墳丘は仮整備前ということで,草がぼうぼうに生い茂っている。メンテナンスをしてほしい。

建石調査官:先般そのような指摘を受け,墳丘周辺の草刈りを実施したところ。

藤野委員:高松塚古墳及びキトラ古墳も国営飛鳥歴史公園内の公園区域が取り囲むようにして,いわゆる共存共栄をしている形になっている。現在,キトラ古墳周辺地区の整備を計画しており,平成28年に開園を予定している。その中に体験学習館を準備しており,出来ればキトラ古墳の様々な出土遺物等の活用ができれば,来園者にとっていい形になるのではないか。高松塚古墳も含めて来園された方,古墳を訪れた方々が楽しんでもらえるような整備にしたいと考えている。

関委員:高松塚古墳及びキトラ古墳が「お墓」であることを忘れないでほしい。また,今後の保存方針など,議論したことは速やかに行うべきであって,原理原則,理想を余り追求すると,色々なものが手遅れになってしまうであろう。

建石調査官:河上委員の意見にあった,キトラ古墳床石の漆喰の剥ぎ取りについて補足する。現在,キトラ古墳の石室床面はカビの温床になっている。石室内の壁画を剥ぎ取った段階で,床のカビが止まらないのであればどうするのか,床面の漆喰も全て剥ぎ取った方がよいのではないかという意見もある。7月に東京文化財研究所及び奈良文化財研究所と現状を調査する予定があるので,今後検討会でも議論をいただきたい。

松村委員:高松塚古墳の床面も相当劣化が進んでおり,キトラ古墳の床面も同様に劣化していることから,今後漆喰がますます傷んでいくおそれがあるため,床の漆喰の剥ぎ取りも検討した方がよい。

里中委員:劣化原因が究明されてからでないと修理後の保存方針の検討ができないということになると,今後数年は何もできなくなってしまう。劣化は一つの要因であって,その他の要因も様々あると思うので,漠然としたスケジュールでもよういので,検討のスケジュールをきちんと示した方がよい。また,レプリカ作成は,今後の研究にとっても,また特に若い人たちに我が国の古い文化遺産,歴史遺産に興味をもって,民族性にまで遡って様々なことが学べるようになる。また,文化財が作成された当時の予想再現図を子どもたちが体験して学べることが重要である。文化財保護というと,現状を如何に維持するのかという点ばかり力点がおかれているような感じがする。それは勿論必要なことだが,子どもたちの興味を引きつけ,文化遺産に興味をもってもらうことも重要であり,そのことに予算をつけることが必要である。

(7)古墳壁画保存活用検討会の今後のスケジュールについて
事務局より,古墳壁画保存活用検討会の今後のスケジュールについて説明が行われた。
次回の検討会は現地視察を行うことを確認し,第1回検討会は終了した。

以上

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