資料3

資料 3

キトラ古墳壁画の剥ぎ取り方針の整理について

  • キトラ古墳における壁画の保存対策については,平成16年9月の特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会(第7回)で了承された「壁画保存の考え方について」(参考資料)に基づき,「壁画の全面剥ぎ取り」を基本方針としてきた。
  • 絵が見えていた部分については,剥ぎ取りを終え,適切な環境下での保存・修復が可能となったが,絵が描かれていない余白部分は,今なお石室内に残置されている。
    「壁画」の範囲について,これまでの議論は,概ね,余白部分を含めて絵画であるとの前提で行われてきたが,今後の剥ぎ取り作業にあたり,余白漆喰を全て剥がすか否かも含め,壁画の現状に即して再確認する必要がある。
  • 検討事項
    • ● 現在の石室内における環境制御の問題(壁画の保存性の観点から)
      • 現在の石室内で壁画の保存のために最適な環境を恒久的に維持することは現状ではきわめて困難である。
      • (参考)これまでの石室内の状況変化
        • カビやゲルなどによる生物被害の継続的な発生
        • 天井の一部漆喰の落下
        • 一部漆喰の経年的な消失
        • 漆喰の穴の発生
    • ● 剥ぎ取りの技術的な可能性

      (参考)これまでの技術開発

      • ヘラ,ダイヤモンドワイヤソー,ダイヤモンドディスク等
    • ● 保存・修理に関する技術的な検討
    • ● 絵画としての考え方
      • 絵の描かれた部分と余白部分が一体として壁画を構成する。
    • ● 史跡としての考え方
      • 墳丘・石室など史跡として古墳の価値を構成する重要な要素の現状を保ちつつ,貴重な壁画の恒久的な保存を両立させる措置として,壁画を全て取り外した後,十分な保存・修復を行う。
    • ● その他

参考

壁画保存の考え方について

※下線は事務局で付した。

  • 壁画古墳における保存の基本的な考え方
    • 遺跡の保存に関しては,それを構成する各遺構が現地で一体的に保存されることが原則であり,古墳の壁画についても,現地の石室内で保存されることが基本である。
  • 特別史跡キトラ古墳における保存の考え方
    • キトラ古墳の場合は,四神・十二支等の壁画が絵画としても,きわめて貴重な文化財であるため,十分な保存を図る必要があり,墳丘・石室等からなる古墳本体の保存と合わせて具体的な方法を検討することが必要である。
    • キトラ古墳の壁画は,壁面から浮いている部分については取り外すことにより,十分な保存措置を講ずることが可能になったが,なお石室内に残っている部分については,次の点で大きな問題がある。
      1. (1)石室内の漆喰は接着していると思われるところでも,既に無数の亀裂があり,時間が経つと剥離することが考えられるので,このままの状態では剥落する危険がある。また,漆喰は微妙な環境の変化に応じて収縮を繰り返すことにより劣化が生じている。
      2. (2)発掘調査の開始以降,壁画の取り外し作業中もなお,カビの発生が断続的に確認されている。入念な点検・処置を行って大事には至っていないものの,カビの発生を完全に防止することは困難である。また,取り外した壁画の裏面にもカビが認められ,目視できない箇所についての不安も大きい。
      3. (3)カビの防止のためには,石室内の環境をより乾燥させることが考えられるが,最近乾燥が認められた壁画の漆喰面の詳細な観察によれば,乾燥により壁画にすでに存在する亀裂の拡大や新たな亀裂の発生が生じたり,壁画の浮きが進行すると考えられるうえ,漆喰の劣化も憂慮され,乾燥させる措置も適切なものとはいえない。
    • したがって,現在の石室内で壁画の保存のために最適な環境を恒久的に維持することは現状ではきわめて困難である。
    • 石室ごと解体して保存処置する方法については,墳丘をほぼ完全に除去し,石室を解体する必要があることから,古墳自体の本来の形が失われることになり,史跡の保存上大きな問題がある。また,実際の作業を想定しても覆屋の撤去・石室解体時の衝撃,急激な環境の変化等がかえって壁画に悪影響を与える危険性がきわめて高い。
    • 以上のことから,墳丘・石室など史跡としての古墳の価値を構成する重要な要素の現状を保ちつつ,貴重な壁画の恒久的な保存を両立させる措置として,壁画を全て取り外した後,十分な保存・修復を行うこととしたい。
  • 取り外した壁画等の保存,活用
    • 取り外した壁画は,文化財研究所において保存・修復を行うことしたい。
    • 取り外した壁画については,保存・修復を行うこととしても,再び現地の石室内に戻して貼りなおすことは,その環境を考慮すると現状では困難である。
    • キトラ古墳の壁画は貴重な国民的財産であり,保存技術的に可能であれば,適切な施設において公開することを検討すべきと考える。
    • 壁画及び古墳本体の具体的な整備・活用の方策については,関係者の意見も踏まえつつ,引き続き委員会で検討したい。

特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会(第9回)
(平成18年9月22日(金)

●議事要旨より

  • キトラ古墳に関して漆喰を全面剥ぎ取るという基本方針に変更はないのか。無理して剥ぎとらなくても,置いておけるのならば,それを検討してもいいのではないか。

に対し,

  • もう生物連鎖が出来上がっているのならば,半永久的にこの生物連鎖の面倒を見なければならないため,全部剥ぎ取り,保存するという方針は変更しない方が良い。

古墳壁画保存活用検討会(第1回)(平成20年6月25日(水)

●議事要旨より

  • キトラ古墳壁画の剥ぎ取りは,全面の剥ぎ取りを行う方針となっている。今後どの位の作業期間が必要なのか。
  • 作業的には絵のある部分もない部分も扱いは同じである。今後4,5年は作業期間が必要ではないか。本当に全面を剥ぎ取る必要があるのか。

に対し,

  • 全面剥ぎ取りに問題があれば,再度議論をすればよい。床の漆喰は剥ぎ取らずにそのままにしておけばよいと思う。
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