資料5

資料 5

古墳壁画保存活用検討会保存技術ワーキンググループから古墳壁画保存活用検討会への提案事項(案)

石室内壁画を生物被害から保護しつつ,早期の全面剥ぎ取りを実現する方策として,新たな微生物対策の方法と期間集中的な剥ぎ取り方法を併用していくことが望ましい。

1.キトラ古墳における新たな微生物対策について

  1. (1)紫外線(UV)照射による生物制御

    人が頻繁に出入りすることによる石室内環境の変化が指摘されていながら,これまで絵のある部分を保護するため止むを得ず繰り返してきた石室内の定期点検に代えて,他の文化財における使用例とその実効性に鑑み,紫外線(UV)照射による生物制御を行う。

  2. (2)次亜塩素酸ナトリウム溶液による殺菌

    主な殺菌用の薬剤として,カビの栄養源となる可能性や人体への影響等が指摘されていながらこれまで止むを得ず使用してきたエタノールに代えて,高松塚古墳壁画における使用実績と高い殺菌効果に鑑み,次亜塩素酸ナトリウム溶液による殺菌を行う。

2.キトラ古墳壁画の集中的な剥ぎ取りの実施について

  1. (1)集中的な剥ぎ取りによる効果

    生物被害が大きい高温の時期には点検も含めて人の出入りを避け,石室内環境が比較的落ち着いている期間,連続的に剥ぎ取りを行うことにより,早期の壁画全面(床面を除く)剥ぎ取りが可能となる。

    主な効果は,

    • 剥ぎ取り作業が効率的にできる。
    • 剥ぎ取った時期による漆喰の状態(色や強度)の差異が少なくなる。
    • 人が出入りする期間を通年で抑制できる。
  2. (2)集中的に剥ぎ取りを行う期間及び実施方法
    1. (1)石室内環境が比較的落ち着いている期間に実施すること。
    2. (2)連続する剥ぎ取り作業の期間は1ヶ月程度とし,年間2回(5月頃,12月頃)程度設けること。
    3. (3)集中的な剥ぎ取り後は,1時間程度,紫外線照射による生物制御を行う。

※ ただし,最初の集中的な剥ぎ取り期間における,技術者の集中力や体力,壁面の状況変化を踏まえ,2回目以降の見通しを立てる。

3.石室内の点検方法の変更について

  1. (1)石室の蓋に新たに透明窓を設け,石室内に人が出入りしない状況で窓越しに石室内の様子を観察するに留める。
  2. (2)石室内に異常が確認された場合は,現場の判断により随時必要な措置を行う。

※ 上記の点検方法の変更により,石室内に人が入らない期間を確保することができる。

4.その他

上記の方法を可能な限り速やかに現場において試み,検証を繰り返しながら,剥ぎ取りが終了するまでの壁画の保存と壁画の早期剥ぎ取りを実現する。

ただし,検証の結果,総合的な効果が見られない場合は,その他の生物制御の方法を検討し,集中的な剥ぎ取り方法を見直す。

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