特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会(第3回)議事要旨

日 時: 平成14年7月10日(月) 13:30~15:15
場 所: 三田共用会議所 第三特別会議室
出席者
(委員)
藤本座長,三輪副座長,青木,有賀,猪熊,笹山,里中,田辺,増田,町田
三浦,毛利,渡邊(明),渡邉(定) の各委員
(オブザーバー)
(独)文化財研究所総務部長ほか,株式会社空間文化開発機構代表取締役,
文部科学省大阪工事事務所所長補佐ほか,国土交通省公園緑地課調整官,
奈良県東京事務所次長
(文化庁)
木谷文化財部長,鈴木文化財鑑査官,湯山美術学芸課長,大木記念物課長
その他関係官
議事
1. 開会
委員会を開会し,文化庁文化財部長が挨拶を行った。
2. 出席者紹介,配付資料確認
事務局より出席者の紹介および配付資料の確認を行った。
3. これまでの調査等の経緯について
事務局よりこれまでの調査等の経緯について説明があった。
4. 墓道部の発掘調査の結果について
(独)文化財研究所より,本年5月~6月に実施されたキトラ古墳墓道部の発掘調査について説明があった後,意見交換が行われた。
意見交換
資料において,「石槨」という用語を用いているが,高松塚古墳については「石棺式石室」という用語を用いていたので,用語を統一するか,変更するならその理由を整理すべきではないか。また,「コロレール」は俗称であり,「道板」が正確ではないか。
墓道跡が二層であれば,床石も運んだ可能性もあるが,どうか。
一層しか確認されていない。また,南壁までの残り約1.3mも掘ってみないと明確なことは言えない。
レール跡の切断をどのように解釈するか。横板を入れた可能性はあるか。
横板を入れた形跡は確認できなかった。地滑りによるものかもしれない。
土層観察用の畔は,いつまで残すのかにもよるが,墓道の中央にあると作業に支障が出るのではないか。
発掘調査現場において,東側に排水溝のようなものが見えたことから,そこを発掘するため,畔は中央に残さざるを得なかった。
5. 地耐力調査の結果について
株式会社空間文化開発機構より本年4月に行われた地耐力調査について説明があった。
6. 覆屋の設計について
株式会社空間文化開発機構より石室内部の保存処理等のための仮設保護覆屋の設計について説明があった。田辺ワーキング・グループ座長より,ワーキング・グループで出された主な意見について説明があった。その後意見交換が行われた。
ワーキンググループでの検討事項は以下のとおり。
小前室はなるべく機械による環境管理を行うことなく自然な環境保持を行う。
石室内での小前室の大きさは土の除去作業等の効率を考えれば広い空間が望ましく,一方で自然な環境保持の点から考えれば広い空間を持つことが難しく,それらの兼ね合いが議論となった。
覆屋内で実際に作業を行う際は運用マニュアルを作り,作業を進める過程で適宜改良を加えるなど相当な工夫をしなければならない。
意見交換
温度については,年間を通じて15度ということでなく,季節変動も考慮すべきである。
石室内温度の変化は外気の変動から3ヶ月遅れぐらいで変化が表れてくるのはないか。
仮設とは言っても相当期間の設置が見込まれる。その間,南側から古墳を見た時に,覆屋に隠れて墳丘の形が全く見えなくなるのは如何なものか。
覆屋の作業空間を維持しながら,墳墓の姿を残すことはできないか。
今は壁画の崩落を防ぐことを最優先課題とすべき。恒常的な施設は,一度この覆屋を壊してから検討すべきだろう。
高松塚古墳の場合は10年かかって壁画修理を終了したが,今回はそのデータも活用できるため,作業期間が短縮できるのではないか。
高松塚古墳の場合は10年かかって壁画修理を終了したが,今回はそのデータも活用できるため,作業期間が短縮できるのではないか。
安全性を考えながら最善の方法で作業を行うため,10年よりもっと長くかかる可能性があるのでは。
仮設施設であっても,この施設を見れば一般から公開の要求がくるはずである。その際の配慮をお願いしたい。
石室内を公開することはできないが,パネル展示にするなどの工夫は必要である。
委員会として,今回の覆屋は保存処理等のための施設であり,活用のためではないということを再認識すべき。
小前室の内装に凝灰岩張りを予定しているのは,内部の環境に配慮し自然の素材にしたことと,結露防止のためである。
高松塚古墳の場合,人間が作業した場合に発生する温度や機械室の発熱による影響の見込みが違ったという経緯がある。今回も機械を用いるため,見込み違いは起こりうるものである。
ヒートブリッジで地中から熱が伝達してしまうのを防ぐために,断熱をつくることも考慮したほうがよい。
高松塚古墳では,保存施設が3つの部屋に仕切られており安全性が高かったのだが,今回は2つの部屋しか分かれていないため,安全性から見て不利な条件である。
機械室からの発熱による温度上昇を防ぐための対策が必要。
高松塚古墳では水冷式クーラーを設置していたが,今回も空冷が良いのか水冷が良いのかよく検討すべき。
高松塚古墳の場合,コンクリートの壁をやわらかく見せる加工作業を現場で行っていたために非常に危険であった。今回は現場ではなく工場で行う配慮が必要である。
今回の施設は仮設ではあるが,長期間使用するものであるため,村道の部分を覆屋の用地にしたうえで,設計の変更をすることはできないか。
墳墓に寄った設計には無理がある。村道部分を用地にし,全体的にゆとりのある設計にできないか。
景観に配慮し全面を土で覆うという考え方もあるが,その場合相当高く土を積まなければならず,かなりの経費がかかるため,調査の第一目的の壁面処理を優先した設計にしたい。
委員の意見を取り入れられるところは取り入れた上で,実施設計を進めることで了承された。
7. 今後の進め方
事務局より今後の進め方の案について,説明があった後,意見交換が行われた。
意見交換
壁面を固定し,漆喰が落ちないということを確認するまでは床はさわらないほうがいいのでは。
覆屋の屋根の密閉性を高めるため,墳頂部の覆屋が接する部分の発掘調査は,設計作業の段階で前倒しして調査を行うべき。
基本的には原案通り今後の進め方について了承された。
但し,墳頂部発掘調査を前倒し(設計作業の段階)で行うこととされた。
今後は適宜ワーキング・グループを開催しながら,状況は委員会に適宜報告したうえで,調査を進めることとなった。
8. 閉会
以上

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