石室内から出土した人骨に関する調査結果について

7月8日午後、京都大学大学院理学研究科教授 片山一道先生による人骨の調査・鑑定。

個別観察所見

(1)
頬骨(きょうこつ)体の破片(NO.1−(1)) NO.1−(1)~(6)はB区漆塗木棺断片堆積層の上部

(2)
左上顎骨の破片(側切歯から第1大臼歯の歯槽部とその周辺、第2小臼歯が定植)
(NO.1−(2)) 犬歯・第1小臼歯のソケット部が残存。
第2小臼歯は、摩耗して象牙質が露出。歯冠の頬側部に割れ跡(フラクチャー)がある。割れ跡が摩滅するので、生前に欠損したと推定できる。
犬歯・第1小臼歯は、骨化後に脱落した(生前に脱落すれば、ソケットが埋まる。犬歯は、NO.5が接合する)。

(3)
前頭骨眼窩上縁の眼窩上孔を含む微小破片(右側?)(NO.1−(3))

(4)
左上顎骨の梨状孔(りじょうこう)周辺の小破片(NO.1−(4))

(5)
右頬骨の上顎骨縫合の下端部周辺の微小破片(NO.1−(5))

(6)
頭蓋骨(部位不明)微小破片(7点以上、NO.1−(6))

(7)
左上顎側切歯(典型的なシャベル状切歯、鋏状咬合を示す咬耗)(NO.2、B区)
歯頸部に齲蝕(うしょく)の跡(4×3mm)
(2)の上顎骨から脱落した歯

(8)
右上顎骨の破片(梨状孔と上口蓋と副鼻腔にまたがる)(NO.3、B区)

(9)
左上顎中切歯 大型(NO.4、B区)
咬耗が非常に強い(進行している)
弱いシャベル状、複シャベルの特徴をもつ、鋏状咬合の程度が弱い

(10)
左上顎の犬歯 大型(NO.5、B区)
NO.1−(2)の上顎骨の破片から脱落
歯に欠損はあるが、摩滅ないので、骨化後の破損
咬耗は相当に強い
エナメル質減形成(形成不全)が認められる→3~4歳時に栄養障害

(11)
左側側頭骨と蝶形骨(ちょうけいこつ)の破片(側頭骨・蝶形骨縫合でつながる破片、側頭窩の一部)
棘突孔(きょくとっこう)がみえる(NO.6、A区)

(12)
右蝶形骨底部の破片
NO.6の左右反対側の骨(NO.7、D区)

(13)
可能性としては側頭骨の一部か前頭骨の一部
細かすぎて特定できない(NO.8、D区)

まとめ

 出土した人骨は、頭蓋骨の部分に限られる


重複する骨の部位がない
 1人の人物の遺骨である可能性が考えられる


中切歯・犬歯・小臼歯はいずれも咬耗が強い
 成人で、しかも死亡年齢が高い(熟年~老年)


性別については現段階では判定が難しい
 可能性としては、歯の詳細な検査によって性別を確率的に推定することもできよう

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