壁画の保存処置作業について

作業環境
現状のまま湿度100%、温度20℃以下と想定される。
漆喰壁の水分調整も特には行わない。

作業内容
1.
修復記録用として奈良文化財研究所の撮影した最新実大の写真を基礎として適宜切り分けた画像に現状の劣化状況の記録を行う。
2.
顔料の安定度を各種溶媒を用いて試験する。水、エタノール、アセトン、酢酸エチルなどを想定している。小面積に筆で塗布する。小面積に不織布で湿布するなど。
3.
絵のない部分で作業を想定した表打ちとその除去を行い、顔料への影響を見る。
4.
泥の付着の厚い部分で同様の処置を行い、影響を見る。
5.
剥離部分を安全に搬出できる大きさに分割できる案を作成する。
6.
必要最小限の部分を剥落止めを行う。この効果についてはあらかじめ試験を行う。
7.
ヒドロキシプロピルセルロースをあらかじめ塗布したレーヨン紙により表打ちを行う。
8.
この後、数日間ゲルの安定するのを観察しながら待つ。
9.
さらに、2ないし3層の表打ちを行う。
10.
全体の重量を受けるために接着性のあるゲル層を持つバックアップ材を貼り付ける。
11.
表打ちが安定するのを待ち、亀裂部分から剥離する。
12.
剥離片は、板の上に水平に保持して石室外に搬出する。
13.
搬出後直ちに裏面にHPCを塗布したレーヨン紙によって何層かの裏打ちを行い、速やかに表打ちを除去する。
14.
絵画面の確認を行い、湿度を保ったまま、低温低酸素状態に保存する。
15.
上記の処置の対象は、主に東西壁の剥離部分となる。天井部分は、粉状化が激しく、表層のみを固化して部分的に剥離する。極小面積ずつ剥離して最終的に画面を再構成することになる可能性が高い。事前に星宿のない部分での十分な試験が必要である。

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