特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会
(第6回)議事要旨

日時:
平成16年7月12日(月) 10:00〜13:00
場所:
三田共用会議所 第四特別会議室
出席者
(委員)
藤本座長、青木、有賀、石崎、猪熊、今津、岡、金子、河上、笹山、沢田、
鈴木、田辺、百橋、町田、三浦、毛利、渡邊(明)の各委員
(オブザーバー)
(独)文化財研究所東京文化財研究所管理部長、
同 奈良文化財研究所協力調整官、
奈良県教育委員会文化財保存課主幹、明日香村長ほか
(文化庁)
加茂川文化庁次長、辰野文化財部長、湯山文化財鑑査官、
村田記念物課長、下坂美術学芸課長、その他関係官

議事

  1. 開会

    委員会を開会し、文化庁次長が挨拶を行った。

  2. 配付資料確認

    事務局より配付資料の確認を行った。

  3. 墓道部発掘調査の報告について

    奈良文化財研究所 花谷 遺構調査室長から、墓道部発掘調査の結果について、発掘により石室の外観等が明らかになった旨、報告があった。

  4. 壁画の応急措置について

    東京文化財研究所 川野邊 修復材料研究室長から、石室内の発掘作業にあたり、壁画の剥落を防ぐための応急措置として、ハイドロキシプロピルセルロースやレーヨン紙を使って処置した旨の説明があった。

  5. 石室内発掘調査状況の報告について

    奈良文化財研究所 花谷 遺構調査室長から、石室内発掘調査にあたり石室内に設置した保護枠の説明があった。発掘調査結果について、床面には漆塗木棺片が堆積していること、遺物として人骨片、銅製の棺金具、金銅製の金具、鉄製の金具、琥珀玉等が出土したことが説明された。また、専門家による人骨の鑑定結果について、死亡年齢が高い成人のものと考えられること、性別は現段階では判定困難であることが説明された。

  6. 石室内のカビ発生に対する対応について

    東京文化財研究所 三浦 協力調整官から、墓道部発掘調査以降のカビの処置状況について説明があった。石室内での作業を進める中で発見したカビは、エタノール湿布による消毒除去を直ちに実施するとともに、2〜3週間に1度のパラホルムアルデヒドガス燻蒸により発生を抑える対策を行っている旨の説明があった。

  7. 高精細デジタルカメラによる壁画撮影結果について

    奈良文化財研究所 花谷 遺構調査室長から、赤外線写真及び1600万画素の高精細デジタルカメラによる撮影を行ったことで、ヘラ描き状の刻線の確認や天文図の描き方等について新たな知見が得られた旨の報告があった。

  8. 壁画の状況について

    東京文化財研究所 川野邊 修復材料研究室長から、石面から漆喰層が剥離している箇所、漆喰層が粉状化している箇所の説明があった。東壁については、青龍及びその下に存在の可能性がある十二支像の部分までほぼ剥離していること、西壁については、白虎は一部接着している部分を除き剥離しており、全体的に浮いている箇所が多いこと、北壁については、縦断する形で亀裂が入っており、玄武の上部部分に大きな剥離があり、また十二支像にも剥離等が見られること、南壁については、朱雀の直下まで亀裂がはいっていること、天井については、漆喰の粉状化が激しく見られること、等の説明があった。

  9. 壁画の保存措置方法について

    ワーキンググループ座長である田辺征夫委員より、ワーキンググループでの壁画保存措置方法の検討結果について報告があった。壁画がきわめて危険な状態である現状をふまえ、修復技術上の問題等を検討した結果、ワーキンググループにおいて了解した事項として、(1)はがれている壁画について、剥ぎ取りして保存処置することが必要であること、(2)剥ぎ取りの可能性を確認するため、剥ぎ取り作業の手順を工夫する必要があること、(3)残った部分の壁画処置方法についても、新たな剥離やカビ発生等の問題があるため、剥ぎ取り作業の結果をふまえ、8〜9月には処置方法を決定する必要があること、の説明があった。また、川野邊室長より、想定される保存措置の具体的な作業手順について説明があった。

    (壁画の保存措置に関する主な意見)

    1. キトラ古墳の壁画保存措置にあたって、高松塚古墳の壁画褪色の検証が必要なのではないか。
    2. 石室の石材ごと外すことのほうが、剥ぎ取りよりもリスクが少ないのではないか。その方向も検討してはどうか。
    3. キトラ古墳で剥ぎ取りを行う前に、同じ状態の漆喰を再現する等して実験することはできないのか。マルコ山古墳の漆喰をサンプリングしてはどうか。
    4. 剥ぎ取りにリスクがあるが、今にも落ちる可能性があるものについて救うことは優先すべき対策である。ただ、残った壁画をどうするのかも含め、あらゆる技術の可能性と保存の理念とを勘案して、古墳の将来像について考えるべき。
    5. 石材の解体について、天井石がすでに割れていること、凝灰岩の強度に不安があることから、壁画に影響を与えずに石材単位で動かすのは困難と思われる。
    6. 研究室において、漆喰のサンプルを作って実験等を行っているが、キトラ古墳と全く同じ状態の漆喰を再現することは困難であり成功していない。
    7. 外した壁画については、応急処置後、当面は文化財研究所の施設で安定をさせ、その間に委員会において将来の保存・活用の観点から議論をされたい。

    (質疑応答の結果)

    壁画の保存措置方法について、ワーキンググループからの提案が、委員から了承された。東壁の青龍、西壁の白虎(前足部分も含む)と十二支像(戌)、北壁の十二支像(亥)を取り外すこと、天井部で漆喰が薄れている部分の強化措置をすること、取り外し作業に壁画が危険な状態となった場合には現場の判断で緊急に措置をすることが了承された。

  10. 今後のスケジュール

    事務局より、今後のスケジュールとして、7月16日に文化審議会の文化財分科会にて現状変更許可の諮問答申を予定していること、8月上旬から壁画の保存措置を実施すること、9月に次回委員会を開催したいことを説明した。

  11. 閉会

以上

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